2017年1月21日土曜日

定かでないトランプ新米政権とラテンアメリカの関係

 米国大統領に1月20日、ドナルド・トランプ(70)が就任した。任期は2021年1月までの4年。共和党政権が8年ぶりに復活した。就任演説を未明に民放のTV中継で聴いたが、予想通り格調低い、平凡極まりない内容だった。演説時間が16分と短く、先の記者会見よりはましだったが、知性や理想の欠如には、あらためて辟易した。

 国際関係関連の発言に注目したが、それは実に乏しかった。金儲けに生きてきた人生故に忙しすぎて、地球という球体世界が脳裡に描かれていなかったからではないか。

 「自国益第一主義で諸国との友好親善を求める」と言った。メヒコに対する強圧的接近は確かに米国益最優先主義だが、もはや「友好親善」とは相容れない。

 メヒコは19世紀半ば、米国から不正な戦争を仕掛けら、敗れて国土の北半分を奪われた。現在の3200kmの国境線は、その時できた恨みの国境だ。だからメヒコ人は平然と越境して、米側に住む。その権利が歴史的に備わっていると信じるからだ。

 20世紀前半にはメヒコ革命(1910~17)とその後30年代のラサロ・カルデナス大統領による米英石油資本などの国有化があった。その時、墨米関係は険悪になったが、カルデナスは後に引かなかった。

 今、メヒコは、石油国有化以来とも指摘される対米危機にある。トランプ政権登場で真っ先に選ばれたラ米の生贄がメヒコなのだ。

 トランプは演説で、「米国式生き方を誰にも強制しない」とも口にした。ではなぜクーバに脅しをかけるのか。他国の民主に口出しするよリも、昨秋のようにヒラリーを支持した有権者多数派の意思が反映されない大統領間接選挙制度を見直すのが先決だろう。

 「新しい同盟を結ぶ」とトランプは言った。ロシアとの新しい関係構築を示唆するものなのか。それも含まれているに違いない。

 問題は、トランプのメヒコ以外のラ米政策がいつ出てくるかだ。特に重要なのは、クーバ、ベネスエラ、ニカラグア、ボリビア、エクアドールとの関係がどうなるかだ。

 ラ米側は25日、ドミニカ共和国(RD)で第5回CELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)首脳会議を開き、米新政権への対応策を練り、表明する。