2017年3月21日火曜日

 チリに奪われた太平洋岸領土の回復が悲願のボリビアが国際司法裁判所に新たな意見書を提出。チリは半年後に立場表明へ。両国間にいざこざ続発

 ボリビア政府は3月21日、ハーグの国連・国際司法裁判所(ICJ)に、太平洋岸領土回復に関する主張を盛り込んだ意見書を提出した。この書類提出時、ボリビアの外相、司法相、国会下院議長が立ち合った。

 ボリビアは1879年、チレに仕掛けられた「太平洋戦争」で、現在チレ領となっている広大なアントファガスタ地方をチレに奪われた。双方は1904年の条約で領土問題に決着をつけたが、ボリビアは「条約で全問題が解決したわけではなく、未解決の案件が残っている」と主張、「海岸領土回復」を国家的悲願として訴えてきた。これに対しチレは、全問題が解決したとの立場をとってきた。

 先住民族アイマラ出身で民族主義の強いエボ・モラレス大統領は2013年4月24日、領土問題交渉に応じるようチレに促す裁定をICJに求めた。チレは14年7月15日、ICJには同領土問題を裁定する権限はないとの意見書を提出した。

 双方の主張を受けたICJは15年9月24日、ICJにはその権限があると判断。両国政府に新たな意見書を提出するよう求めた。ボリビアは提出期限の21日、これを済ませた。チレは9月21日までに立場を表明せねばならない。

 モラレス大統領は20~21日、政治首都ラパスの大統領政庁前で盛大な行事を主宰、ハーグでの意見書提出を内外に印象付けた。大統領はICJでの「領土回復活動」を全世界に知らしめるため、ボリビアの在外公館・代表部の全てにボリビア国旗を掲げるようしじしている。

 これを受けて、アントファガスタ州都アントファガスタ市にある「ボリビア領事部」は先週、国旗を掲げた。ところがチレのカラビネロス(治安警備隊)に国旗を外されてしまた。チレ政府は、同領事部は正式な外交登録がなされておらず、国旗を掲げる資格がないと
説明、ボリビア政府に抗議した。

 さらに19日、ボリビア国境警備隊兵士2人と税職員7人が智タラパカ州の国境地帯で身柄をカラビネロスに拘禁される事件が起きた。智当局は、ボリビア人9人は智領内にあったトラックを盗みに侵入したため拘禁したと主張。

 一方、ボリビア政府は、9人は密輸物資を載せたトラック3台を追跡していたところ、ボリビア領内に入ってきた智カラビネロスに拘禁され、拉致された、と主張している。

 これに対しバチェレー智政権は、ICJでのボリビアの外交的振る舞いを目立たせるため「チレとの紛争」をでっちあげて利用するな、とやり返した。

 両国は、双方が共に軍政だった時期に領土問題交渉がこじれて断交、以来、大使はおらず、総領事級外交に留まっている。