☆★☆「キューバ革命の指導者」の肩書を持つフィデル・カストロ前国家評議会議長(86)が10月20日ハバナで、人前に姿を現した。このところ米国や欧州で流れている「死亡説」を打ち消す狙いがある。
☆フィデルは、来訪したエリーアス・ハウア前ベネズエラ副大統領と会談した後、ハウアの泊まっていたナシオナルホテルまでワゴン車で送って行った、という。フィデルの妻ダリア・ソトデルバージェが同伴した。
★ハウアはホテル前で記者団に、「フィデルと農業、歴史、国際情勢、文化などについて5時間話し合った。とても元気そうだった」と語り、ワゴン車内で麦藁帽をかぶって笑っているフィデルとハウアが写っているカラー写真を公開した。
☆ホテルの支配人は、「フィデルが来ていた。従業員らとしばし話し合っていた」と語った。
☆CIA筋はつい最近、「フィデルは右脳動脈血栓で大量の出血があり、死にかけている」との情報を流し、これが世界中に「ニュース」として拡がっていた。フィデルは17日、「卒業した医学生を祝福した」という、キューバの新聞記事に登場した。だが「死亡説」が収まらないため、自ら姿を現した。「またか、やれやれ」という風情だ。
☆CIAは今回も滑稽な観測気球を打ち上げ、それなりの回答を得たことになる。米大統領選が迫っている折だけに、オバマ陣営に不利になるような策謀があったかもしれない。「死亡説」が打ち消されないまま流され続ければ、「フィデル後のキューバ」との関係が米国の政策問題として浮上することになりかねず、キューバに強硬姿勢をとる共和党陣営が有利になるとの計算が働くからだ。
☆先に、米国内でイスラム教の教祖を侮蔑するような表現がなされ、イスラム諸国で米外交公館を狙った暴動が起きたのも、オバマ陣営を揺さぶる陰謀だった可能性が否定できない。ジミー・カータ大統領が2000年にレーガンによって再選を阻まれた要因には、イランでの米大使館員人質事件と救出作戦の失敗があった。
☆ハウアは、12月16日実施されるベネズエラ州知事・州議会議員選挙のミランダ州知事選に政権党・ベネズエラ統一社会党(PSUV)から出馬する。この選挙には、7日の大統領選挙でウーゴ・チャベス大統領に敗北したエンリケ・カプリレス前同州知事が出馬し、ハウアとの事実上の一騎討ちになる。
★ハウアがチャベスの特使として、フィデルの健康状態を確認しにキューバに行ったのは疑いない。チャベスとしては、ハウアを勝たせ、カプリレスの政治生命に打撃を与えたいわけであり、ハウアとフィデルの「意外な会談」を演出し、ハウアの存在を際立たせた。
☆キューバには17日から20日までガイアナのドナルド・ラモター大統領が公式訪問で滞在していた。同大統領はラウール・カストロ議長とは会談したが、フィデルに会ったという情報はない。
☆ラモターがフィデルに会えなかったとすれば、キューバ側がチャベスのベネズエラをいかに重視しているかがあらためて印象付けられた、と言える。