2012年8月21日火曜日

2人の日本人女性の死

★★★ジャーナリストの山本美香さん(45)が8月20日、シリア内戦の激戦地アレッポで政府側民兵と見られる部隊に銃撃され、死亡した。一方、大学生の益野友利香さん(20)は15日、ルーマニアの首都ブカレストの空港に到着した後に殺害された。

★★私は通信社に勤務していたころから、山本さんの仕事に注目していた。その仕事内容と取材姿勢を評価し、若い記者たちに、評価する理由を伝えていた。日本の報道界、国際報道界は、山本という優れたジャーナリストを失った。


★ここで付け加えるべきは、日本の大手メディアが、戦争や内戦など紛争地帯への自社記者派遣を避け、山本のような社外記者と契約する、一種の<代理取材>が常態化していることだ。本来、自社記者と契約記者が取材現場で補完し合うのが望ましい。

★山本は、死を懸けて取材していた。ジャーナリストならば誰しも願い、そして誰もが叶えることができるわけではない死を懸けた現場取材を、悲観も楽観もせずにこなしていた。私は山本に会ったことはなく、仕事を通して存在を知っていただけだが、それだけでも山本の生甲斐と死に様が理解できるのだ。

★★★益野さんは、夏休みを利用して短期間、ボランティアとして日本語を教えるため渡航したという。私はもちろん、益野のことを全く知らない。しかし、外国に出て行って何か有益なことをする、という精神は十分に理解できる。ここを評価したい。

★★小さな島国日本の日本人の若者の多くが内向きな時代に、益野は果敢にも欧州に出かけて行った。旧東欧、現中欧のルーマニアは経済が安定せず、犯罪が多い。残念ながら、益野は、その暗闇の部分に陥れられてしまったようだ。その結果として、死を懸けてしまった。

★山本と益野は世代も経歴も異なる。二人の死の様相も全く異なる。だが、同時期の日本人女性の異郷での「非業ながら運命的な死」として、私には忘れ難いものがある。記憶しつづけたい。