☆★☆米州諸国機構(OEA=オエア、英語ではOAS、キューバを除く34カ国加盟)は8月24日、ワシントンの本部で外相会議を開き、ウィキリークス創設者ジュリアン・アサンジ氏亡命問題で対立するエクアドールと英国の関係をめぐるエクアドール提出の決議案をめぐって5時間余り討議した。その結果、修正を加えた6項目の決議を採択した。アサンジという氏名は決議の文言に書かれていない。
☆最も重要なのは、「加盟国はエクアドールへの連帯と支持を表明する」と明記した第4項。米国は、この項目だけ賛否を留保した。カナダは「英連邦加盟国として」、決議案全体の採択そのものに反対した。LAC(ラ米・カリブ)22カ国が足並みをそろえて賛成し、決議案全体が採択された。そこには、英連邦加盟のカリブ諸国も含まれている。
☆エクアドールは原案に、「外交公館の不可侵性を威力行使で侵すという脅迫を断固糾弾する」という趣旨の文言を盛り込んでいたが、「威力行使で侵す」は「危険に陥れる」に、「脅迫」は「意図」にそれぞれ修正された。「平和共存の原則に沿って問題を解決する」という文言は採択された。決議は、両当事国に対話を求めている。
☆エクアドールのリカルド・パティーニョ外相は会議後の記者会見で、「歴史的な文書が採択され、エクアドールの勝利だ。米州では帝国主義が命令する時代は終わった」と述べた。また、「ALBA、ウナスールに次いでOEAが支持してくれた。これは、あの悪名高い<ワシントンコンセンサス>とは異なる<ワシントン無きコンセンサス>だ」と指摘した。米加両国の姿勢については、「地理的な近さは政治的な近さを意味しない」という、エクアドールのラファエル・コレア大統領の言葉を引用して、「予想どおり」という見方をやわらかく示唆した。
☆エクアドールは、8月15日に「外交公館の不可侵性を認めない例外的措置をとる可能性」を英政府から伝えられたのを受け翌16日、大使館内に身を置いているアサンジに亡命を認め、併せてOEA外相会議の開催を要請した。
☆OEAは決議採択で、組織としての存在価値を辛くも維持した。米加を除く22カ国はすべて、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC=セラック)の加盟国であり、OEAにおける北米両国と<南>のCELACの外交姿勢の違いが浮き彫りになった。CELACにはキューバも加盟している。
☆オバマ米政権は、今会議に国務省の米州担当副次官補という局次長級を出席させ、二国間問題を討議するのはOEAになじまない、との立場と<不快感>を表した。だが、カナダのように全面的反対はせず、LAC側に歩み寄る判断をした。11月に大統領選挙を控えるバラク・オバマ大統領には、もともとあるリベラルな外交姿勢に加え、会議をこじらせて共和党候補に攻撃理由を与えるのを避けたいとの配慮があった、とも言える。