2016年5月25日水曜日

ブラジル大統領弾劾はクーデター:辞任閣僚発言が示す

 ブラジルのテメル代行政権が5月23日、最初の危機に直面した。ヂウマ・ルセフ大統領が弾劾裁判にかけられることになり停職処分となった5月12日、副大統領ミシェル・テメルは大統領代行に就任した。だが23日、重要閣僚の一人である企画相ロメーロ・ジュカーが「重大な失言」を新聞に暴かれて辞任に追い込まれたのだ。

 ジュカーはルセフ政権が存続していた3月13日、国営石油ペトロブラス子会社トランスペトロ社の元社長セルジオ・マシャードとの会話中、「ペトロラン(ペトロブラス絡みの大規模贈収賄事件)捜査を止める唯一の方法は、大統領をルセフからテメルに替えることだ」と語った。この会話が録音されていて、「特ダネ新聞」として名高いフォーリャ・デ・サンパウロ紙が23日暴露した。

 テメルもジュカーもペトロラン関与疑惑がかけられている。さらにテメル政権の閣僚にまだ7人のペトロラン関与者がいる。ジュカーは、最大政党PMDB(伯民運党)党首。

 さらに重大なのは、ジュカーが「国軍高官らもヂウマ打倒を了解している」という趣旨の発言をしていることだ。

 ルセフ大統領陣営は、ジュカー発言は国会の弾劾工作がクーデターだった何よりの証拠だ、といきり立っている。テメル政権は早くも<時限爆弾>を抱えることになり、行方に暗雲が立ち込め始めた。それが爆発すれば、上院での弾劾裁判に影響が及び、弾劾支持派が減る可能性も、無きにしもあらずだ。

 一方、テメル代行は24日、教育など社会支出予算の削減や年金制度見直しを発表した。またジョゼ・セラ外相は23日ブエノスアイレスでの亜伯外相会談で、南部共同市場(メルコスール)の「政策軟化」について話し合った。

 ルセフの政治的貢献人であるルーラ前大統領は汚職罪で起訴されているが、弁護団は23日、最高裁に対し、ルーラがルセフから任命された3月16日からルセフ停職の5月12日まで官房長官だった事実を認めるよう訴えた。

 最高裁判事の一人は、PSDM(伯社民党)など、ルセフ弾劾派の要求をいれて、ルーラの就任を無効と判断した。