ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月15日、国軍に治安出動を命じた。保守・右翼野党連合MUDに代表される反政府勢力による街頭暴動、隣国コロンビアなどからの武装コマンド侵入、クーデターの可能性などに備えた措置。
またデルシー・ロドリゲス外相は15日、コロンビア極右指導者アルバロ・ウリーベ前大統領(現上院j議員)が12日、米国に「MUDを支援する国際武装部隊の編成」を要請したのを受けて、「ウリーベに対し国際的な対抗措置をとる用意がある。ウリーベがパラミリタレス(極右準軍部隊)に近いことや国際犯罪に関与してきたことを我々は知っている」と述べ、ウリーベを糾弾した。
マドゥーロは「ベネスエラに軍事侵攻する策謀だ」とウリーベを非難しているが、ロドリゲス外相は、「大統領が13日、非常事態を発動した理由はそこにある」と明かした。
マドゥーロは12日、ブラジルのヂウマ・ルセフ大統領が弾劾を前提に停職に追い込まれたことについて「ゴルペ(クーデター)だ」と糾弾。「ベネスエラに迫るクーデターの危険」を指摘しながら、「ラ米にゴルペのウィルスが蔓延している」と語った。
一方、アリストーブロ・イズトゥーリス副大統領は15日、MUDがマドゥーロ大統領罷免の是非を問う国民投票実施を選管に申請していることに関し、「MUDの署名運動や提出された署名に不備があるため、国民投票は実施されない」と言明した。
また、政権党PSUVのディオスダード・カベージョ国会議員(前国会議長)も、「MUDは今年1月11日に国民投票実施を申請すべきだったが、それをしなかった」として、年内実施はないと述べた。
故ウーゴ・チャベス前大統領の新任期は、癌で病床にあった2013年1月10日始まった。チャベスは3月死去。マドゥーロは同年4月、大統領選挙に当選、チャベスの残り任期を担っており、今年1月11日で、「任期半分を超えた」こととになる。憲法は罷免投票実施は、大統領任期が半分を経過した後、申請すると規定している。
憲法はまた、任期6年のうち4年を超えてから罷免が決まった場場合は、副大統領が残る任期を暫定大統領として担うと定めている。チャベス派のPSUVは、罷免投票結果が来年1月11日以降になるように仕向け、これを受け入れるのはやむなし、という構えだ。
MUDの中で、この国民投票実施運動を推進してきたミランダ州知事エンリケ・カプリーレス(過去2回大統領選挙で敗北)は、「状況は爆弾だ。国民投票が実施されないとなれば爆発する」と警告した。カベージョ議員は、「国民投票はゴルペの隠れ蓑だ」と指摘している。
ワシントンでは、米諜報機関当局者が15日、記者団に、「ベネスエラは急速に解体している。米国は反政府勢力を支援していない」と語った。だが、「経済破綻と社会的騒乱を防ぐ場合は別として」と、極めてあいまいながら介入への可能性に含みを残した。
▼ラべ短信 ドミニカ共和国(RD)で5月15日、大統領選挙が実施された。選挙中央評議会(JCE、選管)によると、開票率18%段階で、現職のダニーロ・メディーナ大統領(ドミニカ解放党)が62%弱を得て、優位に立っている。
2位は、野党・ドミニカ革命党(PRD)分派のルイス・アビナデルだが、35%と、大きく水をあけられている。