☆☆☆ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督の1977年の作品「大理石の男」をビデオで観た。日本では岩波ホールで1980年に公開されたのが初めてだが、私はこれまで観る機会がなかった。3時間に届きそうな長編だが、それだけの長さが不可欠な、歴史的に重い筋である。
☆この映画には、スターリン主義、生産性向上運動としての労働英雄制度、共産党の監視・陰謀、スペイン内戦、東西冷戦時代の東西競争、名誉回復、甘い生活、人間と<非人間>などが盛り込まれ、ちりばめられている。
☆主人公の建設現場の労働者マテウシュ・ビルクートと、その人生の実相を追究する若い女性アグネェシカ(新人クリスティナ・ヤンダ)を柱に、物語は時空を超えて展開する。先日、試写会でワイダ監督の「菖蒲」(岩波ホールで10月20日公開)を観たが、その主人公は59歳の熟女であり大スターになっているヤンダである。
☆たまたま両作品を同時期に観たことにより、ポーランド現代史、ワイダ監督の半生、ヤンダの女優人生の3つを垣間見ることになった。
☆過去の名画をビデオで観るのは仕方ないが、<名画座>で再々上映してほしいものだ。この映画は、制作の数年後に起きたグダンスク造船所労働者の「連帯」の動きを予言していたように見受けられる。言うまでもないが、優れた芸術=古典である所以だ。