☆ホルヘ・フランコ著『パライソ・トラベル』(2001年。田村さと子訳、2012年8月、河出書房新社)を読んだ。
☆コロンビアのメデジンに生まれた著者フランコ(60)でなくとも、軍・警察、極右準軍部隊、左翼ゲリラ、麻薬マフィアが入り乱れて一種の内戦状態にある祖国に嫌気がさすのは無理からぬことだろう。これは、そんな故国を脱出し、新天地・米国に密入国するコロンビア人の物語だ。
☆若い女性レイナと、同行した恋人マーロン(主人公)は、辿り着いたニューヨークで、はぐれてしまう。それから1年余り、マーロンはマイアミで暮らしていたレイナを探し当てる。だが、そこには荒んだ現実が待っていた。
☆コロンビアの政治・社会状況の他に、中米およびメキシコ経由の陸路での米国密入国の実態、在米コロンビア人社会(在米・ラ米人社会)の様子などが克明に描かれていて、興味深い。
☆コロンビア政府とゲリラ組織「コロンビア革命軍」(FARC=ファルク)は現在、和平に向けて交渉に入っている。そんな折だけに、この物語の訳書が出たのはタイミングがいい。
【コロンビアの内戦状況については、拙著『コロンビア内戦』(2003年、論創社)を参照されたい。】