☆★☆★☆メキシコ壁画運動3巨匠のひとり、故ダビー・アルファロ=シケイロス(1896~1974)が60年代半ばから死ぬまで使用していたクエルナバカ市郊外の広大な「シケイロス造形芸術工房工場」が、長らく閉鎖されていた後、新装なって、9月20日扉が再び開かれた。
★メキシコ市内の「シケイロス文化殿堂」の全壁面を飾る巨大壁画「人類の行進」は、70年代初めに、この工房で完成した。私は1967年6月工房を訪ね、一日がかりでシケイロスにインタビューした。その模様は、『メヒコの芸術家たち』(1997年、現代企画室)に詳述してある。「壁画、それは一度に万人に語りかける芸術だ。建物の中にあって何かを訴え、あるいは外壁にあって風雨と闘う」という言葉が今も鮮明に耳に残る。画伯夫妻とは画伯の死の日まで、記者としての職業上の交際が続いた。
☆工房は、シケイロスの後援者だった実業家の故マヌエル・スアレスが建設し、シケイロスの死後、故アンヘリカ・アレナル夫人によって国家に寄贈され、芸術庁(INBA=インバ)の管轄下に置かれていた。だが1982年に登場したミゲル・デラマドリー大統領は新自由主義路線を採り、工房維持費を打ち切った。
★私はシケイロス夫妻の死後、シケイロスの娘で舞踊家の故アドゥリアーナ・シケイロスにインタビューした折、工房や文化殿堂が荒れ放題になっている、と嘆くのを聞いた。
☆会場式には、画伯の孫で写真家のダビー=コンスタンティーノ(アドゥリアーナの息子)、フェリーペ・カルデロン大統領らが出席した。
★工房には、壁画制作をはじめとする造形芸術や壁画運動の資料を集めた資料館もつくられる。来年からは、造形芸術家らのための工房、宿舎としても使われるという。