2012年9月27日木曜日

メキシコで「失踪」した反PRI青年が保護さる


★★★かつての独裁政党・制度的革命党(PRI=プリ)政権の復活に反対してきた若者たちの政治運動体「#132」(私は132人目)の、北下加州エンセナーダ支部のアレフ・ヒメネス代表(32、海洋学者)が「9月20日エンセナーダ市内で失踪した」と報じられ、大きな問題になっていた。

★だがアレフ本人が26日、メキシコ市で「肉体的危害を加えられる恐怖を感じたため、ラパス(南下加州都)に隠れていた」と明らかにした。一時、「連邦警察による拉致ではないか」と見られ、全国的な関心を集めていた。

★アレフは、下加州知事、同州検察庁の速やかな介入で居場所と安全が確認された。アレフはラパス空港から25日メキシコ市に移動し、国家人権委員会(CNDH)の保護下に置かれた。国連高等弁務官事務所駐在員も保護に関与している。

★「#132」は、7月1日の大統領選挙で当選したPRIのエンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)次期大統領の選挙戦のさなか、EPNによる長年のテレビ放送買収、大掛かりな票買収による金権選挙に異議を唱え、選挙の民主化を求めて全国的に運動を展開した。

EPNは12月1日就任する。9月15日夜は「メキシコの夜」と呼ばれるメキシコ独立記念日前夜で、恒例の「ビーバ・メヒコ」(メキシコ万歳)という「独立の叫び」が国内各地で行われる。エンセナーダでは15日夜、PRI所属の現市長が叫んだ際、アレフら運動の地元幹部は「PRI無きメヒコ万歳」を叫んだ。

★このためアレフらは一時的に逮捕され、暴行を受けた。アレフは、17日に記者会見し、その弾圧を訴えた。ところがその後、監視されたり尾行されたりするようになり、身の危険を感じた、という。

★運動仲間らは「アレフ失踪」を州当局とメディアに通報した。結果的に、州当局の素早い反応と、大々的な報道で、アレフの安全が保障されたとも言える。

★新政権登場前に、<この世の春>の再来を待ちきれないPRI系警察当局者が「拉致した」との見方が拡がっていた。今回の<事件>は、メキシコの人権擁護の脆弱性をあらためて浮かび上がらせたが、同時に、当局とメディアが動けば最悪の事態が食い止められる可能性があることを示した。