2016年12月25日日曜日

伊高浩昭が選んだ2016年ラテンアメリカ重要ニュース

◎伊高浩昭が選んだ「2016年のラ米重要ニュース」(12月25日現在)

革命家フィデル・カストロ死去
 11月25日90歳で死去した。ラ米20世紀最大の出来事と位置付けられるクーバ革命の覇者は、次期米大統領が新自由主義+右翼主義+ファシズムを兼備したような人物になるのを確認し、実弟ラウールの経済改革の行方に不安を抱きながら逝った。この時期の死は、ラ米進歩主義退潮+右傾化の時代を象徴するかのようだ。

コロンビア内戦和平
 半世紀以上続いていたコロンビア政府とゲリラ組織FARC(コロンビア革命軍)は、2012年からハバナで続けていた和平交渉の結果、11月に最終合意に達し、国会の承認を得て和平実施段階に移行した。JMサントス大統領はノーベル平和賞を受賞したが、FARC最高司令ティモチェンコにも授賞すべきだったとの批判がある。政府と、もう一つのゲリラ組織ELN(民族解放軍)との和平問題が残っている。

ブラジル政変
 労働者党(PT)のヂウマ・ルセフ大統領は、従来弾劾条件とされていなかった財政関係の不手際をとらえられ国会での弾劾裁判にかけられ、リオデジャネイロ五輪終了後の8月31日、弾劾された。これは大統領選挙で連続4回PTに敗れた保守・右翼・財界が米政財界と謀って決行した事実上のクーデターだった。首謀者で大統領にのし上がったミシェル・テメルは汚職まみれで、世論から退陣を求められている。

ベネスエラ情勢混迷
 ニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派政権は、国際原油価格低迷、経済政策不調、国会多数派を野党に握られたこと、内外メディアの意図的宣伝報道などから年頭以来、政経両面で混乱を深めてきた。12月には右傾化著しい南部共同市場(メルコスール)から加盟資格停止処分に遭った。

ペルー大統領選挙
 4月10日実施され、得票1位のケイコ・フジモリと2位のぺドロ=パブロ・クチンスキが6月5日の決選に進出。激戦の末、ケイコは超僅差で敗れた。だがフジモリ派の政党「人民勢力」(FP)は国会で多数派であり、クチンスキ政権とのねじれが目立っている。

パナマが米軍侵攻真相解明に動く
 フアン=カルロス・バレーラ大統領は7月20日、1989年12月20日に決行された大規模な米軍によるパナマ侵攻作戦の死者数確認などに携わる特別委員会を設置した。真相を隠してきた米政府が資料公開などでどこまで協力するのかわからない。一方、パナマ運河の閘門式第3水路は6月26日開通した。

ボリビア国民投票で大統領敗北
 エボ・モラレス大統領は、2019年選挙に出馬するた連続3選禁止条項を修正するための改憲の是非を問う国民投票を2月21日実施したが、僅差で敗れた。ラ米左翼退潮は、ここにも現れた。だがモラレスは12月、政権党「社会主義運動」(MAS)の次期大統領候補に擁立され、3選禁止条項をいかに変更するかで戦略策定段階に入った。

ニカラグアのオルテガ支配長期化固まる
 11月6日実施の大統領選挙にダニエル・オルテガ大統領が妻ロサリオ・ムリージョを副大統領候補として出馬、事実上の無風選挙で圧勝した。オルテガはサンディニスタ革命政権期の1980年代を加えると4選されたことになる。野党を支援する米議会は9月以降、ニカラグアへの融資を禁止する立法措置でオルテガ体制に揺さぶりをかけている。これもラ米左翼勢力潰しの一環。

ハイチ大統領選挙実施
 昨年10月実施の大統領選挙が政権による組織的不正が明るみに出て無効とされ、今年2度の延期を経て11月20日やり直し選挙として実施された。昨年同様、政権党候補が得票1位になったが、野党候補たちはまたも不正を糾弾。選管は12月29日に最終選挙結果を発表する予定だが、状況は波乱含みだ。

エクアドールで地震続く
 M7・8の大地震が4月16日太平洋岸を見舞い、死傷者多数を含む甚大な被害が出た。その後、余震とみられる地震が続き、その都度、被害が出ている。

 アルヘンティーナ(亜国)で国内対立激化:昨年12月発足したマクリ保守・右翼政権の新自由主義政策で、長らく政権にあって「我が世の春」を謳歌していたペロン派は憂き目に遭い、政府との対立関係が先鋭化している。先住民女性、社会活動家、フフイ州議会前議員のミラグロ・サラ(52)は今年初めマクリ政権と州政府に抗議行動をした結果、逮捕され、弾圧と人権侵害の象徴的被害者と見なされている。

 このほか「メヒコがトランプ次期米政権に戦々恐々」、「ドミニカ共和国大統領選挙(5月15日)でメディーナ大統領2選」など。