2016年12月31日土曜日

対カタール合意不正で、アルゼンチン大統領捜査を検察要請

 亜国連邦検察庁は12月30日、マクリ政権とカタール政府が11月6日調印した両国合同財団創設合意には不正があるとして、裁判所に捜査開始許可を要請した。

 亜国インフラ整備用として創設が決まった財団は基金13億ドルを持つことになるが、亜国側は社会保障庁(ANSES)の資金から分担額を支出することになっている。検察は、なぜ同庁資金が使われるのかが明確でないうえ、必要な手続きをせずに国際合意がなされた点を追及している。検察はまた、合意には財団が税金回避のための隠れ蓑になる可能性があると指摘している。

 検察が不正容疑をかけているのは、マウリシオ・マクリ大統領、ガブリエーラ・ミケッティ副大統領、スサーナ・マルコーラ外相ら政府高官ばかり。ミケッティは合意書に調印した。またマクリは今年4月、「パナマ文書」で払税回避疑惑が明らかになった。

 一方、検察は29日、2015年1月18日に謎の死を遂げたアルベルト・ニースマン検事の死因再調査を開始した。ニースマンは、1994年にブエノスアイレスで起きたイスラエル・亜国相互協会(AMIA)爆破事件を捜査していた。

 2004年に当時のネストル・キルチネル大統領から同事件の主任捜査官に任命されたニースマンは06年、イラン外交官とヒズボラ(イスラム教シーア派民兵組織)が事件に関与したと結論づけた。事件ではユダヤ系85人が死亡、約300人が負傷した。

 ニースマンはその後、キルチネル元大統領の妻クリスティーナ・フェルナンデス=デ・キルチネル(CFK)前大統領、CFK政権期のエクトル・ティメルマン外相ら政府高官を同事件の真相隠蔽容疑で起訴する準備を進めた。イラン人関与を隠す見返りにイラン原油の供給を受けるなどの便宜を図ってもらう密約をしていた、という容疑だった。

 ニースマンは、その「真相」と現職大統領だったCFKらを起訴する旨を亜国国会で報告する前日、自宅で頭部に銃弾1発を浴びた変死体で発見された。以来、自殺か他殺かで議論が二分されてきた。

 今年8月、在亜ユダヤ系組織DAIAは、ニースマン死亡事件の再調査を要請。法廷がこのほど受け入れた。CFK政権とイラン政府は13年にAMIA事件の合同捜査実施で合意に達したが、合同捜査は実行されなかった。

▼ラ米短信  ◎サパティスタが大統領候補擁立へ

 メヒコ・チアパス州サンクリストーバル・デ・ラスカサス市で12月30日、サパティスタ民族解放軍(EZLN)と全国先住民理事会(CNI)は2018年7月の大統領選挙にEZLNの候補を出馬させるための政治綱領策定などの話し合いに入った。

 かつてサパティスタはメヒコ政治体制の外側から批判する立場をとっていた。だが内側から平和裏に社会正義実現などを目指す方針に切り替えた。

 一方、EZLNのガレアーノ副司令(元マルコス副司令)は30日、サパティスタが運営する地球大学で声明を発表、「元日実施のガソリン値上げは国中に大混乱を招くだろう。メヒコの現実はサイエンスフィクションのようだ」 と述べた。

▼ラ米短信  ◎ジャーナリスト93人が今年殺される

 ブリュッセルに本部のある国際ジャーナリスト連盟は12月30日、世界で今年、ジャーナリストおよび報道従業者が93人殺害されたと発表した。イラクで15人、アフガニスタンで13人、メヒコで11人の順。

 昨年の112人より少ないが、同連盟はジャーナリストへの脅迫、迫害、また自己規制が増えており、言論・報道の自由が脅かされていることに留意せねばならないと指摘した。

 このほか、ブラジル人ジャーナリスト29人がコロンビアでの飛行機墜落事故で死亡。ロシア人ジャーナリスト9人も黒海での航空機墜落事故で亡くなった。

▼ラ米短信  ◎グアテマラの米大使館が脅迫受け閉鎖

 グアテマラ市の米大使館は12月30日、深刻な脅迫を受けているとして30日から1月2日まで閉館すると発表した。3日には開館する予定。

 ことし5月、グアテマラ人の男が米大使館に手製の爆発物を投げ込んだ事件があった。米国から強制退去させられた腹いせだった。大使館は今回の脅迫について明らかにしていない。グアテマラ警察が捜査している。

▼ラ米短信  ◎ベネスエラが輪番制議長を亜国に渡す

 ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は12月30日、南部共同市場(メルコスール)の輪番制議長国の資格を亜国に渡した、と発表した。ベネスエラは6月30日から半年間、議長国を務める立場にあった。

 だがパラグアイ、ブラジル、アルゼンチンの3国が反対。12月2日には、ベネスエラのメルコスール規約の大量未批准を理由に、同国の加盟資格停止を決めた。

 これに納得しないベネスエラは「議長国の任務を遂行し終えた」として、亜国にその地位を引き渡すという外交的パフォーマンスを演じた。

▼ラ米短信  ◎クーバへの外国観光客400万人超える

 玖観光省は12月30日、ことしの外国からの来訪観光客は同日400万人を超えた、と発表した。前年比13%増。達成目標を6%上回った。北米人と欧州人が多かった。