チレのミチェル・バチェレー大統領は12月9日、パブロ・ネルーダ芸術・文化勲章を舞踊家ジョーン・ターナー(82)に授与した。ターナーは、音楽家で演出家だった故ビクトル・ハラの夫人。ハラは軍事クーデターが起きた1973年9月11日軍政に逮捕され、同月16日、拷問された後、射殺された。
ターナーは英国生まれの舞踊家。1954年にチレに来て、国立バレエ団に入団。60年ハラと結婚。クーデター後、娘2人を連れて英国に亡命。80年代半ば帰国し、「精神舞踊センター」を設立。93年には「ビクトル・ハラ財団」を設置した。国会は2009年、ターナーにチレ国籍を与えた。
ネルーダ芸術・文化章は、ネルーダ生誕100周年の2004年、文化・芸術理事会(CNCA)が創設。ターナーは、長年の舞踊および教育活動が評価され、受賞した。
バチェレー大統領の父親は空軍将軍だったが、アジェンデ社会主義政権に協力したとして、ピノチェー軍政に逮捕され、拷問されて獄中死した。肉親を軍政に殺された点でターナーと共通する。
一方、12月10日は、独裁者だったアウグスト・ピノチェーが2006年91歳で死去した10周年記念日。遺族ら100人はこの日、ピノチェー家の別荘のある太平洋岸のロス・ロルドスでミサを催した。遺骨は同別荘内に安置されている。
政府は6日、「ピノチェーはチレ人の団結でなく分裂に関わった過去の人物だ。チレは現在と未来に目を向けねばならない」との簡単な声明を発表している。
首都サンティアゴ市には、クーデターおよび軍政期の人道犯罪の資料などを展示する「記憶博物館」があり、年間15万人が訪れている。ピノチェー軍政期に3200人以上が殺され、このうち、まだ多くの人々の遺体が見つかっていない。拷問された者は3万人に上る。
▼ラ米短信 ◎コロンビア大統領がノーベル平和賞受賞
コロンビアのフアン=マヌエル・サントス大統領は12月10日、ノルウェー・オスロ市公会堂でノーベル平和賞を受賞した。FARCとの半世紀を超える内戦に終止符を打った功績を評価された。
大統領は式典で、「内戦で肉体的危害を受けていない人々が和平に反対しているというパラドックスがある。(国民投票敗北で)我々の和平の船がまさに漂流しようとしていた時、天からノーベル賞が与えられた」と述べ、同伴してきた内戦犠牲者代表7人を紹介した。
ノルウェーの平和賞委員会は、「国民投票結果を受けてサントス氏への授賞は時期尚早という意見が出た。だが我々は、和平が危機に瀕している今こそ国際的支援をすべきだと判断した」と、授賞決定の内幕を披露した。
一方、コロンビア世論は、「サントスは和平を導いたが、分裂している国内をまとめることができないままだ」と批判。「サントスはオスロに大使館を開くなど、2年前から受章に向けて準備していた」との指摘もある。
2012年から4年間続いたハバナでの和平交渉では、クーバがFARCの、ノルウェーがコロンビア政府の、それぞれ後見国を務めた。