詩人パブロ・ネルーダの死因調査に当たっているチレ判事マリオ・カローサは5月28日、詩人の遺骨から毒物との関連性を想定しうるブドウ状菌が発見された、と明らかにした。
調査したスペインのムルシア大学法医学局のアウレリオ・ルーナ=マルドナード医師は、ネルーダの遺骨から3種類のバクテリアを発見。うち2種類は、詩人が晩年患っていた前立腺癌と関連しうるものだったが、第3のバクテリアはブドウ状菌で、癌とは関連付けができない。
現時点では、詩人が死の直前に何らかの致死性物質を投入された可能性を証明するまでに至っていないが、同可能性を完全に否定することもできなくなった。
このような調査結果が出たため、カローサ判事は、遺骨をイスラ・ネグラの旧ネルーダ邸の庭にある墓に戻す許可を与えていない。
ネルーダは、1973年9月1日のピノチェーらによる軍事クーデターでアジェンデ社会主義政権が崩壊して間もなく、軍政に身柄を首都サンティアゴのサンタマリーア診療所に移され、23日、容体が急変し死亡した。翌24日には、メヒコに亡命することになっていた。
ネルーダ晩年の側近だった運転手マヌエル・アラヤの告発を受け、遺族と詩人が所属していたチレ共産党(PCCH)は遺骨の調査を求めて提訴。カローサ判事は遺骨の発掘を命じ、2013年4月、遺骨は発掘され、米国とスペインで調査されていた。
先ごろ、ネルーダの遺産を管理する財団が遺骨を返還するよう要請したが、判事は「新事実」を公表し、当面、遺骨返還がないことを示した。