2015年5月25日月曜日

映画「イル・ポスティーノ」の原作、スカールメタの小説をどうぞ

 詩人パブロ・ネルーダ(1904~73)とカルテーロ(郵便配達夫)との交流を描いたチレ人作家アントニオ・スカールメタの小説『燃えたぎるような忍耐』(別名「ネルーダの郵便配達夫」)がある。

 1985年の作品で、これを翻案して制作されたのが94年の映画「イル・ポスティーノ(郵便配達夫)」だ。主演マッシモ・トロイージの名演技と、この映画の完成直後にトロイージが急死したこともあって、映画は世界的に大ヒットした。

 映画の当たりを受けて日本では96年に訳書が徳間文庫(鈴木玲子訳)として刊行された。題名な何と、映画の題名と同じ! 違和感が否めない。

 小説の舞台となったのは、チレ中部太平洋岸のイスラ・ネグラ(直訳すれば「黒島」)。この地にある邸宅にネルーダ夫妻は晩年住んでいた。夫妻の墓も庭にある。

 映画は、舞台をイスラ・ネグラから地中海のイタリア・カプリ島に移し、筋をかなり変えている。ネルーダが祖国で迫害されカプリ島で亡命生活を送っていた時期に筋を上手に合わせたのだ。

 訳書の巻末で解説者は、イスラ・ネグラを「島」と誤解して書いている。読者は、それが島ではなく陸地の一部の地名であることを認識してほしい。

 海と船が大好きだったネルーダは、海岸地帯の低い丘の上の邸宅を船のように造り、海岸まで続く庭は太平洋の大海原を借景にしている。邸宅は今は有料のムセオ(博物館)になっている。

 映画を観て感動した人々に、是非スカールメタの原作を読むよう勧めたい。

 因みに、イスラ・ネグラの北方100kmの太平洋岸にあるバルパライソの旧ネルーダ邸も、バルパライソの東方120kmの首都サンティアゴにある旧ネルーダ邸も、内部が船のような構造になっている。これらの邸宅もムセオで、観覧できる。