2015年7月10日金曜日

リマで写真家義井豊がペルー写真展を開く

 ペルーの首都リマから素晴らしニュースが届いた。友人の写真家、義井豊(よしい・ゆたか、69)が、長年撮影してきたペルーの情景写真を展示する写真展が実現したのだ。展示会の名は「レフレクシオネス」。反射とか省察というような意味だ。この言葉に、義井の撮影哲学が象徴される。

 写真展はリマ市内にあるペルー日系人協会(APJ)の文化センターで同協会主催により7月7日の開かれた。その開場式で義井は、「私はカメラを通して、古来の人々の精神を感知する。撮影することで現実に直接接近する。私の写真を通してペルーの現実を感じていただければ幸甚です」と挨拶した。

 式には友人、知人ら80人が出席、日本の株丹達也(かぶたん・たつや)大使の姿もあった。義井の親友で写真家のオスカル・チャンビと、その夫人、川又千加子が会場デザインや配布資料に関し一役買った。

 展示されている写真は41点。縦2・5m、横4・5mの「プーノの沼沢地」(1983)は、先住民の母と娘が大きな荷物を背負って歩く姿を捉えている。後方にはアンデスの山並みと、リャマかアルパカの群がいる。壁面いっぱいに拡がる雄大な写真だ。

 他は1m×70cmの作品が10点、40cm×30cmが30点。すべてカラーだ。義井はアンデス古代文明の出土品や、その発掘作業を撮影する専門家で、第一人者だ。だが、歴史の尖端である現在・現実への深い愛情と敬意が遺跡撮影の基盤を支えている。それが写真展であますところなく示されている。

 有力紙エル・コメルシオやペルー通信社アンディーナなどが写真展開催を報じた。

 日本で写真家となった義井は1974年、ラ米を広く旅行し、強烈な印象を得た。次いで1981年ペルーを再訪したところ、天野博物館で仕事をすることになり、今日に至るペルー滞在が始まった。写真には、この写真家の仕事の歩みが記録されており、行間ならぬ「影間」には写真家の年輪が刻まれている。

 義井は昨年、ペルーで『乱反射する風景』という写真集(スペイン語版)を刊行した。百数十点の写真が詰まった濃厚な本だ。その中から選ばれた作品が今写真展で展示されている。

 写真展は8月2日まで続く。「さあどうぞ」と言うわけにいかない遠方だが、写真集を手にすればよろしかろう。日本語の説明冊子付きで日本でも販売されている。

 義井は日本で開催された多くのアンデス文明展の写真や、出土品搬出・搬入の交渉などを長年担当してきた功労者でもある。数々のアンデス文明展写真集を手掛けてきたが、ペルー日系人を特集した写真集も出している。

 毎年1~2度、渡り鳥のように日本にやって来る。NGOピースボートの船上講師でもある。