チリ司法当局は7月22日、ビクトル・ハラを拉致し殺害した容疑で元軍人11人を起訴することを決めた。「新しい歌」の旗頭で著名なカンタウトール(シンガー・ソングライター)だったハラは、軍事クーデター直後の1973年9月16日、サンティアゴ市内で拷問された後、体に銃弾44発を浴びせられて殺害された。
2度とギターを弾けないようにと、ハラの両手と指は銃尾で叩かれ、砕かれた。主犯格の元軍人は米国に逃亡中で、11人には含まれていない。
一方、1986年7月22日にサンティアゴ市内で写真家ら2人がガソリンをかけられ火をつけられた「焼き殺し事件」の容疑者として元陸軍士官・下士官計7人が起訴されることも決まった。
在米チレ人写真家ロドリゴ・ロハス(当時19)はピノチェー軍政下での民主化要求デモなどを取材するため滞在していた。女友だちで大学生だったカルメン・キンターナ(同18)と共に生きたまま焼かれ、プダウエル空港に近い道路の溝に放置された。
2人は助けを求め病院に収容されたが、ロハスは翌日死亡した。キンターナは重度のやけどを負いながら一命を取り留め社会復帰し、事件の証人になった。
司法当局は、事件の現場にいた兵役新兵の証言により、起訴にこぎつけた。軍部は長らく、「2人は事故で火傷を負った。軍は助けなかっただけだ」と関与を否定していた。新兵は「沈黙の掟」を破って証言していた。