2016年10月2日日曜日

コロンビアで内戦終結の是非を問う国民投票実施

 コロンビアで10月2日、内戦の終結を決定づける「和平最終合意」の承認の是非を問う国民投票が始まった。同日夜(日本時間3日午前中)に結果が判明する見通し。

 コロンビアでは1960年にゲリラ組織FARC(コロンビア革命軍、共産党武等部門)の前身組織が武闘を開始。政府軍の攻勢で後退を余儀なくされていたが、64年ごろから軍事的に対峙できるようになった。

 90年代にはFARCが軍事的に政府軍を圧倒。政府はクリントン政権期の米国に軍事支援強化拡大を要請。ブッシュ政権時に
ウリーベ・コロンビア極右政権との間で軍事協力関係が拡大深化、FARCは次第に劣勢になっていった。

 2012年8月、FARCはフィデル・カストロ前クーバ議長、故ウーゴ・チャベスVEN大統領の勧告を容れて和平交渉を受け入れた。交渉は同年11月、ハバナで始まった。

 クーバがFARC、ノルウェーがコロンビア政府のそれぞれ「保証国」、ベネスエラとチレがそれぞれの「同伴国」となって、交渉を側面支援した。とりわけクーバのラウール・カストロ議長の尽力が大きかった。

 クーバは2013年7月からオタワで米国と国交正常化を目指し秘密交渉を開始。コロンビア和平交渉と並行する形となった。玖米は14年12月、正常化合意に達し、15年7月、54年半ぶりに国交を再開した。

 コロンビア政府とFARCは15年9月ハバナで、和平後に内戦中の人道犯罪などを裁く法制で合意。さらに今年8月停戦合意に達し、両者の間での戦火は消えた。

 9月26日カルタヘーナ市でJMサントス大統領とFARCのティモチェンコ最高司令は和平最終合意書に署名。これを受けて国民投票が実施された。

 米州の東西冷戦は玖米国交再開で氷解。もう一つの冷戦構造だったコロンビア内戦が今、終わりつつある。コロンビアの第2のゲリラ組織・民族解放軍(ELN)と政府との和平交渉も近く開始される見通し。

ドイツ映画「アイヒマンを追え」を観る

 「ナチスが最も畏れた男」の副題は、ユダヤ人ながら西ドイツ時代のヘッセン州検事長になった実在の人物フリッツ・バウアー(1903~68)を指す。反ユダヤ人意識が根強く残る戦後の西独司法界で、政治的、思想的な敵たちに囲まれながら、頑固に一徹に、ナチ戦犯を追及し、ついにはアルヘンティーナに逃亡していたアドルフ・アイヒマンの所在を突き止める。

 バウアーは、イスラエルを2度訪れてモサドに会い、アイヒマン逮捕の手柄を譲る。アイヒマン裁判はドイツでという約束だったが、裁判はイスラエルで行なわれることになる。モサドは1960年5月アイヒマンをブエノスアイレス州で逮捕、アイヒマンはエルサレムでの裁判を経て、62年処刑された。

 日本人に興味深いのは、この映画から、戦後の西アデナウアー政権期ごろまでは、ドイツ人によるナチス断罪という有名な戦後処理がなされていなかったという事実である。「ドイツは日本と異なり、自ら戦犯を裁き、戦後処理を済ませた」などと言われるが、そうなるまでには苦難に満ちた道程があった。その過程をバウアーが象徴する。

 アイヒマンが偽名で亜国に入国したのは1950年7月だった。当時の亜国はフアン・ペロン将軍の政権期だった。ペロンはムッソリーニの協同翼賛体制に学び、これを亜国に取り入れていた。反米だったペロンは、枢軸国に敵対的態度をとらなかったペロンの時代だったから、アイヒマンらの入国が可能だった。だがアイヒマンの亜国での<安寧>は9年10カ月しか続かなかった。

 見応えのある作品だ。2017年1月、渋谷文化村のル・シネマ、 有楽町のヒューマントラストシネマで封切られる。2015年作、105分。
 

2016年10月1日土曜日

来月、第1回「フェスティバル・デ・ラティーノ・ロコ2016」開催

★11月18日(金)1800開場、1830開演。全労済開館地下1階:全労済ホール・スペースゼロ=東京都渋谷区代々木2-12-10=新宿駅南口から近い。会場問い合わせは、03-3375-8741。

▼出演者:サム・モレーノ率いる「マリアッチ・サムライ」、「バナナ・ボート」の浜村美智子、トリオ・ロス・ペペスほか。内容問い合わせ:日本ラテンアメリカ音楽振興会事務局、03-6277-0988。

▼入場料:前売り3500円、当日4000円。

★メヒコ短信  アヨツィナパ農村教員養成学校生43人強制失踪および市民6人殺害事件から9月26~27日で丸2年が過ぎた。事件は未解明のまま3年目に入った。

 この日、首都メヒコ市中心街のレフォルマ大通りの独立記念碑前から、大統領政庁(国家宮殿)のある憲法広場(ソカロ)までを事件被害者の家族、学友、教員、支援者ら1万人が行進、広場で政府への抗議集会を開いた。

★予告:LATINA11月号(10月20日発売)の伊高浩昭執筆「ラ米乱反射」第127回は、「アヨツィナパ事件2周年」の特集記事。