2018年6月30日土曜日

 ベネズエラで5月、軍事クーデター計画が失敗、軍人ら逮捕▼米誌ブルームバーグ・ビジネスウィークが報じる▼ボゴタで謀議、米コロンビア両政府は情報把握▼アレアサVEN外相がカリブ歴訪▼コロンビア次期大統領がポンペオ米国務長官と会談▼ドゥケは南米諸国にウナスール脱退を呼び掛け

 米週刊誌ブルームバーグバーグ・ビジネスウィークは6月28日、ベネズエラ大統領直前の5月半ば、クーデター計画が暴かれ、軍人ら約10人が逮捕された、と報じた。同計画および、その謀議に関与した複数の人物の証言を基に記事を書いたという。

 それによると、関与者はコロンビアの首都ボゴタで謀議した。米コロンビア両政府は謀議の事実を把握していたが、具体的支援は避けた。だが某米企業が資金などを援助したという。

 計画は「憲法作戦」(OC)と名付けられ、決行者は「OC」の腕章をしていた。だが、謀略部隊内に潜んでいたと見られる二重スパイによって政府に情報が流れ、関与者は摘発された。

 作戦の狙いは、カラカスの大統領政庁(ミラフローレス宮殿)および主要軍事基地を急襲、ニコラース・マドゥーロ大統領を逮捕、政権から排除して、裁判にかけること。

 別の情報によると、逮捕者には将軍、大佐、中尉、軍曹、文民女性らが含まれている。逮捕者の一部は軍事法廷で反逆罪で既に起訴されている。

 マドゥーロ大統領が最近、軍部に盛んに忠誠を求めているのは、このクーデター計画を制圧してからのことだ。2013年4月以来5年余りの施政中、最も危険な政変の陰謀だたっと、大統領が認識している証左と、同誌は指摘する。

 トランプ米政権は、その後、米軍および有志諸国軍によるベネズエラへの軍事侵攻でマドゥーロ体制を倒す方向に重点を置いている。
 マイク・ペンス副大統領の28日までのラ米3国歴訪、とりわけ伯赤両国訪問の狙いは、侵攻計画への賛意を取り付けるためと見られている。

▼ベネズエラ外相がカリブ諸国歴訪

 ホルヘ・アレアサ外相は6月26~27日、アンティグア&バーブーダ、セントルシーア、セントヴィンセント&グラナディーン、セントクリストファー&ネヴィスの4カ国を歴訪。
 それぞれの首相、ガストン・ブラウン、アレン・チャスターネット、ラルフ・ゴンサルヴェス、ティモシー・ハリスと会談し、カリブ石油連帯機構(ペトロカリーべ)による原油優遇輸出量削減への理解と、マドゥーロ政権支持を求めた。

▼コロンビア次期大統領が米国務長官と会談

 訪米中のイバン・ドゥケは6月29日ワシントンでマイク・ポンぺオ長官、ジーナ・ハスペルCIA長官と会談した。

 次いで、米州諸国機構(OEA)本部でルイス・アルマグロ事務総長と会談した。会談後、ドゥケは南米諸国にウナスール(南米諸国連合、本部キト)からの脱退を呼び掛けた。
 加盟12カ国のうち、伯パラグアイ亜智コロンビア秘6か国は既にウナスール関係の会合や行事への出席や参加を取り止めている。

 「米国の声」(VOA)放送は29日、ドヶケは、マドゥーロ大統領を国際刑事裁判所にかけるべきだと述べた、と伝えた。これはアルマグロが先に唱えた主張を受けたもの。

 一方、コロンビア政府は29日、政党FARCに対し、ドゥケ次期政権の移行チームとFARCとの会合を設定する意思を表明した。

 FARCは同日初めて、真実究明・共生・二度と再び委員会に出席した。FARC党首ロドリーゴ・ロンドーニョ(通称ティもチェンコ)が首席として姿を見せた。この委員会は、2016年の和平合意に基づき設置されている。

2018年6月29日金曜日

 モレーノ・エクアドール大統領がペンス米副大統領と会談▼ペンスの対ベネズエラ強硬路線に対し、モレーノは平和・民主的打開策を主張▼ラ米に流れる、米軍以下「有志軍」のベネズエラ軍事侵攻の観測▼ペンスはグアテマラ市で中米北部3国大統領と移民問題などで会談▼ニカラグア反政府勢力が不服従運動展開へ

 エクアドール(赤道国)のレニーン・モレーノ大統領は6月28日でキトで、来訪したマイク・ぺンス米副大統領と2時間会談した。

 会談後の記者会見でペンスは、「両国には10年間の困難な時期があったが今、新しい関係が始まった」と述べ、ラファエル・コレア前大統領(2007~17)とうまくいかなかった期間を振り返った。

 コレアは、内政干渉を理由に米大使を追放、太平洋岸のマンタにあった米軍基地を閉鎖した。昨年就任したモレーノはコレアの下で副大統領を務めた人物だが、コレアと袂を分かち、コレアの左翼外交路線を中道化してきた。

 先ごろ米州諸国機構(OEA)がベネズエラ追放を目指す決議を採択した際、赤道国はこの種の決議では初めて反対票(VEN支持)でなく棄権票を投じた。その直前、モレーノはペンスから電話で説得されていた。

 だがベネズエラ情勢に関しては、ペンスが「ベネズエラに民主回復を促すため、一層孤立させるための具体的行動が必要だ」と強硬路線を主張したのに対し、モレーノは「ベネズエラ人が平和的、民主的に解決を図るべきだ」と述べ、踏み留まった。

 ロンドンの赤大使館は2012年から、ウィキリークス創設者ジュリアン・アサンジ氏(豪州人)を亡命者として匿っているが、この問題について今回の赤米会談で話し合われたかどうかは明らかにされなかった。

 ペンスは、腐敗対策向け150万ドル、ベネズエラ難民支援向け200ドルの供与を発表した。赤国内にはVEN難民15万人がいる。

 モレーノは、赤産生花とマグロに対する輸入関税をなくすようペンスに要請した。昨年の対米輸出は60億ドル、輸入は45億ドルだった。モレーノは、コレア前政権が跳ね付けていた対米自由貿易協定(TLC・FTA)交渉に入る構えだ。

 ペンスは28日、グアテマラ市に到着。同地で対米移住問題、麻薬取締などについて、グアテマラ、ホンジュラス、エル・サルバドール(ES)の「中米北部三角形」3国大統領と会談した。

 会談後の合同記者会見で、ペンスは「腐敗、経済の脆弱性、暴力が中米危機の理由だ」とし、「我々の共同努力は実を結びつつあるが、国境の南側が一層努力すべきだ」と強調。中米3カ国に問題解決へのさらなる努力を促した。

 これに対し、サルバドール・サンチェス=セレーンES大統領は、自助努力をしてきたこと、国際協調が一層必要なことを説いた。ペンスはラ米3国歴訪を終え、帰国の途に就いた。
 

 ペンスは今回のラ米3国歴訪開始に際し、「合法入国でなければ米国に来るな」と同中米3国向けメッセージを発している。

 一方、ブラジルでは26日のミシェル・テメル伯大統領とペンスとの会談で、「ペンスはテメルをあたかも自分の補佐官のように扱った」と、ペンスの傲慢さとテメルの卑屈さを非難する論評が出ている。

 2人は記者会見で「ベネズエラ民主化」に触れ、ペンスは「VENに自由が復活するだろう」と述べた。しかし会談でペンスは、テメルにベネズエラにもっと厳しく当たれと要求していたという。

 ニコラース・マドゥーロVEN大統領は28日、「ペンスは失敗した。ボリバリアーナ革命は困難に対し毎時強くなっている」と表明した。

 ラ米の一部専門家の間では、トランプ米政権は米軍主導、伯亜秘コロンビア巴のラ米5カ国軍が参加するOEA有志国軍でベネズエラに軍事侵攻する計画の根回し工作中、との観測が流れている。

 コロンビアのイバン・ドゥケ次期大統領は28日,ワシントンで共和党の対ラ米外交政策の中心的存在であるキューバ系右翼マリオ・ルビオ上院議員と会談。次いで大統領安保担当補佐官ジョン・ボルトンと会談いた。
 テーマはいずれもベネズエラ情勢。ドゥケは右翼。ルビオ、ボルトンともに右翼で、軍事侵攻支持派だ。

▼ニカラグア反政府勢力が不服従運動呼び掛け

 オルテガ政権打倒を狙う反政府勢力は6月28日、政府当局の命令や決定に従わない運動を実行するよう全国に向け呼び掛けた。30日には大規模な抗議行進を計画している。

2018年6月28日木曜日

 ウルグアイで「大麻入りマテ草」販売へ▼ニカラグア政府が反政府側をクーデター画策と非難▼英国がアルゼンチン軍への兵器部品輸出再開▼コロンビア次期政権はFARC幹部を政界から排除する方針▼エル・サルバドール前大統領を公金横領で国際手配▼ペンス米副大統領がブラジル訪問▼アムロ候補がアステカ・サッカー場で選挙戦締め括る

 ウルグアイで7月から「大麻入りマテ茶」が販売される。保健相が許可した。「コセンティーナ」、「ラ・アブエリータ」の2つの銘柄を販売する業者が6月27日、モンテビデーオで明らかにした。

 「精神的影響はない」という。マテ草と大麻を煎じ湯を混ぜて飲む。普通のマテ草同様、誰でも自由に買える。マテ茶は南米南部で広く愛飲されている伝統茶。チェ・ゲバラも好んだ。

▼ニカラグア政府が「政変画策」と非難

 反政府勢力との対話に政府代表として出席しているデニス・モンカーダ外相は6月27日、「反政府勢力はオルテガ政権を街頭行動で排除しようと違憲行動を続けてきた。国際支援を受けた集団が加担している」と非難した。

 政府側が「事実上のクーデター」の陰謀と明確に表明したのは、4月18日に反政府行動が始まって以来、初めて。

▼英国がアルゼンチンへの兵器部品輸出を再開

 英政府はこのほど、亜国軍への兵器部品輸出再開を決めた。ペロン主義左翼政権だった2012年に関係が悪化、輸出は停止されてきた。

 輸出が再開される部品は、亜国海軍のミサイル搭載駆逐艦、空軍などのパンパ航空機の部品が主になる。

▼コロンビア次期政権派がFARC幹部排除方針を表明

 右翼のイバン・ドゥケ次期大統領派は6月27日、次期国会に、元ゲリラ組織FARCの幹部の参政権を剥奪する改憲案を提出する、と明らかにした。
 ゲリラ時代に人道犯罪に関与した幹部たちが対象という。国会は7月20日開会する。

▼エル・サルバドール(EL)前大統領を国際手配

 EL法廷は6月27日、3億5100万ドルの公金横領容疑でマウリシオ・フネス前大統領と他の14人を国際手配したと明らかにした。14人にはフネス夫人と息子2人が含まれている。フネス一家は2016年にニカラグアに亡命、マナグアに住んでいる。

▼ペンス米副大統領がブラジル訪問

 マイク・ペンスは6月26日ブラジリアで、ミシェル・テメル大統領とベネズエラ情勢を中心に会談した。ペンスは、ベネズエラ軍事侵攻への伯政府の同意を得たいところだが、伯外相が既に「平和解決」方針を強調、軍事路線への反対意志を表明している。

 ペンスは27日、アマゾニアの中心地マナウス市で、ベネズエラ人難民収容所を視察、式年所を表明。その後、エクアドールの首都キトに到着した。

 一方、ベネズエラのニコラース・マドゥ―ロ大統領は27日、「ペンスは毒蛇だ。欧州連合は米政府に跪いている」と非難した。

▼アムロ候補がアステカ競技場で選挙戦を終える

 3日後に迫っているメキシコ大統領選挙の最有力候補AMLOは6月27日、メキシコ市にある世界最大級のアステカ・サッカー競技場で、選挙戦を締めくくった。

 アムロ候補は演説で、「街に安心して出られる国にしたい。命が価値を持つ国に戻したい」と述べ、「麻薬戦争」などで極度に悪化している社会状況の改革方針を表明した。

 また、「国境の壁を越えずに夢を実現できる国にしたい」と強調。米国に出稼ぎに行かなくても暮らせるような経済条件を整える政策を優先させる姿勢を表した。

2018年6月27日水曜日

 ベネズエラ人ジャーナリスト1328人が過去8年間に出国と新聞労組発表▼用紙が買えず発行停止に追い込まれる地方紙も続出▼アルゼンチン国営通信TELAMが大量馘首▼メキシコ大統領選挙はアムロ優位変わらず

 ベネズエラ新聞全国労組(SNTP)は6月26日、2012年以来、記者、テレビ記者らジャーナリスト計1328人が出国した、と明らかにした。

 また、活字メディア15、電子メディア4、TV施設1が、新聞用紙不足など原材料入手困難により影響を受けた。用紙は、用紙販売会社が売るのを拒否したためという。同労組は、背後に当局の圧力があったとしている。

 地方紙も影響を受けている。8紙が用紙を買えないため発行を停止した。4紙は週末版発行を止めた。2紙は、日刊から週刊に切り替えるのを余儀なくされた。

 SNTPによれば、今年既にメディアへの侵害事件が113件起きている。うち87件では労組員24人が逮捕された。ジャーナリストへの侵害は61件起きた。いずれも当局絡みという。

▼アルゼンチン国営通信社TELAMが従業員馘首

 TELAMは6月26日、記者職を含む従業員354人を馘首したと発表した。政府は財政難のため、経費削減政策を進めている。

 2003年の同通信社の従業員は479人だったが、15年末にマクリ現政権発足が決まると、発足直前に従業員は水増し雇用され926人に、ほぼ倍増した。政権を離れるペロン主義勢力が自派要員に職を与えたのだ。だが記者職に採用された者の多くは、未経験者、無能力者だったという。

 TELAM幹部は、通信社を真のジャーナリズム機関として生まれ変わらせるために荒療治もやむをえない、との立場だ。

▼メキシコ大統領選挙:アムロ候補が優位維持

 6月26日公表のバレラ社調査では、MORENAのAMLO(ロペス=オブラドール)49%、PANのリカルド・アナヤ28%、PRIのホセ・メアデ19%、無所属ハイメ・ロドリゲス4%。アムロ候補が圧倒的優位を保っている。

 7月1日実施の選挙では、正副大統領、上院議員128人、下院議員500人、首都メキシコ市長、8州知事を選ぶ。同市長および知事選でもMORENAが優位に立っている。 

2018年6月26日火曜日

 ニカラグア対話再開:オルテガ大統領が繰り上げ選挙を受け入れるか否かが焦点▼ペンス米副大統領がブラジル、エクアドール、グアテマラ歴訪へ▼ペルー人口は3100万人▼メキシコ大統領選挙はアムロ優位▼エクアドール記者の遺体特定▼EUがベネズエラ高官に入域を禁止▼ピノチェー将軍の公金横領内容特定さる

 ニカラグア政府と反政府勢力の間で起きている流血の紛争解決のための対話は6月25日、司教会議(CEN)の仲介で再開した。司教会議はダニエル・オルテガ大統領に対し、2021年実施予定の次期大統領選挙を来年3月末に繰り上げ実施するよう提案しており、この問題が中心議題となる。

 オルテガ大統領は、この提案を7日に受けた際、「考える時間が欲しい」と答え、その後、回答していない。このためCENは23日、大統領に19年3月選挙を受け入れるよう公式に表明するよう求めた。

 対話は、検証・治安、選挙、司法の3部会に分かれて開かれている。政府側はデニス・モンカーダ外相が首席代表。対話に参加する米州人権委員会(CIDH)と国連人権高等弁務官事務所の代表らは24日マナグア入りした。

 4月18日以来の反政府側の抗議行動開始以来、死傷者多数が出ているが、CIDHはその殺傷責任者特定を担当している。設置された「ニカラグア検証特別機関」(MESEN)に参加し活動する。

 オルテガは現在、連続3期政権にあり、22年からの4期目には妻で副大統領のロサリオ・ムリージョを後継者にしようと目論んでいた。その構想も崩れようとしている。

 対話の選挙部会は、選挙法改正で現職正副大統領の次期大統領選挙出馬を阻止しようとしているからだ。オルテガが繰り上げ選挙を認めれば、反政府側に勢いがつき、選挙法改正が成立する公算が大きくなる。

 依然厚いオルテガ支持層は4月以来の反政府活動と仲介対話を、米国が反政府勢力の背後で操る「時間をかけたクーデター」と見なし、非難している。ベネズエラで繰り返し展開されてきたグアリンバ(政治的街頭武力)の焼き直しと見ているのだ。

▼米副大統領がラ米歴訪へ

 マイク・ペンス副大統領は6月26日からブラジル、エクアドール、グアテマラを歴訪する。ペンスのラ米訪問は3度目となる。

 ブラジリアでミシェル・テメル伯大統領とベネズエラ情勢を中心に会談する。伯マラニョン州のアルカンタラ基地を、米航空宇宙局(NASA)の衛星打ち上げ基地として使用するための話し合いもする。

 ペンスはブラジリアからマナウス市に移動、同市内にあるベネズエラ人難民収容所を視察する。ブラジルには同難民5万人がいるとされる。その後、キトに行く。

▼ペルー人口は3100万人

 秘統計庁は6月25日、人口は3123万7000人と発表した。昨年10月、国勢調査が実施された。

▼メキシコ大統領選挙支持率はアムロ優位続く

 ミトフスキ社調査では、ARENA候補アムロ(ロペス=オブラドール)37・7%、前政権党PANのリカルド・アナヤ20%、政権党PRIのホセ・メアデ17・7%、無所属ハイメ・ロドリゲス3・1%。残る21・5%は未定・棄権・白票。

▼エクアドール取材班の遺体確認

 コロンビア検察庁は6月25日、ナリーニョ州内で21日発見された男性3人の遺体は、エクアドール紙エル・コメルシオ取材班員と特定した、と発表した。遺体は、カリ市で司法解剖に付されていた。

 3人は3月下旬、コロンビア国境のエスメラルダ県取材中にコロンビアゲリラの残党に拉致され殺害された。ハビエル・オルテガ記者、パウール・リバス写真記者、エフラーン・セガ―ラ運転手の3人。遺体は直ちにエクアドールに空輸される。

▼欧州連合(EU)がべネズエラ高官に制裁発動

 EUは6月25日、デルシー・ロドリゲス副大統領、タレク・アルアサミ前副大統領ら11人にEU入域を禁止し、EU域内にある資産を凍結した。
 ベネズエラ政府は「内政干渉」と反駁した。VEN国内にはEU人60万人が居住している。米加巴3国は既にVENに制裁中。

▼チリ最高裁がピノチェーの公金横領内容を特定

 最高裁は6月25日、故アウグスト・ピノチェー将軍の資産2100万ドルのうちの不正蓄財部分に含まれる730万ドルを特定したと発表した。不動産、銀行預金、乗用車など。14年間の調査の末にたどり着いた。他に600万ドルが特定されている。

 計1330万ドルは公金横領による。最高裁はピノチェーの遺族に返還を命じている。返還をめぐり遺族および、ヴァージン諸島の金融機関との係争のもある。不正蓄財はほかに約400万ドルある。
 
 

2018年6月25日月曜日

 ベネズエラ副大統領がトランプ米大統領との「対話の用意」を表明▼マドゥーロ大統領は国軍に団結と忠誠を求める▼メキシコ大統領選まで1週間、アムロ候補が優勢▼アルゼンチン司教らがマクリ大統領に貧者救済を要請▼キューバ人口が減少

 ベネズエラのデルシー・ロドリゲス執権副大統領は6月24日、ジャーナリスト、ホセ=ビセンテ・ランヘ―ルの日曜TV番組に出演、ランへ―ルとの質疑で、「もしドナルド・トランプ米大統領と会う機会があれば、ベネズエラ政府は敬意を払い合える対話を持つ用意がある」述べた。また、他の諸国とも対話する用意があると語った。

 同番組が公表した最新の世論調査結果では、ベネズエラ内政問題への外国介入に回答者の76%が反対した。73%は、米政府による経済制裁を糾弾した。

 ニコラ―ス・マドゥーロ大統領(国軍最高司令官)は24日、シモン・ボリーバル麾下の解放軍がスペイン植民地軍を破った「カラボボの戦い」の197回記念日(VEN陸軍創立記念日)に際し、カラボボ州内の縁の地でブラディミール・パドリーノ国防相ら国軍高官らと、国軍兵士1万5000人の行進を観閲。その折の演説で、「隊列を整え、裏切者と寡頭勢力との戦いに備えよ」と号令をかけ、忠誠を求めた。

 大統領は、「コロンビアには、VEN国軍(FANB)を分裂させ対立させようと画策する勢力がある。だがボゴタからの裏切りを求める歌に騙される者はいない」と続けた。

 マドゥ―ロは大統領選挙で再選を果たした直後の5月24日、制憲議会(ANC)での宣誓式でも、「我々は、規律ある、文民統制に従う、祖国・憲法・人民・最高司令官(大統領)に忠実な団結した国軍を必要とする」と述べ、忠誠を求めている。

 反政府系NGO「ベネズエラの正義」は、国軍要員約150人が政治的理由で拘禁されていると主張している。大統領が繰り返し忠誠を求めるのは、国軍内の造反勢力を抑え込む必要性が依然あることを示唆している。

 一方、故ウーゴ・チャベス前大統領の側近の一人で、石油相兼国営石油(PDVSA)社長、外相、国連大使などを歴任後、マドゥーロ大統領に左遷されたラファエル・ラミーレス氏は24日、アポレア電子紙に長文の主張を寄稿、大統領と側近らをこてんぱんに扱き下ろした。

▼メキシコ大統領選挙支持率でAMLOが優勢維持

 7月1日の選挙1週間前の6月24日、公表された支持率はARENA候補ロペス=オブラドールが48・1%で抜きん出た1位だった。
 2位はPANのアナヤ25・5%、3位は政権党PRIのメアデ22・5%。他の1人は泡沫的存在。この国の大統領選挙には決選制度はなく、1位得票者が当選する。

▼亜国社会派司教会議(CEPAS)が大統領に要請

 CEPASは6月24日、マウリシオ・マクリ亜国大統領に、経済調整が貧者の犠牲の下に実施されてはならないと申し入れた。また、「何百万人もが貧困に喘いでいる」と指摘、民主的な経済政策で対外債務返済と貧困救済を果たすべきだと訴えた。

 マクリ政権は、新自由主義の手法である経済開放政策を2年半とり続けてきたが、通貨ペソが暴落。このほどIMFから500億ドルの融資約束を取り付けた。

▼キューバ人口が減少

 玖統計・情報庁(ONEI)ONEIによれば、2017年の人口は1122万人で、前年比1万8000人減少となった。同年の出生は11万5000人、死者10万7000人、出国者2万6000人だった。  

2018年6月24日日曜日

 国連人権高等弁務官事務所がベネズエラ人権状況の報告を公表▼ベネズエラ政府は「信憑性がない」と一蹴▼専門家は「弁務官事務所は対VEN糾弾の意図持つ」と批判▼チリ最高裁がピノチェー遺族に公金返還を命令

 国連人権高等弁務官事務所は6月22日、「ベネズエラにおける人権蹂躙ー終わりなきような下降循環」と題する報告書を発表。「治安部隊による殺人、略式処刑、抗議運動過剰規制、拷問、不法逮捕があった」として、国際刑事裁判所による調査の必要性を指摘した。

 同事務所は、VEN入国が許されないため、VEN国外でVEN人150人への事情聴取含む情報や資料を編集し、報告をまとめたと明らかにしている。

 これに対しベネズエラ外務省は同日、声明を発表。「信憑性がない。この種の機関に必要な客観性、公正、非恣意性に欠けている点で技術的厳しさもなく、高度に疑わしい」と、報告内容を糾弾した。

 サイド・ラアド・アルフセイン高等弁務官にありがちな制度性への過小評価がある、とも批判。「同弁務官は、過去数か月間、諸外国政府がベネズエラに科してきた経済制裁がVEN人民の経済・社会・文化的享受権を一方的に妨げる否定的影響を及ぼしている事実に触れていない。彼は、進行中の多面的な反VEN侵害の共犯者だ」と扱き下ろした。

 外務省声明はまた、「政府が提出した情報は悉く無視された」とし、メディアの虚偽報道に沿ったでっちげと非難した。

 ジュネーブの国連人権理事会に関与する専門家アルフレド・デサヤス氏も「信憑性と客観性に欠ける」と報告内容を批判した。

 同氏は2017年にベネズエラを訪問、4~6月、カラカスをはじめ同国各地で起きた反政府勢力によるグアリンバ(政治的街頭暴力)について調査、報告書をまとめた。反政府側に起因する殺人が124件起きていたことなどが記されている。

 デサヤス氏は、私の報告は無視されたと前置きし、「高等弁務官事務所や反ベネズエラの諸NGOは、私がVEN政府と<人道危機>を糾弾するのを望んでいた」と非難した。

 一方、スペイン政府は22日、VEN国営石油(PDVSA)の元保安・損害予防局長ラファエル・レイテル容疑者の身柄を米国に引き渡すことを決めた。
 同容疑者は、「組織犯罪関与と資金洗浄」で米当局から指名手配されている。米国内での不動産取引も絡んでいるという。

▼チリ最高裁がピノチェー遺族に510万ドル返還命令

 チリの独裁者だった故アウグスト・ピノチェー軍政大統領は、側近らとともに6400万ドルの公金を横領。その約3分の1弱はピノチェーの個人資産となっていた。

 同個人資産2100万ドルのうち1780万ドルは「不当な収入」とされ、その一部510万ドルの国庫への返還が命じられた。ピノチェーと側近らは、米リグ銀行などに計125の隠し口座を持っていたという。

 ピノチェー陸軍司令官らが決行した1973年9月11日の軍事クーデターから45年になる。この政変後、反軍政市民ら3200人が殺された。

2018年6月23日土曜日

 ブラジル最高裁がルーラ元大統領の釈放要請を却下▼ホセ・ムヒーカ氏がルーラに面会、釈放を訴える▼インド大統領がキューバ訪問▼米副大統領がコロンビア次期大統領と会談、ベネズエラへの内政干渉政策促進で合意▼米州人権委員会がニカラグア報告提出

 ブラジル最高裁のエジソン・ファシーン判事は6月22日、汚職事件で拘禁中のルイス=イナシオ・ルーラ=ダ・シルヴァ元大統領の釈放要請を却下した。最高裁はルーラの
案件で最終審理し、判決を下す。
 ルーラはパラナ州都クリチーバの警察本部拘置所に拘禁されている。10月の大統領選挙に出馬する方針で、支持率1位を維持している。最高裁判決で有罪が確定すれば、極右の新人候補に当選の可能性が開ける。

 ウルグアイのホセ・ムヒーカ前大統領は21日、ルーラに面会した。その直後の記者会見で、「ルーラはブラジルとラ米の将来をとても憂慮していた。ブラジルが良くなればラ米も良くなり、ブラジルが悪くなればラ米もそうなる」と述べた。
 この発言は、極右候補の躍進をルーラとムヒーカが強く懸念していることを物語る。

 ルーラは、ルーラが所属する労働者党(PT)のグレイジ・ホフマン党首と共にルーラに会った。記者団に、ルーラ釈放を願うと述べた。

▼インド大統領がキューバ訪問

 ラムナス・ゴヴィンド大統領は6月21日、サンティアゴに到着、フィデル・カストロ前議長の墓地に参拝した。22日にはハバナでミゲル・ディアスカネル議長と会談、帰国の途に就いた。

▼米副大統領がコロンビア次期大統領と会談

 マイク・ペンス副大統領は6月22日、ワシントンでイバン・ドゥケ次期大統領と会談、「ベネズエラの民主回復促進」で合意した。米国に伝統的なラ米での内政干渉政策にコロンビアが本格的に関与してゆくことになる。

 一方、米下院議員3人はこのほど、FARCとの和平合意見直しを主張しているドゥケに対し文書で、和平強引順守を求めた。

▼米州人権委員会(CIDH)がニカラグア情勢で報告

 米州諸国機構(OEA)機関であるCIDHは6月22日、ワシントンのOEA本部でのOEA大使会議の場で、4月18日から今月19日までの期間に、一連の反政府行動、および政府側の規制行動の過程で死者212人、負傷者1337人が出ていると報告した。今月6日現在の拘禁者は507人という。
 報告は、政府側による人権侵害の可能性を指摘した。

 これに対し、会議に出席したニカラグアのデニス・モンカーダ外相は、「CIDH調査は本質的部分が欠けており、これを最終調査報告として受け入れることはできない」とはねつけた。同外相はまた、「ニカラグア政府の平和、対話、民主の基本姿勢」を強調した。 

2018年6月22日金曜日

  スペイン国王がトランプ大統領に「ベネズエラ民主回復」で協力呼びかけ▼内政干渉にベネズエラの実力者が反駁▼野党指導者ファルコンが新しい政党連合結成▼VEN原油輸出落ちる▼キューバ議長が聖母参拝

 訪米中のスペイン国王フェリーぺ6世がベネズエラへの内政干渉発言をし、物議を醸している。
 国王は6月20日、ホワイトハウスにドナルド・トランプ大統領を表敬し会談。「西米両国には協力し合える分野がたくさんある。ベネズエラの民主回復に努めるのは重要な仕事になる」と述べた。

 トランプは、ニコラース・マドゥーロVEN大統領排除の旗頭であり、これを踏まえて国王が「協力」を持ち掛けたのは疑いない。だがトランプは、国王に直接的な返答はしなかったもよう。

 国王は、メキシコの版図が最大だったヌエバ・エスパーニャ副王領時代に、テハス地方(現・米テキサス州)にスペイン人が築いたサンアントニオ市の建都300年記念式典に出席、その後、ワシントンを訪れた。

 国王発言に対し、ベネズエラ制憲議会のディオスダード・カベ―ジョ議長はすぐさま反駁。「ベネズエラにはスペインの100万倍もの民主がある。真の参加型人民主権がある」と強調した。

 さらに、「生涯に一度も選挙の洗礼を受けないのが国王だ」と揶揄。フェリーペ国王を「エル・ティポ(奴)」と呼んだ。カベ―ジョはマドゥーロ大統領に次ぐ実力者。

 一方、5月20日のVEN大統領選挙で善戦した野党指導者ヘンリー・ファルコンは21日カラカスで、新しい政党連合「変化のための協和」を設立した。
 ファルコンは、旧来の保守・右翼野党連合MUDについて、「MUDが私から離れていった」と述べた。MUDは大統領選挙をボイコットし、出馬したファルコンと袂を分かった。

 国営石油PDVSAによれば、6月前半のVEN原油輸出は日量76万5000バレルだった。5月の平均輸出日量113万3000バレルから32%減っている。

 VEN政府は19日、政治的暴力などで収監されていた服役囚17人を新たに釈放した。

▼キューバ議長が聖母コブレに参る

 ミゲル・ディアスカネル国家評議会議長は6月20日、東部のサンティアゴ市郊外にある聖堂に安置されている聖母像に参拝した。

 カストロ兄弟との「作風の違い」を内外に印象付け、支持基盤拡大を目指す方策の一環。無論、ラウール・カストロ共産党第1書記と打ち合わせた上でのことだ。

2018年6月21日木曜日

 グアテマラ大統領が性的虐待で告発さる▼被害女性が告発事実を確認へ▼ダンテ・カプート元アルゼンチン外相死去▼メキシコの日本大使館が在留邦人に勧告

 フエゴ火山の大爆発で災害非常事態下にあるグアテマラのジミー・モラレス大統領が、女性への性的虐待で告発されている。被害者の女性は5月前半、検察庁に告発したが、同庁が「告発状を受理していない」と表明しているため、近日中に告発を確認するという。同国のプレンサ・リブレ紙が6月20日報じた。

 これに先立ち同国のエル・ペリオディコ紙は18日、エドガル・グティエレス元外相執筆の「最悪の大統領」と題する論評記事を掲載。喜劇役者出身のモラレスを「政治政策を持たずに就任した」と扱き下ろし、「モラレスは複数の若い女性への性的虐待に関与した」旨を暴露した。同紙は19日には、関連する論評記事を掲げた。

 プレンサ・リブレ紙によると、告発した女性は生命の危険を感じているが、数日内に告発した事実を確認する。証拠と証人証言を用意しているという。

 これに対し政府は20日、一連の報道内容を否定した。モラレスは大統領候補だった2015年、別の女性から「性的侵害、致傷、脅迫、暴力」で告発されていた。モラレスはその時は「ある政治勢力が取った絶望的な手法だ」とはねつけた。

 大統領は5月には、友人が経営する安全保障会社が支払うべき脱税への罰金750万Q(ケッツァール)の95%を棒引きし、非難された。

 また5月16日、在イスラエル大使館をテルアビブからエルサレムに移した際、モラレスは現地での式典に出席したが、その折の大統領および随行団の往復旅費などは、ラス・ベガスでホテルやカジノを経営しているシェルドン・アデルソンという人物が負担した。

 これは大統領に同行したサンドラ・ホベル外相が明らかにしている。大使館移転と引き換えに外資20億ドルがグアテマラに投下されることが約束されており、アデルソンは投資家の一人だという。

▼ダンテ・カプート元アルゼンチン外相死去

 6月20日、ブエノスアイレスで死去、74歳だった。
 1983年、民政移管を受けて発足したアルフォンシン政権で外相を務め、ローマ法王ヨハネ=パウロ2世の仲裁で、ピノチェー智軍政とのビーグル水道領有権紛争の解決に動き、両国間の平和友好条約調印に漕ぎ着けた。

▼メキシコの日本大使館が在留邦人に勧告

 日本大使館は6月19日、在留邦人向けに、7月1日の大統領選挙を含む総選挙を前に、投票日から数日間、外出に注意するよう勧告した。日本外務省の指令に基づく。

 国会議員、市長などの候補や関係者が計114人も殺害され、政治家や家族への脅迫が続いている事実を指摘。情報を把握し慎重に行動するよう促している。

 ドイツ政府は5月、ドイツ人にメキシコ渡航を控えるよう警告している。今回の日本外務省の勧告は渡航抑制ではない。 

2018年6月20日水曜日

 サッカーW杯:初戦に敗れたコロンビアが悲観に陥る▼一転して、日本の「正当な勝利」讃える▼早くも監督交代説▼場外で不祥事、日本女性が気付かずに馬鹿にされる▼ベネズエラ制憲議会議長決まる▼グアテマラ火山麓は墓地化か

 W杯H組初戦で日本に敗れたコロンビアでは悲観的な論調が充満している。6月19日の各紙電子版は一斉に「敗北の悲劇」を伝えている。

 エル・エラルド紙は、「ロシア2018の悲しい初戦」と題して報道。試合開始3分後のカルロス・サンチェスの赤札一発退場について、「1986年メキシコ大会でのウルグアイ選手ホセ・バティスタの開始後52秒の退場に次ぐW杯史上2番目の早さだった」と指摘した。
 さらに、「コロンビアは日本の鉄壁の守備陣によって、動くべき空間を封じられた」と評した。

 エル・エスペクタドール紙は、「H組で最もつつましい存在と見られていた日本は正当な勝利者として競技場を後にした 」と日本チームを讃えた。

 「コロンビア:悪い発進」の見出しを掲げたAS紙は、「日本は相手が1人減った後、秩序を保ち、驚愕したコロンビアの空間を封じてしまった」と、これまた日本を評価した。

 エル・ティエンポ紙は、サランスクの競技場で観戦したハメス・ロドリゲスの娘サロメ―が試合後、母親ダニエーラと抱き合って泣いていた、と写真付きで報じている。衝撃的敗北を象徴する場面として捉えたようだ。

 当のハメスは、「顔を上げ、忍耐をもって、次の試合に希望を託そう」と表明。ラダメ・ファルカオも、「敗戦は悲しいが、この逆境を好機に変えよう。対ポーランド戦は命がけで戦う」と決意を表した。

 コロンビアのホセ・ポケルマン監督への批判も渦巻いている。「引き分けを狙っていたさなかに決勝ゴールを決められてしまった」という見方が多い。
 采配の誤りは、クアドラードとキンテーロを交代させたことと、不調のハイメを出場させたこと。この批判も多い。

 監督自身、「サンチェス退場後、試合の進め方が複雑になった」と述べ、「コロンビアの決勝リーグへの展望を日本が暗くした」と本音を吐いた。

 「大会終了後、監督が交代する可能性がある。ドイツ相手にメキシコを勝たせたフアン=カルロス・オソリオ監督(コロンビア人)が有力な選択肢だ」ーこうした観測が早くも 各紙誌面を賑わわせている。

 一方、サランスクの競技場外でも問題が起きていた。コロンビア人の男性サポーターが禁じられている酒を観客席に持ち込んで飲んでいる映像が公開され、ロシア当局は調査するもよう。
 コロンビア外務省もこの問題を把握、懸念を表明している。

 また試合後、観客席でごみを片付けていた日本の若い女性サポーター数人に、コロンビア人男性サポーター2人が、スペイン語で「私は雌犬だ。どこにでも行く売春婦だ」と言わせた映像が公開され、問題になっている。
 「これが問題の<2人のスペイン語教師>だ」と、同男性2人を糾弾する記事も出ている。「日本人女性が西語を理解しないのをいいことに卑猥な言葉を押し付けた」と厳しい。

 あるコロンビア人女性は、「いったいどんな種類のコロンビア人がロシアに行っているのだろう。恥ずかしい。すべての日本人女性と世界の女性にお詫びしたい」とSNSで発信している。

▼ベネズエラ制憲議会新議長決まる

 制憲議会(ANC)新議長に6月19日、ディオスダード・カベ―ジョ元国会議長が選出された。デルシー・ロドリゲス(前)議長がこのほど執権副大統領に転出したため、後任選びが進められていた。

 カベ―ジョは、マドゥーロ政権の政権党PSUV(ベネズエラ統一社会党)の副党首。元陸軍中尉で、故ウーゴ・チャベス前大統領の側近だった。陸軍中佐だったチャベスが空挺、戦車部隊を率いて1992年に起こしたクーデター未遂事件にも参加した。

▼グアテマラ火山の麓一帯は墓地化か

 フエゴ火山の大爆発で厚い火山灰に覆われた麓一帯は、埋没した住民の遺体や家屋を発掘しないまま、広大な墓地(カンポ・サント)になるもよう。当局者が6月19日明らかにした。
 6月初めからの爆発で、171万人が被災、1万3000人が家屋を失った。110人が死亡、197人が行方不明となっている。

2018年6月19日火曜日

 メルコスールがアスンシオンで首脳会議▼欧州連合(EU)など他の経済ブロックとの経済合意問題を討議▼中国との経済関係促進も▼ベネズエラ情勢に関する特別声明を採択▼国連がプエルト・リコ独立を米国に求める決議を採択

 南部共同市場(メルコスール)は6月18日、アスンシオンで定例首脳会議を開催。議長のパラグアイ大統領オラシオ・カルテスは、海岸線のない同国の内陸国性に鑑み優遇措置を受けられるよう、他の3国に要請した。
 カルテスは任期満了で8月退陣するため、最後の首脳会議となった。

 会議にはカルテスの他、ウルグアイのタバレー・バスケス、ブラジルのミシェル・テメルの両大統領、アルゼンチンのガブリエーラ・ミケッティ副大統領が出席した。マウリシオ・マクリ亜国大統領は通貨ペソ下落など経済問題への対応に終われ、欠席した。
 ベネズエラも加盟国だが、「民主秩序の欠如」を理由に資格停止処分中。

 会議では、欧州連合(EU)をはじめ他の経済ブロックとの協定締結問題とベネズエラ政情が主に話し合われた。EUとの協定は大幅に遅れている。
 向こう半年間の議長となったバスケス・ウルグアイ大統領は、中国との経済合意促進を表明した。

 会議は、「ベネズエラ情勢への深い懸念」「ベネズエラ人難民問題の軽減措置の必要性」などを盛り込んだ特別声明を採択して閉会した。

▼国連がプエルト・リコ自決決議を採択

 国連非植民地化特別委員会は6月18日、米植民地プエルト・リコの民族自決と独立の権利を認め、それを受け入れるよう米政府に要求する決議案を可決した。

 決議案はキューバ、ニカラグア、ベネズエラ、エクアドール、ロシア、シリアの6カ国が共同提案した。同じ決議が過去に何度もなされているが、米国は無視してきた。

 スペイン領だったプエルト・リコは1898年以来、米国の植民地にされてきた。米政府は「米国との自由連合国家」化を徐々に進めようとしているが、国連委決議は、独立を求めている。

 プエルト・リコは「豊かな港」を意味。コスタ・リカ(豊かな海岸)同様、その昔、金銀財宝を探しに来たスペイン人が命名した。

2018年6月18日月曜日

 コロンビア次期大統領に右翼政党候補イバン・ドゥケ▼決選で左翼候補グスタボ・ペトロを下す▼FARCは和平合意改悪は内戦再開を招くと警告、対話を求める▼ベネズエラ外務省がニカラグア情勢で声明発表

 コロンビア大統領選挙決選は6月17日実施され、野党「民主中央」のイバン・ドゥケ候補(42)が当選した。予想通りの結果だった。8月7日就任する。

 極右のアルバロ・ウリーベ前大統領が率いる同党は、サントス現政権が2016年11月に到達したゲリラ組織FARC(コロンビア革命軍)との和平合意に強く反対していた。ドゥケは当確後、記者団を前に「和平合意を修正する」と言明した。

 これに対し、政党化したFARC(人民革命代替勢力 )の最高指導者ティモチェンコことロドリーゴ・ロンドーニョは記者会見で、「次期大統領に思慮分別を求める」と表明。合意が改悪されればコロンビアは再び政治暴力の巷に陥るだけだ、と警告した。
 さらに次期大統領に会って話し合う用意があると強調した。

 対抗馬の左翼・中道左翼・進歩主義路線の「人間的コロンビア運動」のグスタボ・ペトロ候補は善戦したが、及ばなかった。

 選管発表では、開票率93%段階での得票率は、ドゥケ54・28%(1031万票)、ペトロ41・54%(800万票)。投票率は44・35%。

 第1回投票は5月27日実施され、候補者5人が出馬、ドゥケ39%、ペトロ25%で、それぞれ1、2位となり、決選に進出した。

 前評判を覆せなかったペトロは、「これは敗北ではない。800万人もが私に投票してくれた」と述べ、ドゥケ次期政権に対し、野党の立場で平和構築や腐敗掃討などに尽力すると表明した。

 FARCのティモチェンコも、「従来と異なる野党勢力が国会に生まれる」と述べ、ペトロらの活動への期待を表明している。

 ペトロは上院議員、その副大統領候補だったアンヘラ=マリーア・ロブレードは下院議員になる。1991年の改憲で、決選に進出し敗れた正副大統領候補にはそれぞれ上下両院議席が与えられることになったが、国会はこの規約を昨年4月ようやく承認した。

▼VEN外務省がニカラグアに関し声明発表

 ベネズエラ外務省は6月17日声明を発表、二カラグア反政府勢力による政治目的での暴力行使を糾弾した。声明はまた、マナグアの貧困地区で2人が路上で焼き殺され、一家6人が自宅を放火され焼死した最近の事件を非難した。

 そのうえで、問題解決は対話によるしかないと強調した。声明は、暴動鎮圧のため出動しているオルテガ政権系私服武装組織による殺傷には触れていない。

 一方、ベネズエラ政府と反政府勢力の若い対話を仲介しているホセ=ルイス・ロドリゲス=サパテロ元スペイン首相は15日カラカスで、野党の民主行動党(AD)、新時代(UNT)の代表および、国家選挙理事会(CNE,中央選管)の元幹部と会合した。

 サパテロはマドゥーロ政権が、反政府政治暴力事件などに関与し収監ないし拘禁されている囚人のうち、昨年12月69人、今年6月123人、計192人を釈放したのを、和解に貢献する措置として評価した。

 

2018年6月17日日曜日

 ニカラグア司教会議がオルテガ大統領に「来年3月29日選挙、4月15日就任」を提案▼大統領再選禁止含む改憲も▼生き残り戦略探るか、オルテガ・サンディニスタ体制

 ニカラグア政府と反政府勢力は6月15日、カトリック司教会議(CEN)の仲介で2週間ぶりに対話を再開した。首都マナグア市内にある聖母ファティマ神学校で開かれた。政府側首席代表はデニス・モンカーダ外相。

 双方は、①4月18日以来の一連の暴力事件による死傷者と加害者に関する調査を米州人権委員会(CIDH)が再開②国連と欧州連合の人権機関に対話参加を要請③米州諸国機構(OEA)事務局の介在④いかなる側からの暴力・脅迫も即時停止⑤双方による検証・治安委員会設置⑥いかなる監視活動も即時停止⑦道路交通を遮断している障害物の撤去⑧CEN調停案への政府回答めぐる討議実施ーで合意した。

 CENは7日、ダニエル・オルテガ大統領に、①大統領選挙を含む総選挙を2019年3月29日実施。大統領を含む当選者は翌4月15日就任②憲法改正ーを提案した。
 改憲は、選挙法改正、大統領再選禁止、最高裁判事任期延長に国会承認不可欠、などを定めるため。

 大統領は「対話の場で話し合う」と回答した。その「対話の場」は16日以降になる。オルテガが、21年10月予定の次期大統領選挙を2年半繰り上げて来年実施するCEN案に同意するか否かが焦点。

 同意する場合、向こう1年弱の間に生き残り戦略を探るはずだ。あるいは3月選挙案を数カ月遅らせる逆提案をする可能性もある。

 反政府活動と、これに対する政府側の弾圧が始まってから18日で2か月。死者は200人に近づいている。対話は、選挙繰り上げ実施の可否をめぐり山場に差し掛かっている。

▼TV番組で解説

 17日2100~2200のテレビ朝日「たけしTVタックル」の「軍事パレード」で、ペルーとコロンビアの特殊部隊などについて筆者は短く解説しました。その中で「(ペルー)アンデス地方の先住民族」とあるのは、「アンデス地方(の山岳高地でない低地の)先住民族」の意味です。ご参考まで。

2018年6月16日土曜日

 日本にメキシコ人2500万人を送り込めば即辞任だろう▼トランプ米大統領がG7会合で安倍首相に言い放つ▼メキシコ各紙が米紙報道基に伝える▼マクロン仏大統領にも言いたい放題▼米墨間で深刻な移民問題が野党大統領候補アムロの人気を押し上げる▼チェ・ゲバラ生誕90周年式典催さる▼ロサリオ市ではホセ・ムヒーカ氏が記念演説

 「ドナルド・トランプ米大統領は安倍晋三首相に対し、<君にはこの問題(移民問題)はないが、私はメキシコ人2500万人を日本に送り込むことができ、そうなれば君はすぐに辞めなければならなくなるだろう>と言った」

 メキシコのウニベルサル、レフォルマなど各紙電子版や、「シンエンバルゴ」など電子新聞は6月15日、一斉に報じた。同日の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の転電。

 WSJは、カナダで8、9両日開かれたG7首脳会議の際の非公式会合でトランプ大統領が例え話として発言したと、「その場にいた欧州連合(EU)高官の話」として伝えた。

 転電記事はまた、トランプ大統領がエマニュエル・マクロン仏大統領に対し、「君はこの問題(テロリズム)を認識せねばならない。なぜなら全テロリストがパリにいるからだ、と言った」と報じている。

 トランプ政権が昨年1月発足して以来、メキシコにとり在米同胞移民への扱いは深刻な問題となっている。「国境の壁」建設、TLCAN(北米自由貿易条約=協定=NAFTA)見直しを含め、制度的革命党(PRI)の現政権は押しまくられっ放し。

 これが、野党の大統領候補AMLO(アムロ=アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール)の人気を押し上げる主要な要因の一つとなっている。7月1日の大統領選挙でのAMLO当選が有力視されている。

▼ゲバラ生誕90年記念式典催さる

 玖サンタクラーラ市のラス・ビージャス中央大学講堂で6月14日夜、チェ・ゲバラの側近だったラミーロ・バルデス革命司令官(86、国家評議会副議長)、エステバン・ラソ人民権力全国会議(国会)議長、共産党幹部ら多数が出席し催された。

 詩人の故ニコラース・ギジェンの作品「チェ、コマンダンテ」(司令官チェ)の朗読、チェ・ゲバラに関係する音楽、歌、舞踊も披露された。

    またゲバラの生地である亜国サンタフェ州ロサリオ市で14日催された記念式典には、ホセ・ムヒーカ前ウルグアイ大統領が来賓として出席し、モニカ・フェイン市長、ミゲル・リフシッツ州知事らを前に演説した。

 「エル・チェは思い通りに生き死んでゆこうと企図した。社会的戦士だった。写真に写るだけの夢想家でなく、理想と共に歩む模範的人物だった。その理想を実現しようとした」と述べた。 

2018年6月15日金曜日

 「ベネズエラへのいかなる干渉にも反対」とブラジル外相が言明▼チリ外相も同様の発言▼トランプ米政権からのVEN軍事介入の打診を拒否か▼VEN執権副大統領に女性闘士デルシー・ロドリゲス就任

 ブラジルのアロイジオ・ヌネス外相は6月14日、「ブラジルはベネズエラへのいかなる種類の干渉にも反対する。同国の問題は交渉を通じ平和裡に解決されねばならない」と述べた。

 チリのロベルト・アンプエロ外相も12日、「ベネズエラの問題はベネズエラ人が交渉で平和裡に解決すべきだ。リマグループなど国際社会は、それを支援する」と語っている。

 南米有力国外相の相次ぐ同種の発言は、対朝首脳会談が一段落したトランプ米政権が、マドゥーロVEN政権を軍事介入で倒したい誘惑に駆られている可能性を示唆する。

 ラ米諸国はこれまでに何度か、トランプ政権からのVEN武力加入の打診を拒否してきた。だが政権中枢や共和党内に右翼強硬派を抱えるドナルド・トランプ大統領が、中間選挙前に「対朝対話よりも鮮烈な成果」を挙げるため、VEN侵攻をあらためて画策している可能性は十分考えられよう。

 これまで米州諸国機構(OEA)で反マドゥ-ロの米国に同調してきたラ米保守・右翼陣営も、軍事侵攻に加担するのには二の足を踏む。
 ブラジル軍部は1964年、米国の後押しでクーデターを起こし、生まれた軍政は21年も続き、米国に意見を容れながら強権政策や左翼弾圧を進めた。
 チリ軍部も73年、米政府と連携し、アジェンデ社会主義政権をクーデターで倒した。

 今や、ラ米側の「ためらい(二の足)」が、ベネズエラにとり救いとなっている感がある。

 一方、ニコラース・マドゥーロ大統領は14日、政権中枢と閣僚の人事を発表。大統領権限を引き継ぐことのできる執権副大統領にデルシー・ロドリゲス制憲議会(ANC)議長を任命した。

 これまでの執権副大統領タレク・エルアイサミは、新設の産業・国内生産相と、経済部門担当副大統領になった。水産・農業、貿易・外資、都市農業、観光、公共事業、運輸、労働、女性、環境社会主義の9相も交代した。この他、新設された水利省の初代水利省も就任した。

 公共事業相になったマルレニー・コントレラス(前観光相)は、大統領に次ぐ実力者で、政権党PSUV副党首のディオスダード・カベージョの妻。カベ―ジョは以前、公共事業相を務めた折、大規模な汚職関与が指摘された。

 デルシー・ロドリゲスはマドゥーロ政権下で通信・情報相、外相、ANC議長を歴任。兄ホルヘは通信・情報相で、マドゥーロの側近中の側近。また兄妹の父ホルヘはマルクス主義政党「社会主義連盟」創設者で、1976年7月、秘密警察に拘置所で拷問され死亡した。

 マドゥーロ大統領は任命に際し、デルシーを「勇気ある百戦錬磨の若い女性にして殉教者の娘であり、実績は証明済み」と最大限に讃えた。デルシーはANC議長を兼務する。
 5月20日の大統領選挙で再選されたマドゥーロは来年1月、2期目に入るが、これに備え、大型人事で政権の内部固めをした。

 政府は12日、政治暴力事件関与などで収監されていた囚人11人を新たに釈放した。その一人、大学都市メリダで反政府学生運動の指導者として活動、16年月末から拘禁されていたビルカ・フェルナンデスは父親の母国ペルーに追放された。

 コロンビア軍は13日、VEN国境のアラウカ県フォルトゥル市の密林を空爆。和平に応じなかったFARC(コロンビア革命軍)の武闘継続派残党16人を殺害した。

▼本日発売の「週刊金曜日」誌に、『アイルランド革命』(小関隆著、岩波書店)の書評(拙稿)掲載。ご参考まで。

 「次期メキシコ大統領はAMLO(アムロ)」とCITIが当確予測▼マクロ経済重視は変わらず▼国産品輸出優先か▼NAFTA崩壊しても米墨貿易は続く▼中銀の中立性尊重し、通貨切り下げや金利上昇はない

 「AMLO(アムロ=アンドレス=マヌエル・ロぺス=オブラドール)の当選は堅い」。米大手銀行CITIのラ米担当首席エコノミスト、エルネスト・ㇾビージャは6月13日、メキシコ大統領選挙(7月1日)の行方を明確に予測した。

 ニューヨークの同行本店で、ラ米メディアの通信員らを対象に分析結果を語った。「焦点は今や、AMLOの政党連合が国会で多数派を占めるか否かだ。可能性はある」とも述べた。

 大統領選挙連続3度目の出馬の元メキシコ市長AMLOは、民主革命党(PRD)から分派した国家刷新運動(MORENA)に所属し、小党と政党連合「フントス・アレーモス・イストリア」(JHH=共に歴史を創ろう)を組んでいる。

 レビージャはまた、「AMLOの経済政策がどのようなもになるかわからないが」と前置きしながらも、「マクロ経済の安定を重視するはずで、そうでなくなる可能性は短期的には見当たらない」と指摘。「市場開放反対を唱えずに国産品輸出を保護するだろう」とも展望した。

 外資については、「北米自由貿易協定(NAFTA/TLCAN)の交渉が長引いているため、外資投下は目立たない状態が続くだろうが、メキシコが外資にとって魅力的な国であることは変わらないのではないか。しかし先行きの不確実さもある」と予測した。

 また、「仮にドナルド・トランプ米大統領がNAFTA離脱に踏み切ったとしても、米墨関係の濃密さから両国貿易が途切れることはあるまい」と語った。さらに、「中央銀行の中立性を尊重するだろう。ペソ下落や金利上昇はないだろう」とも分析した。

 AMLOは2度の敗北体験から、今回は必勝を期して財界や保守派との政策上の妥協も厭わず、選挙戦終盤で支持率が50%を上回る圧倒的強さを維持している。CITIは、「左翼人民主義者(ポプリスタ)」という過去のAMLOの印象でなく、立場や思想の異なる相手とも妥協できる「現実主義者」としてAMLOを見ているようだ。
 
 

2018年6月14日木曜日

 オルテガ・ニカラグア大統領に大統領選挙の来年実施を提案▼反政府勢力は拒否、全国ストを呼び掛け▼ベネズエラが12月に市会議員選挙実施へ▼VEN原油生産が日量139万バレルに落ちる▼ハバナで7月、サンパウロフォーラム開催へ

 ニカラグアの反政府勢力「正義と民主のための国民同盟」(ANJD)加盟の農民組織代表メダルド・マイレーナが6月13日明らかにしたところでは、ダニエル・オルテガ大統領に7日、2021年の次期大統領選挙を繰り上げ来年19年に実施するという提案が、仲介役の司教会議(CEN)からなされた。

 この旨は、ローラ・ドグ駐ニカ米大使も逸早く日量把握していた。同大使は先週末、来訪していたカレブ・マカリー氏と会合している。マカリーは、ボブ・コーカー米上院外交委員長から派遣された。このことは、オルテガが米側と何らかの取引をした可能性を示唆する。

 だが農民代表のマイレーナは13日、我々はオルテガ即時退陣を要求しており、「来年選挙」など受け入れられないと反発。ANJDは全国ストを14日に実施すべく呼び掛けている。

 CENは13日、政府と反政府勢力の対話を15日再開すべく双方に通告した。

▼ベネズエラが市会議員選挙を12月実施へ

 ニコラース・マドゥーロ大統領は6月12日、全国335市の市会議員選挙を12月に実施すると明らかにした。政権党PSUVは、候補者の半数を35歳以下の若者にする方針。

 一方、OPEC(石油輸出国機構)は12日、べネズエラの5月の原油生産量は日量139万バレルだったと発表した。VENが盟主のカリブ石油連帯機構(ペトロカリーベ)への好条件原油輸出も大幅に減っている。

▼ハバナで7月半ば、サンパウロフォーラム(FSP)会合

 キューバ共産党(PCC)のホセ=ラモーン・バラゲール国際局長は6月13日、ハバナで7月15~17日、第24回FSP年次会合を開く、と発表した。昨年のマナグア会合でハバナ開催が決まっていた。

 FSPは、ラ米・カリブ(LAC)地域の左翼・進歩主義勢力の一大会合。政府、政権党、政党、労連、人権団体、農民、先住民組織の代表や、知識人、芸術家、NGOなどが参加、広範は顔ぶれとなる。 

 今日14日、革命家チェ・ゲバラ生誕90周年記念日▼キューバや生国アルゼンチンで記念行事▼ハバナでは日玖合作映画「エルネスト」上映▼亜国ロサリオでは市営バスが特別路線走る▼現代キューバの若者は国外での「新しい生き方」目指す★ゲバラの娘アレイダが政府の経済政策を批判

 キューバ革命でカストロ兄弟と並ぶ英雄だった「エル・チェ」=エルネスト・チェ・ゲバラ(1928~67)=の公式な誕生日の6月14日、キューバ、アルゼンチンなどゆかりの地で生誕90年記念行事が催される。

 ハバナでは13日、エル・チェの側近中の側近だったハリー・ビジェガス革命軍退役少将らがシンポジウムで、革命家エル・チェについて語り合う。14日には、ラス・ビージャス州都サンタクラーラ入口にあるチェ・ゲバラ像前で遺族や政府要人が参列し、記念式典が挙行される。

 ここには1967年のボリビア遠征で死んだゲバラと部下たちの廟がある。日系ボリビア人ゲリラ、フレディ前村ウルタードの遺骨もここにある。
 その前村の25年の短い生涯を描いた日玖合作映画「エルネスト」(阪本順治監督、キノフィルムズ、2017年)が19日、ハバナで記念上映され、次いで一般公開される。この上映会には阪本監督が出席し挨拶する。

 生地である亜国サンタフェ州ロサリオ市では、社会党所属のモニカ・フェイン市長の肝いりで、市営トロリーバスの一路線が「エル・チェ路線」と名付けられ、革命家の顔が大きく描かれたバスが既に走っている。14日の前後、期間限定の走行だ。

 同市での14日の生誕90周年式典には、ホセ・ムヒーカ前ウルグアイ大統領が来賓として参列する予定。ムヒーカは若き日、同国のゲリラ「民族解放運動(MLN)ートゥパマロス」の幹部で、警官隊に銃撃され死線をさまよったこともある。
 彼は革命直後のハバナとモンテビデーオでエル・チェに会い、影響を受けた。ムヒーカは2016年4月の来日時、東京での記者会見で、「人生で最も影響に残る人物はエル・チェだ」と語った。

 ロサリオ市内にはゲバラの立像がある。没後50周年記念日(昨年10月9日)前の8月、市内の右翼勢力がゲバラ像撤去運動を展開、賛否両派が対立した。今回のバスの車体に市側がゲバラの顔を描いたことにも像撤去派は激しく反発し非難している。

 15年末に保守・右翼陣営の財界人マウリシオ・マクリが大統領になって以来、右翼陣営が勢力を拡げている。ロサリオの像撤去運動は、その表れの一つだった。

 ゲバラは晩年、「新しい人間」という革命的人間像を打ち出した。様々な人物からの影響が見られるが、ジャンポール・サルトルもその一人だ。ゲバラはハバナでサルトル夫妻とフランス語で深夜語り合い、相互に強い印象を受けた。

 サルトルの「アンガージュマン」を実践したのが、知識人で医師だったエル・チェだった。アルジェリア対仏独立戦争期のイデオローグ、フランツ・ファノンの影響も見受けられる。大江健三郎の言う「正統的人間」もアンガージュマン思想に立っている。

 今日、キューバの若者たちは、外国での人生設計を企図し、出国してゆく。キューバ社会主義の「改革開放」の歩みの遅さに希望を失っているためだ。「新しい生き方」、これが昨今の多くの若者たちの希望となっている。

 4月に就任したミゲル・ディアスカネル国家評議会議長の最重要課題の一つは、未来への人材である若者に魅力的な「繁栄する社会主義社会」を建設することなのだ。

★チェ・ゲバラの娘アレイダが経済政策を批判

 医師アレイダ・ゲバラ=マルチは14日、玖通信社プレンサ・ラティーナのインタビューで、「玖労働者が給料だけで生活できないのは深刻な問題だ」と指摘。「生活費を海外からの送金に頼るのも(政策上)筋違いだ」とも語った。

 アレイダは、「経済政策の失敗があったが、これを修正するのは革命体制の美点だ」と述べ、「政府は経済状況改善にもっと尽力すべきだ。エル・チェが経済建設現場にもっと必要だ」と強調した。

 チェ・ゲバラは革命初期の1959~54年、農地改革庁工業局長、中央銀行総裁、工業相として経済建設に携わった。  

2018年6月12日火曜日

 マルティネリ前パナマ大統領が逃亡先の米国から送還さる▼「スパイ罪」などで起訴▼ニカラグアで平和集会▼コロンビア決選は保守・右翼候補優勢か

 パナマ前大統領リカルド・マルティネリ(66)被告が6月11日、米国からパナマに送還された。大統領任期を終えた直後の2015年、米国に逃亡したが、パナマ政府からの手配要請に応じた米当局は17年6月逮捕し、マイアミで拘禁していた。

 マルティネリはスーパー店チェーンなどを経営していた富豪。大統領任期中、批判的な政治家、ジャーナリストら約150人の言動をスパイする仕組みを公金で構築、「スパイ罪」で起訴された。公金横領罪でも起訴されている。

 パナマ政府は、米国にいるマルティネリの息子2人の身柄引き渡しも求めている。2人は、ブラジル大手建設会社オデブレシ(オデブレヒト)から5000万ドルを収賄した容疑がかけられている。

 退陣後の起訴を恐れたマルティネリは、法で禁じられている連続2選を求めて出馬しようと謀ったが、反対が多く、叶わなかった。

▼ニカラグアで平和集会

 オルテガ政権打倒を狙う暴力事件の停止を求める市民数千人は6月10日、首都マナグア中心部の革命広場で「和解と平和」を訴えた。

 政権は、対話仲介者のカトリック司教会議(CEN)から提示された和解案に16日までに回答するよう迫られている。

▼コロンビア大統領選挙決選は保守・右翼候補優勢か

 6月17日の決選は保守・右翼陣営のイバン・ドゥケ、中道・左翼陣営のグスタボ・ペトロの闘いだが、「ラ米地政学戦略研究所」(CELAG)は6月11日、支持率を発表。ドゥケ45・5%、ペトロ40%、浮動票など14・5%で、ドゥケ有利と見ている。

 その他7種類の支持率調査結果の平均値は、ドゥケ51%、ペトロ37%で、ドゥケが
圧倒的な優勢を維持している。投票率は54%程度と予想されている。

 ハイチ国軍が22年ぶりに復活▼ドミニカ共和国が安保理非常任理事国に▼ブラジル次期大統領候補支持率はルーラが1位維持▼キューバが米政府主張の「外交官音響被害」で声明を発表

 アイチ(ハイチ)国軍(FAH)は1996年廃止されたが、今年、22年ぶりに復活した。ジョヴネル・モイーズ大統領は2017年11月18日、国軍復活に踏み切り、最初の部隊兵士150人をエクアドール軍の下で訓練した。国防省も復活した。

 18年3月28日、エルヴェ・デ二国防相、ジョデル・ルサージ司令官(中将)を指揮官とする司令部が発足した。当面、陸軍を中心に兵員3000人で部隊編成する方針。現在、18~25歳の兵士候補500人を募集している。2020年以降、兵力を5000人にする計画。

 治安部隊は他に国家警察9000人と、小規模な沿岸警備隊がある。当面150~500人で編成する陸軍部隊は、工兵隊、環境保護隊、衛生兵隊、国境警備隊。

 治安は、米仏加が仕掛けた工作で、改革派のジャンベルトゥラン・アリスティド大統領がアフリカに連行され追放された2004年の政変に至る過程で、動員された無法者集団の暴力で極度に悪化した。

 このため同年、国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)が展開、治安確保に当たったが、2010年の大震災による大混乱もあって、治安維持は極めて困難だった。また派遣団兵士らが不法行為を働き、評判を落としたのも問題化した。

 派遣団は17年10月以降、国連ハイチ正義支援団(MINUJUSTH)に代わり、国際警察部隊1000人が展開。国家警察と共に活動している。今後は、FAHの態勢が整い次第、治安維持に投入される。

 国軍はデュヴァリエ父子2代の長期独裁期に政権の私兵化し、独裁終焉後は、旧勢力による政変の道具にされていた。そこで廃止された。

▼ドミニカ共和国(RD)が安保理非常任理事国に

 ハイチと国境を接するRDは6月8日、ボリビアに代わるLAC(ラ米・カリブ)枠の非常任理事国に選出された。任期は2019~20年。

▼ブラジル大統領選挙候補支持率はルーラが1位

 フォーリャ・デ・サンパウロ紙が6月10日報じた支持率調査で、労働者党(PT)候補ルーラ元大統領が30%で1位を維持。ルーラは警察拘置所に拘禁されている。

 また汚職まみれのミシェル・テメル暫定大統領の不支持率は82%で、歴代大統領最低の不人気度を記録した。

 ルーラの元にこのほど、フランシスコ法王から贈られたロザリオ(磔刑像付き数珠)が到着。ルーラを拘禁したテメル体制への法王側の暗黙の批判とも受け止められている。

▼キューバ政府が「音響被害事件」で声明

 玖外務省は6月10日、ハバナ駐在の米外交官らが「音響被害に遭った」とされる件について声明を発表した。要旨は次の通り。

 一、2018年5月29日付で米国務省から、同月27日、女性外交官1人がハバナの自宅で「音響被害に遭った」との連絡を受けた。

 一、玖政府は医師団、専門的調査団を派遣、同自宅一帯を調査したが「音源」など痕跡は見つからなかった。当該女性外交官にも会えなかった。

 一、(2016年末以後)1年余りの玖米合同調査の結果、この出来事を理由に対玖外交規模縮小を決めた国務省の立場を正当化しうる科学的根拠はなかった。

 一、国務省が6月5日付で、玖中両国で起きた、この種の一連の出来に関する合同調査団結成についての発表に留意する。

 一、玖国は、滞在外国人および駐在外交官の安全を厳重に守っており、このことは良く知られている。今後も対米協力に応じる。

2018年6月11日月曜日

 メキシコ次期大統領最有力のアムロ候補が開発・繁栄のための「同盟」計画暖める▼トランプ米大統領に会って提案する方針▼故ケネディ大統領の「進歩のための同盟」の中米地峡版▼移民流入食い止めが計画の主眼

 メキシコ大統領選挙(7月1日)の最有力候補AMLO(「アムロ」ことアンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール)元メキシコ市長は6月10日、チアパス州のグアテマラ国境沿いにあるタパチュラ市での遊説中、「当選したら」と前置きし、「相互に敬意を払い合う条件さえあれば、ドナルド・トランプ米大統領と会う」と述べた。

 トランプ大統領と会うことになれば、「移民問題などを平和裏に解決するため、米墨加3国と中米7カ国(グアテマラ、ベリーズ、エル・サルバドール、ホンジュラス、ニカラグア、コスタ・リカ、パナマ)で<開発のための同盟>(仮名)を結成すべく提案する」と述べた。

 これは、故ジョン・ケネディ米大統領がキューバ革命後の1961年、ラ米とりわけブラジルの「共産化」を防ぐために開始した「進歩のための同盟」(ALPRO)計画に倣った政策。ケネディは同計画のため、米欧日で総額200億ドルの費用を賄う考えだった。だが63年のケネディ暗殺で、この計画は尻つぼみに終わった。

 その後、64年のブラジル軍事クーデターが発生。軍事政権が強権と、人道犯罪を厭わない弾圧で、反共政策を遂行する。これを米国が支援した。だが東西冷戦終結から29年経った現在、反共政策は特にない。

 北米から中米地峡にかけての地域では長年、中米からメキシコへ、メキシコから米国へと経済難民が流入し、大問題になってきた。この地域には麻薬密輸、武器密輸、組織犯罪、人身取引などもある。根底には社会に渦巻く巨大な貧困問題がある。

 AMLO候補の「開発のための同盟」計画には、それなりの意味がある。北米自由貿易地域(加米墨)と米国・中米・RD自由貿易地域の連携による計画になるはずだが、この地域にはすでに幾つかの多国間開発計画があり、それらと重複しかねない難点がある。
 また、移民流入に厳しく、メキシコと中米を見下す発言をしてきたトランプ大統領が分担資金を出すかどうかもわからない。

 しかし「発想豊か」なのがラ米政治家の特長だ。実現するか否かは別問題なのだ。AMLOは2位候補に支持率で26ポイント差をつけている。自身も9日、故郷のタバスコ州ビヤエルモーサ市で「私の当選が覆ることはない」と言い切った。

 さらに、「大統領になったら公邸でなく自宅に住む。家族と私費で食事する。豊かな政府と貧しい国民という構図があってはならないからだ」とも語っている。

2018年6月10日日曜日

 ニカラグア司教会議がオルテガ政権に事態打開の回答迫る▼選挙法改正を政権が受け入れるか否かが鍵▼ブラジル労働者党がルーラ出馬を正式に表明▼ハバナ駐在の米外交官2人が帰国▼べネズエラ外相がチリ政府を非難

 ニカラグア司教会議(CEN)は6月8日、「オルテガ政権に7日、調停案を提出した。16日までに文書回答がなければ、仲介を止める」と表明した。CENは4月から続く反政府勢力と政権との流血の対決を止めさせるべく対話仲介の労をとってきた。

 対話は5月16日開始。期間1カ月のため、今月16日が期限となる。未確認情報によれば調停案は、死傷者多数が出ている今回の反政府行動と弾圧の真相解明や、選挙法改正を済ませたうえで、来年3月ごろ大統領選挙を実施、4月の政権交代を目指す。

 選挙法改正で、正副大統領の任期制限や現職出馬制限が図られ、連続3期目にあるダニエル・オルテガ大統領、および1期目のロサリオ・ムリージョ副大統領(オルテガ夫人)は正副大統領選挙出馬を封じられる可能性があるという。

 大統領は16日までに為すべきCENへの回答で、どう返答するのか、重大な局面が迫っている。回答が政権延命策になれば、反政府勢力の活動がさらに激化するのは疑いない。

▼ブラジル労働者党がルーラ出馬を発表

 労働者党(PT)のクレイジ・ホフマン党首は6月8日、今年10月の大統領選挙にルーラ元大統領が出馬する、と正式に発表した。8月15日の公示日に登録することになる。

 ルーラは現在、パラナー州都クリチーバ警察本部の拘置所に汚職罪で拘留されており、最高裁の最終判断を待っている。

▼在玖・米大使館員2人が新たに出国

 米国務省は6月8日、ハバナ駐在外交官2人が帰国し、医療診断を受けていると明らかにした。正体不明の音響で体調を崩している、という。

 昨年9月、同様の理由で米大使館員22人が引き揚げており、これで計24人となった。残る大使館員は16人程度となった。帰国した館員の多くはCIAの諜報員と見られている。「諜報対防諜」の戦いから派生した出来事との見方が為されている。

 トランプ政権は、この「事件」をきっかけとして、対玖経済関係や、米玖両国人の相互訪問を大幅に規制した。同様の出来事は最近、中国でも起きたと伝えられる。

▼ベネズエラ外相がチリを非難

 ホルヘ・アレアサ外相は6月7日、チリのラ・テルセーラ紙との電話会見で、「セバスティアン・ピニェーラ大統領は、チリ大統領選挙時から反ベネズエラ姿勢を露わにしていた。ピニェーラ氏がベネズエラとの関係を破壊した」と非難した。

 ピニェーラ政権のロベルト・アンプエロ外相は4日のOEA外相会議でVENを激しく攻撃したが、アレアサ外相は「チリ外相は個人感情を剥き出しにした」と指摘した。

 さらに、「ピニェーラ氏は、リマグループ代表のPPクチンスキ秘大統領が汚職で辞任したのを受けて、その後釜に座ったかのように対VEN攻撃に勤しんでいる」と皮肉った。

 VEN外相は、「わが国には人道問題はない。あるのは外部からの経済的、政治的な攻撃とメディアによる攻撃だ」とし、「ラ米・カリブの友邦や中ロ印トルコなどの協力で、経済制裁を打ち破ってゆく」とも述べた。

 また、「我々は1965年のRD(ドミニカ共和国)でも89年のパナマでもない。対話と政治で問題解決を図る。だが別の選択肢を強制されれば、対応するだけだ」と強調。過去に米軍に侵攻されたRDとパナマの例を挙げて、軍事攻撃の可能性に触れた。

2018年6月9日土曜日

 来年4月27に米州諸国機構(OEA)を脱退する、とベネズエラ大統領が言明▼テレスールは、米国は「汚い戦争」を続行と論評▼キューバが米国を批判▼VENとイランはOPECに支援要請▼ホセ・ムヒーカ氏の愛犬死す▼東京外大で映画「エルネスト」上映会催さる

 ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は6月7日、「2019年4月27日にOEA(米州諸国機構)を脱退する。その日、大動員をかけ盛大に祝おう」と述べた。

 大統領はまた、「マイク・ペンス米副大統領はOEA諸国にVEN追放に賛成するよう圧力をかけたが、追放決議に失敗した」と指摘。OEA外相会議に出席したホルヘ・アレアサ外相以下の「VEN外交団の勝利」を讃えた。

 ベネズエラは昨年4月27日、OEA脱退意志を表明。脱退手続きには2年かかり、それが完了する来年の同日を大統領は「脱退記念日」と捉えている。

 カラカスに本社のあるラ米多国籍TV「テレスール」(南部テレビ放送)は7日の論評で、OEAでのVEN追放工作に失敗した米政府は今後も「汚い戦争」や「経済戦争」をVENに仕掛けてくるだろう、と述べた。

 同論評は、その理由を①VEN国内に組織された強力な野党勢力がない②国際原油価格が上昇中③国軍が分裂する兆候はないーからとしている。

   同盟国キューバの外務省は7日、OEA外相会議の5日の決議について「受け入れ難い内政干渉」と糾弾した。
 玖共産党機関紙グランマは、米国とOEAには民主や人権に関し他国に教訓を垂れる道徳的資格はない、と厳しく批判。また、決議案に反対票を投じたカリブの小さな島国2国を「帝国に従わず、勇気、決断、正義を示した」と讃えた。

 一方、VEN石油省は7日、米国による経済制裁に対抗するため支援をOPEC(石油輸出国機構)に要請する、と明らかにした。
 同じく制裁に遭っているイランとともに加盟諸国に書簡で支援を求めたという。OPECは22日に会合する。

▼ホセ・ムヒーカ前大統領の愛犬死す

 ウルグアイのムヒーカ前大統領と22年暮らした雌の愛犬マヌエーラが6月7日死亡した。首都モンテビデーオ郊外に同氏が所有する農場の一角に埋葬されたという。

 この犬の左前足は半分しかなかった。2014年、当時大統領だったムヒーカが農場でトラクターを運転していた時、その機体の下に潜り込んだマヌエーラに気づかず、犬は足の切断を余儀なくされた。以後「三本足の犬」と呼ばれていた。

 ムヒーカは大統領時代、「我が政権の最も忠実な職員」とマヌエーラを讃え、自ら運転する車に乗せたり、旅行に連れて行ったりしていた。

 犬の晩年、歯がこぼれ落ちつつあるからと、食べやすい餌を与えるなど、愛犬を気遣っていた。ムヒーカ夫妻と愛犬の仲睦まじい関係は内外で有名だった。

▼東京外語大学で映画「エルネスト」上映会催さる

 府中市の東外大講堂で6月8日夜、「エルネスト」(阪本順治監督)上映会と座談会(トークショー)が催され、同大の学生、教授、一般市民ら約500人が参加した。
 1967年8月末、チェ・ゲバラ部隊のゲリラとしてボリビアで戦死した日系2世フレディ前村の短い人闘争の人生を描いた作品。

 座談会には、坂本監督、映画の原作『革命の侍』翻訳者・松枝愛、ジャーナリスト伊高浩昭が出席。作品の意味、日系人を超えたフレディの生き方、撮影の苦労話などが、質疑応答を交えて縦横に語られた。

 16日にはハバナで招待上映会が催され、阪本監督が出席し挨拶する。その後、一般公開上映される。今年末には外語大講堂でチリ映画3部作が上映され、トークショーもある。

2018年6月8日金曜日

 モレーノ・エクアドール大統領がベネズエラに国民投票もしくは再選挙の実施を提言▼VEN外相はOEA決議に賛成したラ米・カリブ諸国を非難▼VENの急務は原油生産回復▼グアテマラ火山爆発の死者101人に達す▼ペルー国会がケンジ・フジモリら3議員の資格停止を決める★「世界」誌がキューバ最新情勢記事を掲載 

 エクアドール(赤道国)のレニーン・モレーノ大統領はキトで6月6日、ベネズエラに対し、「5月20日の大統領選挙の正統性を実証するため国民投票をしてはどうか。さもなければ再選挙を実施してはどうか」と提言した。

 これはワシントンで開かれた米州諸国機構(OEA)外相会議が5日、ベネズエラ大統領選挙とその結果を認めず、同国のOEA加盟資格停止に向けた過程に入る」とする決議案を加盟34カ国中19カ国の賛成で可決したのを受けての発言。

 モレーノは、「ベネズエラに関する決定ができるのはベネズエラ人だけだ」とも述べ、米国をはじめとする反ベネズエラ諸国を牽制した。
 ただしモレーノは4日、マイク・ペンス米副大統領と電話会談しており、米政府の意向も汲んで、敢えてVEN説得発言に出た可能性もある。

 モレーノと今や犬猿の仲になっているラファエル・コレア前赤大統領が今VEN選挙監視で中心的役割を果たし「公明選挙だった」と評価したことへの当てつけの狙いもあるかもしれない。

 会議に参加したホルヘ・アレアサVEN外相はワシントンで6日会見し、前日の議決について、「我らのアメリカ(ラ米・カリブ諸国)にはボリバリアニズモ(シモン・ボリーバル主義=統合・連帯主義)を殺そうとするシカリオ(殺し屋)がいる」と指摘。賛成票を投じた19カ国から米加北米両国を除いた17カ国を暗に糾弾した。

 アレアサ外相が同じ会見で、「我がニコラース・マドゥーロ大統領のVEN政権はトランプ米政権との対話を望んでおり、私はマイク・ポンペオ国務長官と話し合いたい」と語った、とされる未確認情報がある。

 マドゥーロ政権は今回のOEA決議と前後して再三、OEAから自主的に脱退する手続きを昨年4月末から進めており、あと10か月余りで脱退が実現する、と強調している。

 米国以下の反マドゥーロ陣営は今回、ベネズエラ資格停止(事実上のOEA追放)の決議に必要な3分の2票(24カ国賛成)を確保できず、「資格停止に向けた過程に入る」との味の薄い決議にしか至れなかった。

 「埋蔵量世界一」のVEN原油を狙い、併せて米州での主導権回復を図りたいトランプ政権に残された決定的な手段は軍事介入。だが、これにはラ米諸国の多数派が賛成しかねており、当座の軍事侵攻はありそうもない。

    キューバ外務省は7日、OEA決議を「受け入れ難い内政干渉であり、国際法と国連憲章に反する。VEN対話に寄与しない」と厳しく批判した。

 日本一部メディアを含む反マドゥーロ国際メディアによる根拠に乏しい意図的報道で、ベネズエラらの印象は悪化しているが、マドゥーロ体制はいつになく堅固だ。

 問題は、経済の命綱である原油生産が日量150万バレルを切っていること。これを最低必要日産220万バレルに戻し、さらに300万バレルの大台を目指さねばならない。

 国際原油価格は、イラン情勢に加えVEN生産低下で上昇している。VENの生産能力は投資不足などで激減しており、VENは儲け時に儲けることが叶わない。VEN石油産業は、この深刻な矛盾に苛まれている。

▼グアテマラ火山爆発で101人死亡

 6月3日からのフエゴ火山(標高3763m)の大爆発で、死者は6日までに101人い達した。

 フエゴ火山の東にはアグア火山(3760m)があり、その鞍部は、古都アンティグア市(旧首都)と太平洋岸のケッツァール港を結ぶ幹線道路が走る。また、同港から北方の首都グアテマラ市に向かう自動車道の東側にはパカヤ火山(2552m)が噴煙を棚引かせるている。
[筆者は、この光景を何度も観てきた。今回の惨事に胸が痛んでならない。]

▼ペルー国会がケンジ・フジモリ議員らの資格を停止

 国会は6月6日、フジモリ、ギジェルモ・ボカーンヘル、ビエンベニード・ラミーレスの3議員の議員資格停止を決めた。3月、当時のPPクチンスキ大統領の弾劾阻止のため賄賂や影響力行使によって工作したのが理由。

 最大政党「人民勢力」(FP)のケイコ・フジモリ党首は実弟ケンジの議員剥奪決議案を提出していたが、定足数に至らず採択できなかった。
 姉と弟の骨肉の争いの背景には、父親であるアルベルト・フジモリ元大統領の恩赦釈放への賛否、次期大統領選挙の出馬争いがある。

 初出馬を目指す弟はクチンスキ弾劾阻止と引き換えに父の恩赦を勝ち取り、3度目の出馬を狙う姉は世論を慮って恩赦に反対した。

★本日発売の「世界」7月号(岩波書店)「世界の潮」欄に拙稿「<カストロ後>への転換期に入ったキューバ」が掲載されています。ご参考まで。 

2018年6月7日木曜日

 サンチェス・スペイン政権の閣僚17人中、11人が女性▼新鮮さで、保守・右翼の国民党との違い鮮明に▼ベネズエラ大統領が「CIAと結託した国営石油破壊工作」を暴く▼国際司法裁がVEN,ガイアナ両国から領有権問題で意見聴取へ

 スペインのペドロ・サンチェス新首相は6月6日、内閣を組閣、17人中、11人を女性が占める「女性優位内閣」となった。副首相兼首相府相に女性閣僚筆頭のカルメン・カルボ(60)が就任した。

 他の女性閣僚10人は、経済、財務、法務、国防、教育、労働、地方、環境、保健、工商の各相。
 一方、男性閣僚はジョセプ・ボレル外相(71)以下、内務、科学、勧業、文化、農水の6人。

 サンチェスは、スペイン内戦(1936~39)でファシズムに蹂躙された共和派の流れを汲むスペイン労働社会党(PSOE)の書記長から首相に就任。内戦で勝利したフランコ・ファシスト勢力の流れを汲む国民党(PP)との違いを明確にする狙いも込めて、女性を数多く登用する内閣とした。

▼ベネズエラ大統領が「国営石油会社破壊工作」を暴く

 ニコラース・マドゥーロ大統領は6月5日、国営石油PDVSA(ぺデベサ)の元幹部職員らはカラカスの米大使館と結託し、同社の原油資産能力を腐敗によって削ぎ、内部から同社を破壊しようと謀っていたと明らかにした。

 カラカスでのPDVSA労働者との会合で暴露したもので、関与した元幹部ら約80人を逮捕、未逮捕者は逃亡したという。
 大統領によると、元幹部らは米大使館で査証申請をした際、CIAから協力を持ち掛けられ協力した。ベネズエラの原油生産は、日量140万バレル台に落ちている。

 スペイン警察は6日マドリードで、PDVSAから横領された資金60憶ユーロを洗浄した容疑でベネズエラ人ホルヘ・リンコンを逮捕した、と発表した。ホルヘは、在米VEN人企業家ロベルト・リンコンの息子。

 一方、国際司法裁判所は4日、ベネズエラ東部のエセキーボ地方(ガイアナ西部)の領有権問題をめぐりVEN・ガイアナ両政府に同裁判所で18日に会合したいと通知した。VEN外務省が5日明らかにした。

 ベネズエラは、旧宗主国スペインから引き継いだ領土エセキーボ地方が、これを奪った英国から独立したガイアナの領土になっているとして、領有権を主張してきた。

2018年6月6日水曜日

 米州諸国機構(OEA)外相会議が「ベネズエラ追放」に失敗▼3分の2の多数派工作叶わず、決議案内容切り替えて可決▼注目されたニカラグア棄権▼ベネズエラは自主的脱退を再確認▼キューバ議長がグーグル社長と会談

 米州諸国機構(OEA,34か国加盟)第48回総会(外相会議、ワシントン開催)は6月5日、ベネズエラ大統領選挙(5月20日実施)を認めず、同国のOEA加盟資格の停止手続きを開始するという決議案を賛成19、反対4、棄権11で可決した。これは米国など反ベネズエラ勢力の失敗を意味する。

 米加墨秘智伯亜の7カ国は当初、ベネズエラの資格停止処分に持ち込む作戦を立て、米当局者は資格停止など重要決議に必要な3分の2(24カ国)の賛成を固めたと豪語していた。だが、それが強がりがったことが明らかになった。このため急遽、「資格停止手続き開始」に切り替えざるをえなかった。

 決議賛成19カ国:米加墨グアテマラ・ホンジュラスCR巴RD・COL秘智パラグアイ伯亜ガイアナ・ジャマイカ・セントルシーア・バルバドス・バハマ。
 反対4カ国:ベネズエラ、ボリビア、ドミ二カ、セントヴィンセント&グらナディーン。
 棄権11カ国:ニカラグア、エル・サルバドール、ハイチ、エクアドール、スリナム、ベリーズ、TT,グレナダ、セントクリストファー&ネヴィス、アンティグア&バーブーダ。

 従来、マドゥーロVEN政権に連帯していたニカラグアが棄権に回ったのが注目される。外相会議はこの日、「ニカラグア暴力即時停止」決議案をも可決した。その案文からは「オルテガNICA政権糾弾」の文言が外された。このことと棄権とは無関係ではない。
 ニカラグアの人権団体の集計では、4月半ばからの抗議行動する反政府勢力への弾圧過程で死者121人、負傷者1300人が出ている。

 会議出席のホルヘ・アレアサVENVEN外相は、「今日の決議はOEAの絶望の表れだ」と指摘。「我々は内政干渉し暴力を煽るOEAから自主的に脱退する手続きに既に入っている」、「OEAはVEN人民と軍部を離反させようとも画策した」と述べ、「大なる祖国万歳」で発言を締めくくった。

 一方、ベネズエラ最高裁は5日、エル・ナシオナル紙に対し、10億ボリーバルの賠償金をディオスダード・カベ―ジョ政権党副党首に支払うよう命じた。同紙は、スペイン王党派系右翼紙ABC報道を踏まえて、「カベ―ジョは麻薬取引関与者」と報じた。

 カベ―ジョは名誉棄損罪で訴えた。同紙が報道の根拠となる確乎たる証拠を示せなかったため、カベ―ジョの勝訴が確定した。エル・ナシオナルは反政府派の機関紙化していた。反政府街頭暴力に関与した極右政党に極めて甘かった。

▼キューバ議長が米議員、グーグル社長と会談

 ミゲル・ディアスカネル国家評議会議長は6月4日、来訪したジェフ・フレイグ米上院議員(共和党)、グーグルのエリック・シュミット社長と会談した。

2018年6月5日火曜日

 ポンぺオ米国務長官がOEA外相会議で内政干渉発言▼アレアサ・ベネズエラ外相が反駁▼マドゥーロ大統領はOEA脱退方針を確認

 米州諸国機構(OEA)外相会議の初日6月4日、マイク・ポンぺオ米国務長官が発言。加墨秘智伯亜とともにベネズエラ資格停止決議案を提出したことについて、「OEAは言葉に加え行動で示すべきだ。ベネズエラは真の選挙を実施することによってのみ米州社会から受け入れられる」と述べた。

 また「米国は従来通り、ベネズエラ人民をしっかりと守る」と強調した。これは明らかな内政干渉、帝国主義丸出しの発言。出席したホルヘ・アレアサVEN外相は反駁した。同外相は、故ウーゴ・チャベス前大統領の女婿。

 米国を含む7カ国は、5月20日の大統領選挙に圧勝し再選を果たしたニコラース・マドゥーロ大統領のベネズエラが「民主秩序が途切れた」と見なし、「民主制度正常化のため」としてOEA加盟資格停止を提案した。OEAの「米州民主憲章」条項に沿った措置。

 これは重要決議案であり、加盟34カ国の3分の2である24カ国の賛成が必要。米国のOEA大使は3日、24カ国を固めたと表明している。

 だがマイク・ペンス米副大統領は4日、エクアドール(赤道国)のレニーン・モレーノ大統領に電話し、「米赤関係活性化」を呼び掛けており、依然、多数派工作を続けていることを示した。
[この電話は5日国連総会で、マリーア=フェルナンダ・エスピノーサ赤外相が総会議長に選出されたことと無関係でない。]

 モレーノ赤大統領は、ラファエル・コレア前大統領のような左翼ではなく、中道是々非々主義者だが、米国とラ米保守・右翼諸国が主導する反マドゥーロ路線とは一線を画してきた。

 一方、マドゥーロ大統領は4日カラカスで、「米政府はLAC(ラ米・カリブ)諸国に対し、犯罪的、醜悪、恐喝まがい、脅迫めいた働きかけをしている。これはOEAでいつも見られる光景となっている」と、トランプ米政権を揶揄。

 続けて、「OEAは無用な機構だ。ベネズエラは米国の植民地省(OEA)から離脱する」と述べ、脱退方針を確認した。事実上の追放処分ともなりうる資格停止決議の有無に拘わらず1年後には脱退していることを加盟国に想起させた。

 マドゥーロ政権は去年4月末、離脱手続きに入った。規則上、脱退手続きには2年かかる。大統領は「必要な24カ月のうち既に13カ月が過ぎた」と付け加えた。一時、脱退中止説が流れていたが、この日、マドゥーロは脱退方針をあらためて明確にした。

 大統領は選挙後の23日から国内対話を開始、既に一部野党、野党系州知事、政府系州知事、市長、銀行協会などとの話し合いを終えている。現在、「対話第2節」に入ったところで、各種市民団体と話し合っている。

2018年6月4日月曜日

 米州諸国機構(OEA,34カ国加盟)の外相会議が4日始まる▼米加伯など7カ国がべネズエラ資格停止決議案を提出▼米国が多数派工作▼ボリビア大統領がペンス米副大統領を糾弾▼ニカラグアのオバンド枢機卿死去

 米州諸国機構(OEA、加盟34カ国)は6月4日、ワシントンの本部で第48回総会(外相会議)を開いた。ベネズエラ情勢が主要議題で、米加墨秘智伯亜の反ベネズエラ7カ国は同日、「民主秩序が途切れた」としてベネズエラのOEA加盟資格停止を提案した。5日、投票にかけられるもよう。

 これに先立ちカルロス・トゥルヒ―ジョ米OEA大使は3日、ベネズエラの加盟資格を無期限停止とする議案を成立させるのに必要な3分の2(24票)を確保した、と明らかにした。資格停止は事実上の追放処分。「ベネズエラ問題」を議案とする決定は18カ国の賛成で成立する。

    米国および同調する国々はまず、5月20日のベネズエラ大統領選挙を「無効」と決議し、次いで資格停止処分に移りたい考え。

 マイク・ペンス米副大統領は以前からマドゥーロ・ベネズエラ政権打倒に意欲を燃やしているが4日、OEA外相会議に出席し、ベネズエラ非難演説をぶつ予定。

 一方、ボリビアのエボ・モラレス大統領は3日、「ベネズエラでのクーデター計画に失敗したペンスは今また内政干渉しようとしている」と糾弾。「米帝国はOEAを、主権国を抑圧する棍棒として使おうとしている」と指摘した。

 OEAはケネディ米政権下の1962年、社会主義キューバを追放した。米政府は同年、米軍主体のOEA有志軍を組んでキューバを武力侵攻する画策をしていた。
 これを逸早く察知した当時のフルシチョフ・ソ連政権がキューバに「確固たる防衛策」としてソ連の核ミサイルを配備するよう提案。その結果、62年10月の米ソ核ミサイル危機が勃発した。

 ベネズエラが今回、OEAから追放されれば、その追放策の底流に、武力でマドゥーロ体制を倒したい米国の執念があるだけに、「ベネズエラ問題」は危険な段階に陥りかねない。

▼ニカラグアのオバンド枢機卿が死去

 ミゲル・オバンド枢機卿(92)が6月3日、死去した。1970年代末まで続いたソモサ独裁と、79年の革命で登場したサンディニスタ政権の両方に反対し、90年の大統領選挙でのダニエル・オルテガ大統領を敗北に導くのに貢献した。

 その後、90年代の2度の大統領選挙でもオルテガ落選で動いた。だが2004年、オルテガと和解。オルテガ政権は07年に復活、現在3期目にあるが、オバンド枢機卿は政治集会などで必ずオルテガ大統領の左隣に座り、政権の権威づけに貢献していた。

2018年6月3日日曜日

 キューバ国会が改憲案起草委員会を設置▼7月末に草案提出へ▼ベネズエラが政治暴力犯40人を新たに釈放▼スペイン新首相が就任

 キューバ人民権力全国会議(ANPP,国会に相当)は6月2日、特別本会議を開き、憲法改正案起草委員会設立を全会一致で決議した。

 委員会はANPP議員33人で構成される。委員長はラウール・カストロ共産党第1書記、副委員長はミゲル・ディアスカネル国家評議会議長。委員会は、改憲草案を7月末のANPP通常会期に提案することになっている。

 現行の社会主義憲法は1976年に公布され、1992年と2002年に改正された。ディアスカネル議長はANPPでの演説で、2011年の党大会で「経済・社会現代化(改革)指針」が導入されたのを受けて改憲が必要になったと説明。
 さらに、人道主義、社会正義、社会主義堅持、国民団結、共産党の前衛の役割、を基本理念とする、と表明した。

 起草委員会に長老ホセ=ラモーン・マチャード第2書記は入っているが、別の長老で守旧派筆頭と見られているラミーロ・バルデス革命司令官(国家評議会副議長)は加わっていない。

 一方、クバーナ(国営キューバ航空)は2日、国内便全便の運航を9月まで停止すると発表した。112人が死亡した5月18日のクーバナ国内便墜落事故を受け、全機の機体点検のため。
 墜落機はメキシコから借りていた機体だった。110人が死亡、3人が救助されたが、うち2人はその後死亡した。

▼べネズエラがさらに40人釈放

 政府は6月2日、街頭暴力事件加担などで逮捕、拘禁されていた40人を釈放した。前日の39人に続くもので、計79人に達した。いずれも殺人など重罪に直接関係していない者とされる。

 政府はまた、通貨ボリーバルのデノミネーションを8月4日実施すると発表した。

▼スペイン新首相が就任

 スペイン労働社会党(PSOE=ぺソエ)のペドロ・サンチェス書記長が6月2日、首相に就任した。モンクロア宮殿でフェリーペ6世国王の前で、憲法に基づき宣誓した。就任式に付き物のキリスト受難像も聖書も用いられなかった。

 同じく就任したばかりのカタルーニャ州のキム・トーラ新首相は、サンチェス首相に、「カタルーニャ問題で対話しよう。互いにリスクを負おう」と呼び掛けた。

2018年6月2日土曜日

 メキシコ大統領選挙まで1カ月:AMLO(アムロ)候補が突出リード▼ベネズエラ政府が街頭暴力犯らを釈放▼ニカラグア国民対話が無期限中断

 7月1日のメキシコ大統領選挙まで1カ月。ㇾフォルマ紙による5月末の世論調査によれば、国家刷新運動(MORENA)候補アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ、元メキシコ市長)が支持率52%で当選する勢い。

 次いで国民行動党(PAN=パン)候補で、民主革命党(PRD=ぺエレデ)などの支持を受けているリカルド・アナヤが25%。政権党・制度的革命党(PRI=プリ)候補ホセ・メアデ元外相は19%だった。5月半ばの調査では、それぞれ43%、24%、16%だった。

 世紀末から3期12年続いてきた保守右翼勢力・新自由主義利権体質のPRI/PANのプリパニスタ体制下で、麻薬組織と政府治安部隊の戦いを中心とする暴力事件が日常茶飯事化し、選挙民から忌み嫌われてきた。

 さらにトランプ米政権に翻弄され手も足も出ないエンリケ・ペニャ=ニエト現大統領と政権党PRIの体たらくと、似たり寄ったりの前政権党PANの支持率は低落した。これに反比例して最有力候補にのし上がったのがAMLOだ。3度目の挑戦で金的を射止める可能性が強まっている。
 選挙戦は終盤。AMLOに対する誹謗中傷宣伝が一層激化するもようだ。

▼ベネズエラが街頭暴力犯らを釈放

 政府は6月1日、2012~17年に起きた反政府グアリンバ(街頭暴力事件)に関与、破壊活動などに加担した受刑囚およひ拘禁者計39人を釈放した。

 コロンビア国境のタチラ州都サンクリスト―バル元市長ダニエル・セバジョスは、
30日ごとに当局に出頭することと出国禁止が釈放条件になっている。
 自宅に立て籠もりライフル銃を構えて治安部隊を威嚇したアンヘル・ビバス退役将軍も釈放された。

▼ニカラグア国民対話が無期限中断

 デニス・モンカーダ外相は7月1日、反政府勢力が破壊活動を止めないことなどを理由に、政府と反政府勢力の対話を無期限中止すると発表した。
 5月16日に始まった対話は23日中断、双方の話し合いで再開が決まったが、各地の街頭での衝突事件が絶えず、死傷者が続出していた。

 スペイン新首相にペドロ・サンチェス労社党(PSOE)書記長▼国会下院がM・ラホーイ首相を不信任▼ラ米に好影響

 スペイン国会下院は6月1日、マリア―ノ・ラホーイ首相(63)に対する不信任決議を採択。同首相は職位を失い、野党第1党「スペイン労働社会党」(PSOE=ぺソエ)のペドロ・サンチェス書記長(46)が新首相に決まった。

 下院定数は350。不信任決議には過半数の176議員の賛成が必要だが、180票集まった。PSOEの議席は84で、これに左翼ポデモス連合、カタルーニャ党、バスク民族党(PNV)が同調した。

 PNVを除く賛成票は175と半数だったが、PNVの5票が加わって180に達した。PNVは、中央政府がバスク州に5億4000万ユーロのインフラ投資をするというサンチェスの約束を多として賛成に回った。

 サンチェスは、軍事独裁者フランシスコ・フランコの1975年の死を経た民主化後、フェリーペ・ゴンサレス、ホセ=ルイス・ロドリゲス=サパテロに次ぐ3人目のPSOE首相となる。近く国王の認定をもって、正式に就任する。

 フランコ独裁の流れを汲む保守・右翼勢力の国民党(PP)党首だったラホーイは、ホセ=マリーア・アスナル元首相の後を受けて党首に就任。だが2004、08両年の総選挙に敗れ、サパテロ政権を2期許した。

 だが2011年12月、ようやく政権に就いた。リーマンショック後の経済危機で緊縮経済を余儀なくされ、さらにラホーイ自身も関与した疑惑が高まった腐敗事件で14年窮地に陥った。この時、ラホーイは英領ジブラルタル奪回問題を使ってナショナリズムを煽り、窮地を乗り切った。

 だが人気は落ち国民の経済不満も収まらず、15、16両年の総選挙で政権を失う危機にまたも陥ったが、野党分裂により辛くも延命に成功した。

 しかし1999~05年に起きた「グルテル事件」と呼ばれる一大汚職事件が再燃、5月24日、PP幹部ら29人が長期禁錮刑を含む有罪判決を受けた。彼らは、複数の企業から公共事業発注と引き換えに多額の賄賂を受け取っていた。
 さしものラホーイも今度ばかりは逃げられず、不信任された。ラホーイはアスナルと同様、右翼で、ラ米ではキューバやベネズエラに厳しかった。

 ラ米19カ国の宗主国だったスペインは、歴史的、言語的、宗教的、文化的紐帯から依然、ラ米への影響力を維持している。ラ米にとっては、トランプ米政権と歩調を合わせていた右翼ラホーイが去り、中道左翼のPSOEが政権に戻ったことで息つける空間が増えたと言える。

 カタルーニャの共和主義者にとっても、王党派のPPが政権から降りるのは意味がある。だが王政を排して共和国を復活させるのは至難の業だ。スペイン共和国は1939年、内戦に勝ったフランコによって潰され、フランコの死の直後に王政復古した。

 共和国復活が難しいため「独立を」という選択肢が出ているわけだ。ラホーイは昨年来、「独立派を抑えつけた」が、それによって記憶されるかもしれない。

2018年6月1日金曜日

 ベネズエラ野党勢力が再編成▼旧MUDは伝統政党ADと極右中心に出直し▼ファルコン派は伝統政党COPEIなど民社系でまとまる▼不明瞭な「拡大戦線」との関係▼ウルグアイ外相が仲介意欲示す▼キューバ議長が帰国▼ニカラグアで死傷者増える

 ニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派政権に反対するベネズエラ野党勢力が5月末、2つの政党連合組織を結成した。

 一つは保守・右翼野党連合「民主連合会議」(MUD)。民主行動党(AD、民社)、まず正義党(PJ、極右)、人民意志(VP、極右)、新時代(UNT、右翼)、ラ・カウサR、ベネズエラ進歩運動(MPV)で30日、再編成された。事務局長にはラモーン・アべレードが就任した。

 二つ目は、5月20日の大統領選挙で敗北したが善戦したヘンリー・ファルコンを支持する勢力。進歩主義前哨(AP、ファルコンの党)、キリスト教社会党(COPEI)、社会主義運動(MAS)の3党を中心に、小さな7会派が参加している。31日公表された。
   この連合体は自らを「野党統一綱領」などと呼んでいるが、正式名称かどうか不明。

 今年初め「MUDの後身」と銘打って発足した野党連合「自由ベネズエラ拡大戦線」(FAVL)と再編成されたMUD、およびファルコン派連合との関係は明らかではない。

 こうした分裂、組織的重複や曖昧さをかかえる野党勢力は、400~500万人の支持基盤を持つチャベス派に歯が立たない。そのため米国、リマグループ、欧州などの反マドゥーロ諸国の支援を得て、「20日の選挙を認めない」「再選挙を」と宣伝活動を繰り広げてきたが、効果がない。

 一方、ウルグアイのロドルフォ・ニン=ノボア外相は5月31日、同国上院外交委員会でベネズエラ情勢に触れ、マドゥーロ政権と反政府勢力の間で仲介役を務めるのが建設的だ、と述べた。

 同外相は、ベネズエラには選挙参加派、棄権(ボイコット)派、福音派と3種類の野党勢力があるようだ、と指摘した。

▼キューバ議長が帰国

 ミゲル・ディアスカネル国家評議会議長は5月30日から2日間のべネズエラ公式訪問を終え、31日帰国した。同議長にとり、4月の就任後最初の外遊だった。
 ハバナ空港には、ラウール・カストロ共産党第1書記(前議長)らが出迎えた。これには新議長を励ます意味があるが、ベネズエラとの経済協力交渉が成果を挙げたことをも示唆する。

   一方、玖米間の直接航空便が5月31日開始された。オバマ前米政権期の2016年3月に実施が決まっていた。

▼ニカラグアで死者15人、199人負傷

 5月30日から31日にかけて各地の都市を中心に大学生ら反政府勢力と、私服の政府系鎮圧団が衝突した。警察発表では、15人が死亡、199人が負傷した。