2016年5月30日月曜日

キューバ次期議長ミゲル・ディアスカネル来日

 社会主義クーバの次期国家評議会議長の地位にあるミゲル・ディアスカネル第1副議長が5月31日、初めて来日する。同議長は23日から30日までベラルーシとロシアを訪問していた。

 ラウール・カストロ議長は2013年2月、ディアスカネルを第1副議長に据え、後継者であることを内外に明示した。その後、内政と外交面で経験を積ませてきた。

 18年2月には議長の座に収まり、21年4月の第8回共産党大会で第1書記に就任する公算が大きい。

 主な日程は、31日、経団連での日玖経済懇話会夕食懇談会出席。6月1日、広島訪問。2~3日、外務省での日玖高級会議出席。2日夜には、ホテルオークラでクーバ大使館主催のレセプション。4日帰国へ。

2016年5月29日日曜日

ベネズエラ政府と野党連合がサントドミンゴで話し合い

 ベネスエラ政府と野党連合MUDは5月27日、ドミニカ共和国(RD)の首都サントドミンゴで危機打開のための話し合いに入った。28日まで話し合う。

 これは南米諸国連合(ウナスール)が仲介を委託したホセ=ルイス・ロドリゲス=サパテーロ前スペイン首相、マルティン・トリホス元パナマ大統領、レオネル・フェルナンデス前RD大統領が先にカラカスで下地をつくった結果で、これら3人も話し合いに同席している。

 政府側からはデルシー・ロドリゲス外相、カラカス中心部リベルタドール区長ホルヘ・ロドリゲス、国会議員エリーアス・ハウア元外相の3人、MUDからはアルフォンソ・マルキーナら国会議員3人が、それぞれ参加している。

 ウナスールのエルネスト・サンペール事務局長(元コロンビア大統領)は26日ローマで、法王フランシスコと会談、ベネスエラ情勢についても話し合った。

 チレの首都サンティアゴでは26日、第21回米州キリスト教民主機構(ODCA)会議が始まった。「社会主義インターナショナル」と「キリスト教民主インターナショナル」が合同会議を開き、ベネスエラ情勢を討議する件が中心議題。

 アルヘンティーナのスサーナ・マルコーラ外相は27日、パラグアイ外相から、南部共同市場(メルコスール)外相会議を開き、ベネスエラへの「民主条項」適用について話し合いたいとの提案があったことを明らかにした。マルコーラは、メルコスール輪番制議長国ウルグアイの外相にこの件で打診中。

 パラグアイでは2012年、フェルナンド・ルーゴ大統領が、農村部での殺傷事件をでっちあげられ国会で一方的に弾劾されて解任された「国会クーデター」が発生。その直後にメルコスールから「民主条項」を適用され、加盟資格を一定期間、停止された。これを屈辱とする同国は今、ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領の孤立化を図ろうとしているわけだ。

 スペインでは、右翼のマリアーノ・ラホーイ首相が27日、国家安全保障会議を開き、ベネスエラ情勢について討議した。「ベネスエラ在住スペイン人20万人の安全保障」が名目的議題とされている。

 マドゥーロ大統領は、北大西洋条約機構(OTAN・NATO)と米国はベネスエラ介入を正当化する口実を探っているが、ラホーイとヘンリー・ラモス(ベネスエラ国会議長)がそれを煽っている、と非難している。

 一方、ベネスエラが盟主のカリブ連帯石油機構(ペトロカリーベ、17カ国)は27日カラカスで、第16回閣僚会議を開き、域内で天然ガスを供給する合弁会社を設立する件について話し合った。また、「ペトロカリーベ経済地域」(ZEP)創設構想も話し合われた。

▼ラ米短信  ペルー大統領選挙決選(6月3日)の支持率調査結果が5月27日新たに発表された。GFK社はケイコ・フジモリ(41)52・2%、ペドロ=パブロ・クチンスキ(PPK、77)47・8%。DATUM社は、ケイコ52・9%、PPK47・1%だった。

 ケイコは北部、東部(アマゾニア、アンデス高地)、リマ首都圏で強く、PPKは中部と南部で強い。
 

2016年5月28日土曜日

アルゼンチンで「コンドル作戦」関与者に重い実刑判決

 アルヘンティーナ法廷は5月27日、1970年代~80年代に南米軍政6カ国が展開した反政府勢力暗殺共同作戦「コンドル計画」に亜国内で関与した亜国人16人、ウルグアイ人1人の計17人に判決を下した。

 亜国軍政(1976~83)最後の非合憲大統領だったレイナルド・ビニョーネ(88)ら2人に禁錮20年の実刑が言い渡された。事実上の終身刑だ。

 拉致、拷問、殺害を担当した秘密警察の元幹部ミゲル=アンヘル・フルシ、元陸軍第4軍団司令官サンティアゴ・リベロス、ウルグアイ人元大佐マヌエル・コルデーロの3人に禁錮25年が下された。

 コルデーロは、拉致されてきたウルグアイ人政治囚を扱う秘密拘置所「アウトモトーレス・オルレッティ」で拷問、殺害をほしいままにした。ブラジルで逮捕され、2007年亜国に引き渡された。この、ほか禁錮18年1人、13年3人、12年5人、8年1人。2人は無罪だった。

 この審理は2013年に始まり、当初容疑者は33人いたが、ホルヘ・ビデーラ元軍政非合憲大統領らが死去、起訴されたのは17人に減っていた。

 「コンドル作戦」はニクソン、フォード両米政権で国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャーやCIAの肝煎りで策定され、ブラジル、亜国、ウルグアイ、パラグアイ、ボリビア、チレの6カ国軍政が加担した。

 犠牲者は106人。ウルグアイ人45、智人22、パラグアイ人15、ボリビア人13、亜国人10、エクアドール1。チレ人にはカルロス・プラッツ元陸軍司令官、ボリビア人にはフアン=ホセ・トーレス元軍政大統領が含まれている。

 法廷傍聴席は犠牲者の遺族らで埋め尽くされた。亜国「五月広場の母の会(創設期路線)」のタティー・アルメイダ、亜国詩人の故フアン・ヘルマンの孫マカレーナ・ヘルマンらの姿もあった。

 ウルグアイでは、軍政の人道犯罪を裁く意志がウルグアイには欠けて、といる批判する声があらためて大きくなっている。

▼ラ米短信  メヒコの教員養成学校生43人らの強制失踪事件発生から5月26日で1年8カ月経った。学生の家族、友人、教員らはメヒコ市中心部のレフォルマ大通りで抗議行進、検察庁前で特に強く抗議した。

 抗議する人々は4班に分かれ、約20カ国の大使館を訪ね、支援を求めた。エル・サルバドール(ES)、クーバ、スペイン、ポルトガル、ドイツ、アイルランド、ウクライナ、ルーマニア、イスラエルなど。ESとスペインの大使館員は面談に応じた。

 一方、この事件に関するメヒコ国会特別委員会の議員団は26日、事件当日学生らが乗っていたバスの運行会社「エストゥレージャ・ロハ・デ・スール(南赤星)」を訪れたが、同社は情報提供を拒否した。

 エンリケ・ペニャ=ニエト大統領の政府は、連邦政府の事件関与に関する捜査を拒否。このため真相は20カ月経っても未解明のままだ。


 
 
 

2016年5月27日金曜日

ペルー大統領選挙決選支持率、ケイコ54・2%、PPK45・8%

 ペルーの世論調査機関CPIが5月26日発表したところでは、6月5日実施の大統領選挙決選で「人民勢力」(FP)候補ケイコ・フジモリが勝利する公算が膨らんでいる。

 CPIは5月23~24両日、全国的に調査。ケイコ46%、「変革のためのペルー人」候補ペドロ=パブロ・クチンスキ(PPK)38・9%、白票9・6%、その他5・5%だった。

 白票とその他を除く有効投票だけで計算すると、ケイコ54・2%、PPK45・8%になる。29日にはリマ市で両候補の討論会があり、これが終盤戦の山場となる。

 PPK陣営や、作家マリオ・バルガス=ジョサを含む反フジモリ派による、ケイコへのネガティブキャンペーンが激化しているが、40代初めのケイコは、70代後半のPPKを遥かに上回る迫力と活力で支持者を固めているようだ。

 最大の攻撃所は父親アルベルト・フジモリ元大統領との親子関係だが、ケイコ陣営は昨年から「父親切り離し戦略」を採っており、これが奏功していると言えるかもしれない。

▼ラ米短信  ブラジル上院弾劾裁判担当部門は5月26日、ヂウマ・ルセフ大統領(停職中)の弾劾法廷を6月初め開き、8月2日に弾劾投票を実施する日程案を固めた。

 ミシェル・テメル大統領代行は、8月5日のリオデジャネイロ五輪開会式前にルセフ解任に漕ぎつけ、代行から暫定大統領に昇格して開会式に臨みたい構えだ。

 だが、弾劾派議員たちがルセフ追い落としをクーデターと意識していた事実が明らかになりつつあり、それが弾劾法廷審理と投票行動に影響を及ぼすかどうかに関心が集まっている。

2016年5月25日水曜日

ボリビア大統領が4選出馬のため国民投票また実施か

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は5月24日、2019年の大統領選挙に4選を目指して出馬する意志を明らかにした。そのためには大統領連続再選回数を定めた憲法条項を修正せねばならない。大統領は今年2月21日、そのための国民投票で敗れた。

 これについてモラレスは、あの時は醜聞を流され、改憲賛成48・7%、反対51・3%で敗れたが、醜聞のない新たな国民投票では勝つ、と明言した。

 2月の投票直前、カルロス・バルベルデという記者が、モラレスの愛人問題、とりわけ二人の間に子供が一人いたという情報を流した。これが災いし、モラレスは僅差で敗れた。だが最近、同記者は「元愛人との間に子供はいなかった」ことを確認した。これが今、モラレスには有利に作用している。

 モラレスの最強の支持基盤は、コチャバンバ市郊外チャパーレでコカ葉を栽培している労働者(コカレロ)および、同市を本拠とするコカレロ労連。モラレスは今も、コカレロ労連連合の最高指導者だ。このコチャバンバ市の支持層は、国民投票実施に必要な有権者の20%(120万人)の署名を集める運動を近い将来開始することにしている。

 「やり直し投票」は来年実施の公算が大きい。南米の右傾化が進行している今、モラレスは南米左翼の新しい指導者になろうと決意しているかに見える。また、悲願の「太平洋岸領土回復」のためには、政権に居続けねばならない。

▼ラ米短信  エクアドールのラファエル・コレア大統領は5月24日、国会で最後の施政報告演説を展開した。国会議長、副大統領、閣僚の3人の登壇を含め、5時間に及んだ。

 大統領は来年のこの日、任期満了で退陣するが、「国は私から休むべきだ」と、2007年から10年続くことになる長期政権であることに触れた。

 太平洋岸で4月16日に起きたM7・8の大地震の復興費を30億ドルと見積もり、資金捻出のため水力発電所、銀行、テレビ放送局など国営企業の売却(民営化)を余儀なくされる、と述べた。

 また6月1日施行の特別措置で、付加価値税(消費税)を現行の12%から14%に引き上げる。月給1000ドル以上の者から1日分の給与を徴収すつことや、資産100万ドル以上の富裕層から、その0・9%を1回だけ徴収することも明らかにした。

 経済不況については、最大輸出品である原油の国際価格低迷、中国経済減速、ロシア市場狭小化、米OXY石油への「賠償金」10億ドル支払い、輸出減少、外資導入縮小、通貨が米ドルであるための負の問題などを列挙した。

 大統領は、政権党「PAIS」の党大会や予備選を年内に開き、後継の大統領候補を決めることにしている。

ブラジル大統領弾劾はクーデター:辞任閣僚発言が示す

 ブラジルのテメル代行政権が5月23日、最初の危機に直面した。ヂウマ・ルセフ大統領が弾劾裁判にかけられることになり停職処分となった5月12日、副大統領ミシェル・テメルは大統領代行に就任した。だが23日、重要閣僚の一人である企画相ロメーロ・ジュカーが「重大な失言」を新聞に暴かれて辞任に追い込まれたのだ。

 ジュカーはルセフ政権が存続していた3月13日、国営石油ペトロブラス子会社トランスペトロ社の元社長セルジオ・マシャードとの会話中、「ペトロラン(ペトロブラス絡みの大規模贈収賄事件)捜査を止める唯一の方法は、大統領をルセフからテメルに替えることだ」と語った。この会話が録音されていて、「特ダネ新聞」として名高いフォーリャ・デ・サンパウロ紙が23日暴露した。

 テメルもジュカーもペトロラン関与疑惑がかけられている。さらにテメル政権の閣僚にまだ7人のペトロラン関与者がいる。ジュカーは、最大政党PMDB(伯民運党)党首。

 さらに重大なのは、ジュカーが「国軍高官らもヂウマ打倒を了解している」という趣旨の発言をしていることだ。

 ルセフ大統領陣営は、ジュカー発言は国会の弾劾工作がクーデターだった何よりの証拠だ、といきり立っている。テメル政権は早くも<時限爆弾>を抱えることになり、行方に暗雲が立ち込め始めた。それが爆発すれば、上院での弾劾裁判に影響が及び、弾劾支持派が減る可能性も、無きにしもあらずだ。

 一方、テメル代行は24日、教育など社会支出予算の削減や年金制度見直しを発表した。またジョゼ・セラ外相は23日ブエノスアイレスでの亜伯外相会談で、南部共同市場(メルコスール)の「政策軟化」について話し合った。

 ルセフの政治的貢献人であるルーラ前大統領は汚職罪で起訴されているが、弁護団は23日、最高裁に対し、ルーラがルセフから任命された3月16日からルセフ停職の5月12日まで官房長官だった事実を認めるよう訴えた。

 最高裁判事の一人は、PSDM(伯社民党)など、ルセフ弾劾派の要求をいれて、ルーラの就任を無効と判断した。
   

キューバ外相がベネズエラを「連帯訪問」

 クーバのブルーノ・ロドリゲス外相(共産党政治局員)は5月23日ベネスエラを訪問、デルシー・ロドリゲス外相、次いでニコラース・マドゥーロ大統領と会談した。

 クーバ外相は、「クーバは、革命原則もベネスエラ人民への忠義も1ミリメートルたちとも譲らない」と述べ、カストロ兄弟の連帯意志を大統領に伝えた。

 両国外相は、チャベス廟に参り、カラカス市内の医療施設を視察した。同施設は低所得者居住地域(バリオ)の中で保健活動する「バリオ・アデントロ」計画の施設で、クーバ人の医師、看護師、技術者が活動している。

 一方、ベネスエラ最高裁は23日、国家選挙理事会(CNE、選管)前への無許可デモ行進を禁止した。政権党国会議員ディオスダード・カベージョ(前国会議長)は、「野党連合MUDは、国民投票を口実に街頭暴力醸成を狙っている」と非難した。CNEは24日、MUDが提出した国民投票請求者名簿20万197のうち、2万1560に不備があった、と発表した。

 MUDは、6月13~15日ワシントンの本部で開かれる米州諸国機構(OEA)外相会議が、ベネスエラ問題を討議することを求めている。狙いは、「米州民主憲章」をベネスエラに適用し、同国のOEA加盟資格を停止させることだ。

 南米諸国連合(ウナスール)は23日声明を発表、カラカスで先週、サパテーロ前スペイン首相ら元首脳3人が政府と野党の対話を仲介したことについて、「ベネスエラが対話、共生、平和に則り政治的安定と経済回復のための代案を見出すことに今一度かけた」と述べた。

 NGO「ベネスエラ人権教育・活動計画」(PROVEA)は24日、食糧・薬品不足や社会基本サービス低下で、構造的貧困が2014年の21・3%から15年の29・1%に増えた、と発表した。  

2016年5月24日火曜日

LATINA乱反射は「キューバ共産党大会とオバマ訪問」

◎最近の伊高浩昭執筆記事

★月刊誌LATINA6月号(ラティーナ社) 「ラ米乱反射」連載第122回
「キューバ共産党の任務は<体制防衛>と第7回大会が確認  <ハーメルンの笛吹男>を演じたオバーマ米大統領」

☆同誌「特別報告」 「心豊かな清貧政治家ホセ・ムヒーカ、日本をゆく」

★月刊誌「世界」6月号(岩波書店) 「世界一、心豊かな大統領 来日言行録  ホセ・ムヒカ大いに語る」

★週刊紙「週刊読書人」5月20日付 書評  工藤律子著『ルポ: 雇用なしで生きる  スペイン発「もう一つの生き方」への挑戦』(岩波書店、2000円)

2016年5月23日月曜日

マドゥーロ・ベネズエラ大統領がカリブ歴訪で余裕見せる

 ベネスエラ国軍と民兵部隊は5月21日、前日からの国防演習「独立2016」を終えた。全国で計51万9000人が参加、主として防衛線構築などに力を入れた。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は、ブラディミロ・パドゥリーノ国防相に、「非通常型戦争」に勝つ戦略の策定を求めている。国軍と民兵を動員しての「全人民戦争戦略」は、クーバの革命軍および民兵隊に倣っている。

 大統領は21日、カラカスにボリビアのエボ・モラレス大統領を迎え、会談した。モラレスは20~21日クーバを公式訪問し、21日ハバナでフィデル・カストロ前議長と会談した後、カラカスに立ち寄った。「我々のフィデルはすっかりお爺さん、老人になってしまったが、依然輝いている」と印象を述べた。

 マドゥーロ大統領は内外から退陣圧力をかけられている折から、モラレスのような盟友の来訪はありがたい。マドゥーロは21日、ジャマイカのキングストン入りし、22日首脳会談。同日夜、トゥリニダードトバゴ(TT)のポートオブスペインに到着した。23日首脳会談に臨み帰国する。

 カリブ英連邦諸国の中で最も影響力のあるジャマイカとTTへの駆け足の歴訪には、「ベネスエラには国際的連帯がある」ということを示す狙いがある。また国内情勢緊迫の折、外遊する余裕があることを内外に印象付ける狙いもあるだろう。

▼ラ米短信  ペルー北部のピウラ市で5月22日、大統領選挙決選を戦うケイコ・フジモリ(40)、ペドロ=パブロ・クチンスキ(PPK、77)の両候補がテレビ討論会に出演、2時間半に亘り、政策を主張し、攻撃し合った。29日にはリマで2回目が催される。

 世論調査会社IPSOSが22日発表した支持率調査では、ケイコ46・1%、PPK41・6%、「未決定など」12・3%だった。「未決定など」を除いて計算すると、ケイコ52・6%、PPK47・4%となる。

 エル・コメルシオ紙が15日報じた調査結果では、ケイコ50・2%、PPK49・8%。ケイコが僅差でりーどしているが、接戦であることには変わりない。

 ケイコは、反フジモリ勢力から、自陣選対幹部が「過去に麻薬資金洗浄に関係した事実」を暴かれた。終盤戦で持ち出されたこの醜聞にケイコ陣営は打撃を受けている。だが米麻薬捜査局(DEA)は、ケイコは捜査対象でない、と公表している。

 決選は6月5日実施される。残り2週間、激戦が続く。
  
 

2016年5月21日土曜日

スペイン、パナマなどの大物政治家がベネズエラで対話を仲介

 ベネスエラ国軍と民兵部隊は5月20日、全土で国防演習「独立2016」を実施した。演習最終日の21日は、兵士らが「地区供給・配布委員会」(CLAP)と連携し、庶民に食糧や薬品を配布するという。

 この日、南米諸国連合(ウナスール)派遣の使節団が政府と、野党連合MUDの間で対話実現への仲介工作を開始した。使節団は、スペイン前首相ホセ=ルイス・ロドリゲス=サパテーロ、ドミニカ共和国前大統領レオネル・フェルナンデス、パナマ元大統領マルティン・トリホスの3人。マルティンは、パナマ運河返還を米国から勝ち取った故オマール・トリホス将軍の息子。

 コロンビア、米国、フランスなどは、この対話仲介工作への支持を表明した。また亜国、チレ、ウルグアイ3国政府は20日、ベネスエラの問題は「ベネスエラ人が、人権と自由を擁護しつつ対話を通じて解決すべきだ」とする声明を同時発表した。3国外相が共同声明に署名している。

 MUD内の遵法派は、政府がニコラース・マドゥーロ大統領罷免の是非を問う国民投票を年内に実施する決意ならば対話に応じる、との立場だ。

 国家選挙理事会(CNE)のティビサイ・ルセーナ議長は20日、MUDが提出した国民投票請求者名簿が正しいか否かを依然検証中、と明らかにした。これは「国民投票はない」との政府首脳らの言明と異なっており、政府が緊迫する事態を前に硬軟両方の対応を図りつつあることを示唆している。

 一方、MUD内右翼には、街頭暴動で治安を撹乱、「騒擾状態」を醸し軍を放棄させるゴルペ(クーデター)戦略の選択肢もある。政権党PSUVは、彼らは2002年4月のゴルペの再来を狙っている、と非難している。

 当時、野党勢力は街頭暴動で軍部を決起させ、ウーゴ・チャベス大統領(故人)を拘禁、チャベスはカリブ海の島に連行された。だがチャベス派部隊が蜂起し、ゴルペ派軍部に手を引かせた。チャベスはゴルペ3日目に政庁に復帰した。

 最高裁は19日、マドゥーロ大統領が発動した「非常事態」を合憲と判断した。同日、警察は、MUD最高幹部の一人ヘンリー・ラモス国会議長の護衛隊長を逮捕した。18日のMUD街頭行動中、機動隊員らを襲った暴力事件を教唆した疑いがかけられている。

▼ラ米短信  ボリビアのエボ・モラレス大統領は20日クーバを公式訪問し、ラウール・カストロ国家評議会議長と会談した。ヂウマ・ルセフ大統領が弾劾の危機に直面しているブラジル情勢が議題の一つであるのは想像に難くない。

 モラレスは19日にはラパスで、米国で成立した「多国間麻薬取引法」が、ボリビアに伝統的なコカ葉文化を規制対象にしていると指摘し、「コカ葉は尊厳と主権の象徴だ」と強調。「米国は世界の主ではない。我々は規制を許さない」と述べた。大統領はまた、「現代は帝国が新自由主義モデルをかざして支配する時代ではない。国際的な解放の時代だ」と語った。

 米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長が、「米州民主憲章」をベネスエラに適用しようと根回ししつあることについては、モラレスは「われわれには主権を持つ<大なる祖国>がある。OEAは米国の植民地省になれはしない。いかなる勢力の指図も不要だ」と反駁した。

 ラ米カリブ33カ国が構成する「ラ米・カリブ諸国共同体」(CELAC、2011年12月発足)が、「大なる祖国」を象徴する機関である。

2016年5月20日金曜日

元スペイン駐在大使、林屋永吉さんが96歳で死去

 かつて外務省きってのスペイン語の使い手で、翻訳家でもあった元外交官、林屋永吉さん(96)が5月18日死去した。葬儀は24~25日、東京都文京区の護国寺で執り行われる。

 私が林屋さんを最初に知ったのは、メヒコ五輪のあった1968年ごろだった。五輪の前か後か記憶にないが、林屋さんは2度目のメヒコ市勤務で、日本大使館参事官兼日本文化センター所長だった。

 私は、日墨間の文化行事などの折、何度も林屋さんを取材、貴重な情報をいろいろいただいた。メヒコ市でのお付き合いは、少なくとも3年以上続いたと思う。自宅に招かれ、園子夫人の手料理を味わった。次は東京で何度かお会いし、麻布の洋館の自宅にも招かれた。

 その後、ボリビア駐在大使を経て、ペイン駐在大使になった。1982年、私はマドリードで林屋大使に再会、公邸で晩餐会を開いてもらたった。

 当時の私は南ア・ヨハネスブルク駐在だったが、亜英マルビーナス(フォークランド)戦争を4~6月ブエノスイアレスを拠点に出張取材。これが終わるとすぐにバルセローナに飛び、サッカーW杯スペイン大会を一カ月取材した。

 南ア-亜国ースペインを往来、南半球の初冬から真夏のイベリア半島への移動で、若かった私もグロッキーになった。マドリードでのW杯決勝戦終了後、私は大使を訪ねたのだった。

 時間は飛んで、90年代以降は、東京での外交行事、ラ米やスペインの大使館行事などで林屋夫妻にしばしば会っていた。晩年は、日西文化センターの仕事に力を注ぎ、何度も同センターのあるサラマンカに行っていた。

 大阪外語を卒業、外務省に入った林屋さんは、第2次大戦中、サラマンカ大学に派遣留学。45年拘留され、46年帰国した。スペインは、林屋さんの第2の祖国だった。

 マヤ文化の古典『ポポロブフ』を日本語に訳し、芭蕉の『奥の細道』をオクタビオ・パスとスペイン語に共訳した。

 数年前に転倒、杖を手にパーティーなどに参加していたが、高齢もあって体調が徐々に思わしくなくなっていた。メヒコ以来の共通の友人である伊藤昌輝元ベネスエラ駐在大使から、林屋さんが自伝執筆を構想していると聞き、出版されたら是非、書評を書かせてほしいとお伝えした。だが、それも叶わなくなった。

 スペイン語と深い知識を縦横に展開し、スペインやラ米を動きまわった優れた文化人の外交官が消えていった。  

2016年5月19日木曜日

政変の兆しが見えれば「騒擾事態」宣言も、とベネズエラ大統領

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月18日、ゴルペ(クーデター)の兆しの暴力が始まれば「国内騒擾事態」を宣言する用意がある、と述べた。

 マドゥーロは14日、国内外の脅威に対抗するためとして、60日間の「非常事態」を発動、16日の官報に記載され発効した。大統領は17日、内外記者団と会見、これにはスカイプを通じ世界各地のジャーナリストも参加したが、この会見で、米軍の空中警戒管制機が今月半ば2度、領空に侵入したことを明らかにした。

 大統領は、宿敵である極右指導者アルバロ・ウリーベ(前コロンビア大統領)がこのほど、「ベネスエラ侵攻部隊編成」を米国に働きかけたこと、および米軍用機侵入を踏まえて「非常事態」を発動したことを明らかにしている。

 米国務省は18日、米軍機侵入には触れずに、ベネスエラ指導部は人民の声を聞き、合理的決断をすべきだ、と内政干渉発言を新たにした。またカラカスの米大使館は同日、人員不足のため18日から観光・商用査証の発給業務を停止すると発表した。

 ワシントンに本部のある米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長(前ウルグアイ外相)は18日、マドゥーロ大統領への公開書簡で、「罷免国民投票を遮れば、独裁が増幅する。貴殿は人民、および自らのイデオロギーを裏切っている」と厳しく批判した。

 これに対しデルシー・ロドリゲスVEN外相は同日、「あなたは、主人である帝国主義国の教本内容を繰り返している、帝国主義のかすだ」とやり返した。続いてマドゥーロも、「ごみであり裏切り者であるアルマグロと米南方軍司令官は3時間会談した。会談内容はわかっている。2人ともベネスエラに執着している」と扱き下ろした。

 するとアルマグロは、「裏切り者は汝だ」とやり返した。このやりとりを知ったウルグアイ前大統領ホセ・ムヒーカはモンテビデオで18日、「マドゥーロは、雌山羊のようにいきり立っている」と批判した。アルマグロは、ムヒーカ前政権の外相だった。

 アルマグロは、OEAの「米州民主憲章」をベネスエラに適用することを検討中。加盟34か国中、3分の2(23カ国)が賛成すれば適用され、ベネスエラは加盟資格を凍結される。

 それだけならまだしも、凍結されれば、米軍介入に道を開く可能性が出てくる。マドゥーロは20~21日、「独立2016年」と名付けた軍事演習を全土で展開する。これには国軍と民兵が計51万9000人参加する。

 一方、1999年以降の政治的人道犯罪の実態を調査する政府機関「真実・正義・犠牲者賠償委員会」の国外委員である元首脳2人が18日カラカスで、マドゥーロと会談した。スペイン前首相ホセ=ルイス・ロドリゲス=サパテーロと、元パナマ大統領マルティン・トリホスだ。両人は、政府と保守・右翼野党連合MUDの間で、対話開始を仲介する可能性がある。

 MUDが多数派の国会は16日、「非常事態」を違憲と決議した。だが憲法判断は最高裁がするため、国会決議には効力がない。大統領は、「国会は政治的有効性を失った。消え去るのは時間の問題だ」と口にした。これに対し、大統領罷免国民投票の推進者であるエンリケ・カプリーレス(ミランダ州知事)は17日、国軍に対し、「憲法と政府のどちらの見方をするのか」と問いかけた。

 MUD支持派数百人は18日、カラカス中心街に抗議デモをかけ、警官隊に催涙ガスやゴム弾で排除された。首都中心部はチャベス派区長の下にあり、デモ行進は許可されていなかった。デモ隊が機動隊の女性隊員に暴行を加えるなどし、17人が逮捕された。

 この日、カラカスにパレスティーナ大使館が開かれた。開館式にはリアド・マルキ外相とデルシー・ロドリゲス外相が出席した。

2016年5月18日水曜日

空中警戒管制機が2度侵入と、ベネズエラ大統領発表

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月17日、スカイプを通じて世界各地のジャーナリストと会見し、今月11日と13日に計2回、殺傷能力を備えた空中警戒管制機(ボーイング703E3型)がベネスエラ領空に侵入した、と発表した。

 大統領は、ベネスエラ空軍が2度ともレーダーで探知、緊急発進して領空外に追い出したと明らかにし、「この軍用機は米軍が保有している」と述べた。

 マドゥーロはさらに、「ベネスエラはメディア、政治、外交各方面から攻撃されており、過去10年間で最悪の脅威に晒されている」と語った。

 また、今回の外国軍用機の侵入は、マドゥーロを敵視するアルバロ・ウリーベ前コロンビア大統領がこのほど、外部からのベネスエラ侵攻計画があることを示唆した事実と符合する、と指摘した。ウリーベはラ米極右勢力の旗頭の一人。

 マイアミの米南方軍司令部も最近、ベネスエラ政権打倒工作の進展を断続的に示唆している。米軍はコロンビア、パナマ、ホンジュラス、キューバなどに発信基地を備えている。マドゥーロは、空中警戒管制機がどの方面からベネスエラのどこに侵入したかは明かしていない。

 ベネスエラ国内は、マドゥーロ罷免の是非を問う国民投票実施を要求する反政府野党勢力によって撹乱されている。外からは米軍の脅威が始まった。まさに重大な局面に置かれている。

 ベネスエラ政府は日本時間17日夕、世界各地のベネスエラ公館を通して、このスカイプ会見に参加するジャーナリストを募った。在日VEN大使館もジャーナりストや組織に働きかけた。スカイプ会見は日本時間18日午前1時に始まった。

▼ラ米短信  ブラジル最高裁判事11人の一人は5月17日、ミシェル・テメル大統領代行(副大統領)に対する弾劾手続き開始を近く正式に提起すると述べた。

 ヂウマ・ルセフ大統領が弾劾裁判にかけられる理由と同じ、歳出資金の調達法をめぐる「背任行為」によって。代行政権は12日発足しており、最高裁がどこまで本気で「テメル弾劾」を検討しているのかは定かでない。ルセフ停職決定前にも、テメル弾劾の手続きをする時間はたっぷりあった。
 

2016年5月16日月曜日

ベネズエラが非常事態下で国軍の治安出動態勢敷く

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月15日、国軍に治安出動を命じた。保守・右翼野党連合MUDに代表される反政府勢力による街頭暴動、隣国コロンビアなどからの武装コマンド侵入、クーデターの可能性などに備えた措置。

 またデルシー・ロドリゲス外相は15日、コロンビア極右指導者アルバロ・ウリーベ前大統領(現上院j議員)が12日、米国に「MUDを支援する国際武装部隊の編成」を要請したのを受けて、「ウリーベに対し国際的な対抗措置をとる用意がある。ウリーベがパラミリタレス(極右準軍部隊)に近いことや国際犯罪に関与してきたことを我々は知っている」と述べ、ウリーベを糾弾した。

 マドゥーロは「ベネスエラに軍事侵攻する策謀だ」とウリーベを非難しているが、ロドリゲス外相は、「大統領が13日、非常事態を発動した理由はそこにある」と明かした。

 マドゥーロは12日、ブラジルのヂウマ・ルセフ大統領が弾劾を前提に停職に追い込まれたことについて「ゴルペ(クーデター)だ」と糾弾。「ベネスエラに迫るクーデターの危険」を指摘しながら、「ラ米にゴルペのウィルスが蔓延している」と語った。

 一方、アリストーブロ・イズトゥーリス副大統領は15日、MUDがマドゥーロ大統領罷免の是非を問う国民投票実施を選管に申請していることに関し、「MUDの署名運動や提出された署名に不備があるため、国民投票は実施されない」と言明した。

 また、政権党PSUVのディオスダード・カベージョ国会議員(前国会議長)も、「MUDは今年1月11日に国民投票実施を申請すべきだったが、それをしなかった」として、年内実施はないと述べた。

 故ウーゴ・チャベス前大統領の新任期は、癌で病床にあった2013年1月10日始まった。チャベスは3月死去。マドゥーロは同年4月、大統領選挙に当選、チャベスの残り任期を担っており、今年1月11日で、「任期半分を超えた」こととになる。憲法は罷免投票実施は、大統領任期が半分を経過した後、申請すると規定している。

 憲法はまた、任期6年のうち4年を超えてから罷免が決まった場場合は、副大統領が残る任期を暫定大統領として担うと定めている。チャベス派のPSUVは、罷免投票結果が来年1月11日以降になるように仕向け、これを受け入れるのはやむなし、という構えだ。

 MUDの中で、この国民投票実施運動を推進してきたミランダ州知事エンリケ・カプリーレス(過去2回大統領選挙で敗北)は、「状況は爆弾だ。国民投票が実施されないとなれば爆発する」と警告した。カベージョ議員は、「国民投票はゴルペの隠れ蓑だ」と指摘している。

 ワシントンでは、米諜報機関当局者が15日、記者団に、「ベネスエラは急速に解体している。米国は反政府勢力を支援していない」と語った。だが、「経済破綻と社会的騒乱を防ぐ場合は別として」と、極めてあいまいながら介入への可能性に含みを残した。
 
▼ラべ短信  ドミニカ共和国(RD)で5月15日、大統領選挙が実施された。選挙中央評議会(JCE、選管)によると、開票率18%段階で、現職のダニーロ・メディーナ大統領(ドミニカ解放党)が62%弱を得て、優位に立っている。

 2位は、野党・ドミニカ革命党(PRD)分派のルイス・アビナデルだが、35%と、大きく水をあけられている。

2016年5月15日日曜日

ベネズエラが「国外からの脅威」に備え非常事態発動

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月14日、向こう3カ月間有効の「非常事態」を発動、併せて、1月から続いている「経済緊急事態」の3ヶ月間延長も発表した。2017年までに生産力回復を図る狙い。

 「非常事態」は、「国外からの脅威に対処するため」。マドゥーロ大統領は、ヂウマ・ルセフ伯大統領が「停職処分」になり政権から排除された12日、これをゴルペ(クーデター)と非難。13日には、「次に私がゴルペに遭うのを阻止するため非常事態を敷く」と語っていた。

 マドゥーロは、「ゴルペの背後には米国が居る。米国はラ米進歩主義の潮流を断ち切ろうと策謀している」と指摘している。

 ベネスエラ国内は、野党連合MUDが国家選挙理事会(CNE)に申請中の大統領罷免の是非を問う国民投票をめぐり、政府と反政府勢力の間の緊張が極度に高まっている。

 CNEは12日、MUDが2日提出した185万人の投票申請者名簿について、署名を9日数え終えたと明らかにした。これを16~20日にディジタル化し、18~6月2日に約20万人の指紋を照合する。これが通れば、MUDは4日間に400万人の署名簿をCNEに提出し、投票実施を要請する。

 最初の申請には、有権者の1%、20万人弱の署名でいいのだが、MUDは185万人もの署名を提出し、処理に時間がかかることになり、裏目に出た。

 MUDは、マドゥーロ大統領が、故ウーゴ・チャベス前大統領の就任時から数えて任期が4年を超える来年1月10日以前に投票を実施させるのに躍起だ。憲法は、任期4年後ならば大統領が罷免されても、副大統領が大統領に昇格して残り任期を全うする、と規定している。

 MUD幹部は13日マイアミでの会合で、米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長(前ウルグアイ外相)と会った。アルマグロはMUDの意向を汲んで、「大統領罷免投票は12月以前に実施されるべきだ。実施されないと、ベネスエラ人民が意志表示する可能性が出てくる」と警告した。

 アルマグロはまた、「OEAで、米州民主憲章に照らしてベネスエラの民主状況を話し合うことになるかもしれない」とも語った。

 一方、ワシントンポスト紙は14日、米諜報機関筋発言として、「マドゥーロ政権は年内に人民蜂起によって倒れる。氷がきしむ音が聞こえる」と報じた。
 

2016年5月14日土曜日

アルゼンチン法廷がフェルナンデス前大統領を背任で起訴

 アルヘンティーナ司法当局は5月13日、クリスティーナ・フェルナンデス=デ・キルチネル(CFK)前大統領ら15人を、米ドル先物取引での不正行為による背任行為容疑で起訴した。

 CFK政権下の昨年9月、CFKは相場より安くドルを売るよう指示し、国庫に1億ドル余りの損害を与えた疑い。当時の経済相アクセル・キシロフ(現下院議員)、同中央銀行総裁アレハンドロ・バノリほか、元高官ら。法廷は各被告の資産100万ドルずつを差し押さえた。

 マクリ現政権の与党カンビエモス(変革しよう)が告訴していた。マクリ大統領のペロン派潰し戦略の一環であり、ルセフ伯大統領停職処分の起訴は、亜伯両国の保守・右翼勢力と財界が連動していることを示す。

 一方、起訴されたCFKは13日、マクリ政権が発足直後の12月16日、通貨ペソを34%切り下げた際、その情報を握っていた同政権閣僚らがインサイダー操作で不正に儲けたと非難した。

▼ラ米短信  ブラジルのミシェル・テメル大統領代行は5月13日、「(年末に暫定大統領に就任するとしても)任期2年では奇蹟は起こせない」と述べるとともに、エンリケ・メイヘレス蔵相には経済調整を自由裁量で実行するよう伝えてある、と語った。

 メイへレスはまだ政策を発表していないが、13日、年金受給年齢を定める方針を明らかにした。早期退職・受給を規制して財政負担を軽減させる狙いだ。

 一方、外務省は13日、今回の政変をゴルペ(クーデター)などと糾弾したり厳しく批判したりしたベネスエラ、クーバ、ボリビア、エクアドール、ニカラグアの5カ国政府に反駁。同じく、南米諸国連合(ウナスール)事務局長エルネスト・サンペール(元コロンビア大統領)と、米州ボリバリアーナ同盟(ALBA)に反論した。

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は駐伯大使を召還、対伯関係練り直しで協議している。同大統領は、ルセフ大統領弾劾の動きをゴルペと断言、ウナスール諸国に「熟慮」を呼び掛けている。
 


 

2016年5月13日金曜日

ブラジル大統領ヂウマ・ルセフが政庁離れる際、陰謀を糾弾

 ブラジル保守・右翼・財界による5月11~12日の国会クーデター(弾劾裁判開始決議)で最長180日間停職処分となった被害者ヂウマ・ルセフ大統領(68)は、大統領政庁プラナルト宮を明け渡す前に支持者と記者団を前に演説した。要旨は次の通り。

「私は有権者5400万人によって大統領に選ばれた。この弾劾裁判には、投票への尊重、人民の至高の意志、憲法が懸かっている。過去13年間の成果も懸かっている。

「これは政治裁判でなく、詐欺であり、本物のゴルペ(クーデター)だ。私が再選された直後、野党から票の数え直しの要求があった。そこには選挙無効化の意図があった。その後、私に対する策謀が公然化した。

「彼らの唯一の狙いは、選挙で得られなかったものを実力行使によって獲得することだ。弾劾には国の未来も懸かっている。

「私は失敗はしたが、犯罪は犯していない。国外に口座も持たない。収賄したこともないし、腐敗に関与したこともない。そんな人間に対して、最大の暴虐がなされた。

「私は、多くの試練に晒される運命にある。だが不可能に思えたことを克服してきた。かつて拷問され、いままた不正義に遭っている。最も痛ましいのは、私が偽りの司法と政治の犠牲者になったことを受け止めねばならないことだ。

「私は人民の能力を信じることを学んだし、多くの敗北や偉大な勝利を経験してきた。だがこの国でゴルペと新たに闘わなければならなくなるとは夢想だにしなかった。

「人民がゴルペを糾弾するのは疑いない。動員し団結し平和裏に行動してほしい。民主闘争に終わりはなく、恒常的に関与することだ。民主のために常に闘うべきだ。決して諦めてはならない。

「みなさん、ありがとう。

[ヂウマは依然、憲政大統領であり、大統領公邸アルヴォラーダ宮に住み、約8000ドルの月給を受け続ける。空軍機使用も認められる。弾劾裁判に対応するため、5~10人の側近らを顧問として持つこともできる。これらの特権は弾劾されるまで続く。弾劾裁判で否決されれば、あるいは180日以内に弾劾されなければ、大統領に復帰できる。だが、その道は狭く細い。政敵ミシェル・テメル副大統領が大統領代行となったが、最高裁は下院にテメル弾劾の手続き開始を命じており、テメルにも弾劾される可能性がある。正副大統領弾劾となれば、出直し選挙となる道が開けてくる。]
 

 

2016年5月12日木曜日

レゲエ王ボブ・マーリー死歿35周年、各地で記念行事

 5月11日はジャマイカ人レゲエ王、ボブ・マーリーの歿後35周年。キングストン、マイアミ、ロンドンなどボブ縁の地で記念行事が催された。

 ボブは1945年2月6日ジャマイカで、英国人ノーヴァル・マーリーと黒人女性セデラの間に生まれた。5歳の時、両親は別居、10歳の時、ノーヴァルが死去し、仕送りも止まった。母を支えるボブは、首都キングストンに引っ越す。

 ボブは黒人と白人の混血(ムラト)であるため、幼年時代から、黒人から差別されていた。だがボブは黒人を自身の認同(アイデンティティー)とし、ひるむことはなかった。

 「我々黒人は奴隷根性を無くさねばならぬ。それができるのは我々自身しかいない」とボブは言っていた。ムラト差別も、黒人差別の裏返しだと知っていたからだ。

 ボブは1959年、音楽に専念。63年、グループを結成、「ウェイリング・ウェイラーズ」と命名する。「シマー・ダウン」という最初の作曲を手掛けた。

 66年、エティオピア皇帝ハイレ・セラシエがジャマイカを訪問する。「ラス・タファリ」と呼ばれた皇帝が1930年末に即位すると、ジャマイカにアフリカ回帰の「ラスタファリ運動」が興る。アフリカで多くの国々が独立した1960年の「アフリカの年」を境に、世界中の黒人の間でアフリカを見直す文化・思想運動が起きていた。

 ジャマイカでは新しい音楽運動とラスタファリ運動がレゲエによって結びついた。その旗頭がボブだった。ボブは、グループで離合集散を繰り返す仲間たちを率いて、シンガー・ソングライターとして作品を次々に世に出していく。

 1972年ロンドンで公演、74年には大ヒットし、74年にアルバム「ラスタマン・バイブレイション」を出した。ハイレ・セラシエ皇帝の言葉が歌詞に盛り込まれるが、これが何よりも重要だった。

 ところが1970年代は、ジャマイカは内戦のさなかにあった。左翼マイケル・マンリー党首の人民民族党(PNP)と、保守エドゥワード・シアガ党首のジャマイカ労働党(JLP)が血みどろの政争を展開していた。マンリーは北の隣国クーバから武器や資金を得ていた。これに対し、シアガはクーバの北の米国から援助を受けていた。

 ボブは76年の選挙戦でマンリー派と見なされ、敵対勢力から銃撃されて負傷、ロンドンで手当てを受け静養した。78年帰国し、コンサート会場でマンリーとシアガを壇上に招き上げ、握手させた。有名な逸話だ。

 翌77年、癌を宣告されたが、ボブは治療を拒否し、音楽活動に集中する。78年には国連平和勲章を受章、79年には来日公演も果たし、あこがれの地アディスアベバを訪れた。同年のアルバム「エクソダス」は最重要作品と評価され、ボブの評価を不動のものとした。

 1981年、海外公演中、死期を察し、帰国を急いだが、急遽入院したマイアミの病院で死去した。36歳だった。生きていれば、71歳になる。

 ボブは結婚や同棲で7人の女性との間に男7人、女3人の子を儲け、孫は4人。今日でも、ボブの生き方と音楽は、世界中のアフリカ人や黒人の間で絶大な人気を誇っている。




 
 

2016年5月10日火曜日

ブラジル国会弾劾茶番劇に笑えぬ[幕間茶番劇]

 ブラジル国会下院のワルヂル・マラニャン暫定議長は5月9日、ヂウマ・ルセフ大統領弾劾を上院に求めた4月17日の下院本会議決議を無効と宣言した。「民主を救うため」と説明した。マラニャンは弾劾反対票を投じていた。ところが弾劾はから強い圧力を受けて同日夜、無効宣言を撤回した。

 汚職まみれの議員たちが大統領弾劾を策謀した一大茶葉劇のクライマックス寸前、大根役者マラニャンが演じた寸劇も茶番劇だった。地に落ちていたブラジル国会の権威は地中に沈み込んだ、と言わねばならない。

 マラニャン議長は、国家弁護総監ジョゼ・カルドーゾ弁護士が下院決議前に大統領側の弁明機会を求めていたが、当時の下院議長エドゥアルド・クーニャはこれを認めず、採決を断行した事実を、無効の理由としていた。クーニャは巨額の収賄で起訴されており、このほど最高裁によって議長職を解かれた。

 マラニャンは、「いかなる裁判にも弁明機会が保障されているが、それがなかった」と語っていた。また、「弾劾賛成派議員の多くは投票前に弾劾賛成の意志表示をし、憲法が保障する弁明権を損害した。議員は各自が信念に基づいて投票すべきところを、党議に拘束されて投票した」と指摘、これらも無効の理由としていた。

 ルセフ大統領はブラジリアの政庁で、押し掛けた支援の大群衆とともに「下院決議無効」を知ったが、「状況が不確実ゆえ、慎重に対処しよう。策謀と反策謀が渦巻いてきたから」と語った。その懸念通りになった。

 マラニャンは、弾劾促進案を下院に差し戻すよう上院に要請していた。審議と採決をやり直すためだった。だが上院のレナン・カリェイロス議長は9日、下院決議無効宣言を受け入れないとして、予定通り、11日の本会議で弾劾推進案を採決すると述べた。この勢いに押され、マラニャンは無効宣言を覆した。

 サンパウロ、リオデジャネイロなど都市部では、弾劾支持派の中産上層部を中心とする右翼・保守勢力と、労働者ら大統領支持派によるデモが起きている。

 ブラジル政局は、混迷の迷路にはまりこんで久しい。焦点は、上院本会議の動きだ。大統領の弁護士カルドーゾは10日、上院の弾劾裁判開始をめぐる審議・採決の中止を求めて最高裁に提訴した。
 

ドミニカ共和国で15日、大統領選など総選挙実施

 ドミニカ共和国(RD)で5月15日、大統領選挙をはじめとする総選挙が実施される。注目の大統領選挙には7人が出馬しているが、実質的には現職大統領ダニーロ・メディーナ(64)=ドミニカ解放党PLD=と、野党・現代革命党PRMのルイス・アビナデル(48)の争い。

 従来は、PLDと、ドミニカ革命党(PRD)の戦いだったが、PRDからPRMが分派。その上、野党から他の5人も出馬。強力なPLDの前に団結できず野党統一候補を擁立できないため、メディーナが現職の強みもあって有利と見られている。

 過半数得票者がいない場合は、上位2候補による決選に持ち越される。次期大統領は8月16日就任する。任期は4年。

 副大統領、上院議員32人、下院議員190人、中米議会議員20人、市長158人、市会議員1164人らも選出される。有権者は675万人。

 RDは地理的には中米ではなくカリブ地域にあるが、隣接するアイチ(ハイチ)が最貧国、近隣のクーバが社会主義国、東隣のプエルト・リコが米植民地、他のアンティージャス諸島諸国が英連邦系、と変化に富み過ぎているため、国力が近い中米に接近。

中米統合機構(SICA)に加盟。「CAFTA-RD」(米・中米・RD自由貿易条約)にも加盟している。



 

2016年5月8日日曜日

ペルー大統領選決選:ケイコが対立候補を4ポイント上回る

 ペルー大統領選挙決選(6月5日)まで1カ月を切った5月8日、IPSOS社の支持率調査が公表され、ケイコ・フジモリ42%、ペドロ=パブロ・クチンスキ(PPK)38%で、ケイコが4%ポイント上回った。

 同社の決選模擬投票では、ケイコ51・4%、PPK48・6%で、「ケイコ当選」と出た。一方、反対票はケイコ42%、PPK39%で、ケイコの「嫌われ率」が3ポイント多い。

 IPSOS社は4月の支持率調査で17日、PPK44%、ケイコ40%、25日、PPK43%、ケイコ39%と発表していた。今回初めてケイコが逆転したことになる。

 また、CPI社は4月19日、ケイコ43・6%、PPK41・5%、29日、ケイコ42・3%、PPK40・1%とそれぞれ発表。ケイコ有利となっている。

 一方、DATUM社は4月22日、PPK41・1%、ケイコ40・4%と発表した。社によって調査結果は異なるが、「接戦」に変わりない。

 リマの観測筋は、「今後、スキャンダルを暴かれた方が負ける」と観ている。また在留邦人社会には、「PPKに勝ってもらった方が社会が平穏になる」との意見がある。

 ケイコの政党「人民勢力」(FP)は、4月10日の大統領選挙と同時に実施された国会議員選挙(一院制・定数130)で73議席を獲得している。ケイコの弟で、父親に風貌がよく似ている現職ケンジ・フジモリは最高得票を記録した。

 国会で過半数を握るうえに、政権まで取れば、専横的政治になるのではないかと懸念する向きもある。ケイコは、反対票が示す42%もの「反フジモリ」勢力がいるため、最後まで気が抜けない。

 PPKは77歳の高齢が泣きどころ。選挙戦の終盤で反フジモリ世論を燃え立たせることができれば、接戦を制する道が開けてくる。

 両候補とも経済政策では大差なく、争点は乏しい。貧困大衆の受けが良いケイコには、人民主義(ポプリズモ)がある。 

 

2016年5月7日土曜日

故ホーネッカー元東独書記長の妻マルゴットが死去

 元東ドイツ元首、故エーリッヒ・ホーネッカー社会主義統一党書記長の妻マルゴット(89)が5月6日、チレの首都サンティアゴで癌により死去した。東独政権で教育相を務め、髪を染めていたことと剛腕ぶりから「赤い魔女」と呼ばれていた。

 ホーネッカー夫妻は1990年の東西ドイツ統合によって東独が消滅した後の91年、出国しモスクワに行った。だがその年末、ソ連が消滅、チレ大使館に駆け込んだ。

 ホーネッカーと先妻との間の娘ゾーニャが、東独に亡命していたチレ人左翼レオナルド・ヤニェスと結婚していたことや、マルゴットが、東独亡命していたチレ元外相クロドミロ・アルメイダの妻イルダ・カセレスと親しかったからだった。チレでピノチェー軍政が90年3月に終わっていたこともあった。

 だが夫妻の身柄は92年ドイツに送還され、戦犯裁判にかけられた。しかしホーネッカーは93年、癌で釈放。夫妻は娘夫婦の居るサンティアゴに移った。ホーネッカーは94年、肝臓がんで81歳の生涯を終えた。

 当時のエイルウィン・チレ政権は、ピノチェー軍政期に東独が数多くのチレ人亡命者を受け入れたことに報いるためからも、ホーネッカー夫妻のチレ居住を許可した。 

ブラジル上院が大統領弾劾審議の是非を11~12日決定へ

 ブラジル国会上院の大統領弾劾問題特別委員会(21委員)は5月6日、弾劾審議開始を上院に求める同委員会の報告を賛成15、反対5、棄権1で可決した。これにより、上院(定数81人)は本会議を11日開き、弾劾審議開始案を採決する。

 採決は11日夜か12日未明、41票以上の賛成をもって可決される見通し。最高裁は5日、大統領弾劾の推進者でヂウマ・ルセフ大統領の最大の政敵、腐敗まみれのエドゥアルド・クーニャ下院議長の下院議員資格を遅ればせながら停止、これにより下院議長を事実上解任した。
 
 現時点では、最高裁は土壇場で、弾劾推進、クーニャ解任という<喧嘩両成敗>の手を打ったと言える。

 最高裁は先に、ミシェル・テメル副大統領の弾劾審議を下院に要請したが、下院は無視してきた。上院で11~12日に弾劾審議推進が決まれば、ルセフ大統領は最大180日間、停職処分となり、政権を離れるのを余儀なくされる。その場合、テメルが大統領代行となる。テメルは弾劾推進の「共犯者」と見なされており、やはり収賄嫌疑がかけられている。

 クーニャが牛耳っていた下院は論外だが、検察庁や最高裁のテメルに対する甘い手加減は目に余る。もしテメルが失墜させられれば、正副大統領不在となって、10月の統一地方選挙時に繰り上げ大統領選挙実施への道が開けてくる。

 だがブラジルの伝統的支配体制は「テメル代行政権」で政治危機を乗り切り、労働者党(PT)政権の社会政策重視路線から、富裕層・大企業優先の新自由主義経済路線強化に切り換えていく構えだ。米国は暗黙の支持を与えている。

 上院がルセフ停職を決めれば、1964年の軍事ゴルペ以来の重大な政変(国会ゴルペ)が歴史に記録されることになる。

 一方、ルセフ大統領は4日、英BBC放送によるインタビューで、「軍事ゴルペ(クーデター)に代わる国会ゴルペが進行している。私は絶対に辞任せず、最後まで闘う。辞任すればゴルペを成功させることになるからだ」と語った。

 リオデジャネイロ五輪の聖火が到着したことについては、「喜びと悲しみが交錯している。聖火は五輪を開催するブラジルの努力を象徴する。だが私は法的根拠なく弾劾される危機にあり、五輪開会式に出られなくなる可能性がある」と述べた。

 政財界に蔓延する汚職については、「ブラジルは諸外国と変わらないが、汚職取り締まりが弱い。だがルーラ政権以来、取締強化策を講じてきており、2013年からは贈収賄事件に関与した企業側も罰せられることになった」と指摘した。

 大統領は、クーニャらの画策によって友党が次々に政権を離れ、下院で4月17日、弾劾推進決議が採択され上院に送られたことに関し、BBCから政党対策に不備があったのではないかと問われると、「私は13~14政党と連携していた」と答えた。

 ブラジルには現在35政党があり、うち26党は国会議席を持つ。大統領は「イデオロギーを備えた政党は3~4党だけで、残りは利益代表の党で、利害関係で動く」と語った。
 

2016年5月6日金曜日

ブラジル最高裁が大統領弾劾推進の下院議長を解任

 ブラジル最高裁は5月5日、エドゥアルド・クーニャ下院議長の議員資格を停止、事実上議長を解任した。クーニャはヂウマ・ルセフ大統領弾劾の中心的推進者だった。クーニャは異議を申し立てると述べた。

 最高裁の担当判事テオリ・ザヴァスキは、500万ドル収賄など汚職にまみれたクーニャに下院議長を担う資格はなく、ましてや大統領になる資格はない、と糾弾した。下院議長は、副大統領に次ぐ大統領継承位。

 同判事は、「クーニャは下院を商談の場にし、自らの職務を商品に変えた」と扱き下ろした。

 ルセフ大統領は、「遅すぎた決定だが、歓迎する。クーニャは昨年12月初め、汚職捜査が及ぶと、報復として弾劾審議を決めた」と語った。

 一方、上院弾劾問題特別委員会の書記は4日、上院本会議で弾劾審議すべきだと勧告する報告書をまとめた。報告書は5日採決される。可決されれば、11日にも本会議で採決される。最高裁のクーニャ解任決定はあまりにも土壇場の微妙な時期になされた、極めて政治的な判断だった。

 また検察は、ザヴァスキ判事の許可を得たため、ルーラ前大統領とルセフ大統領を、汚職事件捜査妨害の容疑で取り調べることになった。弾劾理由が極めて薄いため、理由を付け足す狙いとも受け取られる。
 

2016年5月4日水曜日

リオデジャネイロ五輪の聖火がブラジル到着

 リオデジャネイロ五輪の聖火が5月3日、空路ブラジリアに到着、大統領政庁でヂウマ・ルセフ大統領に引き渡された。その式典で大統領は、「ブラジル政治は今、不安定であり、極めて困難な、民主の真の危機に直面している。だが、最良の方法で選手と訪問客を迎える」、「ブラジル人民には権利のために闘い、民主を守る術がある」、「リオ五輪は大成功を収めるだろう」と述べた。

 聖火は、大統領の手で松明に点火され、第1走者のファビアーナ(女子バレー主将)に渡された。聖火は国内300都市を1万2000人に掲げられて回り、五輪開会式当日の8月5日、リオ市内のマラカナン主競技場に到着する。

 米州で7度目、ラ米で2度目、南米で初めて、ポルトガル語圏で初めて、南半球で3度目となるリオ五輪だが、ルセフ大統領は弾劾の危機に直面しており、五輪期間中は、上院での弾劾審議のため停職処分になっている公算が大きく、開会式出席は絶望的と見られている。

 一方、ロドリーゴ・ジャノット検事総長は2日、大統領弾劾審議開始の首謀者である下院議長エドゥアルド・クーニャ、野党PSDB(伯民社党)指導者アエシオ・ネヴェス上院議員らを贈収賄事件関与容疑で取り調べる許可を最高裁に求めた。

 検事総長はまた、ルセフ大統領とルーラ前大統領、および3閣僚を、国営石油会社ペトロブラスをめぐる贈収賄事件関与・捜査妨害の容疑で取り調べる許可も最高裁に求めた。

 検察はこれまでにも捜査する時間がたっぷりあった。上院本会議での大統領弾劾審議開始が11日に迫っている時期に、特にクーニャらの取り調べ許可を求めるとは極めて滑稽で茶番劇くさいと言わねばならない。クーニャの桁外れに巨額な収賄事実は昨年既に判明していたのだ。

 クーニャをはじめとする汚職議員たちは事態をうやむやにするため、連合して大統領弾劾の方向に突っ走ってきた、と世論は見なしている。弾劾がゴルペ(クーデター)だと内外から厳しく糾弾されている所以だ。

▼ラ米短信  ボリビアのラパス大学は5月3日、ノーベル物理学受賞者の梶田隆章東大宇宙線研究所長がボリビアでのガンマー線観測所建設を構想している、と明らかにした。

 梶田所長は週末にラパスを訪れた。同大学によると、梶田は日本で500万ドルの資金を確保し、2018年から3年かけてアンデス高地にある標高5000m級のエストゥケリーア山に観測所を建設したいと語った。

2016年5月3日火曜日

キューバがメイデーで、革命と反帝国主義の思想堅持を謳う

 国際労働者の日(メイデー)の5月1日、クーバ全土で記念行事が催された。ハバナでは革命広場を60万人が行進。ラウール・カストロ国家評議会議長・共産党第1書記ら政府・党の最高幹部が壇上に並び、観閲した。

 指導部を代表して玖労働者中央同盟(CTC、340万人)のウリーセス・ギラルテ書記長(政治局員)が演説。革命思想と反帝思想の堅持、正しい大義に基づく外交政策維持、米国に経済封鎖全面解除とグアンタナモ基地返還を要求、ベネスエラやブラジルに対する政権打倒の陰謀とラ米統合阻害意図を糾弾、4月の共産党大会決定事項の下に結集、経済発展・平和闘争・イデオロギー堅持が労働運動の優先課題-を強調した。

 一方、この日マイアミを出航した米旅客船アドニア号は700人を乗せて2日ハバナ港に入港、50余年ぶりの米観光船のクーバ入港となった。玖政府が4月22日、在米玖人・玖系米人の「船舶による入国」を認めたため、査証を得られた玖系人も乗っている。革命直後に出国、半世紀ぶりに生まれた国の土を踏んだ者もいる。

 乗客は経済封鎖規定により自由観光は禁止されているが、文化、学芸、スポーツ、宗教の分野の現場への訪問は可能。船は5日シエンフエゴス、6日サンティアゴに停泊する。この航路は月2回運航される。

 4月末、米フロリダ国際大学で催されたクーバに関する会議で、出生率が低いため2025年には、現在1100万人余の玖人口は100万人減って1000万人程度になる、との報告がなされた。

 4月29日にはハバナで、玖英外相が関係拡大のため会談した。英外相はラウール議長とも会談した。

▼ラ米短信  ベネスエラ野党連合MUDは5月2日、ニコラース・マドゥーロ大統領罷免の是非を問う国民投票実施請求に必要な署名簿を選管に提出した。有権者の1%に当たる20万人弱の署名が必要だが、この日185万人分を提出、野党勢力の「勢い」を見せつけた。

▼ラ米短信  ブラジル上院弾劾問題審議特別委員会は5月2日、弾劾賛成派が呼んだ財政担当連邦検事が、粉飾決算は重大な違反、と弾劾支持の意見を陳述した。委員会は弾劾裁判開始賛成決議案を6日採決し、本会議への上程を決める方向にある。

 一方、ヂウマ・ルセグ大統領はその6日、大統領選挙を10月2日の統一地方選挙に合わせて繰り上げ実施する改憲法案を国会に提出するとの見方が流れている。だが大統領代行就任に向けて準備しているミシェル・テメル副大統領に辞任する意志はなく、また上下両院で弾劾派が多数派工作に成功しているため、改憲は困難と見られている。
 

2016年5月1日日曜日

フランス映画「めぐりあう日」を観る

 理学療法士として働く主人公の女性エリザ(セリーヌ・サレット)は、ダンケルクで生まれて間もなく、擁護施設に入れられた。「出自の秘密」を知りたい彼女はパリに夫を残し、8歳の息子ノエとともにダンケルクに引っ越し、働きながら出自について調査を進めるが、埒が明かない。

 ある日、転倒して肉離れした初老の女性アネット(アンヌ・ブノア)が治療を受けに訪れる。レネが通う学校で給食や清掃をしている用務員だ。アネットは、レネにアラブの血が流れているのを密かに察知していた。

 エリザとアネットは治療の時間を重ねるうちに心を通わせるようになる。アネットはいつしか、エリザが実の子ではないかと思い始め、遂に調査を依頼する。

 双方からの調査は収斂され、2人が母娘同士であることが証明される。アネットが若いころ、アラブ男との間に身ごもったのがエリザだった。男は去り、アネットは家族の反対で娘を養護施設に渡したのだった。アネットは祖母の瞳で、アラブの風貌が隔世遺伝した孫レネを見つめていたのだ。

 物語の途中には、エリザと夫とのすれ違い、エリザの妊娠と中絶、エリザの<浮気>、レネの反抗期の問題などが絡む。変哲ない女性の生き方と出自探しだが、変哲ない物語を映画作品に仕立てたウニー・ルコント監督をはじめ製作側の確かな技量が感じられる。

 背景に流れるとトランペットのアラブ調の音色と、ダンケルクの港や街の情景が心に染みる。

★この映画は7月30日、東京・神田神保町の岩波ホールで公開される。2015年作品、104分。