2017年3月31日金曜日

★★★ベネズエラ最高裁が国会権限を代行。N・マドゥーロ大統領に大権授与。内外で「違憲」、「お手盛りクーデター」の非難高まる。米州諸国機構(OEA)は「加盟資格停止」に動く▼ブラジル前下院議長に収賄などで禁錮刑

 ベネスエラ最高裁は3月29日、国会が行政府に対し妨害行為を繰り返してきたため、国会の権限を最高裁の憲法法廷が代行する、と決定した。国内反政府勢力と米州諸国の間で一斉に「アウトゴルペ」(自作自演のクーデター、お手盛りクーデター)と非難する声が上がっている。

 最高裁は28日には、「反ベネネスエラ」事項を討議する米州諸国機構(OEA)大使会議開催に賛成した国会議員を「反逆罪」の容疑ありとし、その不逮捕特権を剥奪した。同時にニコラース・マドゥーロ大統領に政治、軍事、経済、社会、刑事、民事上の大権を授与した。

 同大統領は、「制度、安寧、国民統合を守り、侵略される脅威や内政干渉を排除するため特権を与えられた」と述べた。

 最高裁は、国会が29日、国営石油会社PDVSAとロシア石油企業との合弁会社設立を否決したのを受けて、憲法法廷の国会機能代行を決めた。

 ペルーのPPクチンスキ大統領は30日、「ベネスエラの状況は受け入れられない」として、ベネスエラ駐在大使を無期限に召還した。1992年4月のアルベルト・フジモリ大統領による国会閉鎖と酷似すると受け止めており、OEA諸国にベネスエラの加盟資格を停止させるための「米州民主憲章」適用について根回しする、と表明した。

 PPK大統領は昨年の大統領選挙決選で、フジモリ元大統領の娘ケイコを超僅差で破り、政権に就いた。国会では圧倒的多数派をケイコ派政党に握られている。大統領には、今回のベネスエラの「国会機能剥奪」事件をフジモリ派牽制に使う戦略が窺える。

 チレのミチェル・バチェレー大統領も30日、事態把握と対応策をねるため、ベネスエラ駐在大使を召還した。

 ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は30日、ペルー大統領の発言を内政干渉として糾弾した。

 OEAのルイス・アルマグロ事務総長は30日、「緊急大使会合を招集し、民主憲章適用について話し合う」と表明した。米国、メヒコ、グアテマラ、コスタ・リカ、パナマ、コロンビア、チレ、アルヘンティーナ、ブラジルの各政府も、ベネスエラ政府を非難する声明や談話を出している。

 故ウーゴ・チャベス大統領が1999年2月政権に就いてから2013年3月死去するまで14年間、後継のマドゥーロ現大統領が4年間の計18年のという長いチャベス派政権下で鬱積した矛盾が爆発、緊張が頂点に達した感がある。

 今後の政治状況は、政権に忠実なベネスエラ軍部が内外世論を受けてどう動くか、に大きく懸かっている。

▼ラべ短信   ◎ブラジル前下院議長に禁錮15年の実刑

 ブラジルの第1審法廷は3月30日、国会下院のエドゥアルド・クーニャ前議長を汚職、資金洗浄、外貨不正持出しの罪で禁錮15年4カ月の実刑判決を言い渡した。クーニャは昨年、議員資格を剥奪され、10月から拘禁されている。

 今回の汚職罪は、アフリカ・ベニンでの油田開発をめぐりブラジル国営石油ペトロブラスから150万ドルを収賄したことによる。だが、このほかにも巨額の収賄資金の存在が明らかにされている。

 クーニャは下院議長だった2014年12月、当時のヂウマ・ルセフ大統領がクーニャの汚職調査を当局に認めたことに逆恨みし、ルセフ大統領の弾劾に道を開いた。ルセフは昨年8月末、理不尽な理由で弾劾された。内外世論は、これを「国会クーデターと受け止めた。




2017年3月30日木曜日

  コスタ・リカで第16回中部アメリカ(メソアメリカ)機構首脳会議が開かれ、トランプ米政権と移民問題を中心に討議。「移民犯罪者視」を断固糾弾。

 中部アメリカ(メソアメリか)開発のための「トーストゥラ・グティエレス対話・協和機構」(MDCTG、10カ国加盟)の第16回首脳会議が3月29日「メソアメリカは統合する」を標語に、コスタ・リカ(CR)首都サンホセで開かれた。

 CR、メヒコ、グアテマラ、パナマ、コロンビアの5カ国大統領と、エル・サルバドール、オンドゥーラス、ニカラグア、ベリーズ、ドミニカ共和国(RD)の外相らが出席。議長のLGソリースCR大統領は、移民、女性の地位向上、気候変動、核軍縮、持続的開発を重要議題として列挙した。特にトランプ米政権登場後、米墨国境の壁建設、不法移民取締・国外退去が大問題になっており、移民問題に時間が多く割かれた。

 メヒコのEPN大統領は、対米対立時にメヒコに連帯した加盟諸国に感謝、「メヒコは米政権との新しい関係構築という試練に直面している。対話を通じて双方に意味ある合意に到達できると考える」と述べた。

 コロンビアのJMサントス大統領は、トランプ政権の化石燃料開発優先のための気候変動政策変更を批判。「最良の<壁>建設は、メソアメリカの開発だ」と強調した。対米移民の出身地域であるメソアメリカ(メヒコ南東部および中米)が発展すれば、移民が減るとの考えに立つ。

 会議は、37項目の「政治宣言」を採択した。「移民差別増大を懸念」、「人種主義、差別、外国人排斥、不寛容、移民犯罪者視に断固反対」、「移民出身国・通過国・目的国として移民発生の構造的原因を直視し、移民の人権に最大限配慮」などが盛り込まれたが、米政府やトランプの名前は書き込まれれなかった。次回首脳会議は19年オンドゥーラスで。

 MDCTGは、1991年にメヒコ・チアパス州都トゥーストラ・グティエレス(TG)で開催されたメヒコと中米5カ国の首脳会議に始まる。98年、MDCTGが生まれ、2001年、フォックス墨政権が「プエブラ・パナマ計画」(PPP)を策定、メソアメリカ全域の開発に制度的に着手した。

 これには、環境破壊や収奪を怖れる加盟諸国の先住民族や農民の反対が強い。94年元日にチアパス州で放棄した「サパティ
スタ民族解放軍」(EZLN)も反対してきた。

 開発事業としては、PPPが08年に移行した「メソアメリカ事業計画」(PM)、「官民同盟」(APP)などがある。PMの下で既に107事業が実施され、計31億ドルが投下された。
  

  米州諸国機構(OEA/OAS)が「ベネズエラ問題」で激論。だが「国内対話継続」で合意▼ニカラグアとイスラエルが7年ぶりに国交再開▼コスタ・リカで地域首脳会合開催 

 米州諸国機構(OEA)は3月28日、ワシントンの本部で大使会合を開き、ルイス・アルマグロ事務総長が先に提出したベネスエラ政情に関する報告書および、27日のデルシー・ロドリゲス同国外相の発言を受けて討議した。

 開会に先立ち、ベネスエラ、ニカラグア、ボリビア3国は、「米国益に利するアルマグロ総長の発議に基づく、ベネスエラ内政への干渉であるため会合は開くべきではない」と動議を出したが否決され、会合はベリーズを議長国として開かれた。27日までの18カ国に加えガイアナとベリーズが開会賛成に回った。

 20カ国の中核をなす「G15」の主導国メヒコは、「ベネスエラで民主体制が変更されたか否かを毎月検証すべきだ」と提案。「内政不干渉原則は、民主秩序変更や人権尊重欠如を覆い隠すために使われてはならない」と主張した。

 米国は、「OEA内に友邦グループを結成してベネスエラに派遣し、全当事者の意見を聴くべきだ」と提案。「メヒコ提案の検証実施のため特別デスクを置くべきだ」と述べた。カナダは、「ベネスエラには民主的価値が欠けている。OEAは民主復活に貢献すべきだ」と語った。

 これに対しエル・サルバドールは「アルマグロ報告はベネスエラの主権を侵すもの」、ニカラグアは「この会合自体が違法かつ不法だ」と、それぞれ非難した。ベネスエラのサムエル・モンカーダ大使は、「OEA原則の現行違反だ。反ベネスエラのことばかりが展開されており、徹底的に闘う」と反駁した。

 米国など反ベネスエラ派には、「<政治囚>釈放、選挙日程決定、国会決議尊重」の3点を盛り込んだ決議案の採択を求める意見もあったが、結局、断念。代わって、ベネスエラの政府と保守・右翼野党連合MUDとの対話継続を促す声明を採択した。これには加盟34カ国中、パラグアイを除く33カ国が賛成した。米州で唯一、社会主義クーバはOEAに加盟していない。

 デルシー外相は28日ワシントンで、「メヒコの態度は残念だ。我々ベネスエラはメヒコが国境の壁や移民排斥で困っていた時に連帯したのに」と述べた。また、「OEAは、米州の極右勢力がベネスエラを攻撃するための場となってしまった」と批判した。

 カラカスでは28日、政府と政権党・ベネスエラ統一社会党(PSUV)が動員をかけて「反帝国主義大行進」を実施。演説したタレク・エルアイサミ執権副大統領は、「アルマグロを虚偽拡散(名誉棄損)で訴えるつもりだ」と強調した。また最高裁は、今回のOEA会合開催を支持したMUD議員たちを「反逆罪」で捜査するよう、行政府に要請した。

 ニコラース・マドゥーロ大統領はテレビ取材に対し、「OEAの存在意義を国際社会で検証すべきだ」と訴えた。「メヒコには壁や移民の問題で連帯しようと手を差し伸べたのに、この仕打ちは何だ。メヒコ政府はメヒコ人民にどう説明しようというのか」と憤懣を露わにした。

 一方、米共和党クーバ系極右のマルコ・ルビオ上院議員は28日、米テレビに、「ベネスエラは民主的でないと決議できないようでは、OEAの存在価値はない」と述べた。デルシー外相は29日、「対話継続」が支持されたことを「ベネスエラの勝利」と強調した。

▼ラ米短信   ◎ニカラグアとイスラエルが復交

 ニカラグアとイスラエルは3月28日、国交を再開したと発表した。ニカラグアは、イスラエル軍が2010年、パレスティーナ・ガザ地区に向かっていたトルコ船を攻撃し9人が殺された事件に抗議し、断交した。7年ぶりの復交。

▼ラ米短信   ◎コスタ・リカで29日、墨・中米・コロンビア首脳会合開催

 コスタ・リカ政府は3月28日、首都サンホセで29日、「トゥーストラ・グティエレス対話・協和機構」(MSCTG)の第16回首脳会合を開くと明らかにした。同機構にはメヒコ、中米統合機構(SICA)加盟8カ国国、およびコロンビアの10カ国が加盟している。

 
 
 
   

2017年3月28日火曜日

 ベネズエラのデルシー・ロドリゲス外相がワシントンの米州諸国機構会議で激しく反撃▼ラウール・キューバ議長の末妹死去▼メキシコ学生43人強制失踪事件から30ヶ月

 ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は3月27日、ワシントンの米州諸国機構(OEA)本部での加盟国大使会議で45分間に亘って自国の立場を説明。ルイス・アルマグロOEA事務総長および賛同18カ国による、ベネスエラ問題をめぐる28日の特別大使会合開催決定を「内政干渉」として糾弾した。

 ロドリゲス外相は右隣に着席していたアルマグロ総長を時折見やりながら、「アルマグロは米帝国主義の利益のために活動しており、ベネスエラの寡頭勢力および国際右翼勢力と連携して、ベネスエラへの不安定化活動をしており、ボリバリアーナ革命を終わらせ、ニコラース・マドゥーロ大統領を交代させようと策謀している」と厳しく指摘した。

 デルシーはまた、「2015年にアルマグロが事務総長に就任した時から、彼の反ベネスエラ性を懸念していた。彼は就任以来、反ベネスエラ言動に淫してきた。(アルマグロがウルグアイ外相だった時の上司)ホセ・ムヒーカ(前)大統領は、マドゥーロ大統領に、アルマグロには反ベネスエラ行動はとらせないと約束していた」と、秘話を暴露した。

 外相はアルマグロを「嘘つき、不正直、悪人、傭兵、裏切り者」と扱き下ろし、「米政府が立案し支援するベネスエラへの金融、メディア攻撃などを展開している。米国の利益に従属していることから独立性がない」と批判した。

 28日の大使会合開催を提案した加盟諸国に対しては、「マドゥーロ政権打倒と反ベネスエラ行動が狙いであり、そうでないかのように装う仮面を剥がせ」と言い、内政干渉を止めるよう警告した。

 デルシーは、アルマグロがベネスエラの保守・右翼野党連合MUDと26回会合したとし、その半分は暴力を厭わない極右政党だと指摘。またアルマグロは欧州やラ米など諸国を訪問しては必ず反ベネスエラ発言をしてきた、と非難した。

 OEAについては、「機能しなくなっている。内政干渉の伝統を断ち切れない。機関としての方向性を見失い漂流している」と指摘。1948年の創設以来OEAがCIAと組むなどして、ラ米・カリブ地域で50を超える軍事クーデターに関与してきたとも述べ、1954年のグアテマラ改革政権を米政府が打倒した流血の政変を例に挙げた。

 ベネスエラ政府は27日、OEAに28日の会合を中止するよう求めたが、論番制議長国ベリーズは開催を決めている。ベネスエラ政府と野党連合MUDの政治対話を仲介してきたJL・Rサパテロ前スペイン首相、レオネル・フェルナンデス前ドミニカ共和国(RD)大統領、マルティン・トリホス元パナマ大統領の3人は27日、OEA大使会議に向けて、ベネスエラの国内対話を重視するよう呼び掛けた。

 ベネスエラ最高裁のマイケル・モレーノ長官は27日カラカスで、アルマグロの事務総長解任を発議するよう行政府に求める、と発表した。

 一方、米共和党極右のクーバ系上院議員マルコ・ルビオは27日、マイアミのヌエボ・エラルド紙に、「RD、ハイチ、エル・サルバドールがOEAでベネスエラを支持しているかぎり、3国への米援助の維持は難しい」と述べ、3国に圧力をかけた。RDなどの新聞がマルコ発言を取り上げ、非難した。

▼ラ米短信    ◎ラウール・キューバ議長の末妹が死去

 ラウール・カストロ玖議長の末妹アグスティーナ・カストロ(78)が3月26日、ハバナで死去した。ラウールの兄弟姉妹は7人だったが、長姉アンヘラ、長男ラモーン、次男フィデルは昨年までに死去。残るは、ラウール議長、二女フアーナ、三女エマの3人となった。

 フアーナは革命政権に反対、カストロ兄弟と袂を分かって1964年出国、マイアミで亡命生活を送ってきた。エマはメヒコ人と結婚し、メヒコ市に住んでいる。アグスティーナの葬儀にはエマも参列する。

▼ラ米短信    ◎メヒコ学生43人強制失踪事件から2年半

 メヒコ・ゲレロ州イグアラ市2014年9月26~27日起きた、同州内にあるアヨツィナパ農村教員養成学校生43人の強制失踪事件と市民殺害事件から30カ月が過ぎた。家族、支援者ら200人は3月26日、43人の写真を掲げてメヒコ市中心街を行進した。

 陸軍兵士や連邦警察の事件関与が明るみに出ているが、政府は捜査を事実上、打ち切っている。捜査の最高責任者であるMAオソリオ内相は、来年7月の大統領選挙に政権党PRI候補として出馬する方向にある。

 学生の父母らは、「内相が捜査を疎かにして政権に就けると思ったら大間違いだ。アヨツィナパ事件は内相の<靴の中に入った大きな石>となって選挙戦で攻撃の的となるはずだ」と指摘した。

2017年3月27日月曜日

  アルゼンチンの知識人ロドルフォ・ワルシュが軍政に殺されてから40年。状況参加ジャーナリズムで不正義を告発、ノンフィクション作品も数多く世に出した 

 アルヘンティーナ(亜国)の著名なジャーナリストでノンフィクション(NF)作家だったロドルフォ・ワルシュ(1927~77)が1977年3月25日、当時のビデーラ軍政に殺害されてから40年が過ぎた。24日の軍事クーデター41周年記念日と併せて、故人を知る人々が追悼行事を催した。

 アイルランド系亜国人ワルシュは、1950年代から創作物語やNF作品を書き、ジャーナリストとしては1959年のキューバ革命後にハバナで設立された通信社プレンサ・ラティーナの創設にも関与、健筆を振るった。

 以後、政治・社会状況に関与する「ペリオディズモ・コンプロメティード」(アンガージュマン・ジャーナリズム)の手法で調査報道をよくし、殺害される直前まで書き続けた。

 歿後18年の1995年に刊行された『書くという激烈な仕事』には、1953~77年に発表されたジャーナリズムの記事がまとめられている。

 ワルシュは、1960年半ばから70年代半ばにかけての都市ゲリラ活動激化期、ペロン派極左の「モントネロス」に参加、イデオローグとなった。76年のクーデターで政権を握った故ホルヘ・ビデーラ陸軍司令官(軍政大統領)の軍部独裁下で3万2000人が暗殺・殺害されることになるが、ワルシュは「状況参加」し、軍政の悪を告発、糾弾した。

 地下に潜伏し、76年4月、「ANCLA」(地下通信社)を始め、地下から報道を続けた。その年9月、愛娘ビクトリアが軍政の秘密警察に拉致され殺された。

 ワルシュは1977年1月、NF『フアンは川伝いに行こうとしていた』を書き終えた。そのころモントネロス指導部はワルシュにローマに亡命するよう勧告、旅費を渡そうとする。これをワルシュは断り、亜国に留まり、ジャーナリスムを通じて軍政告発を継続した。

 77年3月24日、クーデター1周年の日、ワルシュは軍政の人道犯罪、CIAと組んでの国家間連携テロリズム、富裕層のための経済政策などを非難、告発する長文の「ある作家の軍事評議会への公開書簡」を書いた。ブエノスアイレスに亡命していたボリビア軍政の元大統領JJ・トーレス暗殺、同じくアジェンデ・チレ政権の中枢部に居たカルロス・プラッツ将軍暗殺などへの軍部関与を暴いた。

 ワルシュは、この書簡の写しを10部作成、国内主要紙と外国メディア支局に配布した。軍政は激怒、翌25日、ブエノスアイレス市内で海軍兵25人がワルシュを包囲、ワルシュは拳銃で抵抗するが、たちまち銃弾を浴びせられ命を絶たれた。

 遺体は、拷問・殺害所となっていた市内の海軍上級機械学校(ESMA)に運ばれた。ESMAでの拷問を辛くも生き延びた仲間が、後年、ワルシュの身内に、遺体を見たことを伝え、明るみに出た。

 その後、遺体の在り処は不明のままだが、ESMAの向かい側にある土地に埋められている可能性が強いとされている。だが、依然発掘作業は為されていない。

 ワルシュのNF作品には、『虐殺作戦』、『サタノフスキ事件』、『誰がロセンドを殺したか』など。物語には『赤の変化』、『一キロの金』、『写真、書簡と、その女』などがある。 

 

2017年3月26日日曜日

 ベネズエラ問題めぐり27~28日、米州諸国機構(OEA/OAS)が会合▼アルゼンチンはクーデター41周年迎え、抗議渦巻く

   ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は3月24日、ワシントンの米州諸国機構(OEA)本部で27日、ベネズエラの政治状況について加盟国大使たちに説明し話し合う、と明らかにした。

 これに対し、加盟34カ国のうち18カ国は同日、デルシー外相会合翌日の28日、OEA大使会議を開くことを決めた。この会議は、デルシー発言を受けて、ベネスエラの政治状況を分析、同国政府が憲法規定を逸脱した施政をしているかどうかなどを判断する。

 加盟国の3分の2を超える24カ国が賛成すれば、OEA外相会議を招集できる。その会議で24カ国以上が賛成すれば、ベネスエラにOEA民主憲章を適用し、同国のOEA加盟資格の停止を決めることが出来る。

 28日の大使会議開催を決めた18カ国は、ラ米12カ国(亜URU伯PAR智COL秘GUA巴HON墨CR)、カリブ英連邦4カ国(バハマ、バルバドス、ジャマイカ、セントルシーア)、北米2カ国(米加)。同ラ米12カ国と北米2カ国に英連邦加盟のベリーズを加えた15カ国は、ベネスエラに対して厳しい「G15」を構成している。だがベリーズは大使会議の輪番制議長国であるため中立でなければならず、18カ国提案に参加しなかった。

 一方、ベネスエラの側に立つのは、ボリビア、エクアドール、ニカラグア、エル・サルバドール、ドミニカ共和国(RD)、ハイチのラ米6カ国と、英連邦加盟7カ国、およびスリナムの、計14カ国。ベネスエラを入れて15カ国になる。

 ベネスエラが、この15カ国の結束を崩されなければ、民主憲章適用決議を否決できることになる。適用賛成派は、ベリーズを加えても19カ国しかならず、3分の2に達しないからだ。

 ニコラース・マドゥーロ大統領の政権党PSUV(ベネスエラ統一社会党)は28日に合わせカラカスで、「反帝国主義大行進」を実施。OEA大使会議を牽制する。OEAのルイス・アルマグロ事務総長は昨年来、ベネスエラへの民主憲章適用の旗振り役を演じてきた。

 カラカスでは24日、ルイサ・オルテガ検事総長が委員長を務める「正義・真実委員会」が、1958年1月23日のペレス=ヒメネス独裁崩壊から98年までの40年間の「国家テロリズム」について報告書を発表した。

 それによると、40年間に殺害、強制失踪、拷問、他の人権蹂躙事件が1万数千件発生。死亡者と行方不明者を合わせた犠牲者は1万6000人に及ぶ。身元が判明した死者は1万71人。

 オルテガ検事総長は、「歴史的記憶をベネスエラ人が集団として維持し、起きた事実を知ることが重要だ」と述べた。

▼ラ米短信    ◎亜国が軍事クーデター41周年記念日迎える

 この日3月24日は、国定の「真実と正義のための記憶の日」。首都ブエノスアイレスをはじめ全国各地で多くの市民が参加して、記念の行進と集会が開かれた。首都五月広場の大統領政庁(カサ・ロサーダ)前の集会は最大規模だった。

 人々は、殺された肉親らの写真やスローガンを掲げて行進。過去の軍政、3万人以上が殺された軍政の犯罪、現在のマクリ保守・右翼政権を糾弾した。

 
 

2017年3月25日土曜日

メキシコでジャーナリスト殺害が相次ぐ

 メヒコでジャーナリスト殺害事件が続発している。首都メヒコ市の日刊紙ラ・ホルナーダ(今日の出来事)のチウアウア州都チウアウア市通信員ミロスラバ・ブリーチ=ベルドゥセア記者は3月23日、市内の自宅を出て自家用車に乗ったところを男に9発撃ち込まれて即死した。

 彼女はノルテ・デ・シウダー・フアレス(フアレス市北部)紙の記者でもあり、人権蹂躙や麻薬組織の犯罪を暴く調査報道を続けていた。たとえば現中央政権の党PRI、前政権党PANのチウアウア州内市会議員比例代表名簿に麻薬組織の関係者が記載されていた事実をすっぱ抜いた。麻薬輸送路や麻薬原料栽培・生産地の名簿に特に記載が多いという。

 ハビエル・コラル州知事は、ブリーチ記者を「勇気ある批判的記者だった」と讃え、3日間の州喪を宣言。州議会も黙祷を捧げた。だが、州当局はブリーチが以前から脅迫されていたにも拘わらず保護せず、かつ過去の犯罪者を無処罰にしてきた、との非難が高まっている。

 ラ・ホルナーダ紙はチウアウア州・市政府に対し、事件の速やかな解明と解決を要求した。また、スペインのジャーナリスト協会連合(FAPE、会員2万人)のエルサ・ゴンサレス会長は24日、「同じ言語(スペイン語)で繋がる同業者同士、事件は決して他人事ではない」と強調。「メヒコはジャーナリストの墓場だ。すなわち自由と民主の墓場だ」と指摘した。

 今年に入ってからメヒコでは2月20日、コリマ州テコマン市でコリマ放送のカルロス・ガルシア記者が殺された。3月2日、ゲレロ州アルタミラーノ市でラ・ボス・デ・ラ・ティエラ・カリエンテ(熱地地方の声)紙のセシリオ・ピネーダ編集長が殺害された。続いて19日にはベラクルース州ヤンガ市でエル・ソル・デ・コルドバ(コルドバ市の太陽)紙のリカルド・モンルイ記者が射殺された。

 1983年以来メヒコで殺されたジャーナリストは約230人に達した。ラ米でも最悪の部類だ。州・市政府・当局が麻薬組織など組織犯罪集団から買収されて捜査を怠り、犯罪者の無処罰が当たり前のようになっている状況下で、「売られる記者」、「買われるジャーナリスト」も少なくない。

 買収を跳ね付け、真実を追求する正義派は命懸けで取材し報道することになる。やがて死の脅迫が届き、これを無視して取材を続ければ、無防備のまま、権力や麻薬組織から雇われた殺し屋の標的となる。脅迫され、国外に身を隠したり、亡命したりするジャーナリストも珍しくない。

2017年3月23日木曜日

 チリ大統領選挙前哨戦が本格化。ピニェーラ前大統領が野党側から出馬表明、政権党連合も5人が統一候補指名を争う。▼最高裁は元諜報機関員33人に禁錮刑言い渡す

 チレでは11月19日、大統領選挙が実施されるが、野党側のセバスティアン・ピニェーラ前大統領(67)が21日出馬を正式に表明したことで、前哨戦が本格的に始まった。

 資産25億ドルという富豪ピニェーラは、ピノチェー軍事独裁政権(1973~90)の流れを汲む保守・右翼野党連合の候補として2005年に最初の出馬を試みたが、中道・左翼政党連合のミチェル・バチェレーに敗れた。

 バチェレーの第一期政権末期の09年、2度目の出馬でエドゥアルド・フレイ元大統領を破って当選、10~14年、政権に就いた。現在2期目にあるバチェレー政権は支持率が低迷、野党に政権交代の可能性が出ている。

 野党側は7月2日、予備選で統一候補を決めるが、ピニェーラは逸早く立候補を表明した。その演説で、バチェレー政権が為した無料教育、奨学金制度などを導入した教育改革、労働、保健制度改革を「悪政」と扱き下ろした。会場では、極右勢力が「チレ万歳、ピノチェー万歳」のう歌を合唱した。

 ピニェーラは、90年に自財閥傘下の企業が脱税を指摘され、07年にはインサイダー取引でLAN航空株を買った罰金70万ドルを支払った。このように過去に財界人として問題があった。

 政権党連合「新多数派」は、最大勢力のキリスト教民主党(DC)がカロリーナ・ゴイク党首、もう一つの大勢力である社会党(PS)がリカルド・ラゴス元大統領、JMインスルサ前OEA(米州諸国機構)事務総長、フェルナンド・アトゥリア議員、急進党(PD)がジャーナリストのアレハンドロ・ギジエルと、それぞれ名乗りを挙げている。

 社会党は1990年3月の民政復活後、ラゴス、バチェレー(2期)の両大統領を出してきた。一方、DCは同じく、故パトゥリシオ・エイルウィン、フレイの両大統領を出した。

 故アウグスト・ピノチェー陸軍司令官が率いた軍部による流血のクーデターで1973年9月11日倒された人民連合社会主義政権の故サルバドール・アジェンデ大統領(社会党)の娘である上院議員イサベル・アジェンデ現党首は出馬を予定していたが昨年10月辞退、ラゴスら党員を支援する側に回った。ところが、3候補ともパッとしない。

 そこで輝きだしたのは、急進党のギジエルだ。現時点での支持率調査で、ピニェーラの25%に次ぎ、15%で2位に着けている。ギリエルは早速、ピニェーラの立候補演説を批判。「何ら新しい政策が見られない。現政権が遂行した教育、保健、税制改革を覆すことなどできまい」と、福祉政策削減を図りたいピニェーラの新自由主義路線を攻撃した。

 ゴイクDC党首は、「ピニェーラは現政権を非難するのではなく、自陣営内の極右勢力を気にかけるべきだ」と指摘。ラゴスも「ピニェーラは政府が保障すべき人民の自由にも、年金基金問題にも触れていない」と批判した。社会党は4月中に候補者を一本化する方針。

 一方、チレ最高裁は22日、ピノチェー軍政期の諜報機関「国家情報局」(CNI)に所属していた元機関員33人に市民5人の拉致・殺害・遺体放棄の罪で禁錮刑を言い渡した。

 33人は1987年、カルロス・カレーニョ陸軍大佐誘拐事件への報復として同年、共産党の地下武闘組織「マヌエル・ロドリゲス愛国戦線」(PPMR)のフリアン・ペーニャら5人を拉致、拷問して惨殺。遺体をヘリコプターに載せ、バルパライソ沖の太平洋に投棄した。事件の詳細は、軍政下の人道犯罪専任のマリオ・カローーサ特別検察官が明かした。

 禁錮刑は、元将軍と少佐の計2人に15年、21人に10年、9人に5年、1人に3年。国家が支払う5人の遺族への賠償金は計3億8000万智ペソ(約57万5000ドル)。

 チレでは、軍政終焉後27年経つ今も、時効のない軍政期の人道犯罪追及が続いている。軍政期には3200以上が殺され、数多くの市民が拷問された。多数が国外に亡命した。だが依然、ピノチェーを讃える極右勢力が健在だ。

 

 
  

2017年3月21日火曜日

 チリに奪われた太平洋岸領土の回復が悲願のボリビアが国際司法裁判所に新たな意見書を提出。チリは半年後に立場表明へ。両国間にいざこざ続発

 ボリビア政府は3月21日、ハーグの国連・国際司法裁判所(ICJ)に、太平洋岸領土回復に関する主張を盛り込んだ意見書を提出した。この書類提出時、ボリビアの外相、司法相、国会下院議長が立ち合った。

 ボリビアは1879年、チレに仕掛けられた「太平洋戦争」で、現在チレ領となっている広大なアントファガスタ地方をチレに奪われた。双方は1904年の条約で領土問題に決着をつけたが、ボリビアは「条約で全問題が解決したわけではなく、未解決の案件が残っている」と主張、「海岸領土回復」を国家的悲願として訴えてきた。これに対しチレは、全問題が解決したとの立場をとってきた。

 先住民族アイマラ出身で民族主義の強いエボ・モラレス大統領は2013年4月24日、領土問題交渉に応じるようチレに促す裁定をICJに求めた。チレは14年7月15日、ICJには同領土問題を裁定する権限はないとの意見書を提出した。

 双方の主張を受けたICJは15年9月24日、ICJにはその権限があると判断。両国政府に新たな意見書を提出するよう求めた。ボリビアは提出期限の21日、これを済ませた。チレは9月21日までに立場を表明せねばならない。

 モラレス大統領は20~21日、政治首都ラパスの大統領政庁前で盛大な行事を主宰、ハーグでの意見書提出を内外に印象付けた。大統領はICJでの「領土回復活動」を全世界に知らしめるため、ボリビアの在外公館・代表部の全てにボリビア国旗を掲げるようしじしている。

 これを受けて、アントファガスタ州都アントファガスタ市にある「ボリビア領事部」は先週、国旗を掲げた。ところがチレのカラビネロス(治安警備隊)に国旗を外されてしまた。チレ政府は、同領事部は正式な外交登録がなされておらず、国旗を掲げる資格がないと
説明、ボリビア政府に抗議した。

 さらに19日、ボリビア国境警備隊兵士2人と税職員7人が智タラパカ州の国境地帯で身柄をカラビネロスに拘禁される事件が起きた。智当局は、ボリビア人9人は智領内にあったトラックを盗みに侵入したため拘禁したと主張。

 一方、ボリビア政府は、9人は密輸物資を載せたトラック3台を追跡していたところ、ボリビア領内に入ってきた智カラビネロスに拘禁され、拉致された、と主張している。

 これに対しバチェレー智政権は、ICJでのボリビアの外交的振る舞いを目立たせるため「チレとの紛争」をでっちあげて利用するな、とやり返した。

 両国は、双方が共に軍政だった時期に領土問題交渉がこじれて断交、以来、大使はおらず、総領事級外交に留まっている。  

 
 
 

2017年3月20日月曜日

  ベネズエラが大平原ジャノを讃える第1回「ジャネリダーの日」を祝う。N・マドゥーロ大統領は強国支配に対抗するため「政治のイデオロギー化」が急務と強調

 ベネスエラは3月19日、「ジャネリダー(ジャノ性)の日」を迎えた。ジャノ(大平原)文化、ジャノ人の認同(イデンティダー)などを評価し、謳い上げる日。ニコラース・マドゥーロ大統領が17日、指定したばかりだ。ジャノの拡がるアプレ州エロルサが19日、「一日首都」となった。

 マドゥーロ大統領は18日、カラカスにある、ボリバリアーナ「ヘスース・リベロ」労働者大学の卒業式で演説、「強国群は諸国を支配するため、諸国の脱イデオロギー化、脱政治化を謀っている」と前置きし、「そのような危険な状況にある今、政治をイデオロギー化せねばならない」と強調した。

 大統領は、「ベネスエラの歴史に明確に根ざした堅固なイデオロギーが必要」とし、その特質を「ベネスエラ性、ラ米性、キリスト教、人間的、連帯主義、深淵、民主的、自由、直接民主主義」と説明。同時に、「反ブルジョア、反資本制、反帝国主義、反市場、反虚偽、反陰謀」と指摘した。

 さらに、故ウーゴ・チャベス前大統領が始めたボリバリアーナ革命が「21世紀型社会主義」建設を目指していることに触れ、「社会主義社会では人間が自由でなければならない。そのためには平等性、意識、教育、分かち合う文化が不可欠だ」と述べた。

 一方、米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長は20日ワシントンで記者会見し、米州民主憲章のベネスエラへの適用提案について新たな意思表明をする。会見の場には、ベネスエラの極右政治家の妻らも出席する予定。

 これについてマドゥーロは18日、「ベネスエラ革命はOEAの有無に拘わらず進行する。アルマグロはならず者、裏切り者だ」と反駁。ベネスラの歴史家オマール・ウルタードは、「アルマグロは<アルマグロテスコ>と呼ばねばならない」と扱き下ろした。

 OEAの民主憲章適用には、加盟34カ国の3分の2である23カ国以上の賛成が必要。既にペルーが賛意を表明、ボリビアが反対している。

 

  伊高浩昭の最近のジャーナリズム活動。最多の主題は「フィデル・カストロ死去」▼パナマ第3水路を超大型船1000隻通航

◎伊高浩昭の最近の執筆記事など

★月刊誌「LATINA」
▼2017年4月号(3月20日発行) 「ラ米乱反射」連載第132回
「米州南北間の歴史的矛盾が爆発  トランプ米政権に翻弄されるメキシコ」 6ページ、写真4枚使用

▽書評:『パナマ-歴史と地図で旅が10倍おもしろくなる』松井恵子著、三冬社、1500円

▼同3月号(2月20日発行) 同131回
「ラ米最後の内戦終結を目指し本格交渉開始  キトでコロンビア政府とゲリラ・民族解放軍」

▽書評:『ホセ・ムヒカ  日本人に伝えたい本当のメッセージ』萩一晶著、朝日選書、780円

▼同2月号(1月20日発行) 同130回
「対応はトランプ米新政権の出方次第  革命の父フィデル・カストロが逝ったキューバ」

▽書評:『第三帝国』ロベルト・ボラーニョ著、柳原孝敦訳、白水社、3600円

▼同1月号(2016年12月20日発行) 同129回
「アイスランド人は<新世界一番乗り>を主張  コロンブス到達の地バハマに目立たぬ銅像」(ルポルタージュ)

▽書評:『マラス  暴力に支配される少年たち』工藤律子著、集英社、1800円

▼共同通信加盟各紙(2016年11月27日)
「フィデル・カストロ死去  緊急識者評論」

▼毎日新聞(11月27日)
「フィデル・カストロ死去についての論評」

▼毎日新聞社「エコノミスト」誌(12月13日号)
「フィデル・カストロ死去解説」

▼キューバ映画「オリソンテス(水平線)」冊子(11月)
「常に<革命の祖国>と共に」(アリシア・アロンソの半生についての解説)

▼週刊金曜日(2017年1月20日号)
解説「トランプ対策練るキューバ プーチン氏と油田開発に期待」

▽書評:(12月9日号)『マラス』(前出)
「中米の恐るべき青少年暴力団を取材したルポルタージュの傑作」

▼ラジオJWAVE青木理番組(12月2日)
「フィデル・カストロ死去論評」

▼NGOレコム機関冊子「そんりさ」(2017年2月4日号)「ラ米百景」連載第61回
「フィデル・カストロを書いて糾弾されたジャーナリスト」

▼NGOキューバ友好円卓会議機関冊子「サルー」(3月8日号)
「フィデル・カストロの<英雄の生涯>」(長文評伝)

▼講演(1月25日夜、NGOピースボート高田馬場本部)
「フィデル・カストロの死とキューバ」

▼シンポジウム(2月6日午後、早稲田大学ラ米研究所主催、小野梓記念講堂)
「今 キューバを考える」=カストロ亡き、トランプ有りの=


▼ラ米短信  ◎パナマ運河第3水路を超大型船1000隻が通航

 パナマ運河庁(ACP)は3月18日、昨年6月開通した運河閘門式第3水路を超大型船1000隻が同日までに通航したと発表した。コンテナ船、自動車運搬船、穀物運搬船、石油タンカー、液化天然ガス(LNG)タンカー、石油液化ガス(LPG)タンカーなど。

 4月、乗客4000人の超大型旅客船が通航する予定。第3水路の閘門間の水路の規模は、全長366m、幅49m、喫水15m。
 
 

2017年3月18日土曜日

 メキシコ人学生43人失踪事件解明を急ぐよう米州人権委員会(CIDH)が墨政府に厳しく要請。ワシントンでの会合で父母側は、政府側の真相隠しを追及

 米州諸国機構(OEA)の機関「米州人権委員会」(CIDH=シダーチェ)はワシントンの本部でメキシコ政府代表と、アヨツィナパ農村教員養成学校生強制失踪者43人の父母代表を招き、同失踪事件解明を急ぐべく話し合いの会合を開いた。

 CIDHの代表パウロ・ヴァヌチは、「麻薬組織首領ホアキン・チャポ・グスマンを逮捕できた墨政府がなぜ学生43人の殺害犯を逮捕、特定できないのか」と、厳しく政府側を追及した。グスマンは昨年逮捕され、今年1月下旬、身柄を米国に送られた。

 墨政府からは、外務、内務両省と検察庁の人権担当次官が出席した。政府側は、既に信憑性が否定されている「事件の公式見解」を繰り返すだけで、積極的発言はなかった。

 事件は2014年9月26~27日、墨ゲレロ州イグアラ市一帯で起きた。同市警、同州警、連邦警察、同市駐屯陸軍、麻薬組織などの関与が明らかになっている。だが政府は、連邦警察と陸軍の関与を認めれば、行政府の長である大統領に責任が及ぶため、その面の捜査をせず沈黙を決め込んでいる。

 父母代表は、「虚偽と腐敗まみれで、真実を隠している」と政府を糾弾。麻薬組織と国家の不正を捜査するよう要求した。またCIDHに対し、事件をうやむやに終わらせないよう、引き続き捜査に関与するよう求めた。

 CIDHは4月20日訪墨し、CIDH派遣の専門家調査団が得ている捜査結果に基づき真相を暴くよう、政府に働きかけることにしている。ヴァヌチ代表は、政府側に「いつまで時間を引き延ばすのか。真相解明のため時間を限るべきではないか」と迫った。

 来年7月のメヒコ大統領選挙の野党有力候補AMLO(アムロ=アンドゥレス=マヌエル・ロペス=オブラドール)が訪米中の15日、43人失踪事件への陸軍関与の可能性を示唆したところ、政権党PRIや前政権党PANなどから激しい反発が起きた。

 一方、メヒコ政府は14日CIDHに対し、トランプ米政権の不法移民追放政策を問題にするよう告発した。またメヒコ国会上院外交委員会は15日、米墨国境の壁建設工事に参加する両国建設会社には公共事業を発注しない方針を決めた。

 墨内務省は16日、米国からの移民大量帰国への準備が整った、と明らかにした。「ソモス・メヒカーノス」(私たちはメキシコ人)という計画で、当面、帰国者5万人に職を与える用意が出来たという。

 米国からメヒコへ過去8年間、墨人不法移民250万人が送還された。去年は30万人だったが、うち10万人は自発的帰国だった。  
  
  

2017年3月17日金曜日

 キューバがFARCゲリラ復員者1000人を医学留学に招く。医療協力国際主義外交が健在ぶり示す★WBC敗退のキューバ、オランダ戦のKO負けに衝撃、「国喪宣言」

 キューバ政府は3月16日、コロンビア政府および、武装解除中のゲリラ組織FARC(コロンビア革命軍)の復員者計1000人を医学留学生として受け入れる、と発表した。向こう5年間、毎年200人、政府推薦者と元ゲリラ半数ずつを受け入れる計画。

 だがコロンビア政府は、割り当ての500人分をFARC側に回すと表明。1000人全員がFARC系留学生となる。総予算は2380億コロンビアペソ(約8000万ドル)。クーバ政府が負担する。

 コロンビア政府とFARCは昨年までの4年間、ハバナで和平交渉を続け、和平合意に達した。ラウール・カストロ玖国家評議会議長は昨年9月、カルタヘーナで和平合意調印式が挙行された折、JMサントス・コロンビア大統領に直接、留学生受け入れ計画を伝えていた。クーバは、コロンビア内戦終焉へのクーバの関与を続けるため医学生を受け入れると表明している。

 チェ・ゲバラは61年前、医師からゲリラになったが、今年9月からコロンビア人元ゲリラがクーバで医師になる勉強に励むことになる。クーバ外交の柱である医療協力国際主義は健在だ。

★ラ米短信    ◎クーバ野球チーム:衝撃の惨敗、<国喪に服す>

 東京でのWBC予選第2次リーグで一勝も挙げられずに敗退したクーバ代表野球チームのカルロス・マルティ=サントス監督は3月15日、同日の最終選でオランダに14対1でノックアウト(コールドゲイム)された衝撃の後、「玖チームには技術的問題がある。特に投手の養成だ。投手はWBC級に達していなかった。我がチームの一線級投手はオランダから打ち崩された。敵の攻撃力が勝っていた」と語った。

 監督はまた、「少年野球に始まる国内下級リーグからの育成という課題もあり、短期間で修正できる問題ではない」と、クーバ野球の問題点を指摘した。

 だが、「WBCで戦ったどのチームも高級であり、連日、技術や戦術で学ぶことが多かった。ロサンジェルスに行ければ良かったが、ライバルたちの方が上だった」と述べ、「優勝は蘭日米RD(ドミニカ共和国)から出るのではないか」と展望した。

 一方、クーバメディアの特派員たちは、予選敗退に嘆いている。「最悪の結末」と題した論評記事は、「野球はクーバでは宗教のようなもので、不可侵だ。オランダにKOされたのは、いかなるシェークスピア悲劇にも勝る劇的な衝撃だった」と書く。

 さらに、「試合経過には触れまい。負けたというだけで十分だ。<国喪>が宣言された。だがページをめくろう」と記し、再出発を促した。

2017年3月16日木曜日

 米州諸国機構(OEA/OAS)事務総長の内政干渉策めぐり、ベネズエラ政府との関係が険悪化。マドゥーロ大統領はアルマグロ総長を「愚劣なごみ」と扱き下ろす★エクアドル大統領選挙決選支持率は政権党候補が優勢

 ベネスエラと米州諸国機構(OEA)事務総長との関係が極度に悪化している。ルイス・アルマグロ事務総長(前ウルグアイ外相)は3月14日、OEA常設会議(加盟国大使会議)に、ベネスエラ政府に大統領を含む総選挙を早期実施させるため圧力をかける目的で、同国のOEA加盟資格停止を提案するという趣旨の報告書を提出した。

 これに対しベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は15日、内政干渉としてアルマグロを糾弾。「アルマグロと呼ばれる愚劣で小さな裏切者、ごみ」と扱き下ろした。また、「米国の植民地省であるOEAは過去に何度ラ米で介入やクーデターを生み出してきたことか」と非難した。

 D・トランプ米大統領、米国務省、米共和党極右のクーバ系上院議員マルコ・ルビオ、ベネスエラ野党連合MUDと意を通じるアルマグロは2015年に事務総長に就任して以来、右傾化が著しく、かつての上司、ホセ・ムヒーカ前ウルグアイ大統領から昨年、「絶縁」を言い渡された。

 米国はジョージ・ブッシュ(息子)、バラク・オバーマ両大統領期から続いてきたベネスエラ改革政権打倒の動きを、トランプ政権になってからも維持しており、OEAを使ってマドゥーロ政権打倒工作を活発化させようとしている。

 加盟国資格停止には、追放されて以来、復帰していない社会主義クーバを除く加盟34カ国のうち3分の2(23国)の賛成が必要。採決は外相会議で為される。

 ベネスエラ支持国は、同国を含め12カ国を超えており、その切り崩しの対象はカリブ英連邦諸国。今後、米政権が経済援助と引き換えに自陣への取り込みを図る可能性がある。

 ベネスエラ外務省は14日、「ベネスエラの敵アルマグロは誤った前提に基づき国際介入を促進し、ベネスエラへの経済戦争を強化しようとしている」との声明を出した。次いでデルシー・ロドリゲス外相が15日、ベネスエラは市民団体などラ米225組織から支持表明を受けていると明らかにした。

 同外相はさらに、「アルマグロは、危険で反民主の米州極右ファシスト分子を指揮している。べエスエラ人民への憎悪をかきたてて介入しようと謀っている」と激しく非難した。

 ブラジル新外相アロイジオ・ヌネスは11日、「ベネスエラ政権は独裁だ」との見方を示したが、デルシー外相は、昨年8月末の政変で政権に就いたミシェル・テメル大統領の現政権を「クーデターを決行し腐敗し人民を攻撃する寡頭体制」とけなした。続けて、「一役人がベネスエラの力強い民主を裁こうとは図々しく卑しむべきことだ」と糾弾した。

 ブラジルの弾劾は、巨額の収賄事件を捜査されていた国会多数派が正当な根拠なくヂウマ・ルセフ大統領を弾劾、事実上の「国会クーデター」だった。だがアルマグロは、ブラジルの加盟資格停止への動きを見せなかった。

 マドゥーロ大統領は9日の(現政権が指定した)「反帝国主義の日」の式典で、「爪、武器、精神、歴史をもって国を守り、帝国主義の内政干渉を許すな」と、支持層のチャベス派に発破をかけた。

 一方、保守・右翼野党連合MUDが圧倒的多数派のベネスエラ国会の外交委員会は15日、アルマグロ提案への支持を表明した。

▼ラ米短信   ◎エクアドル大統領選挙決選支持率調査では政権党候補優勢

 エクアドール大統領選挙(2月19日)の得票上位2人が臨む4月2日実施の決選まで半月余り。3月15日公表された支持率調査結果によれば、ラファエル・コレア大統領の進歩主義改革政権の候補レニーン・モレーノが51%、新自由主義復活を目指す保守・右翼の財界系候補ギジェルモ・ラッソが35%。14%は態度未決定・棄権・白票。

 グアヤキル銀行社主であるラッソは16日、「オフィショー富豪ラッソ」という題名の調査報道記事で、パナマ、ケイマン、デラウェアの租税回避地にある49社に資金を流していたことを暴露された。「選挙民の敵」(脱税者)という非難も起きており、選挙戦に不利に作用するのは疑いない。 



 

2017年3月15日水曜日

 チリのビーニャ・デル・マルで15日、アジア太平洋会合。TPP頓挫後の統合の道探る。日中韓も参加

  チレ太平洋岸のビーニャ・デル・マル(海浜の葡萄畑)市で3月15日、米国脱退によるTPP頓挫後の環太平洋経済統合の道を探る閣僚級会合が開かれた。題して、「アジア太平洋統合計画高級対話=課題と機会=」。

 ラ米から、太平洋同盟(AP)加盟のチレ、ペルー、コロンビア、メヒコ、北米からカナダ、アジア太平洋から日シンガポール韓ブルネイ中マレーシア越豪乳の計14カ国が参加した。うち11カ国はTPP調印国。

 これに先立ち14日、AP4カ国はビーニャで外相・経済相会議を開いた。議長のエラルド・ムニョス智外相は、APの経済ブロック化強化を図り、APに協賛国制度を設けることを決めた、と明らかにした。また4月7日ブエノスアイレスで、APと南部共同市場(メルコスール)の合同閣僚会議を開く、と発表した。

 一方、新自由主義経済路線に基づく広域経済圏設立に反対する市民団体は14日、ビーニャで15日の会合に反対する抗議行動を展開、11人が機動隊に逮捕された。「チレにTPPは要らない」などと書かれたプラカードを掲げて抗議していた。

▼ラ米短信   ◎ラ米一「生活しやすい都市」はモンテビデーオ

 米メルセルが3月14日発表した2017年版「生活しやすい世界231都市順位」で、ラ米ではウルグアイ首都モンテビデーオが1位(世界79位)になった。2位はブエノスアイレス(93位)、3位は智サンティアゴ(95位)。ラ米最下位のアイチ首都ポルトープランスは世界で228位だった。

 世界最高位はウィーン。2位以下はチューリッヒ、乳オークランド、ミュンヘン、バンクーバー、デュッセルドルフ、フランクフルト、コペンハーゲン、バーゼル。。。欧州的美観都市ばかりだ。 

2017年3月13日月曜日

ホンジュラス主要3党が大統領候補指名の予備選実施

 オンドゥーラス総選挙は11月24日実施される。大統領、国会議員128人、298市長、市会議員2092人、中米議会議員20人を選ぶ。3月12日、主要3党の大統領候補指名のための予備選挙があり、各党の有力候補がほぼ確定した。

 政権を握る国民党(PN、保守・右翼)は現職大統領フアン=オルランド・エルナンデスが93%を得た。憲法は大統領再選を禁じているが、最高裁は15年、再選可能と判断した。だがエルナンデスの出馬には依然、反対意見が少なくない。

 野党第1党の「自由と再建」(LIBRE=リブレ、進歩主義・左翼)党は、シオマラ・カストロが94%を確保。シオマラは、2009年6月28日の軍民クーデタで追放されたマヌエル・セラーヤ大統領の妻。13年の前回選挙で善戦したが、エルナデスに勝利を持って行かれた。

 LIBRE党は、政治運動「反腐敗と刷新」、「民主社会連合」と連携、エルナンデス再選阻止を狙う。もう一つの自由党(PL、保守)はルイス・セラーヤ56%、ガブリエーラ・ヌニェス34%と割れた。有権者は535万人。

▼ラ米短信   ◎ボリビアがコカ葉栽培地を拡大

 ボリビアで3月8日、コカ葉作付面積を従来の12000haから22000haに増やす新法が公布された。うち14300haは、政治首都ラパス郊外のユンガス、7700haはコチャバンバ市郊外のチャパーレに割り当てられた。

 署名したエボ・モラレス大統領は、「生活のため、古来の伝統のため、アンデス住民の神秘的儀式のため」のコカ葉生産が保障されたと公布式で述べた。だがユンガスの栽培者代表は、チャパーレ産コカ葉の9割がコカイン生産の原料となることから異議を唱え、式に出席しなかった。

 エボ自身が、チャパーレのコカ葉栽培農民6組合の連合組織の代表を務めている。この連合組織と政権党MAS(社会主義運動)がエボの勢力基盤となってきた。

 政府は、チャパーレ産コカ葉の大部分は、コカ茶、薬品、栄養剤の原料として使うと説明している。国際的な麻薬取締機関から批判や異論が出るのは必至だ。エボ政権以前のコカ葉作付面積は37000haだった。

▼ラ米短信   ◎ガルシア元ペルー大統領が「暗殺未遂事件」に触れる

 アラン・ガルシア元秘大統領は3月11日、第1期政権期の1987年、対外債務返済を制限し、銀行国有化を提案した際、これに反対する勢力が国軍をたきつけてクーデターを画策したが、難を逃れたと明らかにした。

 ガルシアは当時、空軍のミグ戦闘機が夜間、大統領政庁を目指して飛来する情報をつかみ、リマ市全域を停電させた。これにより戦闘機は標的を見失ったという。

 2度目はアルベルト・フジモリ元大統領が92年4月5日、国軍と組んでのお手盛りクーデターで憲政を停止させた日、軍と警察の特殊部隊で構成された暗殺コマンド「コリーマ」がガルシアを自邸で暗殺しようと謀ったが果たせなかった、という。

 ガルシアは、その後、隣国コロンビアに亡命している。ガルシアが過去の話を今出したのは、伯建設会社オデブレヒト社贈収賄事件絡みで収賄した嫌疑がかけられているため、それから目をそらせるためではないかとの見方が出ている。
 

2017年3月12日日曜日

 ハバナで「カリブ諸国連合」(AEC)と「カリコム・キューバ協力」機構の外相会議が相次いで開かる。ビデガライ・メキシコ外相はAEC諸国の対メキシコ連帯に謝意表明

 カリブ沿岸および周辺の25カ国が加盟する「カリブ諸国連合」(AEC)の第22回外相会議が3月10日ハバナで開かれた。ラウール・カストロ玖国家評議会議長が歓迎の挨拶、次いでブルーノ・ロドリゲス玖外相を議長に討議に移った。外相22人が参加する盛会だった。

 ロドリゲス外相は、1995年8月トゥリニダード&トバゴ(TT)でのAEC設立首脳会議で観光、通商、運輸の開発3本柱が決まり、後に災害対策と気候変動が追加され、重要案件5本柱となった経過を振り返った。さらに今外相会議に先立ち8日ハバナで、第1回AEC協力会議が開かれたことや、中露両国との協力の重要性に触れた。

 最も注目されたメヒコのルイス・ビデガライ外相は、「米新政権との意見の明確な隔たりがあるが、我々は交渉過程にあり、必ずや良い決着を見るだろう」と述べ、AEC加盟諸国によるメヒコへの連帯に謝意を表した。

 来年までの議長国に選ばれたベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は、「外部勢力からの内政干渉、覇権主義押し付けを糾弾する。メヒコに連帯する。国境の壁はラ米・カリブ全域に対する壁だ」と語った。会議は、域内の航空・海洋運輸接続強化などを謳ったハバナ宣言を採択し、閉会した。

 ビデガライ墨外相は、9日ワシントンでハーバート・マクマスター大統領国家安全保障担当補佐官、ジャレッド・クシュナー上級顧問(トランプの女婿)らと会談し、ハバナに来た。ハバナでは、クーバ、ベネスエラ、コロンビア、ガアテマラの外相と会談した。

 今会議で日本は、AECのオブザーバー資格が認められた。出席した薗浦健太郎副外相はジューン・スーマAEC事務局長、ロドリーゴ・マルミエルカ玖通商・外資相、ロヘリオ・シエラ玖副外相、コロンビア、グアテマラ、バルバドス3国外相と会談した。

 薗浦副外相は、マルミエルカ同相との間で、クーバの米作技術協力とごみ収集車供与など総額22億円強の協力合意書に調印した。

 ハバナでは続いて11日、カリブ共同体(カリコム)とクーバの第5回外相会議が開かれた。議長を務めたロドリゲス玖外相は、トランプ政権登場を踏まえて「米州の新たな試練の下での連帯強化」を強調、カリブ統合努力の一環としてクーバが近く「カナル・カリーベ」(カリブチャネル)というテレビ放送を開始することを明らかにした。カリコム・クーバは12月、バルバドスで第6回首脳会議を開く。

 マルミエルカ玖相は、カリコムのコリン・グランダーソン事務次長に「経済協力合意第2議定書」を渡した。カリコム産品240品目とクーバ産品85品目を相互に自由化する合意が記されている。

2017年3月7日火曜日

 ペルー検察がブラジルのオデブレヒト社贈収賄事件絡みで、クチンスキ大統領、アラン・ガルシア元大統領らの捜査を検討。選挙資金や地下鉄建設工事めぐり疑惑渦巻く

 ペルーのPPクチンスキ(PPK)大統領が昨年の大統領選挙の選挙資金に収賄資金を加えていた疑いで捜査される可能性が出ている。カテリーネ(キャサリン)・アンプエロ特別検事は3月6日リマで記者会見し、伯国およびラ米で最大手の建設会社オデブレヒトから、PPKに近い財団を通じて資金がPPK陣営に流された疑い関し捜査開始を検察庁に要請した、と発表した。

 その財団は「ラティンアメリカ・エンタープライズ財団」(LAEF)。PPKが見返りに同財団に何らかの便宜を図った可能性も指摘されている。PPKは昨年の大統領選挙決選に2位で進出、1位のケイコ・フジモリを僅差で破り、7月末、政権に就いた。

 同特別検事はまた、アラン・ガルシア元大統領2期目に建設されたリマ地下鉄1号線の工事入札時にオデブレヒト社から賄賂が渡された可能性についても捜査開始を検察庁に3月1日求めていたことを明らかにした。

 この汚職問題ではガルシアおよび、ガルシア政権で運輸相だったエンリケ・コルネホらが捜査対象となっている。オ社は、今年1月、秘検察庁で、地下鉄建設に関し総額800万ドルを支払ったと証言している。この事件の容疑者3人が既に予防拘禁されている。

 また、クスコ新空港建設工事をめぐり、PPK政権のマルティン・ビスカーラ第1副大統領兼運輸相がクントゥル・ワシ企業連合との談合に関与した疑いで、特別検事は捜査開始を検察庁に要請した。検察庁は特別検事による一連の要請について検討中。

 ラ米の半分とアフリカの一部を巻き込んだ巨額のオ社贈収賄事件は発展するばかりだ。ペルーのオヤンタ・ウマーラ前大統領の夫人ナディーンは2011年の選挙時にオ社から300万ドルを渡され、夫の選挙資金に用いたことが明るみに出ている。ウマーラは、この選挙決選でケイコ・フジモリを破った。

 またアレハンドロ・トレード元大統領は、秘伯間自動車道建設をめぐってオ社から2000万ドルを収賄、起訴され、国際手配されている。米加州で逃亡生活を送っていると伝えられる。

 政府高官の背信共謀罪には最高15年の禁錮刑が科される。だが無処罰が横行、立件されることは稀だ。ガルシアは1980年代後半の第1期政権期に巨額の汚職疑惑が出ていたが、うやむやに終わっている。

 ケイコの父で服役中のアルベルト・フジモリ元大統領が有罪、収監されたのは、反フジモリ世論が高まるなかで、殺人命令など重罪関与が法廷で立証されたため可能だった。

 コロンビア検察庁は同じ6日、2014年の同国大統領選挙時に、JMサントス現大統領陣営に100万ドル、対抗馬のオスカル・スルアガ候補陣営に160万ドルが、それぞれオ社から渡された証拠が整った、と明らかにした。

 一方、ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は6日、PPK秘大統領が訪米中の2月25日に、ラ米の人権・民主問題について、ベネスエラは重大な問題を抱えていると発言したのに関連し、PPKは米国に尻尾を振るかわいらしい犬だ、と扱き下ろした。

▼ラ米短信   ◎ボリビア大統領が、ラ米進歩主義政権は復調の兆しと指摘

 エボ・モラレス大統領は3月6日、帰国を前にしてハバナで、5日カラカスで開かれたALBA首脳会議は同盟(ALBA)の最強化を打ち出したと述べ、「右翼政権下に置かれたラ米人民は苦しんでおり、今後の選挙では進歩主義勢力が巻き返して勝つだろう」と指摘した。

 モラレスは、声が枯れたためハバナで治療、いったん5日にカラカスへ行き、再びハバナに戻ってから帰国した。
  

2017年3月6日月曜日

 チャベス4周年忌に米州ボリバリアーナ同盟(ALBA)首脳会議が在米移民支援を決める。キューバのラウール・カストロ議長はトランプ政権のメキシコ政策を批判

 ラ米の左翼・進歩主義諸国を中心に12カ国で構成される「米州ボリバリアーナ同盟」(ALBA)の第14回首脳会議が3月5日、カラカスのベネスエラ大統領政庁ミラフローレス宮で4時間に亘って開かれた。この日は、故ウーゴ・チャベス前大統領の4周年忌で、首脳たちは会議の後、遺族とともに市内の「山上兵営」のチャベス廟で式典を執り行った。

 首脳会議には、ベネスエラ、ボリビア、ニカラグアの大統領、クーバ議長、セントヴィンセント&グラナディーン、セントクリストファー&ネヴィスの首相、エクアドール、アンティグア&バーブーダ、グレナダ、ドミニカ、セントルシーア、スリナムの外相らが出席。オブザーバーのエル・サルバドール代表も参加した。

 また、ベネスエラ政府から招待された約200人の諸外国市民組織代表や知識人も参加した。ブエノスイアレスに事務局を置く「ALBA5大陸人民組織会議」加盟のチュニジア、ザンビア、米国の代表も出席。サンパウロフォーラム(FSP)代表も参加した。「もう一つのより良い世界を創る」には、政府だけでなく、市民と社会との協働が不可欠という故チャベスらの考えに基づく。

 首脳会議ではニコラース・マドゥーロVEN大統領の司会進行の下、加盟各国代表が演説した。ラウール・カストロ玖国家評議会儀長は、「(LAC=ラ米・カリブ)地域は今、否定的影響を及ぼしている政治的後退によって重大な時期を迎えている」と述べ、暗に亜伯両国など南米諸国での保守・右翼勢力の台頭に警鐘を鳴らした。

 また、ベネスエラで進行している「ボリバリアーナ革命」については、「腐敗した寡頭勢力が牛耳る金融機関、消費生活が習慣づいている国民、新自由主義に基づく(生産経済でない)収益経済を伴う産油国での革命遂行が難しいことを示した」と、率直に指摘した。

 トランプ米政権の対墨政策については、「米国の利己主義的な保護貿易主義は我々の経済に影響を及ぼすだろう。移民迫害・追放も問題だ。メヒコ国境の壁建設問題は兄弟国メヒコだけでなくLAC全体に対する非理性的政策の表れだ。メヒコに連帯する」と表明した。

 ハバナで声帯の治療をしていたボリビアのエボ・モラレス大統領はしゃがれ声で、「チャベスもフィデルもいない今、右翼は何をしようとしてるのか。我々は両人の主義者として一層団結する。チャベスは反帝国主義闘争で無敗のまま逝った」と述べた。

 ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領は、「新自由主義はひところ不可侵だと思われていたが、今や、資本主義勢力間の衝突で危機に陥っている」と前置き。「我々は代替経済モデルを基に、同盟の団結を強化しよう。資本主義の全球化には反対だ。地球を救うために民主と公平の全球化、核兵器無き全球化を」と訴えた。

 会議は「我らのアメリカ(LAC)の団結・尊厳・主権を防衛する」と題した「カラカス宣言」を採択、デルシー・ロドリゲスVEN外相が読み上げた。

 宣言は、新自由主義を「収奪理論」として糾弾。ベネスエラを「LACの自由の発祥地にして、反帝国主義の砦」と礼賛。LAC統合が不可欠として、その中心機構としてのCELAC(LAC諸国共同体)の重要性を指摘した。

 米国が推進する「汎米主義(パナメリカニズム)」については、「LACで失敗したが、引き続き警戒を怠らないよう」警告した。

 宣言はさらに、ALBA銀行の事業として、在米LAC人移民への資金・法的援助開始が決まったことを明らかにした。また、ボリビアのコチャバンバで6月20、21両日開かれる「壁無き世界と世界市民を目指す国際人民会議」への支援を表明した。

 ALBAの事務総長にダビー・チョケウアンカ前ボリビア外相が就任することも確認された。チャベス4周年忌の記念行事は15日まで続き、その一環として「チャベス思想」に関する国際知識人シンポジウムも開かれる。

▼ラ米短信   ◎パナマの港湾建設計画が足踏み

 パナマ運河庁(ACP)は3月3日、同日締め切りの入札に応募社がなかったため、コロサル・オエステ港開発事業の入札を出直し、将来もう一度やりたい、と発表した。

 パナマ運河太平洋側地帯で、コンテナ港設計、建設、一帯の開発、操業の総合的事業を遂行するための入札だった。パナマ国内では、運河運営を担うACPが、それ以外の事業に参入したとして、ACPを厳しく非難する声が高まっている。






 

2017年3月4日土曜日

コロンビアで過去14ヶ月間に人権活動家120人殺さる

 コロンビアのオンブズマン、カルロス・ネグレーは3月3日ボゴタで、2016年元日から17年2月20日までの期間に同国で人権活動家120人が殺害された、と発表した。他に33人が対人テロに遭い、27人が攻撃対象になった。

 16年は、コロンビア政府とゲリラ組織FARC(コロンビア革命軍)との和平交渉の山場だった「和平特別法制」策定で合意した15年9月の後で、和平に現実味が増した時期だった。内戦で利益を得る極右勢力らは和平に反対、和平過程実施に関与する人権活動家をも目の敵にしてきた。

 ネグレーは、昨年末からFARCが全国各地の支配地域を離れ、武装解除のため集結地に移動したことから、FARCの居なくなった地域に極右武装組織(パラミリタレス)など無法集団が入り込み、市民殺害などに関与している、と指摘した。

 同オンブズマンは、和平合意を受けて創設された「特別捜査隊」(UEI)が一連の人権活動家殺害事件を急ぎ捜査し、活動の安全を補償するよう、政府当局に要請した。FARCが支配地域に展開していた期間は、同地域一帯で活動していた人権活動家はFARCによって安全が守られていた。

 FARCは現在、武装解除過程にあり、半年後には解除が終わり、社会復帰過程に入る。「丸腰」になった後、極右勢力に暗殺される可能性を強く懸念している。1980年代後半、FARCの政党「愛国同盟」(UP)の党首2人を含む党員3000人が殺害された事実があるからだ。

 ノーベル平和賞を昨年受章したJMサントス大統領は、威信にかけて極右による殺戮を防止せねばならない立場にある。

▼ラ米短信   ◎ルネ・プレヴァル元ハイチ大統領死去

  ルネ・ウレヴァル(73)が3月3日、心臓発作で死去した。アリスティド政権期の1990~91年首相を務めたが、91年9月末の軍事クーデターで亡命。帰国後、「民主同盟」(ALYANS)を結成、大統領の座を目指し政治運動を展開した。

 その結果、96~2001年、06~11年の2期、政権に就いた。2期とも5年の任期を満了、この国の現代民政史上、快挙とされている。2月7日のJモイーズ同国大統領就任式に出席したのが人前に出た最後だった。

▼ラ米短信   ◎ベネスエラ大統領がペルー大統領に注文

  ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統は3月3日、PPクチンスキ秘大統領が先ごろワシントンでDトランプ米大統領と会談した際、「ラ米は、重大な問題であるベネスエラを除いては、絨毯に寝そべる犬であり、米国には無害だ」と述べたのを「ラ米全体への誹謗で容認できない」として、発言を公式に取り消すよう要求した。だがマドゥーロはクチンスキに、将来、相互に敬意を払いながら会談したいと呼び掛けた。

 一方、タレク・エルアイサミ副大統領は3日、経済・社会政策の成果について報告、昨年の失業率は7・5%だったとし、今年は4・5%に減らしたいと述べた。極貧率は4・4%に落ちたと指摘。1999~2016年の期間に大学進学率が240%増えたと強調した。 
 
 

2017年3月3日金曜日

ブラジル新外相は元ゲリラ、アロイジオ・ヌネス氏

 ブラジルの新外相に3月2日、アロイジオ・ヌネス上院議員(71)が就任した。2月22日に辞任したジョゼ・セラ外相の後任。ヌネスは軍政期の1960年代、都市ゲリラだった。

 ヌネスはサンパウロ大学法学部生だった1963年、政治活動に参加。64年軍事クーデターで軍政が発足すると、非合法だったブラジル共産党(PCB)に入党する。だがやがて、武闘派指導者カルロス・マリゲーラに従って離党、ゲリラ「民族解放行動」(ACN)を結成。最高司令マリゲーラの側近になる。

 ACNは68年8月、列車を襲撃し、給与袋を強奪。資金1億800万新クルゼイロ(当時の通貨単位。約1万1600ドル)を得た。ヌネスは、逃走時に車を運転した。

 同年、指導部の命を受けてフランスに亡命。アルジェリアでのゲリラ訓練実施の交渉などを担う。79年まで巴里に滞在、パリ大学で政治学修士となる。恩赦法が施行された79年に帰国する。

 83年、サンパウロ州会議員となって政界に入り、その後、同州選出連邦下議、同州副知事、連邦政府司法相、連邦上議を歴任。このたび、テメル政権の外相に抜擢された。当初はPMDB(伯民主運動党)党員、後にPSDB(伯社民党)に移り、現在に至る。ヌネスはゲリラ時代を振り返って、「ゲリラ闘争は結果的に失敗したし、民主的ではなかった」と語っている。

 ブラジルのヂウマ・ルセフ前大統領も元ゲリラだった。ウルグアイのホセ・ムヒーカ前大統領も元ゲリラ。ラ米には独特の「ゲリラの政治文化」があり、元ゲリラが要職に就くのは全く珍しいことではない。

 クーバのラウール・カストロ議長は元ゲリラ部隊司令で、1959年のクーバ革命の覇者。ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領も79年のサンディニスタ革命の覇者。エル・サルバドールのサルバドール・サンチェス=セレーン大統領もゲリラ司令だった。

▼ラ米短信   ◎メヒコ・中米外相会議開かる

 中米統合機構(SICA、8カ国)と、SICAオブザーバー国メヒコの外相会議が3月2日、コスタ・リカの首都サンホセ郊外で開かれた。トランプ米政権下で重大問題になっている不法移民問題を中心に協議した。

▼ラ米短信   ◎ベネスエラ政府が米国を糾弾

 ベネスエラ外務省は3月2日、米上院による2月28日の反ベネスエラ決議について、「ベネスエラに対する内政干渉であり、帝国主義の脅し」と指摘、決議を糾弾。「世界の友邦人民はベネスエラの大義を支持している」と述べた。

 ベネスエラ国会の政権党会派も、米上院宛てに抗議し、反ベネスエラ行動を止めるよう要求した。

2017年3月2日木曜日

コロンビア革命軍(FARC)ゲリラの武装解除始まる

 コロンビア最大のゲリラ組織FARC(コロンビア革命軍、戦士6900人)の武装解除が3月1日始まった。2012年11月ハバナでのコロンビア政府とFARCとの和平交渉開始から4年4カ月、昨年11月の和平最終合意から4カ月目、双方は武装解除段階に漕ぎ着けた。

 FARC要員は2月までに国内26カ所の集結地域に入っていた。国連および国連に委託されたCELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)の管理下で集結したFARC要員のうち、最初の322人が武装解除に応じている。

 和平交渉を促進しノーベル平和賞を昨年受章したJMサントス大統領は1日、「きょうFARCの合法化過程が始まった。3月1日からまず要員全体の3割を武装解除する。5月1日からは3~4割を、6月1日からは残り3割方の武装を解除する」と明らかにした。全体の武装解除日程は180日。

 解除された武器には通し番号が付けられ、所有していたゲリラの氏名、武器の種類、型が登録される。武装解除がすべて終わったら武器は破壊され溶かされ、その金属で和平記念碑を3つ造る。和平交渉の実った地ハバナ、NY国連本部、コロンビアにそれぞれ設置される。

 政府は現在、エクアドールのキト郊外で2月から、第2のゲリラ組織ELN(民族解放軍)を和平交渉を続けている。

▼ラ米短信   ◎中国がプエルト・リコ投資会合に参加

 米植民地プエルト・リコ(PR)の首都サンフアンで3月1~3日、「中国・PR投資フォーラム」が開かれており、中国人投資家および企業代表150人が参加している。

 中国の石油企業は昨年12月、メヒコでのメヒコ湾深海油田開発入札で米経済水域に近い開発地区の開発権を落札している。この落札やPRでの投資は、中国の南シナ海での軍事的進出を牽制している米国への「逆牽制」と受け止められている。

 PRでは6月11日、住民投票が実施される予定で、PRの「米国併合=51番目の州化」、もしくは「独立」かを決める。「独立」が過半数を占めた場合、「(国防・外交権のない)自由連合国(ELA)」か「完全独立」かを問う新たな住民投票が10月8日実施される。

▼ラ米短信   ◎ボリビア大統領がクーバで診断

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は3月1日ハバナ入りした。喉の炎症の診断のため。エボは数日来、声がかれ、「失声症」とされている。2日後には演説機会があり、ハバナで「声の回復」を図る。

2017年3月1日水曜日

トランプ政権の「もう一つの事実」強弁戦術が米上院に伝染

 事実に対し、非事実を「もう一つの事実」として強弁するトランプ米政権の「ポスト真実」期の詭弁戦術が米議会にも伝染したようだ。米上院は2月28日、ニコラース・マドゥーロ大統領のベネスエラ政権に対する内政干渉となる決議案を全会一致で採択した。

 決議は、ベネスエラの「政治、経済、社会、人権状況に深い憂慮」を表明、「政治囚釈放」と「国外からの人道支援物資受け入れ」を求め、併せて、米州諸国機構(OEA)事務総長の対ベネスエラ努力を支持する、などとしている。

 特に問題なの「政治囚」という規定だ。ベネスエラ政府は、2014年2月以降の街頭暴力事件に関与した極右政治家らを刑事犯とし、裁判を経て禁錮刑に処している。米議会は、この点について全く触れず、一方的に「政治囚」と決めつけている。ここに強弁がある。

 この根本的疑問に万人が納得できる理由を示して答えない限り、決議には説得力がなく、「ポスト真実」期の詭弁と受け止められても仕方ないだろう。

 OEA総長ルイス・アルマグロは以前からベネスエラへの「米州民主憲章」適用を主張してきたが、最近また適用のためOEA内で支持集めに動いている。アルマグロは、ベネスエラの保守・右翼野党連合MUDと連携している。

 米共和党クーバ系の反共右翼マルコ・ルビオ上議もMUDの意向を汲んでいる。ルビオは、昨年大統領候補指名を争ったドナルド・トランプ大統領に接近、米国の対ラ米外交で影響力を行使しようと謀ってきた。上院決議もルビオの工作が効いている。

 一方、ベネスエラ国防相ブラディーミル・パドゥリーノ将軍は27日、カラカス大騒乱事件(1989年)の発生28周年記念日に際し、「当時の選良勢力の大統領カルロス=アンデレス・ペレス(故人)は、国家の武装機関を使って人民を過度に弾圧した」と表明。

 さらに、故ウーゴ・チャベス前大統領期以降、「文民と武人の連携が最高の状態にある」と指摘、その維持を確認した。MUD右翼、米政府などはベネスエラ軍をマドゥーロ政権から引き離し、軍事クーデターで政権を倒す戦略を抱いてきた。これに対し国防相は、あたらめて今回、政権擁護と主権防衛を打ち出した。

▼ラ米短信   ◎中国がコロンビア人麻薬犯を処刑

 コロンビア人麻薬犯イスマエル・アルシニエガス(72)死刑囚が2月28日、処刑された。元ジャーナリストの元死刑囚は2010年、5000ドルの謝礼と引き換えにコカイン4kgを中国に持ち込んで逮捕され、死刑判決を受けていた。

▼ラ米短信   ◎クーバ外相がスペイン訪問へ

 スペインのラ米担当外務次官フェルナンド・ガルシアが2月27日ハバナでブルーノ・ロドリゲス玖外相と会談、同外相を4月訪西に招待した。昨年12月ブリュッセルでロドリゲスと、アルフォンソ・ダスティス西外相が会談、ロドリゲス訪西の後に、マリアーノ・ラホーイ西首相が訪玖するという段取りで原則的合意に達していた。

 一方、ラウール・カストロ議長は27日、モロッコ占領下にある西サハラの独立を主張し戦ってきたサハラウイ・アラブ民主共和国(RASD)の国家樹立宣言41周年に際し、ポリサリオ戦線のブラヒム・グハリ書記長に祝電を送った。この日ハバナでは同戦線書記局のハンバ・サラマ常任委員が、クーバ共産党のサルバドール・バレデス=メサ政治局員と会談した。