2014年3月31日月曜日

ブラジルの軍事クーデターから半世紀

 ブラジルのジョアン・ゴラール大統領の民主政権が軍事クーデターで1964年3月31日倒されてから半世紀が過ぎた。東西冷戦のさなか、ラ米を「軍政時代」に導いた最初のゴルペだった。背後には米政府の意図があった。日本は東京五輪大会を控え、国中が浮かれていた時期だった。

 ゴラールは、長らく監視下に置かれていたが、亜国政権に1973年復帰したフアン・ペロン大統領の招きで亜国に亡命した。だが同大統領の死後の76年、亜伯両国軍政の連携による「コンドル作戦」によって、亜国メルセデスで暗殺された。

 ヂウマ・ルセフ現大統領は、ゲリラ活動に参加し逮捕され拷問された経験の持ち主だが、2012年に「国家真実委員会」を設置し、軍政時代(1964~85年)の人道犯罪の実態究明に努めてきた。

 亜国、ウルグアイ、チレで軍政犯罪の解明と軍部元高官断罪が続く一方で、恩赦法と軍部の発言力に阻まれて解明が進展していなかったブラジルの状況を変えるためだった。

 ゴルペ50周年を前に最近開かれたリオデジャネイロ州真実委員会で、軍政期に陸軍大佐だったパウロ・マリャンイス(76)は証言し、拷問や殺害の恐るべき実態を語った。

 それによると、「拷問は真実を引き出すための手段」として正当化されていた。殺したゲリラや左翼の遺体は、身元判明を不可能にするため歯を破壊し、手を切り取った。死体は腹を裂いて浮き上がらないようにした上で、袋に入れてリオ州山岳地帯の川に投棄した、という。

 リオ州内ペトロ-ポリス市の邸宅を「死の館」とし、ここを陸軍情報部は1971~78年、拷問・殺害所として使用していた。元大佐は約40人の殺害に関与した疑いが持たれているが、「後悔していない」と述べた、という。
 

2014年3月30日日曜日

キューバで新外資法が成立。

 クーバ人民権力全国会議(国会)は3月29日、新外資法を全会一致で採択した。官報掲載90日後に発効する。1995年9月発効の現行法に替わる。

 クーバ政府は年率7%の経済成長を目指しているが、それには年間20~25億ドルの外資導入が必要。

 新法では、外国企業は8年間の払税猶予期間後、純益の15%を支払う。天然資源開発の場合は、50%まで拡大される可能性がある。

 政府は2011年4月の第6回共産党大会で、経済・社会改革路線を正式に決めた。経済・社会の構造的改革には外国からの資金導入が不可欠とされる。

 外資受け入れの場としては、ハバナ西方45kmにあるマリエル経済特区が脚光を浴びている。今年1月末、埠頭の一部が完成した。

 経済の構造的問題の一つは、食糧を年間20億ドル前後輸入していること。政府は、国有地を耕作希望者に長期間貸与して増産を図るなど、躍起となっている。

 主食は米だが、現在、ブラジル南リオグランデ州政府との協力で、米作技術者を養成している。

ローマ法王庁がベネズエラ問題で仲介を申し出

 ローマ法王庁は3月29日、ベネスエラ政府に対する反政府勢力の抗争を終わらせるため仲介する用意がある、と発表した。

 これは、南米諸国連合(ウナスール)外相団が25、26両日カラカスで全当事者から事情聴取した後、野党連合MUDから、もっと中立的な仲介者が必要だとの意見が出るなど、新たな仲介者を望む世論があるのを受けての発表である。

 外相団は27日、「民主体制を断固支持する。いかなる憲政秩序破壊行為をも糾弾する」とする26日付声明を発表している。非公式情報によると、今後、ブラジル、エクアドール、コロンビア3国外相が委員会を組んで、ベネスエラ問題に対応する。

 一方、メヒコのメアデ、ベネスエラのハウアの両外相は27日カラカスで会談した。メアデは記者発表で、「ラ米は民主制度を守るべきだ。暴力には反対する。対話が唯一の解決手段だ」と強調した。

 2月からの一連の街頭破壊活動絡みの死者は、29日現在39人に達している。負傷者は560人を超えた。

 殺傷や破壊活動の現行犯ないし容疑で約170人が逮捕されている。反政府派は、自派の逮捕者の無条件釈放を対話の条件にしている。このような「無処罰主義」が事件の背後にあり、暴力の連鎖を断ち切りにくくしている。 

2014年3月29日土曜日

季刊誌『トランジット』がカリブ海特集

 豪華季刊誌『トランジット』第24号(講談社)が出た。「美しきカリブの海へ」と題したカリブ海特集で、クーバ、ジャマイカ、アイチ、ラ・ドミニカーナなどの魅力的な写真と文が詰まっている。

 私は、インタビューを受けたが、「キューバ革命からキューバ危機へ」という項目で幾つか発言が紹介されている。

 旅行者には興味深い「永久保存版」である。

2014年3月28日金曜日

国連総会でのクリミア・ロシア併合糾弾投票でラテンアメリカ割れる

 国連総会は3月27日、ロシアのクリミア併合を違法とする決議案を賛成100、反対11、棄権58で可決した。この投票でラ米諸国は3グルーポに割れた。

 賛成したのは、太平洋同盟(AP)のチレ、ペルー、コロンビア、メヒコ、コスタ・リーカ、および中米・カリブのパナマ、オンドゥーラス、グアテマラ、ラ・ドミニカーナ、アイチの計10カ国。

 反対は、米州ボリバリアーナ同盟(ALBA)のベネスエラ、クーバ、ボリビア、ニカラグアの4カ国。クーバはかつてソ連の同盟国だった。ベネスエラが現在ロシアの同盟国、ニカラグアはロシアから経済援助を受けている。ボリビアは反米の立場からロシアを支持した。

 棄権したのは、南部共同市場(メルコスール)のブラジル、アルヘンティーナ、ウルグアイ、パラグアイ、およびエクアドールとエル・サルバドール(ES)の計6カ国。ブラジルは、ロシアとはBRICSを組んでいる。エクアドールはALBA加盟国だが、独自の判断をした。ESは現在、FMLNを与党とする中道進歩主義政権だが、6月からFMLNを基盤とする中道左翼政権が発足する。

 なお、決議案に反対したラ米以外の国は、ロシア、ベラルーシ、アルメニア、北朝鮮、スーダン、シリア、ジンバブウェ。

2014年3月27日木曜日

パラグアイ労農が20年ぶりにゼネストを決行

 パラグアイで3月26日、20年ぶりにゼネストが実施され、首都アスンシオンをはじめ、全国の主要都市の交通、商業、学校などが麻痺した。主催者側は、労働者の80~90%がストライキに同調していると述べた。

 この日は、全国農民連盟(FNC)が20年前から農地改革実施を要求して「農民行進」をする日。統一中央労連(CUT)、教組など6つの労連はFNCと連携し、その第21回農民行進に期日を合わせてゼネストを打った。

 労農の要求は、農地改革実施、最低賃金25%引き上げ、国有資産民営化を容易にすると批判される官民同盟法(APP、13年12月成立)の廃止、大豆栽培など大規模有機農法糾弾、教育改革など。

 新自由主義路線で内外大企業優先政策を採るカルテス政権には、不可能な政策ばかりだ。政府は2月末、労農に諮らずに最低賃金を10%引き上げ、182万グアラニー(約350米ドル)とした。労農は評価せず、25%を要求している。

 ストロエスネル軍事独裁政権が倒れて25年、超保守・右翼支配層が依然牛耳るこの国も、社会が流動的になり、政治意思を集団行動で表明できるようになった。

南米諸国連合外相団がベネズエラ各界と会談

 南米諸国連合(ウナスール)外相団は3月25日カラカスで和平醸成活動を開始し、ニコラース・マドゥーロ大統領、平和国民会議(CNP)、各宗派教会、野党連合MUDと会談した。26日には、反政府活動をしている大学生組織代表、政権党と会談する。

 外相団は、亜国、ブラジル、ウルグアイ、ボリビア、エクアドール、コロンビアの6カ国外相と、ウナスール事務局長アリー・ロドリゲス(VEN)で構成されている。

 マドゥーロ大統領はこの日、ゴルペの陰謀に関わった空軍の将軍3人を逮捕したと明らかにしたが、夜になって同3人と極右野党の連絡役の名前を挙げて、陰謀をあらためて非難した。

 大統領によると、2月以来の街頭暴動事件は25日までに計1万6270件に達し、死者35人となった。

 一方、最高裁は25日、タチラ州サンクリストーバルのダニエル・セバジョス市長(19日逮捕)に、市長解任と禁錮12カ月の実刑を言い渡した。市内のバリケード設置阻止命令に従わなかったため。

 25日発表の世論調査結果では、「暴力による政治問題解決」に87%が反対した。70%が、解決すべき最優先課題に「経済」を挙げた。

2014年3月26日水曜日

ベネズエラ大統領が、クーデター画策した将軍3人逮捕、と発表

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は3月25日、ゴルペ(クーデター)を画策していた空軍の将軍3人を24日夜逮捕した、と明らかにした。

 大統領は、同日カラカス入りした南米諸国連合(ウナスール)外相団との会合で、この事実を伝えた。

 「空軍の若手将校らによる告発が逮捕につながった」として大統領は、「国軍の倫理の強さ」を讃えた。将軍3人は軍事法廷の監視下に置かれている。

 マドゥーロは、「将軍3人は今週がゴルペ決行のための決定的な週になると語っていた」と明らかにし、「3人は野党と連携していた」と述べた。

 故ウーゴ・チャベス大統領は2002年4月ゴルペに遭い、2日余り政権から排除された後、政権に復帰した。この事件以来、ゴルペの陰謀が政府によって摘発され公表されたのは初めて。

 02年事件時、ゴルペに参画した将軍たちは全員更迭されたが、逮捕されなかった。将官級の逮捕は、チャベス派政権15年間で初めて。

 一方、ウナスール外相団は26日にかけて、政府、平和国民会議(CNP)、野党連合MUDと会合し、ベネスエラの国内和平醸成に協力する。

2014年3月25日火曜日

ベネズエラ国会が「パナマ代表」を演じた極右議員を弾劾

 ベネスエラの国会議長ディオスダード・カベージョは3月24日、野党の極右国会議員マリーア=コリーナ・マチャードの議員資格が剥奪された、と発表した。マチャードは21日、米州諸国機構(OEA)大使会議にパナマ代表部次席代行として出席し、意見を述べた。これは憲法規定に違反する。

 国会は当初、街頭蜂起扇動罪、殺傷罪などでマチャードを弾劾する方針だったが、反逆罪に近い「他国外交団参加」という前代未聞の違憲行為が起きたため、これを主な理由として議員資格を奪った。

 マチャードは24日リマで開かれたセミナリオ(セミナー)「ラ米:機会と課題」に出席し、ニコラース・マドゥーロVEN大統領を非難した。この会合は、作家マリオ・バルガス=ジョサ(MVLL)が主宰する「自由国際財団」が主催した。MVLLはラ米右翼知識人の代表格で、マチャードとともにベネスエラ政府を非難した。この会合にはチレとメヒコの前大統領も出席した。25日閉会する。

 マドゥーロは24日、平和国民会議(CNP)先住民会合にメンサヘ(メッセージ)を送り、ミランダ州内で23日若い妊婦が射殺された事件を受けて、「州知事エンリケ・カプリーレスが治安維持の職責を果たさないから事件が起きる」と前置きし、「職責を果たさないならば最高裁が果たさせるし、それでも果たさないならば去りなさい」と糾弾した。

 一方、南米諸国連合(ウナスール)外相らは、ベネスエラの要請を受けて25~26日カラカスで開かれるCNPに出席し、国内和解に協力する。 

2014年3月24日月曜日

元スペイン首相アドルフォ・スアレスが死去

 スペインのアドルフォ・スアレス元首相(81)が3月23日、マドリーの病院で死去した。肺炎をこじらせたのだが、11年前からアルツハイマーを患っていた。

 スアレスは、独裁者フランシスコ・フランコ死去の翌76年、カルロス・アリアス=ナバロ首相の辞任を受けて後任に任命された。政治と経済の改革を託され、77年に内戦後初の自由選挙を実施し当選、首相の座を維持、81年1月辞任した。

 後任のレオポルド・カルボソレロ首相が就任する81年2月23日、フランコ独裁の流れを汲む極右のアントニオ・テヘーロ中佐率いる治安警備隊(グアルディア・シビル)が国会に乱入し、ゴルペ(クーデター)を起こした。

 だが国王フアン=カルロス・デ・ボルボンの説得で、ゴルぺの陰謀は挫折し、民主体制が守られた。スアレスは、フランコ体制後の「民主体制を固めた人物」として評価されてきた。

 政府は24~26日を国喪とし、31日に国葬を挙行する。

2014年3月23日日曜日

ベネズエラ反政府破壊活動による被害は100億ドル

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は3月22日、反政府派による2月からの一連の街頭破壊活動の被害総額は100億ドルに達した、と明らかにした。

 全国で大学施設16カ所が放火などで破壊され、街路樹5000本が切り倒された。食糧省の倉庫も攻撃されている。首都の地下鉄駅も破壊された。

 大統領は、「過激な新ファシスタと化したベネスエラ右翼の仕業だ。ベネスエラでは(政府でなく)人民に対するゴルペがある」と糾弾した。

 米州諸国機構(OEA)会議に、「パナマ代表部次席」として出席した、ベネスエラの極右国会議員マリーア=コリーナ・マチャードについては、「ベネスエラ議員が外国職員として祖国を陥れ(外部機関を)祖国に介入させようと謀ったのは初めてだ」と指摘し、同議員を「元議員」と呼んだ。現在、マチャードの議員不逮捕特権を剥奪する手続きが進められている。

 
 地方3市で22日、暴力絡みで計3人が死亡、2月12日以降の死者数は34~35人になった。

 食糧省は21日、今年の食糧輸入は38億ドルとし、亜国、ブラジル、ウルグアイ、ラ・ドミニカーナ、ガイアナ、ニカラグアから輸入すると発表した。伝統的な輸入先コロンビアが外されている。

 一方、VEN米商工会議所は23日、1月の両国貿易は37億ドルで、前年同期の48億ドルから23%減った、と発表した。

福島沖出動の米軍要員100人が東京電力を訴える

 米国のラジオ・テレビ網「デモクラシー・ナウ(今、民主を)」によると、東電福島原発事故発生直後に現場海域に急行した米海軍と海兵隊の100人を超える要員が、「放射能汚染度に関し米海軍に誤った判断を下させた」として東電を訴えている。

 東電事故を受けて米海軍は「友だち作戦」を開始、福島県沖に原子力空母ロナルド・レーガンほか艦船を派遣した。同空母には当時、海軍と海兵隊の要員5500人が乗っていた。

 この作戦に参加した男女の要員からその後、恒常的発熱、盗汗、睡眠困難、リンパ腺の腫れ、歩行困難、子宮異常出血などの症状から、甲状腺癌、睾丸癌、脳癌、白血病、視力喪失などに至る病状が現れた。退役を余儀なくされた者もいる。

 当時の要員8人は2012年に訴訟を起こしたが、法的不備により却下された。現在は第2次の訴訟。

2014年3月22日土曜日

米州諸国機構がベネスエラ反政府派発言を封じ込める

 米州諸国機構(OEA)は3月21日ワシントンの本部で大使会議を開き、パナマなどが準備していた「ベネスエラ情勢」討議を多数決で葬った。

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領から5日断交されたパナマのリカルド・マルティネリ大統領は、OEA駐在代表部の臨時次席として、ベネスエラ反政府勢力の旗頭の一人で極右国会議員マリーア=コリーナ・マチャードを出席させ、マチャードの口から反政府勢力の立場を語らせ、これをテレビ中継を通じて内外に宣伝しようと目論んでいた。

 だがニカラグアが緊急動議を出し、この日の優先議題とされていた「ベネスエラ情勢」を取り消す決議案を賛成22、反対11、棄権1で可決した。「その他の議題」からも外され、会議全体が非公開となった。

 結局、マチャードは会議の終わりに意見を述べるのを許可されたのにとどまった。ベネスエラ政府の立場を支持したブラジル大使は、「一部勢力がOEAを政治ショーの場にするのを阻止した」と語った。

 ベネスエラ外務省は、「極右とゴルペ(クーデター)の陰謀に対し再び国際的に勝利した」とする声明を発表した。また、「マルティネリとマチャードは、ラ米最悪のファシスタの流れを汲んでいる」と非難した。

 マドゥーロ大統領はカラカスでメヒコのTV放送テレビサのインタビューに応じ、「ベネスエラはラ米一の民主国だ。この国を理解するには、革命体制が包囲され攻撃されている実情を知らねばならない」と強調した。

 一方、エクアドール外務省は、南米諸国連合(ウナスール)が25、26両日カラカスで、加盟国外相らで構成される委員会を開き、ベネスエラ問題解決について話し合う、と明らかにした。

 ベネスエラ最高裁は20日、カラボボ州サンディエゴ市の市長ビセンシオ・スカラーノを解任し、禁錮10カ月半の実刑に処した。スカラーノは、街頭暴動を支援したとして蜂起扇動罪で19日逮捕されていた。またタチラ州サンクリストーバル市の市長ダニエル・セバージョも、蜂起扇動罪で19日逮捕された。

 タチラ州内では19日からは環境省施設、国軍大学分校なども襲撃されている。州知事は、破壊活動に準軍部隊と傭兵たちが加担している、と指摘した。そのような分子は、隣接するコロンビアから侵入していると見られている。州知事は政権党、セバージョ市長は野党で、野党市長のいる市では破壊活動が際立っている。

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は19日ラパスで記者会見し、「米当局者が、去年4月のベネスエラ大統領選挙の票の数え直しが必要だと語った、との情報がある」と前置きし、「米政府はベネスエラへの介入を準備している。LAC(ラ米・カリブ)政府と人民にベネスエラ政府防衛を呼び掛ける」と訴えた。

 モラレスは20日には、来訪した米議員5人と会った。その後、記者会見し、「米国は、ベネスエラ民主主義、マドゥーロ大統領、LACの立場を尊重すべきだ。このことをBオバーマ大統領に伝えてほしい。そう議員たちに伝えた」と明らかにした。

2014年3月21日金曜日

ウルグアイがグアンタナモ基地囚人5人受け入れへ

 ウルグアイのホセ・ムヒーカ大統領は3月20日、米大統領の要請によりクーバ・グアンタナモの米海軍基地内にいる囚人のうちの5人を亡命者として引き取ることにした、と明らかにした。

 大統領は、同基地には囚人120人が既に13年間も拘禁されていて判事にも検事にも会えないでいる、と指摘し、決定は人道的措置としてだ、と述べた。

 ムヒーカはかつてのウルグアイ軍政時代に、都市ゲリラ「民族解放運動-トゥパマロス」の要員で、長らく刑務所で過ごした。「私も長い歳月を獄中で過ごした。人権を語ることにすら疲れていた」と振り返った。

 「もし住処が欲しいなら、働きたいなら、ウルグアイに来なさい。家族を伴って。ここには寝台がある」、「かつてホセ・バトゥシェ=イ・オルドニェス大統領(1903~15年の期間に2期務めた)は、亜国から追放されたアナルキスタ(無政府主義者)を受け入れた。彼らは働き者で、ウルグアイは豊かになった」。大統領はそう語った。

LATINA4月号が「ベネズエラ情勢」特集記事掲載

◎最近の伊高浩昭執筆j記事

▼月刊LATINA4月号(3月20日刊)「ラ米乱反射」連載98回
「揺さぶられる<チャベス無きチャベス主義>」、「司令官一周忌、旧体制の若者が政変狙い街頭決起」

 映画評: アンジェイ・ワイダ監督「ワレサ 連帯の男」(4月5日、岩波ホールで封切り)

▼週刊読書人3月14日号書評:『グアバの香り ガルシア=マルケスとの対話』(岩波書店)

▼週刊金曜日3月21日号書評:『アイヌ文化の実践 <ヤイユーカラの森>の20年(上)』(計良光範編、寿郎社)

▼「そんりさ」4月発行号:「ラ米指導者よもやま話」


 

2014年3月20日木曜日

アルゼンチン大統領が「英米の二重基準」を批判

 亜国(アルヘンティーナ)のクリスティーナ・フェルナンデス=デ・キルチネル(CFK)大統領は3月19日、パリでフランソワ・オランド大統領と会談した後、亜国が領有権を主張するマルビーナス(英領フォークランド)諸島とクリミヤの住民投票を比較して、次のように語った。

 「英米両国は二重基準だ。英国から1万3000kmも離れているマルビーナス諸島の住民投票を認めながら、ロシアに隣接するクリミヤの住民投票を認めなかった」。

 亜仏首脳会談では、5月28日から始まる亜国とパリクラブとの債務返済交渉についても話し合われた。

 CFKは17日には、ヴァティカンで、亜国人のフランシスコ法王と会談した。会談後、大統領は、「法王は、南米諸国が違いを超えて団結し、対話を継続するのを望んでいる」と述べた。

 これは、反政府街頭行動で揺れたベネスエラ情勢をめぐり、南米諸国が対話に関与するのをよしとする法王の立場を示したものと受けとられている。

コロンビア大統領がGペトロ・ボゴタ市長解任の政令に署名

 コロンビアのフアン・サントス大統領は3月19日、首都ボゴタのグスタボ・ペトロ市長を解任する政令に署名した。公職者を解任する資格を持つ検事総長が昨年12月に決定したのを受けて、署名した。ペトロは15年間公職追放となり、事実上、政治生命を絶たれた。

 右翼・超保守として世論から批判されている検事総長は、ペトロが市のごみ収集担当会社を従来の民間会社から公社に変更したため街中にごみが溢れたとして、「市長失格」と判断、解任を決めた。

 その後、公聴会で賛否両派が意見を述べていた。また米州人権委員会(CIDH)は、解任反対の立場から、大統領に慎重な判断を求めていた。

 サントスが政令に署名したのは、「決断力のある為政者」を誇示する狙いからと見受けられる。世論調査によると、サントスは5月の大統領選挙で得票が過半数に至らず決選が不可避となり、決選で敗れる可能性がある。

 またサントスはこのほど遊説中に小便をもらし、白いズボンに水分が滲み拡がる映像がUチューブで内外に配信されたため、権威が著しく傷ついた。

 こうした<劣勢>を跳ね返すため、保守・右翼層に訴える効果を持つ市長解任に踏み切った、と分析できる。またボゴタ市長は大統領に次ぐ要職と見なされており、人気の高いペトロが将来、保守層にとって政敵になるのを未然に防ぐ意味もある。現に、決選でサントスを脅かす可能性のあるエンリケ・ペニャローサ候補は、元ボゴタ市長だ。

 ペトロは、旧ゲリラ組織「4月19日運動」(M19)の幹部だった。大統領が署名したのを受けて、米州司法裁判所に訴えると明らかにした。同裁判所は、コスタ・リーカの首都サンホセにある。

2014年3月19日水曜日

ベネズエラ国会が反政府急先鋒の女性議員の捜査を要請

 ベネスエラ国会のディオスダード・カベージョ議長は3月18日、反政府派議員マリーア=コリーナ・マチャードの捜査を開始するよう、検事総長に直接要請した。容疑は、反逆罪、騒乱煽動罪、殺傷・破壊活動、人道犯罪など。

 この日、国会で政権党PSUV議員タニア・ディアスが緊急動議を出し、街頭活動中のマチャードのビデオ映像を証拠として示し、これを受けて捜査要請が決議された。

 故ウーゴ・チャベス大統領は、国会でマチャードが質問すると、「コンドルは蠅を狩らない」と即座に無視し、マチャードも黙りこんでいた。だがニコラース・マドゥーロ大統領に対しては、退陣を求める急先鋒として街頭に出ている。

 パナマは18日マチャードに、ワシントンの米州諸国機構(OEA)本部でベネスエラ情勢を語るよう要請した。マチャードは、この招待を受けると回答している。

 マチャードまた、今月24~25日リマで開催されるマリオ・バルガス=ジョサ主催のベネスエラ情勢などをめぐるセミナリオ(セミナー)に発言者として参加することになっている。
 
  国会は18日、2月以来の街頭騒乱事件を調査する「真実委員会」を設置した。委員長のカベージョ国会議長と政権党議員4人で構成される。野党連合MUDは参加を拒否した。

 一方、マドゥーロは18日、南米諸国連合(ウナスール)に対し、VEN・米国「高級対話」に参加するよう正式に要請した、と明らかにした。大統領は15日、Bオバーマ米大統領に高級対話を呼び掛けたが、米国務省は17日、米政府は現時点では、その提案を検討していない、と述べた。しかし高級対話を拒否せず、この点が注目されている。

 反政府派はこの日、2月2日以来3月17日まで44日間の、街頭行動絡みの逮捕者数を1566人と発表した。うち190人は釈放されたが、798人は条件付き釈放、47人は依然収監中。拘禁は平均2日だった。

 統計庁は18日、1月の失業率は9・5%と発表した。富裕層と中産層の学生を中心とする反政府派の街頭蜂起には、暴徒多数が参加していたが、そのかなりの部分は雇われた貧困層と見られている。この点で失業率と関連づけて考えることができる。

 またベネスエラに乗り入れている外国航空会社26社中11社は、ベネスエラ政府による外貨決済が昨年10月から停止しているとして、便数・座席数削減で対応する方針を17日明らかにした。カナダ航空は16日、トロント-カラカス便の運航を打ち切った。
 

 

2014年3月18日火曜日

エル・サルバドール次期大統領S・サンチェスが引き継ぎ作業開始

 エル・サルバドール選挙最高裁(中央選管)は3月16日、大統領選挙決選(9日実施)の勝者サルバドール・サンチェス現副大統領(69)を次期大統領に認定した。6月1日就任する。任期は5年。

 これを受けてサンチェスは17日、マウリシオ・フネス大統領と政権引き継ぎ作業を開始した。サンチェスの政権移行チームには、国会議長、元法相、政権党FMLN書記長らが含まれている。

 引き継がれる重点政策は、エネルギー、運輸、税制改革、対外債務、社会政策、犯罪取り締まりなど。

 サンチェスは支持者を前に、「腐敗した者は政権に入れない。開かれた政府、正直な政府になる。貧困を一掃したい」と語った。

 決選から当選認定まで1週間もかかったのは、僅差で敗れた野党候補が「選挙無効」を求めて提訴していたため。提訴は却下された。国際監視団も米国務省も決選の透明性を逸早く認めており、野党側の言い分に根拠のないことは当初から明らかだった。

チリ政府が、開校近い「ナチ学校」を調査

 チレのロドリーゴ・ペナイリージョ内相は3月17日、南部ロス・ラゴス州チロエー島アンクー市で今月28日に開校する「アウグスト・ピノチェー大統領-ナチ芸術学校」の資金源、国際的繋がりなどを調査中、と明らかにした。

 同島には第二次世界大戦末期から戦後にかけてナチ幹部たちが密かに移住した。このこともあって、島にはナチ系団体がいまも活動している。

 今月11日に、極右・右翼・保守政権のセバスティアン・ピニェーラ大統領から中道・左翼政権のミチェル・バチェレー大統領に交代したことから、ナチ系団体の活動が取り締まりの対象として浮上するようになっている。

ベネズエラ政府が首都圏の反政府派拠点を確保

 ベネスエラ政府は、街頭行動を3月12日以来続けてきた学生や暴徒ら反政府勢力に対し攻勢に転じており、17日、反政府勢力の中心拠点だった首都圏チャカオ区(ミランダ州)のアルタミーラ広場を国家警備隊、国家警察を動員し確保した。広場一帯の街灯など公共施設は破壊されている。バリケードも撤去されつつある。

 ミゲル・ロドリゲス内相は、情報相、および野党側のチャカオ区長を伴って、広場の治安回復を宣言した。エルネスト・ビジェガス首都圏変革相は、国警隊などが展開していることについて、野党首長の下にある地元のミランダ州とチャカオ区の警察が不在のため、と説明した。

 一方、野党連合MUDの中心的指導者エンリケ・カプリレス(ミランダ州知事)は17日、「数時間以内に政府と討論する。国が必要としているからだ」と述べた。街頭闘争が沈静化に向かう中、街頭暴力路線とは一線を画し、野党政治家としての主導権を握るためだ。

 アルタミーラ広場を当局が確保し、カプリレスが政府との対話に応じることは、33日間に及んだ反政府勢力の街頭での戦いが失敗したことを象徴する。石油を狙う米国はコロンビア極右と連携し、ベネスエラ反政府勢力の蜂起を支援し、それが政変につながるのを期待していた。その思惑は狂った。

 ニコラース・マドゥーロ大統領の平和国民会議(CNP)設置、軍部支持固め、国際機関の相次ぐベネスエラ政府支持表明が奏功した。故ウーゴ・チャベス大統領の下で長らく外相を務めたマドゥーロの外交人脈が物を言った。

 16日発表された新たな世論調査結果では、街頭行動に87%が反対している。賛成は11%だった。
  
 

2014年3月17日月曜日

コロンビア大統領選挙は決選で決着か

 コロンビア大統領選挙は5月25日実施される。3月16日発表された世論調査は、本選挙一ヶ月後の決選投票で現職大統領が敗れる可能性を示し、内外の関心を集めている。

 候補者は5人。フアンマヌエル・サントス大統領(国民団結党)と、エンリケ・ペニャローサ元ボゴタ市長(緑の同盟)が、それぞれ得票率25%と17%で、決選に進出する。決選では、3位以下の票を集めてペニャローサが勝つ公算がある。そんな調査結果だった。

 だが2010年の前回選挙では、勝利が期待されたボゴタ市長経験者アンタナス・モクス(緑の党)がサントスに惨敗した。現職大統領は、国費で選挙運動ができるため、ずば抜けて有利な立場にある。

 サントスは、国軍の武器横流しなど不正事件、国際司法裁判所裁定でカリブ海経済水域の多くをニカラグアに引き渡したこと、ハバナでのFARCとの和平交渉に時間がかかっていること、および和平交渉に反対するアルバロ・ウリーベ前大統領以下の極右勢力が大統領の脚を引っ張っていること、などから人気が落ちている。

 だが現職大統領の強みを生かせば簡単に負けることはなく、むしろ勝つ可能性の方が今後大きくなる-こう見る評論家も少なくない。

 他の3候補は、「民主中央」(ウリーベ党)のオスカル・スルアガ、「代替民主軸-愛国連合」(左翼同盟)のクララ・ロペス、保守党のマルタ・ロドリゲス。

2014年3月16日日曜日

人文科学は滅びるのか?-興味深い『読書人』鼎談

 『週刊読書人』3月14日号の特集は読み応えがある。「人文科学は滅びるのか?」という主題で、宗教学者島薗進、哲学者金森修、科学史家小松美彦の3人が極めて興味深い内容の鼎談を展開している。

 「科学技術自身が社会の支配体制、権力側の維持装置となる性質をもってしまった」、「3・11原発事故以後、主にマスメディアに登場する物理学者の多くが平気で事実を隠蔽し、嘘をつくことが明らかになった」、「自然科学系の専門家は、お金の出所の立場でものを考える傾向がある」、「人文科学が、近代的・世俗主義的な価値に沿って規範的な言説を形づくってきた。その規範が弱くなり、それに替わるものが見えない中で、科学技術が暴走する」。

 「科学技術が原因で公害が起き、科学技術に対する批判が高揚した。そこで公害を克服する科学技術として政財界が推進したのがライフサイエンス(バイオテクノロジー)だった」、「新自由主義と相まってライフサイエンス推進路線が復活し、それを補完する装置として導入され定着したのが、米国発のバイオエシックス(生命倫理)だ」。

 「効率主義の行く着く果てが現在であり、3・11以後も基本構造は何ら変わらない」、「福島で大勢の人々の健康が懸念され、彼らのためにしなければならないことがたくさんあるのに、最先端の科学的成果を上げるところに予算が投じられる。目的を失った科学技術とグローバル資本主義が一体になっている」。

 「(人文科学でも)統計的手法を駆使してエビデンス(証拠)から攻めていき、自然科学の計量的手法が社会の諸領域に浸透していく。それに合わせて哲学は功利主義が強くなる」、「社会、文化、人間全体を見据える知識人、教養人としての目が、自然科学者はもちろんのこと、人文科学者の中にもますますなくなりつつある」。

 「新自由主義の時代にファンダメンタリズム(原理主義)が興隆する」、「3.11以後の日本で、どうしてここまで国家主義的な体制ができてしまったのか。理由の一つは、科学への信頼が崩れてしまったこと。自分たちの足元が危うくなったため、共通の基盤を求める方向に意識が流れた面がある」

 「国家の秩序に服することを尊ぶ気風が政官財界には強く、それが文化的な力を大きく削いでいる」、「権力者が持つ文化観が非常に貧弱化しているのは大問題」、「3・11以降の原発政策は公益とは決して言えす、私益で動いている。まさに拝金主義が中心の社会であることを世界に宣伝しているようなものであり、この文化度の低さ、下品さに、どうして権力者たちは気づかないのか」。
 
 「2回目の安倍内閣になり、マスメディアの調子が権力者の権力保存を支援する方向に一貫して流れている。それに乗って安倍が我々の予想以上に危険な政策を次々にやり始めている」、「その歯止めの役割を人文科学者は担わないといけない」、「今こそが分岐点だ。このまま徴兵制に向かっていくのではないか。人文学者が歴史的使命を負ってやれることはいくらでもある」

 「日本人の思想文化的な足腰が弱かったことも省みないといけない。明治維新以後の日本の人文社会科学的な学問と、その基盤となる思想構造が、西洋のヘゲモニー(主導権)が後退していく現代という時期に状況が求めるものに耐えられなくなっている」。「自分社会科学系の学問を根絶やしにしようとする国家の非文化的な政策に対しても断固抗わないといけない」。

 一読をお勧めする。

ベネズエラ大統領が米国に「高級平和委員会」設置を提案

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は3月15日、カラカスでの軍民集会で演説し、米国に新しい両国関係を築くための「高級平和委員会」の設置を提案、ディオスダード・カベージョ国会議長に設置を任せた、と発表した。演説は、全国向け統一ラジオ・テレビ放送で中継された。

 マドゥーロは、これをバラク・オバーマ米大統領に呼びかける形で提案した。「大統領、人民から選ばれた、あなた同様アフリカ系の祖父母を持つ、この貧しい元バス運転手(マドゥーロ)は、<ゴルペ(クーデター)を認めるのか>と、あなたに問う」と切り出し、ベネスエラ反政府派幹部がワシントンで14日、米当局者と会った情報を把握していると述べた。

 続けて「平和のための話し合いを破壊するよう指示したのだろう。だが米国が介入してくれば、ヴェトナムよりもひどい状況になる。南米は米帝国の墓場になる」と、厳しい調子で警告した。

 そのうえで、「あなたに機会を与えよう。新しい両国関係、できればLAC(ラ米・カリブ)との21世紀の新しい関係を構築するため、委員会を設置しよう」と呼び掛けた。

 この委員会は、VEN米双方から高官1人ずつと南米諸国連合(ウナスール)代表1人の計3人で構成される。

 大統領はまた、「右翼学生指導部に対話を呼び掛ける。一時も早く政庁に来られたい」と、反政府行動の当事者に話し合いを求めた。同時に、野党連合MUDに無条件の対話をあらためて呼び掛けた。

 カベージョ国会議長は、大統領の要請を受けて、(2月12日以来の)一連の騒乱事件を解明し責任者を処罰するための「真実委員会」を18日設置する、と別途発表した。

 一方、ウナスール事務局長アリー・ロドリゲス(VEN人)は15日ブエノスイアレスで、「ベネスエラの石油資源がゴルペの陰謀の基にある。石油が欲しくてたまらない米国をはじめ諸外国も狙っている」と指摘した。また、「ウナスールは一致して民主防衛に賛成している」と強調した。

ALBAやG77がベネズエラ支持を表明

 ラ米の左翼諸国相互援助機関「米州ボリバリアーナ同盟」(ALBA=アルバ)のカラカス本部は3月14日、ALBAの盟主ベネスエラを支援する声明を発表し、「ケリーの内政干渉発言を糾弾する。彼の認識は国際法からもベネスエラの実情からも外れている」と、米国務長官を扱き下ろした。

 さらに、米州諸国機構(OEA)大使会議が3月7日採択したベネスエラへの連帯支援決議を尊重するよう要求した。

 エリーアス・ハウア外相は同日、ベネスエラを支持する決議をしたOEA大使会議、ALBA、カリコム、国連発展途上77カ国グループ(G77)に感謝の意を表明した。G77の輪番制議長はボリビアのエボ・モラレス大統領であり、エボの働き掛けでベネスエラ支持宣言を採択した。

 この日、ニコラース・マドゥーロ大統領は、政庁にメヒコ革命期のエミリアーノ・サパタ、フランシスコ・ビヤ、ニカラグアのアウグストCサンディーノ、チレのサルバドール・アジェンデ大統領の4人の英雄(いずれも故人)の孫たちの訪問を受けた。孫たちは、ボリバリアーナ革命支持を伝えた。

 一方、ボリーバル州プエルト・オルダース市で14日、同州の軍事防諜総局長アレクサンデル・マンサナレス大佐が食事中、銃撃され死亡した。政府は国家警備隊と国家警察を動員し、全国の反政府派拠点の家宅捜査やバリケード撤去を進めているが、その現場では学生や暴徒が抵抗し、対立が先鋭化している。

 ベネスエラ原油は14日、1バレル=95ドルと、やや安値を付けた。

2014年3月15日土曜日

ベネズエラ大統領が米政府・議会の反政府支援政策を糾弾

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は3月14日記者会見し、オバーマ米政権が共和党とマイアミ右翼勢力の人質となってベネスエラ政府打倒の先頭に立っている事実が明白になった、と米政府を糾弾した。

 これはジョン・ケリー国務長官が13日、ベネスエラに対する<制裁>発動の可能性を示唆したのを受けたもの。米国は、反政府勢力が恣にしている破壊活動に言及せずベネスエラ政府の弾圧を取り上げ「人権」を理由に介入しようとしている。米国に<制裁>する権利はない、とラ米の大勢は見ている。

 ラ米は、「主権絶対主義」で対応してきた。先の米州諸国機構(OEA)大使会議が29対3の圧倒的多数で、ベネスエラ政府を支持し、南米諸国連合(ウナスール)外相会議もベネスエラ政府の立場を慮った対応をしている。米政府は、外交上の強い欲求不満に陥っているわけだ。

 米政府は、ラ米で最も緊密な同盟国コロンビアに対ベネスエラ戦略で協同を働き掛けてきた。同国のボゴタを主要拠点とするアビアンカ航空は13日、ベネスエラ便の便数削減、座席削減、路線停止措置を決めた。これについてマドゥーロは、「一度出て行った航空会社は我々の政権がある限りベネスエラに復帰できない」と述べ、非難した。

 エリーアス・ハウア外相も14日、ケリーを名指しして、「貴殿をベネスエラ人民の殺害者として糾弾する」と発言した。

 この裏には、米連邦議会(国会)に13日、民主・共和両党議員が、ベネスエラ反政府勢力に1500万ドルを提供する法案を提出した事実がある。ジュネーブ滞在中のルイサ・オルテガ検事総長は、「米国は騒乱に融資しようとしている」と非難した。

 またミゲル・ロドリゲス内相は14日、反政府派狙撃手が12日、国家警備隊(GNB)大尉を撃ち殺した事件を挙げて、彼らの街頭行動は反乱段階に移行した、と指摘した。

 一方、カラカス、バレンシア、メリダなど8市の商業会議所は14日連名で声明を発表し、「21世紀型社会主義は憎悪、分裂、怨恨を広めた。市民は政府に諫言する方法がないため、街頭行動に出た」と表明した。

カリブ共同体が、大麻合法化検討委員会を設置

 カリブ共同体・共同市場(カリコム)は3月11、12両日、セントヴィンセント&グラナディーンの首都キングスタウンで首脳会議を開いた。輪番制議長の同国首相ラルフ・ゴンサルヴェスが会議議長を務めた。

 会議は、大麻を医療用使用および「嗜好品としての少量使用」を合法化するか否かを検討する委員会の設置を決めた。委員会は7月にアンティグア&バーブーダの首都セントジョンズで開かれる次回首脳会議に報告書を提出する。

 会議はまた、ラ・ドミニカーナ(RD)に対し、隣国アイチ(ハイチ)出身の居住労働者を退去させた問題の解決策として立法化を急ぐよう要請した。RDはカリコム加盟を望んでいるが、アイチ人問題が未解決のため、カリコムは加盟手続きを凍結している。

 加盟国には、旧宗主国に対し奴隷貿易、奴隷酷使の賠償金支払いを求めるべきだとする意見が根強くある。今会議でも話し合われたが、進展はなかった。
 

2014年3月14日金曜日

ベネズエラ検事総長が国連人権理事会で報告

 ベネスエラのルイサ・オルテガ検事総長は3月13日、ジュネーブの国連人権理事会で、2月12日以降1ヶ月間の反政府騒乱事件による人的被害について報告した。死者は28人、負傷者は365人だった。

 国軍の一翼を担い治安確保の最前線に立つ国家警備隊(GNB)は、要員3人が死亡、21人が負傷した。他の負傷者88人は、国家警察(PNB)、国家情報局(SEBIN)の要員ら。256人は学生ら市民だった。当局は、銃器25丁、爆発物200個などを押収した。

 伯亜赤玖ニカ露中の7カ国が、報告に賛同した。学生らによる反政府暴動の事実を認めず、「マドゥーロ政権の弾圧」を非難してきた米国は冷淡な態度を示した。

 一方ベネスエラでは、ラファエル・ラミーレス経済担当副大統領(石油相)が13日、平和国民会議(CNP)に対し国内各方面から為された59の改革提案のうち56件が政府によって採用された、と明らかにした。

米政府がシェル社にキューバ航空への給油禁止を通告

 米政府によるキューバへの経済封鎖が細部に及んでいる。3月に入ってから財務省は、ラ・ドミニカーナ(ドミニカ共和国)で営業するシェル石油会社に対し、クーバ国営航空クバーナに対し給油しないよう通告した。

 また同国に展開するプライスマート社に対し、クーバ外交官へのサービスを打ち切るよう命じた。エル・サルバドールでも同じサービス打ち切り命令を出している。

 経済封鎖の「第三国条項」を適用したものだが、「第三国の主権を無視した悪法」として厳しく非難されている。

2014年3月13日木曜日

エル・サルバドール次期大統領にS・サンチェス決まる

 エル・サルバドール選挙裁判所(中央選管)は3月13日未明、記者会見し、9日実施の大統領選挙決選の最終公式結果を発表し、政権党FMLN候補サルバドール・サンチェス(69、フネス現政権副大統領)が得票数149万5815票(50・11%)で、対立候補を上回ったと発表した。これにより、サンチェス当選を事実上認めた。

 敗れたのは、極右野党ARENAのノルマン・キハーノで、148万9451票(49・89%)だった。得票差はわずか6363票(0・22ポイント)だった。帰属不明票が3198票あったが、これがキハーノに全部回されるとしても、票差は逆転しない。

 サンチェスは、内戦中のゲリラ連合FMLNを構成した5ゲリラ組織の一つ、解放人民軍(FPL)の司令だった。元教師で、内戦を描いた『望まなかった戦争』など著書4点がある。大統領に6月1日就任する。任期は5年。
  

ベネズエラ問題で南米諸国連合が委員会を派遣へ

 南米諸国連合(ウナスール)は3月12日、チレ首都サンティアゴで外相会議を開き、「ベネスエラの平和共生回復のためのメカニズモを探り勧告する委員会」を設置し、遅くとも4月第1週までにカラカスに派遣することを決めた。

 12日は、反政府学生らが街頭蜂起し死傷者の出る騒乱状態を起こしてから1カ月。カラボボ州バレンシア市では、反政府デモ隊に紛れ込んだ暴徒が狙撃し、国家警備隊(GNB)大尉、学生、市民各1人が死亡した。

 過去一カ月の騒乱関係による死者は25~28人に達した。

 首都では政府系学生と反政府派学生らが行進した。反政府派は商店のガラスを破壊、略奪し、建物に放火を試みた。GNB部隊が催涙ガス、放水などで規制した。負傷者数十人が出たもよう。

 一方、ニコラース・マドゥーロ大統領はこの日、首都で国民平和会議(CNP)を開き、破壊活動には断固対処すると表明した。またホルヘ・アリアサ副大統領は、政府系学生と会合し、「革命派学生平和会議」を設立した。

 2月下旬実施され、このほど公表された世論調査では、反政府街頭行動に賛成したのは11・3%で、85・4%は反対した。また80・9%はCNPを通じての対話に賛成している。

2014年3月12日水曜日

スペインの生態学者らが日本政府に原発再開断念を求める

 団体「行動する生態学者たち」と、カタルーニャ社会党などカタルーニャ州左翼3党の州会議員の計20数人は3月11日、東電福島原発大事故3周年を記念して、バルセローナの日本総領事館前に集結し、総領事館に書簡を手渡した。

 書簡は、福島原発事故の悲惨さ、放射能汚染の深刻さに触れ、日本政府に「日本にある48カ所の原発を再開しないよう」要請している。

 書簡はまた、広島と長崎で人類最初の原爆犠牲者となり3年前に福島原発事故に遭った日本人は、世界中から放射能被害の源を無くすため行動を起こす正統な資格を持つ、と訴えている。

 さらに「地震現象と人間の過ちは、電脳理論を超えて原発の安全を脅かす」と指摘し、統御不可能なもの(放射能)を統御するには限界がある、と警告している。

 書簡は、今年がスペイン・タラゴーナのバンデジョース原発の事故25周年に当たると前置きし、大惨事に至る直前だった同原発を廃止に追い込む運動を日本政府は支援すべきだ、と呼び掛けている。

きょうチリでベネズエラ問題を南米諸国連合外相会議が協議

 チレの首都サンティアゴで3月12日、ベネスエラ情勢を協議する南米諸国連合(ウナスール)外相会議が開かれる。議長は、輪番制議長国スリナムの外相が務める。

 11日のミチェル・バチェレー大統領就任式に出席したブラジルのヂウマ・ルセフ大統領はバルパライソで、「外相たちは、ベネスエラの合意と安定を醸成するための委員会を既に設置した」と明らかにした。

 ニコラース・マドゥーロ大統領の代理で就任式に出席したエリーアス・ハウア外相は同日、「大統領は政権打倒の陰謀に対処するためチレに来られなかったが、陰謀は既に潰した。ベネスエラは安定を取り戻す」と述べた。外相会議は、ハウアの報告を踏まえて話し合う。

 一方、就任式に出席したエクアドールのラファエル・コレア大統領は、「明らかにベネスエラを不安定化させようとする陰謀があった。民主的に選ばれた政権を支持する」と述べ、マドゥーロ支持を明確に打ち出した。

 極右・右翼・保守路線のピニェーラ前政権に代わって4年ぶりに復活した中道左翼のバチェレー政権は、マドゥーロ政権に理解を示している。そのチレで開かれる外相会議は、7日のOEA大使会議に続いて、ベネスエラに有利な判断を打ち出す公算が大きいと見られている。

チリのミチェル・バチェレー大統領が就任

 チレのミチェル・バチェレー大統領(62)が3月11日就任した。2006~10年に次ぎ2期目となる。新大統領は、バルパライソにある国会で、イサベル・アジェンデ上院議長から大統領の襷(たすき)を渡された。

 女性上院議長から女性大統領に襷が渡されたのは、チレ史上初めて。またラ米に同時期に女性大統領が4人そろったのも初めて。亜国、ブラジル、コスタ・リーカに加え、再びチレが女性大統領となった。

 バチェレーは決選で女性候補エベリン・マテイを破って当選したが、女性候補同士の一騎討ちもチレ大統領選挙史上初めてだった。

 就任式には、チレを除く南米11カ国からは、内政にかかりきりのベネスエラ大統領と、10日始まったカリコム首脳会議に出たガイアナ大統領以外の9カ国大統領が出席した。メキシコ大統領、米副大統領、OEA事務総長らも出席した。

 アジェンデ議長はこの日の自らの就任式に臨んだが、就任後、「父(故サルバドール・アジェンデ大統領)は1966~69年に上院議長だった。娘が同じ地位に就いたことを誇りに思っているはずだ」と述べた。

 また「チリ最高位の大統領と上院議長に同時に女性が就任した事実は、男女平等の進展を象徴的に示す」と指摘した。

 実業家で富豪のセバスティアン・ピニェーラ前大統領は、新自由主義政策を推進し、貧富格差を拡げた。また教育民営化で学生層の激しい反発を招いた。先住民族マプーチェへの弾圧も目立った。

 バチェレー大統領は、前政権がもらたした歪みの是正に加え、ピノチェー軍政期にできた現行憲法の大幅改正ないし、新憲法制定を志している。新憲法制定は相当に難しい政治的事業であり、やるならば時間をかけて段階的に目指すしかないだろう。

 また政権党連合とともに「新多数派」という選挙連合を組んだ共産党が代表する底辺層の福利拡充も課題となる。

2014年3月11日火曜日

エル・サルバドール決選投票最終結果は3~4日後判明へ

 エル・サルバドール選管のエウヘニオ・チカス代表は3月10日、サンサルバドールで記者会見し、決選投票の最終公式結果発表まで3~4日かかる見通し、と明らかにした。

 14投票所の投開票に不正・異常があり、このため、その開票結果は全体の開票結果に加えられていない。検察庁が、不正・異常部分も含む開票結果全体を点検してから最終結果が確定する、という。

 だがチカスは、同部分を除く開票結果に基づく政権党FSML候補の優位は動かない、と述べた。同党のサルバドール・サンチェスは149万4144票(50・11%)を獲得している。

 これに対し、野党ARENAのノルマン・キハーノは148万7510票(49・89%)。得票差は6634票(0・22ポイント)の超僅差だ。キハーノ陣営は、不正・異常部分の綿密な開票やり直しを要求している。
 

エル・サルバドール決選、票差わずか6634票

 エル・サルバドール選管は3月10日昼過ぎ、前日の大統領選挙決選投票の暫定結果(開票率99・95%)として、FMLN候補サルバドール・サンチェス得票率50・11%、ARENA候補ノルマン・キハーノ49・89%と発表した。

 得票差は、わずか0・22ポイント=6634票にすぎない。

 選管は10日中に最終結果を公式発表する、としている。

2014年3月10日月曜日

エル・サルバドール決選投票は大接戦

 エル・サルバドール選挙最高裁判所(TSE、中央選管)は3月9日、同日実施された大統領選挙決選投票の暫定結果を発表した。開票率95・81%段階で、政権党FMLN候補サルバドール・サンチェス50・13%、野党ARENA候補ノルマン・キハーノ49・87%だった。

 大接戦のため残る5%弱の開票結果が当落を決めることになる。両陣営とも「勝利宣言」をしているが、TSEは最終結果が判明するまで勝利宣言をしないよう勧告した。 

キューバ革命の女性英雄メルバ・エルナンデス死去

 キューバ革命のエロイーナ(女性英雄)の生存者メルバ・エルナンデス(93)が3月9日、糖尿病関係の病気で死去した。共産党中央委員だった。人民権力全国会議(国会)の議員も70~90年代に務めた。

 メルバは1943年ハバナ大学法学部を卒業し、弁護士になった。53年7月26日のフィデル・カストロ率いるモンカダ兵営襲撃に、もう一人の女性アイデエ・サンタマリーア(故人)とともに参加した。

 フィデルらがメヒコ市に亡命すると、つなぎ役を果たした。革命戦争中は、フアン・アルメイダ指揮下の東部第3戦線に所属した。

 革命後は、ヴェトナム、カンボジア、ラオスとの連帯委員会委員長、アフリカ・アジア・ラ米人民連帯機構(OSPAAAL)書記長を務めた。さらにヴェトナムとカンボジアで大使を務めた後、アジア・オセアニア研究所の所長になった。

 遺言により、遺体は火葬に付され、遺骨は、モンカダ兵営襲撃に参加し死亡した同志たちが眠るサンタイフィヘニア墓地に埋葬される。

 【私は1998年11月ハバナの自宅でメルバにインタビューした。拙著『キューバ変貌』(1999年、三省堂)参照。】

2014年3月9日日曜日

キューバで携帯電話によるeメイルサービス開始

 クーバ電気通信会社(ETECSA)は3月8日、携帯電話による電郵(eメイル)サービスを開始する、と発表した。

 契約費は1・5CUC(24ペソ=1米ドル)。送受信ともに1メガバイトごとに1CUC。

 クーバで使用されている携帯電話は約200万個。ETECSAは13年6月、全国118か所に電郵サービス室を開いた。ここでのパソコン使用料は、1時間4・5CUC。

エル・サルバドールできょう、大統領選挙の決選投票

 エル・サルバドール(ES)で3月9日、大統領選挙の決選投票が実施される。2月2日の第1回投票で得票上位2人が政権を懸けて争う。

 候補は、政権党ファラブンド・マルティ民族解放戦線(FMLN)の元司令官の一人サルバドール・サンチェス副大統領(69、左翼)と、野党・国民協和同盟(ARENA、右翼)のノルマン・キハーノ首都サンサルバドール市長(67)。

 第1回の得票率はそれぞれ49%、39%だった。世論調査では、サンチェスが10~18ポイント上回って有利。

 有権者は490万人。内外監視団2000人が全国の投票所に配置される。

 争点は、貧困、対外債務、治安など。貧困率は、マウリシオ・フネス現大統領就任時の2009年40%だったが、13年には29~34%に落ちた。フネス政権の社会投資が奏功したためだが、公共債務は増えて145億ドル(GDPの55%)となった。また財政赤字は13年4・2%、14年は3・6%になるもよう。

 問題は、前身に刺青をした青年暴力団マラスだ。殺人、強盗、強姦などを恣(ほしいまま)にする恐るべき存在だ。「マラ・サルバトゥルーチャ」(MS13)と、「バリオ18」に分かれて血みどろの抗争を続けてきた。

 フネス政権の仲立ちで12年、<休戦>した。これにより殺人発生率が40%落ちたと、政府は言う。首都など都市部の危険地帯には兵士6500人が展開しているが、決選に際し、さらに5000人が治安出動する。

 FMLNとARENAは内戦を戦った敵同士だった。和平後は選挙で闘ってきた。FMLN政権継続か、右翼政権復活か、結果はJST10日正午には判明する見込み。

2014年3月8日土曜日

米州諸国機構(OEA)がベネズエラ対話支持を決議

 米州諸国機構(OEA、34カ国加盟)は3月7日、ワシントンの本部で大使会議を開き、「民主的に選ばれた政府の努力を認め、国民対話継続を求める」決議案を賛成29、反対3、棄権2で可決した。

 反対は米国、カナダ、パナマ。棄権はバハマとグレナダだった。

 決議には、一連の暴力事件の犠牲者への哀悼、暴力糾弾も盛り込まれている。

 ベネスエラのロイ・チャデルトン大使は、ベネスエラとラ米の勝利だ、と語った。

 ベネスエラ情勢をめぐる外交舞台は、ミチェル・バチェレー智大統領が就任する3月11日のサンティアゴ市に移る。

 米国のバイデン副大統領は就任式に出席し、メヒコ、コロンビア、ペルーの太平洋同盟(AP)加盟国首脳らと会談することにしている。

 就任式にはベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領、その盟友ボリビアのエボ・モラレス大統領らも出席を予定している。サンティアゴでは南米諸国連合(ウナスール)の外相会議も開かれる予定。

 一方、ラファエル・ラミーレス石油相は7日、中国から新たに50億ドルの融資があると発表した。両国の開発銀行で構成する「中国ベネスエラ合同基金」に融資され、ベネスエラの社会基盤整備などに投下される、という。

 石油相はまた、最近の訪中の帰途モスクワでプーチン露大統領と会談し、ロシアが国営ベネスエラ石油会社(PDVSA)に20億ドルを融資する方向となった、と明らかにした。

南米諸国連合がチリで外相会議開き、ベネズエラ問題協議へ

 ベネスエラのエリーアス・ハウア外相は3月7日、同国問題を協議するため南米諸国連合(ウナスール)外相会議が12日、チレのサンティアゴ市で開かれる、と明らかにした。

 チレでは11日、ミチェル・バチェレー前大統領が4年ぶりに政権に復帰するが、その就任式に出席する南米諸国外相の日程に配慮した開催となる。

 ハウアによると、カラカスで6日、ニコラース・マドゥーロ大統領と、ウナスール輪番制議長のスリナム大統領デジレー・ボーターセが会談し、外相会議開催が決まった。

 同外相は、米州諸国機構(OEA)が外相会議開催を断念し、ウナスール外相会議開催が決まったのを受けて、「祖国は南を見つめながら夜が明けた」と喜びを表した。

 一方、ベネスエラ国軍(FANB)作戦戦略司令部(CEO)のブラディミロ・パドゥリーノ将軍は6日声明を発表し、「ボリーバル主義者である我々兵士は、神と共に、ボリーバルとチャベスの祖国を建設するため自由、独立、進歩の道を開いていく」と述べ、間接的にマドゥーロ政権支持の立場を表明した。

 将軍はまた、「憲法に従わず社会の基本的権利を蹂躙する暴力行為をする者たちは、国軍の意志を変えようと絶望的に暴力行為に出ている」と指摘し、クーデターがあり得ないことを示唆した。

 6日には首都で、路上のバリケードを撤去していた国家警備隊(GNB)要員ら2人が狙撃され死亡した。この事件に対し、政府は強い態度で臨んでいる。 

2014年3月7日金曜日

キューバが欧州連合と政治・協力対話開始へ

 クーバのブルーノ・ロドリゲス外相は3月6日、欧州連合(EU)による2月10日の、政治・協力対話開始の提案を受け入れた、と発表した。

 EUは1996年、当時のスペインの極右首相ホセマリーア・アスナールによる「欧州共通姿勢」を受けて、対玖関係を制限する方向に傾斜した。だが、ラウール・カストロ政権の08年以降の改革政策を認め、既にEUの14カ国が独自に関係改善を進めてきた。

 クーバとEUの話し合いが公式に始まることによって、米国の対玖締め付け政策が時代遅れなことがますます明瞭になった。

2014年3月6日木曜日

コスタ・リカ大統領選挙は決選なしで野党候補当選へ

 コスタ・リーカ大統領選挙の決選投票は4月6日に予定されているが、2月2日の第1回投票で得票率30%で2位につけた政権党・民族解放党(PLN、保守)のジョニー・アラヤ(サンホセ市長)は3月5日、決選進出を辞退した。

 その結果、得票1位だった野党・市民行動党(PAC、中道左翼)のルイス・ソリース候補(55)が無投票で当選することになった。選管が認定すれば、次期大統領となり、5月8日政権に就く。

 世論調査では、ソリース64%、アラヤ21%で、アラヤは勝ち目がないと判断し候補を下りた。背景には、この国初の女性大統領として期待されながら失政が目立ったラウラ・チンチージャ現大統領の不人気や、オスカル・アリアス前大統領から続くPLNの親米保守政策が飽きられたことが挙げられる。

 ラ米諸国の大統領選挙で決選前に候補が降りた例としては、2000年のラ・ドミニカーナ(ドミニカ共和国)大統領選挙で得票2位のダニーロ・メディーナ(現大統領)、03年の亜国選挙1位のカルロス・メネム元大統領が記憶に新しい。

 ペルーでは1990年選挙1位のマリオ・バルガス=ジョサが2位のアルベルト・フジモリに決選前、支持率で引き離され、降りようとしたが厳しく批判されて決選に臨み、敗北している。

 コスタ・リーカのPACは、過去2度、大統領選挙でオトン・ソリース候補が敗れているが、別のソリースが決選なしで政権に就く方向となった。

ベネズエラ大統領がパナマとの国交断絶に踏み切る

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は3月5日、チャベス廟での式典で演説し、パナマとの外交関係断絶と経済・通商関係凍結を決定した、と発表した。故ウーゴ・チャベス大統領に報告する形をとった。

 大統領は、パナマのリカルド・マルティネリ大統領を「(帝国主義=米国の)さもしい下部(しもべ)」と扱き下ろし、「ここはボリーバルの国だ。敬意を払うべきだ」と、激しい言葉をパナマに投げつけた。

 パナマ大統領は米州諸国機構(OEA)にベネスエラ問題を討議するよう大使会議開催を求め、これにより6日ワシントンで開催されることになった。マドゥーロは、5日午前の演説で、これに反発していた。

 パナマ国内では、マルティネリが分不相応な外交主導権を発揮した結果だと、大統領を批判する声が出ている。両国貿易は、パナマ運河カリブ海側のコロン市にある自由貿易地域を中心に行なわれてきた。これが凍結される。

 ベネスエラは10億ドルの債務を抱えており、両国間で返済交渉が進められていた。交渉も中断を余儀なくされる。

 パナマでは5月、大統領選挙が実施され、7月1日新政権が発足する。それまで関係回復は困難との見方が有力だ。

 マドゥーロは予想外の断交を打ち出したことにより「強い大統領」との印象を内外に与える効果を狙った。

「チャベスは貧者の救世主」とベネズエラ大統領が讃える

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は3月5日、故チャベス大統領一周忌記念の軍民行進が行なわれた首都中心部の大通り観閲席で演説し、「ウーゴ・チャベスは貧者の救世主として歴史に刻み込まれた」と、亡き大統領を讃えた。

 大統領はまた、「チャベスは地域統合に尽力した。そのお陰でペトロカリーベ、CELAC、ウナスールなどがある」と、チャベス外交の功績を振り返った。

 マドゥーロは、パナマがベネスエラ問題を米州諸国機構(OEA)で話し合うことを提案し6日ワシントンの本部で大使会議が開かれるのに関し、「OEAには、60年間ゴルペ(クーデター)に関与した忌まわしい歴史がある。OEAは今すぐ、そして永遠に去れ!」と語調を強めて詰った。

 続けて、パナマを念頭に「あそこ(OEA)には右翼政府がいて、会議を開こうと画策している。ここにあるのは、国内極右勢力と強国が連携してのゴルペの策謀だ」と前置きし、「いかなる介入にも断固として対応する」と激しく反発した。

 さらに、「右翼よ、我々の人民を見誤るな。OEAはワシントンにあるではないか。我々の進路はウナスールなのだ。針路は南だ」と強調した。

 反政府行動が破壊活動を伴っていることについては、「少なくとも4都市で街頭暴力の首謀者らを逮捕し、武器、火炎瓶、火薬などを押収した。橋、トンネル、自動車道などを破壊しようとしていた。 彼らを処罰する」と述べた。

 軍民行進は、クーバ、ボリビア、スリナムの首脳、アルヘンティーナ、ブラジル、エクアドール、ハイチ、イラン、パレスティーナ、カリブ諸国の代表団、各国大使らが見守った。ニカラグア大統領は予定を変更し、5日マナグアでチャベス追悼式典を主催してからカラカスに向かった。

 

2014年3月5日水曜日

ベネズエラでウーゴ・チャベス大統領一周忌行事始まる

 カラカスで3月5日、昨年のこの日、癌で死去したウーゴ・チャベス大統領(当時58)の一周忌の記念行事が始まった。クーバのラウール・カストロ国家評議会議長は5日到着し、首都の丘陵にある旧モンターニャ兵営内のチャベス廟を訪れ、花輪を捧げた。

 同議長のほか、ボリビアのエボ・モラレス、ニカラグアのダニエル・オルテガの両大統領、アルヘンティーナのアマード・ブドゥ副大統領、各国外相、外交団らが参列する。

 昼前に首都中心部の大通りで、国軍とチャベス派市民による大掛かりな行進が予定されており、ニコラース・マドゥーロ大統領、来賓らが観閲する。午後はチャベス廟で式典がある。夜は、政府・民間全テレビ放送局が記録映画「我が友人ウーゴ」を放映することになっている。

 街頭では、政権打倒を目指す極右勢力、学生らが反政府デモを断続的に続けており、厳戒態勢下にある。軍民行進には、「政変はありえない」という政府の立場を明確に示す狙いがある。

『アイヌ文化の実践 ≪ヤイユーカラの森≫の20年(上)』を読む

 札幌市に「ヤイユーカラの森」という組織がある。「自ら行動する人々の森」という意味だ。アイヌ文化をアイヌ自ら調査・研究し継承していくのを目的に、1992年結成された。以来20年間に刊行された同名の会報(季刊)を2001年発行分までまとめてある。この会の運営委員長計良光範(けいら・みつのり)編。

 アイヌ、先住民族、差別など国内問題の記述だけでなく、世界中の先住民族の在り方や問題を交流を通じて紹介している。ブラジル・アマゾニーアの先住民族ヤノマミ、グアテマラのマヤ、メヒコのマヤ系EZLN(サパティスタ民族解放軍)など、ラ米の先住民族の問題もしばしば登場する。ラ米学徒にとっても極めて興味深い本だ。

 巻末には「アイヌ史略年表」が付いている。(下)は今秋刊行の予定。発行所は、ヤイユーカラの森。
 

2014年3月4日火曜日

オルテガ・ニカラグア大統領が死亡説を自ら葬る

 ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領(68)は3月3日、マナグア空港に姿を現した。大統領が人前に登場したのは2月下旬以来10日ぶり。「心臓発作による死亡」説が流れていたが、この噂を自ら葬った。

 大統領は、新しく任命されたレオポルド・ブレネス枢機卿がヴァティカンから帰国したのを出迎えた。長らく枢機卿を務め引退したミゲル・オバンドもブレネスを出迎えた。

 オルテガは空港で枢機卿に、5日カラカスで催されるチャベス1周忌式典に参列するため4日ベネスエラに向かう、と伝えた。

 ニカラグア次期大統領選挙は2017年に実施されるが、オルテガは連続3選をかけて出馬する予定。

ベネズエラ外相が国連人権理事会で政権打倒工作を糾弾

 ベネスエラのエリーアス・ハウア外相は3月3日、ジュネーブの国連人権理事会で演説し、「ベネスエラは、強国が政治的利益の推進手段として人権を用いるのに反対する」と述べ、「諸政府、諸国際機関が一方的に為す評価、圧力、判断を受け入れない」と強調した。

 外相はベネスエラが直面している暴力行為について、「合法政府を打倒するための攻撃だ。社会不安に起因するものではない。過去にも2002年(クーデター事件)、04年などの暴力があった」と指摘し、「国際社会は、政府打倒を狙う政治的、イデオロギー的な攻撃であることを理解すべきだ」と警告した。

 さらに、「強力なメディア工作を通じて我が国に心理戦争が組織的に仕掛けられている。内外民間メディアは、人権を主権国家政府を痛めつける道具として使っている諸政府の宣伝扇動機関になっている」と、メディアと欧米諸国などとの関係を糾弾した。

 抗議デモをする権利については、「絶対的なものではなく、平和的かつ丸腰(非武装)でなければならない。平和行動ならば民主的な人民参加の形態として促進され保障される」と語った。

 そのうえで、「最近の一連のデモにおける暴力事件は、訓練された暴力集団によって引き起こされている証拠がある。暴力集団は道路を遮断し、自動車や公共施設を破壊し、外国(人)を排斥しようとしている」と非難した。(この「外国(人)」はクーバを指す。)

 ハウアはまた、「ベネスエラは諸外国同様に治安や経済の問題を抱えている」と認め、「人権条約、メルコスールとウナスールの人権規約などを我が国は遵守する」と述べた。

 続けて「ニコラース・マドゥーロ大統領の政権は一貫して対話を促進してきた。平和国民会議(CNP)には広範な分野の人々が参加している。平和・平等を守るため尽力している我が国政府を支援するよう、国際社会に要請する」と呼びかけた。

 最後に、故ウーゴ・チャベス大統領が2012年12月8日に行なった最後の演説に触れ、「チャベス司令官は、いかなる状況下でも、憲法が定める新しい民主制度と、広範な参加を伴うベネスエラ型社会主義を建設するため、ボリバリアーナ革命を勝利に導かねばならない、と言った。これがマドゥーロ政権の立場だ」と説き、「それは平和に生きる人民の権利を保障することだ」と結んだ。





 
 
 
 

2014年3月2日日曜日

ベネズエラ政府と財界が経済協議開始し、野党は危機感抱く

 ベネスエラでは2月26日開かれた「平和国民会議」(CNP)の決定を受けて27日設置された「平和のための経済委員会」が動き始め、従来疎遠だった政府と財界との対話の回路が開かれた。

 政府の側にある軍部に次いで、財界が政府と協調姿勢を取り始めたことから、極右政党、外国保守政権および内外右翼メディア、およびこれに踊らせている感のある学生らによる、政変を狙う不安定化の言動も次第に勢いを失いつつある。

 「経済委員会」で、大手企業社長は27日、輸入代替製品の国産化を促すため政府の価格統制と従来の外貨管理を見直すのを骨子とする12項目を提案した。この会合には企業家600人が出席した。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は28日、CNPを常設機関とし、その決定事項の実施機関として、「政治委員会」の設置を決めた。この委員会は、野党や学生代表が対話に応じれば、その対話の場ともなる。

 野党連合MUDは、財界が政府との対話に積極的になっているのに危機感を抱き、対話派と、強硬対決派の間の溝が拡がりつつある。

 大学生連盟は、刑務所に収監されている極右政治家レオポルド・ロペスの釈放を求めており、3月1日には、首都郊外の刑務所前にバイクデモをかけた。ロペスは逮捕前に政変を呼び掛けており、扇動罪などで逮捕された。

 一方、エリーアス・ハウア外相は月末にボリビア、パラグアイ、ウルグアイ、アルヘンティーナ、ブラジル、スリナム、ガイアナを歴訪した。パラマリボでは、南米諸国連合(ウナスール)の輪番制議長Dボーターセ・スリナム大統領に、ベネスエラ情勢を協議するためウナスール緊急首脳会議を開くことを要請し、了承された。

 これに対し、米国、パナマ、ペルーなど保守陣営は、米州諸国機構(OEA)外相会議での協議を主張している。ベネスエラや、メルコスール諸国の大勢はウナスールでの協議に賛成している。
 
 ハウア外相は28日、ガイアナのジョージタウンで記者会見し、「学生デモ」には「統一ベネスエラ行動青年」(JAVU)など極右破壊活動集団が紛れ込んでいると述べ、反政府行動の実態を知るべきだと注意を喚起した。

 外相は帰国後、バレンシアで28日、警備中の国警隊員一人がデモ側から眼を撃たれ死亡した事件を内外メディアがほとんど報じないとして、メディアの偏向報道を厳しく批判した。

 5日は、腰部癌で死去した故ウーゴ・チャベス大統領の一周忌。政府は大掛かりな行事を予定している。これに対し、学生らはあくまで揺さぶりをかけていく方針だ。

サパティスタ民族解放軍(EZLN)が機関誌刊行

 メヒコ・チアパス州内の拠点に根を張る「サパティスタ民族解放軍」(EZLN)は3月1日、機関誌『レベルディーア・サパティスタ』(サパティスタの反逆=ないし反逆心)の創刊号を刊行した。

 モイセス副司令は、署名記事で「メヒコは新自由主義の農園になってしまった。我々は、すべてを商品と見なす富裕な悪人どもや悪しき政府によって、母なる大地ともども破壊される危機に直面している」と指摘し、「だからこそ1994年に蜂起した」と記している。

 EZLNは今年元日、蜂起20周年を迎えた。これを機に機関誌を発刊した。

【EZLN蜂起20周年については、月刊誌LATINA2014年2月号(1月20日刊行)の「ラ米乱反射」参照】

2014年3月1日土曜日

立教大学ラテンアメリカ研究所の修了式挙行さる

 立教大学ラ米研の2013年度修了式が3月1日執り行われ、修了生6人が吉岡知哉総長から修了証書を手渡された。(他の修了生1人は欠席した。)

 私は、ラ米論Ⅱで「現代ラ米情勢」を講師として9年間担当したが、今年度で終了した。修了生と私は、言わば同期生である。

 国木田独歩は『武蔵野』に「武蔵野では道を選んではいけない」と書いている。私はこの言葉が好きで、「ラ米では道を選んではいけない」と言う。

 修了生は、今後さまざまな入り口から新たな気持ちでラ米に臨むはずだ。私も、そうありたい。

 「篠懸の道」のあるキャンパスの一角に通った21世紀初頭の9年は、私にとって「一時代」だった。

キューバの「5人の英雄」がまた一人釈放さる

 クーバの「5人の英雄」のうちのフェルナンド・ゴンサレスが2月28日、ハバナに帰還した。米国で1998年9月逮捕され、スパイ罪で15年半の禁錮刑に服役していたが27日、アリゾナ州内の刑務所から釈放された。

 5人のうちのレネ・ゴンサレスも既にクーバに戻っている。これで服役中の仲間は、ヘラルド・エルナンデス、アントニオ・ゲレロ、ラモーン・ラバニーニョの3人となった。

【この事件の背景については、『フィデル・カストロ-みずから語る革命家人生』(岩波書店)下巻末の解説参照。】