2017年6月16日金曜日

 ペンス米副大統領が「対ベネズエラ強硬論」を展開、ラ米諸国に行動を要請▼ボリビアのエボ・モラレス大統領がペンスに論駁▼ベネズエラ選管は州知事・州会議員選挙の詳細日程を発表▼キューバ外相が欧州歴訪を開始。法王庁に対VEN強硬論封じ込め要請か

 マイク・ペンス米副大統領は6月15日、マイアミで16日まで続く「中米安全保障・繁栄会議」で、中米首脳や企業家を前に演説、ベネスエラ情勢に触れて、「自由こそが繁栄への真の道であることをベネスエラに示すべきだ」とラ米諸国に呼び掛けた。

 ペンスはまた、「ベネスエラでの<権力濫用>と暴力を早急に止めさせるべきだ。安保は繁栄の道だ」とも述べた。これは、ベネスエラへの軍事介入も選択肢に入れている米政府の苛立ちを表している。米州諸国機構(OEA)が、米国、カナダ、メヒコ、ペルーなど対VEN強硬派と、ニカラグア、ボリビア、カリブ諸国などベネスエラ擁護派に割れていて、米国の思い通りの決議ができないからだ。

 米南方軍は13~17日の日程で、ベネスエラの眼と鼻の先のトゥリニダード&トバゴ(TT)で合同軍事演習を実施中。この「砲艦外交」と副大統領発言で、軍事、政治両面からベネスエラに圧力をかけているわけだ。

 ペンスはさらに、8月13~18日、カルタヘーナ、ボゴタ、ブエノスアイレス、サンティアゴ・デ・チレ、パナマ市を訪問すると明らかにした。

 ペンス発言に対し、ボリビアのエボ・モラレス大統領はラパスで、「米副大統領よ、権力濫用とは、母なる大地の権利を保障する気候変動パリ合意をないがしろにすることを指す言葉だ」と厳しく批判した。また、「世界中に侵攻のための軍事基地を置いていることが権力濫用なのだ」と論駁した。

 一方、ベネスエラ国家選挙理事会(CNE)のティビサイ・ルセーナ議長は15日、先に発表された12月10日実施予定の州知事・州会議員選挙について、有権者登録を7月15日開始、8月8~12日に立候補届けを受理すると明らかにした。9月4~8日に立候補者を発表、選挙戦は11月15日~12月7日に展開される。

 同議長はまた、7月30日投票予定の制憲議会(ANC)議員選挙の地方区に3200人、職能別区に2300人が立候補する、と発表した。

 首都カラカスでは15日、「私たちはベネスエラだ運動」(MSV)の710実働部隊の長が任命され、出陣式が催された。政府支持派の若者たちの部隊で、首都の家庭を訪問し、生活上の問題点や政府への要望を聴く。

▼ラ米短信   ◎クーバ外相が欧州歴訪

 クーバのブルーノ・ロドリゲス外相は6月15日、トルコ、オーストリア、スロヴァキア、イタリア、ヴァティカン歴訪を開始した。ローマ法王庁では、ベネスエラ問題の平和解決への協力を法王に求めると見られている。

 ベネスエラ原油への依存度の高いクーバは、米国や一部ラ米諸国の対ベネスエラ強硬論に危機感を抱いており、軍事侵攻の可能性を封じ込める外交を展開している。

2017年6月15日木曜日

 ベネズエラでジャーナリスト殺害さる。暗殺の可能性も。マドゥーロ大統領は暴動の黒幕を名指しして警告▼米州諸国機構(OEA)は19日カンクンでVEN問題話し合う外相会議開催へ▼米南方軍はベネズエラ沖で13日、合同軍事演習を開始

 ベネスエラ・スリア州マラカイボ湖畔のオヘーダ市で6月14日、ラジオジャーナリスト、ネルソン・バローソ(53)が他殺体で発見された。現場は自宅で、殴打された痕跡があった。バローソはFMアメリカ放送社主で、チャベス派国会議員レオニダス・ゴンサレスの広報官だった。当局は、反政府勢力による暗殺の可能性も含め捜査中。

 首都カラカスでは同日、反政府派暴徒がオートバイで暴走中、うち2台が激突、2人が死亡した。内務省は、反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUD所属のフレディ・ゲバラ国会副議長が暴徒の背後にいると告発した。首都リベルタドール区では13日、反政府派の若者23人が破壊活動現行犯で逮捕されている。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は14日、暴動で若者が死んでいるが、金を払って若者を暴徒に仕立て暴動に駆りたてているのはミランダ州知事エンリケ・カプリーレスと、国会議員ミゲル・ピサーロであり、いずれ収監され代価を払うことになろう、と警告した。カプリーレスはMUD内の極右政党PJ(まず正義を)党首で、ピサーロは同党幹部党員。

 一方、グアテマラ外相カルロス・モラレスは14日、ベネスエラ問題を話し合う米州諸国機構(OEA)特別外相会議を19日、墨保養地カンクンで開催すると発表した。モラレスはOEA会合の輪番制議長。OEAは同地で20~21日、年次定例外相会議を開く。OEAは5月31日、ワシントンでベネスエラ問題を話し合う特別外相会議を開いたが、合意できず、19日に再度話し合うことになった。

 ペルー外務省は、PPクチンスキ大統領がデルシー・ロドリゲスVEN外相により前日、こっぴどく糾弾されたのに反駁、「ベネスエラでの民主復活を断固推進する」と表明、内政干渉政策続行を明らかにした。

 ローマ法王庁は14日、ラ米5カ国6人の保守・右翼系大統領経験者に書簡を送り、「ベネスエラ危機解決は、真剣な交渉と選挙によって可能」との立場を伝えた。

 米南方軍は13日、ベネスエラのすぐ沖にあるトゥリニダード&トバゴ(TT)海域で合同軍事演習「貿易風2017」を開始した。17日まで。18~20日は、南方軍司令部のあるマイアミで、演習参加諸国の指導者セミナーを開く。

 ベネスエラの眼と鼻の先のTT領海での演習は、明らかなベネスエラ牽制策であり、南方軍はその意図をあからさまにしている。米国務省は、ベネスエラ政府高官への新たな「制裁」を準備中と14日表明した。南方軍と歩調を合わせた明白な内政干渉だ。

 ベネスエラ最高裁は14日、政府と対立しているルイサ・オルテガ検事総長が異議を申し立てた最高裁判事33人の過去の任命に関し、異議を却下した。


 
  

2017年6月14日水曜日

 キューバ市会議員選挙は10月実施へ。州会と国会の選挙は未定▼トランプ米大統領が16日マイアミで対キューバ見直し政策発表か

 クーバ政府の最高意思決定機関である国家評議会は6月14日、市会に当たる人民権力ムニシピオ会議議員の選挙を10月22日実施すると発表した。決選は10月29日。任期は2年半。

 州会に該当する人民権力州会議議員および、国会に当たる人民権力全国会議(ANPP)議員(いずれも任期5年)の選挙日程は追って発表される。選挙を経て来年発足する新しいANPP(現在612議員)は国家評議会員(同36人)を選出。国家評議会が議長(国家元首、任期5年、一人2期まで)を選ぶ。

 今月3日86歳になったラウール・カストロ議長は来年2月24日、議長を退く、後任はミゲル・ディアスカネル現第1副議長と内定している。だがラウールには、共産党第1書記の任期が21年4月まで残っており、議長を辞めても第1書記に留まり、新議長の後見役を務めることが可能だ。

  別件だが、ハバナ市マレコン(海岸通り)の著名な民営レストラン(パラダール)「エル・リトラル」と、同「ルンゴ・マレ」の2軒が14日、「資金洗浄」容疑で家宅捜査され、閉店処分となった。店主の自宅も捜索を受けた。たとえば、レストランが不法漁獲した伊勢海老など魚介類を買い取れば「資金洗浄」と見なされることがある。

 一方、ドナルド・トランプ米大統領は「16日マイアミで対玖外交政策を発表する」、との観測がある。クーバ革命軍(FAR)と関係する玖企業・団体との商取引を禁止することなどが発表される、との情報も流れている。

 トランプには確固たるラ米政策も対玖政策もなく、主として米連邦議会のクーバ系反カストロ派極右・右翼議員に吹きこまれた政策を打ち出すことになる。

 
  

2017年6月13日火曜日

 パナマが台湾と断交、中国と国交樹立▼マルティネリ前パナマ大統領がマイアミで逮捕さる▼ベネズエラ最高裁が検事総長の訴えを却下▼デルシーVEN外相はペルー大統領提案を内政干渉と糾弾

 パナマのフアン・バレーラ大統領は6月13日、中国と国交を樹立した、と発表した。この日北京で、イサベル・サンマロ副大統領兼外相と王毅外相が国交樹立協定に調印した。パナマと台湾の外交関係は消滅した。

 バレーラ大統領は、世界最大の人口を持ち世界第2の経済大国である中国と国交がなかったのは虚構だったが、それを正した、と述べた。王毅外相は、パナマが「一帯一路」に参加するのを歓迎すうと述べた。

 これで台湾が外交関係を維持するのは20カ国になった。うち11カ国はLAC(ラ米・カリブ)地域にある。中国系企業はニカラグアで運河を建設中だが、パナマ運河を持つパナマと国交を樹立したことで、中国は存在感を一層増した。

 中国はパナマ運河利用国として米国に次いで世界2位。同運河カリブ海側のコロン自由貿易地域での物資供給国としては第1位だ。中米ではコスタ・リカが中国と国交を維持しており、次はニカラグアになる公算が少なからずあると見られている。

  一方、国際刑事警察機構(インターポール)は12日、パナマ前大統領リカルド・マルティネリをマイアミで逮捕し、身柄を収監した。マルティネリは13日出廷する。パナマ政府は身柄引渡しを要求している。マルティネリは法的追及を逃れ15年初めからマイアミに住んでいた。

 パナマ政府は、違法情報収集および公金横領で国際手配していた。マルティネリは2014年まで5年間政権にあった期間に、政敵ら約150人の電話や電郵(eメイル)を傍受していた。公金横領など腐敗容疑をかけられている。

▼ラ米短信   ◎ベネスエラ最高裁が「制憲議会無効」の訴えを却下。

 ベネスエラ最高裁選挙法廷は6月12日、ルイサ・オルテガ検事総長による制憲議会(ANC)開設決定の無効化を求める訴えを却下した。オルテガは3月末からニコラース・マドゥーロ大統領の法的措置にしばしば異議を唱えてきた。

 政府および政権党PSUVにはオルテガ更迭を求める声が高まっている。一方、反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUDは、オルテガを支持している。

  デルシー・ロドリゲス外相は13日、PPクチンスキ秘大統領がマドリードでベネスエラへの6カ国による仲裁を提案したことについて、内政干渉として糾弾。同大統領に「ベネスエラに伸ばしたその忌まわしい手を引け」と、警告のメッセージを発した。

   
 

 チェ・ゲバラを50年前捕えたボリビア軍退役将軍が「ゲバラは殺されるため送りこまれた」と語る。近く著書で詳述▼プエルト・リコ住民投票は投票率23%と低調。「米国51番目の州」化が多数▼獄中のベネズエラ極右政治家が国軍に「反逆」を呼び掛け。国軍高官が制憲議会反対で辞任か

 50年前の1967年10月8日、ボリビアで革命家エルネスト・チェ・ゲバラを逮捕した人物として知られるボリビア陸軍退役将軍ガリー・プラード=サルモンは6月11日、「チェはクーバ共産党上層部からボリビアに殺されるために派遣された」と語った。

 プラードは『犠牲にされたゲリラ』の著者だが、エル・チェ歿後半世紀に際し、改訂版として近く『ニャンカウアスーからラ・イゲーラへ-50年後に』を出版する。そこに、故フィデル・カストロ首相(1967年当時)の「裏切り」などを証言と共に盛り込むという。

  ゲバラの遺体が埋められていたサンタクルース州バジェグランデ市と民間団体は10月のゲバラ没50周年行事開始の準備を進めている。

 革命戦争中、エル・チェ(チェ・ゲバラ)が重要な戦果を挙げたサンタクラーラ市入口には、「エルネスト・チェ・ゲバラ彫刻複合体」がある。ゲリラ姿のゲバラ像、博物館、霊廟などが並んでいるが、このほど修復作業が完了した。ドイツの協力で、技術者4人が5週間かけて修復した。

 一方、スペイン・バスコ州ビルバオの対玖連帯会合は11日、スペイン保守紙エル・パイースに「クーバをめぐる最悪虚偽報道賞」を授賞することを決め、閉会した。

▼ラ米短信   ◎プエルト・リコ住民投票は低調

 米植民地プエルト・リコで6月11日実施された住民投票は、投票率が23%で、極めて低調だった。投票者の97%は政権党PNP党員ないし支持者で、「米国の第51番目の州」になることを選択した。

 「完全独立」ないし「自由連合国」としての独立に投票したのは1・5%、現状維持(自由連合州)は1・32%だった。独立2党は投票をボイコット、このこともあって投票率は上がらなかった。

 米連邦議会が、この投票結果をどう判断するかに焦点が移る。共和党はプエルト・リコの正式州化に消極的だ。

▼ラ米短信   ◎ベネスエラ情勢

 スペイン訪問中のPPクチンスキ秘大統領は6月12日マドリーで、「ベネスエラの民主体制維持のため、内政干渉と見なされようと
も、ラ米諸国は関与する必要がある」と前置き。「ベネスエラの味方3国、反対派3国の計6カ国で仲裁委員会を作ってはどうか」と提案した。これは米政府の意向を受けた提案。

 一方、暴動教唆罪などで服役中のベネスエラ極右政党VP(人民意志)党首レオポルド・ロペスは11日、ビデオメッセージを流し、その中で国軍に対し、「あなた方は護憲などのために反逆する権利と義務がある」と訴えた。マドゥーロ・チャベス派政権に忠誠を誓っている国軍を離反させる戦術だ

 ジャーナリスト、ブラディーミル・ビジェーガスは12日、国防会議および国家評議会の書記アレクシス・ロペス少将が、マドゥーロ政権が推進している制憲議会(ANC)開設政策に反対して辞任した、と明らかにした。国防相は確認していない。同少将は、故ウーゴ・チャベス前大統領の政権で、大統領親衛隊長、陸軍司令官を務めた。

 ベネスエラ政府は北京で12日、オリノコ油田で原油を日量32万5000バリル増産する合弁事業計画に調印した。



2017年6月12日月曜日

 米植民地プエルト・リコで将来の在り方を選ぶ住民投票実施。選択肢は対米併合(第51州化)、自由連合国含む独立、現状維持(自由連合州)。法的拘束力はない▼ラウール・キューバ議長は来年辞めると、娘マリエーラが語る

 カリブ海にある米国の植民地(自由連合州)プエルト・リコ(PR)島で6月11日、島の将来の在り方を決める住民投票が実施された。選択は①完全独立もしくは自由連合国としての独立②自由連合州としての現状維持③米国の51番目の州になる併合-。

 昨年11月の知事選挙で当選したリカルド・ロセジョー知事と政権党PNP(新進歩主義党)は併合主義。これに対し、PIP(PR独立党)は完全独立、PPD(民主人民党)は自由連合国を目指している。

 最近の世論調査では、52%が併合派、17%が現状維持、15%が両独立派だった。PIPとPPDは、投票ボイコットを呼びかけている。PR財政は、公共債務730億ドルを抱え、破綻している。そのような状況で島の将来を決めるのは無謀との批判がある。

 PRでは1967、93、98、2012年の4回住民投票が実施され、今回は5回目。最初の投票から50年経っている。前回投票で初めて54%が「現状変更」に賛成した。ただし、住民投票には法的拘束力はない。決定権は米連邦議会にあるが、共和党はPRの第51州化に乗り気でないとされる。

 投票結果は日本時間12日昼前に判明する見込み。投票率(もしくは棄権率)の高さに関心が集まっている。

▼ラ米短信   ◎ラウール・カストロ玖国家評議会議長は来年退陣する

 ラウール議長の娘マリエーラ・カストロ(玖性教育センター=CENESEX=所長)は6月10日、スペイン・バスコ州で、地元放送に対し、「父が引退しないよう求める声があるが、高齢(86歳)の父は来年退陣する。ずいぶん前から準備してきたこと」と述べた。

 バスコ州中心都市の一つビルバオでは、第14回バスコ州・クーバ連帯会議が開かれており、マリエーラは招待出席している。革命家チェ・ゲバラの娘アレイダ・マルチ医師も出席しており、「フィデル・カストロとチェ・ゲバラを模範として生きることが、両人への最大のオメナヘ(オマージュ)となる」と強調した。

2017年6月10日土曜日

 ニカラグアのミゲル・デスコト元外相(84)が死去▼メルケル独首相の批判をベネズエラが糾弾。検事総長は「制憲議会(ANC)無効」化を最高裁に訴える

 ニカラグアのミゲル・デスコト元外相(84)が6月8日、首都マナグアの病院で死去した。ロサンジェルスに1933年生まれ、61年ニューヨークでカトリック司祭になり、「解放の神学」派に参加。75年、ソモサ独裁打倒のゲリラ戦を展開していたFSLN(サンディニスタ民族解放戦線)の支援団体に参加。79年7月19日のサンディニスタ革命勝利で、革命政権執行部に参加した。

 英語力や在米経験を買われて外相に就任。81年に反革命非正規部隊(コントラ)を送りこんで軍事介入したレーガン米政権を相手に84~86年、国際司法裁判所で闘い、米側の侵略事実認定と賠償命令を勝ち取った。米政府は賠償していない。

 サンディニスタ政権に入ったことで、ヴァティカンから司祭資格停止処分に遭った。だが、「私は常に神と共にある」と言い、意に介さなかった。

 2007年、80年代にFSLN政権の大統領を務めたダニエル・オルテガが政権に返り咲くと、大統領の外交顧問に就任した。08~09年には、国連総会議長を務めた。

 現在、連続3期目にあるオルテガ大統領は「偉大な盟友の死」を嘆いた。ラウール・カストロ玖国家評議会議長ら縁のあったラ米諸国要人らから、弔電や花輪が届いている。

【私ブログ子は、デスコトに長いインタビューをしたことがある。私が「パーデレ(司祭)」と呼ぶと、「(資格停止中だが)構わないさ」と言って、にやりと笑ったのを記憶している。】

◎ベネスエラ情勢

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は6月9日、反政府勢力による一連の暴動で破壊・略奪された民営商店舗442軒への補償金として計2985億bf(約1億5000万ドル)を被害者に渡す、と発表した。

 デルシー・ロドリゲス外相は9日、アンゲラ・メルケル独首相が8日、訪問先の亜国ブエノスアイレスで「ベネスエラ紛争の平和解決のため、連携して協力するようラ米諸国に呼び掛ける」と発言したことに対し、「内政干渉であり、反政府勢力の暴力を奨励するもの」と糾弾した。同首相は9日にはメヒコ市で、「ベネスエラのひどい状況を解決するのは容易でない」と発言している。

 亜国サンタフェ州ロサリオ市では9~10両日、ノーベル平和賞受賞者5人が出席して平和会合が開かれている。亜国の左翼アドルフォ・ペレス=エスキベル(APE)は9日、ベネスエラ情勢に触れて、「人民は、人民意志を代表しない為政者に替えて、参加型政権を樹立する権利がある」と述べた。

 さらに、「ベネスエラは、ラ米での覇権を失いたくない米国の策謀によるクーデターの危機に見舞われている」と指摘した。これに対し、保守のコスタ・リカ元大統領オスカル・アリアスは、「ベネスエラでは民主が失われて久しい」と言い、APEと対立した。グアテマラのリゴベルタ・メンチュー、ポーランドのレフ・ワレサ、イランのシリン・エバディも、それぞれ発言した。

 ベネスエラ反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUDは9日、カラカス22地区で「市民会議」を開催した。MUDによる暴動込みの街頭行動戦術は国際宣伝には効果を発揮したが、国内では批判にさらされている。このため、チャベス派に倣い、政策を直接伝えるため「人民集会戦術」を導入した。

 一方、政府と対立しているルイサ・オルテガ検事総長は8日、マドゥーロ政権が推進している制憲議会(ANC)開設とそのための選挙を「人権、民主、投票権を侵害する」として無効とするよう最高裁に提訴した。MUDは検事総長を支持している。

 カラカスでは、政府がクーデターの芽を摘むため国軍の「浄化作戦」を遂行中で、不満派の佐官・尉官ら現役士官14人が4月に逮捕され拘禁中、との情報が流れてる。
  



  

2017年6月8日木曜日

★★★米南方軍がベネズエラ近海バルバドス領海で19カ国海軍合同演習「貿易風2017」を開始。ラ米・カリブ15カ国と米加英仏が参加。13日からの第2段階はTT領海で実施へ。マドゥーロ政権に軍事圧力かけるのが狙い  

 米南方軍は6月6日、ベネスエラへの軍事的圧力をかけるための「貿易風2017」という多国間軍事演習を開始した。始まった「第1段階」は6~12日、ベネスエラ北東沖約600kmのバルバドス領海で実施。続いて13~17日、「第2段階」がベネスエラの眼と鼻の先のトリゥニダーダ&トバゴ(TT)で展開される。

 南方軍はフロリダ州マイアミに司令部があり、ラ米・カリブ諸国ににらみを利かせる米州南方探題の役割を担う。カート・ティッド司令官(海軍大将)は7日、演習の目的を「カリブ海域での安全保障と、自然災害および犯罪取引に対応するため」と説明した。

 だがティッド提督は4月、米上院軍事委員会で、「<ベネスエラ危機>は地域の不安定要因となり、地域による対応を余儀なくされる」と証言、軍事介入の可能性を示唆した。ニコラース・マドゥーロ大統領のベネスエラ政権は「ティッド証言」を直ちに糾弾した。

 演習に参加しているのは、カリブ英連邦加盟12カ国のうちセントルシーアを除く11カ国、スリナム、アイチ(ハイチ)、ドミニカ共和国(RD)、メヒコのLAC(ラ米・カリブ)15カ国および米加英仏の計19カ国。LAC諸国の中には、親ベネスエラ諸国も含まれている。

 ティッド司令官は、米国務省、CIA、USAIDなどとともに、マドゥーロ政権打倒工作の「行程」を、ベネスエラ反政府勢力に指南してきた。USAIDは、反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUDに活動資金も提供してきた。

 MUDは「行程表」に沿って、4月初めから70日近くベネスエラの都市部で街頭暴力戦術を展開してきた。だが「勝機」が見えないのと、マドゥーロ政権が7月30日の制憲議会(ANC)議員選挙に向けて邁進しているのに焦っている。これを観たトランプ政権と南方軍は、急遽、今演習に踏み切った。

 「第2段階」の実施現場は、ベネスエラ領海に隣接しており、ベネスエラ国軍(FANB)には緊張が走っている。南方軍には、軍事
圧力をかけて、マドゥーロ政権を支持している国軍を割り、軍事クーデターの可能性を高める狙いがある。

 だが、トランプ大統領が弾劾される可能性に直面しており、中東、北朝鮮、対中関係など難題を抱えている折から、米軍がベネスエラに直接軍事侵攻する可能性は現時点では乏しい、との見方は成り立つ。親ベネスエラ諸国を巻き込むのも得策ではない。

 しかし、だからこそ、内憂(弾劾可能性)を外患(ベネスエラ問題)排除によって打ち払いたいという危険な力学が働くこともありうるのだ。この誘惑が高じれば、極めて危険な事態となる。その場合、米軍は「有志国」を募るだろう。 

2017年6月6日火曜日

 ベネズエラ制憲議会(ANC)議員選挙は7月30日実施へ。政権党PSUVは選対本部設置。反政府野党連合MUDはボイコット

 ベネスエラ国家選挙理事会(CNE)のティビサイ・ルセーナ議長は6月4日、制憲議会(ANC)議員選挙を7月30日実施する、と発表した。全国の都市を選挙区とする地域選挙区出馬登録希望者は約2万人で、今月6~10日に選挙区有権者の3%の署名を集めなければならない。

 職能別選挙区には3万5000人余が出馬を希望。11~14日に署名を集める。ANC議員は545人で、5万5000人強が出馬を登録しており、現時点では101倍の激戦。だが、反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUDはANC開設に反対しており、立候補していない。

 この選挙に備え、政権党PSUV(ペスーブ=ベネスエラ統一社会党)は、カラカス首都圏および全国各州で選挙対策本部「サモーラ200司令部」を設置している。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は日曜定例TV番組で、反政府勢力の別働隊および前衛となって暴動を演じている若者らについて、「カプタゴーン」を使用している、と指摘した。この興奮剤はシリアで多く生産され、ISが使用していると伝えられる。

 大統領はまた、政府と対立しているルイサ・オルテガ検事総長について、「市民としては政治思想を選ぶ自由があるが、職務上はイデオロギーや政治思想を超えて真実を見極め、正義を施さねばならない」と強調した。

 首都圏チャカオ区アルタミーラで5月20日、反政府勢力別働隊による私刑で殴打され刺されて焼かれた青年オルランド・フィゲロア(21)が3日死亡した。また5月31日、ネルソン・モンカーダ判事を殺害した犯人は5日、治安部隊に包囲され自殺した。

 スペインのJL・Rサパテーロ前首相は4日、軍のラモベルデ刑務所で服役中の極右政党VP(人民意志)党首レオポルド・ロペスと面会した。デルシー・ロドリゲス外相と、首都圏リベルタドール区長ホルヘ・ロドリゲス(外相の実兄)が同伴した。

 一方、米ユナイテッド航空は3日、ヒューストンーアルバ゙ーカラカス往復週5便の運航を7月1日に打ち切る、と発表した。採算が合わないためという。既にエアカナダ、アリタリア、ルフトハンザ、アエロメヒコなど7社がVEN便を止めている。

 VENと中国は3日、マカオで開かれた会合で、合弁によるベネスエラでの重機械組立工場建設、既存バス組立工場拡張で合意した。両国間には790の合弁事業があり、総投資は620億ドル。
 

2017年6月5日月曜日

 スペイン人作家フアン・ゴイティソロ(86)がモロッコ・マラケシュで死去

 スペイン人作家フアン・ゴイティソロ(86)が6月4日、モロッコのマラケシュで死去した。小説、論集、随筆、紀行文、ジャーナリズム記事を書き、多作だった。1931年1月6日、バルセローナに生まれた。バスコとクーバの血を引く。兄ホセ=アグスティンは詩人、弟ルイスは学者である。

 フランコ独裁期の1956~69年、パリで亡命生活を送り、出版社ガリマールで文学所顧問を務めた。その職場で知り合ったモニク・ランジと78年結婚した。だが妻に死なれ、マラケシュに96年定住した。

 論集『小説の問題』(1962)、最後の小説『自国でも他国でも亡命者』(2008)などがある。オクタビオ・パス文学賞(2002)、フアン・ルルフォ・ラ米文学賞(04)、スペイン文学賞(08)、セルバンテス文学賞(14)などを受章した。

 ペリオディズモ(ジャーナリズム)に近い紀行文には、西国アルメリア市の地区を描いた『ラ・チャンカ』(1962)、『クーバ訪問記』(62)、『オスマントルコのイスタンブール』(89)、『サライェヴォ・ノート』(93)などがある。「社会派リアリズモ」路線と呼ばれた。

 1969~75年には、米国のカリフォリニア、ボストン、ニューヨークの3大学で文学を教えた。スペインのエル・パイース紙の寄稿者でもあり、露チチェン紛争、ボスニア戦争などを、同紙特派員として取材し、紀行を物にした。イスラム史・文化に造詣が深く、ジャーナリズムからの執筆依頼が多かった。

 私は、通信社時代の1998年、20世紀末企画の一環として「スペイン内戦」(1936~39)について記事を書くに際し、ゴイティソロに会うことにした。当時既に60年前の出来事だったスペイン内戦は、体験者が依然少なからず生存してはいたが、戦場は遺跡化していた。

 そこで終戦後間もなかった、ボスニア戦争を含むユーゴスラヴィア戦争の内戦的戦場を観ることにした。そこで読んだのが『サラェヴォ・ノート』(クアデルノ・デ・サラヘボ)だった。読んでから、マラケシュの自宅にいたゴイティソロにインタビュしたいと電話で伝えると、×月×日×時ごろ、サライェヴォのアテネフランスに来てほしいと言われた。

 私は、この約束を頼りに東京を出発、ウィーン経由でサライェヴォに入り、翌日、約束の日に無事インタビューをすることができた。ボスニアとクロアティアを取材してから、ウィーン経由でバルセローナに行き、スペイン内戦の傷跡を取材した。

 拙著『ボスニアからスペインへ-戦の傷跡をたどる』(2004年、論創社)は、この取材旅行をまとめたもので、ゴイティソロへのインタビューのほぼ全文を載せてある。世話になったこともあって、このオメナヘ(オマージュ)文を書いた。

 私は2011年3月、マラケシュに滞在したが、ゴイティソロと連絡をとらなかった。とれなかったのだ。日本で、東電原発大事故を伴う「東日本大震災」が発生した日だったからだ。

2017年6月4日日曜日

 今福龍太著『クレオール主義』を読む。「週刊読書人」が今福らの鼎談を特集。「週刊金曜日」は書評を掲載

 文化人類学者・今福龍太(東京外語大学教授)が『クレオール主義』を水声社から3月新装出版した。私は、「週刊金曜日」6月2日号に、「<島国全体主義>からの解放の鍵は多文化・多民族主義」と題して、書評を書いた。「島国全体主義」は私の造語である。

 限られた文字数で内容を紹介するため、私はラ米関係に的を絞った。クリオージョ、先住民族カリーベ人、ニカラグアの詩人ルベーン・ダリーオ(1867~1916)、モデルニズモ、ホセ・マルティ(1853~95)、「我らのアメリカ」、ネグリチュード運動などを本文から引っこ抜いて並べ、まとめた。全体主義の闇が狭い列島を覆おうとしている今、この本は市民に活路を与えるはずだ。そのことを書いた。金曜日誌を読んでほしい。

 「週刊読書人」5月5日号は『クレオール主義』再・新刊に際し、「ポスト・トゥルース(真実)に抗って」という鼎談を特集した。この専門紙は、新刊書の紹介はもちろんのこと、第1面から2~3ページに及ぶ対談などの特集記事が素晴らしい。明石健五編集長は特に企画熱心で、毎号のように面白い企画を読ませてくれる。

 鼎談には、今福龍太、中村隆之(大東文化大学講師)、松田法子(京都府立大学講師)が登場する。これは内容厖大で、さまざまな議論が展開されるため、全文を読まないと、鼎談の全体像は把握できない。読むのをお勧めしたい。
    

2017年6月3日土曜日

 チリ・ピノチェー軍政期の左翼大量殺害事件関与の元DINA要員106人に実刑判決▼パブロ・ネルーダ「毒殺」の真相が10月にも判明か▼ベネズエラ政府と検事総長の対立深まる。米GM社が完全撤退を発表

 チレ第1審法廷のエルナン・クリソスト判事は6月2日、ピノチェー軍政下の1975年に、当時の秘密警察、国家情報局(DINA)にチレ国内で殺された左翼119人「拉致・強制失踪」事件の被害者16人の事件に関与したとして、元DINA軍人106人(うち女性1人)に禁錮20年~541日の実刑判決を下した。刑は控訴審の判断を受けて決まる。

 殺害された119人は、共産党(PCCH)系武闘組織「革命的左翼運動」(MIR)と社会党(PSCH)の要員。軍政は、「仲間割れによる暴力と、亜国軍政当局との戦闘により亜国内で死亡した」と虚偽情報を流した。これを虚偽情報宣伝用メディアとして設立されたブラジルと亜国の週刊誌などが報じていた。同判事は2015年にも同119人事件の容疑者79人に実刑判決を下している。

 119人殺害事件は「コロンボ作戦」と呼ばれた。南米南部のブラジル、亜国、ウルグアイ、パラグアイ、チレ、ボリビアの軍政6国が米政府の後押しで結成した「コンドル作戦」の一部だった。ニクソン米政権のヘンリー・キッシンジャー国務長官は、コンドル作戦の黒幕だった。

★1973年9月のクーデターで発足したばかりのピノチェー軍政に「毒殺」された可能性が濃いノーベル文学賞詩人パブロ・ネルーダ(1904~73)の死因が10月にも公表される見通しとなった。

 ネルーダの甥ロドルフォ・レイエス=ムニョス弁護士が5月末に明らかにした。ネルーダは軍政によって首都サンティゴのサンタマリーア診療所に強制入院させられ、軍政が送り込んだ人物によって葡萄状菌を接種され死亡した可能性が浮上している。

 同弁護士は、「私は伯父が殺害された可能性を微塵も疑わない」と明言している。

◎ベネスエラ情勢

 ベネスエラのルイサ・オルテガ検事総長は6月2日ラジオ放送で、「ニコラース・マドゥーロ大統領は制憲議会開設を思い止まるべきだ」と述べた。また、12月10日実施予定の州知事・州会議員選挙を「繰り上げて早期実施すべきだ」と、国家選挙理事会(CNE)に提言した。さらに、「(政府は)検察から刑事事件捜査権を奪うつもりのようだ」と語った。

 これに対し、政権党PSUV(ベネスエラ統一社会党)の動員担当副党首ダリーオ・ビバスは、「(オルテガは)テロリズムとファシズムを支援しつつ暴力犯罪に密接に関わっている」と、「反政府勢力との関係」を指摘、「辞任すべきだ」と述べた。検察庁前には政府支持派が押し掛け、オルテガを「裏切り者」と呼び、辞任を求めた。

 反政府派大学生組織は2日、国営テレビ放送VTV本社にデモをかけた。VTV社長を兼ねるエルネスト・ビジェーガス情報相は学生代表を迎え入れ、対話。検察情報を基に街頭暴動最中の死者たちの死因を「正しく報道せよ」と迫る学生代表らに情報相は、「検察は捜査権を独占しているが、真実までは独占していない」と交わし、政府側には異なる死因判断があることを説明した。

 検察発表では、4月初めから暴力事件3390件を捜査、63人死亡、1189人負傷。「死者のうち19人は治安部隊要員が責任者」と見なしている。オンブズマン事務所は死者65人としている。またNGO「ベネスエラ社会紛争監視」(OVCS)によれば、4月1日~5月31日に全国で政治的な街頭暴力事件が計1791件あった。

 別件だが、米GM社は2日、カラボボ州バレンシア市から完全に撤退すると発表した。同市の工場で69年間、自動車を組み立ててきた。カラボボ州当局は「約束不履行」などを理由に4月18日同工場を接収、GMは提訴したが、最高裁が5月25日却下した。

 マドゥーロ大統領は、南アフリカとの鉱業開発技術協力、合弁会社設立で協定を結んだ2日、「我々にとって故ネルソン・マンデーラ(南ア大統領)は遺訓である。平等と平和を求め抵抗し闘争したアフリカ民族会議(ANC)の教訓は我々にも伝わっている」と述べた。

 
 
 

 
 
 

2017年6月2日金曜日

 ベネズエラが有志5カ国の対話醸成会合を招集。デルシー外相はメキシコでの次回外相会議で「アヨツィナパ問題」取上げると表明▼カラカスで極右が高裁判事暗殺した可能性浮上▼キューバ国会が「ベネズエラ連帯宣言」を採択▼バチェレー・チリ大統領が最後の施政報告演説 

 ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は6月1日カラカスで記者会見し、国内対話醸成のためエル・サルバドール、ニカラグア、ドミニカ共和国、セントヴィンセント&グラナディーン、ウルグイアの有志5カ国の会合を招集する、と明らかにした。

 また、カリブ共同体(カリコム)が、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)の枠組内で対話すべきだと提案したことについて、「国際法の原則に則った提案だ」と評価した。

 だが、「ベネスエラは、米州諸国機構(OEA)のいかなる決定をも認めない。したがって(反ベネスエラ決議採択工作をしている)アルマグロ(OEA事務総長)はOEAを破壊していることになる」と指摘した。ベネスエラの政情については、「反政府勢力が民主と憲法に反して暴力状況をつくってしまった、というのが真実だ」と強調した。

 外相は、今月21日、メヒコの保養地カンクンで開かれるOEA外相会議には出席すると31日発表したが、その会議でアヨツィナパ問題を提起する、と述べた。2014年9月26~27日、メヒコ・ゲレロ州イグアラ市一帯で起きた農村教員養成学校生43人の強制失踪事件のことで、発生後32カ月経ったが、未解決ののまま放置されている。

 「ベネスエラの人権問題」をOEAで再三批判してきたメヒコに、その痛いところを蹴り込んで逆襲する戦略だ。

 制憲議会(ANC)議員の出馬登録は1日終了したが、政府中枢部と対立するルイサ・オルテガ検事総長は同日、最高裁が大統領にANC開設を発議する権限を認めたことについて、憲法が定める国民投票権という人民の権利をないがしろにする決定、と批判した。

 これに対し、ニコラース・マドゥーロ大統領は同日、「新憲法(大幅改定憲法)の最終草案ができたら、それを国民投票にかける」と約束した。

 一方、ネストル・レベロール内相は、カラカス市内で31日殺された首都圏高裁のネルソン・モンカーダ判事(37)は「反政府右翼の殺し屋に殺害された可能性がある」と指摘した。同判事は、14年に街頭暴動事件を教唆した罪などで服役中の極右政治家レオポルド・ロペスの無罪要求を昨年却下、ロペスの有罪はこれで確定した。このため逆恨みの犯罪と見られている。

 エルネスト・ビジェーガス情報相は、社長を兼任する国営テレビVTVに出演、反政府勢力はデモの目的地をVTV本社にしており、放送局を乗っ取る戦術のようだと非難。「だが、何があろうと放送が中断されることはない」と述べた。

 タレク・エルアイサミ執権副大統領は、反政府勢力の中核MUD(保守・右翼野党連合)の代表フリオ・ロドリゲス国会議長が、米投資会社ゴールドマンサックスがベネスエラ国営石油PDVSAの債券28億ドル分の購入を決めたことを誹謗中傷したとして、「反国家的言動」として提訴する考えを示した。

 ロシアのウラディーミル・プーチン大統領はモスクワで1日、通信社10社との会見で、ベネスエラ情勢に触れ、「ベネスエラは激しい政治闘争のさなかにある。反政府勢力も政府も憲法を守り、過激主義を許してはならない」と強調した。

◎クーバ国会が「ベネスエラ連帯宣言」を採択

 社会主義クーバの人民権力全国会議(ANPP、国会に相当)は6月1日、ベネスエラ連帯宣言を採択した。ラウール・カストロ国家評議会議長(共産党第1書記)は閉会演説で「ベネスエラの合憲政権の打倒を狙う攻撃、政策、内政干渉を糾弾せねばならない。経済権益を持つ彼らは、故ウーゴ・チャベス大統領が始めたボリバリアーナ革命の継続を阻もうとしている」と、ベスエラ内外の敵対勢力を非難した。

 議長はまた、「反政府勢力の多くは、2002年のチャベス大統領打倒クーデター未遂事件及び、03年の<石油クーデター>の首謀者と同一人物だ」と指摘した。

 さらに、「ベネスエラを支援する唯一の方法は、主権を全面的に尊重しつつ、立場の相違を和らげるため積極的対話を奨励することだ」と強調。続けて、「もしベネスエラでの人権や安全を懸念するのなら、多くの死傷者を出してきクーデター促進者(反政府勢力)の暴力行為を糾弾せねばならない。人を生きたまま焼くなどの彼らの行為は、最悪のファシズムを想起させる」と厳しく批判した。

 今回のANPPは、去年4月の第7回共産党大会で採択され、党中央委員会も承認した経済改革関連文書類を審議し採択するため開かれた。ラウール議長は採択された文書との関連で、「変わらねばならないものは全て変えよう。変える速度は、人民合意に基づいて」と述べた。

 議長は来年2月に退陣するが、任期が9カ月弱となったこと、石油供給源ベネスエラの政経危機、トランプ政権下で玖米関係が停滞する可能性などを踏まえ、「改革」について極めて慎重な展望ぶりだった。

▼ラ米短信   ◎バチェレー智大統領が最後の施政報告

 チレのミチェル・バチェレー大統領は6月1日、国会で最後の施政報告演説をした。来年3月11日任期を終える。バチェレーは2006~10年、14~18年の2期務めたきた。計8年間を振り返って、「貧富格差是正に努めたが容易ではなく、政策結果は完全ではなかった」と述べた。

 重点政策として、民主憲法起草過程前進、税制改革、選挙法改正、腐敗防止法制定、堕胎合法化、教育改革などで成果を挙げたと自賛した。

 また先住民族マプーチェ人の「500年越しの土地闘争」に終始符を打つため、アラウカニーアの居住地域で統合的計画を促進してきたことを強調した。

 チレでは11月19日、大統領選挙第1回投票が実施される。保守・右翼勢力が優勢と見られている。

 

2017年6月1日木曜日

 米州諸国機構(OEA)外相会議は主権尊重派が動き、「ベネズエラ糾弾決議」に失敗。デルシー外相は21日のメキシコでの外相会議出席へ▼ベネズエラが国連・非植民地化委員会委員長国に選出さる▼制憲議会(ANC)議員選挙立候補登録始まる。

 ベネスエラへの介入を容易にする決議採択を目論んでいた米州諸国機構(OEA)の保守・右翼諸国は、5月31日ワシントンでの特別外相会議で、親ベネスエラ諸国の反逆により決議ができず、失敗した。デルシー・ロドリゲスVEN外相はカラカスで、「国際規範に則った倫理的なALBA(米州ボリバリアーナ同盟)とカリコム(カリブ共同体)の声が、ベネスエラ介入を目論む勢力を制した」と、会議結果を評価した。

 OEAには米州35カ国のうち社会主義クーバを除く34カ国が加盟。うちベネスエラは4月末、脱退を表明、今会議に欠席したが、脱退手続きには2年かかり、加盟資格は19年4月ごろまで続く。

 今回出席国が33カ国で、重要決議には3分の2の23カ国の賛成が必要。米加墨のTLCAN(NAFTA)3国、亜伯秘コロンビアなど計14カ国の「G14」(反ベネスエラ14カ国グループ)は、今会議前に23カ国の賛成を固める多数派工作に失敗。その結果、「唯一の合意は<合意がなかったこと>」(デルシー外相)という惨敗に終わった。

 会議を主導したのは、カリコム諸国を代表するバハマのダレン・ヘイフィールド外相だった。「カリコムは、ベネスエラの問題はベネスエラが解決すべきだ、という立場だ。OEAは介入すべきではない」と「G14」との立場の違いを強調。「全加盟国が基本的にベネスエラでの対話と和解を求めているのは確かなので、同国内の緊張緩和を促しつつ合意を形成すればいい」と主張。

 これにG14が賛成。会議は4時間余り討議した後、決議なしの流会となった。OEAは6月19~21日、墨カンクンで第47回外相会議を開くが、その前にOEA大使会議で引き続きベネスエラ問題を話し合うことになった。

 デルシー外相は、「ニコラース・マドゥーロ大統領の指示により、カンクン外相会議にはベネスエラ防衛のため出席する」と明らかにした。カンクン会議の前哨戦は既に始まっている。

 今会議でルイス・ビデガライ墨外相は、マドゥーロ政権が進めている制憲議会(ANC)開設過程に反対し、街頭暴動教唆罪などで服役している刑事犯の政治家を「政治囚」と呼び釈放を求めた。これに対しデルシーは、「ビデガライは、失敗国家メヒコを覇権主義国家(米国)の庇護の下に置くべく発言した。墨政府はラ米人民を攻撃し、自国人民をも蹂躙している」と糾弾。

 さらに、「メヒコは麻薬組織の犯罪、相次ぐジャーナリスト殺害、その他の社会的暴力で、世界一危険な国の一つだ。またラ米域内で不平等が最も激しい国の一つであり、民主が危うくなっている」と指摘した。

 外相会議には外相18人が出席、他は代理だった。米国は国務省の大物でラ米通のトーマス・シャノン政治問題担当次官補が出席。ベネスエラ問題解決のため、OEA加盟諸国などによる「連絡グループ」結成が必要との立場を表明した。

 ドミニカ共和国(RD)は1965年に米海兵隊に侵略され、流血の第三次に陥り、改革政権復活を阻まれた。それだけに米軍介入の口実になりやすいOEA決議には厳しく対応する。今会議でも、「ベネスエラの問題はベネスエラが解決すればよい。他の国々は解決努力に連帯すればいい」と、介入したいG14を突き放した。

 5月24日にモレーノ新政権が発足したエクアドール(赤道国)は、「ベネスエラの反政府勢力が対話を拒否しているのは遺憾だ。南米諸国連合(ウナス-ル)の仲介路線に沿ってベネスエラを支援すべきだ」と強調した。ウナスール本部は、キト郊外にある。

 ベネスエラのALBA同盟国ニカラグアは、「内政不干渉原則に反する今会議開催そのものに反対する」と前置きし、「ベネスエラだけが解決の当事者だ」と、G14に釘を刺した。

 ボリビアは「OEAは、加盟国の主権を弱めたい事務職員(ルイス・アルマグロ事務総長を指す)の個人的・政治的利益から、ベネスエラに暴力を焚きつけてきた」と糾弾。「今会議に反対だ。自由な人民は保護者を必要としない」と続けた。さらに、「アルマグロは政治俳優と化し、ベネスエラ紛争を醸し、加盟国ではなく、覇権主義国(米国)の利益を代弁している」と扱き下ろした。

 アルマグロは外相会議正面の議長関の隣に座していたが、攻撃されて苦々しい顔を見せるだけだった。事務総長は大使会議の決定を受けて、もしくは大使会議から委託されて重要発言をするが、重要問題であるベネスエラ問題に関し勝手に発言し続けてきた。この点にも加盟国の批判が高まっている。

 一方、ベネスエラは31日、国連総会で第1委員会(軍縮)の副委員長と、非植民地化委員会の委員長に選ばれた。マドゥーロ大統領は非同盟諸国運動の議長を務めており、それも評価された。

 ラファエル・ラミーレスVEN国連大使は、「米国の圧力にも拘わらずベネスエラは得票率95・6%で非植民地化委員長に選ばれ、米国に<尊厳>という教訓を与えた。ベネスエラは国際社会で敬意を払われているのだ」と強調。「ラ米も国連も<米国の裏庭>ではないのだ」と指摘した。

 ベネスエラ最高裁・憲法法廷は31日、制憲議会(ANC) 開設の発議は大統領の権限であり、必ずしも国民投票実施を必要としない、との判断を下した。これを受けて同日、ANC議員選挙の立候補届けが始まった。6月1日までの2日間で登録する。

 反政府勢力を率いる保守・右翼野党連合MUDは、ANC議員選挙ボイコットをあらためて表明した。MUD内の極右で、4月以来の暴力を含む街頭抗議行動を指揮しているエンリケ・カプリーレス(ミランダ州知事)は31日、伯紙バロール・ド・ブラジルから、「2012年の大統領選挙の際、オデブレヒト社(伯建設最大手)から選挙資金をもらった」と書かれた。300万ドルをもらったとされる。

 この選挙で故ウーゴ・チャベス前大統領に敗れ、13年4月の大統領選挙ではマドゥーロ現大統領に敗れた。このため「失うものがない」カプリーレスは反政府動員行動の先頭に立っているが、18年末の大統領選挙でのMUD候補としての出馬への道は険しい。
 
 ベネスエラ中央銀行は31日、通貨ボリーバル・フエルテ(bf)を64・13%切り下げ、1米ドル=2010bfとした。闇市場では、1d=6000bfにもなっている。
 
 
 
 

2017年5月31日水曜日

 ロシア政府が「ベネズエラ情勢は積極的対話で打開を」と表明、米州諸国機構(OEA)外相会議を牽制。マドゥーロ政権は制憲議会(ANC)開設過程を推進。欧州知識人は「奴らを通すな」と、ファシズムを糾弾。反政府側は欧州議会に支援要請 

 米州諸国機構(OEA)は5月31日ワシントンの本部で特別外相会議を開き、ベネスエラ情勢の打開策を討議する。この日、ロシア外務省は、「ベネスエラが内戦を回避するための唯一の方策は積極的対話だ」と表明、OEAを牽制した。

 反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUDを代表するフリオ・ボルヘス国会議長(右翼政党PJ所属)は31日、欧州議会を訪れ、ニコラース・マドゥーロ大統領のベネスエラ政権に制裁を科すよう要請した。MUDはOEA外相会議に合わせて31日、カラカスのベネスエラ外務省に大規模なデモを仕掛けることにしている。

 これに対しマドゥーロ大統領は31日、制憲議会(ANC)議員選挙に向けて動き出す。大統領は30日、「ANC開設は、一大国民対話促進と、ボリバリアーナ革命の成果維持強化のためだ。帝国主義枢軸諸国に反革命攻撃を受けているベネスエラに、新しい連帯のうねりが国際社会で起きている」と強調した。

 ANC開設のための戦略・宣伝を担当するホルヘ・ロドリゲス首都リベルタドール区長(デルシー外相の実兄)は、「ANCへの提言が既に1万5000件受理されている。さらに提言を集めるため、電話や電脳機器(社会メディア)を使おう」と呼び掛けた。

 スペインとラ米の保守・右翼系の元政府首班25人が参加するクラブ「エスパーニャ・アメリカス民主提言」(IDEA)は30日、OEA外相会議に向けて、反ベネスエラの旗頭ルイス・アルマグロOEA事務総長(前ウルグアイ外相)を支援するよう訴えた。

 これに対し、欧州の左翼知識人たちはハンブルクで26日、「ノ・パサラーン宣言」を発表している。1936~39年のスペイン内戦中、フランコ・ファシスト叛乱軍を阻止するという意味で「奴らを通すな」と人民戦線側が合言葉のように叫んでいたのに因む。

 ベネスエラ内務省は29日、首都圏、スリア州など全国43カ所で監視カメラが破壊された、と明らかにした。ロドリゲス・リベルタドール区長は同日、「反政府勢力過激派は資金を与えて犯罪集団を組織し、国内要所を狙って武力行動をさせている」と非難した。

 一方、米ゴールドマンサックス社は29日、ベネスエラ国営石油PDVSAの債券28億ドルを購入した。ベネスエラ政府はまた、南アフリカと、ベネスエラ国内でのダイアモンド採掘協力で合意した。

 

2017年5月30日火曜日

 知り過ぎた男:パナマの元最高実力者マヌエル・ノリエガ将軍(83)が死去。依然解明されていない米軍侵攻の犠牲者数▼メキシコ先住民族が大統領候補を擁立▼韓国輸出入銀行がニカラグアに支店開設へ▼FARCがハバナを引き揚げる

 パナマ軍政最後の実力者だったマヌエル・ノリエガ退役将軍(83)が5月29日、首都パナマ市のサントトマース病院で死去した。将軍は今年3月8日、同病院で脳腫瘍の除去手術を受けたが、その後、脳内出血となり、入院を続け、数日来、危篤となっていた。

 娘サンドラは、「痛ましい時を迎えた」と一言述べた。フアン=カルロス・バレーラ大統領は談話を発表、「パナマ史の一章が閉じられた」と語った。

 ノリエガは1983年、パナマ軍を率いて最高指導者になり、政敵を排除、権勢を謳歌したが、米国のブッシュ父親政権に挑発され敵対。89年12月20日、ブッシュはパナマに大規模な軍事侵攻作戦を仕掛け、3000~8000人のパナマ人を殺したとされる。

 ノリエガはパナマ市の法王庁大使館に保護を求めたが、90年1月初め、法王庁はノリエガの身柄を米軍に引き渡した。そ日のうちにノリエガはマイアミに護送され、やがて裁判で麻薬犯罪関与により20年の禁錮刑に処せられた。

 出所と同時に身柄をフランスに送られ、資金洗浄罪で1年余り服役した。2011年12月、ほぼ22年ぶりにパナマに送還されて帰国。政敵暗殺や叛乱兵士虐殺などで禁錮60年を言い渡され、パナマ運河沿いのエル・レナセール刑務所で服役していた。

 今年1月27日、法廷で無罪を主張。翌28日、娘サンドラ宅で自宅軟禁処分になった。持病の糖尿病などで、健康が衰弱していたためだ。そして3月、脳腫瘍で入院、帰らぬ人となった。

 ノリエガは東西冷戦さなか、有力将校として米諜報機関CIAの有給協力者となり、CIA長官だったブッシュとも知り合っていた。1968年から80年代初めまでの最高指導者は、運河返還条約を勝ち取ったオマール・トリホス将軍だった。ノリエガは、CIAと組んでトリホス暗殺に関与したとの見方が有力だ。

 ブッシュが、弱いパナマを赤子の手をひねるように侵略し殺戮し破壊した一つの理由は、1999年12月31日の返還後も非常時には運河を米軍支配下に置くため、ノリエガ後の文民政権に、それを特権として呑ませるためだった。またパナマを従順にするため、国軍を潰し、国家警察隊に縮小させた。

 だがCIA筋は、息子ブッシュ(後の米大統領)に極めて都合の悪い証拠をノリエガが握っていたことも侵略理由と指摘する。ブッシュ父子にとってノリエガは「知り過ぎた男」だった。

 米軍侵攻による死者数や、多くの遺体の在り処は依然わかっていない。バレーラ大統領は、米軍侵攻後、四半世紀も経ってから大統領として初めて、死者数の確認をはじめ真実究明に努めると公約した。

 ノリエガは死んだが、多くのパナマ人の悼み、苦しみ、痛みは癒えていない。

▼ラ米短信   ◎メヒコ先住民族が始めて大統領候補を擁立

 メヒコの全国先住民理事会(CNI)とサパティスタ民族解放軍(EZLN)は5月28日、全国から先住民らの代議員848人が出席して会合、ナウア民族の女性マリーアデヘスース・パトゥリシオ=マルティネス(57)を、来年7月の大統領選挙の候補に選んだ。

 2014年の選挙法改正で、無所属・諸派候補も出馬できるようになった。EZLNは早くから「我々の大統領候補は女性」と公言していた。

▼ラ米短信   ◎韓国輸出入銀行が中米支店開設へ

 ニカラグア財務省は5月29日、韓国輸出入銀行が首都マナグアを中米支店開設地に選んだ、と発表した。開店時期は明らかにされていない。ニカラグアは、パナマからグアテマラまでの中米7か国の中央部に位置する。

▼ラ米短信   ◎FARCがハバナを去る

 コロンビア革命軍(FARC)の和平交渉首席代表を務めたイバン・マルケス司令は5月28日、ラウール・カストロ玖国家評議会議長に別れを告げ、コロンビアに引き揚げた。

 マルケスらFARC交渉団は2012年11月からハバナを拠点とし、サントス・コロンビア政権と和平交渉を続けた。交渉は昨年11月の和平最終合意調印で決着。現在、FARCの武装解除が続けられている。 

 名画「ローマ法王になる日まで」が6月3日東京で公開。3万2000人が殺されたアルゼンチン軍政期の凄惨な人道犯罪と、ホルヘ・ベルゴリオ司教(後の法王フランシスコ)の人間的素晴らしさが描かれている。ラ米学徒には見逃せない作品

 イタリア映画「ローマ法王になる日まで」(2015年ダニエーレ・ルケッティ監督作品、ロドリーゴ・デラセルナ主演、113分)を観た。6月3日から、ヒューマントラストシネマ有楽町と新宿シネマカリテで公開される。

 現代アルゼンチン(亜国、アルヘンティーナ)最悪の時代だった軍政期(1976~1983)の人道犯罪の実態を、この映画で垣間見、想像することができる。また、現在の法王フランシスコがなぜ法王にふさわしい人物だったかが、この映画で明確に示される。

 亜国、南米、ラ米、米州、カトリック教会、ヴァティカンに関心を持つ人にとり、また映画を愛する人々にとって必見の名画だ。壮年期のホルヘ・ベルゴリオ(後の法王)役のロドリーゴ・デラセルナは、革命家エルネスト・チェ・ゲバラが学生時代に第1回南米旅行に出た折、行動を共にした6歳年上の親友アルベルト・グラナードを演じている。この点からも興味深い。

 この映画は、書籍『教皇フランシスコ キリストとともに燃えて』(オースティン・アイヴァリー著、宮崎修二訳、2016年、明石書店)の内容に沿っているように見受けられる。この本を読んでおけば、理解ははるかに深くなるだろう。

 1492年10月12日、クリストーバル・コロン(コロンブス)は西大西洋中央部のバハマ諸島サンサルバドール島に漂着した。これがスペインによる新世界到達なのだが、その日はローマカトリックが新世界(ラス・アメリカス)に強引に植え付けられた最初の日でもある。先住民族は改宗を拒否すれば、その場で殺されかねなかった。
 
 以来5世紀余り、法王庁(教皇庁=ヴァティカン)の2013年の統計では、全世界のカトリック教徒は12億5400万人(世界人口の17・7%)。その49%は、米州(南北両米大陸およびカリブ海)が占める。そして米州ではラ米(ラテンアメリカ)が圧倒的に多い。

 欧州は米州に次ぐ22・9%だが、ごくわずかな例外を除き、欧州人の法王が十数世紀も君臨していた。だが法王を選び、かつ法王に選ばれる資格を持つ枢機卿たちの中には、米州、特にラ米から法王を選ぶのが民主的と考える者がいて、その声は年々高まっていた。

 司祭による未成年者への性的虐待事件が世界各地で続発、カトリック教会全体が猛省を促されて久しいが、そうした信仰の危機や、米国生まれの新教系宗派の台頭・浸透で、カトリック教会は危機感を抱いてきた。

 そのような状況の下、<救世主>として2013年3月抜擢された亜国人イエズス会士J・ベルゴリオ枢機卿が法王フランシスコである。現在80歳だ。もちろんアメリカ人=米州人として初の法王である。

 アイヴァリーの本を読めば、あるいは、この映画を観れば、なぜベルゴリオがカトリック世界の最高指導者に選ばれたかが理解できる。言わば<最後の切り札>だったのだ。だがベルゴリオは、カトリック教会の頂点に立つまでに、さまざまな試練を乗り越えなければならなかった。その最大の難関は、1976年3月に始まり、血塗られた軍政期だった。

 ベルゴリオは司祭の立場を生かし、放置すれば殺されかねない人々を匿い、国外に逃がした。悲観も楽観もせず、前方にひたすら向かうベルゴリオは、「神の深遠な理想」を抱きながら、極めて現実的、実践的に自身の人生を操っていた。

 軍政最高幹部に通じる人脈を持つかと思えば、文豪ホルヘ=ルイス・ボルヘス(1899~1986)とも知己だった。法王になるや、ギリシャ正教、ロシア正教、英国教会、イスラム教、ユダヤ教など異なる宗派・宗教の最高指導者に歩み寄り、相互理解と友好の橋を架けた。偏見を持たずに相手を理解しようと努める法王の真摯な姿勢が、相手の心を開くのだ。

 地中海で難渋する難民の救済活動にも見られるように、法王は生の国際情勢にも積極的に関与している。資本主義の総本山・米国と、社会主義クーバとの間で半世紀余り展開されていた米州の頑迷な冷戦に終止符を打つべく関係正常化のための秘密交渉を側面援助した。その甲斐あって、米玖両国は2014年12月17日、国交正常化合意に至り、15年7月国交は再開した。

 また、南米に残る最後の冷戦構造であるコロンビア内戦を終わらせるため、同国政府とゲリラ組織FARC(コロンビア革命軍)がハバナで続けていた和平交渉を支援した。双方は16年11月和平過程に入り、17年5月現在、FARCゲリラは武装解除に応じている。7月末には全員の武装解除が終わる見通しだ。

 世界最大のカトリック教国ブラジルでは16年8月末、労働者党の合憲政権が腐敗した保守・右翼勢力によって、正当な理由なく国会で弾劾された。まさに「国会クーデター」だった。弾劾賛成派の議員たちは「神のために」と叫んで投票、「神」を大安売りした。この政変に心を痛めた法王は、ブラジルに向けて「祈りと対話をもって和合と平和の道を進んでほしい」と呼び掛けた。

 今ラ米を揺さぶっているのは、大産油国ベネスエラの左翼革新政権を倒そうとする国内保守・右翼層と、これを支援する米政府が、政変誘発を狙って激しい破壊活動を仕掛けていることだ。法王はベネスエラ政府と反政府勢力の双方に向けて対話を訴えたが、政府打倒を目指す反政府側は聴く耳を持たない。自身の影響力の限界を知る法王は謙虚である。

 国際社会の最重要当事者の一人であり、世界平和構築に意識的に取り組んでいる法王フランシスコの思想と人間性を、この映画によって知ることになれば、国際情勢を読み解く上で欠かせない新しい視座が開けるだろう。

 多くの人々に観てほしい名画である。 

2017年5月29日月曜日

 31日の米州諸国機構(OEA)外相会議を前に反ベネズエラの世論形成キャンペーンが米州で展開されている。保守派知識人らも加担。▼メキシコ学生強制失踪事件から28ヶ月経過

 米政府の影響下にある米州諸国機構(OEA、英語でOAS、本部ワシントン、34カ国加盟、うちベネスエラは離脱通告済み)が5月31日、特別外相会議を開いてベネスエラ情勢を話し合うのを前に、米州で激しい外交戦が展開されている。

 米政府の意向に忠実なルイス・アルマグロOEA事務総長は、24カ国の賛成を得て「米州民主憲章」をベネスエラに適用し、同国を孤立させたうえで、米国や反ベネスエラ路線のラ米諸国によるベネスエラ介入に持ち込む戦術を練っている。

 これに対しベネスエラを支持するニカラグア、ボリビアなど左翼・進歩主義陣営とベネスエラは、保守・右翼系や米国に脅されているカリブ諸国などが計24カ国に至らないよう動いている。11カ国が賛成しなければ、賛成は多くても23カ国止まりになる。

 米国に従うオンドゥーラス(ホンジュラス)のフアン・エルナンデス大統領は5月25日、同国の在ベリーズ大使館を通じ、「ベネスエラ危機解決には、もっと多くの血が流れることが決定的に重要だ。(これを受けて)同国人民を人道支援し、同国に民主を回復させる」と読みとれる文書をベリーズ外交界に配布した。外国の介入の可能性を示唆する文書だ。

 デルシー・ロドリゲスVEN外相は27日、同文書を暴いて糾弾、オンドゥーラス政府に強く抗議。併せて、アルマグロ(OEA総長)が促進するベネスエラ反政府勢力の暴力計画を非難した。

 ペルー人作家マリオ・バルガス=ジョサ、メヒコ人歴史家エンリケ・クラウセ、コスタ・リカ元大統領オスカル・アリアスらラ米の保守・右翼系知識人・政治家らは27日、連名でマドゥーロ政権を批判した。これも米政府のゴルペ(クーデター)教本に「反ベネスエラ世論作り」として盛り込まれている。

 エルネスト・ビジェーガス情報相は、反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUDを、「外国勢力の介入を誘導する筋書きを実行している」と指摘。「虚偽報道で、暴力死の責任を政府側になすりつけている」と、MUDを厳しく批判した。

 米国務省のアンデス諸国担当次官補代理マイケル・フィッツパトゥリックは27日、エクアドールのアンデス通信に、「政権議会(ANC)開設はベネスエラ危機解決に役立たず、むしろ悪化させる」と述べるなど、反ベネスエラ運動を展開した。

 ANC開担当のエリーアス・ハウア教育相は、「チャベス派政権は、歴史的に疎外されていた多数派人民大衆の社会・政治・文化の権利を拡大した。それを可能にした我々の権力を防衛しよう」と呼び掛けた。ANC議員選挙のうち職能別選挙区に出馬する候補を決める会合で27日語った。

 ララ州都バルキシメトでは27日、国家警備隊(GNB)のダニー・スベロ中尉(34)が反政府勢力による私刑で撲殺された。中尉のオートバイは燃やされ、路上に放置された。

▼ラ米短信    ◎学生43人事件発生から2年8カ月過ぎる

 メヒコ・ゲレロ州イグアラ市一帯で州内のアヨツィナパ農村教員養成学校生43人が強制失踪させられた事件から5月26日で32カ月が経過した。真相はほとんど解明されていない。

 学生の家族や支援者はこの日、メヒコ市のレフォルマ大通りを抗議行進、検察庁前で集会を開き、真相解明を訴えた。事件の鍵を握る麻薬組織「ゲレロ・ウニード」の元首領が、連絡を取り合っていた市警・州警・国警の警察官氏名・電話を記した(元首領の)手帳の存在を隠していた検察庁職員の捜査を実施するよう、家族らは要求した。

 支援団体は、事件発生3周年となる9月15~26日、大規模な事件究明行事を実施する計画だ。
 
 

2017年5月27日土曜日

 米上院議員らがキューバへの輸出と米国人の渡航の自由化求める法案を議会に提出。トランプ政権の対玖政策試す狙いも▼ベネズエラ・タチラ州は、首都攻略への拠点づくり目指す反政府勢力の騒擾活動を制圧と発表

 米両党上院議員55人の賛同により5月26日、対玖輸出自由化や米国人の渡玖自由化を求める「2017年対玖輸出自由化法」案が上院に提出された。パトリック・リーヒー民主、マイク・エンジ共和の両上議らを中心に法案はまとめられた。

 賛同した議員らは、「トランプ政権がオバーマ前政権が始めた対玖歩み寄り政策を維持継続するか否かの試金石になる法案」と指摘する。「過去の玖孤立化政策が成功しなかったため」、この法案提出のような手段が必要と表明している。

 ハバナではラウール・カストロ国家評議会議長が26日、西サハラ独立を目指すサハラウイ・アラブ民主共和国(RASD)のブラヒム・ガリ大統領と会談した。クーバは一貫して、サハラウイの独立運動を支援してきた。ガリは24日のエクアドール大統領就任式に出席した。

 ラパスでは26日、エボ・モラレス大統領がミゲル・ディアスカネル玖第1副議長と会談、ラ米での右翼勢力台頭を前に連帯強化で一致した。両首脳は伯亜赤VENなどで右翼の攻撃が激化している事態に触れ、特にベネスエラについて「その将来はベネスエラ人民が決めることであり、諸外国は内政に干渉してはならない」と警告した。この2人も赤道国大統領就任式に出席した。

 クーバのサンクティ・エスピリトゥ市で25~28日「日玖文化週間」が開かれており、両国関係者が行事に参加している。

◎ベネスエラ情勢

 コロンビア国境タチラ州のホセ・ビエルマ知事は5月26日、「反政府右翼勢力は州を統治不能に陥れようと20日から4日間、準軍部隊と連携し、常軌を逸したテロ、放火、破壊活動を繰り広げたが、州民がそれを許さず彼らを制圧、MUD(保守・右翼野党連合)に教訓を与えた」と表明した。

 知事はまた、「彼らはタチラ州を首都カラカス攻撃戦略の尖端にしようと謀ったが失敗した。コロンビア準軍部隊とMUDが連携するタチラ州だけに、防衛上、(国軍の治安出動を認める)サモーラ計画が重要だ」と指摘した。

 制憲議会(ANC)開設過程担当のエリーアス・ハウア教育相は26日、「ある政府機関は無責任にも推測に基づいて国家警備隊(GNB)を攻撃している」と、暗に検察庁を批判。「検察庁に遵法させ、異常事態を前にして動かない検察庁のような事態を避けるためにもANC過程は必要だ」と強調した。

 ハウアはまた、MUDの国会議員は「不逮捕特権をいいことにテロリズムを組織しているが、そんな国会を(ANCで)正さねばならない」と警告した。

 一方パナマ政府は26日、ベネスエラ、コロンビア、ニカラグア3国人の観光査証によるパナマ滞在を従来の180日間から90日間に変更する、と発表した。同3国人の査証取得希望者の来訪目的や前科の有無などを今後は調べるという。

 米側発表によると、今年第1四半期のVEN米貿易は往復47億ドルで、前年比45%増し。ベネスエラ側の輸出は36億ドルで、その95%は日量71万バレルの原油だった。ベネスエラ原油は26日現在1バレル=44・82ドル。

2017年5月26日金曜日

  イシカワ駐日ベネズエラ大使が日本記者クラブで、同国情勢に関する国際的な虚偽報道を厳しく批判。ニカラグア、キューバ、ボリビアの3大使もベネスエラとラ米の立場を説く▼制憲議会(ANC)選挙出馬は月末登録へ。トランプ米政権はベネズエラとキューバへの18年度援助をゼロに

 セイコー・イシカワ(石川成幸、日系3世)駐日ベネスエラ大使は5月25日午後、日比谷公園に面した東京・内幸町の日本記者クラブで記者会見し、ベネスエラ情勢に関する虚偽ニュースや意図的誤報が横行、極度に誤った反ベネスエラ世論が国際社会で形成されていると、実例を幾つも挙げて批判した。

 米政治週刊誌ニューズウィーク日本語版は、最新号で「ベネズエラほぼ内戦状態、政府保管庫には大量の武器」という見出しで、翻訳記事を掲げた。イシカワ大使は、英語版の見出しにも本文にもないことを日本語版は見出しにしたと指摘した。

 時事通信はカラカス発AFPの翻訳記事に「ベネズエラ、第2のシリアになる恐れ  米国大使が警鐘」という見出しを付けた。大使は、ベネスエラの状況はシリアと全く異なると述べ、米大使の意図を批判した。因みにVEN・米双方は2010年から相互に大使を置いておらず、この記事の大使は「臨時代理大使」と思われる。

 イシカワ大使はまた、典型的な虚偽ニュースとして、保守・右翼野党連合MUD幹部が発信した「治安部隊に包囲され窮地に陥っている若い女性」という印象を与えた写真は、実は治安部隊の前で笑ってポーズをとっていた同じ女性の「演出場面」を撮影した虚偽写真だと、証拠を示して暴露した。

 さらに、コロンビア国境「タチラ州での人間の鎖」と題した写真がスペイン・カタルーニャ州での「人間の鎖」の写真を偽って流したものだと指摘。ウクライナの写真をベネスエラと偽って流した例、チレとエジプトの警察による弾圧写真をベネスエラでの弾圧として流した例、貧者が治安部隊と対峙しているブラジルの写真をベネスエラと偽って流した例など典型的な虚偽発信を次々に紹介。虚偽記事・写真がいかに誤った判断と世論に人々を導くか、ということを指摘した。

 大使はその上で、世界最大の原油埋蔵量を持つベネスエラが石油の富を貧困解決など社会政策に回し国を変革したことに反感を抱く勢力が虚偽情報配信の背後に居る、と示唆した。

 米国は国際金融界に圧力をかけベネスエラへの融資を禁止、ベネスエラの食糧や薬品の輸入が困難になった。ベネスエラの財界も米国に呼応して減産、在庫隠しをしてきた。この種の「経済戦争」でベネスエラ社会は揺さぶられてきた。

 大使は、そんなからくりを説明。その打開策の一例として、6人家族が半月暮らせる食糧品37種をダンボール箱やビニール袋に詰め、平均賃金の10%程度の価格で配給する「クラップ」政策を紹介した。

 さらに、ベネスエラの人間開発指数0・767がLAC(ラ米・カリブ)平均0・751を上回っていることや、貧富格差を示すジニ係数が2015年には0・38だったと強調。ベネスエラは、「資本主義の独裁」に対する「人間的な代替経済モデル」を遂行し成果を挙げてきたが、それゆえに敵視されている、と指摘した。大使は、日本の最重要同盟国である米国への批判を極力避けるべく配慮していた。

 マドゥーロ・ベネスエラ政権は今、制憲議会(ANC)の7月下旬実施に向けて動いているが、イシカワ大使は5月の世論調査で回答者の54%がANC開設に賛成していることが明らかになったと指摘。またMUD指揮の反政府行動が否定的結果を招くと批判する者が81%に上ったことを強調した。

 会見の場の最前列には、クーバのカルロス・ペレイラ大使、ニカラグアのサウール・アラナ大使、ボリビアのアンヘラ・アイリョーン臨時代理大使が並んで着席していた。アラナ大使は、「世界で最も平和な地域は重大な紛争がないLACだ」と指摘。そこに紛争を持ち込む米国を暗に批判した。

 ペレイラ大使は、「日本の一部メディアも虚偽報道に陥ってはいまいか」と指摘。「米政府は左翼政権、進歩主義政権に反対し攻撃を仕掛ける」とし、「政権打倒の戦略は不変だが戦術を替えた」と分析した。アイリョーン代理大使も民族自決を譲らないエボ・モラレス政権の立場を説いた。

 期せずして記者会見の場は「大なる祖国」の熱気に満たされた。

◎ベネスエラ情勢

 ベネスエラ国家選挙理事会(CNE)のティビサイ・ルセーナ議長は5月25日、7月下旬実施のANC議員選挙に出馬する者は31日~6月1日にCNEに登録すべきことを発表。出馬には選挙民の3%の署名が必要とした。

 議員数は545人で、うち364人は全国の市を基盤にした「地域選挙区」から選出。残る181人は「職能別選挙区」から選ばれる。それは労働者79人、年金生活者28人、学生24人、コムーナ(コミューン)24人、先住民8人、農民・漁民8人、身体障害者5人、財界5人。ANC開設に向け提示される改憲草案を審議する「職能別委員会」が一部地域で25日発足した。

 ニコラース・マドゥーロ大統領はMUD指導部に、暴力打ち切り、ANC選挙参加、安寧・生活・民主のための対話をあらためて呼び掛けた。大統領はまた、「商店1000軒以上が略奪、破壊されたが、正常な状態に戻した」とも述べた。

 ブラディミール・パドゥリーノ国防相とネストル・レベロール内相は25日、反政府勢力の暴動のさなかに死んだ大学生(20歳)の死因について政府と異なる見解を示すなど政府中枢と対立しているルイサ・オルテガ検事総長を厳しく批判した。

 デルシー・ロドリゲス外相は、米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長とOEA加盟諸国がベネスエラ政府を激しく非難しながら、ブラジル政府による人民弾圧に沈黙しているのを「背徳的」と糾弾した。ブラジルのミシェル・テメル大統領は贈収賄関与が決定的な形で暴露され、辞任を求める大規模な抗議行動に遭っている。24日には首都ブラジリアに軍隊を治安出動させた。

 ベネスエラ外務省は国連児童基金(ユニセフ)に、「反政府勢力は少年少女・未青年に火炎瓶を作らせ投げさせている」と、証拠の写真、映像、証言を添えて告発した。

 一方、トランプ米政権は24日、2018年度予算案でLAC援助を大幅に削減。16年度に650万ドルあったベネスエラ向けはゼロとなった。同じくクーバ向けも2000万ドルからゼロにされた。一方で米議会は、ベネスエラ反政府勢力支援資金として新たに2000万ドルを支出する法案を審議している。
 

2017年5月25日木曜日

  エクアドルのレニーン・モレーノ大統領が就任。社会政策重視継続を約束。就任式出席のマクリ亜国大統領は高山病で、南米諸国連合会合を開けずに帰国▼ベネズエラ最高裁が首長8人に反政府街頭行動の許可禁止を命令

 エクドール(赤道国)で5月24日、レニーン・モレーノ大統領(64)が就任した。4月2日の大統領選挙決選で51・16%を得票、保守・右翼陣営で新自由主義者の銀行家ギジェルモ・ラッソ(61)を破った。任期は4年。

 国会での就任式で、車椅子のモレーノは、前任者ラファエル・コレア(54)から大統領の襷をかけてもらった。就任演説で、「未来は我々を待ってくれない。未来は現在だ」で切り出し、「4年後には、よりよい赤道国を人民に渡す」と宣言した。自身も副大統領として関与した「市民革命」という改革政策を推進したコレア前政権10年の実績を讃えつつ、新しい時代を切り開くと強調した。

 モレーノは、「人民の生活を守る責任ある国・政府になる」と述べ、具体的政策として、住宅32万5000戸を建設、うち19万1000戸を極貧過程に無料で与え、残りは低所得層に渡すと約束した。雇用13万6000人分創出、貧困対策の一環としての「人間開発給付金」を月150ドルに引き上げること、65歳上の病弱な高齢者への無料医療提供なども掲げた。

 アマソニアの環境保護、隣国コロンビア政府とゲリラELN(民族解放軍)の和平交渉貸座敷として引き続き支援することなども打ち出した。

 就任式には、ボリビア、コロンビア、ペルー、チレ、パラグアイ、アルヘンティーナ、アイチ、コスタ・リカ、オンドゥーラス、グアテマラのラ米10カ国大統領、クーバ第1副議長、米国務省米州担当次官補、南米諸国連合(ウナスール)前事務局長エルネスト・サンペールらが出席。ベネスエラからはカルメン・メレンデス大統領府相が出席、遠方からはサハラウイ・アラブ民主共和国(SADR)のブラヒム・ガリ大統領が出席した。

 亜国のマウリシオ・マクリ大統領は、モレーノ大統領就任後、キトの亜国大使館でウナスールの非公式首脳会合を開き、事務局長選出問題、ベネスエラ、ブラジル両国の情勢について話し合う計画だった。4月21日にベネスエラからウナスール議長国を引き継いでいたからだ。だが標高2800mのキト到着後間もなく高山病にかかり、就任式後、予定を取りやめ帰国の途に就いた。

◎ベネスエラ情勢

 ベネスエラ最高裁は5月24日、カラカス首都圏区長、ミランダ、メリダ両州内の市長ら計8人の首長に、反政府勢力への街頭行動許可を禁止する命令を発した。「平和デモ」を装い暴動を起こすのが常態となったため。8人は保守・右翼野党連合MUD所属。

 ネストル・レベロール内相は同日、首都圏、ミランダ、スリア両州で破壊活動を組織し資金を暴力集団に与えていたとして、MUD内の極右3政党党員計7人を逮捕した、と発表した。

 元検事イサイーアス・ロドリゲスは、「検察内が割れている」として、政府政策にしばしば異論を唱えてきたルイサ・オルテガ検事総長に「反政府勢力の網に絡らめ捕られるのではないか」と警告。「行政府内の一致」を求めた。

 一方、デルシー・ロドリゲス外相は、MUD指揮下の反政府勢力が2014年に決行した街頭暴動事件(グアリンバ)を調査するため政府が設置した「真実・正義委員会」の任務延長が決まった、と明らかにした。マドゥーロ大統領から指示があった。

▼クーバ・ベネスエラ情勢講演会:5月24日1900~2030、東京・高田馬場のNGOピースボート本部で開かれ、約50人が参加した。講師の伊高浩昭は玖国情勢を語り、コロンビア記者らが昨年制作したグアンタナモ米軍基地をめぐるビデオ映像(35分)を放映した。次いで、険悪度が日々に増しているベネスエラ情勢について話した後、質疑応答に移った。2040ごろ閉会した。

2017年5月24日水曜日

★★★ベネズエラ制憲議会(ANC)選挙は7月下旬、州知事・州会議員選挙は12月10日実施へ。マドゥーロ大統領が政令に署名。一部で手続きへの異論出る。バリーナス州は軍に治安出動を要請▼今日24日夜、ピースボートで関連講演会

 ベネスエラ国家選挙理事会(CNE)のティビサイ・ルセーナ議長は5月23日、制憲議会(ANC)議員選挙を7月下旬に、州知事・州会議員選挙を12月10日に、それぞれ実施すると発表した。24日にCNEは会合、両選挙の具体的日程を決める。州選挙は昨年末までに実施されるはずだったが、政治的混乱で延期されてきた。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は23日、ANC開設担当官エリーアス・ハウア教育相から報告書を受け取り、カラカス市内を行進した支持派大群衆と記者団を前に、ANC議員選挙実施に関する政令に署名した。

 大統領は、「我々は参加型政権であって、代表制ではない」と強調。「経団連とMUD(保守・右翼野党連合)はANC開設対話を拒否した。MUDの回答は暴力だった。彼らは国中の街を燃やし、不寛容精神を焚きつけ、武装決起を呼びかけ、外国の介入を招こうとしてきた」と非難、「我々は平和、対話、和解、敬意を重んじる」と述べた。

 ハウア報告によれば、ANC議員は540人。うち「地域選挙区」は、全国364市・特別区から選出、先住民には8人が割り当てられる。「職能別選挙区」は有権者8万3000人ごとに1区で、労働者、農民、漁民、身体障害者、年金生活者、学生、企業経営者、コムーナ(コミューン)およびコムーナ理事会がそれぞれ比例代表名簿をCNEに提出、得票により議席が割り当てられる。

 地域選挙区出馬者は、選挙民の3%の推薦を必要とする。18歳以上のベネスエラ人が立候補できる。選挙結果判明後72時間で、ANCが開設される。

 ところがCNE監査官ルイス・ロンドンは23日、改憲要求には国民投票が必要であり、それがなく、政令内容も事前に有権者に諮られなかったとして、反対を表明。また最高裁民事法廷のマリセーラ・ゴドイ判事も、国民投票の必要性を指摘、ANC開設選挙手続きに異議を唱えた。

 一方、MUDが指揮する暴動は各地で続いている。22日に騒乱状態となったバリーナス州では、スレ市の警察署が暴徒に放火され破壊された。若者1人が死亡した。22日の州都バリーナス市の暴動で略奪された店舗は170軒と判明した。

 同州のセナイダ・ガジャルド知事は23日記者会見し、ゴルペ(クーデター)防止作戦「サモーラ計画」の第2段階を発動した。治安部隊とともに、陸軍特殊部隊など軍の治安出動が許される。州知事は、MUD派のバリーナス市長が暴動を放置したと糾弾した。

 内務省は、暴動を鎮圧しないMUD派知事のいるララ州に23日介入、陸軍少将を州警察長官代行に任命した。石油の街マラカイボ市にある私立大学URBEは23日、暴徒に放火され、一部が破壊された。

★きょう24日(水)「クーバ・ベネスエラ情勢講演会」講師・伊高浩昭。1900~2030、東京・高田馬場、NGOピースボート本部地下で、参加費500円。申し込みは電話(03)3363-7561、3362-6307.

 
 

 ベネズエラ反政府勢力は「無政府状態」醸成狙い暴力攻勢。治安部隊施設、選管、政権党支部も襲撃さる。故チャベス大統領縁の家も放火・炎上、略奪。4月初めからの死者は60人に近づく

 ゴルペ(クーデター)教本には、「軍事介入を正当化するための騒擾(無政府)状態を醸成する」という恐るべき段階が盛り込まれている。ニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派変革政権の打倒を目指すべネスエラの反政府勢力は今、形振り構わず、騒擾状態=無政府状態をつくろうと、全国各地で殺傷、破壊、当局襲撃、放火、略奪などを激発させている。

 暴徒は5月22日、西南部ジャーノ(大平原)地方にあるバリーナス州都バリーナス市にある故ウーゴ・チャベス前大統領の「聖地」に放火、略奪した。少年ウーゴが兄アダン(現・教育相)とともに州内農村部の貧しい実家を離れて住んだ祖母の家だ。チャベス派にとっては史跡であり聖地である。そこがついに狙われ破壊された。

 反政府勢力を操っている保守・右翼野党連合MUDは、焦っている。MUDを戦略・資金両面で支援している米国の、頼みのD・トランプ大統領が弾劾される可能性のある不安定な状態に陥ったのと、国際社会でMUDの暴力肯定路線に批判の声が徐々に上がってきているからだ。極右暴力路線では、政権の受け皿には到底成りえない。

 チャベスが育った祖母の家の放火・略奪を、反政府派暴徒の仕業だとメディアに証言したのは、バリーナス市が選挙区のMUD派国会議員ペドロ・カスティージョだった。

 タレク・エルアイサミ執権副大統領は22日カラカスで記者会見し、MUDは同日、全国的な「武装ストライキ」を実行しようと計画していたと暴露した。また4月初めから続いている一連の反政府行動の中のテロリズム、破壊活動の責任はMUD指導部にあると指摘した。

 副大統領は、ボリーバル州営バス53台が放火され炎上、破壊された事件を挙げて、「これが平和な抗議デモと言えるか?」と問いかけ、実行犯2人を逮捕したと明らかにし、その本名を公表した。

 またMUD所属の極右政党VP幹部ホルヘ・マチャードを、破壊活動組織と暴徒への資金供与で逮捕、併せて現金の札束を2万束押収したと発表した。

 エルアイサミは、バリーナス市では(チャベスの祖母の家の他)、ボリバリアーナ国家警備隊(GNB)の地区司令部に暴徒が侵入、略奪し破壊、警察署3カ所と政権党PSUV支部も放火された、と明らかにした。

 さらに同市では複数の商店が略奪され、政府大衆医療政策の薬品・医療機材保管庫が破壊、略奪され、病院が襲撃された。政府の大衆向け住宅政策と同教育政策の支部事務所も攻撃された。バリーナス市では一連の暴動で5人が死亡した。

 ララ州都バルキシメトでは主要道路がバリケードで封鎖され、商店主たちは閉店を強制された。MUD系の地元警察は見て見ぬふりをしていた、という。

 国家選挙理事会(CNE=中央選管)は別途、バリーナス州でCNE支部が22日破壊され略奪された、と発表した。またタチラ州の数市の役所が襲われ、選挙人登録名簿が奪われ、破壊された。

 エルネスト・ビジェーガス情報相は、22日には全国で26人が逮捕されたと明らかにした。情報相によると、MUDは4月初めから各地で計1600回の街頭行動を展開、うち600回は暴力を伴っていた。死者は60人に達しつつある。

 MUDの破壊活動を指揮しているのは、ミランダ州知事エンリケ・カプリーレスらと目されている。カプリーレスは2002年4月のチャベス打倒の軍事ゴルペ未遂事件時、カラカスのクーバ大使館に侵入、逮捕されたが、数か月後に免罪された。2013年4月の大統領選挙では僅差でマドゥーロ現大統領に敗れたが、敗北を認めず街頭暴動事件を起こした。

 このような人物を02年に釈放したチャベスを、「温情主義の失敗」と批判する知識人もいる。14年2月の街頭暴動事件時、暴動教唆罪で逮捕され服役中のMUD極右VP党首レオポルド・ロペスも02年事件でつかまっていたが、釈放されていた。

 23日も政府支持派と反政府側はそれぞれ街頭行動を予定している。政府側は制憲議会(ANC)開設準備を急いでおり、大動員をかけてANC開設世論を盛り上げたいところ。反政府側は、ゴルペ誘発を狙い、さらなる非合法活動で「失敗国家」を印象付ける戦略を続けようとしている。 

2017年5月23日火曜日

 ベネズエラで州営バス53台が放火で破壊さる。専門家は「反政府勢力は騒擾状態醸成を狙っている」と指摘▼コロンビアで夜間外出禁止令発動▼グアテマラ農民はJ・モラレス大統領辞任を要求

 ベネスエラでは5月22日も反政府勢力による抗議行動と破壊活動が続いた。ボリーバル州では州営バス車庫で未明に53台が放火され炎上、破壊された。利用者17万人に影響が及んでいる。被害額は1100万ドル。

 カラカス首都圏バルータ区では、国営石油PDVSAの職員輸送バスなどが燃やされ破壊された。また同区で自動車道脇に接近する通路がバリケードで封鎖され、多くの市民が路線バスや地下鉄を利用できなくなった。死者も出ている。

 オンブズマンのタレク・サアブは、「右翼勢力による暴力・破壊活動の責任明確化のための客観的捜査に協力する」と述べた。サアブはまた、暴動取締り中の治安部隊が「過剰規制」した場合の捜査にも協力すると語った。

 暴力行使を抑制しない反政府勢力の中核MUD(保守・右翼野党連合)の指導者エンリケ・カプリーレス(ミランダ州知事)は21日、街頭行動について「憲法350条を実行している」と<合憲性>を主張した。

 同条項には、「共和国の伝統および独立・平和・自由のための闘いに忠実なベネスエラ人民は、価値・原則・民主的保障に反するか、もしくは、人権を尊重しない政府・立法・権力を認めない」と書かれている。

 だがMUDは、米国と連携している点で「独立」性に欠け、暴力を手段として行使しているため「価値、原則、平和、自由、民主、人権」に反している。このためカプリーレスの主張はまともには受け止められていない。

 デルシー・ロドリゲス外相は22日記者会見し、「ベネスエラは今、異常な暴力に晒されており、内外の懸念を生んでいる」と指摘。「正義・真実委員会」が間もなく、反政府勢力による現在の暴力事件および、2014年の街頭暴動事件についての報告書をニコラース・マドゥーロ大統領に提出する、と明らかにした。

 外相は21日、西部国境に隣接するコロンビアのラ・グアヒーラ県パラグアチョンに同国の軍装甲車部隊が展開しているのを「ただならぬ挑発行為であり、受け入れられない」と抗議した。これに対しコロンビア国防相は22日、「国境地帯での通常の犯罪防止策」と説明した。デルシーは22日、「依然、受け入れられない」と反駁した。

 著名な社会学者マリクレン・ステリング(「アンデレス・ベージョ」カトリック大学教授)は21日、反政府勢力のメディア戦略について、非通常戦争戦略に基づき「騒擾状態を起こすためだ。最初は心理的に、次いで肉体的・物理的に暴動を起こす」と述べた。

 また、「政府は<国際(世論)裁判>で負けつつある」とし、資金に物を言わせたMUDの内外メディア工作に対し旗色が悪いことを指摘。対策として、明確に的を絞るべきだと提言した。

 だが教授は、「暴動状況が2カ月近く続いてるため、さすがにベネスエラ人は目を覚まし、チャベス派は18年間で得た社会政策の恩恵を守ろうと意識するようになっている」と語った。

▼ラ米短信  ◎コロンビア太平洋岸に夜間外出禁止令発動

 コロンビアのサントス政権は5月22日、太平洋岸のバジェデルカウカ県の港湾都市ブエナベントゥーラに1800~0600時の
夜間12時間の外出禁止令を発動、警察機動部隊1500人、兵士700人を急派した。

 同市では、病院や水道のサービス向上、雇用創出などをめぐり市民が抗議ストを続け、19日から略奪、暴動が起きている。既に130万ドルの被害が出、市民80人が逮捕されている。

▼ラ米短信  ◎グアテマラ農民が大統領辞任を要求

 グアテマラの「農民開発委員会」(CODECA=コデカ)は5月22日、ジミー・モラレス大統領に対し、「無能で腐敗している」として辞任するよう要求した。モラレスは元コメディアンで、伝統的支配階級である保守・右翼勢力に擁立され一昨年の大統領選挙に当選、昨年1月就任。庶民大衆の評判は極めて悪い。

 農民らはまた、「人民・多民族制憲議会」の開設、伯オデブレヒト社から収賄した国会議員らの断罪を求めている。コデカは3月7日に首都グアテマラ市で大統領辞任要求集会を開いた際には4万人を動員した。 

2017年5月22日月曜日

 マドゥーロ・ベネズエラ大統領が「暴力の背後にトランプがいる」と非難。「反ファシズム大行進」を全国で23日展開と発表。制憲議会(ANC)開設政策は近く明示へ。ジャーナリストJVランヘールは「重大な局面にある」と指摘

」と ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月21日、日曜定例の全国向けTV番組で、4月以来の街頭暴力事件のビデオを数本流しながら反政府勢力の暴力を指摘、「ベネスエラが直面してきた幾波もの暴力テロリズム攻撃の背後には、ベネスエラを植民地化したいドナルド・トランプという帝国主義者の手がある」と非難した。

 また南米右翼指導者の旗頭と位置付けられているマウリシオ・マクリ亜国大統領について、「ゴルペ(クーデター)を狙うベネスエラのファシスト暴力右翼を父親のように保護している」と扱き下ろした。

 マドゥーロ大統領はまた、「平和に賛成し、ファシズム・暴力・憎悪に反対する大行進を23日、全国で展開する」と発表した。政権打倒を目指して街頭デモと暴力を止めない保守・右翼政党連合MUD指導下の反政府勢力の動員への対抗措置だ。

 大統領は、「MUDは過去50日間、ナチファシズム型反革命の憎悪と暴力をばらまいてきた」と非難。「容疑者を何人も逮捕してきたが、(カラカス首都圏の)チャカオ区長ラモーン・マチャードとミランダ州知事エンリケ・カプリーレスは暴力集団の共犯者だ。同知事は自宅で暴力集団に武器、爆発物などを渡した。その証拠がある」と述べた。

 さらに、「覆面した武装暴徒200~300人を治安部隊、当局、秩序に歯向かわせている」とカプリーレスを非難。「MUD内の民主派は暴力を糾弾し、平和情勢のため対話に応じてほしい」と呼び掛けた。マドゥーロは、オンブズマンと検事総長に、「政府は一致して正義を施そう」と求めた。ルイサ・オルテガ検事総長は、司法上の問題で政府を批判してきた。

 大統領は「イデオロギー上の理由による暴力、不寛容、迫害を糾弾しよう」と訴え、「(米国で働く)ベネスエラ人の芸能人やスポーツ選手は、米政府に脅迫されてベネスエラ政府を非難している。同様の傾向が国際社会にある」と前置きし、「そのような在外同胞と話し合う用意がある。対話しようではないか」と呼び掛けた。

 ベネスエラ政府を非難するブラジルのテメル政権については、「贈収賄で腐敗しきって崩壊しつつあるテメル・ファシスト政権に反対する伯人民に連帯する。くたばれテメル、伯人民万歳」と述べた。

 マドゥーロは、「近日中に制憲議会(ANC)開設政策を明示する。これは後戻りできない政策だ」と強調。「投票に賛成、弾丸に反対」と叫んだ。

 著名なジャーナリスト、ホセ=ビセンテ・ランヘールは21日、テレベン放送の日曜定例番組で、「ベネスエラは誰の目にも明らかなように、全人民に等しく影響を及ぼす重大な局面にある」と指摘。「この国には対話の文化が欠けている。MUDは対話を拒否しているが、好き嫌いに拘わらず、平和と和解は対話を通じてしか達成できない」と強調した。

 また、「大統領は、対話の道が閉ざされたためANC開設の場を設けた。MUDとカトリック司教会議がANC対話を拒否しているのはいただけない」と批判した。

 ランヘールは、著名なベネスエラ人映画監督ロマーン・シャルボーを番組に招き、インタビューした。監督は、「国内の右翼勢力は真実を歪め、反ベネスエラの虚偽情報を世界中に撒き散らしている」と指摘。「文化には重要な役割がある。我々は虚偽運動に対し闘わなければならない」と強調した。

 さらに、「彼らは、外国の介入計画に従って内戦を起こそうとしている。だが失敗するだろう」とし、「ANCは対話による解決を探るが、MUDは解決を望まないからANICに反対している」と指摘した。

 一方、ベネスエラ沖のカリブ海にある蘭領クラサオ(キュラソー) のベネスエラ国営石油PDVSA(ペデベサ)製油所で21日、火災が発生した。鎮火したがが、当局は放火を含め原因を調べている。この製油所は、中国などアジア市場向けの原油を日量33万バレル精製している。ベネスエラ原油は19日現在、1b=43米ドル。



 

2017年5月21日日曜日

 ベネズエラ反政府勢力の暴力伴う街頭行動が50日に近づき、死者も50人に及びつつある。南米諸国連合のサンペール前事務局長は、「MUDが街頭行動止め、政府がANC開設方針取り下げれば、交渉開始可能」と指摘▼LATINA誌6月号がベネズエラ情勢詳述記事掲載

 ベネスエラでは5月20日も政府支持派と反政府勢力の街頭行動が首都カラカスを中心に展開された。反政府勢力は主要な自動車道を埋めた。行動を指揮する保守・右翼野党連合MUDのエンリケ・カプリーレス(ミランダ州知事)は、デモ隊を内務省まで向かわせようと発破をかけたが、治安部隊に規制され、果たせなかった。

 この反政府行動のさなか、別働隊の暴徒に青年一人が私刑に遭い、ガソリンをかけられ焼かれ、体の70%に火傷を負った。ニコラース・マドゥーロ大統領は、この青年の救命を命じた。約50日間に亘る一連の武力事件で死者は50人に及びつつある。

 コロンビア国境沿いのタチラ州のホセ・ビエルマ=モラ知事は、「MUDが同州内で動員した4日間の反政府行動は華々しく敗れた」と表明。知事は、MUD加盟の極右政党VP(人民意志)所属の「国会議員ガビ・アレジャーノは麻薬、酒、現金を(動員のために)配布していた」と告発した。州内の食糧と燃料の供給は、治安部隊の増強で滞りなく実施された、と述べた。

 過去の政治的人道犯罪を追究する「正義・真実委員会」のフェルナンド・ソト=ロハス顧問は、「バネスエラは内外から包囲されている。国内では準軍部隊と繋がる反政府ファシズム勢力に攻められている。(背後に居る)米国は、ベネスエラの原油資源獲得のため限りない戦を仕掛けている」と糾弾した。

 ジュネーヴ国連駐在のホルヘ・バレーロVEN大使は人権理事会で、反政府勢力による街頭行動時の暴徒らによる暴力・破壊活動を映したビデオ映像を見せ、暴徒による殺傷、破壊活動、さらに反政府勢力側の狙撃手の銃撃による殺人を告発した。

 同大使はまた、外国メディアの虚偽報道、意図的誤報を糾弾。「治安部隊は市民と公共・私有財産を守っている。政府は対話を求めているが、反政府勢力内の暴力肯定派が対話を阻止している」と説明した。理事会の各国代表らが聴きいった。

 デルシー・ロドリゲス外相は故ウーゴ・チャベス前大統領の出身地バリーナス州での制憲議会(ANC)開設運動の集会で演説、「ANCは暴力を終わらせるのために決定的に重要だ。主権と民族自決権の防衛が同様に重要だ」と強調した。

 外相はまた、「反政府右翼勢力は米帝国主義に従属し、ボリバリアーナ革命以前のような新自由主義と売国主義を植え付けようとしている」と、MUDを非難した。

 マドゥーロ大統領は、MUDを支持してきたメヒコについて、「暴力、不平等、麻薬によって失敗国家に成り下がった」と扱き下ろした。デルシー外相も先ごろ、ルイス・ビデガライ墨外相を、「米国の家来だ。メヒコとラ米の間に壁を築こうとしている」と非難した。

 ベネスエラに敵対的姿勢をとってきた米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長はワシントンで、「ベネスエラは、民主回復方法を決めるため決定的な交渉を開始すべき時に至った」と述べた。

 エルネスト・サンペール元コロンビア大統領は19日、「反政府勢力が街頭行動を止め、政府がANC開設方針を取り下げれば、民主的解決の糸口となる。対話では選挙日程を決めるべきだ。選挙抜きで民主はありえないからだ」と指摘した。サンペールは南米諸国連合(ウナスール)の前事務局長で、ベネスエラ対話仲介の労をとった、双方の対立が厳しく、任務を完遂できなかった。

 一方、カリタスのラ米・カリブ地域代表ホセルイス・アスアヘ(バリーナス州司教)はローマで20日、「ベネスエラのカトリック教会は反政府でなく、人民の味方になるべきだ。(政党でなく)人民の声を聴いて、その意志を実現させるべきだ」と語った。

 このところマドリード、メキシコ市、サンホセ、パナマ市などで、ベネスエラ政府を支持する行事に、反政府派が押し掛け行事を妨害する事件が相次いでいる。ベネスエラ外交当局は、反政府勢力が「暴動を輸出している」と非難している。

★月刊誌LATINA6月号(発売中)掲載; 伊高浩昭執筆 「ラ米乱反射」 連載134回 「<クーデターの危機>に対抗するベネズエラ  反政府勢力は米指示通り街頭暴力激化作戦」 

   

2017年5月20日土曜日

 カリブ共同体(カリコム)外相会議が「ベネズエラ問題は国内対話で解決を」と声明。議長国首相は「カリコム分断を画策」と米国を非難。カトリック教会が政府と会合、制憲議会(ANC)開設に反対。検事総長も反対表明

 カリブ共同体(カリコム)は5月18~19日、バルバドスの首都ブリッジタウンで第20回外相会議を開き、「ベネスエラ問題は外部からの介入、内政干渉を排し、緊張緩和の後、仲介支援を得て、国内対話によって解決すべきだ」とする共同声明を発表した。

 輪番制議長国セントヴィンセント&グラナディーン(SVG)のラルフ・ゴンサルヴェス首相は会議への公開書簡で、「一部の大国がベネスエラ政権を替えようと画策し、カリコムをベネスエラ問題で分断しようとしている」と、米国を暗に非難した。

 輪番制議長ルイス・ストゥレイカーSVG外相は、「カリコムはベネスエラ人民を放置しない。事態を懸念しており、安寧と安定が戻るのを願っている。ベネスエラの民主は機能し安定しており、引き続きそうあってほしいとカルコムは期待している」と述べた。

 出席したオブザーバー国ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は、「反政府勢力はニコラース・マドゥーロ大統領の合憲政府を倒そうと暴力に訴えており、人民を苦しめている」と、保守・右翼野党連合MUDを批判。「ベネスエラは米国にとり脅威ではないし、米州地域の問題でもない」と、米国の言い分に反駁した。

 続けて、「米国はベネスエラを国連安保理に持ち込んだが、それは無能な使用人アルマグロ(米州諸国機構OEA事務総長)の立場を強化するためだった。米国はOEAを使ってベネスエラに介入しようとしている。だが、そのような手法はリビア、イラク、シリアなどで失敗してきた」と強調した。

 さらに、「国際社会にはベネスエラへの偏った見方に立つ介入の策謀がある。その一方で、それら諸国の人権蹂躙は米国によって覆い隠されている」と指摘。「カルコムは、国際法を遵守しており、自分の言い分を一方的に押し付けようとしている者から我々を守る防壁だ」と、カリコムを讃えた。

 デルシーは会議終了後、テレスール記者に「外相たちから大なる支援を得た」と語った。また米財務省が18日、ベネスエラ最高裁判事8人を「制裁対象者名簿」に書き加えたことについて、「前代未聞であり、受け入れ難い。我々は外交的措置をとる。最高裁判事たちは帝国による攻撃の犠牲者だ」と述べた。

 最高裁のマイケル・モレーノ長官もカラカスで19日、「外交政府の押し付けと内政干渉は受け入れられない」と一蹴した。マドゥーロ大統領も、「ドナルド・トランプは帝国主義者宜しく介入を促進している。トランプよ、ベネスエラから手を引け」と、いつになく強いc調子で反駁sた。

 ベネスエラ外務省は19日別途声明を発表、Dトランプ米大統領が18日ワシントンでJMサントス・コロンビア大統領との会談後、「ベネスエラは極めて深刻な問題だ。平和で安定したベネスエラが必要であり、そのためにコロンビアや他の国々と協働してゆく」と述べたことに関し、「限度を超えた発言だ。(T大統領は)国務省に、ベネスエラへの攻撃的な内政干渉政策をなすがままに任せている」と非難した。

 声明はまた、「トランプ大統領(の発言)は虚偽情報に基づいている」と指摘。「米国は、政府諸機関を通じてベネスエラの反政府勢力に不法資金を与えているが、直ちに止めるべきだ」と要求した。

 トランプは19日、中東・欧州歴訪に出発したが、ベネスエラ情勢に関してはローマ法王フランシスコとの会談が注目される。ヴァティカンの立場は、「対話と選挙による解決」であり、内政干渉や軍事介入は認めない。

 ニカラグア駐在のベネスエラ大使フランシスコ・アルーエはマナグアで19日記者会見し、「米国は対ベネスエラ開戦を促進しつつあり、侵略を正当化するため、マドゥーロ政権不安定化を狙う武装テロ集団に資金援助している。以上を、ベネスエラ政府の名において告発する」と、米政府を糾弾した。

 同大使はまた、「ベネスエラ国内18市で計335回、暴力行為があった」と明らかにした。非公式集計では、4月からの一連の反政府勢力絡みの暴力事件で死者50人以上、負傷者1万3000人、逮捕者2500人が出ている。

 一方、制憲議会(ANC)開設担当者エリーアス・ハウア教育相は19日、ベネスエラのカトリック司教会議と会談。終了後、司教会議のディエゴ・パドロン議長は、「ANC開設は不要だ。現行憲法を順守すればいいし、人民の求めているのが食糧、薬品、治安、安寧、公正な選挙であるからだ」と述べた。また、「政府と教会は人民への福利で協働可能な分野がある」と指摘した。

  またルイサ・オルテガ検事総長は19日、ハウアに17日付けで渡した書簡を公表。その中で、「現行憲法はこれ以上改善しようのない最良の憲法であり、チャベス前大統領の最重要遺産だ。人権、民主、人民参加、生活権、社会正義、差別無き平等主義などで世界一進んだ憲法で、憲法を変更すれば、さらなる危機を招く」としてANC開設に反対。18日のハウアとの会合を欠席したことを明らかにした。「身内」からのANC反対表明は、マドゥーロ大統領にとり痛撃だ。

 コロンビア国境沿いのタチラ州では18日、国家警備隊(GNB)中尉パウル・マチャードが「人民に武器は向けられない」と述べ、政府発行の「祖国身分証」を鋏で切り刻んだ。同中尉は19日、軍当局に逮捕された。

 同州では反政府勢力による陸軍駐屯地襲撃などで治安上の危険性が増し、数日前から,GNB2000人と陸軍特殊部隊600人が治安出動で展開している。、
 
 
 

2017年5月19日金曜日

 プーチン・ロシア大統領がベネズエラ問題解決への協力意志を表明。露外務省は、ベネズエラ反政府勢力寄りのメディアを厳しく批判。コレア・エクアドル大統領もブエノスアイレスで、反政府勢力側の暴力を糾弾。トランプ米大統領はコロンビア大統領と会談し、ベネズエラへの「人道支援の用意」を表明

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月18日、ウラジ-ミル・プーチン大統領と電話会談し、会談後、「ロシアは小麦を毎月6万トンずつ、長期に亘って供給してくれることになった」と明らかにした。その開始時期には触れなかった。大統領はまた、産油諸国が価格安定化のため原油生産を削減していることについても話し合ったとし、「近い将来、訪露したい」と語った。

 ロシア外務省報道官は、電話会談がベネスエラ側の申し入れによるものだったと明らかにし、「プーチン大統領は、ベネスエラ情勢の正常化を願っている。重要なのは、ベネスエラ国法の合法性の枠内で解決することだ」と表明した。

 報道官はまた、「ベネスエラ情勢は(米州)地域の平和と安全を脅かしてはいない」と前置きし、「ロシアは要請されれば、ベネスエラ問題の平和解決に参加する用意がある」と述べた。

 さらに、内外メディアのベネスエラ情勢報道が反政府勢力寄りに偏向している事実に触れ、「客観性が重要だ。紛争を煽ったり、自陣営の野心達成のために教唆するような報じ方をしてはならない」と強調した。

 エクアドールのラファエル・コレア大統領は17日ブエノスアイレスで、ガブリエラ・ミケッティ亜国副大統領と会談。マクリ亜国保守・右翼政権が明確にしている反マドゥーロ政権の立場は「尊重する」としながらも、「暴力の多くが反政府勢力側に起因している事実は証明されており、これは糾弾せねばならない」と指摘した。

 マウリシオ・マクリ大統領は来日中。コレアは記者団に、「国際社会とラ米は、ベネスエラを攻撃しながらブラジルに甘い二重基準だ」と批判した。これは合憲政権を昨年弾劾した汚職まみれのテメル現政権に正統性が欠けていることへの批判が乏しい事実を指摘したもの。

 制憲議会開設準備担当のエリーアス・ハウアVEN教育相は17日、「PJ(まず正義を)とVP(人民意志)の武装集団は犯罪組織と結託して暴動を決行しており、許し難い」と述べた。PJとVPは、反政府勢力指導部である保守・右翼野党連合MUDの極右政党。

 PJ党首でミランダ州知事のエンリケ・カプリレスは18日、パスポートを無効化され、出国を阻止された。カプリレスは大統領選挙にMUD候補として2度出馬し敗北・2度目の13年4月には、敗北を認めず暴動を起こした。だが、その後、「平和闘争路線」に変身した。

 ところがMUD内暴力肯定派の旗頭でVP党首のレオポルド・ロペス(暴動教唆罪で服役中)の人気が高まると、再び暴力路線に戻った。「マドゥーロ後」の大統領を決める選挙に、MUD候補として3度出馬するため、「弱腰」を見せるわけにいかないからだ。

 一方、ドナルド・トランプ米大統領は18日ホワイトハウスで、JMサントス・コロンビア大統領と会談。記者会見で、「ベネスエラの経済危機はかつて米州になかったことで、人類の恥だ」と述べ、「必要ならば、人道的見地から支援したい」と述べた。米国務省や米機関がベネスエラの反政府勢力を支援してる事実には触れなかった。

 また米財務省はこの日、ベネスエラ最高裁のマイケル・モレーノ長官以下8人の判事を、「ベネスエラ国会の権限を奪った」として「制裁対象者名簿に加える」と発表した。他国にも施政権が及ぶかのごとき米政府の「制裁」政策に、また新たに批判が起きている。


 
 
 

2017年5月18日木曜日

★ベネズエラ陸軍がコロンビア国境に特殊部隊を派遣。暴徒が陸軍駐屯地を襲撃したのを受けて。国連安保理はベネズエラを議題に取り上げず、米国の意図くじかれる▼ブラジルのテメル大統領も<贈収賄認可>で弾劾の危機に直面か

 ベネスエラのブラディーミロ・パドゥリーノ国防相は5月17日、タチラ州都サンクリストーバル市で同日、陸軍第215野砲隊駐屯地が暴徒に襲撃されたことから、同州に陸軍特殊部隊600人と国家警備隊(GNB)2000人を派遣する、と発表した。反政府勢力による一連の暴動事件で国軍施設が襲われたのは初めて。駐屯地司令官の中佐も暴徒に襲われたという。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は事態を重視、ゴルペ(クーデター) 制圧作戦「サモーラ作戦戦略計画」(PEOZ)を第2段階に進めた。第2段階では、国家警察機動隊、国家警備隊に加えて、陸海空軍のいずれかの実戦部隊が治安出動する。

 タチラ州はコロンビア北東国境に隣接し、同国の極右準軍部隊(パラス)が密入国を繰り返している。パラスは、コロンビア陸軍の補完部隊としてゲリラ部隊と戦った。また、アフリカ系や先住民の土地を奪い、多くの国内避難民を生んだ。ベネスエラ陸軍の特殊部隊の任務には、パラス制圧も含まれている。

 パドゥリーノ国防相は、暴徒約100人が火炎瓶などで駐屯地を襲撃したが、駐屯地には弾薬庫があり、そこに引火したら大惨事が起きると述べ、事態の重大さを指摘した。各地で反政府勢力の抗議行進や暴動に乗じた略奪事件も起きている。暴徒側の死者が小刻みに増えている。

 一方、国連安保理は17日、米国の要請により非公開会合を開き、ベネスエラ情勢を話し合った。米国のニッキ・ハーリー大使は、「ベネスエラは不安定状態が増幅しており、人権が尊重されなければ、シリアのような道を辿ることになる」と述べ、安保理の介入決議が必要との立場を強調した。

 これに対し、ボリビアのサンチャ・ジョレンティ大使は、「米国の明白な内政干渉がある。米国は仲介者ではなく、ベネスエラの反政府勢力を支援してきた。したがって、この安保理会合は問題解決の障害になる」と反駁した。米国が反政府勢力に資金、攻撃戦略、外交面で肩入れしてきた事実を踏まえてのことだ。

 安保理議長国ウルグアイのエルビオ・ロセリ大使は、「ベネスエラは正式な議題にはならない。理由がないからだ。ベネスエラの紛争はベネスエラ人が解決すべきだ。政府と反政府勢力が打開策を探ればよい。ベネスエラ関係の決議はない」と述べた。

 ベネスエラのラファエル・ラミーレス大使は、「ベネスエラは国際平和と安全保障上、危険な存在ではない。米国は内政干渉し、ベネスエラの最も暴力的な集団を焚きつけている。暴力は、米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長の煽動によるOEAのベネスエラへの内政干渉の直後に悪化した」と指摘した。

 同大使はさらに、「米国には、米州での暴力と干渉の悲しい歴史がある。米国は<人権蹂躙>を介入理由にしようとしているが、ベネスエラにはそれはない。米国は人権蹂躙を理由にシリアやイラクに軍事介入した」と批判。「ベネスエラは、いかなる内政干渉も後見も必要としない。主権尊重を求めるだけだ」と説いた。

 デルシー・ロドリゲスVEN外相は、「(安保理での)米国の宣伝と、アルマグロ支援のための画策は失敗した。証明されたのは、米国によるベネスエラ介入計画の存在だ。米国は世界の殺傷暴力と飢餓の最大の起因者だ。安保理に教訓を垂れる道徳的資格はない」と扱き下ろした。

 コロンビアのJMサントス大統領は17日、訪問先の米国で、「コロンビアと米国はベネスエラ情勢をとても懸念している」と述べた。サントスは18日、Dトランプ米大統領と会談する。

 ベネスエラ政権党副党首ディオスダード・カベージョ国会議員は17日、反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUDの幹部フリオ・ボルヘス国会議長、フレディ・ゲバラ同副議長、ミランダ州のエンリケ・カプリーレス知事らを「ファシスト」と呼び、コロンビア極右勢力の旗頭アルバロ・ウリーベ前大統領と会合した、と指摘した。

 24日に任期切れとなるエクアドールのラファエル。コレア大統領は17日、訪問先のブエノスアイレスで、「ベネスエラの問題は対話、民主、選挙で解決すべきだ」と語った。

▼ラ米短信  ◎テメル伯大統領が贈収賄を促進か

 伯紙オ・グロボは5月17日、ミシェル・テメル大統領と大手食肉輸出会社JBSのジョスリー・バチスタ社長の録音会話を暴露。その中でテメルは、獄中にいるエドゥアルド・クーニャ前国会下院議長にペトロブラス贈収賄事件について沈黙し続けさせるため賄賂を贈っているかどうかをバチスタに確認している。

 バチスタが、自社系列企業の問題の解決を図るため、テメルが指定した国会議員に現金500万レアル(約16万ドル)入りの鞄を渡した、ことにも触れられている。バチスタは司法取引に応じてテメルとの会話を録音したらしい。

 ブラジル国会はこの報道で大騒ぎになり、テメル弾劾の可能性が早くも指摘されている。テメルは昨年8月末、ヂウマ・ルセフ大統領を弾劾に追い込んで政権に就いた。テメルも汚職疑惑に包まれている。


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★現代の岩窟王、プエルト・リコ独立運動家オスカル・ロペス(74)が服役36年経て自由の身に。故郷サンフアンで「脱植民地化と独立のため闘い続ける」と語る。マドゥーロ大統領は電話で祝福、「ラ米・カリブの独立はベネズエラでの戦いに懸かっている」と強調

 現代の岩窟王オスカル・ロペス=リベーラ(74)が5月17日、36年間服役の後に自由に身になった。米植民地プエルト・リコ(PR)人のロペスは、米軍兵士としてヴェトナム戦争従軍後、1976年にPR独立主義の「人民解放軍」(FALN)に参加。組織の破壊活動に直接関与しなかったが、81年逮捕され、禁錮55年の判決を受け、幾つもの米国内の刑務所で服役した。

 91年に脱獄未遂で刑期に15年が加算された。ビル・クリントン大統領は恩赦を持ちかけたが、ロペスは拒否。だがバラク・オバーマ大統領が任期切れ直前の今年1月17日恩赦を決めた。ロペスは米国の刑務所から2月9日PRに身柄を移され、実の娘クラリーサの自宅で軟禁処分となった。恩赦から4カ月後の今日、刑期は終わった。今後は島都サンフアンの市役所で仕事する。

 ロペスは支援者による自由記念音楽会に出席後、浜辺の波打ち際で、「PRの脱植民地と独立に向かって進もう。重要なのは連帯して働き戦い抵抗することだ」と強調した。また、窮地にあるPR大学について、「頭脳流出を食い止めよう。大学を守らねば、PRの未来はない」と述べた。さらに、新自由主義経済路線を糾弾した。

 同胞として迎えてくれた故郷については、「これぞ、PRの寛大な心だ。大きな愛のある人民だ」と、PRとPR人を賞賛した。

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領はロペスと電話会談し、それをテレスールが中継した。大統領は、「大なる祖国の英雄」とロペスを讃え、「我々は国内からの攻撃とメディアによる私刑の犠牲者だが、シモン・ボリーバルの人民はチャベス司令官の旗を掲げ、意気軒昂として勝利する」と伝えた。

 ロペスは、「私はPR人だが、ベネスエラ人のようにも感じる。ベネスエラの未来を決めるのはベネスエラ人であり、米国を含むいかなる他者でもない。ベネスエラが勝つと信じている。米国は思い通りにはいかないだろう」と返した。

 マドゥーロは、ベネスエラが非同盟運動の議長国で、国連非植民地委員会の委員長国であることに触れて、「両機関を通じても、PRの尊厳と未来のために尽力する」と約束した。「我々の大陸(ラ米・カリブ)の独立は、ベネスエラでの戦いに懸かっている」とも強調した。

 ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相も、ロペスを「PRの真実が勝利した。米国の覇権から自由な大なる祖国の勝利だ」と祝福。さらに、「米国は人権で二重基準だ。ロペスは、そこに囚われていた現代世界最長の良心の囚人だった」と指摘した。
 ニカラグア、クーバをはじめ、ラ米のロペス支援国・支援団体もロペス開放を祝福している。 

2017年5月17日水曜日

★★★ベネズエラ政府が全土への非常事態を60日間延長し発動。国連安保理は米国の要請でベネスエラ問題を17日に討議。CELACは、OEA外相会議の31日開催決定を受け、20日開催予定の外相会議を延期

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月16日、「非常事態および経済緊急事態」を全土に60日間延長発動した、と発表した。5月13日付け官報に記載されており、同日から有効。治安維持のため憲法の人権庇護条項などが停止される場合がある。

 これを受けて米国は国連安保理にベネスエラ情勢を議題にするよう要請。17日に取り上げられることになった。米国の反ベネスエラの保守・右翼系議員は連名で、ベネスエラ問題の安保理取り上げをトランプ政権に要請していた。米政府は、ベネスエラ反政府勢力と連携、南方軍などを使ってベネスエラ政変醸成工作を展開中。

 保守・右翼野党連合MUDが指揮する反政府行動は暴動に発展、新たに4人が死亡。検察庁集計では、4月初めからの一連の暴動事件などによる死者は43人に達した。これは2014年のMUDによる街頭暴動事件(グアリンバ)の死者数43人と同数。だが非公式式集計では、今回の死者は47~48人とされている。

 MUD幹部フレディ・ゲバラ(国会副議長)は16日、「マドゥーロ大統領周辺ではなく、裁判所、検察、軍部、警察、会計検査院などと交渉する用意がある」と表明した。政府機関を分裂させる狙いがある。ゲバラはまた、17日夜と20日にも反政府行動を展開すると明らかにした。

 反政府勢力による暴動は続き、自動車道で政府配給機関の、食糧や果汁を積んだトラック2台が暴徒に略奪された。タチラ州内では警察署3カ所が放火されたり破棄されたりした。

 コロンビアでのロック祭参加をこのほど拒否されたベネスエラ人ロック歌手ポール・ヒルマンは16日、「われわれチャビスタ(政府支持派)は、かつてユダヤ人がナチスドイツの憎悪に遭ったような状況に置かれている」と,TV番組で指摘した。

 14年に街頭暴動を教唆した罪で服役している極右政治家レオポルド・ロペスの妻リリアン・ティントリは16日オタワでジャスティン・トルドー加首相とマット・デコーシー加外相に会った。これについてデルシー・ロドリゲスVEN外相は、「ティントリはベネスエラへの内政干渉を促進している」と非難。「なぜ自分たち(MUD)がファシズムや殺人を推進している実態を語らないのか」と糾弾した。

 マドゥーロ政権が推進している制憲議会(ANC)開設準備の担当者エリーアス・ハウア教育相は16日、「ANCは平和確立、戦(いくさ)の太鼓打ち止め、国家独立維持、人民安寧生活保障のために開設する。野党勢力に紛争を政治的に解決しようと提案している」と述べた。

 だがMUDは16日、改憲のためのANCに反対する意味を込めて「護憲国民戦線」(FNDC)を結成した。

 一方、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)は、20日にドミニカ共和国での開催が予定されていた第14回外相会議を無期限に延期した。31日に米州諸国機構(OEA)がベネスエラ問題を話し合う特別外相会議を開くことになったためだ。

 コロンビア外務省は16日、ベネスエラ駐在大使を当面帰任させないと明らかにした。大使は3月31日召還されて以来、コロンビアに留まっている。ペルーも大使を召還したままにしている。 
 

2017年5月16日火曜日

  米州諸国機構(OEA・OAS)は31日にベネズエラ問題を討議へ。4月以降の暴動などによる死者は42人に。カラボボ州都バレンシアでは警察幹部が狙撃手に頭部撃たれる。米上院は反政府派活動資金2000万ドル供与法案審議終える▼メキシコで麻薬組織犯罪専門記者が白昼殺害さる

 米州諸国機構(OEA、34カ国加盟、うちベネスエラは脱退表明済み)は5月15日ワシントンの本部で大使会議を開き、ベネスエラ情勢を討議する特別外相会議を31日開催することを決めた。ベネスエラおよび、グレナダは投票に参加しなかった。

 ベネスエラに厳しい態度をとるメヒコが31日開催案を提案、過半数の18カ国の賛成で可決した。ニカラグアだけは反対。反ベネスエラ派ながら31日という日程に異議を唱えたコスタ・リカ(CR)および、ベネスエラを支持したり理解を示したりする12カ国の計13カ国が棄権した。

 ベネスエラ国内では、保守・右翼野党連合MUD主導の反政府行動が続いている。コロンビア国境沿いのタチラ州都サンクリストーバルでは15日、反政府行動の別働隊の青年2人が死亡。非公式集計では、4月以来の一連の反政府行動に関係する死者は42人に達した。

 カラボボ州とバレンシアでは同日、州警察幹部一人が狙撃手に頭部を撃たれ重傷。弾丸はとう部を貫通した。警官もうひとりも狙撃され、重傷。狙撃手たちは、反政府側に雇われている。同州では、国営電力会社(CORPOELEC)の支社が放火された。

 コムーナ相アリストーブロ・イズトゥーリスは15日、「MUDはニコラース・マドゥーロ大統領打倒を国外で担保にしている」と糾弾した。さらに「彼らの活動資金は帝国主義者(米国)と国際金融機関から出ている」と非難。米上院が、MUD指揮下の反政府勢力への活動資金2000万ドル供与法案の審議を終えたことを示唆した。

▼ラ米短信   ◎メヒコの麻薬犯罪組織専門記者が殺害さる

 シナロア州都クリアカンで5月15日、週刊誌「リオドセ」創刊者で、麻薬組織犯罪報道の著名な専門記者ハビエル・バルデスが白昼、市内で麻薬組織の殺し屋に銃撃され死亡した。メヒコでのジャーナリスト殺害は、これで6人目となった。

 ハビエルは生前、「ジャーナリストになることは、暗殺標的名簿に記載されることに等しい。彼らはいったん殺害決行日を決めたら、いかなる警備があろうとも決行する。メヒコにはジャーナリスムを遂行するための条件がない。あまりにも近くを弾丸がかすめるからだ」と語っていた。

 ハビエルは首都メヒコ市の日刊紙ラ・ホルナーダの通信員でもあり、ながらくフランス通信AFPの協力者だった。ハビエル殺害に抗議する運動がクリアカン、メヒコ市をはじめ各地で起きている。著書には『麻薬ジャーナリスム』、『麻薬の孤児たち』、『ミス麻薬』などがある。
 

2017年5月15日月曜日

 ベネズエラ反政府野党連合MUDを世論は厳しく批判。制憲議会(ANC)担当官は「MUDの対米従属」を非難、「内戦を危惧」と表明。EUは「実効ある対話」の即時実施を呼び掛け。「ウクライナ情勢との共通点」指摘も

 ベネスエラの著名なジャーナリスト、ホセ=ビセンテ・ランヘールは5月14日のテレベン放送定例番組「今日のホセ=ビセンテ」で、ニコラース・マドゥーロ大統領打倒を目指し激しい反政府活動を続けている保守・右翼野党連合MUDに関する最新の世論調査結果を発表。回答者の83%は、「MUD指導部の交代が必要」と答えた。

 76%「MUDは問題解決のため政府に協力すべきだ」、70%「MUDは分裂している」、67%「MUD指導部はチャベス前政権以前(1998年まで)の新自由主義路線指導者と同じ」、60%「MUDに強力な指導者はいない」、59%「MUDは人民福利に無頓着で政権奪取だけを狙っている」、58%「MUDが政権に就いても経済問題は解決できない」-との回答だった。

 この番組に出演したエリーアス・ハウア教育相(制憲議会=ANC=担当大統領委員会委員長)は、「反政府勢力が今ほど外国に従属し、その指令によって動くことはなかった。政府がANC構想を打ち出すや、フリオ・ボルヘス(MUD代表格の国会議長)は訪米し、米政府の軍事関係者に会った。彼らの政治組織(MUD)は外国政府(米国)に従属しており、憂うべき事態だ」と述べた。

 ハウアはまた、「MUDもかカトリック司教会議もANC開設のための対話を拒否している。我々は内戦になるのを危惧している」と語った。さらに、「18年末には大統領選挙がある。地方選挙(州知事・州会議員)が今年あるかどうかはわからないが、年末にやるということになれば、それで構わない」と述べた。

 マドゥーロ大統領は「母の日」に際し、「ANC議員の半数を女性にすることもありうる」との考えを示した。クーバ駐在のアリー・ロドリゲス大使はハバナで14日、「野党勢力(MUD)との対話が途絶えた今、ANCが唯一の打開策だ。彼ら(MUD)はマドゥーロ大統領排除のため危険な活動を激化させてきた。この緊張のガスを抜くためにも、ANCというバルブ開放が必要だ」と表明した。

 欧州連合(EU)は15日、ベネスエラ政府とMUDに対し、「緊急、建設的、実効ある対話」実施を呼び掛けた。スペイン政府が、この呼び掛けをまとめた。

 反政府行動は依然荒れている。首都カラカスに隣接するミランダ州内で13日、政権党国会議員ヘンケルベ・トバルの護衛2人が武装一味に拉致され、一人が射殺され、もう一人が重傷となった。非公式集計では、4月初めからの反政府派による暴動などによる死者は40人を超えた。

 ボリーバル州のフランシスコ・ランヘール知事は14日、州内の病院に配布する薬品、手術用機材などを保管していた倉庫が同日放火され炎上した事件で、反政府系分子の犯行と断定した。

 マイアミ周辺に多い在米ベネスエラ人組織は13日、ベネスエラ反政府勢力の別働隊の若者らに、催涙ガスよけの「防毒マスク」などを贈ったと明らかにした。

 国営ベネスエラTVは13日、「ベネスエラとウクライナ」というドキュメンタリ-を放映。解説者は、「2014年ウクライナでのヴィクトル・ヤンコヴィッチ大統領打倒運動は、当初の平和抗議から暴動に変わり、やがて外国(ロシア)の援助で戦闘となった。ベネスエラの現在の状況に似ている」と指摘した。
 

2017年5月14日日曜日

 トランプ米大統領にベネズエラ侵攻の誘惑高まるか。「コロンビア国境に米提供の武器集積、傭兵待機」とハバナ放送伝える。マドゥーロ大統領は「18年(末)に大統領選挙実施」と言明▼キューバが大規模な海岸線防衛演習実施へ

 ベネスエラへの米軍主導の軍事侵攻の危険性が高まっている。ドナルド・トランプ米大統領は、FBI長官更迭とロシア関連疑惑捜査をめぐり窮地に陥る可能性があると伝えられるが、窮地に陥れば「起死回生」策として、ベネスエラに軍事侵攻し、ニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派革新政権を倒す誘惑に駆られる可能性も高まることになる。

 ハバナ放送は5月13日、ベネスエラ西部国境沿いのコロンビア・ノルテデサンタンデル州ラゴンバリアに、国務省をはじめ米機関が提供した武器・兵站物資が集積されている、と伝え、米軍がコロンビア国内7カ所の軍事基地を使用している事実を指摘した。

 同放送はまた、国境線沿いの他の複数の地点に、軍事侵攻に備えて傭兵部隊が待機していると報じた。ベネスエラで逮捕されたテロリズムや破壊活動の実行犯にはコロンビア人の極右準軍部隊要員(パラミリタレス)が多く含まれている、とも伝えた。

 ブエノスイアレスでは11日、フェリーペ・ゴンサレス元スペイン首相が元首脳たちの会合で、「マドゥーロはベネスエラを腐敗国家、失敗国家にした」と断言した。これは「失敗国家」呼ばわりし、「軍事侵略やむなし」とする世論形成を狙ったもので、米軍事侵攻教書に盛り込まれている。

 かつてフランコ独裁後のスペイン民主化の旗頭だったフェリーペに、その面影はない。すっかり安楽な保守・右翼路線に乗ってしまっている。「元首脳陣を宣伝に使う」ことも、まさに侵略教書に盛り込まれている。

 米国が強大な影響力を持つ米州諸国機構(OEA/OAS、加盟33カ国および脱退宣言したベネスエラ)は15日ワシントンの本部で大使会議を開き、ベネスエラ情勢を討議する特別外相会議開催日程と場所を決める。ベネスエラは出席しない。

 外相会議が開催されれば、ベネスエラへの「米州民主憲章」適用、ベネスエラ脱退取り消し、「ベネスエラ追放」などが議題となり得る。同国に不利な決議がなされれば、軍事侵攻圧力は一層強まることになる。

 マドゥーロ政権の重鎮エリーアス・ハウア教育相(制憲議会=ANC=担当大統領委員会委員長)は12日、知識人との会合で、「反政府勢力はANC開設のための対話を拒否し、マドゥーロ大統領打倒だけを求めている。状況は疑いなく内戦に向かって進んでいる」と指摘した。反政府勢力の中核は、米政府と連携している保守・右翼野党連合MUDである。

 続けてハウアは、「反政府勢力指導部(MUD)は、米政府の最も反動的な勢力の指示の下に、兄弟殺しを促進しつつある」と、厳しい認識を示した。「ベネスエラに内戦が起きれば、ラ米全体が、がたがたになる」とも述べた。

 さらに、「彼ら(MUD)は、経済・社会が混乱していた時期には勝てると思って選挙実施を要求していたが、今はANC議員選挙を拒否している。現在の事態が彼らの挑発によってもたらされているため、彼らには都合が悪いのだ」との見方を打ち出した。

 ハウアは、「国家は合法的権力をもって平和構築に努めており、現在の最重要課題は、経済再建によって、ボリバリアーナ革命の最初の10年間のような繁栄の水準に到達することだ」と強調した。

 ローマ法王庁のピエトゥロ・パロリン国務長官は13日、法王フランシスコが訪問中のポルトガルで「ヴァティカンの立場は、ベネスエラ危機解決の方策は選挙実施だ」と述べた。

 マドゥーロ大統領は12日、「18年(末)に大統領選挙がある」と明言。同大統領の任期は19年初めまでであり、18年末には選挙が不可欠だ。

 大統領はまた、「街頭暴動(グアリンバ)は国土のわずか1%で展開されているだけだ。14年にはグアリンバを制圧するのに5カ月かかった。現在ファシスト右翼を打ち負かしつつあり、彼らは決定的敗北に向かっている。ゴルペ(クーデター)と武装蜂起に執着する輩には正義の鉄槌を下す」と強調した。

 マドゥーロ政権は体制固めの一環として、1月から「祖国身分証」を発給。13日までに1325万4000人が同身分証を取得した。この身分証所持者は、ミシオネスと呼ばれるさまざまな社会福祉政策を享受できる。政権には、有権者固めの狙いがある。

 首都カラカスをはじめ、各地でMUD派の抗議行動や暴力が断続的に続いている。カラカスでは10~11日に、政権支持派集会に参加していたチレ人左翼活動家ホセ・ムニョス=アルコオラが、2人組の殺し屋に機銃掃射され即死した。

 ムニョスは、ピノチェー軍政下のチレで「革命的左翼運動」(MIR)要員として軍政と戦い、その後、ニカラグア革命・内戦、コロンビア内戦で戦い、クーバにも滞在した。父親は治安警備隊大尉で、故サルバドール・アジェンデ智大統領の護衛だった。

 チレ「貧民ゲリラ軍」(EGP)の創設者でもある。ボリバリアーナ革命のベネスエラでは、チャベス派として活動していた。ムニョス暗殺は、外国諜報機関の指示があった可能性を示唆している。この事件発生は12日公表された。

 ベネスエラ最高裁は12日、右翼政党「新時代」(UNT)党員一人がカラカスで、自動ライフル銃FALを所持していたことなどから逮捕され、軍事法廷にかけられると発表した。

 外務省は13日、コロンビアの首都ボゴタ市が、ロック祭へのベネスエラ人歌手ポール・ヒルマンの参加を拒否したことに抗議した。ヒルマンはチャベス派政権支持の音楽家として知られている。

▼ラ米短信   ◎クーバが沿岸警備演習実施へ

 クーバの革命防衛委員会(CDR)と国境警備隊(TGF)は5月12日、CDR所属の「海洋監視分遣隊」(DMM)とTGFによる海岸線全域での合同作戦演習を15~19日に実施すると発表した。クーバ女性連盟(FMC)など大衆組織も参加する。

 この合同演習は12回目。ベネスエラ情勢が不安定な時期に実施される今回は関心を集めている。 
 
 
 
 
 
 
 

2017年5月12日金曜日

 米政府が対ベネズエラ「クーデター作戦」の「心理戦争」段階入りか。マドゥーロ大統領は制憲議会開設反対者を「クーデター支持者」と非難。ウルグアイは「反ベネズエラ十字軍」に反対▼グアテマラで戒厳令発動

 米政府の諜報・謀略機関CIA(中央情報局)のマイク・ポンペロ長官は5月11日、上院諜報委員会で、ベネスエラ情勢について証言。同国政府系の「武装集団」(コレクティーボス)が規制なしに活動する危険性が毎時高まっている、と述べた。また、ベネスエラでは武器が大量に出回っており、同国のみならず南米と中米にとっても脅威だ、と語った。

 これらは実態からかけ離れた極めて大げさな指摘であり、CIA教本「独裁から民主へ」の政変(ゴルペ・デ・エスタード=クーデター)誘発戦術の第4段階「心理戦争」に該当する。事態は危険な局面に徐々にのめり込みつつある。

 ベネスエラの保守・右翼野党連合MUDは、米戦略に従って、破壊活動を伴う反政府街頭行動を展開中。まさに教本および、米南方軍文書、米国務省に影響力を持つ米シンクタンクの文書の内容に沿ってMUDは動いている。

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派政権は4月半ば、MUDの言動が明確にゴルペを目指していると判断。破壊活動など重罪容疑者を軍事法廷で裁くことも含むゴルペ制圧作戦「サモーラ計画」で対処している。

 マドゥーロ大統領は11日、「制憲議会(ANC)開設のため実施中の対話に応じない者はゴルペ支持者だ」とし、「一にMUD、二に経団連、三はカトリック司教会議だ」と指摘した。

 政権は、憲法改正のためのANC開設を決定。進行中の国内各分野と広範な準備対話を重ね、6月にかけてANC議員選挙公示、直接投票実施にもっていきたい構えだ。この対話が拡がり、選挙が実施され、ANCが開設され、改定憲法起草と事が運べば、MUD、内外メディア、米国・反ベネスエラ諸国、米州諸国機構(OEA)が煽ってきた反政府行動は沈静化すると期待している。

 首都カラカスでは10日、27歳の青年が直径2cmの銃弾を狙撃手から見舞われて死亡した。大統領は、「MUDは狙撃手を使って市民を殺した。ファシズム戦略の一環だ」と非難した。

 さらに、MUD系ら富裕層の子弟が通うことの多い私学について、「憎悪、人種主義、暴力、反祖国を煽っているため捜査を命じた」と明らかにした。

 ベネスエラ外務省は11日、声明を発表。米国務省のフランシスコ・パルミエリ米州担当次官補が10日、MUDの主張と同じ「選挙による解決」を口にしたのを受けて、「米国は資金と兵站支援をベネスエラの暴力集団に与えてきた。その暴力的反政府勢力を善導するためANCを招集するのだ」と反撃した。

 声明は、「この暴力状況はOEA会議が4月3日、ベネスエラに対する敵対的内政干渉政策を決議したのに起因する。米国務省は同決議を用いて、最も暴力的で反民主的な勢力を支援してきた」と糾弾。

 さらに、「米現政権がブッシュ、オバーマ両政権の誤った対ベネスエラ政策を踏襲したのは遺憾だ」と表明。「米政府は今年に入ってから、ベネスエラの実情を捻じ曲げた敵対的声明を計105回発してきた」と述べた。

 MUDの街頭行動での別働隊の若者たちは数日来、糞便を瓶、プラスチックカップなどの容器に詰めた「ププトフ」を治安部隊に投げつけている。「モロトフカクテル」(火炎瓶)の「モロトフ」の「モロ」を、糞を意味する「ププ」に替えたものだ。当局は、これを「生物テロ兵器」と見なした。

 ララ州都バルキシメト市イリバレン区のアルフレド・ラモス区長は11日、反政府行動を取り締まらなかったためとして、区議会で弾劾された。カラカス首都圏のチャカオ、エルアティージョ両区長も暴動を制御しなかったとして、区民から告訴された。

 ベネスエラにとっての朗報は、ウルグアイのタバレー・バスケス大統領が10日、「ベネスエラを孤立させない、米州民主憲章を同国に適用しない、同国をOEAから追放しない。ウルグアイは反ベネズエラ十字軍に与せず、それに一石を投じる立場をとる」と決定したこと。ロドルフォ・ニン=ノボア外相が発表した。

 ウルグアイは、ベネスエラ政府の対話同伴国5カ国に属している。

 チレの左翼政党連合FA大統領候補ベアトゥリス・サンチェスは11日、マドゥーロ政権について「独裁ではない。人民から選挙で選ばれた」と指摘した。チレでは11月19日、大統領選挙が実施される。

 パナマのイサベル・サンマロ副大統領兼外相は10日、米州がOEA重視派とCELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)重視派に分極化するのを懸念し、分極化しないよう、米州諸国に呼び掛けた。

 リマでは11日、MUDの顔、フリオ・ボルヘス国会議長がPPクチンスキ(PPK)・ペルー大統領に会い、「ベネスエラの民主移行のため、ラ米諸国・機関の代表になってほしい」と要請した。PPKは断ったが、MUDの主張に理解を示した。PPKは、亜国のマウリシオ・マクリ大統領と並ぶD・トランプ米大統領のお気に入りで、反ベネスエラの中核にいる。

 マクリは11日ブエノスアイレスを出発、アラブ首長国連邦、中国、日本への歴訪の旅を開始した。中国では14~15両日の「一帯一路」構想首脳会合に出席する。来日は18~20日。

▼ラ米短信   ◎グアテマラで戒厳令発動

 グアテマラのジミー・モラレス大統領は5月11日、西部のサンマルコス、イスチグアーン両県に30日間の戒厳令を敷いた。メヒコ国境地方の県で、マヤ系先住民人口が多い。古くからの土地問題をめぐり住民同士が衝突。またメヒコ系武装麻薬マフィア組織の侵入もあり、戒厳令発動となった。

2017年5月9日火曜日

  ベネズエラ政権打倒のクーデターの陰謀が底流で進行。それを横目に、制憲議会(ANC)開設目指すマドゥーロ政権は諮問会合続ける。物産展も成功裏に終わる▼『世界』誌6月号が最新キューバ情勢分析記事を掲載 

 ベネスエラの保守・右翼野党連合MUDを中核とする反政府勢力、米州諸国機構(OEA)のL・アルマグロ事務総長および反ベネスエラ諸国、米政府、内外謀略メディア・NGOが連携してのゴルペ(クーデター)の陰謀が底流で進行する中、ニコラース・マドゥーロ大統領のベネスエラ政権は政経両面で政策を淡々とこなしている。

 「主権的物資供給大任務」(GMAS)の生産展が5月8日、5日間の日程を終えた。閉会式でマドゥーロ大統領は、「展示会の目的は国の製薬と食糧生産の能力を示すことだった」と述べ、723の個人、法人、特殊団体に巨額の振興融資をしたことを明らかにした。展示会には、民間企業89社、公共事業体42、人民組織27の、計158の産品などが展示され、3万人が見物に訪れた。

 政府は、国営(非石油)基幹産業の今年第1・4半期の鉄板などの輸出が1億270万ドルに達したと発表した。今年の輸出目標は10億ドル。去年の出来高は4億7000万ドルだった。ベネスエラは、「脱石油経済」建設という遠い目標に向かって地味な歩みを進めている。

 制憲議会(ANC)担当のエリーアス・ハウア教育相は8日、各界代表を招いての意見聴取・諮問会合の進展を強調。会合出席を拒否したMUDと、左翼諸政治運動・政党に出席を呼び掛けた。

 マドゥーロ大統領も、国軍強化と、民・軍一体化強化のため、ANCに積極的に提案してほしい、と国軍に要請した。

 一方、デルシー・ロドリゲス外相は8日、コロンビアのJMサントス大統領がベネスエラの民主や人権に関し批判的に発言したことについて、「コロンビアの内戦解決に尽力したベネスエラに背中から一刺し、独立と自由の歴史を共有する仲を裏切った」と厳しく指摘。「ベネスエラは、財界やメディアとつるんだコロンビア政府の組織的攻撃の標的にされている。サントスは、ベネスエラの反政府勢力と同じことを言っている」と非難した。

 続けて、「サントスは内政の失敗責任を覆い隠すためベネスエラを攻撃し、併せて米政府のお褒めに与ろうとしている」と糾弾。「内政干渉を止めよ。他国に教訓を垂れる前に、自国の諸問題に対処すべきだ」と突き放した。外相は、コロンビアで今年1~4月、人権活動家41人が殺害された事実などを列挙した。

 マイアミで8日開かれたベネスエラ反政府系の会合で、フロリダ州のリチャード・スコット知事は、「マドゥーロは即時辞任せよ」と言い放った。この暴言が、ゴルペ決行の条件醸成のために計算された一かけらであるのは言うまでもない。

★ラ米短信   ◎『世界』誌6月号がクーバ情勢分析記事掲載

 月刊誌『世界』6月号(岩波書店、5月8日発売)に、伊高浩昭執筆「トランプ米政権の出方探る社会主義キューバ  経済危機と世代交代が重なり苦悩するラウール議長」が掲載されている。最新のクーバ情勢分析記事。 
 
 

2017年5月8日月曜日

 ベネズエラの保守・右翼野党連合MUDは制憲議会(ANC)開設の政府案を拒否。反政府街頭行動を継続。筋書きは、アジェンデ政権を44年前倒したチリ軍事クーデター計画に酷似

 ベネスエラ政府による制憲議会(ANC)開設政策に対し、保守・右翼野党連合MUDは5月7日、同政策に正式に反対を表明、政府側によるANC開設に関する諮問会合への出席を拒否した。

 ANC幹部の一人でミランダ州知事のエンリケ・カプリーレスは、現行憲法と(MUDが反対する)改定憲法の二つが併存することになり、ベネスエラ統治は立ち行かなくなる、と述べた。

 MUDが、米国の対外政策関係のシンクタンクが書いたゴルペ(クーデター)の筋書き通りに動いていることが4月段階で明らかになっている。D・トランプ米大統領は秘亜両国大統領と既に会談し、米国の立場を説明している。

 ゴルペ計画内容は、H・キシンジャーが絡んだ1973年9月のチレ軍事クーデターの筋書きと酷似している。これを察知したミチェル・バチェレー智政権はエラルド・ムニョス外相をワシントンに派遣。同外相はレックス・ティラーソン米国務長官との会談後、「交渉による問題解決を支持する」と記者団に敢えて強調した。

 MUDの拒否を受けて、ANC担当大統領委員会のエリーアス・ハウア委員長(教育相)は7日、「野党勢力が民主政治から離脱し、暴力と外国による介入の道を選んだため、ニコラース・マドゥーロ大統領はANC開設を提案した」と指摘。「野党勢力がローマ法王の助言にさえ従わず、ANC提案を受け入れないということなら、我々はANCを開設する」と強調した。

 さらに、「(ANC議員約500人の)選挙区はCNE(国家選挙理事会=中央選管)が決める。職能・分野別選挙区と地域選挙区がほぼ半々になる」とし、「一連の諮問会合が済んだら、大統領は告示し、投票日を決める」と語った。

 演奏家や歌手など音楽家組織は7日、カラカスのチャカオ区で、演奏しながら行進した。殺し屋に4日撃たれ重体だった学生が7日死亡、非公式集計で一連の反政府行動関係の死者数は38人に達した。

 MUDは8日には、ハウアANC担当委員長のいる教育省にデモをかけることにしている。MUDは「恒常的内乱状況」を醸し、米国をはじめとする外部勢力の介入を誘導する戦略であり、破壊活動や殺傷事件をしばしば招いてきた街頭での挑発行動を止める気配はない。MUDは、活動資金が潤沢なことを示唆している。
 

2017年5月7日日曜日

 ローマ法王フランシスコがベネズエラに「真摯な対話」を求め、「不信と絶望に負けてはならない」と訴える。チリも話し合い解決支持。政府系・反政府系両派の女性が行進したカラカスでは、反政府武装組織を摘発。

 ローマ法王フランシスコは、ベネスエラの政府と反政府勢力に向けて、「真摯な対話の橋を架け、到達した合意を完遂する意志があれば、ベネスエラが直面している難題の解決は可能となる」と、書簡で訴えた。ベネスエラ司教会議が5月6日、明らかにした。

 法王は書簡で、「ベネスエラ情勢を憂慮しつつ見守っている。最近の衝突と暴力に胸が痛む」と表明。「双方が不信と絶望に打ち負かされないよう望む」と呼び掛けた。ベネスエラ司教会議は保守的で、反政府勢力寄りの姿勢が目立っているが、法王は中立の立場で書簡を書いている。

 スリア州政府は6日、州内ロサリオデペルハー市で市の施設やウーゴ・チャベス像が破壊されたことについて犯人を追及すると表明した。未確認情報では、容疑者14人が逮捕されている。州政府は、州内の彫刻家にチャベス像制作コンクールへの参加を求めている。1位の作品を、像が破壊された公園に設置する方針。

 政府は6日、首都カラカスで活動していた武装犯罪組織4団体を摘発、要員を逮捕し、さまざまな武器類を押収したと発表した。これらの組織は反政府勢力の側で、破壊活動や殺傷に関与した疑いがある。

 カラカスでは6日、政府側と反政府側の女性がそれあぞれ別々に大挙して行進した。赤シャツ姿の目立つ政府側は、「死に反対、平和に賛成」を叫び、白シャツ姿の反政府側は「抑圧反対」を訴えた。

 反政府側NGO「市民による安保・防衛・国軍規制」は、国軍の一翼を担うボリバリアーナ国家警備隊(GNB)の士官ら85人が、反政府勢力による街頭行動を規制する上官命令を拒否、逮捕されていると表明している。だが未確認情報。

 一方、エルネスト・サンペール元コロンビア大統領(前ウナスール事務局長)は5日、一定期間内の地方選挙と大統領選挙実施、それに備えた政党活動開始、国会の権限回復、の3点を打開策としてベネスエラに要請。「暴力を止めよう。過激主義はベネスエラを救わない」と反政府側に訴えた。

 ドナルド・トランプ米大統領は5日、ペルーのPPクチンスキ(PPK)大統領と電話で会談、「ベネスエラ問題に米秘は協働して対処する」と明らかにした。トランプはラ米首脳の中で、英語が堪能なPPKをワシントンに最初に招き、会談している。

 だがラ米では、PPKは亜国のマウリシオ・マクリ大統領に次ぐ保守・右翼色の濃い首脳と位置付けられており、そのうえPPKはベネスエラ駐在大使を引き揚げている。現状ではベネスエラが「米秘協働」に影響される可能性は極めて乏しい。

 チレのエラルド・ムニョス外相は5日ワシントンで、レックス・ティラーソン米国務長官と会談。その後、記者団に「ベネスエラ問題は交渉による解決を望む」と語った。ラ米もベネスエラ情勢をめぐって強硬派、穏健派、マドゥーロ政権支持派に分かれている。
  

2017年5月6日土曜日

 ベネズエラ情勢:制憲議会(ANC)選挙の準備過程進む。カラボボ州で反政府破壊活動関与の犯罪45組織を特定、軍事・刑事法廷送りへ。米政府は反政府野党連合MUDを厚遇。政府は「野党外交」取締へ▼ブエノスアイレス市がアスルドゥイ像撤去へ▼コレア赤道国大統領がキューバ訪問

 ベネスエラのネストル・レベロール内相は5月5日、カラボボ州内で反政府勢力と連携・連動して暗躍する「組織犯罪集団45団体を特定した。逮捕状を執行する」と発表。武器不法所持、殺傷、破壊活動、略奪、暴行などの容疑で「刑事法廷と軍事法廷で裁く」と述べた。

 スリア州ロサリオデペルハー市では、広場にあった故ウーゴ・チャベス前大統領の銅像が、反政府派の若者たちによって倒され、破壊され、燃やされた。私刑さながらの光景で、破壊された像は遺体のように路上に横たわった。

 5日には、負傷していた若者2人が病院で死亡。一連の反政府行動での死者は37人に達した。政府と、保守・右翼野党連合MUDの双方は6日、カラカスでそれぞれ、支持派の女性を動員して行進する。相互に「対抗行進」(コントゥラ・マルチャ)となる。

 制憲議会(ANC)担当のエリーアス・ハウア教育相は4日、大統領政庁(ミラフローレス宮)で、全国のコムーナ(コミューン)評議会の代表者たちと会合。ANC議員候補擁立、改憲条項草案策定などについて話し合った。

 ハウアは8日には、MUD諸党代表との会合を予定しているが、MUDからの回答はない。来週にかけてハウアは、州知事、市長、宗派、大学学長、大学生、先住民、労農、経営者などの代表たちとの会合も予定している。国内の各階層・職能分野と広く意見を交換したうえで、ANC議員選挙を実施するためだ。

 ララ州知事ヘンリー・ファルコン(MUD)は5日、ハウアとの会合に出席しないと逸早く表明した。ハウアは、「国内右翼勢力や米右翼はベネスエラが、あたかもリビアやシリアのような内戦状態にあるかのように国際世論に印象づけようとしてきた」と非難した。デルシー・ロドリゲス外相は、MUDに「暴力を止め、(ハウアとの)ANC会合に参加せよ」と呼び掛けた。

 同外相は、フリオ・ボルヘス国会議長が前日ワシントンで、米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長に会い、マドゥーロVEN政権が通告したOEA離脱決定を覆すよう、国会決議を添えて要請したことに関し、外交は政府の権限であり、ボルヘスを越権行為により法廷で処分する、と語った。外相は、ボルヘスはアルマグロと組んで、ベネスエラへの外国の介入を促進している、と糾弾した。

 アルマグロ(前ウルグアイ外相)の上司だったホセ・ムヒーカ前大統領は4日モンテビデーオで、「ベネスエラ情勢の反理性的過激化は右翼に利し、米国にトランプ政権がある今、極めて危険だ。ラ米人にとり特に危険なのは内政干渉という爆弾投下であり、アルマグロの行為はベネスエラのみならずラ米全体にとって危険だ」と、厳しく指摘した。

 国会議長ボルヘスは5日ワシントンで、ベネスエラ政権に厳しいラ米・カリブ諸国のOEA駐在大使たちと会合。続いてホワイトハウス(米大統領政庁)でマイク・ペンス副大統領、ハーバート・マクマスター安保担当大統領補佐官とOEA離脱阻止をめぐって会談した。米政府のこの厚遇ぶりは、米国とMUDの政治的癒着を象徴している。

 訪米中のエラルド・ムニョス智外相は5日、アルマグロと会談、「政治・外交交渉による事態打開を支持する」と伝えた。事務総長が固執する反マドゥーロ強硬路線とは距離を置く構えを示すものだ。

 OEAはベネスエラ問題だけを話し合う特別外相会議を22日開催する見通し。アルマグロは、ベネスエラ国会の離脱阻止要請を議題にしたい構えだ。これとは別にOEAの定例外相会合が6月20~21日、メヒコで開催される。

▼ラ米短信   ◎ブエノスアイレス市議会がアスルドゥイ像撤去を決定

 BsAs市議会は5月4日、大統領政庁(カサ・ロサーダ)裏に建つ、ボリビアと亜国北部独立の女性英雄フアーナ・アスルドゥイが独立戦争で戦う姿を描いたボリビア政府制作の銅像を撤去することを決めた。

 この銅像は、ボリビアのエボ・モラレス大統領から贈られたもので、2015年6月、当時のクリスティーナ・フェルナンデス亜国大統領によって除幕式が挙行された。

 政権がラ米右翼勢力の旗頭マウリシオ・マクリ大統領の手に移ったため、政権の史観や好みに合わない記念物は排除されることになる。

▼ラ米短信   ◎エクアドール大統領がフィデル墓参

 赤道国のラファエル・コレア大統領は24日の任期切れを前に3日、クーバのサンティアゴ市に到着、市内の聖母エフィフェニア墓地にあるホセ・マルティ廟とフィデル・カストロの墓に4日参拝。「2人は世界史に名を残したラ米の巨人だった」と述べた。

 コレアはハバナに移動、ラウール・カストロ国家評議会議長からホセ・マルティ勲章を授与された。また国立ハバナ大学から名誉博士号を授与された。 

2017年5月5日金曜日

 ロシアのロスネフト社がキューバに石油を供給。トランプ政権への鞘当てか▼ベネズエラ情勢: 反政府勢力による破壊活動激化で、カラボボ州に軍事法廷復活。政府は野党連合MUDに制憲議会選挙参加を呼び掛け

  露国営石油ロスネフト社は5月3日、クーバに25万トンの石油を輸出することで合意し、10日に最初の24万9000bが到着する、と発表した。その内訳は原油とディーゼル。総量25万トンをいつまでに輸出するのかや代金の額などは明らかにされていない。

 クーバはベネスエラから優遇条件で原油を輸入していたが、同国経済の悪化で供給量が半減、エネルギー事情が悪化、経済成長も昨年、マイナスに転じた。

 ラウール・カストロ議長は昨年7月から、プーチン政権に優遇条件での原油供給を求めていた。25万トンと量的には大したことはないにせよ、ここへきて露社が輸出に踏み切ったのは、関係が悪化しているトランプ米政権への牽制策と言える。

 ベネスエラ国営石油PDVSA(ペデベサ)は昨年、ロシアから借款を受ける際、担保として、同社所有の在米製油所CITGOの株の49・9%をロシアに渡した。これも米政府の神経を苛立たせた。

 ロシアは4月には、先にウラカン(ハリケーン)被害6300万dの出たクーバに、復興資金として150万dを贈っている。

★ベネスエラ情勢   カラボボ州で軍事法廷復活

 ボリバリアーナ国家警備隊(GNB)のアントニオ・ベナビデス長官は5月4日、武装決起、治安部隊への襲撃、略奪、破壊活動に関与した43人を逮捕、裁判を軍事法廷に委ねる、と発表した。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は4月17日、騒擾状態とゴルペ(クーデター)を未然に防ぐための「サモーラ文民・軍人合同計画」(プラン・サモーラ)を発動した。この計画には重大犯罪者を対象とする軍事法廷活用が含まれている。ネストル・レベロール内相も、カラボボ州で武装蜂起があった、との判断を示している。

 検察庁は、4月初めから4日朝までの反政府勢力の抗議行動および暴動で、死者35人、負傷者717人が出た、と発表した。死者はカラカス首都圏、カラボボ州が多い。

 アンソアテギ州にある地域工科大学では4日、学生会を開いていた学生会長フアン・ロペス(23)が、侵入した2人組の殺し屋から至近距離で銃撃され即死した。他の4人も重軽傷を負った。ロペスは政府支持派であり、警察は反政府勢力が殺し屋を雇ったとみて捜査中。

 刑務所管理相は、検事総長が3日「当局の実力過剰行使」に触れたことに関し、暴力、襲撃、破壊活動を続けている反政府暴徒のことをなぜ指摘しないのか、と批判した。電力相は5月になってから鉄塔破壊を試みた男3人が感電死した、と明らかにした。

 政府は、一連の暴動で破壊され放火され略奪された店舗に4日、総額110億ボリーバルの復興手当金を支給した。

 マドゥーロ大統領が政令で打ち出した制憲議会(ANC)議員選挙について、その担当官エリーアス・ハウア教育相は4日、ANCおよび選挙の説明会に出席するよう、保守・右翼野党連合MUDに呼び掛けた。

 MUDの顔、フリオ・ボルヘス国会議長は4日ワシントンの米州諸国機構(OEA)本部でルイス・アルマグロ事務総長に会い、ベネスエラのOEA脱退を認めないとする国会決議の文書を手渡した。

 ムヒーカ・ウルグアイ前政権の外相だったアルマグロは反マドゥーロの急先鋒で、ムヒーカ前大統領から絶縁されている。バスケス現ウルグイア政権の政権党連合「拡大戦線」(FA)に属する左翼政党「民族解放運動トゥパマロス」(MLN-T)は4日、アルマグロをベネスエラ政変誘発の陰謀に加担していると糾弾した。

 クーバ系右翼の共和党議員ら米連邦議会議員十数人は4日、ベネスエラ情勢を国連安保理で話し合うよう、トランプ政権に要請した。

 デルシー・ロドリゲスVEN外相は4日、コロンビアのマリーア・オルギン外相が前日、ANC開設がベネスエラ問題の解決に寄与するとは思わないと発言したことに関し、内政干渉として一蹴。「組織的に人権蹂躙を続けてきたコロンビア支配勢力にはなおさら、他国に干渉する倫理的資格はない」と扱き下ろした。

 だがコロンビアおよび亜PAR伯CR・HON・GUA墨の8カ国政府は4日、VEN政府に「過剰警備をやめ人権を尊重するよう」呼び掛けた。反政府派暴徒による破壊活動や治安部隊襲撃には触れていない。デルシーの激しい反撃を招くのは必至だ。

 レックス・ティラーソン米国務長官は4日、欧州諸国と協働してベネスエラ問題に対処したい、と述べた。マドウーロ政権はMUDとの対話実現のための回路として、従来からの南米諸国連合(ウナスール)の対話仲介団に、ラ米・カリブ諸国連合(CELAC)の対話促進団4カ国をこのほど加えた。 

2017年5月4日木曜日

 ベネズエラ大統領が制憲議会選挙実施決定を告知。政府・野党MUD間の対話促進国団にエル・サルバドールなどCELAC4カ国決まる▼プエルト・リコが財政破綻を宣言▼パナマ運河第3閘門式水路を旅客船が初の通航

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月3日、政令で数週間以内に制憲議会(ANC)議員選挙を実施する、と告知した。大統領はチャビスタ(政府支持派)に対し、棄権者が出ないよう組織を開始するよう呼び掛けた。

 保守・右翼野党連合MUDを中核とする反政府勢力に対しては、「改定憲法が将来の選挙の基盤になる。多数派を自認する野党は選挙実施を要求しているが、ANC議員候補を立て、多数派であることを示せ」と促した。

 マドゥーロはさらに、「チャベス派はANCで、2015年の釘(国会議員選挙での惨敗)を抜き、ボリバリアーナ勝利の道を復活させる機会を得る」と強調。「ミシオネス(各種社会政策)を廃止できないよう憲法に盛り込む。改憲で暴力か平和かを選ぶことができる」と述べた。

 国家選挙理事会(CNE)のティビサイ・ルセーナ議長は政令を受けて、「ANC選挙で難題解決のための国民対話の場ができる。きょう始まった改憲への新しい過程は国を安寧に導き、誰にも幸いする」と指摘した。

 デルシー・ロドリゲス外相は、前日のCELAC外相会議でベネスエラ対話促進協力国にエル・サルバドール(CELAC議長国)、ドミニカ共和国(同前議長国)、ニカラグア、セントヴィンセント&グラナディーンの4カ国が決まった、と発表した。

 反政府勢力の抗議行動と、その前衛に位置する若者たちの別働隊の行動は3日も首都チャカオ区アルタミーラを中心に展開され、治安部隊ともみ合った。一人が死亡、火炎瓶を受けた別働隊の若者1人を含む約170人が負傷した。

 別働隊は投石や火炎瓶で治安部隊を攻撃した。野党所属のチャカオ区長は区警察に別働隊を規制させず、別働隊の背後を護衛に守られて行進した。それがビデオで流された。

 別働隊は治安部隊を攻撃して挑発、規制される様子を「弾圧」としてビデオに収め、内外にユーチューブで流す戦術をとっている。これにより国際社会での反マドゥーロ政権世論を醸成、打倒しようという戦略だ。

 4月初めから5月3日までの街頭破壊行動での死者は34人、負傷者は700人に上る。一部には治安部隊の行き過ぎた規制行動も指摘されるが、ルイサ・オルテガ検事総長は3日、米WSJ紙によるインタビューで、「国家が遵法でないと、市民に合法行動を要求できない」と語った。

 ルイス・モッタ電力相は、反政府地下勢力による送電塔など電力施設への破壊活動が起きていることに関し、「改憲で電力施設破壊者への刑罰を厳しくすることができる」と表明した。

 一方、亜国人左翼でパルラスール(南部共同市場加盟国議会)議員のオスカル・ラボルテは、4月末にワシントンでマクリ(亜国大統領)とトランプが会談したことについて、トランプは亜伯両国軍を使ってベネスエラを攻めたい考えではないか、と述べた。

▼ラ米短信    ◎プエルト・リコが財政破綻

 米植民地(米自由連合州)プエルト・リコ(PR)のリカルド・ロセジョー知事は5月3日、負債730億ドルを抱え財政が破綻した、と発表した。返済期限は2日で切れていた。

 PRは6月11日、PRを米国の正式な一州にするか、独立するかの島民投票実施を予定している。だが財政破綻で実施が危ぶまれている。

▼ラ米短信    ◎パナマ運河第3水路を初の旅客船が通航

 パナマ運河庁(ACP)は5月2日、世界最大級のコンテナ運搬船コスコ(1万3425個積載)がパナマ運河第3閘門式水路を太平洋側からカリブ海へと通航した、と明らかにした。

 また4月29日には、米超大型旅客船デズニーワンダー号(乗客2700人)が第3水路を、旅客船として初めて通航した。米フロリダ州カニャベラル港から加州サンディエゴ港までの2週間の航海途上だった。

 第3水路は去年6月26日に営業が開始され、一日平均5・9隻が通航している。旅客船通航は4月1日から通航受付が始まっていた。10月からの18年度には超大型旅客船18隻が通航予約済みという。

2017年5月3日水曜日

 ベネズエラ国軍がマドゥーロ大統領の制憲議会選挙提案を支持。反政府野党連合MUDはジレンマに陥る。CELAC外相会議は対話路線支持。「域内の問題話し合うのに米国は不要」とキューバ外相

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月2日、制憲議会議員選挙を3日告知すると発表した。国軍(FANB)は、ブラディミロ・パドゥリーノ国防相名で、「外部勢力による内政干渉、反政府勢力の政治的不寛容、反政府勢力過激派による暴力・蛮行・不安定化行動を前にして、広範な世論を喚起する名案だ」と、支持を表明した。

 反政府保守・右翼政党連合MUDは、大統領提案を前にディレンマに陥っている。提案を受け入れれば、街頭行動による「騒擾状態」演出で政権打倒に持ち込む戦略が中断を余儀なくされる。拒否し選挙を蹴れば、2005年12月の国会議員選挙時にボイコットした結果、国会全議席をチャベス派に奪われた苦い経験の再来となる。

 逆に見れば、どう転んでもマドゥーロ政権に有利な選挙提案であり、ここに政権側の狙いがある。米国務省の西半球担当次官補マイクル・フィッツパトリックは、「ベネスエラはまたも試合中に規則を替えた」と反応した。MUDと連携してマドゥーロ政権を倒したい国務省にも、マドゥーロ提案は「意外な隠し球」だったようだ。

 MUD幹部のヘスース・トレアルバは、、「MUDには、闘争続行のために十分な内外からの支援がある」と述べ、資金が潤沢なことを臭わせた。

 2日もMUDの別働隊が破壊活動を繰り返した。オンブズマンのタレク・サアブは、カラボボ州バレンシアでオンブズマン事務所が略奪され放火されたと発表、犯人の若者を映したビデオ映像を公開した。これで破壊されたオンブズマン事務所は全国で8カ所となった。

 ララ州では、MUD派暴徒が国営石油PDVSAの油送車一台に放火、炎上させた。また首都カラカス市チャカオ区では、警官一人がMUD派暴徒に暴行され、私刑に遭う前に救出された。

 一方、サンサルバドールでは2日、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)の緊急外相会議が開かれた。エル・サルバドール(ES)のサンルバドール・サンチェス=セレーン大統領は開会演説で、「合法政権下にあるベネスエラが早期に安寧・安定を回復するために、兄弟諸国として連帯しつつ努力を払おう。ベネスエラ憲法の枠内で対話による解決を図るのが正しい道だ」と呼び掛けた。

 会議は非公開だった。今会議開催を要請したベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は、閉会後の記者会見で、「対話と安寧のために建設的、有益、協力的な会合だった。対話過程に参加するよう要請した国々はみな受諾してくれた」と語った。

 さらに質問に答える形で、「反政府勢力(野党)の一部は叛乱を目指している」と糾弾。「ベネスエラはワシントンの命令下に置かれることなどまっぴらごめんだ。アルマグロ(事務総長)のOEA(米州諸国機構)は国際法違反だ」と非難した。

 ベネスエラの同盟国クーバのブルーノ・ロドリゲス外相は、「討議は建設的で対話を支持し、ベネスエラ人民への主権と独立への支持が際立った」と指摘。「CELACは、OEAと異なり、我々独自の思想、精神、文化に彩られている。LAC(ラ米・カリブ)域内の問題を話し合うのに、域外の大国(米国・カナダ)を加える必要はない」と、米加両国が加盟しているOEAを批判した。

 ボリビアのフェルナンド・ウアンクニ外相は、「ベネスエラ問題は、外部からの押し付けや政治的利害抜きで対処せねばならない」と強調、OEAの内政干渉を批判した。

 しかし、内政干渉に固執する伯PAR秘墨のラ米4カ国と、ベネスエラから援助を受けていないカリブ英連邦系のTT・バハマ・バルバドスの3国、計7カ国は外相も代理も派遣せず、欠席した。全会一致制をとるCELACの今外相会議は、共同声明を策定できずに閉会した。

 議長を務めたウーゴ・マルティネスES外相は、「声明は出せなかったが、問題の深刻さを軽減して、今月後半ドミニカ共和国(RD)で開かれる別のCELAC会合に臨むことができる」と述べた。

2017年5月2日火曜日

 ベネズエラのN・マドゥーロ大統領が制憲議会を開設し「人民憲法」制定と発表。デルシー外相がラ米8カ国を内政干渉で糾弾。野党指導者夫人が「反政府行動は無政府主義と蛮行に堕した」と嘆く。サンサルバドールで2日CELAC外相会議開催へ

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月1日、首都カラカスでの「国際労働者の日」の政府支持派労働者大集会で演説、「平和を確立し、ファシストクーデターの陰謀進行を打ち破るための手段が他にないため、労働者階級は人民制憲議会を開設し、独自性のある新しい憲法を制定する」と強調、少なくとも500人の制憲議会議員を選出する選挙を実施すると発表した。

 大統領は、故ウーゴ・チャベス前大統領が1999年に制定した現行のボリバリアーナ憲法を「強化するため」と説明した。これに対し、メイデー行進を首都で別途実施した反政府勢力の指導部である、保守・右翼野党連合MUDは猛反発し、徹底抵抗する方針を打ち出した。MUDは、18年末に予定される次期大統領選挙の早期繰り上げ実施を政府に要求している。

  しかしエリーアス・ハウア大統領制憲議会委員会委員長(教育相、社会開発・ミシオネス革命担当副大統領)は2日、野党を含む全政党に制憲議会開設とその選挙に関し説明会を開くよう命じられた、と発表した。ハウア委員長は、現行憲法には「クーデター政権による憲法廃止を防ぐ条項がない」として、同条項を盛り込むなど憲法強化が必要との考えを示した。

 ローマ法王フランシスコは4月29日、ベネスエラの対話確立のための交渉はMUDが分裂したため成功しなかったと発言、ローマカトリックが主流のベネスエラをはじめとするラ米全域に衝撃を与えた。MUDは1日、法王への公開書簡を発表、「我々は分裂しておらず団結している」と前置きし、「我々が受け入れる対話は選挙だけ」と念を押した。

 法王は1日、発言の影響の大きさに鑑みベネスエラ情勢に関しローマであらためて発言、「ベネスエラ政府と同国社会の全構成者に対し、暴力が極限に達するのを避け、交渉による解決を図るよう呼び掛ける」と述べた。マドゥーロ大統領は、「法王は政治対話醸成のため最大の努力を払っており、敬意を表したい」と謝意を表した。

 2度目の法王発言にMUDは反応していないが、コロンビア外務省の主唱で亜URU伯PAR智コロ秘CRのラ米8カ国政府が賛同。併せて、「人権尊重、暴力行使停止、法治国家回復、<政治囚>釈放、国会機能回復、選挙日程発表」を呼び掛けた。

 これを受けてデルシー・ロドリゲスVEN外相は1日、「非合憲政権ブラジルおよび他の7カ国は、国際法を破り、ゴルペ(クーデター)を奨励する重大な過ちを犯した」と8カ国政府を糾弾した。

 ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領は「ベネスエラを不安定化させている右翼勢力」を非難、マドゥーロ政権断固支持を表明。エル・サルバドールのサルバドール・サンチェス=セレーン大統領もマドゥーロ政権支持を打ち出した。同国の首都サンサルバドールでは2日、ベネスエラ情勢をめぐるCELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)の緊急外相会議開催が予定されている。

 ハバナ革命広場での労働者100万人行進で演説したクーバ労働者中央連盟(CTC)のウリーセス・ギラルテ書記長も、マドゥーロ政権無条件支持を表明、ベネスエラへの内政干渉を続ける米州諸国機構(OEA)と「域内反動勢力」を糾弾した。

 マドゥーロ大統領は4月30日、4年間の施政を振り返って、チャベス前政権の公約を遂行してきたと強調、住宅160万戸を建設したと成果を自賛した。

 4月初めから激化している反政府勢力による抗議行動と、その別働隊による破壊活動については、「街頭暴動を凌いで秩序と安寧を維持してきた」と述べながらも、「右翼による蛮行とテロリズムは社会を混沌とさせた。彼らによる4月の行動は待ち伏せの暴力行為であり、ベネスエラを反革命ファシズムに陥れるための策謀だった」と厳しく非難した。

 さらに「文民と軍人の団結で祖国と憲法を守ろう。平和への権利と人命尊重を考えつつ省察しよう」と述べ、「OEA脱退決定はアルマグロ(OEA事務総長)への強烈なボディーブローになった」と指摘。「ベネスエラのOEAからの解放は、<我らのアメリカ>にとり悲劇である旧態依然たるOEAの終焉の第一歩となるだろう」と語った。

 大統領は、最低賃金と食糧購入券(計14万8000b=ボリーバル)を5月1日から60%引き上げ、20万bにすると発表した。闇ドル市場で20万bは約50ドル。年金も連動して引き上げられた。財界や非政府系労連は、生産増大を伴わない賃上げはインフレを招く、と批判している。

 一方、MUD幹部ヘンリー・ラモス前国会議長の妻ディアナ・ダゴスティーノが父親フランコ・ダゴスティーノと交わした電話通話が29日暴露された。ディアナは、「反政府抗議行動は無政府主義、蛮行に堕落した。VP(人民意志)党員が特にひどい。ベネスエラを炎上させよたいかのようだ。PJ(まず正義を)も同じだ。カプリーレス(PJ党首)は(2度大統領選挙に敗れて)失うものが何もない。彼も街を燃やそうとしている」と嘆いている。

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は29日、「OEAによる反ベネスエラ決議は反ボリビアでもある。米国によるベネスエラ侵略にアルマグロは加担するな」と事務総長に警告した。モラレスはベネスエラが一大産油国であるのを念頭に、「ラ米での過去のゴルペは、人民蜂起、左翼政権、天然資源保護のある国々で決行された」と指摘した。ボリビアも原油、天然ガス、金、亜鉛、リチウムなど地下資源が豊かだ。 

2017年5月1日月曜日

 アルゼンチン軍政(1976~83)に肉親を奪われた「五月広場の母たち」が抗議行動開始40周年を迎え、ブエノスアイレスで記念行事挙行

 アルヘンティーナ(亜国)軍政期(1976~83)に少なくとも3万2000人が殺害された。その多くは拉致されたまま「行方不明」になり、遺体・遺骨は見つかっていない。この恐るべき人道犯罪には、当時のニクソン米政権や南米南部の軍政諸国も関与した。

 この国家テロリズムを果敢に追及してきた勇気ある市民団体が亜国に幾つかある。代表的な組織(NGO)は「五月広場の母たちの会」、「五月広場の母たちの会-創設者路線」、「五月広場の祖母たちの会」である。

 肉親、とりわけ娘や息子の命を軍政に奪われた母たちは1977年4月30日、ブエノスアイレス市中心街の大統領政庁(カサ・ロサーダ)前の「五月広場」で軍政に「息子・娘を返せ」と叫び、抗議行動を開始した。それから丸40年が過ぎた。

 軍政は、母親たちの集会にスパイを送り込み逮捕、航空機に乗せて、生きたままラ・プラタ川に投棄した。後に2人の母親の遺体が河口近くの岸に流れ着き、軍政の蛮行が明るみに出る。

 彼女たちは、父、兄弟姉妹、夫、息子・娘、孫らを失った。抗議すれば命を奪われたり弾圧されたりした。その風雪の40年を深い皺に刻みつつ耐えてきた彼女らの生存者たちは、多くは車椅子で、支援者らとともに4月30日、五月広場を行進した。広場では、「行方不明」になったままの多くの人々の顔写真と拉致された当時の状況を書いた文字が展示された。

 「母たちの会」は、民政移管が1983年に成った後、党派性、指導部選出、政権と距離の取り方などをめぐって対立、86年に分裂した。分派したのは、無党派で、突出した指導者を持たない水平組織の「創設者路線」(ノラ・コルティーニャスら集団指導)。一方、「母の会」はエベ・デ・ボナフィニ会長の強力な指導の下、ペロン主義者色を鮮明にしてきた。

 孫を奪われた祖母たち約600人が結成した「祖母たちの会」(エステラ・デ・カルロット会長)は、この4月23日、奪われた赤子をまた一人発見した。122人目で、39歳になる女性だ。「祖母たちの会」は「創設者路線」と協働している。

 「創設者路線」指導者の一人コルティーニャスはこの日、記者団を前に、「軍政期の犠牲者は3万人余では少なすぎる。もっと多かったはずだ。軍政期の機密文書を公開せよ」と、マクリ現政権に訴えた。

 さらに、「大統領よ、間違ってはいけない。あなたたち政治家の言動は記録され歴史になる。拒絶者として歴史に名を残すことになるのだから」と、文書公開を拒否しないよう求めた。

 「母たちの会」のエベ会長は、「マクリ(大統領)よ、ヤンキー(トランプ米政権)と愚かな取引するのを止めよ。さもないと、そのうち尻に一発かまされるぞ(裏切られる)」と激しい言葉を吐き、ワシントンでトランプと会談したばかりのマクリを糾弾した。また、「(政府は)対話に応じよ。呼び鈴を決してならすな(軍政期のような連行は許さない)」と厳しく要求した。

 この日、マクリは1日繰り上げた「国際労働者の日」(メイデー)の、各労連による行事のうち、ペロン派保守派の「62労組」の集会に顔を出した。エベは、これをも批判、「彼らは(労組とは言っているが)働いていない」と遣り込めた。

 

2017年4月30日日曜日

 ローマ法王フランシスコがベネズエラ対話は一部野党の反対もあり失敗したと認める。同国政府は外国メディアに「意図的誤報」をせぬよう求める▼法王が「核戦争は人類と文化を破滅させ、耐え難い」とし、北朝鮮に「対話による緊張緩和」を呼び掛け

 ローマ法王フランシスコは4月29日、訪問していたカイロからローマに戻る特別機内で70人の同行記者団と懇談。ヴァティカンによる去年のベネスエラでの対話促進努力は一部野党の反対などで失敗した、と明らかにした。

 ヴァティカンのピエトロ・パロリン国務長官(元ベネスエラ駐在法王庁大使)は昨年、仲介のための条件として、選挙行程表作成、反政府派囚人釈放、国際人道支援受入れ、国会権利復活などを提案した。だが成功しなかった。

 法王は、「問題の一つは、野党が分裂し、条件に同意しなかったことだ。野党が分裂していながら、紛争が毎時激化しているのは妙なことだ」と語った。

 さらに、「ベネスエラのために出来るかぎりの努力を払うが、今後、対話を促進するには極めて具体的な条件を定めるねばならない。保障が必要だ」と強調した。

 カラカスでは29日、デルシー・ロドリゲス外相がエルネスト・ビジェーガス伝達・情報相を伴って外国メディア記者団と会見。「内外メディアは街頭行動中に出た犠牲者について意図的誤報を繰り返している」として、「可能な限り公正な報道を心がけてほしい」と呼び掛けた。

 一例として、ベネスエラの保守・右翼紙エル・ナシオナルは、ある死んだ男子大学生について「催涙ガス弾を胸に受けて死亡した」と報じていることを挙げた。ビジェーガス情報相は、「現場のビデオは、治安部隊が離れた位置から催涙ガス弾を発射していたことを示している。ガス弾は至近距離から発射されないかぎり殺人能力を持たない」と指摘した。

 国内メディアのこうした報道を外国メディアのカラカス通信員が国外に発信するため、虚偽が国際社会に蔓延し、ベネスエラ政府がその都度、悪役として非難される事態に陥っている。両相が公正な報道を求めたのは、そのためだ。

 ビジェーガス情報相はさらに、英ロイター通信は「国家警備隊(GNB)要員が恣意的に記者を逮捕した」との説明付きで写真を流したが、後で「そのGNB要員は記者を助けていたことがわかった」と訂正した、という事実を明らかにした。また、破壊活動を続ける野党側覆面別働隊がロイター通信写真記者に、「自分たちを撮影しないでほしい」と言った事実も公表した。

 保守・右翼野党連合MUDは29日、5月1日に国家選挙理事会(CNE、中央選管)にデモをかけ、選挙実施日程公表を求め、同じく最高裁判所には判事総入れ替えを要求する、と発表した。当日は「国際労働者の日」(メイデー)であり、政府は支持派労働者の大動員を計画している。

 一方、商業会議所連盟は28日、ベネスエラの民間企業は2002年に83万社あったのが、今では25万社しかない、と明らかにした。ベネスエラ原油国際価格は28日、1b=42・46米ドルだった。

▼法王発言  ◎北朝鮮とトランプ米大統領来訪に触れる

 法王フランシスコは4月29日、ローマに向かう機内で「核戦争勃発の可能性」を記者団に訊かれて、「北朝鮮は自らの核開発をめぐって起きた緊張の緩和のため交渉すべきだ。彼らに外交での解決を促してきたが、今後も促す。ノルウェーをはじめ諸国が仲介意志を示している」と答えた。

 さらに、「米国は、壊滅的結果を招きかねない脅威に対処しようと圧力を強めているが、そのさなかに北朝鮮はミサイルを発射した。失敗したが、北朝鮮の状況は極めて熱くなっている」と指摘。「核戦争は人類と文化の大部分を破滅させる。人類は耐えられない」と警鐘を鳴らした。

 法王は、D・トランプ米大統領のヴァティカン訪問について訊かれ、「来訪について公式な連絡は受けていないが、謁見を求められれば対応する。これまで各国の政府首班と会ってきたように」と述べた。

2017年4月29日土曜日

 ベネズエラが米州諸国機構(OEA)脱退を正式に通告。反政府勢力の暴力行動を禁止する州が相次ぐ。政府はCELAC外相会議で対話政策発表へ▼メキシコ学生事件から27ヶ月▼ブラジルでゼネスト決行

 ベネスエラの米州諸国機構(OEA)担当臨時代理大使カルメン・ベラスケスは4月28日、ワシントンのOEA本部でルイス・アルマグロ事務総長に書面で、OEA脱退を正式に通告した。脱退までには手続き上、2年かかる。その間ベネスエラは加盟国としての資格を維持するが、ニコラース・マドゥーロ大統領は、OEAと一切縁を切ると言明している。

 ベネスエラ外交の重鎮で前OEA駐在大使のロイ・チャデルトンは、「OEA諸国は自らの国内問題を覆い隠すためベネスエラに私刑を加え、内政干渉原則を裏切る過ちを犯すという自殺行為をしている。ベネスエラ断罪は米帝国主義の弱さの表れだが、OEAは米国を排除するなどの矯正策なくしては滅びるだろう」と述べた。

 反政府勢力の指導部であである保守・右翼野党連合MUDは28日も街頭行動を続け、14年2月の街頭暴力(グアリンバ)教唆罪で服役中の極右政治家らが収監さてているミランダ州内のラモ・ベルデ軍事刑務所前まで到達した。同州知事カプリーレスがMUD幹部であるため、可能だった。

 抗議行動には平和行進しない大学生若者らの別働隊が破壊活動、投石、暴力行為を続けており、取締りの治安部隊と衝突を繰り返してきた。4月初めからの街頭暴力、破壊、略奪事件で、略奪中に感電死した8人を含め、29人が死亡している。

 MUDは、内外メディアの支援を得て、「街頭暴力加害者を政府、被害者をMUD側」に仕立てる虚偽キャンペーンを展開している。バルガス州のガルシア=カルネイロ知事は28日、州内の抗議行動での覆面使用と暴力を禁止した。MUDの国会議員は直ちに、「州知事は州内での抗議行動を禁止した」と虚偽情報を発信した。

 揚げ足をとれば、この議員は、MUDの抗議行動は別働隊の覆面と暴力と一体化している、ということにを認めたことになる。エルネスト・ビジェーガス伝達・情報相は28日、全国335市で街頭暴力をビデオに撮影する「暴力目撃コンクール」を開始すると発表、スマホなどの所有者に参加を呼び掛けた。

 狙いは、MUD派の暴力のひどさを市民に認識させ、その証拠を掴むことだろう。コロンビア国境沿いのタチラ州も、暴力を伴う街頭抗議行動を禁止した。

 デルシー・ロドリゲス外相は、5月2日サンサルバドールで開かれるCELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)緊急外相会議の場で、ベネスエラの政治対話に関与するラ米・カリブ諸国集団を発表し、MUD側暴力を暴くと述べた。

 マドゥーロ大統領は28日、「OEAは右翼諸国に統御されており、反ベネスエラの異端審問所と化した」と糾弾した。

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は、「ベネスエラはゴルペ(クーデター)状況にある。マドゥーロ大統領への辞任要求は、この国の民主終焉を意味する。アルマグロ事務総長の下でOEA諸国が陰謀者となっているのは嘆かわしい。OEAは左翼大統領へのゴルペの陰謀については議論しない」とOEAを厳しく批判した。

 一方、米国務省広報官は、ベネスエラ脱退まで2年かかることを踏まえて、「OEA脱退か残留かを最終的に決めるのは次期大統領になる」と指摘した。

▼ラ米短信     ◎メヒコ学生強制失踪事件から27カ月

 ゲレロ州イグアラ市でアヨツィナパ農村教員養成学校生43人が強制失踪させられてから4月26日で27カ月経った。事件はいまだに解決していない。この悲しい記念日に父母、支援団体ら400人が首都メヒコ市目抜きレフォルマ大通りを、検察庁前からフアレス大通りのフアレス廟まで行進した。

 親たちは政府に、事件に関与した疑いの濃厚な陸軍、ウイツコ市警、地元市当局、麻薬組織などを捜査するよう要求している。検察庁は24日、この事件の強制失踪や殺害に関与した容疑で、ゲレロ州ウイツコ市を拠点とする犯罪組織「ウイツコ・ゲレロ」の首領ら2人を逮捕した。同組織とイグアラ市警との贈収賄癒着は明るみに出ている。

 一方、メヒコ経済当局は27日、同国の今年第1四半期の経済成長は2・5%だったとし、「トランプ米政権の最初の一〇〇日間、メヒコ経済は生き延びた」と述べた。

▼ラ米短信    ◎ブラジルでゼネスト実施

 ブラジル労連は4月28日、全国で24時間ゼネストを決行した。テメル政権の労働法と年金法の手直しに反対してのこと。昨年、「国会クーデター」で政権に就いたミシェル・テメル大統領は支持率10%、不支持率87%。失業率は13・7%(1420万人)。 
 
 

2017年4月28日金曜日

★アサド大統領が「ベネズエラの状況はシリア内戦初期に酷似」と指摘。キューバはマドゥーロ大統領のOEA脱退決定を断固支持。トランプは「何が起きるか見守ろう」と米亜首脳会談で語る。マクリ亜国大統領は5月来日▼パラグアイとロシアが防衛協力協定結ぶ  

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は4月27日、「ボリバリアーナ革命は新たな時期を迎えた」として、女性市民に力を貸してほしいと訴えた。大統領は、反政府系メディアについて、「右翼勢力(反政府勢力)による街頭暴力、破壊活動を全く伝えず、真実を覆い隠している」と厳しく批判した。

 カラカスに本社を置くラ米多国籍メディア「テレスール」は同日ダマスカスでシリアのバシャール・アル-アサド大統領とインタビューした。アサド大統領は、「現在のベネスエラの状況は、シリア内戦初期とそっくりだ。政府打倒を狙って<平和行動>を展開し、そこに殺傷暴力を絡ませ、その責任を政府に転嫁する手法が使われている」と指摘した。その上で、「ベネスエラ市民は真相を認識せねばならない。反政府と反祖国は全く別ものだ」と強調した。

 クーバ外務省は声明を発表、「ベネスエラとマドゥーロ大統領のOEA(米州諸国機構)脱退という勇気ある決定を断固支持する」と表明した。クーバは1962年1月、ケネディ米政権の主唱でOEAを追放されて以来、復帰していない。

 声明はまた、「OEAは、西半球を支配する帝国主義の道具という伝統的役割を演じ、<我らのアメリカ>(ラ米・カリブ)の主権・独立・尊厳を傷つけている」と指摘。「今はベネスエラ政権打倒を目指しており、さらなる糾弾に値する」と糾弾した。

 政府の物資供給組織CLAPのフレディ・ベルナル代表は、「右翼勢力は権力奪取のためには国全体を炎上させるのも辞さないようだ」と非難した。ベルナルはまた、大統領命令により、全国3万CLAPに「コムニカドール(通報者)」を起き、その全国網をラレク・エルアイサミ執権副大統領の指揮下に置く、と明らかにした。

 ベルナルによると、★各CLAPには「民兵防衛隊」(UDM)を置き、それぞれの地域の防衛に当たる。これは、反政府勢力による政治活動と破壊活動が激化し、「内戦」状況に陥った場合に備えた対策と考えられる。

 デルシー・ロドリゲス外相は、OEAで反ベネスエラの根回し役として目立ったメヒコとアルヘンティーナを批判。「メヒコはトランプのTLCAN(NAFTA)脱退取りやめと引き換えに、米国から金をもらってベネスエラ包囲網づくりに努めたのか」と指弾した。

 一方、D・トランプ米大統領は27日、大統領政庁(ホワイトハウス)でマウリシオ・マクリ亜国大統領と会談。その冒頭で、「ベネスエラは混乱している、ひどい状態だ。ベネスエラ情勢はとても悲しい。何が起きるか、見守ろう」と述べた。

 マクリは会談の後、「ベネスエラに民主政権を復活させねばならない」と、新たな内政干渉発言をして憚らなかった。マクリはまた、2週間内に中日両国を訪問し、6月にはアンゲラ・メルケル独首相を亜国に迎える、と明らかにした。

 米共和党右翼で反カストロ派クーバ系のマルコ・ルビオ上院議員は、米タイム週刊誌上で、「マクリはベネスエラ問題で米国の強力な仲間になりうる。マクリ政権は他の諸国と共にマドゥーロ政権糾弾で米政府と協働した」と述べた。ルビオは、ラ米政策でトランプの<指南役>を務めている。

▼ラ米短信   ◎パラグアイとロシアが防衛協定調印

 パラグアイとロシアは4月28日モスクワで、防衛協力協定に調印した。詳細は不明。


2017年4月27日木曜日

★★★ベネズエラが米州諸国機構(OEA・OAS)脱退を決定、事態は重大な局面へ。OEAは5月外相会議開催へ。CELACは5月2日エル・サルバドールで緊急外相会議を予定。トランプ米大統領は27日、反ベネズエラの急先鋒アルゼンチンのマクリ大統領と会談へ

 ベネスエラ政府が4月26日、ついに米州諸国機構(OEA、英語でOAS)脱退に踏み切った。OEA大使会合が同日、ベネスエラの意向に反して、ベネスエラ情勢を話し合う特別外相会議を5月半ば以降、開催することを決めたためである。ベネスエラ情勢は、重大な局面に入った。

 ニコラース・マドゥーロ大統領はOEA決定を受けて、「私は帝国による内政干渉と決別するため巨大な一歩を踏みこんだ」と述べ、脱退決定を発表。これを受けてデルシー・ロドリゲス外相は大統領政庁で、「27日に脱退手続きを開始する。脱退には2年はかかる」と表明した。また規約により、加盟国割り当金870万ドルを支払わなければならない。

 OEA(加盟34カ国)は、外相会議招集賛成19、反対10、棄権4、不参加1で、招集を決めた。反ベネスエラの急先鋒アルヘンティーナからはスサーナ・マルコーラ外相が大使に代わって発言、「他国の人民や政府に干渉するのは許されないが、制度の民主化を促すのは内政干渉ではない。(ベネスエラでの暴動事件の)死者が制度と指導者の失敗を象徴している」と述べ、外相会議招集への賛成を促した。

 これに対し、ベネスエラのサムエル・モンカーダ大使は、「OEA史上もっとも暗い日だ。主権国家に決定を押し付けている。破壊活動はこのOEAの場から始まっている」と反撃した。

 デルシー外相は、脱退手続き開始を告げた後、OEAの敵対行動を非難、「OEAは米政府主導で内政干渉同盟を結成した。歴史は、北米合州国の国益に貢献しようと跪く従僕たちを厳しく糾弾することになろう」と批判。「脱退決定は成り行き的なものではなく、ボリーバル主義の内政干渉不可原則に則り為された」と説明した。

 外相はまた、ベネスエラの要請により、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC、33カ国加盟)は5月2日、輪番制議長国エル・サルバドールの首都サンサルバドールで緊急外相会議を開く、と明らかにした。

 保守・右翼野党連合(MUD)は26日も首都カラカスなどで街頭行動を決行したが、27日も続行。28日にはMUD所属の政治家らが暴動教唆罪などで服役している刑務所まで行進し、囚人への面会を求めるという。政府のOEA脱退決定を受け、嵩にかかってて挑発する構えだ。MUDは、内外圧力の増幅で、これまでマドゥーロ政権を支持してきた軍部が離反すると計算している。

 一方、政府支持派のチャビスタ(チャベス主義者)青年団らは26日、政庁前で大集会を開き、大統領と会った。大統領は全国32国立大学の施設現代化や奨学金制度拡充のため330億ボリーバルを投下すると発表した。チャビスタも厳戒態勢と動員態勢を維持している。街頭での衝突が懸念されている。

 ドナルド・トランプ米大統領は27日、マウリシオ・マクリ亜国大統領を迎え、ベネスエラ情勢への対応を協議する。マルコーラ外相は、このためワシントン入りし、OEA会議に出席した。

 過去には1962年1月末、ケネディ米政権の主唱で、OEAはクーバを追放した。クーバは復帰要請を跳ね付けている。
    

2017年4月26日水曜日

  4月初めからのベネズエラでの反政府街頭行動の死者26人、負傷者437人。米州諸国機構(0EA)が緊急外相会議招集を協議。ベネズエラは自国の了承なく外相会議が開かれればOEA脱退辞さないと表明。併せてCELAC外相会議開催を要請▼キューバが国連で米国による「電波侵略」を告発

 ベネスエラのルイサ・オルテガ検事総長は4月25日、同月初めからの一連の反政府行動による死者が同日計26人に達したと発表した。負傷者は437人。殺傷、破壊行為、略奪などで1289人を逮捕、うち217人は出廷、65人は依然取り調べ中。他は釈放された。

 ワシントンの米州諸国機構(OEA)は25日、ベネスエラ情勢を話し合う緊急外相会議を招集するか否かを26日の大使会議で討議すると発表した。招集案は、亜URU伯PAR智秘COL巴CR・HON・GUA墨米加BAR・JAM・BAHの17カ国が提案した。

 これに対しデルシー・ロドリゲスVEN外相は、OEAがベネスエラの了承なしに外相会議を開いたら、直ちにOEAから脱退する手続きに入る、と言明した。ニコラース・マドウーロ大統領の命令という。

 外相はまた、国内右翼勢力がベネスエラの憲政民主秩序を脅かしている不安定化の策謀と、VEN独立・主権・自決への内政干渉について話し合い、糾弾するためとして、CELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)の緊急外相会議開催を、議長国エル・サルバドールに要請した。

 米州35カ国中、OEAにはクーバ以外の34カ国が加盟。CELACには米加の北米両国以外の33カ国が加盟している。玖米加以外の32カ国は双方に加盟している。

 一方、ウグベル・ロアVEN大学教育・科学技術相は25日、私立大学が勝手に休暇を制定し授業を中断したのは違法だと告発した。私大生が授業を気にせず反政府行動に参加するのを容易にするための措置であり、政府は認めがたい。

 ロア相はまた、「反政府右翼勢力は大学生ら若者を雇って暴動を起こし、国際社会に<内戦状況>を示し、外国の介入を誘導すべく策謀している」と非難した。

 反政府行動を指揮している保守・右翼野党連合MUDは26日、首都カラカス中心部のオンブズマン事務所に向けて行進する予定。政府支持派の若者は同日、大統領政庁(ミラフローレス宮)前に集結する。

 マドゥーロ大統領は25日、「国際労働者の日」(メイデー)には、労働者の生き方を変える重大決定を発表する、と明らかにした。政府系労働者は全体の56%に当たる約738万人。全国でメイデー行進に動員される。

 ベネスエラはモンテビデーオにある南部共同市場(メルコスール)本部で25日、議長国アルヘンティーナを相手に裁定を要求した。ベネスエラは昨年12月、亜伯PAR3国の主唱で、加盟資格を停止させられた。

▼ラ米短信    ◎クーバが国連で米国による「電波侵略」を告発

 米国はクーバに向けてラジオ、テレビによる宣伝放送=電波侵略を続けている。クーバは4月25日、国連情報委員会で告発した。玖側集計で、昨年、米領内から毎週25周波・計1000時間の電波侵略があった。

 ベネズエラ反政府勢力指導者がマドゥーロ政権打倒まで街頭行動続行と表明。チャベス像も倒される。政権党幹部は、反政府勢力は「街頭謀略」などCIA教本通りに行動していると暴露▼チリのエル・メルクリオ紙社主が死去

 ベネスエラでは4月24日も反政府勢力による抗議行動および、その別働隊の破壊活動と、対抗する治安部隊および支援勢力の衝突で死傷者が出た。破壊や略奪事件も起きた。

 保守・右翼野党連合MUD所属のホルヘ・ボルヘス国会議長は、26日にチャベス派の牙城である首都リベルタドール区への行進予定を発表、★「帰らざる行進だ。選挙実施まで、民主国家樹立まで続く」と述べ、平和行進と破壊活動を含む一連の街頭行動をマドゥーロ政権打倒まで続けるつもりであることを明らかにした。

 これに対し、政権党PSUV副党首ディオスダード・カベージョ国会議員は24日記者会見し、5月1日の「国際労働者の日」に政府支持派が首都カラカスで一大動員をかけると発表。★「右翼勢力はCIAの合法政権打倒教本に沿って反政府活動をしている」と指摘。「独裁から民主へ」、「テロリズムと都市ゲリラ教本」、「新しい都市蜂起:街頭謀略」の3教本を挙げた。

 24日も非公式集計で7人が極右暴徒の狙撃などにより死亡した。死者は30人に届こうとしている。カラカス警察署長も脚を撃たれ、病院で手当てを受けた。

  カラボボ州ディエゴイバーラ市では故ウーゴ・チャベス前大統領の立像が放火され、倒された。

 スペイン保守・右翼政界の旗頭マリアーノ・ラホーイ首相は24日ブラジリアでミシェル・テメル伯大統領と会談、ベネスエラ情勢を取り上げて、選挙を早く実施すべきだと述べた。これに対しデルシー・ロドリゲスVEN外相は25日、内政干渉として撥ねつけ、「スペイン政権党(PP)内部の汚職から目をそらせるために我が国を利用している」と非難した。

 同外相は、3月末に脱出しコロンビアに逃げ込んだ国軍尉官3人の身柄引き渡しを求めていたところ、コロンビア政府から「政治亡命を認める」との回答があったと明らかにした。3人は先ごろ、ベネスエラ国軍に反政府蜂起を呼び掛けるビデオメッセージを電脳機器で流した。

 政権党PSUV幹部は24日、ルイサ・オルテガ検事総長が、MUDによる反政府行動のさなかに破壊活動や殺傷事件が続発しているのを非難していないと指摘、同検事総長を非難した。政府・政権党の高官間のこの種の批判は珍しい。

 一方、国際通貨基金(IMF)は24日マナグアでニカラグア経済状況を調査、ベネスエラによるニカラグアへの資金援助が過去2年間、大幅に減少していると明らかにした。

▼ラ米短信   ◎チレ軍政を支持した新聞社主が死去

 チリでエル・メルクリオ、ラ・セグンダ、ラス・ウルティマス・ノティシアスの保守・右翼系3紙を発行していた新聞社主アグスティン・エドゥワーズ(89)が4月24日、老衰で死去した。

 70年代初め、アジェンデ社会主義政権に反対、アウグスト・ピノチェー将軍らによる軍事クー^デターを煽った。米国に留学、親米で、米大使館やCIAと通じていた。 

2017年4月24日月曜日

 マドゥーロ・ベネズエラ大統領が反政府野党連合に対話を呼び掛け、選挙実施の意思示す▼アルゼンチンでは軍政期に行方不明となった「赤子」を発見、122人目

 ベネスエラは4月23日、比較的平穏な日曜日を迎えた。ニコラース・マドゥーロ大統領はテレビの日曜定例番組で、「我々は対話の用意がある。右翼の暴力と、極右のゴルペ主義(クーデターの策謀)を止めさせるため」と述べ、保守・右翼野党連合MUDに対話を呼び掛けた。MUDは24日、首都カラカスをはじめ全国の主要道路で「立ち番(監視活動)」を展開する予定。

 大統領はまた、「我々は内戦に向かってはいない。人民革命という歴史的で新しい解放過程を進んでいる。革命の下での平和を目指している。ベネスエラに平和なくして、ラ米に平和はない」と強調した。

 マドゥーロは、「労農・先住民で構成する人民制憲議会を通じて共和国を再建するため、選挙による平和裡の人民制憲過程を推進する。私は政府首班、国家元首として、選挙を実施したい」と語り、州知事・州会議員選挙を実施する意志を示した。

 さらに、「破壊活動に駆り立てている野党議員らを、エル・バージェ地区での略奪や母子病院襲撃の責任者として司法に委ねたい」と述べた。また「ミランダ州と首都カラカスで暴徒に破壊され略奪された50軒の店舗・商店に計180万ドルの救済資金を渡した」と明らかにした。暴徒の多くは、破壊活動を働くMUDの別働隊。

 大統領は、ローマ法王による対話の仲介を希望。JLRサパテーロ前スペイン首相ら南米諸国連合(ウナスール)の仲介使節団3人の来訪を要請した。

 政府の貧困大衆向け住宅政策に触れて、既に160万戸を建設したが、年末には200万戸に到達したい、と述べた。

 政府支持派は23日、エル・バージェ地区など、暴徒による破壊活動がひどかった地区で掃除、バリケード撤去、瓦礫除去、植樹などの活動を繰り広げた。

 ネストル・レベロール内相は、19日に反政府側がビルの上層部から意図的に落とした瓶で頭部を割られた47歳の女性が23日死亡した、と発表した。非公式集計では、4月初めからのMUDによる反政府街頭行動関係の死者は21~22人に達した。

 コロンビア極右勢力の旗頭、アルバロ・ウリーベ前大統領は、「マドゥーロを排除すべき時だ」と表明した。リカルド・ルーナ秘外相は、法王庁とラ米有志諸国がベネスエラ対話の仲介者となるべきだ、と提案した。

 一方、国際通貨基金(IMF)はベネスエラの経済指標に触れ、今年のインフレを2068%と予測。経済は昨年18%縮小したが、今年7・4%、来年4・1%、それぞれ縮小すると展望した。失業率は昨年21%だった。

▼ラ米短信    ◎亜国で軍政に奪われた「赤子」を発見

 アルヘンティーナ軍政期に息子・娘を殺害され孫を奪われた祖母たちの「五月広場の祖母たちの会」は4月23日、「孫を見つけた。これで122人め」と発表した。目下、法的手続き中。まだ400人前後の「元赤子」が見つかっていない。

 1977年にブエノスアイレス市内で軍政に拉致され殺害された男女の娘で、現在39歳。殺された両親は、ペロン派極左地下結社「モントネロス」の要員だった。母親は赤子を産むとすぐに引き離され、抹殺された。

2017年4月23日日曜日

 ベネズエラ政府が外国メディアに「虚偽報道」止めるよう要請。野党連合MUDは久々に別働隊加えず平和行進▼パナマ運河を米原潜が通航▼ニカラグアで運河建設反対派が規制さる▼キューバが37年ぶりにモロッコと復交

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は4月22日、「ベネスエラは平和のために行動している。ヴァティカンと国際社会と対話しつつ、テロリズムに訴えている犯罪組織を取締まっている」と述べた。

 また、「帝国主義に支援された国内右翼勢力による不安定化の企みを引き続き打ち破ってゆく。ファシズムと不寛容は革命と祖国愛のベネスエラでは立ち行かない」と強調した。

 エルネスト・ビジェーガス伝達・情報相とデルシー・ロドリゲス外相は、カラカスで外国メディア通信員を集めて記者会見し、メディアによる意図的誤報、虚偽報道などを厳しく批判、「伝達の専門職として責任を持ち、倫理的で公平な報道を心がけてほしい」と訴えた。

 ビジェーガスは、虚偽報道の一例として、カラカス市リベルタドール区エル・バージェの母子病院が野党勢力に雇われた暴徒に襲撃された際、あたかも治安当局に責任があるかのように報じたメディアがあった事実を指摘した。

 同区のホルヘ・ロドリゲス区長(外相の実兄)は、暴動・略奪の被害が大きかったエル・バージェ地区で貧しい住民9800家庭に食糧品を配布した。政府支持派は、23日、一帯で破壊の跡を清掃したり、街路樹の苗木を植えたりしている。

 ネストル・レベロール内相は、タチラ州サンクリストーバル市で若い女性が19日射殺された事件の容疑者の男を逮捕、取り調べ中と明らかにした。内相は、容疑者は保守・右翼野党連合(MUD)右翼のマリーア・マチャード元国会議員の政治組織「ベンテ・ベネスエラ」に所属していると明かした。

 コロンビア政府との和平実施過程にあるゲリラ組織FARC(コロンビア革命軍)の最高司令ティモチェンコ(ロドリーゴ・ロンドーニョ)は22日、「ベネスエラが誹謗中傷されているいま、黙ってはいられない」として、「ボリバリアーナ革命政権を支持する」と表明した。

 同司令は、「コロンビアのメディアは、ベネスエラにあるチャベスへの情熱や、マドゥーロ大統領支持派の存在などに触れず、一方的にベネスエラを暴力や殺人だけの社会のように報じているが、ベネスエラは新自由主義政策に代わりうる政経両面の政策を実施している、民主と寛容のある美しい国だ」と強調した。

 さらに、「米国は世界各地で原油を奪うため、ありえないようなことも含め何でもやる」と、米国を非難した。

 一方、MUDは22日、予定通り、カラカス市内をカトリック司教会議本部まで「沈黙の行進」を実行した。平和裏に行進したが、このことは、MUDが破壊活動やテロリスムを働く別働隊を介入させなければ、平和裡の抗議活動が可能なことを示した。

 ブラジルのミシェル・テメル大統領は、メディアに、ベネスエラは選挙を早期実施すべきだと語った。昨年、不当な弾劾でヂウマ・ルセーフ大統領の合憲政府を倒し、政権に就いたテメルであり、発言に重みはない。顰蹙さえ買っている。

 モロッコ政府もベネスエラを非難したが、ベネスエラ外務省は21日、「国連の植民地解体委員会で議題になっている西サハラ不法占領国(モロッコ)の振舞いはいただけない」と一蹴した。

 デルシー外相は21日、1年交代・輪番制の南米諸国連合(ウナスール)議長の座を、アルヘンティーナに渡した。

▼ラ米短信   ◎米原潜がパナマ運河通過し太平洋に展開

 米海軍の原潜1隻が17日パナマ運河をカリブ海から太平洋に向けて通航したことが確認されていたが、パナマ運河庁(ACP)は22日、通航したのはUSダラス(SSN-700)だと明らかにした。朝鮮半島に近い海域に向かうと見られている。

▼ラ米短信   ◎ニカラグア運河建設反対行動が規制さる

 建設中の「ニカラグア大運河」に反対する農民や住民らは4月22日、「地球の日」に合わせて、中部のフイハルパ市で反対行進を展開することにしていたが、警察に阻止され、参加者は市内に入れなかった。

 カリブ沿岸地方の先住民らの「土地・湖水・主権防衛会議」の面々や、首都マナグアからの「サンディニスタ刷新運動」(MRS)、「民主拡大戦線」(FAD)など野党の党員が阻止された。

 政府側は同市でこの日、運河建設に賛成する政府支持派を集め、「緑の行進」を実施した。

▼ラ米短信   ◎クーバがモロッコと国交再開

 クーバとモロッコは4月21日、国連本部で国交再開文書を交わした。クーバは、西サハラで1976年に独立を宣言した「サハラウイ・アラブ民主共和国」(RASD)を80年承認、西サハラを不法占領中のモロッコは断交した。

 モロッコのムハマド6世は今月初め、秘かにクーバの保養地を訪れていた。モロッコは今年1月末、西サハラ問題をめぐり脱退していたアフリカ連合(AU)に復帰した。今回の復交で、モロッコに対するクーバとベネスエラの立場の違いが鮮明になった。

 一方、ブルーノ・ロドリゲス外相は17~22日、スペイン、ポルトガル、ギリシャ3国を歴訪した。近い将来、スペインの国王と首相が訪玖する予定。 

2017年4月21日金曜日

 ベネズエラで暴力・略奪続き、暴徒ら12人死亡、6人重傷。暴徒は母子病院も襲い、当局が赤子54人を救出。反政府勢力は街頭行動続行へ。国連総長は対話を呼び掛け▼米退役軍人らがトランプ大統領にキューバとの関係拡大を要請

 ベネズエラでは4月20日も反政府勢力による行進、集会があり、首都カラカスでは同勢力の別働隊が首都西部のエル・バージェ地区などで夜から21日未明にかけて暴動、略奪に出た。一連の事件で計12人が死亡、6人が重傷。

 ボリバリアーナ国家警備隊(GNB)が出動し、催涙ガスなどで鎮圧したが、暴動時に若者1人が銃弾を受けて死亡。それを発射したのがいかなる勢力か判明していない。首都の地下鉄駅では車両の硬質ガラスが数多く破壊された。

 エル・バージェ地区ではパン屋が暴徒に略奪されたが、その際、暴徒9人が感電死した。さらに略奪を防ごうとした商店主1人が暴徒に射殺された。他の1人も死亡したが、状況は不明。

 デルシー・ロドリゲス外相は20日、カラカス市内にある母子病院を暴徒が襲撃、生後間もない赤子54人を当局が救出した、と明らかにした。

 ニコラース・マドゥーロ大統領はこの日、無料保健事業「バリオ・アデントロ」の行事で演説、過去14年間にベネスエラ人176万人が命を救われた、と述べた。同事業の一環として、全国各地で病院建設などが進んでいることにも触れた。

 大統領は19日の反政府勢力との攻防戦について、「国際社会に祖国防衛の巨大な教訓を与えた。勇敢な人民に感謝する。革命的人民は国中の道路を受け尽くし、祖国を守った」と、大量動員に応じた政府支持派を讃えた。

 マドゥーロは、反政府勢力の指導部である保守・右翼野党連語MUDについて、「野党の一部が対話に応じると回答してきている」と語った。だが党名には触れなかった。
 
 大統領はまた、電話会社モビスター社を捜査するよう、当局に命じた。同社は19日、MUDのため2時間ごとに動員を呼び掛けるメンサヘ(メッセージ)を発信していた、という。

 隣国コロンビアのJMサントス大統領は20日、「ボリバリアーナ革命は失敗した。そのことを6年前にチャベス(故ウーゴ・チャベス前大統領)に伝えた」と明言した。

 マドゥーロ大統領は反発、「コロンビアは失敗国家だ。70年も内戦が続いてきた。内戦を逃れたコロンビア人がベネスエラ国内に560万人もいる。去年は10万人、ことし1~3月には3万5000人が入国した」と言い返した。

 続けて、「コロンビアは(FARCとの)和平に漕ぎつけたが、チャベスと私のお陰だ。交渉中の各当事者の発言は録音してある。公表しようか。コロンビア人が和平を蔑んでいるのだ。今も蔑み、農民、労働者、学生らの指導者が殺されている。いまはFARC幹部の殺害準備を進めているはずだ」と、厳しく非難した。

 「コロンビアでは医療と薬品はブルジョアのもので、貧者は享受できない。ベネスエラでは庶民大衆は無料で享受している」とも付け加えた。

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は20日、「帝国(米国)は反帝国主義諸国への見せしめとしてマドゥーロ政権を倒そうとしている。石油確保も狙っている」と、米政府を糾弾した。

 中国政府も21日、声明で「ベネスエラ政府が内政問題をきちんと解決し、安定化をもたらすと確信する」と表明した。

 国連のアントニオ・グテレス事務総長は20日、「政治的分極化を和らげるよう、双方が具体的に提案し、話し合うべきだ」とベネスエラ両派に呼び掛けた。これに亜伯URUPAR智秘COL・CR墨9カ国政府が賛同した。

 一方、MUDは20日、「抵抗運動犠牲者の鎮魂のため」として、首都にあるカトリック司教会議本部まで22日に「沈黙の抗議行進」を実施、24日には全国幹線道路で「立ち番(見張り)」を展開する、と発表した。

 法廷は20日、今月11日に若者1人が散弾を受けて死亡した事件で、GNB要員4人の見型を拘禁した、と発表した。またポルトゲーサ州知事は、州内で起きた19日の反政府派による破壊活動で2億6000万ボルーバルの損害が出た、と明らかにした。

▼ラ米短信  ◎米退役軍人たちがトランプ大統領に対玖関係拡大を要請
 玖共産党機関紙グランマは4月20日、米軍退役将官たちが書簡でDトランプ大統領に、クーバの地政学的・戦略的重要性に鑑み、関係を維持・拡大するよう要請した、と報じた。

 米共和党内にはクーバ系議員ら、在米・反クーバ市民らの意向に沿って対玖断交や関係凍結を主張し、これをトランプに吹き込む者がいる。退役軍人らは、米国益は対玖関係拡大にあるとの立場だ。

 
 

 

2017年4月20日木曜日

 ベネズエラ政府・反政府両勢力の大動員合戦は「天王山」の19日、死者3人、負傷者64人、逮捕者312人。反政府側は20日も動員へ。大統領は対話を呼び掛け▼エクアドル次期大統領にモレーノ氏認定▼LATINA誌がエクアドル情勢特集記事掲載

 大産油国ベネスエラの新旧支配勢力間の大動員対決は4月19日、首都カラカスをはじめ全国各地で展開され、「痛み分け」に終わった。「天王山」の闘争での「引き分け」は、権力を握る政府側の「勝利」と言える。旧支配層を代表する保守・右翼野党連合MUDは20日も大量動員による反政府行動を決行すると表明、緊張状態が続いている。

 オンブズマン事務所および警察の発表によると、19日の両派の衝突で、ミランダ州内で17歳の少年、コロンビア国境に近いサンクリストーバル市で23歳の女性が、それぞれ銃弾を受けて死亡した。ミランダ州内では国家警備隊(GNB)の軍曹1人が顔面に銃弾を受け死亡、同大佐一人が脚に銃弾を受け負傷した。首都では国家警察(PNB)要員19人が負傷、うち9人は婦警だった。負傷者は64人、逮捕者は全国で312に及んだ。

 タレク・エルアイサミ副大統領は、「ベネスエラが混沌状態にあるとの偽った印象を国際社会に広めようとしている輩がいる。右翼国会議員フレディ・ゲバラがMUDの覆面別働隊を指揮していた証拠がある」と明らかにした。また、「一連の街頭暴力事件は、フリオ・ボルヘス議員(国会議長)が促進したと確信する」と断言した。

 首都チャカオ区にある「国家適正価格管理行政本部」(SUNDDE)は暴徒に破壊され、電脳危機などが略奪された。MUD系区長の下にある同区警察は見て見ぬふりしていたと、政府側は非難、区長らを取り調べることにしている。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は、支持派の大群衆の前で演説。カラカスだけで政府支持派300万人を動員したと述べた。大統領は、右翼勢力(旧支配層)を、街頭暴力を煽って騒乱状態を起こし、それを内外メディアに報じさせ、国際社会に「弾圧・独裁」などの悪印象を拡め、米国と連携してゴルペ(クーデター)を起こそうと謀った、と糾弾した。

 大統領は、MUDがゴルペを画策する理由として、①米政府の内政干渉声明というお墨付きを得た②ベネスエラの経済復調を阻止する③国会で圧倒的多数を占めながら公約を果たせないーの3点を挙げた。

 マドゥーロはまた、「ベネスエラに必要なのは労働、生産、団結、調和、共生、平穏、愛だ」と指摘。MUDに対話を求めた。政権党PSUV(ベネスエラ統一社会党)幹部エリーアス・ハウア、首都リベルタドール区長ホルヘ・ロドリゲス、その妹で外相のデルシー・ロドリゲスを「国民和平対話」の担当者に任命。併せてジャーナリストのJV・ランヘールと教授エルマン・エスカラーに、対話顧問になるよう要請した。

 大統領はさらに、「選挙を実施したい。選挙闘争を始めよう。選挙で平和裡に勝利しよう」と支持者に呼び掛けた。16年末までに実施予定だった州知事・州会議員選挙を指している。次期大統領選挙は18年末、実施される。

 米国は内政干渉発言を続けており、レックス・ティラーソン国務長官は19日、「マドゥーロ政権は野党に耳を貸さないから我々は懸念する。ベネスエラ情勢を注視している」と述べた。これに対しデルシー外相は同日、「世界とベネスエラは、米軍によるシリアとアフガニスタンへの爆撃を深く憂慮している。米国の移民政策や制度的人種主義を懸念している」と反撃した。

 マドゥーロの「民兵隊拡大」政策に懸念を表明しているコロンビアのJMサントス大統領に対してデルシーは、「心配無用」といなした。マドゥーロも、「コロンビアはベネスエラから生まれた。我々は父であり、コロンビアの寡頭勢力は私を尊重せねばならない。両国民は兄弟だ」と述べ、サントスを揶揄した。

 諜報機関SEBINは19日、マラカイボ在住の反政府派退役陸軍少将クリベル・アルカラーの自宅を捜索した。「ゴルペの陰謀」への加担可能性が捜索理由と見られるが、軍部内のMUD同調勢力への牽制策であるのは疑いない。

 国軍の「現役佐官・尉官級将校」らの「反政府声明読み上げ場面」を映した映像が出回っているが、真偽は不明。マドゥーロ政権に忠誠を誓う国軍上層部と中堅将校を離反させたいゴルペ派の陰謀であるのは間違いない。

 チレのアジェンデ社会主義政権は1970~73年存続、国内の伝統的支配勢力、保守・右翼政党、米政府に揺さぶられ続けた結果、アウグスト・ピノチェー将軍らによる軍事ゴルペで押しつぶされた。現在のMUD・米政府・OEAの連携戦略は、44年前のチレでのアジェンデ政権打倒の陰謀を想起させる。

▼ラ米短信   ◎エクアドール選管がレニーン・モレーノ勝利を正式に認定

 赤道国で4月2日実施された大統領選挙決選の勝者は4月18日、コレア現政権の後継者レニーン・モレーノ候補と正式に確定した。モレーノは5月24日就任する。

 既に勝利は決まっていたが、敗れた保守・右翼候補ギジェルモ・ラッソが敗北を認めず、開票やり直しを要求。選管は、約120万票を集計をし直し、あらためてモレーノを次期大統領に認定した。だラッソはまだ、敗北を認めていない。

★★★◎月刊誌LATINA5月号がエクアドール特集記事掲載

 同誌連載の伊高浩昭執筆「ラ米乱反射」第133回は、「エクアドール次期大統領はレニーン・モレーノ  <市民革命>継続、南米右傾化食い止める」(6ページ特集)。現代赤道国の政情や今回の大統領選挙のもようが詳述・解説されている。 

2017年4月19日水曜日

  独立闘争開始記念日の19日、ベネズエラ全土で緊張。「クーデター阻止」主張のマドゥーロ政権と「政権打倒」狙う反政府勢力が大動員態勢。米州全体が警戒

 ベネスエラは4月19日、全土で緊張が高まる中で不気味な朝を迎えた。1810年のこの日、ベネスエラ独立派は宗主国スペインに対し独立を叫び、独立闘争を開始した。祝日だが、政府支持派と反政府派はそれぞれ、首都カラカスをはじめ全国各地で最大動員をかけ、対決する構えだ。

 ニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派政権は、「米政府主導で野党連合MUDが策謀しているゴルペ(クーデター)を潰すため」行動すると主張。フリオ・ボルヘス国会議長以下の保守・右翼野党連合MUDは、マドゥーロ政権打倒を目指して展開する。

 マドゥーロ大統領は18日、民・軍共同で治安を維持する「対ゴルペ作戦」である「サモーラ計画」を発動した。全国で陸海空軍および国家警備隊(GNB)の4軍(16万5000人)、国家警察と、予備役(2万5000人)を含む民兵隊(MNB、10万人)が出動、治安維持に当たっている。

 カラカス一帯では18日夜から主要自動車道の閉鎖と検問が始まり、早朝の首都の街は閑散としていた。当局は18日までに、ゴルぺ誘発を狙う破壊活動を準備していた武装集団の一部を逮捕した、と明らかにしている。

 ボルヘス議長は18日、国会内で声明を発表、国軍に「憲政と人民の側に立ってほしい」と要請、暗に政府との離反を求めた。国軍は17日、「政府無条件支持」を大統領に誓っている。

 MUDを支援するトランプ米政権は18日、国務省声明を通じて、マドゥーロ政権に「対話による問題解決、憲政擁護、囚人釈放、選挙早期実施」を呼び掛けた。17日のラ米11カ国政府の共同声明に沿った要求だ。

 デルシー・ロドリゲス外相は18日、同11カ国政府に対し、「粗暴な内政干渉を排撃する。反政府勢力に蛮行を保障する低俗な二重基準だ」と糾弾。「国際法に違反して内政干渉している。彼らは自分たちの国で人権を蹂躙しながらベネスエラを統治しようとしているが、馬鹿げたことだ」と反撃した。米政府に対しても同様の反応を示すはずだ。

 外相はまた、ベネスエラ攻撃を続けている米州諸国機構(OEA)について、「政権党指導部にOEA脱退論があるが、OEA内に留まって闘う」と述べた。

 OEAのルイス・アルマグロ事務総長は18日、ドミニカ共和国(RD)の首都サントドミンゴでレオネル・フェルナンス前RD大統領とベネスエラ情勢をめぐって会談した。フェルナンデスは、南米諸国連合(ウナスール)のベネスエラ対話仲介班の元首脳3人の一人。マドリードでは19日、スペインとメヒコの外相がベネスエラ情勢について会談した。

 マドゥーロ大統領は17日の民兵隊創設記念日の式典で、現在10万人の民兵を50万人に増やし、各要員に自動ライフル銃を持たせると表明した。ジュネーヴの国連人権担当高等弁務官事務所は18日、人民(民兵隊)へ武器供与(武装)は緊張と紛争を激化させると批判した。隣国コロンビアのJMサントス大統領も18日、武装民兵隊大増員計画に「深刻な懸念」を表明した。

 マドゥーロ大統領は18日、カラカスの表玄関の空港と港のあるバルガス州の海岸地帯に建設された広大な「ボリーバル広場」の開場式に出席。馬上のシモン・ボリーバル像と故ウーゴ・チャベス前大統領像の除幕式を執り行った。

 MUDは昨年来、内部分裂し支持率も下がっていた。だがマドゥーロ政権が3月末、最高裁・憲法法廷による国会機能代行を決める、事実上の国会閉鎖に踏み切ったことで、MUDを団結させてしまった。

 内外の激しい反発を受けた政権は、検事総長に国会機能代行を違憲と宣言させ、決定を元に戻した。この失態に勢いづいた反政府勢力は4月初めから6波の大動員をかけ、政府を揺さぶってきた。

 反政府勢力には街頭暴力に訴える若者たちの別働隊がいて、破壊活動を働いてきた。これに対し政府側は治安部隊による鎮圧の他、対暴力組織を出動させ、対抗している。行進する両派の大多数の市民は平和裡の行動を望んでいるが、両派の暴力装置が衝突すれば、流血の事態となる。

 反政府側には、流血が大惨事になり、国軍が分裂、ゴルペに繋がるのを期待する極右がいる。治安部隊が挑発にどこまで耐えられるかも試される。

2017年4月18日火曜日

  リマの日本大使公邸占拠事件決着から20年。公邸突入の国軍特殊部隊を「民主の英雄」にするか否か、ペルー国会で意見飛び交う▼ベネズエラ国軍がマドゥーロ政権に「無条件忠誠」誓う。19日カラカスでの両派最大動員前に緊張高まる

 リマ市の日本大使公邸が1996年12月17日、ゲリラ組織「トゥパック・アマルー革命運動」(MRTA)の14人の突撃隊(コマンド)に占拠された事件が97年4月22日に決着してから20年になろうとしている。これに先立ちペルー国会は17日、国会内で記念式典を催した。

 当時の日本大使公邸の玄関の模型が「英雄記念碑」として設(しつら)えられ、これを背景にルス・サルガード国会議長(フジモリ派「人民勢力」(FP)所属)が、「ペルーは公邸を解放し人質を救出した軍特殊部隊に負っている」と語った。「英雄記念碑」とは、この「チャビン・デ・ウアンタル作戦」に参加した140人の特殊部隊要員を指す。

 式典には、事件当時のフランシスコ・トゥデーラ外相、ルイス・ジャンピエトゥリ海軍中将、マルコ・ミヤシロ国家警察幹部(現FP国会議員)ら、人質だった人々も出席。MRTAに急襲されてから126日間続いた悪夢の日々や、政府当局と秘かに連絡を取り合って救出作戦を導いたことなどを語った。

 国会国防委員会は17日、ペルーアプリスタ党(PAP)所属のルシアーナ・レオン委員長提出の、特殊部隊140人に「民主の英雄」の称号を与え、勲章、最低賃金と同額の終身年金供与などの恩恵を施す法案を可決した。法案は本会議に送付された。この恩恵には、無料医療・薬品供与、大学教育補助、住宅購入補助もあり、死に際しては、墓石に「英雄」称号が記録される。

 だが、委員会審議や国会議員の間で、さまざまな意見が飛び交った。左翼野党「拡大戦線」(FA)のフスティニアーノ・アパーサ議員は、「特殊部隊は140人、MRTAコマンドは14人、多勢に無勢の作戦だった。軍は国防のためにあり、国家の危機を任務として遂行したまでだ」と指摘。「英雄とは、何らかの物事を思想や原則に基づいて解決したり守ったりする者を意味する。それに特殊部隊には、投降したゲリラ数人を射殺した疑いもある」と反対意見を述べた。

 また、FAのリチャード・アルセ議員は、「<輝く道>(SL)、MRTA、国家テロのいずれにも反対する。特殊部隊は<平定の英雄>と呼ぶべきだ」と対案を唱えた。

 だがFPのフアン・デルアギーラ議員は、「MRTAの行動は破壊活動であり、特殊部隊出動に値した」とし、「全会一致の必要はないが、FAは考え直すべきだ」と反論した。

 国会のロサ・バルトクラ第2副議長は、「反テロリズム作戦に貢献した軍・警察・市民組織の業績を認める法案を国会で通したい。公邸事件を解決した特殊部隊について学校教育で教えるべきだ」と訴えた。

 一方、PPクチンスキ大統領は19日、公邸事件解決20周年の記念行事を催す。また国防省は20日に式典を開く。ホルヘ・ニエト国防相は」17日、突撃時に隊員2人が殉職し、人質だった判事1人が死亡したことに触れ、「特殊部隊は大多数のペルー人民にとって英雄だ」と強調した。

▼ベネスエラ情勢   ◎国軍がマドゥーロ政権に「無条件忠誠」を誓う

 ボリバリアーナ国家民兵隊(MNB)発足7周年記念日の4月17日、その部隊が首都カラカス中心街を行進。ニコラース・マドゥーロ大統領は記念式典で演説、国軍(FANB)とMNBに謝意を表した。大統領は、MNB要員を50万人に拡大させると述べた。

 式典でウラディーミル・パドゥリーノ国防相は「国軍は平和と人民の民主を守る」として、マドゥーロ政権への無条件忠誠を誓った。また、保守・右翼野党連合MUDについて、「国外の極右勢力の支援を受けて、テロリズム、騒乱、略奪、蛮行を続けている」と糾弾した。大統領は、4月初めからの一連の街頭暴動事件で総額500億ボリーバルの損害が出た、と明らかにしている。

 MUDは17日、大統領から交渉を働きかけられた、とのマイアミ紙の報道を事実無根と否定した。野党は、終わったばかりの聖週間で、マドゥーロ人形を「フーダス」(裏切り者のユダヤ人)として燃やしたり、陸橋から吊り下げたりした。これに対し政府支持派は、米大統領、アルマグロOEA事務総長、MUD幹部らの人形を燃やした。

 両派は、ベネスエラ独立闘争開始記念日の19日、カラカスでそれぞれ最大動員をかけて行進し、集会を開く。衝突する危険性があり、緊張が高まってる。

 OEAでベネスエラ政府に厳しいアルマグロ総長を支持する亜URU伯PAR智COL秘CR・HON・GUA墨の11カ国政府は17日、ボゴタで共同声明を発表。ベネスエラ政府に「デモ行進の自由」尊重を、MUDに「責任ある行動」をとるよう訴えた。また政府側には、選挙実施日程を決めるよう求めた。

 一方、ドミニカ共和国(RD)政府は17日、ベネスエラの反政府勢力とCIAがRD国内で会合しているとのテレベン報道を受けて、「捜査する」と表明した。 
  

2017年4月17日月曜日

 ベネズエラ国軍現役士官らがCIAとドミニカ共和国で定期的に会合、クーデターを謀議と、ジャーナリストJV・ランヘールが暴露▼メキシコでジャーナリストがまた殺される

 ベネスエラの著名なジャーナリスト、ホセ=ビセンテ・ランヘールは4月16日、TVテレベンの日曜定例番組で、反政府勢力がドミニカ共和国(RD)の高級ホテルで定期的に米CIA(中央情報局)と会合している、と暴露した。ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派政権を打倒するゴルペ(クーデター)の可能性などを謀議しているという。

 この会合には、ベネスエラ側から「国軍現役士官たち、同退役将軍1人、著名な元テレビ人1人」が参加しているという。ランヘールは、故ウーゴ・チャベス前大統領の政権で外相、国防相、副大統領を務めた。マドゥーロ政権の諜報機密情報に接近できる立場にある。

 ランヘールはまた、ベネスエラの保守・右翼野党連合MUDについて、「いくら街頭動員しても、ベネスエラ人民の平和主義をくずせない」と指摘。それがため、陰謀に傾斜しているとの見方を示唆した。

 さらに、ベネスエラ教会指導部はフランシスコ法王との隔たりが増しており、憲政逸脱傾向を強めている、と批判した。ラ米などの元大統領ら20人が、ゴルペ支持派の米州諸国機構(OEA)事務総長ルイス・アルマグロと連携して、「米州民主憲章」をベネスエラに適用しようと謀っている、とも述べた。

 マドゥーロ大統領は16日、定例TV番組で、「(チャベス派)市民は右翼暴力を打ち破った」と強調した。また、タレク・エルアイサミ執権副大統領は15日、MUDの街頭での反政府行動について「ゴルペ正当化のための理由づけ」と非難した。

 政府とMUDは19日、首都カラカスで、最大動員をかけると共に表明しており、緊張が高まっている。マドゥーロ大統領は、聖週間の特別警備態勢を19日まで延長、厳戒態勢をとる。

 政府諜報機関SEBINは、7日逮捕した著名な反政府派の退役少将アンヘル・ビバス(60)を取り調べた。ビバスは軍事法廷に立たされる見通しと伝えられる。

 一方、D・トランプ米大統領とフロリダ州の別荘で14日会合したコロンビア政界極右指導者アルバロ・ウリーベ前大統領は、米議会に、マドゥーロ大統領を政権から降ろし、ベネスエラを法治国家とすべきだ、という趣旨の主張を含む書簡を送ったことを15日明らかにした。

▼ラ米短信  ◎またメヒコでジャーナリストが殺される

 メヒコ北西部の南下加州都ラパスで4月14日、電子メディア「コレクティーボ・ペリクー」の論説記者マキシミニオ・ロドリゲス(73)が白昼、商店街の駐車場で、自動小銃により銃弾15発を見舞われて即死した。

 ロドリゲスは、政治、警察、治安などの専門記者。昨年来、組織犯罪集団と見られる方面から脅迫されていた。これで今年メヒコで殺されたジャーナリストは4人となった。2000年からは104人目とされる。
 

2017年4月15日土曜日

 国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)が10月撤収開始へ。ノーベル平和賞受賞5人は、強姦など派遣団の罪状を告発▼ベネズエラ反政府勢力は19日を対政府行動の「天王山」と位置付け。ミランダ州では20店舗など破壊さる▼ベネズエラ外交の重鎮は「OEA脱退論」を牽制

 米州の最貧国アイチ(ハイチ)で評判の悪かった「国連ハイチ安定化派遣団」(MINUSTAH)が10月15日から撤退することになった。国連安保理が4月13日、全会一致で決めた。

 同派遣団は2004年6月、駐留を開始した。ジャン=ベルトラン・アリスティド大統領が米仏加3国によってアフリカに身柄を放置された政変後の混乱に対処するためだった。

 2010年初めには、首都ポルトープランス一帯が激震に見舞われて破壊され、22万5000人が死亡した。派遣団要員102人も犠牲になった。この大地震の後、ネパール兵からもたらされたコレラ菌が、貧しい人々が飲んでいた川の水などを通じて拡散し、約1万人が死亡した。国連は加盟諸国にコレラ対策資金として4億ドルを募金したが、260万ドルしか集まらなかった。

 国連は、昨年の選挙を経て2月7日、ジョヴネル・モイーズ大統領の政権が発足したのを受けて、民主制度が曲りなりにも定着したと判断、派遣団撤収を決めた。撤収後は代わって、「国連ハイチ司法任務部隊」が駐屯する。軍人980人、警官295人で、アイチの法治、国家警察育成、人権擁護を指導する。

 派遣団は最大人数の要員(計1万3000人)を派遣したブラジルが指揮してきた。約20カ国が軍人や警官を派遣してきた。派遣団は治安確保や災害救援などで活躍したが、犯罪も働き、特に強姦事件を数多く起こし、国際問題化した。

 国連に対する強姦告発は2000件、うち未成年者は300件。他に泣き寝入りした女性が少なくない。被害者の女性たちには、精神的に苦しみ続け、妊娠させられ子供を生み、HIVを移された者がかなりいる。

 国連の捜査で、スリランカ兵134人が04~07年に強姦など犯罪を犯した。バングラデシュ、パキスタン、ヨルダン、ナイジェリア、ブラジル、ウルグアイの兵士らも関与した。

 亜国のアドルフォ・ペレス=エスキベル、グアテマラのリゴベルタ・メンチューらノーベル平和賞受賞者5人は13日、アントニオ・グテレス国連事務総長宛てに公開書簡を送り、派遣団の罪状の徹底捜査を求めた。コレラ感染者を含む被害者への賠償も要求した。

 同5人は、派遣団撤収に「大賛成」。「彼らは、かつての米軍のアイチ占領軍のようなものだ。アイチ人には協力が必要であって、後見保護ではない。国連は信用を問われている」と厳しく批判している。

 この書簡には、昨年の同賞受賞者,JMサントス・コロンビア大統領は参加していない。09年の受賞者バラク・オバーマ前米大統領も加わっていない。

◎ベネスエラ情勢:反政府勢力は19日を天王山に定める

 保守・右翼野党連合MUDは独立闘争開始記念日の4月19日、首都カラカスで最大動員をかけ、市内26地点からオンブズマン事務所に向けて抗議行進を予定、「国会尊重」、「囚人釈放」、「選挙早期実施」、「人権擁護」などを訴える。

 ニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派政権に圧力をかけ、米政府や国際メディアの支援を得て、政府の譲歩を勝ち取ることや、揺さぶって政府と軍部の間に亀裂を生じさせるのを狙っている。

 ミランダ州グアイカイプーロ市ロス・テケスでは14日、店舗20軒と市の文化広報用バスが反政府破壊活動集団に襲撃され、破壊された。バスは放火され全焼した。F・ガルセース市長は、州警察は暴挙を取り締まらず放置していたと糾弾した。同州はMUD幹部のエンリケ・カプリーレス知事の権力基盤。

 マイアミの西語紙ヌエボ・エラルド紙は14日、マドゥーロ大統領は最近、今年末の州知事・州会議員選挙実施と引き換えに反政府言動を抑制するようMUD穏健派に持ちかけた、と報じた。大統領は、来年末の大統領選挙まで20カ月間の「平和共存」についても話し合った、という。情報源は匿名。記事の真偽は不明。

 一方、デルシー・ロドリゲス外相は14日、故ネルソン・マンデーラ元南ア大統領の孫、マンドゥラ・マンデーラからマドゥーロ大統領宛てに連帯のビデオメンサヘ(メッセージ) をもらったとして、謝意を表明した。

 ベネスエラ外交界の重鎮、ロイ・チャデルトン前OEA(米州諸国機構)大使は13日、国営テレビVTVで、「ベネスエラはOEA無しでも生きられる。クーバがそうしてきたように。だが私はOEAに留まり、内側から闘い続けるのが望ましいとの立場だ」と述べた。これは政府部内にある「OEA脱退論」を牽制したもの。

 チャデルトンはまた、「米軍のシリア爆撃はベネスエラへの警告でもあろう。米支配層はベネスエラの石油に関心を持っている。我々は注意深く慎重に事を運ぶべきだ」と指摘した。

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は13日、「ベネスエラでの暴動事件の責任者はルイス・アルマグロ(OEA事務総長)だ」と非難した。そのアルマグロは同日マイアミで、「OEAは加盟国の民主問題では中立であるわけにはいかない」と述べた。

  ドナルド・トランプ米大統領は14日、フロリダ州の別荘で、コロンビアのアルバロ・ウリーベ前大統領およびアンデレス・パストゥラーナ元大統領と、ベネスエラ問題をめぐって話し合った。