2017年5月30日火曜日

 名画「ローマ法王になる日まで」が6月3日東京で公開。3万2000人が殺されたアルゼンチン軍政期の凄惨な人道犯罪と、ホルヘ・ベルゴリオ司教(後の法王フランシスコ)の人間的素晴らしさが描かれている。ラ米学徒には見逃せない作品

 イタリア映画「ローマ法王になる日まで」(2015年ダニエーレ・ルケッティ監督作品、ロドリーゴ・デラセルナ主演、113分)を観た。6月3日から、ヒューマントラストシネマ有楽町と新宿シネマカリテで公開される。

 現代アルゼンチン(亜国、アルヘンティーナ)最悪の時代だった軍政期(1976~1983)の人道犯罪の実態を、この映画で垣間見、想像することができる。また、現在の法王フランシスコがなぜ法王にふさわしい人物だったかが、この映画で明確に示される。

 亜国、南米、ラ米、米州、カトリック教会、ヴァティカンに関心を持つ人にとり、また映画を愛する人々にとって必見の名画だ。壮年期のホルヘ・ベルゴリオ(後の法王)役のロドリーゴ・デラセルナは、革命家エルネスト・チェ・ゲバラが学生時代に第1回南米旅行に出た折、行動を共にした6歳年上の親友アルベルト・グラナードを演じている。この点からも興味深い。

 この映画は、書籍『教皇フランシスコ キリストとともに燃えて』(オースティン・アイヴァリー著、宮崎修二訳、2016年、明石書店)の内容に沿っているように見受けられる。この本を読んでおけば、理解ははるかに深くなるだろう。

 1492年10月12日、クリストーバル・コロン(コロンブス)は西大西洋中央部のバハマ諸島サンサルバドール島に漂着した。これがスペインによる新世界到達なのだが、その日はローマカトリックが新世界(ラス・アメリカス)に強引に植え付けられた最初の日でもある。先住民族は改宗を拒否すれば、その場で殺されかねなかった。
 
 以来5世紀余り、法王庁(教皇庁=ヴァティカン)の2013年の統計では、全世界のカトリック教徒は12億5400万人(世界人口の17・7%)。その49%は、米州(南北両米大陸およびカリブ海)が占める。そして米州ではラ米(ラテンアメリカ)が圧倒的に多い。

 欧州は米州に次ぐ22・9%だが、ごくわずかな例外を除き、欧州人の法王が十数世紀も君臨していた。だが法王を選び、かつ法王に選ばれる資格を持つ枢機卿たちの中には、米州、特にラ米から法王を選ぶのが民主的と考える者がいて、その声は年々高まっていた。

 司祭による未成年者への性的虐待事件が世界各地で続発、カトリック教会全体が猛省を促されて久しいが、そうした信仰の危機や、米国生まれの新教系宗派の台頭・浸透で、カトリック教会は危機感を抱いてきた。

 そのような状況の下、<救世主>として2013年3月抜擢された亜国人イエズス会士J・ベルゴリオ枢機卿が法王フランシスコである。現在80歳だ。もちろんアメリカ人=米州人として初の法王である。

 アイヴァリーの本を読めば、あるいは、この映画を観れば、なぜベルゴリオがカトリック世界の最高指導者に選ばれたかが理解できる。言わば<最後の切り札>だったのだ。だがベルゴリオは、カトリック教会の頂点に立つまでに、さまざまな試練を乗り越えなければならなかった。その最大の難関は、1976年3月に始まり、血塗られた軍政期だった。

 ベルゴリオは司祭の立場を生かし、放置すれば殺されかねない人々を匿い、国外に逃がした。悲観も楽観もせず、前方にひたすら向かうベルゴリオは、「神の深遠な理想」を抱きながら、極めて現実的、実践的に自身の人生を操っていた。

 軍政最高幹部に通じる人脈を持つかと思えば、文豪ホルヘ=ルイス・ボルヘス(1899~1986)とも知己だった。法王になるや、ギリシャ正教、ロシア正教、英国教会、イスラム教、ユダヤ教など異なる宗派・宗教の最高指導者に歩み寄り、相互理解と友好の橋を架けた。偏見を持たずに相手を理解しようと努める法王の真摯な姿勢が、相手の心を開くのだ。

 地中海で難渋する難民の救済活動にも見られるように、法王は生の国際情勢にも積極的に関与している。資本主義の総本山・米国と、社会主義クーバとの間で半世紀余り展開されていた米州の頑迷な冷戦に終止符を打つべく関係正常化のための秘密交渉を側面援助した。その甲斐あって、米玖両国は2014年12月17日、国交正常化合意に至り、15年7月国交は再開した。

 また、南米に残る最後の冷戦構造であるコロンビア内戦を終わらせるため、同国政府とゲリラ組織FARC(コロンビア革命軍)がハバナで続けていた和平交渉を支援した。双方は16年11月和平過程に入り、17年5月現在、FARCゲリラは武装解除に応じている。7月末には全員の武装解除が終わる見通しだ。

 世界最大のカトリック教国ブラジルでは16年8月末、労働者党の合憲政権が腐敗した保守・右翼勢力によって、正当な理由なく国会で弾劾された。まさに「国会クーデター」だった。弾劾賛成派の議員たちは「神のために」と叫んで投票、「神」を大安売りした。この政変に心を痛めた法王は、ブラジルに向けて「祈りと対話をもって和合と平和の道を進んでほしい」と呼び掛けた。

 今ラ米を揺さぶっているのは、大産油国ベネスエラの左翼革新政権を倒そうとする国内保守・右翼層と、これを支援する米政府が、政変誘発を狙って激しい破壊活動を仕掛けていることだ。法王はベネスエラ政府と反政府勢力の双方に向けて対話を訴えたが、政府打倒を目指す反政府側は聴く耳を持たない。自身の影響力の限界を知る法王は謙虚である。

 国際社会の最重要当事者の一人であり、世界平和構築に意識的に取り組んでいる法王フランシスコの思想と人間性を、この映画によって知ることになれば、国際情勢を読み解く上で欠かせない新しい視座が開けるだろう。

 多くの人々に観てほしい名画である。 

2017年5月29日月曜日

 31日の米州諸国機構(OEA)外相会議を前に反ベネズエラの世論形成キャンペーンが米州で展開されている。保守派知識人らも加担。▼メキシコ学生強制失踪事件から28ヶ月経過

 米政府の影響下にある米州諸国機構(OEA、英語でOAS、本部ワシントン、34カ国加盟、うちベネスエラは離脱通告済み)が5月31日、特別外相会議を開いてベネスエラ情勢を話し合うのを前に、米州で激しい外交戦が展開されている。

 米政府の意向に忠実なルイス・アルマグロOEA事務総長は、24カ国の賛成を得て「米州民主憲章」をベネスエラに適用し、同国を孤立させたうえで、米国や反ベネスエラ路線のラ米諸国によるベネスエラ介入に持ち込む戦術を練っている。

 これに対しベネスエラを支持するニカラグア、ボリビアなど左翼・進歩主義陣営とベネスエラは、保守・右翼系や米国に脅されているカリブ諸国などが計24カ国に至らないよう動いている。11カ国が賛成しなければ、賛成は多くても23カ国止まりになる。

 米国に従うオンドゥーラス(ホンジュラス)のフアン・エルナンデス大統領は5月25日、同国の在ベリーズ大使館を通じ、「ベネスエラ危機解決には、もっと多くの血が流れることが決定的に重要だ。(これを受けて)同国人民を人道支援し、同国に民主を回復させる」と読みとれる文書をベリーズ外交界に配布した。外国の介入の可能性を示唆する文書だ。

 デルシー・ロドリゲスVEN外相は27日、同文書を暴いて糾弾、オンドゥーラス政府に強く抗議。併せて、アルマグロ(OEA総長)が促進するベネスエラ反政府勢力の暴力計画を非難した。

 ペルー人作家マリオ・バルガス=ジョサ、メヒコ人歴史家エンリケ・クラウセ、コスタ・リカ元大統領オスカル・アリアスらラ米の保守・右翼系知識人・政治家らは27日、連名でマドゥーロ政権を批判した。これも米政府のゴルペ(クーデター)教本に「反ベネスエラ世論作り」として盛り込まれている。

 エルネスト・ビジェーガス情報相は、反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUDを、「外国勢力の介入を誘導する筋書きを実行している」と指摘。「虚偽報道で、暴力死の責任を政府側になすりつけている」と、MUDを厳しく批判した。

 米国務省のアンデス諸国担当次官補代理マイケル・フィッツパトゥリックは27日、エクアドールのアンデス通信に、「政権議会(ANC)開設はベネスエラ危機解決に役立たず、むしろ悪化させる」と述べるなど、反ベネスエラ運動を展開した。

 ANC開担当のエリーアス・ハウア教育相は、「チャベス派政権は、歴史的に疎外されていた多数派人民大衆の社会・政治・文化の権利を拡大した。それを可能にした我々の権力を防衛しよう」と呼び掛けた。ANC議員選挙のうち職能別選挙区に出馬する候補を決める会合で27日語った。

 ララ州都バルキシメトでは27日、国家警備隊(GNB)のダニー・スベロ中尉(34)が反政府勢力による私刑で撲殺された。中尉のオートバイは燃やされ、路上に放置された。

▼ラ米短信    ◎学生43人事件発生から2年8カ月過ぎる

 メヒコ・ゲレロ州イグアラ市一帯で州内のアヨツィナパ農村教員養成学校生43人が強制失踪させられた事件から5月26日で32カ月が経過した。真相はほとんど解明されていない。

 学生の家族や支援者はこの日、メヒコ市のレフォルマ大通りを抗議行進、検察庁前で集会を開き、真相解明を訴えた。事件の鍵を握る麻薬組織「ゲレロ・ウニード」の元首領が、連絡を取り合っていた市警・州警・国警の警察官氏名・電話を記した(元首領の)手帳の存在を隠していた検察庁職員の捜査を実施するよう、家族らは要求した。

 支援団体は、事件発生3周年となる9月15~26日、大規模な事件究明行事を実施する計画だ。
 
 

2017年5月27日土曜日

 米上院議員らがキューバへの輸出と米国人の渡航の自由化求める法案を議会に提出。トランプ政権の対玖政策試す狙いも▼ベネズエラ・タチラ州は、首都攻略への拠点づくり目指す反政府勢力の騒擾活動を制圧と発表

 米両党上院議員55人の賛同により5月26日、対玖輸出自由化や米国人の渡玖自由化を求める「2017年対玖輸出自由化法」案が上院に提出された。パトリック・リーヒー民主、マイク・エンジ共和の両上議らを中心に法案はまとめられた。

 賛同した議員らは、「トランプ政権がオバーマ前政権が始めた対玖歩み寄り政策を維持継続するか否かの試金石になる法案」と指摘する。「過去の玖孤立化政策が成功しなかったため」、この法案提出のような手段が必要と表明している。

 ハバナではラウール・カストロ国家評議会議長が26日、西サハラ独立を目指すサハラウイ・アラブ民主共和国(RASD)のブラヒム・ガリ大統領と会談した。クーバは一貫して、サハラウイの独立運動を支援してきた。ガリは24日のエクアドール大統領就任式に出席した。

 ラパスでは26日、エボ・モラレス大統領がミゲル・ディアスカネル玖第1副議長と会談、ラ米での右翼勢力台頭を前に連帯強化で一致した。両首脳は伯亜赤VENなどで右翼の攻撃が激化している事態に触れ、特にベネスエラについて「その将来はベネスエラ人民が決めることであり、諸外国は内政に干渉してはならない」と警告した。この2人も赤道国大統領就任式に出席した。

 クーバのサンクティ・エスピリトゥ市で25~28日「日玖文化週間」が開かれており、両国関係者が行事に参加している。

◎ベネスエラ情勢

 コロンビア国境タチラ州のホセ・ビエルマ知事は5月26日、「反政府右翼勢力は州を統治不能に陥れようと20日から4日間、準軍部隊と連携し、常軌を逸したテロ、放火、破壊活動を繰り広げたが、州民がそれを許さず彼らを制圧、MUD(保守・右翼野党連合)に教訓を与えた」と表明した。

 知事はまた、「彼らはタチラ州を首都カラカス攻撃戦略の尖端にしようと謀ったが失敗した。コロンビア準軍部隊とMUDが連携するタチラ州だけに、防衛上、(国軍の治安出動を認める)サモーラ計画が重要だ」と指摘した。

 制憲議会(ANC)開設過程担当のエリーアス・ハウア教育相は26日、「ある政府機関は無責任にも推測に基づいて国家警備隊(GNB)を攻撃している」と、暗に検察庁を批判。「検察庁に遵法させ、異常事態を前にして動かない検察庁のような事態を避けるためにもANC過程は必要だ」と強調した。

 ハウアはまた、MUDの国会議員は「不逮捕特権をいいことにテロリズムを組織しているが、そんな国会を(ANCで)正さねばならない」と警告した。

 一方パナマ政府は26日、ベネスエラ、コロンビア、ニカラグア3国人の観光査証によるパナマ滞在を従来の180日間から90日間に変更する、と発表した。同3国人の査証取得希望者の来訪目的や前科の有無などを今後は調べるという。

 米側発表によると、今年第1四半期のVEN米貿易は往復47億ドルで、前年比45%増し。ベネスエラ側の輸出は36億ドルで、その95%は日量71万バレルの原油だった。ベネスエラ原油は26日現在1バレル=44・82ドル。

2017年5月26日金曜日

  イシカワ駐日ベネズエラ大使が日本記者クラブで、同国情勢に関する国際的な虚偽報道を厳しく批判。ニカラグア、キューバ、ボリビアの3大使もベネスエラとラ米の立場を説く▼制憲議会(ANC)選挙出馬は月末登録へ。トランプ米政権はベネズエラとキューバへの18年度援助をゼロに

 セイコー・イシカワ(石川成幸、日系3世)駐日ベネスエラ大使は5月25日午後、日比谷公園に面した東京・内幸町の日本記者クラブで記者会見し、ベネスエラ情勢に関する虚偽ニュースや意図的誤報が横行、極度に誤った反ベネスエラ世論が国際社会で形成されていると、実例を幾つも挙げて批判した。

 米政治週刊誌ニューズウィーク日本語版は、最新号で「ベネズエラほぼ内戦状態、政府保管庫には大量の武器」という見出しで、翻訳記事を掲げた。イシカワ大使は、英語版の見出しにも本文にもないことを日本語版は見出しにしたと指摘した。

 時事通信はカラカス発AFPの翻訳記事に「ベネズエラ、第2のシリアになる恐れ  米国大使が警鐘」という見出しを付けた。大使は、ベネスエラの状況はシリアと全く異なると述べ、米大使の意図を批判した。因みにVEN・米双方は2010年から相互に大使を置いておらず、この記事の大使は「臨時代理大使」と思われる。

 イシカワ大使はまた、典型的な虚偽ニュースとして、保守・右翼野党連合MUD幹部が発信した「治安部隊に包囲され窮地に陥っている若い女性」という印象を与えた写真は、実は治安部隊の前で笑ってポーズをとっていた同じ女性の「演出場面」を撮影した虚偽写真だと、証拠を示して暴露した。

 さらに、コロンビア国境「タチラ州での人間の鎖」と題した写真がスペイン・カタルーニャ州での「人間の鎖」の写真を偽って流したものだと指摘。ウクライナの写真をベネスエラと偽って流した例、チレとエジプトの警察による弾圧写真をベネスエラでの弾圧として流した例、貧者が治安部隊と対峙しているブラジルの写真をベネスエラと偽って流した例など典型的な虚偽発信を次々に紹介。虚偽記事・写真がいかに誤った判断と世論に人々を導くか、ということを指摘した。

 大使はその上で、世界最大の原油埋蔵量を持つベネスエラが石油の富を貧困解決など社会政策に回し国を変革したことに反感を抱く勢力が虚偽情報配信の背後に居る、と示唆した。

 米国は国際金融界に圧力をかけベネスエラへの融資を禁止、ベネスエラの食糧や薬品の輸入が困難になった。ベネスエラの財界も米国に呼応して減産、在庫隠しをしてきた。この種の「経済戦争」でベネスエラ社会は揺さぶられてきた。

 大使は、そんなからくりを説明。その打開策の一例として、6人家族が半月暮らせる食糧品37種をダンボール箱やビニール袋に詰め、平均賃金の10%程度の価格で配給する「クラップ」政策を紹介した。

 さらに、ベネスエラの人間開発指数0・767がLAC(ラ米・カリブ)平均0・751を上回っていることや、貧富格差を示すジニ係数が2015年には0・38だったと強調。ベネスエラは、「資本主義の独裁」に対する「人間的な代替経済モデル」を遂行し成果を挙げてきたが、それゆえに敵視されている、と指摘した。大使は、日本の最重要同盟国である米国への批判を極力避けるべく配慮していた。

 マドゥーロ・ベネスエラ政権は今、制憲議会(ANC)の7月下旬実施に向けて動いているが、イシカワ大使は5月の世論調査で回答者の54%がANC開設に賛成していることが明らかになったと指摘。またMUD指揮の反政府行動が否定的結果を招くと批判する者が81%に上ったことを強調した。

 会見の場の最前列には、クーバのカルロス・ペレイラ大使、ニカラグアのサウール・アラナ大使、ボリビアのアンヘラ・アイリョーン臨時代理大使が並んで着席していた。アラナ大使は、「世界で最も平和な地域は重大な紛争がないLACだ」と指摘。そこに紛争を持ち込む米国を暗に批判した。

 ペレイラ大使は、「日本の一部メディアも虚偽報道に陥ってはいまいか」と指摘。「米政府は左翼政権、進歩主義政権に反対し攻撃を仕掛ける」とし、「政権打倒の戦略は不変だが戦術を替えた」と分析した。アイリョーン代理大使も民族自決を譲らないエボ・モラレス政権の立場を説いた。

 期せずして記者会見の場は「大なる祖国」の熱気に満たされた。

◎ベネスエラ情勢

 ベネスエラ国家選挙理事会(CNE)のティビサイ・ルセーナ議長は5月25日、7月下旬実施のANC議員選挙に出馬する者は31日~6月1日にCNEに登録すべきことを発表。出馬には選挙民の3%の署名が必要とした。

 議員数は545人で、うち364人は全国の市を基盤にした「地域選挙区」から選出。残る181人は「職能別選挙区」から選ばれる。それは労働者79人、年金生活者28人、学生24人、コムーナ(コミューン)24人、先住民8人、農民・漁民8人、身体障害者5人、財界5人。ANC開設に向け提示される改憲草案を審議する「職能別委員会」が一部地域で25日発足した。

 ニコラース・マドゥーロ大統領はMUD指導部に、暴力打ち切り、ANC選挙参加、安寧・生活・民主のための対話をあらためて呼び掛けた。大統領はまた、「商店1000軒以上が略奪、破壊されたが、正常な状態に戻した」とも述べた。

 ブラディミール・パドゥリーノ国防相とネストル・レベロール内相は25日、反政府勢力の暴動のさなかに死んだ大学生(20歳)の死因について政府と異なる見解を示すなど政府中枢と対立しているルイサ・オルテガ検事総長を厳しく批判した。

 デルシー・ロドリゲス外相は、米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長とOEA加盟諸国がベネスエラ政府を激しく非難しながら、ブラジル政府による人民弾圧に沈黙しているのを「背徳的」と糾弾した。ブラジルのミシェル・テメル大統領は贈収賄関与が決定的な形で暴露され、辞任を求める大規模な抗議行動に遭っている。24日には首都ブラジリアに軍隊を治安出動させた。

 ベネスエラ外務省は国連児童基金(ユニセフ)に、「反政府勢力は少年少女・未青年に火炎瓶を作らせ投げさせている」と、証拠の写真、映像、証言を添えて告発した。

 一方、トランプ米政権は24日、2018年度予算案でLAC援助を大幅に削減。16年度に650万ドルあったベネスエラ向けはゼロとなった。同じくクーバ向けも2000万ドルからゼロにされた。一方で米議会は、ベネスエラ反政府勢力支援資金として新たに2000万ドルを支出する法案を審議している。
 

2017年5月25日木曜日

  エクアドルのレニーン・モレーノ大統領が就任。社会政策重視継続を約束。就任式出席のマクリ亜国大統領は高山病で、南米諸国連合会合を開けずに帰国▼ベネズエラ最高裁が首長8人に反政府街頭行動の許可禁止を命令

 エクドール(赤道国)で5月24日、レニーン・モレーノ大統領(64)が就任した。4月2日の大統領選挙決選で51・16%を得票、保守・右翼陣営で新自由主義者の銀行家ギジェルモ・ラッソ(61)を破った。任期は4年。

 国会での就任式で、車椅子のモレーノは、前任者ラファエル・コレア(54)から大統領の襷をかけてもらった。就任演説で、「未来は我々を待ってくれない。未来は現在だ」で切り出し、「4年後には、よりよい赤道国を人民に渡す」と宣言した。自身も副大統領として関与した「市民革命」という改革政策を推進したコレア前政権10年の実績を讃えつつ、新しい時代を切り開くと強調した。

 モレーノは、「人民の生活を守る責任ある国・政府になる」と述べ、具体的政策として、住宅32万5000戸を建設、うち19万1000戸を極貧過程に無料で与え、残りは低所得層に渡すと約束した。雇用13万6000人分創出、貧困対策の一環としての「人間開発給付金」を月150ドルに引き上げること、65歳上の病弱な高齢者への無料医療提供なども掲げた。

 アマソニアの環境保護、隣国コロンビア政府とゲリラELN(民族解放軍)の和平交渉貸座敷として引き続き支援することなども打ち出した。

 就任式には、ボリビア、コロンビア、ペルー、チレ、パラグアイ、アルヘンティーナ、アイチ、コスタ・リカ、オンドゥーラス、グアテマラのラ米10カ国大統領、クーバ第1副議長、米国務省米州担当次官補、南米諸国連合(ウナスール)前事務局長エルネスト・サンペールらが出席。ベネスエラからはカルメン・メレンデス大統領府相が出席、遠方からはサハラウイ・アラブ民主共和国(SADR)のブラヒム・ガリ大統領が出席した。

 亜国のマウリシオ・マクリ大統領は、モレーノ大統領就任後、キトの亜国大使館でウナスールの非公式首脳会合を開き、事務局長選出問題、ベネスエラ、ブラジル両国の情勢について話し合う計画だった。4月21日にベネスエラからウナスール議長国を引き継いでいたからだ。だが標高2800mのキト到着後間もなく高山病にかかり、就任式後、予定を取りやめ帰国の途に就いた。

◎ベネスエラ情勢

 ベネスエラ最高裁は5月24日、カラカス首都圏区長、ミランダ、メリダ両州内の市長ら計8人の首長に、反政府勢力への街頭行動許可を禁止する命令を発した。「平和デモ」を装い暴動を起こすのが常態となったため。8人は保守・右翼野党連合MUD所属。

 ネストル・レベロール内相は同日、首都圏、ミランダ、スリア両州で破壊活動を組織し資金を暴力集団に与えていたとして、MUD内の極右3政党党員計7人を逮捕した、と発表した。

 元検事イサイーアス・ロドリゲスは、「検察内が割れている」として、政府政策にしばしば異論を唱えてきたルイサ・オルテガ検事総長に「反政府勢力の網に絡らめ捕られるのではないか」と警告。「行政府内の一致」を求めた。

 一方、デルシー・ロドリゲス外相は、MUD指揮下の反政府勢力が2014年に決行した街頭暴動事件(グアリンバ)を調査するため政府が設置した「真実・正義委員会」の任務延長が決まった、と明らかにした。マドゥーロ大統領から指示があった。

▼クーバ・ベネスエラ情勢講演会:5月24日1900~2030、東京・高田馬場のNGOピースボート本部で開かれ、約50人が参加した。講師の伊高浩昭は玖国情勢を語り、コロンビア記者らが昨年制作したグアンタナモ米軍基地をめぐるビデオ映像(35分)を放映した。次いで、険悪度が日々に増しているベネスエラ情勢について話した後、質疑応答に移った。2040ごろ閉会した。

2017年5月24日水曜日

★★★ベネズエラ制憲議会(ANC)選挙は7月下旬、州知事・州会議員選挙は12月10日実施へ。マドゥーロ大統領が政令に署名。一部で手続きへの異論出る。バリーナス州は軍に治安出動を要請▼今日24日夜、ピースボートで関連講演会

 ベネスエラ国家選挙理事会(CNE)のティビサイ・ルセーナ議長は5月23日、制憲議会(ANC)議員選挙を7月下旬に、州知事・州会議員選挙を12月10日に、それぞれ実施すると発表した。24日にCNEは会合、両選挙の具体的日程を決める。州選挙は昨年末までに実施されるはずだったが、政治的混乱で延期されてきた。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は23日、ANC開設担当官エリーアス・ハウア教育相から報告書を受け取り、カラカス市内を行進した支持派大群衆と記者団を前に、ANC議員選挙実施に関する政令に署名した。

 大統領は、「我々は参加型政権であって、代表制ではない」と強調。「経団連とMUD(保守・右翼野党連合)はANC開設対話を拒否した。MUDの回答は暴力だった。彼らは国中の街を燃やし、不寛容精神を焚きつけ、武装決起を呼びかけ、外国の介入を招こうとしてきた」と非難、「我々は平和、対話、和解、敬意を重んじる」と述べた。

 ハウア報告によれば、ANC議員は540人。うち「地域選挙区」は、全国364市・特別区から選出、先住民には8人が割り当てられる。「職能別選挙区」は有権者8万3000人ごとに1区で、労働者、農民、漁民、身体障害者、年金生活者、学生、企業経営者、コムーナ(コミューン)およびコムーナ理事会がそれぞれ比例代表名簿をCNEに提出、得票により議席が割り当てられる。

 地域選挙区出馬者は、選挙民の3%の推薦を必要とする。18歳以上のベネスエラ人が立候補できる。選挙結果判明後72時間で、ANCが開設される。

 ところがCNE監査官ルイス・ロンドンは23日、改憲要求には国民投票が必要であり、それがなく、政令内容も事前に有権者に諮られなかったとして、反対を表明。また最高裁民事法廷のマリセーラ・ゴドイ判事も、国民投票の必要性を指摘、ANC開設選挙手続きに異議を唱えた。

 一方、MUDが指揮する暴動は各地で続いている。22日に騒乱状態となったバリーナス州では、スレ市の警察署が暴徒に放火され破壊された。若者1人が死亡した。22日の州都バリーナス市の暴動で略奪された店舗は170軒と判明した。

 同州のセナイダ・ガジャルド知事は23日記者会見し、ゴルペ(クーデター)防止作戦「サモーラ計画」の第2段階を発動した。治安部隊とともに、陸軍特殊部隊など軍の治安出動が許される。州知事は、MUD派のバリーナス市長が暴動を放置したと糾弾した。

 内務省は、暴動を鎮圧しないMUD派知事のいるララ州に23日介入、陸軍少将を州警察長官代行に任命した。石油の街マラカイボ市にある私立大学URBEは23日、暴徒に放火され、一部が破壊された。

★きょう24日(水)「クーバ・ベネスエラ情勢講演会」講師・伊高浩昭。1900~2030、東京・高田馬場、NGOピースボート本部地下で、参加費500円。申し込みは電話(03)3363-7561、3362-6307.

 
 

 ベネズエラ反政府勢力は「無政府状態」醸成狙い暴力攻勢。治安部隊施設、選管、政権党支部も襲撃さる。故チャベス大統領縁の家も放火・炎上、略奪。4月初めからの死者は60人に近づく

 ゴルペ(クーデター)教本には、「軍事介入を正当化するための騒擾(無政府)状態を醸成する」という恐るべき段階が盛り込まれている。ニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派変革政権の打倒を目指すべネスエラの反政府勢力は今、形振り構わず、騒擾状態=無政府状態をつくろうと、全国各地で殺傷、破壊、当局襲撃、放火、略奪などを激発させている。

 暴徒は5月22日、西南部ジャーノ(大平原)地方にあるバリーナス州都バリーナス市にある故ウーゴ・チャベス前大統領の「聖地」に放火、略奪した。少年ウーゴが兄アダン(現・教育相)とともに州内農村部の貧しい実家を離れて住んだ祖母の家だ。チャベス派にとっては史跡であり聖地である。そこがついに狙われ破壊された。

 反政府勢力を操っている保守・右翼野党連合MUDは、焦っている。MUDを戦略・資金両面で支援している米国の、頼みのD・トランプ大統領が弾劾される可能性のある不安定な状態に陥ったのと、国際社会でMUDの暴力肯定路線に批判の声が徐々に上がってきているからだ。極右暴力路線では、政権の受け皿には到底成りえない。

 チャベスが育った祖母の家の放火・略奪を、反政府派暴徒の仕業だとメディアに証言したのは、バリーナス市が選挙区のMUD派国会議員ペドロ・カスティージョだった。

 タレク・エルアイサミ執権副大統領は22日カラカスで記者会見し、MUDは同日、全国的な「武装ストライキ」を実行しようと計画していたと暴露した。また4月初めから続いている一連の反政府行動の中のテロリズム、破壊活動の責任はMUD指導部にあると指摘した。

 副大統領は、ボリーバル州営バス53台が放火され炎上、破壊された事件を挙げて、「これが平和な抗議デモと言えるか?」と問いかけ、実行犯2人を逮捕したと明らかにし、その本名を公表した。

 またMUD所属の極右政党VP幹部ホルヘ・マチャードを、破壊活動組織と暴徒への資金供与で逮捕、併せて現金の札束を2万束押収したと発表した。

 エルアイサミは、バリーナス市では(チャベスの祖母の家の他)、ボリバリアーナ国家警備隊(GNB)の地区司令部に暴徒が侵入、略奪し破壊、警察署3カ所と政権党PSUV支部も放火された、と明らかにした。

 さらに同市では複数の商店が略奪され、政府大衆医療政策の薬品・医療機材保管庫が破壊、略奪され、病院が襲撃された。政府の大衆向け住宅政策と同教育政策の支部事務所も攻撃された。バリーナス市では一連の暴動で5人が死亡した。

 ララ州都バルキシメトでは主要道路がバリケードで封鎖され、商店主たちは閉店を強制された。MUD系の地元警察は見て見ぬふりをしていた、という。

 国家選挙理事会(CNE=中央選管)は別途、バリーナス州でCNE支部が22日破壊され略奪された、と発表した。またタチラ州の数市の役所が襲われ、選挙人登録名簿が奪われ、破壊された。

 エルネスト・ビジェーガス情報相は、22日には全国で26人が逮捕されたと明らかにした。情報相によると、MUDは4月初めから各地で計1600回の街頭行動を展開、うち600回は暴力を伴っていた。死者は60人に達しつつある。

 MUDの破壊活動を指揮しているのは、ミランダ州知事エンリケ・カプリーレスらと目されている。カプリーレスは2002年4月のチャベス打倒の軍事ゴルペ未遂事件時、カラカスのクーバ大使館に侵入、逮捕されたが、数か月後に免罪された。2013年4月の大統領選挙では僅差でマドゥーロ現大統領に敗れたが、敗北を認めず街頭暴動事件を起こした。

 このような人物を02年に釈放したチャベスを、「温情主義の失敗」と批判する知識人もいる。14年2月の街頭暴動事件時、暴動教唆罪で逮捕され服役中のMUD極右VP党首レオポルド・ロペスも02年事件でつかまっていたが、釈放されていた。

 23日も政府支持派と反政府側はそれぞれ街頭行動を予定している。政府側は制憲議会(ANC)開設準備を急いでおり、大動員をかけてANC開設世論を盛り上げたいところ。反政府側は、ゴルペ誘発を狙い、さらなる非合法活動で「失敗国家」を印象付ける戦略を続けようとしている。 

2017年5月23日火曜日

 ベネズエラで州営バス53台が放火で破壊さる。専門家は「反政府勢力は騒擾状態醸成を狙っている」と指摘▼コロンビアで夜間外出禁止令発動▼グアテマラ農民はJ・モラレス大統領辞任を要求

 ベネスエラでは5月22日も反政府勢力による抗議行動と破壊活動が続いた。ボリーバル州では州営バス車庫で未明に53台が放火され炎上、破壊された。利用者17万人に影響が及んでいる。被害額は1100万ドル。

 カラカス首都圏バルータ区では、国営石油PDVSAの職員輸送バスなどが燃やされ破壊された。また同区で自動車道脇に接近する通路がバリケードで封鎖され、多くの市民が路線バスや地下鉄を利用できなくなった。死者も出ている。

 オンブズマンのタレク・サアブは、「右翼勢力による暴力・破壊活動の責任明確化のための客観的捜査に協力する」と述べた。サアブはまた、暴動取締り中の治安部隊が「過剰規制」した場合の捜査にも協力すると語った。

 暴力行使を抑制しない反政府勢力の中核MUD(保守・右翼野党連合)の指導者エンリケ・カプリーレス(ミランダ州知事)は21日、街頭行動について「憲法350条を実行している」と<合憲性>を主張した。

 同条項には、「共和国の伝統および独立・平和・自由のための闘いに忠実なベネスエラ人民は、価値・原則・民主的保障に反するか、もしくは、人権を尊重しない政府・立法・権力を認めない」と書かれている。

 だがMUDは、米国と連携している点で「独立」性に欠け、暴力を手段として行使しているため「価値、原則、平和、自由、民主、人権」に反している。このためカプリーレスの主張はまともには受け止められていない。

 デルシー・ロドリゲス外相は22日記者会見し、「ベネスエラは今、異常な暴力に晒されており、内外の懸念を生んでいる」と指摘。「正義・真実委員会」が間もなく、反政府勢力による現在の暴力事件および、2014年の街頭暴動事件についての報告書をニコラース・マドゥーロ大統領に提出する、と明らかにした。

 外相は21日、西部国境に隣接するコロンビアのラ・グアヒーラ県パラグアチョンに同国の軍装甲車部隊が展開しているのを「ただならぬ挑発行為であり、受け入れられない」と抗議した。これに対しコロンビア国防相は22日、「国境地帯での通常の犯罪防止策」と説明した。デルシーは22日、「依然、受け入れられない」と反駁した。

 著名な社会学者マリクレン・ステリング(「アンデレス・ベージョ」カトリック大学教授)は21日、反政府勢力のメディア戦略について、非通常戦争戦略に基づき「騒擾状態を起こすためだ。最初は心理的に、次いで肉体的・物理的に暴動を起こす」と述べた。

 また、「政府は<国際(世論)裁判>で負けつつある」とし、資金に物を言わせたMUDの内外メディア工作に対し旗色が悪いことを指摘。対策として、明確に的を絞るべきだと提言した。

 だが教授は、「暴動状況が2カ月近く続いてるため、さすがにベネスエラ人は目を覚まし、チャベス派は18年間で得た社会政策の恩恵を守ろうと意識するようになっている」と語った。

▼ラ米短信  ◎コロンビア太平洋岸に夜間外出禁止令発動

 コロンビアのサントス政権は5月22日、太平洋岸のバジェデルカウカ県の港湾都市ブエナベントゥーラに1800~0600時の
夜間12時間の外出禁止令を発動、警察機動部隊1500人、兵士700人を急派した。

 同市では、病院や水道のサービス向上、雇用創出などをめぐり市民が抗議ストを続け、19日から略奪、暴動が起きている。既に130万ドルの被害が出、市民80人が逮捕されている。

▼ラ米短信  ◎グアテマラ農民が大統領辞任を要求

 グアテマラの「農民開発委員会」(CODECA=コデカ)は5月22日、ジミー・モラレス大統領に対し、「無能で腐敗している」として辞任するよう要求した。モラレスは元コメディアンで、伝統的支配階級である保守・右翼勢力に擁立され一昨年の大統領選挙に当選、昨年1月就任。庶民大衆の評判は極めて悪い。

 農民らはまた、「人民・多民族制憲議会」の開設、伯オデブレヒト社から収賄した国会議員らの断罪を求めている。コデカは3月7日に首都グアテマラ市で大統領辞任要求集会を開いた際には4万人を動員した。 

2017年5月22日月曜日

 マドゥーロ・ベネズエラ大統領が「暴力の背後にトランプがいる」と非難。「反ファシズム大行進」を全国で23日展開と発表。制憲議会(ANC)開設政策は近く明示へ。ジャーナリストJVランヘールは「重大な局面にある」と指摘

」と ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月21日、日曜定例の全国向けTV番組で、4月以来の街頭暴力事件のビデオを数本流しながら反政府勢力の暴力を指摘、「ベネスエラが直面してきた幾波もの暴力テロリズム攻撃の背後には、ベネスエラを植民地化したいドナルド・トランプという帝国主義者の手がある」と非難した。

 また南米右翼指導者の旗頭と位置付けられているマウリシオ・マクリ亜国大統領について、「ゴルペ(クーデター)を狙うベネスエラのファシスト暴力右翼を父親のように保護している」と扱き下ろした。

 マドゥーロ大統領はまた、「平和に賛成し、ファシズム・暴力・憎悪に反対する大行進を23日、全国で展開する」と発表した。政権打倒を目指して街頭デモと暴力を止めない保守・右翼政党連合MUD指導下の反政府勢力の動員への対抗措置だ。

 大統領は、「MUDは過去50日間、ナチファシズム型反革命の憎悪と暴力をばらまいてきた」と非難。「容疑者を何人も逮捕してきたが、(カラカス首都圏の)チャカオ区長ラモーン・マチャードとミランダ州知事エンリケ・カプリーレスは暴力集団の共犯者だ。同知事は自宅で暴力集団に武器、爆発物などを渡した。その証拠がある」と述べた。

 さらに、「覆面した武装暴徒200~300人を治安部隊、当局、秩序に歯向かわせている」とカプリーレスを非難。「MUD内の民主派は暴力を糾弾し、平和情勢のため対話に応じてほしい」と呼び掛けた。マドゥーロは、オンブズマンと検事総長に、「政府は一致して正義を施そう」と求めた。ルイサ・オルテガ検事総長は、司法上の問題で政府を批判してきた。

 大統領は「イデオロギー上の理由による暴力、不寛容、迫害を糾弾しよう」と訴え、「(米国で働く)ベネスエラ人の芸能人やスポーツ選手は、米政府に脅迫されてベネスエラ政府を非難している。同様の傾向が国際社会にある」と前置きし、「そのような在外同胞と話し合う用意がある。対話しようではないか」と呼び掛けた。

 ベネスエラ政府を非難するブラジルのテメル政権については、「贈収賄で腐敗しきって崩壊しつつあるテメル・ファシスト政権に反対する伯人民に連帯する。くたばれテメル、伯人民万歳」と述べた。

 マドゥーロは、「近日中に制憲議会(ANC)開設政策を明示する。これは後戻りできない政策だ」と強調。「投票に賛成、弾丸に反対」と叫んだ。

 著名なジャーナリスト、ホセ=ビセンテ・ランヘールは21日、テレベン放送の日曜定例番組で、「ベネスエラは誰の目にも明らかなように、全人民に等しく影響を及ぼす重大な局面にある」と指摘。「この国には対話の文化が欠けている。MUDは対話を拒否しているが、好き嫌いに拘わらず、平和と和解は対話を通じてしか達成できない」と強調した。

 また、「大統領は、対話の道が閉ざされたためANC開設の場を設けた。MUDとカトリック司教会議がANC対話を拒否しているのはいただけない」と批判した。

 ランヘールは、著名なベネスエラ人映画監督ロマーン・シャルボーを番組に招き、インタビューした。監督は、「国内の右翼勢力は真実を歪め、反ベネスエラの虚偽情報を世界中に撒き散らしている」と指摘。「文化には重要な役割がある。我々は虚偽運動に対し闘わなければならない」と強調した。

 さらに、「彼らは、外国の介入計画に従って内戦を起こそうとしている。だが失敗するだろう」とし、「ANCは対話による解決を探るが、MUDは解決を望まないからANICに反対している」と指摘した。

 一方、ベネスエラ沖のカリブ海にある蘭領クラサオ(キュラソー) のベネスエラ国営石油PDVSA(ペデベサ)製油所で21日、火災が発生した。鎮火したがが、当局は放火を含め原因を調べている。この製油所は、中国などアジア市場向けの原油を日量33万バレル精製している。ベネスエラ原油は19日現在、1b=43米ドル。



 

2017年5月21日日曜日

 ベネズエラ反政府勢力の暴力伴う街頭行動が50日に近づき、死者も50人に及びつつある。南米諸国連合のサンペール前事務局長は、「MUDが街頭行動止め、政府がANC開設方針取り下げれば、交渉開始可能」と指摘▼LATINA誌6月号がベネズエラ情勢詳述記事掲載

 ベネスエラでは5月20日も政府支持派と反政府勢力の街頭行動が首都カラカスを中心に展開された。反政府勢力は主要な自動車道を埋めた。行動を指揮する保守・右翼野党連合MUDのエンリケ・カプリーレス(ミランダ州知事)は、デモ隊を内務省まで向かわせようと発破をかけたが、治安部隊に規制され、果たせなかった。

 この反政府行動のさなか、別働隊の暴徒に青年一人が私刑に遭い、ガソリンをかけられ焼かれ、体の70%に火傷を負った。ニコラース・マドゥーロ大統領は、この青年の救命を命じた。約50日間に亘る一連の武力事件で死者は50人に及びつつある。

 コロンビア国境沿いのタチラ州のホセ・ビエルマ=モラ知事は、「MUDが同州内で動員した4日間の反政府行動は華々しく敗れた」と表明。知事は、MUD加盟の極右政党VP(人民意志)所属の「国会議員ガビ・アレジャーノは麻薬、酒、現金を(動員のために)配布していた」と告発した。州内の食糧と燃料の供給は、治安部隊の増強で滞りなく実施された、と述べた。

 過去の政治的人道犯罪を追究する「正義・真実委員会」のフェルナンド・ソト=ロハス顧問は、「バネスエラは内外から包囲されている。国内では準軍部隊と繋がる反政府ファシズム勢力に攻められている。(背後に居る)米国は、ベネスエラの原油資源獲得のため限りない戦を仕掛けている」と糾弾した。

 ジュネーヴ国連駐在のホルヘ・バレーロVEN大使は人権理事会で、反政府勢力による街頭行動時の暴徒らによる暴力・破壊活動を映したビデオ映像を見せ、暴徒による殺傷、破壊活動、さらに反政府勢力側の狙撃手の銃撃による殺人を告発した。

 同大使はまた、外国メディアの虚偽報道、意図的誤報を糾弾。「治安部隊は市民と公共・私有財産を守っている。政府は対話を求めているが、反政府勢力内の暴力肯定派が対話を阻止している」と説明した。理事会の各国代表らが聴きいった。

 デルシー・ロドリゲス外相は故ウーゴ・チャベス前大統領の出身地バリーナス州での制憲議会(ANC)開設運動の集会で演説、「ANCは暴力を終わらせるのために決定的に重要だ。主権と民族自決権の防衛が同様に重要だ」と強調した。

 外相はまた、「反政府右翼勢力は米帝国主義に従属し、ボリバリアーナ革命以前のような新自由主義と売国主義を植え付けようとしている」と、MUDを非難した。

 マドゥーロ大統領は、MUDを支持してきたメヒコについて、「暴力、不平等、麻薬によって失敗国家に成り下がった」と扱き下ろした。デルシー外相も先ごろ、ルイス・ビデガライ墨外相を、「米国の家来だ。メヒコとラ米の間に壁を築こうとしている」と非難した。

 ベネスエラに敵対的姿勢をとってきた米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長はワシントンで、「ベネスエラは、民主回復方法を決めるため決定的な交渉を開始すべき時に至った」と述べた。

 エルネスト・サンペール元コロンビア大統領は19日、「反政府勢力が街頭行動を止め、政府がANC開設方針を取り下げれば、民主的解決の糸口となる。対話では選挙日程を決めるべきだ。選挙抜きで民主はありえないからだ」と指摘した。サンペールは南米諸国連合(ウナスール)の前事務局長で、ベネスエラ対話仲介の労をとった、双方の対立が厳しく、任務を完遂できなかった。

 一方、カリタスのラ米・カリブ地域代表ホセルイス・アスアヘ(バリーナス州司教)はローマで20日、「ベネスエラのカトリック教会は反政府でなく、人民の味方になるべきだ。(政党でなく)人民の声を聴いて、その意志を実現させるべきだ」と語った。

 このところマドリード、メキシコ市、サンホセ、パナマ市などで、ベネスエラ政府を支持する行事に、反政府派が押し掛け行事を妨害する事件が相次いでいる。ベネスエラ外交当局は、反政府勢力が「暴動を輸出している」と非難している。

★月刊誌LATINA6月号(発売中)掲載; 伊高浩昭執筆 「ラ米乱反射」 連載134回 「<クーデターの危機>に対抗するベネズエラ  反政府勢力は米指示通り街頭暴力激化作戦」 

   

2017年5月20日土曜日

 カリブ共同体(カリコム)外相会議が「ベネズエラ問題は国内対話で解決を」と声明。議長国首相は「カリコム分断を画策」と米国を非難。カトリック教会が政府と会合、制憲議会(ANC)開設に反対。検事総長も反対表明

 カリブ共同体(カリコム)は5月18~19日、バルバドスの首都ブリッジタウンで第20回外相会議を開き、「ベネスエラ問題は外部からの介入、内政干渉を排し、緊張緩和の後、仲介支援を得て、国内対話によって解決すべきだ」とする共同声明を発表した。

 輪番制議長国セントヴィンセント&グラナディーン(SVG)のラルフ・ゴンサルヴェス首相は会議への公開書簡で、「一部の大国がベネスエラ政権を替えようと画策し、カリコムをベネスエラ問題で分断しようとしている」と、米国を暗に非難した。

 輪番制議長ルイス・ストゥレイカーSVG外相は、「カリコムはベネスエラ人民を放置しない。事態を懸念しており、安寧と安定が戻るのを願っている。ベネスエラの民主は機能し安定しており、引き続きそうあってほしいとカルコムは期待している」と述べた。

 出席したオブザーバー国ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は、「反政府勢力はニコラース・マドゥーロ大統領の合憲政府を倒そうと暴力に訴えており、人民を苦しめている」と、保守・右翼野党連合MUDを批判。「ベネスエラは米国にとり脅威ではないし、米州地域の問題でもない」と、米国の言い分に反駁した。

 続けて、「米国はベネスエラを国連安保理に持ち込んだが、それは無能な使用人アルマグロ(米州諸国機構OEA事務総長)の立場を強化するためだった。米国はOEAを使ってベネスエラに介入しようとしている。だが、そのような手法はリビア、イラク、シリアなどで失敗してきた」と強調した。

 さらに、「国際社会にはベネスエラへの偏った見方に立つ介入の策謀がある。その一方で、それら諸国の人権蹂躙は米国によって覆い隠されている」と指摘。「カルコムは、国際法を遵守しており、自分の言い分を一方的に押し付けようとしている者から我々を守る防壁だ」と、カリコムを讃えた。

 デルシーは会議終了後、テレスール記者に「外相たちから大なる支援を得た」と語った。また米財務省が18日、ベネスエラ最高裁判事8人を「制裁対象者名簿」に書き加えたことについて、「前代未聞であり、受け入れ難い。我々は外交的措置をとる。最高裁判事たちは帝国による攻撃の犠牲者だ」と述べた。

 最高裁のマイケル・モレーノ長官もカラカスで19日、「外交政府の押し付けと内政干渉は受け入れられない」と一蹴した。マドゥーロ大統領も、「ドナルド・トランプは帝国主義者宜しく介入を促進している。トランプよ、ベネスエラから手を引け」と、いつになく強いc調子で反駁sた。

 ベネスエラ外務省は19日別途声明を発表、Dトランプ米大統領が18日ワシントンでJMサントス・コロンビア大統領との会談後、「ベネスエラは極めて深刻な問題だ。平和で安定したベネスエラが必要であり、そのためにコロンビアや他の国々と協働してゆく」と述べたことに関し、「限度を超えた発言だ。(T大統領は)国務省に、ベネスエラへの攻撃的な内政干渉政策をなすがままに任せている」と非難した。

 声明はまた、「トランプ大統領(の発言)は虚偽情報に基づいている」と指摘。「米国は、政府諸機関を通じてベネスエラの反政府勢力に不法資金を与えているが、直ちに止めるべきだ」と要求した。

 トランプは19日、中東・欧州歴訪に出発したが、ベネスエラ情勢に関してはローマ法王フランシスコとの会談が注目される。ヴァティカンの立場は、「対話と選挙による解決」であり、内政干渉や軍事介入は認めない。

 ニカラグア駐在のベネスエラ大使フランシスコ・アルーエはマナグアで19日記者会見し、「米国は対ベネスエラ開戦を促進しつつあり、侵略を正当化するため、マドゥーロ政権不安定化を狙う武装テロ集団に資金援助している。以上を、ベネスエラ政府の名において告発する」と、米政府を糾弾した。

 同大使はまた、「ベネスエラ国内18市で計335回、暴力行為があった」と明らかにした。非公式集計では、4月からの一連の反政府勢力絡みの暴力事件で死者50人以上、負傷者1万3000人、逮捕者2500人が出ている。

 一方、制憲議会(ANC)開設担当者エリーアス・ハウア教育相は19日、ベネスエラのカトリック司教会議と会談。終了後、司教会議のディエゴ・パドロン議長は、「ANC開設は不要だ。現行憲法を順守すればいいし、人民の求めているのが食糧、薬品、治安、安寧、公正な選挙であるからだ」と述べた。また、「政府と教会は人民への福利で協働可能な分野がある」と指摘した。

  またルイサ・オルテガ検事総長は19日、ハウアに17日付けで渡した書簡を公表。その中で、「現行憲法はこれ以上改善しようのない最良の憲法であり、チャベス前大統領の最重要遺産だ。人権、民主、人民参加、生活権、社会正義、差別無き平等主義などで世界一進んだ憲法で、憲法を変更すれば、さらなる危機を招く」としてANC開設に反対。18日のハウアとの会合を欠席したことを明らかにした。「身内」からのANC反対表明は、マドゥーロ大統領にとり痛撃だ。

 コロンビア国境沿いのタチラ州では18日、国家警備隊(GNB)中尉パウル・マチャードが「人民に武器は向けられない」と述べ、政府発行の「祖国身分証」を鋏で切り刻んだ。同中尉は19日、軍当局に逮捕された。

 同州では反政府勢力による陸軍駐屯地襲撃などで治安上の危険性が増し、数日前から,GNB2000人と陸軍特殊部隊600人が治安出動で展開している。、
 
 
 

2017年5月19日金曜日

 プーチン・ロシア大統領がベネズエラ問題解決への協力意志を表明。露外務省は、ベネズエラ反政府勢力寄りのメディアを厳しく批判。コレア・エクアドル大統領もブエノスアイレスで、反政府勢力側の暴力を糾弾。トランプ米大統領はコロンビア大統領と会談し、ベネズエラへの「人道支援の用意」を表明

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月18日、ウラジ-ミル・プーチン大統領と電話会談し、会談後、「ロシアは小麦を毎月6万トンずつ、長期に亘って供給してくれることになった」と明らかにした。その開始時期には触れなかった。大統領はまた、産油諸国が価格安定化のため原油生産を削減していることについても話し合ったとし、「近い将来、訪露したい」と語った。

 ロシア外務省報道官は、電話会談がベネスエラ側の申し入れによるものだったと明らかにし、「プーチン大統領は、ベネスエラ情勢の正常化を願っている。重要なのは、ベネスエラ国法の合法性の枠内で解決することだ」と表明した。

 報道官はまた、「ベネスエラ情勢は(米州)地域の平和と安全を脅かしてはいない」と前置きし、「ロシアは要請されれば、ベネスエラ問題の平和解決に参加する用意がある」と述べた。

 さらに、内外メディアのベネスエラ情勢報道が反政府勢力寄りに偏向している事実に触れ、「客観性が重要だ。紛争を煽ったり、自陣営の野心達成のために教唆するような報じ方をしてはならない」と強調した。

 エクアドールのラファエル・コレア大統領は17日ブエノスアイレスで、ガブリエラ・ミケッティ亜国副大統領と会談。マクリ亜国保守・右翼政権が明確にしている反マドゥーロ政権の立場は「尊重する」としながらも、「暴力の多くが反政府勢力側に起因している事実は証明されており、これは糾弾せねばならない」と指摘した。

 マウリシオ・マクリ大統領は来日中。コレアは記者団に、「国際社会とラ米は、ベネスエラを攻撃しながらブラジルに甘い二重基準だ」と批判した。これは合憲政権を昨年弾劾した汚職まみれのテメル現政権に正統性が欠けていることへの批判が乏しい事実を指摘したもの。

 制憲議会開設準備担当のエリーアス・ハウアVEN教育相は17日、「PJ(まず正義を)とVP(人民意志)の武装集団は犯罪組織と結託して暴動を決行しており、許し難い」と述べた。PJとVPは、反政府勢力指導部である保守・右翼野党連合MUDの極右政党。

 PJ党首でミランダ州知事のエンリケ・カプリレスは18日、パスポートを無効化され、出国を阻止された。カプリレスは大統領選挙にMUD候補として2度出馬し敗北・2度目の13年4月には、敗北を認めず暴動を起こした。だが、その後、「平和闘争路線」に変身した。

 ところがMUD内暴力肯定派の旗頭でVP党首のレオポルド・ロペス(暴動教唆罪で服役中)の人気が高まると、再び暴力路線に戻った。「マドゥーロ後」の大統領を決める選挙に、MUD候補として3度出馬するため、「弱腰」を見せるわけにいかないからだ。

 一方、ドナルド・トランプ米大統領は18日ホワイトハウスで、JMサントス・コロンビア大統領と会談。記者会見で、「ベネスエラの経済危機はかつて米州になかったことで、人類の恥だ」と述べ、「必要ならば、人道的見地から支援したい」と述べた。米国務省や米機関がベネスエラの反政府勢力を支援してる事実には触れなかった。

 また米財務省はこの日、ベネスエラ最高裁のマイケル・モレーノ長官以下8人の判事を、「ベネスエラ国会の権限を奪った」として「制裁対象者名簿に加える」と発表した。他国にも施政権が及ぶかのごとき米政府の「制裁」政策に、また新たに批判が起きている。


 
 
 

2017年5月18日木曜日

★ベネズエラ陸軍がコロンビア国境に特殊部隊を派遣。暴徒が陸軍駐屯地を襲撃したのを受けて。国連安保理はベネズエラを議題に取り上げず、米国の意図くじかれる▼ブラジルのテメル大統領も<贈収賄認可>で弾劾の危機に直面か

 ベネスエラのブラディーミロ・パドゥリーノ国防相は5月17日、タチラ州都サンクリストーバル市で同日、陸軍第215野砲隊駐屯地が暴徒に襲撃されたことから、同州に陸軍特殊部隊600人と国家警備隊(GNB)2000人を派遣する、と発表した。反政府勢力による一連の暴動事件で国軍施設が襲われたのは初めて。駐屯地司令官の中佐も暴徒に襲われたという。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は事態を重視、ゴルペ(クーデター) 制圧作戦「サモーラ作戦戦略計画」(PEOZ)を第2段階に進めた。第2段階では、国家警察機動隊、国家警備隊に加えて、陸海空軍のいずれかの実戦部隊が治安出動する。

 タチラ州はコロンビア北東国境に隣接し、同国の極右準軍部隊(パラス)が密入国を繰り返している。パラスは、コロンビア陸軍の補完部隊としてゲリラ部隊と戦った。また、アフリカ系や先住民の土地を奪い、多くの国内避難民を生んだ。ベネスエラ陸軍の特殊部隊の任務には、パラス制圧も含まれている。

 パドゥリーノ国防相は、暴徒約100人が火炎瓶などで駐屯地を襲撃したが、駐屯地には弾薬庫があり、そこに引火したら大惨事が起きると述べ、事態の重大さを指摘した。各地で反政府勢力の抗議行進や暴動に乗じた略奪事件も起きている。暴徒側の死者が小刻みに増えている。

 一方、国連安保理は17日、米国の要請により非公開会合を開き、ベネスエラ情勢を話し合った。米国のニッキ・ハーリー大使は、「ベネスエラは不安定状態が増幅しており、人権が尊重されなければ、シリアのような道を辿ることになる」と述べ、安保理の介入決議が必要との立場を強調した。

 これに対し、ボリビアのサンチャ・ジョレンティ大使は、「米国の明白な内政干渉がある。米国は仲介者ではなく、ベネスエラの反政府勢力を支援してきた。したがって、この安保理会合は問題解決の障害になる」と反駁した。米国が反政府勢力に資金、攻撃戦略、外交面で肩入れしてきた事実を踏まえてのことだ。

 安保理議長国ウルグアイのエルビオ・ロセリ大使は、「ベネスエラは正式な議題にはならない。理由がないからだ。ベネスエラの紛争はベネスエラ人が解決すべきだ。政府と反政府勢力が打開策を探ればよい。ベネスエラ関係の決議はない」と述べた。

 ベネスエラのラファエル・ラミーレス大使は、「ベネスエラは国際平和と安全保障上、危険な存在ではない。米国は内政干渉し、ベネスエラの最も暴力的な集団を焚きつけている。暴力は、米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長の煽動によるOEAのベネスエラへの内政干渉の直後に悪化した」と指摘した。

 同大使はさらに、「米国には、米州での暴力と干渉の悲しい歴史がある。米国は<人権蹂躙>を介入理由にしようとしているが、ベネスエラにはそれはない。米国は人権蹂躙を理由にシリアやイラクに軍事介入した」と批判。「ベネスエラは、いかなる内政干渉も後見も必要としない。主権尊重を求めるだけだ」と説いた。

 デルシー・ロドリゲスVEN外相は、「(安保理での)米国の宣伝と、アルマグロ支援のための画策は失敗した。証明されたのは、米国によるベネスエラ介入計画の存在だ。米国は世界の殺傷暴力と飢餓の最大の起因者だ。安保理に教訓を垂れる道徳的資格はない」と扱き下ろした。

 コロンビアのJMサントス大統領は17日、訪問先の米国で、「コロンビアと米国はベネスエラ情勢をとても懸念している」と述べた。サントスは18日、Dトランプ米大統領と会談する。

 ベネスエラ政権党副党首ディオスダード・カベージョ国会議員は17日、反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUDの幹部フリオ・ボルヘス国会議長、フレディ・ゲバラ同副議長、ミランダ州のエンリケ・カプリーレス知事らを「ファシスト」と呼び、コロンビア極右勢力の旗頭アルバロ・ウリーベ前大統領と会合した、と指摘した。

 24日に任期切れとなるエクアドールのラファエル。コレア大統領は17日、訪問先のブエノスアイレスで、「ベネスエラの問題は対話、民主、選挙で解決すべきだ」と語った。

▼ラ米短信  ◎テメル伯大統領が贈収賄を促進か

 伯紙オ・グロボは5月17日、ミシェル・テメル大統領と大手食肉輸出会社JBSのジョスリー・バチスタ社長の録音会話を暴露。その中でテメルは、獄中にいるエドゥアルド・クーニャ前国会下院議長にペトロブラス贈収賄事件について沈黙し続けさせるため賄賂を贈っているかどうかをバチスタに確認している。

 バチスタが、自社系列企業の問題の解決を図るため、テメルが指定した国会議員に現金500万レアル(約16万ドル)入りの鞄を渡した、ことにも触れられている。バチスタは司法取引に応じてテメルとの会話を録音したらしい。

 ブラジル国会はこの報道で大騒ぎになり、テメル弾劾の可能性が早くも指摘されている。テメルは昨年8月末、ヂウマ・ルセフ大統領を弾劾に追い込んで政権に就いた。テメルも汚職疑惑に包まれている。


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★現代の岩窟王、プエルト・リコ独立運動家オスカル・ロペス(74)が服役36年経て自由の身に。故郷サンフアンで「脱植民地化と独立のため闘い続ける」と語る。マドゥーロ大統領は電話で祝福、「ラ米・カリブの独立はベネズエラでの戦いに懸かっている」と強調

 現代の岩窟王オスカル・ロペス=リベーラ(74)が5月17日、36年間服役の後に自由に身になった。米植民地プエルト・リコ(PR)人のロペスは、米軍兵士としてヴェトナム戦争従軍後、1976年にPR独立主義の「人民解放軍」(FALN)に参加。組織の破壊活動に直接関与しなかったが、81年逮捕され、禁錮55年の判決を受け、幾つもの米国内の刑務所で服役した。

 91年に脱獄未遂で刑期に15年が加算された。ビル・クリントン大統領は恩赦を持ちかけたが、ロペスは拒否。だがバラク・オバーマ大統領が任期切れ直前の今年1月17日恩赦を決めた。ロペスは米国の刑務所から2月9日PRに身柄を移され、実の娘クラリーサの自宅で軟禁処分となった。恩赦から4カ月後の今日、刑期は終わった。今後は島都サンフアンの市役所で仕事する。

 ロペスは支援者による自由記念音楽会に出席後、浜辺の波打ち際で、「PRの脱植民地と独立に向かって進もう。重要なのは連帯して働き戦い抵抗することだ」と強調した。また、窮地にあるPR大学について、「頭脳流出を食い止めよう。大学を守らねば、PRの未来はない」と述べた。さらに、新自由主義経済路線を糾弾した。

 同胞として迎えてくれた故郷については、「これぞ、PRの寛大な心だ。大きな愛のある人民だ」と、PRとPR人を賞賛した。

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領はロペスと電話会談し、それをテレスールが中継した。大統領は、「大なる祖国の英雄」とロペスを讃え、「我々は国内からの攻撃とメディアによる私刑の犠牲者だが、シモン・ボリーバルの人民はチャベス司令官の旗を掲げ、意気軒昂として勝利する」と伝えた。

 ロペスは、「私はPR人だが、ベネスエラ人のようにも感じる。ベネスエラの未来を決めるのはベネスエラ人であり、米国を含むいかなる他者でもない。ベネスエラが勝つと信じている。米国は思い通りにはいかないだろう」と返した。

 マドゥーロは、ベネスエラが非同盟運動の議長国で、国連非植民地委員会の委員長国であることに触れて、「両機関を通じても、PRの尊厳と未来のために尽力する」と約束した。「我々の大陸(ラ米・カリブ)の独立は、ベネスエラでの戦いに懸かっている」とも強調した。

 ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相も、ロペスを「PRの真実が勝利した。米国の覇権から自由な大なる祖国の勝利だ」と祝福。さらに、「米国は人権で二重基準だ。ロペスは、そこに囚われていた現代世界最長の良心の囚人だった」と指摘した。
 ニカラグア、クーバをはじめ、ラ米のロペス支援国・支援団体もロペス開放を祝福している。 

2017年5月17日水曜日

★★★ベネズエラ政府が全土への非常事態を60日間延長し発動。国連安保理は米国の要請でベネスエラ問題を17日に討議。CELACは、OEA外相会議の31日開催決定を受け、20日開催予定の外相会議を延期

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月16日、「非常事態および経済緊急事態」を全土に60日間延長発動した、と発表した。5月13日付け官報に記載されており、同日から有効。治安維持のため憲法の人権庇護条項などが停止される場合がある。

 これを受けて米国は国連安保理にベネスエラ情勢を議題にするよう要請。17日に取り上げられることになった。米国の反ベネスエラの保守・右翼系議員は連名で、ベネスエラ問題の安保理取り上げをトランプ政権に要請していた。米政府は、ベネスエラ反政府勢力と連携、南方軍などを使ってベネスエラ政変醸成工作を展開中。

 保守・右翼野党連合MUDが指揮する反政府行動は暴動に発展、新たに4人が死亡。検察庁集計では、4月初めからの一連の暴動事件などによる死者は43人に達した。これは2014年のMUDによる街頭暴動事件(グアリンバ)の死者数43人と同数。だが非公式式集計では、今回の死者は47~48人とされている。

 MUD幹部フレディ・ゲバラ(国会副議長)は16日、「マドゥーロ大統領周辺ではなく、裁判所、検察、軍部、警察、会計検査院などと交渉する用意がある」と表明した。政府機関を分裂させる狙いがある。ゲバラはまた、17日夜と20日にも反政府行動を展開すると明らかにした。

 反政府勢力による暴動は続き、自動車道で政府配給機関の、食糧や果汁を積んだトラック2台が暴徒に略奪された。タチラ州内では警察署3カ所が放火されたり破棄されたりした。

 コロンビアでのロック祭参加をこのほど拒否されたベネスエラ人ロック歌手ポール・ヒルマンは16日、「われわれチャビスタ(政府支持派)は、かつてユダヤ人がナチスドイツの憎悪に遭ったような状況に置かれている」と,TV番組で指摘した。

 14年に街頭暴動を教唆した罪で服役している極右政治家レオポルド・ロペスの妻リリアン・ティントリは16日オタワでジャスティン・トルドー加首相とマット・デコーシー加外相に会った。これについてデルシー・ロドリゲスVEN外相は、「ティントリはベネスエラへの内政干渉を促進している」と非難。「なぜ自分たち(MUD)がファシズムや殺人を推進している実態を語らないのか」と糾弾した。

 マドゥーロ政権が推進している制憲議会(ANC)開設準備の担当者エリーアス・ハウア教育相は16日、「ANCは平和確立、戦(いくさ)の太鼓打ち止め、国家独立維持、人民安寧生活保障のために開設する。野党勢力に紛争を政治的に解決しようと提案している」と述べた。

 だがMUDは16日、改憲のためのANCに反対する意味を込めて「護憲国民戦線」(FNDC)を結成した。

 一方、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)は、20日にドミニカ共和国での開催が予定されていた第14回外相会議を無期限に延期した。31日に米州諸国機構(OEA)がベネスエラ問題を話し合う特別外相会議を開くことになったためだ。

 コロンビア外務省は16日、ベネスエラ駐在大使を当面帰任させないと明らかにした。大使は3月31日召還されて以来、コロンビアに留まっている。ペルーも大使を召還したままにしている。 
 

2017年5月16日火曜日

  米州諸国機構(OEA・OAS)は31日にベネズエラ問題を討議へ。4月以降の暴動などによる死者は42人に。カラボボ州都バレンシアでは警察幹部が狙撃手に頭部撃たれる。米上院は反政府派活動資金2000万ドル供与法案審議終える▼メキシコで麻薬組織犯罪専門記者が白昼殺害さる

 米州諸国機構(OEA、34カ国加盟、うちベネスエラは脱退表明済み)は5月15日ワシントンの本部で大使会議を開き、ベネスエラ情勢を討議する特別外相会議を31日開催することを決めた。ベネスエラおよび、グレナダは投票に参加しなかった。

 ベネスエラに厳しい態度をとるメヒコが31日開催案を提案、過半数の18カ国の賛成で可決した。ニカラグアだけは反対。反ベネスエラ派ながら31日という日程に異議を唱えたコスタ・リカ(CR)および、ベネスエラを支持したり理解を示したりする12カ国の計13カ国が棄権した。

 ベネスエラ国内では、保守・右翼野党連合MUD主導の反政府行動が続いている。コロンビア国境沿いのタチラ州都サンクリストーバルでは15日、反政府行動の別働隊の青年2人が死亡。非公式集計では、4月以来の一連の反政府行動に関係する死者は42人に達した。

 カラボボ州とバレンシアでは同日、州警察幹部一人が狙撃手に頭部を撃たれ重傷。弾丸はとう部を貫通した。警官もうひとりも狙撃され、重傷。狙撃手たちは、反政府側に雇われている。同州では、国営電力会社(CORPOELEC)の支社が放火された。

 コムーナ相アリストーブロ・イズトゥーリスは15日、「MUDはニコラース・マドゥーロ大統領打倒を国外で担保にしている」と糾弾した。さらに「彼らの活動資金は帝国主義者(米国)と国際金融機関から出ている」と非難。米上院が、MUD指揮下の反政府勢力への活動資金2000万ドル供与法案の審議を終えたことを示唆した。

▼ラ米短信   ◎メヒコの麻薬犯罪組織専門記者が殺害さる

 シナロア州都クリアカンで5月15日、週刊誌「リオドセ」創刊者で、麻薬組織犯罪報道の著名な専門記者ハビエル・バルデスが白昼、市内で麻薬組織の殺し屋に銃撃され死亡した。メヒコでのジャーナリスト殺害は、これで6人目となった。

 ハビエルは生前、「ジャーナリストになることは、暗殺標的名簿に記載されることに等しい。彼らはいったん殺害決行日を決めたら、いかなる警備があろうとも決行する。メヒコにはジャーナリスムを遂行するための条件がない。あまりにも近くを弾丸がかすめるからだ」と語っていた。

 ハビエルは首都メヒコ市の日刊紙ラ・ホルナーダの通信員でもあり、ながらくフランス通信AFPの協力者だった。ハビエル殺害に抗議する運動がクリアカン、メヒコ市をはじめ各地で起きている。著書には『麻薬ジャーナリスム』、『麻薬の孤児たち』、『ミス麻薬』などがある。
 

2017年5月15日月曜日

 ベネズエラ反政府野党連合MUDを世論は厳しく批判。制憲議会(ANC)担当官は「MUDの対米従属」を非難、「内戦を危惧」と表明。EUは「実効ある対話」の即時実施を呼び掛け。「ウクライナ情勢との共通点」指摘も

 ベネスエラの著名なジャーナリスト、ホセ=ビセンテ・ランヘールは5月14日のテレベン放送定例番組「今日のホセ=ビセンテ」で、ニコラース・マドゥーロ大統領打倒を目指し激しい反政府活動を続けている保守・右翼野党連合MUDに関する最新の世論調査結果を発表。回答者の83%は、「MUD指導部の交代が必要」と答えた。

 76%「MUDは問題解決のため政府に協力すべきだ」、70%「MUDは分裂している」、67%「MUD指導部はチャベス前政権以前(1998年まで)の新自由主義路線指導者と同じ」、60%「MUDに強力な指導者はいない」、59%「MUDは人民福利に無頓着で政権奪取だけを狙っている」、58%「MUDが政権に就いても経済問題は解決できない」-との回答だった。

 この番組に出演したエリーアス・ハウア教育相(制憲議会=ANC=担当大統領委員会委員長)は、「反政府勢力が今ほど外国に従属し、その指令によって動くことはなかった。政府がANC構想を打ち出すや、フリオ・ボルヘス(MUD代表格の国会議長)は訪米し、米政府の軍事関係者に会った。彼らの政治組織(MUD)は外国政府(米国)に従属しており、憂うべき事態だ」と述べた。

 ハウアはまた、「MUDもかカトリック司教会議もANC開設のための対話を拒否している。我々は内戦になるのを危惧している」と語った。さらに、「18年末には大統領選挙がある。地方選挙(州知事・州会議員)が今年あるかどうかはわからないが、年末にやるということになれば、それで構わない」と述べた。

 マドゥーロ大統領は「母の日」に際し、「ANC議員の半数を女性にすることもありうる」との考えを示した。クーバ駐在のアリー・ロドリゲス大使はハバナで14日、「野党勢力(MUD)との対話が途絶えた今、ANCが唯一の打開策だ。彼ら(MUD)はマドゥーロ大統領排除のため危険な活動を激化させてきた。この緊張のガスを抜くためにも、ANCというバルブ開放が必要だ」と表明した。

 欧州連合(EU)は15日、ベネスエラ政府とMUDに対し、「緊急、建設的、実効ある対話」実施を呼び掛けた。スペイン政府が、この呼び掛けをまとめた。

 反政府行動は依然荒れている。首都カラカスに隣接するミランダ州内で13日、政権党国会議員ヘンケルベ・トバルの護衛2人が武装一味に拉致され、一人が射殺され、もう一人が重傷となった。非公式集計では、4月初めからの反政府派による暴動などによる死者は40人を超えた。

 ボリーバル州のフランシスコ・ランヘール知事は14日、州内の病院に配布する薬品、手術用機材などを保管していた倉庫が同日放火され炎上した事件で、反政府系分子の犯行と断定した。

 マイアミ周辺に多い在米ベネスエラ人組織は13日、ベネスエラ反政府勢力の別働隊の若者らに、催涙ガスよけの「防毒マスク」などを贈ったと明らかにした。

 国営ベネスエラTVは13日、「ベネスエラとウクライナ」というドキュメンタリ-を放映。解説者は、「2014年ウクライナでのヴィクトル・ヤンコヴィッチ大統領打倒運動は、当初の平和抗議から暴動に変わり、やがて外国(ロシア)の援助で戦闘となった。ベネスエラの現在の状況に似ている」と指摘した。
 

2017年5月14日日曜日

 トランプ米大統領にベネズエラ侵攻の誘惑高まるか。「コロンビア国境に米提供の武器集積、傭兵待機」とハバナ放送伝える。マドゥーロ大統領は「18年(末)に大統領選挙実施」と言明▼キューバが大規模な海岸線防衛演習実施へ

 ベネスエラへの米軍主導の軍事侵攻の危険性が高まっている。ドナルド・トランプ米大統領は、FBI長官更迭とロシア関連疑惑捜査をめぐり窮地に陥る可能性があると伝えられるが、窮地に陥れば「起死回生」策として、ベネスエラに軍事侵攻し、ニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派革新政権を倒す誘惑に駆られる可能性も高まることになる。

 ハバナ放送は5月13日、ベネスエラ西部国境沿いのコロンビア・ノルテデサンタンデル州ラゴンバリアに、国務省をはじめ米機関が提供した武器・兵站物資が集積されている、と伝え、米軍がコロンビア国内7カ所の軍事基地を使用している事実を指摘した。

 同放送はまた、国境線沿いの他の複数の地点に、軍事侵攻に備えて傭兵部隊が待機していると報じた。ベネスエラで逮捕されたテロリズムや破壊活動の実行犯にはコロンビア人の極右準軍部隊要員(パラミリタレス)が多く含まれている、とも伝えた。

 ブエノスイアレスでは11日、フェリーペ・ゴンサレス元スペイン首相が元首脳たちの会合で、「マドゥーロはベネスエラを腐敗国家、失敗国家にした」と断言した。これは「失敗国家」呼ばわりし、「軍事侵略やむなし」とする世論形成を狙ったもので、米軍事侵攻教書に盛り込まれている。

 かつてフランコ独裁後のスペイン民主化の旗頭だったフェリーペに、その面影はない。すっかり安楽な保守・右翼路線に乗ってしまっている。「元首脳陣を宣伝に使う」ことも、まさに侵略教書に盛り込まれている。

 米国が強大な影響力を持つ米州諸国機構(OEA/OAS、加盟33カ国および脱退宣言したベネスエラ)は15日ワシントンの本部で大使会議を開き、ベネスエラ情勢を討議する特別外相会議開催日程と場所を決める。ベネスエラは出席しない。

 外相会議が開催されれば、ベネスエラへの「米州民主憲章」適用、ベネスエラ脱退取り消し、「ベネスエラ追放」などが議題となり得る。同国に不利な決議がなされれば、軍事侵攻圧力は一層強まることになる。

 マドゥーロ政権の重鎮エリーアス・ハウア教育相(制憲議会=ANC=担当大統領委員会委員長)は12日、知識人との会合で、「反政府勢力はANC開設のための対話を拒否し、マドゥーロ大統領打倒だけを求めている。状況は疑いなく内戦に向かって進んでいる」と指摘した。反政府勢力の中核は、米政府と連携している保守・右翼野党連合MUDである。

 続けてハウアは、「反政府勢力指導部(MUD)は、米政府の最も反動的な勢力の指示の下に、兄弟殺しを促進しつつある」と、厳しい認識を示した。「ベネスエラに内戦が起きれば、ラ米全体が、がたがたになる」とも述べた。

 さらに、「彼ら(MUD)は、経済・社会が混乱していた時期には勝てると思って選挙実施を要求していたが、今はANC議員選挙を拒否している。現在の事態が彼らの挑発によってもたらされているため、彼らには都合が悪いのだ」との見方を打ち出した。

 ハウアは、「国家は合法的権力をもって平和構築に努めており、現在の最重要課題は、経済再建によって、ボリバリアーナ革命の最初の10年間のような繁栄の水準に到達することだ」と強調した。

 ローマ法王庁のピエトゥロ・パロリン国務長官は13日、法王フランシスコが訪問中のポルトガルで「ヴァティカンの立場は、ベネスエラ危機解決の方策は選挙実施だ」と述べた。

 マドゥーロ大統領は12日、「18年(末)に大統領選挙がある」と明言。同大統領の任期は19年初めまでであり、18年末には選挙が不可欠だ。

 大統領はまた、「街頭暴動(グアリンバ)は国土のわずか1%で展開されているだけだ。14年にはグアリンバを制圧するのに5カ月かかった。現在ファシスト右翼を打ち負かしつつあり、彼らは決定的敗北に向かっている。ゴルペ(クーデター)と武装蜂起に執着する輩には正義の鉄槌を下す」と強調した。

 マドゥーロ政権は体制固めの一環として、1月から「祖国身分証」を発給。13日までに1325万4000人が同身分証を取得した。この身分証所持者は、ミシオネスと呼ばれるさまざまな社会福祉政策を享受できる。政権には、有権者固めの狙いがある。

 首都カラカスをはじめ、各地でMUD派の抗議行動や暴力が断続的に続いている。カラカスでは10~11日に、政権支持派集会に参加していたチレ人左翼活動家ホセ・ムニョス=アルコオラが、2人組の殺し屋に機銃掃射され即死した。

 ムニョスは、ピノチェー軍政下のチレで「革命的左翼運動」(MIR)要員として軍政と戦い、その後、ニカラグア革命・内戦、コロンビア内戦で戦い、クーバにも滞在した。父親は治安警備隊大尉で、故サルバドール・アジェンデ智大統領の護衛だった。

 チレ「貧民ゲリラ軍」(EGP)の創設者でもある。ボリバリアーナ革命のベネスエラでは、チャベス派として活動していた。ムニョス暗殺は、外国諜報機関の指示があった可能性を示唆している。この事件発生は12日公表された。

 ベネスエラ最高裁は12日、右翼政党「新時代」(UNT)党員一人がカラカスで、自動ライフル銃FALを所持していたことなどから逮捕され、軍事法廷にかけられると発表した。

 外務省は13日、コロンビアの首都ボゴタ市が、ロック祭へのベネスエラ人歌手ポール・ヒルマンの参加を拒否したことに抗議した。ヒルマンはチャベス派政権支持の音楽家として知られている。

▼ラ米短信   ◎クーバが沿岸警備演習実施へ

 クーバの革命防衛委員会(CDR)と国境警備隊(TGF)は5月12日、CDR所属の「海洋監視分遣隊」(DMM)とTGFによる海岸線全域での合同作戦演習を15~19日に実施すると発表した。クーバ女性連盟(FMC)など大衆組織も参加する。

 この合同演習は12回目。ベネスエラ情勢が不安定な時期に実施される今回は関心を集めている。 
 
 
 
 
 
 
 

2017年5月12日金曜日

 米政府が対ベネズエラ「クーデター作戦」の「心理戦争」段階入りか。マドゥーロ大統領は制憲議会開設反対者を「クーデター支持者」と非難。ウルグアイは「反ベネズエラ十字軍」に反対▼グアテマラで戒厳令発動

 米政府の諜報・謀略機関CIA(中央情報局)のマイク・ポンペロ長官は5月11日、上院諜報委員会で、ベネスエラ情勢について証言。同国政府系の「武装集団」(コレクティーボス)が規制なしに活動する危険性が毎時高まっている、と述べた。また、ベネスエラでは武器が大量に出回っており、同国のみならず南米と中米にとっても脅威だ、と語った。

 これらは実態からかけ離れた極めて大げさな指摘であり、CIA教本「独裁から民主へ」の政変(ゴルペ・デ・エスタード=クーデター)誘発戦術の第4段階「心理戦争」に該当する。事態は危険な局面に徐々にのめり込みつつある。

 ベネスエラの保守・右翼野党連合MUDは、米戦略に従って、破壊活動を伴う反政府街頭行動を展開中。まさに教本および、米南方軍文書、米国務省に影響力を持つ米シンクタンクの文書の内容に沿ってMUDは動いている。

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派政権は4月半ば、MUDの言動が明確にゴルペを目指していると判断。破壊活動など重罪容疑者を軍事法廷で裁くことも含むゴルペ制圧作戦「サモーラ計画」で対処している。

 マドゥーロ大統領は11日、「制憲議会(ANC)開設のため実施中の対話に応じない者はゴルペ支持者だ」とし、「一にMUD、二に経団連、三はカトリック司教会議だ」と指摘した。

 政権は、憲法改正のためのANC開設を決定。進行中の国内各分野と広範な準備対話を重ね、6月にかけてANC議員選挙公示、直接投票実施にもっていきたい構えだ。この対話が拡がり、選挙が実施され、ANCが開設され、改定憲法起草と事が運べば、MUD、内外メディア、米国・反ベネスエラ諸国、米州諸国機構(OEA)が煽ってきた反政府行動は沈静化すると期待している。

 首都カラカスでは10日、27歳の青年が直径2cmの銃弾を狙撃手から見舞われて死亡した。大統領は、「MUDは狙撃手を使って市民を殺した。ファシズム戦略の一環だ」と非難した。

 さらに、MUD系ら富裕層の子弟が通うことの多い私学について、「憎悪、人種主義、暴力、反祖国を煽っているため捜査を命じた」と明らかにした。

 ベネスエラ外務省は11日、声明を発表。米国務省のフランシスコ・パルミエリ米州担当次官補が10日、MUDの主張と同じ「選挙による解決」を口にしたのを受けて、「米国は資金と兵站支援をベネスエラの暴力集団に与えてきた。その暴力的反政府勢力を善導するためANCを招集するのだ」と反撃した。

 声明は、「この暴力状況はOEA会議が4月3日、ベネスエラに対する敵対的内政干渉政策を決議したのに起因する。米国務省は同決議を用いて、最も暴力的で反民主的な勢力を支援してきた」と糾弾。

 さらに、「米現政権がブッシュ、オバーマ両政権の誤った対ベネスエラ政策を踏襲したのは遺憾だ」と表明。「米政府は今年に入ってから、ベネスエラの実情を捻じ曲げた敵対的声明を計105回発してきた」と述べた。

 MUDの街頭行動での別働隊の若者たちは数日来、糞便を瓶、プラスチックカップなどの容器に詰めた「ププトフ」を治安部隊に投げつけている。「モロトフカクテル」(火炎瓶)の「モロトフ」の「モロ」を、糞を意味する「ププ」に替えたものだ。当局は、これを「生物テロ兵器」と見なした。

 ララ州都バルキシメト市イリバレン区のアルフレド・ラモス区長は11日、反政府行動を取り締まらなかったためとして、区議会で弾劾された。カラカス首都圏のチャカオ、エルアティージョ両区長も暴動を制御しなかったとして、区民から告訴された。

 ベネスエラにとっての朗報は、ウルグアイのタバレー・バスケス大統領が10日、「ベネスエラを孤立させない、米州民主憲章を同国に適用しない、同国をOEAから追放しない。ウルグアイは反ベネズエラ十字軍に与せず、それに一石を投じる立場をとる」と決定したこと。ロドルフォ・ニン=ノボア外相が発表した。

 ウルグアイは、ベネスエラ政府の対話同伴国5カ国に属している。

 チレの左翼政党連合FA大統領候補ベアトゥリス・サンチェスは11日、マドゥーロ政権について「独裁ではない。人民から選挙で選ばれた」と指摘した。チレでは11月19日、大統領選挙が実施される。

 パナマのイサベル・サンマロ副大統領兼外相は10日、米州がOEA重視派とCELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)重視派に分極化するのを懸念し、分極化しないよう、米州諸国に呼び掛けた。

 リマでは11日、MUDの顔、フリオ・ボルヘス国会議長がPPクチンスキ(PPK)・ペルー大統領に会い、「ベネスエラの民主移行のため、ラ米諸国・機関の代表になってほしい」と要請した。PPKは断ったが、MUDの主張に理解を示した。PPKは、亜国のマウリシオ・マクリ大統領と並ぶD・トランプ米大統領のお気に入りで、反ベネスエラの中核にいる。

 マクリは11日ブエノスアイレスを出発、アラブ首長国連邦、中国、日本への歴訪の旅を開始した。中国では14~15両日の「一帯一路」構想首脳会合に出席する。来日は18~20日。

▼ラ米短信   ◎グアテマラで戒厳令発動

 グアテマラのジミー・モラレス大統領は5月11日、西部のサンマルコス、イスチグアーン両県に30日間の戒厳令を敷いた。メヒコ国境地方の県で、マヤ系先住民人口が多い。古くからの土地問題をめぐり住民同士が衝突。またメヒコ系武装麻薬マフィア組織の侵入もあり、戒厳令発動となった。

2017年5月9日火曜日

  ベネズエラ政権打倒のクーデターの陰謀が底流で進行。それを横目に、制憲議会(ANC)開設目指すマドゥーロ政権は諮問会合続ける。物産展も成功裏に終わる▼『世界』誌6月号が最新キューバ情勢分析記事を掲載 

 ベネスエラの保守・右翼野党連合MUDを中核とする反政府勢力、米州諸国機構(OEA)のL・アルマグロ事務総長および反ベネスエラ諸国、米政府、内外謀略メディア・NGOが連携してのゴルペ(クーデター)の陰謀が底流で進行する中、ニコラース・マドゥーロ大統領のベネスエラ政権は政経両面で政策を淡々とこなしている。

 「主権的物資供給大任務」(GMAS)の生産展が5月8日、5日間の日程を終えた。閉会式でマドゥーロ大統領は、「展示会の目的は国の製薬と食糧生産の能力を示すことだった」と述べ、723の個人、法人、特殊団体に巨額の振興融資をしたことを明らかにした。展示会には、民間企業89社、公共事業体42、人民組織27の、計158の産品などが展示され、3万人が見物に訪れた。

 政府は、国営(非石油)基幹産業の今年第1・4半期の鉄板などの輸出が1億270万ドルに達したと発表した。今年の輸出目標は10億ドル。去年の出来高は4億7000万ドルだった。ベネスエラは、「脱石油経済」建設という遠い目標に向かって地味な歩みを進めている。

 制憲議会(ANC)担当のエリーアス・ハウア教育相は8日、各界代表を招いての意見聴取・諮問会合の進展を強調。会合出席を拒否したMUDと、左翼諸政治運動・政党に出席を呼び掛けた。

 マドゥーロ大統領も、国軍強化と、民・軍一体化強化のため、ANCに積極的に提案してほしい、と国軍に要請した。

 一方、デルシー・ロドリゲス外相は8日、コロンビアのJMサントス大統領がベネスエラの民主や人権に関し批判的に発言したことについて、「コロンビアの内戦解決に尽力したベネスエラに背中から一刺し、独立と自由の歴史を共有する仲を裏切った」と厳しく指摘。「ベネスエラは、財界やメディアとつるんだコロンビア政府の組織的攻撃の標的にされている。サントスは、ベネスエラの反政府勢力と同じことを言っている」と非難した。

 続けて、「サントスは内政の失敗責任を覆い隠すためベネスエラを攻撃し、併せて米政府のお褒めに与ろうとしている」と糾弾。「内政干渉を止めよ。他国に教訓を垂れる前に、自国の諸問題に対処すべきだ」と突き放した。外相は、コロンビアで今年1~4月、人権活動家41人が殺害された事実などを列挙した。

 マイアミで8日開かれたベネスエラ反政府系の会合で、フロリダ州のリチャード・スコット知事は、「マドゥーロは即時辞任せよ」と言い放った。この暴言が、ゴルペ決行の条件醸成のために計算された一かけらであるのは言うまでもない。

★ラ米短信   ◎『世界』誌6月号がクーバ情勢分析記事掲載

 月刊誌『世界』6月号(岩波書店、5月8日発売)に、伊高浩昭執筆「トランプ米政権の出方探る社会主義キューバ  経済危機と世代交代が重なり苦悩するラウール議長」が掲載されている。最新のクーバ情勢分析記事。 
 
 

2017年5月8日月曜日

 ベネズエラの保守・右翼野党連合MUDは制憲議会(ANC)開設の政府案を拒否。反政府街頭行動を継続。筋書きは、アジェンデ政権を44年前倒したチリ軍事クーデター計画に酷似

 ベネスエラ政府による制憲議会(ANC)開設政策に対し、保守・右翼野党連合MUDは5月7日、同政策に正式に反対を表明、政府側によるANC開設に関する諮問会合への出席を拒否した。

 ANC幹部の一人でミランダ州知事のエンリケ・カプリーレスは、現行憲法と(MUDが反対する)改定憲法の二つが併存することになり、ベネスエラ統治は立ち行かなくなる、と述べた。

 MUDが、米国の対外政策関係のシンクタンクが書いたゴルペ(クーデター)の筋書き通りに動いていることが4月段階で明らかになっている。D・トランプ米大統領は秘亜両国大統領と既に会談し、米国の立場を説明している。

 ゴルペ計画内容は、H・キシンジャーが絡んだ1973年9月のチレ軍事クーデターの筋書きと酷似している。これを察知したミチェル・バチェレー智政権はエラルド・ムニョス外相をワシントンに派遣。同外相はレックス・ティラーソン米国務長官との会談後、「交渉による問題解決を支持する」と記者団に敢えて強調した。

 MUDの拒否を受けて、ANC担当大統領委員会のエリーアス・ハウア委員長(教育相)は7日、「野党勢力が民主政治から離脱し、暴力と外国による介入の道を選んだため、ニコラース・マドゥーロ大統領はANC開設を提案した」と指摘。「野党勢力がローマ法王の助言にさえ従わず、ANC提案を受け入れないということなら、我々はANCを開設する」と強調した。

 さらに、「(ANC議員約500人の)選挙区はCNE(国家選挙理事会=中央選管)が決める。職能・分野別選挙区と地域選挙区がほぼ半々になる」とし、「一連の諮問会合が済んだら、大統領は告示し、投票日を決める」と語った。

 演奏家や歌手など音楽家組織は7日、カラカスのチャカオ区で、演奏しながら行進した。殺し屋に4日撃たれ重体だった学生が7日死亡、非公式集計で一連の反政府行動関係の死者数は38人に達した。

 MUDは8日には、ハウアANC担当委員長のいる教育省にデモをかけることにしている。MUDは「恒常的内乱状況」を醸し、米国をはじめとする外部勢力の介入を誘導する戦略であり、破壊活動や殺傷事件をしばしば招いてきた街頭での挑発行動を止める気配はない。MUDは、活動資金が潤沢なことを示唆している。
 

2017年5月7日日曜日

 ローマ法王フランシスコがベネズエラに「真摯な対話」を求め、「不信と絶望に負けてはならない」と訴える。チリも話し合い解決支持。政府系・反政府系両派の女性が行進したカラカスでは、反政府武装組織を摘発。

 ローマ法王フランシスコは、ベネスエラの政府と反政府勢力に向けて、「真摯な対話の橋を架け、到達した合意を完遂する意志があれば、ベネスエラが直面している難題の解決は可能となる」と、書簡で訴えた。ベネスエラ司教会議が5月6日、明らかにした。

 法王は書簡で、「ベネスエラ情勢を憂慮しつつ見守っている。最近の衝突と暴力に胸が痛む」と表明。「双方が不信と絶望に打ち負かされないよう望む」と呼び掛けた。ベネスエラ司教会議は保守的で、反政府勢力寄りの姿勢が目立っているが、法王は中立の立場で書簡を書いている。

 スリア州政府は6日、州内ロサリオデペルハー市で市の施設やウーゴ・チャベス像が破壊されたことについて犯人を追及すると表明した。未確認情報では、容疑者14人が逮捕されている。州政府は、州内の彫刻家にチャベス像制作コンクールへの参加を求めている。1位の作品を、像が破壊された公園に設置する方針。

 政府は6日、首都カラカスで活動していた武装犯罪組織4団体を摘発、要員を逮捕し、さまざまな武器類を押収したと発表した。これらの組織は反政府勢力の側で、破壊活動や殺傷に関与した疑いがある。

 カラカスでは6日、政府側と反政府側の女性がそれあぞれ別々に大挙して行進した。赤シャツ姿の目立つ政府側は、「死に反対、平和に賛成」を叫び、白シャツ姿の反政府側は「抑圧反対」を訴えた。

 反政府側NGO「市民による安保・防衛・国軍規制」は、国軍の一翼を担うボリバリアーナ国家警備隊(GNB)の士官ら85人が、反政府勢力による街頭行動を規制する上官命令を拒否、逮捕されていると表明している。だが未確認情報。

 一方、エルネスト・サンペール元コロンビア大統領(前ウナスール事務局長)は5日、一定期間内の地方選挙と大統領選挙実施、それに備えた政党活動開始、国会の権限回復、の3点を打開策としてベネスエラに要請。「暴力を止めよう。過激主義はベネスエラを救わない」と反政府側に訴えた。

 ドナルド・トランプ米大統領は5日、ペルーのPPクチンスキ(PPK)大統領と電話で会談、「ベネスエラ問題に米秘は協働して対処する」と明らかにした。トランプはラ米首脳の中で、英語が堪能なPPKをワシントンに最初に招き、会談している。

 だがラ米では、PPKは亜国のマウリシオ・マクリ大統領に次ぐ保守・右翼色の濃い首脳と位置付けられており、そのうえPPKはベネスエラ駐在大使を引き揚げている。現状ではベネスエラが「米秘協働」に影響される可能性は極めて乏しい。

 チレのエラルド・ムニョス外相は5日ワシントンで、レックス・ティラーソン米国務長官と会談。その後、記者団に「ベネスエラ問題は交渉による解決を望む」と語った。ラ米もベネスエラ情勢をめぐって強硬派、穏健派、マドゥーロ政権支持派に分かれている。
  

2017年5月6日土曜日

 ベネズエラ情勢:制憲議会(ANC)選挙の準備過程進む。カラボボ州で反政府破壊活動関与の犯罪45組織を特定、軍事・刑事法廷送りへ。米政府は反政府野党連合MUDを厚遇。政府は「野党外交」取締へ▼ブエノスアイレス市がアスルドゥイ像撤去へ▼コレア赤道国大統領がキューバ訪問

 ベネスエラのネストル・レベロール内相は5月5日、カラボボ州内で反政府勢力と連携・連動して暗躍する「組織犯罪集団45団体を特定した。逮捕状を執行する」と発表。武器不法所持、殺傷、破壊活動、略奪、暴行などの容疑で「刑事法廷と軍事法廷で裁く」と述べた。

 スリア州ロサリオデペルハー市では、広場にあった故ウーゴ・チャベス前大統領の銅像が、反政府派の若者たちによって倒され、破壊され、燃やされた。私刑さながらの光景で、破壊された像は遺体のように路上に横たわった。

 5日には、負傷していた若者2人が病院で死亡。一連の反政府行動での死者は37人に達した。政府と、保守・右翼野党連合MUDの双方は6日、カラカスでそれぞれ、支持派の女性を動員して行進する。相互に「対抗行進」(コントゥラ・マルチャ)となる。

 制憲議会(ANC)担当のエリーアス・ハウア教育相は4日、大統領政庁(ミラフローレス宮)で、全国のコムーナ(コミューン)評議会の代表者たちと会合。ANC議員候補擁立、改憲条項草案策定などについて話し合った。

 ハウアは8日には、MUD諸党代表との会合を予定しているが、MUDからの回答はない。来週にかけてハウアは、州知事、市長、宗派、大学学長、大学生、先住民、労農、経営者などの代表たちとの会合も予定している。国内の各階層・職能分野と広く意見を交換したうえで、ANC議員選挙を実施するためだ。

 ララ州知事ヘンリー・ファルコン(MUD)は5日、ハウアとの会合に出席しないと逸早く表明した。ハウアは、「国内右翼勢力や米右翼はベネスエラが、あたかもリビアやシリアのような内戦状態にあるかのように国際世論に印象づけようとしてきた」と非難した。デルシー・ロドリゲス外相は、MUDに「暴力を止め、(ハウアとの)ANC会合に参加せよ」と呼び掛けた。

 同外相は、フリオ・ボルヘス国会議長が前日ワシントンで、米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長に会い、マドゥーロVEN政権が通告したOEA離脱決定を覆すよう、国会決議を添えて要請したことに関し、外交は政府の権限であり、ボルヘスを越権行為により法廷で処分する、と語った。外相は、ボルヘスはアルマグロと組んで、ベネスエラへの外国の介入を促進している、と糾弾した。

 アルマグロ(前ウルグアイ外相)の上司だったホセ・ムヒーカ前大統領は4日モンテビデーオで、「ベネスエラ情勢の反理性的過激化は右翼に利し、米国にトランプ政権がある今、極めて危険だ。ラ米人にとり特に危険なのは内政干渉という爆弾投下であり、アルマグロの行為はベネスエラのみならずラ米全体にとって危険だ」と、厳しく指摘した。

 国会議長ボルヘスは5日ワシントンで、ベネスエラ政権に厳しいラ米・カリブ諸国のOEA駐在大使たちと会合。続いてホワイトハウス(米大統領政庁)でマイク・ペンス副大統領、ハーバート・マクマスター安保担当大統領補佐官とOEA離脱阻止をめぐって会談した。米政府のこの厚遇ぶりは、米国とMUDの政治的癒着を象徴している。

 訪米中のエラルド・ムニョス智外相は5日、アルマグロと会談、「政治・外交交渉による事態打開を支持する」と伝えた。事務総長が固執する反マドゥーロ強硬路線とは距離を置く構えを示すものだ。

 OEAはベネスエラ問題だけを話し合う特別外相会議を22日開催する見通し。アルマグロは、ベネスエラ国会の離脱阻止要請を議題にしたい構えだ。これとは別にOEAの定例外相会合が6月20~21日、メヒコで開催される。

▼ラ米短信   ◎ブエノスアイレス市議会がアスルドゥイ像撤去を決定

 BsAs市議会は5月4日、大統領政庁(カサ・ロサーダ)裏に建つ、ボリビアと亜国北部独立の女性英雄フアーナ・アスルドゥイが独立戦争で戦う姿を描いたボリビア政府制作の銅像を撤去することを決めた。

 この銅像は、ボリビアのエボ・モラレス大統領から贈られたもので、2015年6月、当時のクリスティーナ・フェルナンデス亜国大統領によって除幕式が挙行された。

 政権がラ米右翼勢力の旗頭マウリシオ・マクリ大統領の手に移ったため、政権の史観や好みに合わない記念物は排除されることになる。

▼ラ米短信   ◎エクアドール大統領がフィデル墓参

 赤道国のラファエル・コレア大統領は24日の任期切れを前に3日、クーバのサンティアゴ市に到着、市内の聖母エフィフェニア墓地にあるホセ・マルティ廟とフィデル・カストロの墓に4日参拝。「2人は世界史に名を残したラ米の巨人だった」と述べた。

 コレアはハバナに移動、ラウール・カストロ国家評議会議長からホセ・マルティ勲章を授与された。また国立ハバナ大学から名誉博士号を授与された。 

2017年5月5日金曜日

 ロシアのロスネフト社がキューバに石油を供給。トランプ政権への鞘当てか▼ベネズエラ情勢: 反政府勢力による破壊活動激化で、カラボボ州に軍事法廷復活。政府は野党連合MUDに制憲議会選挙参加を呼び掛け

  露国営石油ロスネフト社は5月3日、クーバに25万トンの石油を輸出することで合意し、10日に最初の24万9000bが到着する、と発表した。その内訳は原油とディーゼル。総量25万トンをいつまでに輸出するのかや代金の額などは明らかにされていない。

 クーバはベネスエラから優遇条件で原油を輸入していたが、同国経済の悪化で供給量が半減、エネルギー事情が悪化、経済成長も昨年、マイナスに転じた。

 ラウール・カストロ議長は昨年7月から、プーチン政権に優遇条件での原油供給を求めていた。25万トンと量的には大したことはないにせよ、ここへきて露社が輸出に踏み切ったのは、関係が悪化しているトランプ米政権への牽制策と言える。

 ベネスエラ国営石油PDVSA(ペデベサ)は昨年、ロシアから借款を受ける際、担保として、同社所有の在米製油所CITGOの株の49・9%をロシアに渡した。これも米政府の神経を苛立たせた。

 ロシアは4月には、先にウラカン(ハリケーン)被害6300万dの出たクーバに、復興資金として150万dを贈っている。

★ベネスエラ情勢   カラボボ州で軍事法廷復活

 ボリバリアーナ国家警備隊(GNB)のアントニオ・ベナビデス長官は5月4日、武装決起、治安部隊への襲撃、略奪、破壊活動に関与した43人を逮捕、裁判を軍事法廷に委ねる、と発表した。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は4月17日、騒擾状態とゴルペ(クーデター)を未然に防ぐための「サモーラ文民・軍人合同計画」(プラン・サモーラ)を発動した。この計画には重大犯罪者を対象とする軍事法廷活用が含まれている。ネストル・レベロール内相も、カラボボ州で武装蜂起があった、との判断を示している。

 検察庁は、4月初めから4日朝までの反政府勢力の抗議行動および暴動で、死者35人、負傷者717人が出た、と発表した。死者はカラカス首都圏、カラボボ州が多い。

 アンソアテギ州にある地域工科大学では4日、学生会を開いていた学生会長フアン・ロペス(23)が、侵入した2人組の殺し屋から至近距離で銃撃され即死した。他の4人も重軽傷を負った。ロペスは政府支持派であり、警察は反政府勢力が殺し屋を雇ったとみて捜査中。

 刑務所管理相は、検事総長が3日「当局の実力過剰行使」に触れたことに関し、暴力、襲撃、破壊活動を続けている反政府暴徒のことをなぜ指摘しないのか、と批判した。電力相は5月になってから鉄塔破壊を試みた男3人が感電死した、と明らかにした。

 政府は、一連の暴動で破壊され放火され略奪された店舗に4日、総額110億ボリーバルの復興手当金を支給した。

 マドゥーロ大統領が政令で打ち出した制憲議会(ANC)議員選挙について、その担当官エリーアス・ハウア教育相は4日、ANCおよび選挙の説明会に出席するよう、保守・右翼野党連合MUDに呼び掛けた。

 MUDの顔、フリオ・ボルヘス国会議長は4日ワシントンの米州諸国機構(OEA)本部でルイス・アルマグロ事務総長に会い、ベネスエラのOEA脱退を認めないとする国会決議の文書を手渡した。

 ムヒーカ・ウルグアイ前政権の外相だったアルマグロは反マドゥーロの急先鋒で、ムヒーカ前大統領から絶縁されている。バスケス現ウルグイア政権の政権党連合「拡大戦線」(FA)に属する左翼政党「民族解放運動トゥパマロス」(MLN-T)は4日、アルマグロをベネスエラ政変誘発の陰謀に加担していると糾弾した。

 クーバ系右翼の共和党議員ら米連邦議会議員十数人は4日、ベネスエラ情勢を国連安保理で話し合うよう、トランプ政権に要請した。

 デルシー・ロドリゲスVEN外相は4日、コロンビアのマリーア・オルギン外相が前日、ANC開設がベネスエラ問題の解決に寄与するとは思わないと発言したことに関し、内政干渉として一蹴。「組織的に人権蹂躙を続けてきたコロンビア支配勢力にはなおさら、他国に干渉する倫理的資格はない」と扱き下ろした。

 だがコロンビアおよび亜PAR伯CR・HON・GUA墨の8カ国政府は4日、VEN政府に「過剰警備をやめ人権を尊重するよう」呼び掛けた。反政府派暴徒による破壊活動や治安部隊襲撃には触れていない。デルシーの激しい反撃を招くのは必至だ。

 レックス・ティラーソン米国務長官は4日、欧州諸国と協働してベネスエラ問題に対処したい、と述べた。マドウーロ政権はMUDとの対話実現のための回路として、従来からの南米諸国連合(ウナスール)の対話仲介団に、ラ米・カリブ諸国連合(CELAC)の対話促進団4カ国をこのほど加えた。 

2017年5月4日木曜日

 ベネズエラ大統領が制憲議会選挙実施決定を告知。政府・野党MUD間の対話促進国団にエル・サルバドールなどCELAC4カ国決まる▼プエルト・リコが財政破綻を宣言▼パナマ運河第3閘門式水路を旅客船が初の通航

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月3日、政令で数週間以内に制憲議会(ANC)議員選挙を実施する、と告知した。大統領はチャビスタ(政府支持派)に対し、棄権者が出ないよう組織を開始するよう呼び掛けた。

 保守・右翼野党連合MUDを中核とする反政府勢力に対しては、「改定憲法が将来の選挙の基盤になる。多数派を自認する野党は選挙実施を要求しているが、ANC議員候補を立て、多数派であることを示せ」と促した。

 マドゥーロはさらに、「チャベス派はANCで、2015年の釘(国会議員選挙での惨敗)を抜き、ボリバリアーナ勝利の道を復活させる機会を得る」と強調。「ミシオネス(各種社会政策)を廃止できないよう憲法に盛り込む。改憲で暴力か平和かを選ぶことができる」と述べた。

 国家選挙理事会(CNE)のティビサイ・ルセーナ議長は政令を受けて、「ANC選挙で難題解決のための国民対話の場ができる。きょう始まった改憲への新しい過程は国を安寧に導き、誰にも幸いする」と指摘した。

 デルシー・ロドリゲス外相は、前日のCELAC外相会議でベネスエラ対話促進協力国にエル・サルバドール(CELAC議長国)、ドミニカ共和国(同前議長国)、ニカラグア、セントヴィンセント&グラナディーンの4カ国が決まった、と発表した。

 反政府勢力の抗議行動と、その前衛に位置する若者たちの別働隊の行動は3日も首都チャカオ区アルタミーラを中心に展開され、治安部隊ともみ合った。一人が死亡、火炎瓶を受けた別働隊の若者1人を含む約170人が負傷した。

 別働隊は投石や火炎瓶で治安部隊を攻撃した。野党所属のチャカオ区長は区警察に別働隊を規制させず、別働隊の背後を護衛に守られて行進した。それがビデオで流された。

 別働隊は治安部隊を攻撃して挑発、規制される様子を「弾圧」としてビデオに収め、内外にユーチューブで流す戦術をとっている。これにより国際社会での反マドゥーロ政権世論を醸成、打倒しようという戦略だ。

 4月初めから5月3日までの街頭破壊行動での死者は34人、負傷者は700人に上る。一部には治安部隊の行き過ぎた規制行動も指摘されるが、ルイサ・オルテガ検事総長は3日、米WSJ紙によるインタビューで、「国家が遵法でないと、市民に合法行動を要求できない」と語った。

 ルイス・モッタ電力相は、反政府地下勢力による送電塔など電力施設への破壊活動が起きていることに関し、「改憲で電力施設破壊者への刑罰を厳しくすることができる」と表明した。

 一方、亜国人左翼でパルラスール(南部共同市場加盟国議会)議員のオスカル・ラボルテは、4月末にワシントンでマクリ(亜国大統領)とトランプが会談したことについて、トランプは亜伯両国軍を使ってベネスエラを攻めたい考えではないか、と述べた。

▼ラ米短信    ◎プエルト・リコが財政破綻

 米植民地(米自由連合州)プエルト・リコ(PR)のリカルド・ロセジョー知事は5月3日、負債730億ドルを抱え財政が破綻した、と発表した。返済期限は2日で切れていた。

 PRは6月11日、PRを米国の正式な一州にするか、独立するかの島民投票実施を予定している。だが財政破綻で実施が危ぶまれている。

▼ラ米短信    ◎パナマ運河第3水路を初の旅客船が通航

 パナマ運河庁(ACP)は5月2日、世界最大級のコンテナ運搬船コスコ(1万3425個積載)がパナマ運河第3閘門式水路を太平洋側からカリブ海へと通航した、と明らかにした。

 また4月29日には、米超大型旅客船デズニーワンダー号(乗客2700人)が第3水路を、旅客船として初めて通航した。米フロリダ州カニャベラル港から加州サンディエゴ港までの2週間の航海途上だった。

 第3水路は去年6月26日に営業が開始され、一日平均5・9隻が通航している。旅客船通航は4月1日から通航受付が始まっていた。10月からの18年度には超大型旅客船18隻が通航予約済みという。

2017年5月3日水曜日

 ベネズエラ国軍がマドゥーロ大統領の制憲議会選挙提案を支持。反政府野党連合MUDはジレンマに陥る。CELAC外相会議は対話路線支持。「域内の問題話し合うのに米国は不要」とキューバ外相

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月2日、制憲議会議員選挙を3日告知すると発表した。国軍(FANB)は、ブラディミロ・パドゥリーノ国防相名で、「外部勢力による内政干渉、反政府勢力の政治的不寛容、反政府勢力過激派による暴力・蛮行・不安定化行動を前にして、広範な世論を喚起する名案だ」と、支持を表明した。

 反政府保守・右翼政党連合MUDは、大統領提案を前にディレンマに陥っている。提案を受け入れれば、街頭行動による「騒擾状態」演出で政権打倒に持ち込む戦略が中断を余儀なくされる。拒否し選挙を蹴れば、2005年12月の国会議員選挙時にボイコットした結果、国会全議席をチャベス派に奪われた苦い経験の再来となる。

 逆に見れば、どう転んでもマドゥーロ政権に有利な選挙提案であり、ここに政権側の狙いがある。米国務省の西半球担当次官補マイクル・フィッツパトリックは、「ベネスエラはまたも試合中に規則を替えた」と反応した。MUDと連携してマドゥーロ政権を倒したい国務省にも、マドゥーロ提案は「意外な隠し球」だったようだ。

 MUD幹部のヘスース・トレアルバは、、「MUDには、闘争続行のために十分な内外からの支援がある」と述べ、資金が潤沢なことを臭わせた。

 2日もMUDの別働隊が破壊活動を繰り返した。オンブズマンのタレク・サアブは、カラボボ州バレンシアでオンブズマン事務所が略奪され放火されたと発表、犯人の若者を映したビデオ映像を公開した。これで破壊されたオンブズマン事務所は全国で8カ所となった。

 ララ州では、MUD派暴徒が国営石油PDVSAの油送車一台に放火、炎上させた。また首都カラカス市チャカオ区では、警官一人がMUD派暴徒に暴行され、私刑に遭う前に救出された。

 一方、サンサルバドールでは2日、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)の緊急外相会議が開かれた。エル・サルバドール(ES)のサンルバドール・サンチェス=セレーン大統領は開会演説で、「合法政権下にあるベネスエラが早期に安寧・安定を回復するために、兄弟諸国として連帯しつつ努力を払おう。ベネスエラ憲法の枠内で対話による解決を図るのが正しい道だ」と呼び掛けた。

 会議は非公開だった。今会議開催を要請したベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は、閉会後の記者会見で、「対話と安寧のために建設的、有益、協力的な会合だった。対話過程に参加するよう要請した国々はみな受諾してくれた」と語った。

 さらに質問に答える形で、「反政府勢力(野党)の一部は叛乱を目指している」と糾弾。「ベネスエラはワシントンの命令下に置かれることなどまっぴらごめんだ。アルマグロ(事務総長)のOEA(米州諸国機構)は国際法違反だ」と非難した。

 ベネスエラの同盟国クーバのブルーノ・ロドリゲス外相は、「討議は建設的で対話を支持し、ベネスエラ人民への主権と独立への支持が際立った」と指摘。「CELACは、OEAと異なり、我々独自の思想、精神、文化に彩られている。LAC(ラ米・カリブ)域内の問題を話し合うのに、域外の大国(米国・カナダ)を加える必要はない」と、米加両国が加盟しているOEAを批判した。

 ボリビアのフェルナンド・ウアンクニ外相は、「ベネスエラ問題は、外部からの押し付けや政治的利害抜きで対処せねばならない」と強調、OEAの内政干渉を批判した。

 しかし、内政干渉に固執する伯PAR秘墨のラ米4カ国と、ベネスエラから援助を受けていないカリブ英連邦系のTT・バハマ・バルバドスの3国、計7カ国は外相も代理も派遣せず、欠席した。全会一致制をとるCELACの今外相会議は、共同声明を策定できずに閉会した。

 議長を務めたウーゴ・マルティネスES外相は、「声明は出せなかったが、問題の深刻さを軽減して、今月後半ドミニカ共和国(RD)で開かれる別のCELAC会合に臨むことができる」と述べた。

2017年5月2日火曜日

 ベネズエラのN・マドゥーロ大統領が制憲議会を開設し「人民憲法」制定と発表。デルシー外相がラ米8カ国を内政干渉で糾弾。野党指導者夫人が「反政府行動は無政府主義と蛮行に堕した」と嘆く。サンサルバドールで2日CELAC外相会議開催へ

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月1日、首都カラカスでの「国際労働者の日」の政府支持派労働者大集会で演説、「平和を確立し、ファシストクーデターの陰謀進行を打ち破るための手段が他にないため、労働者階級は人民制憲議会を開設し、独自性のある新しい憲法を制定する」と強調、少なくとも500人の制憲議会議員を選出する選挙を実施すると発表した。

 大統領は、故ウーゴ・チャベス前大統領が1999年に制定した現行のボリバリアーナ憲法を「強化するため」と説明した。これに対し、メイデー行進を首都で別途実施した反政府勢力の指導部である、保守・右翼野党連合MUDは猛反発し、徹底抵抗する方針を打ち出した。MUDは、18年末に予定される次期大統領選挙の早期繰り上げ実施を政府に要求している。

  しかしエリーアス・ハウア大統領制憲議会委員会委員長(教育相、社会開発・ミシオネス革命担当副大統領)は2日、野党を含む全政党に制憲議会開設とその選挙に関し説明会を開くよう命じられた、と発表した。ハウア委員長は、現行憲法には「クーデター政権による憲法廃止を防ぐ条項がない」として、同条項を盛り込むなど憲法強化が必要との考えを示した。

 ローマ法王フランシスコは4月29日、ベネスエラの対話確立のための交渉はMUDが分裂したため成功しなかったと発言、ローマカトリックが主流のベネスエラをはじめとするラ米全域に衝撃を与えた。MUDは1日、法王への公開書簡を発表、「我々は分裂しておらず団結している」と前置きし、「我々が受け入れる対話は選挙だけ」と念を押した。

 法王は1日、発言の影響の大きさに鑑みベネスエラ情勢に関しローマであらためて発言、「ベネスエラ政府と同国社会の全構成者に対し、暴力が極限に達するのを避け、交渉による解決を図るよう呼び掛ける」と述べた。マドゥーロ大統領は、「法王は政治対話醸成のため最大の努力を払っており、敬意を表したい」と謝意を表した。

 2度目の法王発言にMUDは反応していないが、コロンビア外務省の主唱で亜URU伯PAR智コロ秘CRのラ米8カ国政府が賛同。併せて、「人権尊重、暴力行使停止、法治国家回復、<政治囚>釈放、国会機能回復、選挙日程発表」を呼び掛けた。

 これを受けてデルシー・ロドリゲスVEN外相は1日、「非合憲政権ブラジルおよび他の7カ国は、国際法を破り、ゴルペ(クーデター)を奨励する重大な過ちを犯した」と8カ国政府を糾弾した。

 ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領は「ベネスエラを不安定化させている右翼勢力」を非難、マドゥーロ政権断固支持を表明。エル・サルバドールのサルバドール・サンチェス=セレーン大統領もマドゥーロ政権支持を打ち出した。同国の首都サンサルバドールでは2日、ベネスエラ情勢をめぐるCELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)の緊急外相会議開催が予定されている。

 ハバナ革命広場での労働者100万人行進で演説したクーバ労働者中央連盟(CTC)のウリーセス・ギラルテ書記長も、マドゥーロ政権無条件支持を表明、ベネスエラへの内政干渉を続ける米州諸国機構(OEA)と「域内反動勢力」を糾弾した。

 マドゥーロ大統領は4月30日、4年間の施政を振り返って、チャベス前政権の公約を遂行してきたと強調、住宅160万戸を建設したと成果を自賛した。

 4月初めから激化している反政府勢力による抗議行動と、その別働隊による破壊活動については、「街頭暴動を凌いで秩序と安寧を維持してきた」と述べながらも、「右翼による蛮行とテロリズムは社会を混沌とさせた。彼らによる4月の行動は待ち伏せの暴力行為であり、ベネスエラを反革命ファシズムに陥れるための策謀だった」と厳しく非難した。

 さらに「文民と軍人の団結で祖国と憲法を守ろう。平和への権利と人命尊重を考えつつ省察しよう」と述べ、「OEA脱退決定はアルマグロ(OEA事務総長)への強烈なボディーブローになった」と指摘。「ベネスエラのOEAからの解放は、<我らのアメリカ>にとり悲劇である旧態依然たるOEAの終焉の第一歩となるだろう」と語った。

 大統領は、最低賃金と食糧購入券(計14万8000b=ボリーバル)を5月1日から60%引き上げ、20万bにすると発表した。闇ドル市場で20万bは約50ドル。年金も連動して引き上げられた。財界や非政府系労連は、生産増大を伴わない賃上げはインフレを招く、と批判している。

 一方、MUD幹部ヘンリー・ラモス前国会議長の妻ディアナ・ダゴスティーノが父親フランコ・ダゴスティーノと交わした電話通話が29日暴露された。ディアナは、「反政府抗議行動は無政府主義、蛮行に堕落した。VP(人民意志)党員が特にひどい。ベネスエラを炎上させよたいかのようだ。PJ(まず正義を)も同じだ。カプリーレス(PJ党首)は(2度大統領選挙に敗れて)失うものが何もない。彼も街を燃やそうとしている」と嘆いている。

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は29日、「OEAによる反ベネスエラ決議は反ボリビアでもある。米国によるベネスエラ侵略にアルマグロは加担するな」と事務総長に警告した。モラレスはベネスエラが一大産油国であるのを念頭に、「ラ米での過去のゴルペは、人民蜂起、左翼政権、天然資源保護のある国々で決行された」と指摘した。ボリビアも原油、天然ガス、金、亜鉛、リチウムなど地下資源が豊かだ。 

2017年5月1日月曜日

 アルゼンチン軍政(1976~83)に肉親を奪われた「五月広場の母たち」が抗議行動開始40周年を迎え、ブエノスアイレスで記念行事挙行

 アルヘンティーナ(亜国)軍政期(1976~83)に少なくとも3万2000人が殺害された。その多くは拉致されたまま「行方不明」になり、遺体・遺骨は見つかっていない。この恐るべき人道犯罪には、当時のニクソン米政権や南米南部の軍政諸国も関与した。

 この国家テロリズムを果敢に追及してきた勇気ある市民団体が亜国に幾つかある。代表的な組織(NGO)は「五月広場の母たちの会」、「五月広場の母たちの会-創設者路線」、「五月広場の祖母たちの会」である。

 肉親、とりわけ娘や息子の命を軍政に奪われた母たちは1977年4月30日、ブエノスアイレス市中心街の大統領政庁(カサ・ロサーダ)前の「五月広場」で軍政に「息子・娘を返せ」と叫び、抗議行動を開始した。それから丸40年が過ぎた。

 軍政は、母親たちの集会にスパイを送り込み逮捕、航空機に乗せて、生きたままラ・プラタ川に投棄した。後に2人の母親の遺体が河口近くの岸に流れ着き、軍政の蛮行が明るみに出る。

 彼女たちは、父、兄弟姉妹、夫、息子・娘、孫らを失った。抗議すれば命を奪われたり弾圧されたりした。その風雪の40年を深い皺に刻みつつ耐えてきた彼女らの生存者たちは、多くは車椅子で、支援者らとともに4月30日、五月広場を行進した。広場では、「行方不明」になったままの多くの人々の顔写真と拉致された当時の状況を書いた文字が展示された。

 「母たちの会」は、民政移管が1983年に成った後、党派性、指導部選出、政権と距離の取り方などをめぐって対立、86年に分裂した。分派したのは、無党派で、突出した指導者を持たない水平組織の「創設者路線」(ノラ・コルティーニャスら集団指導)。一方、「母の会」はエベ・デ・ボナフィニ会長の強力な指導の下、ペロン主義者色を鮮明にしてきた。

 孫を奪われた祖母たち約600人が結成した「祖母たちの会」(エステラ・デ・カルロット会長)は、この4月23日、奪われた赤子をまた一人発見した。122人目で、39歳になる女性だ。「祖母たちの会」は「創設者路線」と協働している。

 「創設者路線」指導者の一人コルティーニャスはこの日、記者団を前に、「軍政期の犠牲者は3万人余では少なすぎる。もっと多かったはずだ。軍政期の機密文書を公開せよ」と、マクリ現政権に訴えた。

 さらに、「大統領よ、間違ってはいけない。あなたたち政治家の言動は記録され歴史になる。拒絶者として歴史に名を残すことになるのだから」と、文書公開を拒否しないよう求めた。

 「母たちの会」のエベ会長は、「マクリ(大統領)よ、ヤンキー(トランプ米政権)と愚かな取引するのを止めよ。さもないと、そのうち尻に一発かまされるぞ(裏切られる)」と激しい言葉を吐き、ワシントンでトランプと会談したばかりのマクリを糾弾した。また、「(政府は)対話に応じよ。呼び鈴を決してならすな(軍政期のような連行は許さない)」と厳しく要求した。

 この日、マクリは1日繰り上げた「国際労働者の日」(メイデー)の、各労連による行事のうち、ペロン派保守派の「62労組」の集会に顔を出した。エベは、これをも批判、「彼らは(労組とは言っているが)働いていない」と遣り込めた。