2016年9月27日火曜日

★★★コロンビア和平調印、54年続いた内戦終結

 コロンビア・カリブ海岸のカルタヘーナ市にある会議センターで9月26日、1960年以来続いていた政府軍とゲリラ組織コロンビア革命軍(FARC)の内戦に終止符を打つ「最終和平合意書」の調印式が催され、JMサントス大統領とロドリーゴ・ロンドーニョFARC最高司令(ゲリラ名ティモチェンコ)が調印。内戦は正式に終焉した。

 署名には、銃弾で作られたペンが用いられた。戦争から平和に移行するという意味が込められてる。会場には「喜びの歌」の曲が流れた。

 双方は2012年11月からハバナで和平交渉を続け、今年8月、停戦に合意した。FARCは9月半ば過ぎ全国代表者会議を開き、和平合意で一致した。FARCは武装解除、社会復帰を経て、政党として政治に参加する。

 今回の内戦終結により、米州に残存していた東西冷戦の残滓がほぼ消えた。残るは、コロンビアの第2のゲリラ組織「民族解放軍
」(ELN)と政府の和平で、交渉による和平は時間の問題となった。

 サントス大統領は調印後の演説で、「世界から戦争が減った。コロンビアの戦争がなくなったのだ!」と歓喜、「これは単なる署名ではない。もう戦争はこりごりだというコロンビア人の宣言だ」と指摘した。さらに「問題が終わったわけではない。克服すべき問題が残っている」と述べた。

 ロンドーニョ司令は、「我々FARCに起因する全犠牲者に謝罪する」と切り出し、拍手を浴びた。サントス大統領を「勇気ある交渉相手」と讃え、「今後は非武装で政治に参加する。心も武装解除する」と強調。和平交渉の保証国となったクーバとノルウェー、交渉同伴国となったベネスエラとチレに謝意を表した。またラウール・カストロ玖議長、故ウーゴ・チャベスVEN前大統領、ニコラース・マドゥーロ現VEN大統領の名前を挙げて感謝した。

 調印式にはラ米20カ国のうち、大統領選挙を控えているハイチとニカラグアなど数カ国を除く15カ国以上の大統領とラウール議長が出席した。

 パン・ギムン国連事務総長も出席したが、国連はラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)にFARCゲリラ集結、武装解除、停戦監視、和平検証の任務を委託している。

 米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長も出席した。OEAは、地雷除去に協力する。コロンビアはアフガニスタンに次い敷設・放置された地雷が多い国とされている。

 ジョン・ケリー米国務長官、ホセ・ムヒーカ前ウルグアイ大統領、フアン=カルロス前スペイン国王、世銀・IMF・米州開銀の各理事長らも出席した。ケリー長官は調印式後、マドゥーロVEN大統領と両国関係について会談した。

 コロンビアでは10月2日、調印された和平合意への承認を懸けた国民投票が実施される。世論調査では、有権者の3分の2は賛成している。

2016年9月25日日曜日

キューバが安倍首相と李中国首相に「差」をつける

 中国の李克強首相は9月24日、クーバ公式訪問のためハバナに到着した。これまで中国からは最高首脳の国家主席が訪玖しており、首相の訪玖は初めて。22~23日訪玖した安倍首相と入れ替わるように来訪した。

 空港には、ラウール・カストロ国家評議会議長の後継者、ミゲル・ディアスカネル第1副議長が出迎えた。22日に訪玖した安倍首相を空港に出迎えたのは、国家評議会に6人いる副議長のうち、ディアスカネル(第1副議長)、ホセ=ラモーン・マチャード(共産党第2書記)、ラミーロ・バルデス(革命司令官)に次ぎ序列第4位のサルバドール・バルデス=メサだった。

 クーバと中国との関係は日玖関係と比べ圧倒的に太く、玖政府としても首脳来訪時に「出迎え待遇差」をつけざるを得なかった。安倍首相はクーバ滞在中、中朝両国に批判的な発言をしたが、玖側は、それに直接的に応じることはなかった。出迎えに差をつけたのは、クーバ政府が友好国である中朝に気を遣った表れでもある。

 ディアスカネル第1副議長は6月来日し、安倍首相と会談。ラウール議長からの招待を首相に伝えた。これを受けて今回の訪玖が実現した。一方、李首相もカストロ兄弟と会談。12項目の経済協力協定を結んだ。

★チレ短信  米国務省は9月21日、オルランド・レテリエル元チレ外相のワシントンでの暗殺(1976年9月21日)の40周年に際し、中央情報局(CIA)の機密文書を公開、暗殺を命じたのは故アウグスト・ピノチェー元チレ軍政大統領だったと確認した。

 米人工作員マイクル・タウンリーがレテリエルの乗用車の車体の下に遠隔装置の爆弾を仕掛け、元外相と米人女性秘書を爆殺した。諜報部員だったチレ陸軍士官アルマンド・フェルナンデスが後方支援した。

 米国を公式訪問していたミチェル・バチェレー智大統領は元外相暗殺40周年に際し、事件現場を訪れ追悼した。

▼エクアドール短信  エクアドール(赤道国)は9月23日、国連発展途上「77カ国グループ」(G77)の議長国に就任した。任期は1年。ラファエル・コレア大統領が議長を務める。

★コロンビア短信  コロンビアのカルタヘーナで9月26日、内戦終結最終合意書の調印式が催される。JMサントス大統領とFARCのティモチェンコ最高司令が調印する。全部隊代表者会議を開いていたFARCは23日、和平合意を全会一致で承認した。調印式にはラ米諸国の首脳が数多く出席する。

▼ベネスエラ短信  ベネスエラがクーバに供給している原油は日量52500バレルで、最盛期の40%減とされるが、BMI調査では日量83500bで20%減。ベネスエラ原油は9月23日時点で、1b=37ドル強。


  

2016年9月23日金曜日

安倍首相がキューバ訪問、カストロ兄弟と会談

 安倍首相は9月22日昼、NYからハバナに到着、日本の首相として初めて訪玖した。首相はフィデル・カストロ前国家評議会議長(90)を私邸に表敬、核問題などについて1時間余り会談した。

 フィデルは議長時代に2度来日、2度目の2003年3月には念願だった広島市を訪問、爆心地跡に立った。その時の衝撃についても語った。

 首相は革命広場でホセ・マルティ像に献花。その裏手にある革命宮殿(政府・共産党本部)でラウール・カストロ議長と会談した。双方は、日本からの12億円の無償援助による医療機材提供で合意。

 首相はクーバの友好国・北朝鮮に対し、拉致事件解決や核実験停止などを働き掛けるよう協力を要請。ラウール議長は、日本政府が対玖債権1200億円を帳消しにしたことへの謝意を表明。双方は関係強化で一致した。首相はこの日、在留邦人・日系人代表と会合した。

 一方、欧州連合(EU)は22日、1996年以来の「民主化へ圧力をかけるための対玖共通姿勢」を公式に廃止。加盟諸国に
対玖協力と政治対話への支持を促した。「共通姿勢」は96年当時のアスナール・スペイン右翼政権の主導で定められた。

ベネズエラ大統領罷免国民投票は来年2月実施か

 ベネスエラ国家選挙理事会(CNE、中央選管)は9月21日、ニコラース・マドゥーロ大統領罷免の是非を問う国民投票の実施申請に必要な署名収集は10月26~28日の3日間と発表した。この国民投票は憲法で保障されており、保守・右翼野党連合MUDが申請手続きを進めてきた。

 同3日間にMUDは、全国23州およびカラカス首都圏でそれぞれ、有権者の20%の署名を集めなければならない。署名には爪印(拇印)が必要で、指紋記録機を用いる。MUDは全国6500カ所に計19500台の記録機が必要と主張していた。ELNは1356カ所に計5392台しか認めなかった。

 今年4月30日現在の18歳以上の有権者は1946万人で、その20%は389万人。400万人近い有権者の署名を3日間で集めるのは容易ではない。

 いずれにせよMUDが署名を集めたら、CNEは15日以内(11月半ば)に検証する。検証の結果、有権者20%の署名が正しいと判断されれば、CNEは3日後、国民投票を告示。投票は告示日から90日以内に実施されることになる。

 それは2017年2月に該当する。重要なのは、この点にある。憲法は、現職大統領の任期が半分(3年)経過後、3分の2(4年)を過ぎない期間に実施され、罷免賛成票が罷免対象の大統領の当選時得票数を上回れば罷免が成立し、新大統領を選ぶための大統領選挙を実施すると規定する。

 だが任期4年を過ぎた後に投票が実施されれば、大統領が罷免されても、副大統領が残り任期を暫定大統領として全うする、と規定されている。マドゥーロは13年4月当選、就任したが、その任期は、故ウーゴ・チャベス前大統領の同年1月10日に始まった新任期の残り期間。つまり来年1月10日でマドゥーロの任期は3分の2を超えることになる。

 来年2月の投票実施ならば、マドゥーロ大統領が罷免されても、アリストーブロ・イズトゥーリス副大統領が暫定大統領に就任できる。チャベス派は、この暫定期間にじっくり選挙戦略を練り、有力候補を用意することができる。

 MUDの戦略は、1月10日前の投票で大統領を罷免、勢いを駆って大統領選挙で勝利するというもの。その戦略が事実上不可能になった今、MUDは22日、別の合憲戦略を練るか、それとも14年前半に展開したような非合法の街頭騒擾事件を起こすかなど、打つべき次の手について討議する。

 一方、デルシー・ロドリゲス外相は21日、ベネスエラが非常任理事国を務める国連安保理で、米軍によるシリアでの軍事行動を非難した。

★ニカラグア短信  ニカラグア国会(1院制)は9月21日、今月10日死去したレネー・ヌニェス議長を新国会が開会する来年1月9日まで引き続き議長職に据えるよう決議した。実質的には、イリス・モンテネグロ副議長が議長役を務める。

 ニカラグアでは11月6日大統領および国会議員選挙があり、ダニエル・オルテガ現大統領が3選出馬する。新議長の人選は、選挙後に後回しにされたわけだ。「架空の議長」に留まったヌニェスは、大統領の信頼厚い盟友だった。

2016年9月21日水曜日

ベネズエラ政府が米軍偵察機による領空侵犯を発表

 ベネスエラのブラディミロ・パドゥリーノ国防相は9月20日、米軍沿岸偵察機Dash-8型機が16~17両日、カリブ海マルガリータ島近海上空のベネスエラ領空を侵犯した、と発表した。

 両日は同島で第17回非同盟運動(Mnoal)外相会議と首脳会議が開かれていた。ニコラース・マドゥーロVEN大統領は17日、任期3年のMnoal議長に就任した。偵察機はMnoal会議情報などを収集していたもよう。

 発表によると、問題の偵察機はベネスエラ沖の蘭領クラサオ(キュラソー) の基地を発進。VEN空軍戦闘機が緊急発進し、領空侵犯を警告したところ、領空外に出て、クラサオ基地に帰投した。

 国防相によると、今年になってから米軍機は無通告でVEN沿岸上空を32回飛行した。昨年11月25日に領空侵犯した際には、米軍は侵犯を認めたという。

 デルシー・ロドリゲスVEN外相は近く国連総会で、この米軍機の領空侵犯および事前通告違反について糾弾し、米蘭両政府に責任を正すことにしている。マドゥーロ大統領はMnoal議長として国連総会で演説すると見られていたが、内政を理由に欠席を決めた。

★コロンビア短信  コロンビアのネストル・マルティネス検事総長は9月20日、コロンビア革命軍(FARC)が和平合意に基づき撤退したメタ、ナリーニョ両州の旧FARC支配地域に他の勢力が侵入しつつある、と警告した。

 侵入しているのは、もう一つのゲリラ組織・民族解放軍(ELN)とFARC武闘継続派、および麻薬組織や極右準軍部隊など。政府はELNとの和平交渉開始に合意しているが、正式交渉は始まっていない。コロンビア世論は69%がELNとの和平にも賛成している。

▼メヒコ短信  メヒコ検察庁は9月20日、米連邦捜査局(FBI)の技術協力により、強制失踪させられた教員養成学校生43人の遺体・遺骨が埋められている可能性のある穴墓40カ所を特定した、と明らかにした。発掘調査を開始する。

 2014年9月26~27日の事件発生当時の警察などによる1000回を超える携帯電話通話歴を調べたところ、イグアラ、コクーラ両市の市警だけでなく、近隣のウイツコ市の警察も事件に関与していたことが判明したという。

2016年9月20日火曜日

日本が首相訪問前に対キューバ債権1200億円を放棄

 日本政府は安倍首相のクーバ訪問に先立つ9月19日、対玖公的債務1800億円のうちの1200億円(約11億6500万ドル)を帳消しにした。ハバナでの同合意書には、リカルド・カブリーサス副首相兼経済・企画相(元駐日大使)と渡辺優駐玖大使が署名した。

 日本も加盟する債権国グループ、パリクラブは昨年12月、対玖債権110億ドルのうち利子分を免除し、元本26億ドルをクーバが返済することで合意していた。日玖は、残る600億円の返済繰り延べ交渉に入る。

 イランのハッサン・ルハーニー大統領は19日クーバを公式訪問、ラウール・カストロ国家評議会議長と会談した。両首脳は17~18日、ベネスエラでの第17回非同盟運動首脳会議に出席していた。大統領はフィデル・カストロ前議長を表敬した。

 一方、ワシントンポスト紙は19日、米玖国交再開は本質的に米大企業と玖軍部の協力関係であって、玖人民の基本的人権は優先されていないと指摘。「こうした関係は革命前の米政府とバティスタ政権との関係を想起させる」と述べた。

 同紙は、「米国人は昨年16万人が訪玖、ひとり50ドルの観光許可証を取得したが、計800万ドルに及ぶ」と前置きし、「外貨不足に悩むクーバにとって、これは決して小銭ではない」と書いた。

 また、観光など玖経済の大きな部分を軍部が握っている実情に触れ、「玖民間強化支援というオバーマ大統領の対玖国交再開目的に照らしてどうだろうか」と、問題提起している。

★ラ米短信  南部共同市場(メルコスール)の伯ウルグアイ亜パラグアイ4カ国はニューヨークで外相会議を開き、10月10~14日ブリュッセルで同市場と欧州連合(EU)の自由貿易協定(FTA)交渉を再開することを決めた。

 メルコスール加盟国のベネスエラは外相会議に招かれなかった。テメル伯政権は、同市場からのベネスエラ排除を目指している。  

 

2016年9月19日月曜日

10月2日、浅草公会堂で「東京タンゴ祭2016」開催

★ラ米短信  ベネスエラのマルガリータ島で9月17日始まった第17回非同盟運動(MNOAL)首脳会議(120カ国・地域)は18日、21項目の「マルガリータ宣言」を採択して終了した。次回首脳会議はアゼルバイジャンで2019年に開かれる。

 同宣言の柱は、当ブログも昨日伝えた11項目。会議では、開発途上諸国グループ「G77」がMNOALに連携を呼び掛けた。ボリビアとエクアドールの大統領は、新自由主義に反対するラ米進歩主義諸国の政権を倒そうとする勢力による陰謀(新「コンドル作戦」)がうごめいている、と指摘した。

★「竹田邦夫メキシコ彫銀作品展」 9月22日(木)~10月2日(日)、1200~1900、「土日画廊」で=東京都中野区上高田3-15-2、電話03-5343-1842=。最寄駅は、西武新宿線新井薬師駅、徒歩5分。

★「深化するブラジル音楽傑作65選を聴く」  9月24日(土)1400開場、1430開演。渋谷Li-Po=東京都渋谷区渋谷3-22-11、サンクスプライムビル4階A=で。電話03-6661-2200。出演 濱瀬元彦、司会:LATINA編集部 花田勝暁、坂本悠。入場料1000円。

★「東京タンゴ祭2016」 10月2日(日)1600開場、1630開演。浅草公会堂で。入場料4500円。問い合わせ:LATINA 03-5768-5588。

★月刊LATINA誌10月号(9月20日発売) 伊高浩昭執筆「ラ米乱反射 」連 載第126回「ブラジルに正統性なき政権出現  五輪宴(うたげ)の後、<クーデター>が完成」。

☆同誌掲載書評:『サバイバー 池袋の路上から生還した人身取引被害者』(マルセーラ・ロアイサ著、常盤未央子・岩崎由美子共訳、ころから、1800円) 売春を強制されたコロンビア人女性が「日本」を告発する。
 



2016年9月18日日曜日

ベネズエラのマドゥーロ大統領が非同盟議長に就任

 第17回非同盟諸国運動首脳会議が9月17日、ベネスエラのマルガリータ島都ヌエバ・エスパーニャで開かれ、同国のニコラース・マドゥーロ大統領が非同盟議長に就任した。任期は3年。

 会議は18日までの2日間。イラン大統領ハッサン・ロハーニ前非同盟議長、パレスティーナのマハムード・アッバス議長、ジンバブウェのロバート・ムガベ大統領、ラウール・カストロ玖議長、エクアドールのラファエル・コレア大統領、ボリビアのエボ・モラレス大統領、エル・サルバドールのサルバドール・サンチェス=セレーン大統領が出席している。

 またセントヴィンセント・グラナディーンのラルフ・ゴンサルベス首相、アンティグア・バーブーダのガストン・ブラウン首相、ニカラグア副大統領、スリナム副大統領らも出席。前回イランでの首脳会議には首脳35人が出席したが、今回は10人ちょっとと少ない。国連のパン・ギムン事務総長は、国連総会首脳会合の準備を理由に欠席、ビデオメッセージで挨拶した。

 18日発表される「マルガリータ宣言」の案文をテレスール放送が報道。内容は11項目。
①南代表を安保理常任理事国にするなど国連改革でなく国連再建を目指す
②BRICSなどの登場を受けて国際新経済秩序構築を新たに目指す
③国連が昨年採択した「2030年計画」は、債務および植民地・主義・新植民主義・新自由主義に起因する問題を超克するための最優先課題
④通信報道情報伝達向上が重要であり、ラ米多国籍テレビ「テレスール」は好例
⑤強国による内政干渉や非通常型戦争に対抗するため「平和の文化」、賢人的対話、民族自決を前面に打ち出す
⑥南から「緑の政策」を打ち出すなど地球温暖化対策
⑦パレスティーナの大義実現に向け努力する
⑧クーバへの迫害と経済封鎖をなくす
⑨プエルト・リコの脱植民地実現
⑩中東難民問題への対処
⑪テロリズム対策および不安定化攻撃に対する攻撃に対する闘争。

 16日には会議場前で、故ウーゴ・チャベス前VEN大統領銅像の除幕式が催された。チャベス像は右手を天に向けて高く掲げている。

★クーバ短信  共産党機関紙グランマの副編集局長カリーナ・マローンは6月末、玖ジャーナリスト連盟(UPNC)総会で、1994年ハバナ市内マレコン通りで起きた暴動事件(マレコナソ)のような事件が再び起こりうると警告、共産党および政府メディアの社会的対応を批判した。

 ウェブメディア「クーバネット」が9月17日伝えた。マローン発言をブログで流したオルギン放送のホセ・ラミレス=パントハ記者は、その後、同放送を馘首されたが、最近オルギン州の文化部門に就職したという。

 一方、クーバ公式訪問中のモンゴルのツァヒアギーン・エルベグドルジ大統領は9月16日、ラウール・カストロ議長と会談した。

▼コロンビア短信  コロンビア革命軍(FARC)は9月17日、第10回全国を会議開催した。最高幹部が政府と交わした内戦終結のための最終和平合意文書を討議、賛成するもよう。   

2016年9月17日土曜日

メキシコ市で大規模な大統領辞任要求デモ実施さる

 メヒコ独立記念日前日の9月15日、首都メヒコ市中心部で1万人が参加する「大統領辞任要求」の抗議行進が実施された。理由は、人権蹂躙、無能、腐敗、卒論剽窃、「トゥランプ米共和党大統領候補との会談で味わわされた屈辱」など。

 制度的革命党(PRI、保守・右翼)のエンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)大統領は2012年12月就任、あと2年2カ月余り任期が残っているが、支持率は23%と低迷している。

 人権問題に関しては、就任後、1万5000人が国内で強制失踪で行方不明のまま。特に14年9月26~27日ゲレロ州イグアラ市一帯で発生した教員養成学校生43人強制失踪事件および6人殺害事件は、今月で丸2年経つのに未解決のままだ。

 この日の抗議行進の先頭には同43人の家族・遺族、友人、学生、教員らが並び、人権団体、市民団体、知識人、芸術家、労組員、一般市民が続いた。

 「EPNを罷免し、裏切者として収監せよ」、「この政府には怒りで我慢できなくなった」、「我々は少数者ではなく、尊厳だ」-などと書かれたプラカードや紙を人々は掲げていた。

 行進は、レフォルマ大通りの独立記念碑から、大統領政庁(国家宮殿)のある憲法広場(ソカロ)までの予定だったが、警察機動隊がソカロに続く道の入り口でデモ隊を阻止した。このためデモ隊は、フアレス大通りに面したアラメダ中央公園のベニート・フアレス廟前で解散した。

 15日夜は、EPNがソカロに面した政庁中央バルコニーからソカロの群衆に向けて「独立戦争開始の早鐘」を鳴らす重要行事があった。

 メヒコの国家社会開発政策評価評議会(CONEVAL=コネバル)によると、メヒコ人口の半分に当たる5500万人が貧困で、うち1140万人は極貧状態にある。カルデナス改革政権(1934~40年)の後は保守右翼政権が続き、特に80年代からは新自由主義政権が支配、効果的な貧困対策がとられてこなかった。

 一方、非難の矢面に立っているEPNは独立記念日恒例の軍事行進があった16日、市内の陸軍第一駐屯地で、軍事行進に参加した国軍高官、士官、軍曹ら2万3000人のうち1万6000人を招いて昼食会を開いた。大統領は演説で、「国軍はメヒコの支柱だ」と強調した。

 学生43人失踪事件には、イグアラ駐屯の陸軍第27歩兵大隊が関与した疑いが濃厚。だが政府は、同大隊への第3者機関による捜査を阻止してきた。

★エクアドール短信  ロンドンのエクアドール(赤道国)大使館に2012年から亡命滞在している豪州人ジュリアン・アサンジ(ウィキリークス創設者)は9月16日、赤道国政府から亡命継続許可の確認を受けた。

 同氏は10月17日、同大使館内でスウェーデン当局者の尋問を受けることになっている。同国で発生した女性暴行事件の容疑が
アサンジにはかけられている。同氏は否定している。

▼コロンビア短信  コロンビアでは10月2日、内戦終結合意の是非を問う国民投票が実施されるが、最新世論調査では、和平賛成55・3%、反対38・3%、未賛否決定4・3%だった、前回調査では賛成64・8%、反対28・1%だった。

 賛成が減ったのは、極右アルバロ・ウリーベ前大統領、保守アンデレス・パストラーナ元大統領らが和平反対運動を展開していることなどによる。

 今月26日にはカルタヘーナで和平最終合意書の署名式があり、コロンビア大統領およびラ米13カ国首脳が出席する。ウリーベとパストラーナは16日共声明を発表、ラ米13カ国首脳の出席は国民投票の投票動向に影響を与え、その結果「内政干渉」になるとして、カルタヘーナに来ないよう要請した。

 一方、「ノーベル平和賞受賞者協会」は9月16日、内戦終結を見込んで、受賞者会合を来年コロンビアで開くことを決めた。  
  

2016年9月16日金曜日

テメル・ブラジル政権がベネスエラに外交で報復

 ブラジル外務省は9月14日、南部共同市場(メルコスール)の伯パラグアイ亜ウルグアイ4カ国外相が共同声明で、同市場の輪番制議長国の役割を合同で担うことを決めた、と発表した。

 半年交代の議長国は7月からベネスエラが担うことになっていたが、5月発足したテメル伯代行政権とカルテス・パラグアイ政権の両右翼政権がベネスエラ就任に反対。マクリ右翼政権の亜国は、スサーナ・マルコーラ外相が国連事務総長選挙に立候補しているため、ベネスエラなどラ米左翼陣営の支持票を必要としていたことから曖昧な態度をとっていた。

 ところが同外相の当選可能性が遠のいたため、マクリ政権は伯パラグアイ両国に同調。メルコスール本部のあるウルグイアはベネスエラの議長国就任を支持していたが、周辺3国が反ベネスエラで足並みをそろえたため、なびいてしまった。

 4カ国外相共同声明はまた、12月1日までにベネスエラが未批准のメルコスール政治、経済、人権規約を批准しなければ、同国は加盟資格停止となる、と通告している。

 ブラジルでは8月31日、ヂウマ・ルセフ大統領が国会で弾劾罷免され、汚職まみれのテメル代行が後継大統領に就任した。この政変をテメルらによる「制度的クーデター」と捉えるベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は直ちに対伯外交を凍結、ブラジリア駐在大使を召還した。

 テメルは、他の3国に働きかけ、メルコスールからのベネスエラ追放も辞さない強硬な決定に漕ぎつけ、ベネスエラに報復した。マドゥーロ大統領退陣を求めているベネスエラ右翼・保守野党連合MUDは、メルコスール4カ国声明に賛意を表した。

 12月初めベネスエラが資格停止となれば、カリブ海からパタゴニアまで南米大陸を貫くメルコスールは再びブラジル以南の4カ国だけとなる。

 4カ国声明に対し、ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は、ベネスエラは議長国の任務を既に果たしつつあり、断じて拒否すると反駁した。

 ベネスエラのカリブ海の保養地マルガリータ島では17~18両日、第17回非同盟諸国運動(MNOAL)首脳会議が開かれ、マドゥーロ大統領が任期3年の議長に就任する。テメルが主導した4カ国声明は、MNOAL議長国就任直前のベネスエラに水をかける形となった。

★亜国短信  スサーナ・マルコーラ亜国外相とアラン・ダンカン英外交担当閣外相は9月13日ブエノスイアレスで会談、亜国経由のマルビーナス(フォークランド)諸島首都ポートスタンリー(PS)行きの航空便を月2回とすることで合意した。

 現在、チレLAN航空機が毎週土曜にサンティアゴ-プンタアレナス-PS往復便を運航。第2土曜日だけ亜国リオガジェゴを経由することになっている。今後、ブエノスアイレス経由便を加える公算が大きいとされている。

 双方はまた、経済協力強化で合意した。チレ航空機の亜国経由便を月往復2便にすることも協力強化の一環。

▼伯国短信  ブラジル検察庁は9月14日、ルーラ元大統領夫妻を腐敗、資金洗浄の容疑で起訴した。ルーラ側は、2018年10月の次期大統領選挙に当選が確実視されてきたルーラを出馬させないためのテメルら右翼・保守勢力の陰謀と糾弾している。

★コロンビア短信  コロンビア革命軍(FARC)は9月17~23日、カケター州サンビセンテデカグアーンのジャリー平原で第10回全体会議を開き、政府と間で合意済み内戦和平最終合意を受け入れることを決める。

 会議には代議員200人が出席。最高司令ティモチェンコ、和平交渉代表イバン・マルケスら最高幹部たちも出席する。会議を内外メディア350社の700人が現地で取材する。

 この会議の決定を受け、JMサントス大統領とティモチェンコ司令は9月26日カルタヘーナで最終和平合意書に署名する。この式典には、クーバのラウール・カストロ議長およびベネスエラ智秘赤パラグアイ墨ドミニカ共和国グアテマラ・エルサルバドール・オンドゥーラス・コスタリーカ巴の12カ国大統領が出席を予定している。

 伯亜ウルグイア・ボリビア・アイチ・ニカラグアの大統領は欠席・代理派遣になるもよう。一部が直前に翻意し参加する可能性もある。カルタヘーナでの署名に続き10月2日、コロンビアは国民投票で和平合意を最終決定する。

2016年9月15日木曜日

安倍首相が来週半ば過ぎキューバ訪問へ

 安倍首相が9月18~24日の期間に、NYでの国連総会出席に続いて22日ごろクーバを訪問することになった。14日の日本政府の発表によると、商談・投資環境改善による日本企業進出促進、日本の対北朝鮮懸案解決への協力取り付けが柱。

 首相はハバナで、ラウール・カストロ国家評議会議長(85)およびフィデル・カストロ前議長(90)と会談する。日玖首脳会談は、1995年12月東京での村山首相とフィデル議長(当時)、2003年3月東京での小泉首相とフィデル議長の会談に次いで3度目となる。

 首相来訪に懸けるクーバ側の最大の懸案は、日本の対玖債権1800億円のうちの1200億年の徳政。つまり帳消しだ。日本財界は既に民間債権を大幅に徳政している。

 次いで政府開発援助(ODA)10億円程度の供与だ。日本は医療機材を援助するもよう。9月6日ハバナでラウール議長の後継者となるミゲル・ディアスカネル第1副議長と会談した山口公明党代表は、カストロ兄弟宛ての安倍首相の親書を渡したが、この会談で、日本国際協力機構(JICA)事務所設置などで一致している。

 玖側はこれまで、日本が医療機材、薬品を提供し、それをクーバの医師、看護師らが使って第3国での災害救援活動に当たるという、国際的な合同支援活動を日本側に働き掛けてきた。

 クーバはまた、観光産業隆盛に伴い、高級観光ホテル内での和食レストラン設置を考えており、このため日本語習得、料理人育成への協力をJICAに要請してきた。

 北朝鮮関係では、日本側はこれまで訪玖した岸田外相ら閣僚3人をはじめ外務省高官を通じ、また来日した玖外相らを通じて、拉致事件解決への協力を要請してきた。

 安倍首相の訪玖は日本首相として初めてだが、オバーマ米政権下での昨年の米玖国交再開によって可能になった。日本民間のによる対玖友好関係は以前から活発で、1960年代後半から70年代前半にかけては、日玖文化交流研究所の故・山本満喜子所長が率いた砂糖黍刈り援農隊の活動が際立っていた。

 その後は、15回に及ぶNGOピースボート(PB)世界就航船のクーバ寄港(ハバナ13回、サンティアゴ2回)、音楽・スポーツ交流などが続けられてきた。

 フィデル前議長は2010、11両年、PB船客各1000人のうちの希望者約600人と会見している。PBは来月NYからバハマを経てハバナに入港する。こうした米玖港間の直接航海は第3国旅客船には昨年まで不可能だった。

 ちょうど今、阪本順治監督、オダギリジョー主演の映画「エルネスト」の撮影がクーバで為されている。革命家チェ・ゲバラの部下としてボリビアに遠征、1967年8月末にボリビア軍に処刑された日系2世フレディ・マエムラ(前村、父親は鹿児島県人の移民)の生き方・死に様を描くドキュメンタリードラマである。

 フレディの姉、故マリー・マエムラ著『革命の侍』(松枝愛訳、伊高浩昭監修、2009年、長崎出版)を基にした映画で、来年10月9日のゲバラ没50周年に合わせて公開される。「エルネスト」は、ゲバラの名であり、フレディのゲリラ名でもある。
 

2016年9月13日火曜日

ベネズエラ原油の対キューバ供給代金は265億ドル上回る

 ベネスエラ国営石油PDVSA(ペデベサ)は、故ウーゴ・チャベス前大統領が2000年10月にフィデル・カストロ前玖国家評議会議長と結んだ「統合的協力協定」に基づき、対玖原油供給を開始、当初は日量5万3000bだった。

 クーバは、医療保健、教育、スポーツ、文化各分野の専門家を派遣。原油と人材の<物々交換>となった。02年4月のチャベス体制打倒のクーデター未遂事件後、クーバから軍事および諜報の専門家がベネスエラに派遣された。

 PDVSAの報告では、対玖原油供給は04年、日量9万2000bに増えた。06~15年の9年間の日量は9万4000bだった。この9年間の原油代金を国際価格で計算すると、265億dに達する。

 クーバ側からの人材提供への代価を原油代金の半額と考えると、ベネスエラは130億dを上回る持ち出しとなる。現在減りつつある同国の外貨準備高は121億dであり、その倍以上に上る。

 今年上半期から対玖供給日量は40%以上減ったが、これは経済危機に陥っているベネスエラが現金収入を得られる輸入先を優先せざるを得なくなったためなどによる。

 クーバはエネルギー危機に陥り、7月以降、ロシア政府に供給可能性を打診。クーバの窮状を見かねたアルジェリアは9月初め、原油を当面10~12月の3カ月、供給することを決めている。

★ブラジル短信  ブラジル国会下院本会議(定数470)は9月12日、エドゥアルド・クーニャ前下院議長の下院議員資格を剥奪した。クーニャは国営石油ペトロブラスから巨額の賄賂を受け取り、これをスイスの銀行口座に隠しながら、「国外に口座は持っていない」と証言していた。

 ところがスイス政府が、クーニャ口座の存在を暴露、クーニャはブラジル倫理評議会にかけられることになった。昨年12月、クーニャは、ルセフ政権が倫理評議会にかけられるのを阻止しなかったとして逆恨みし、同月、下院にルセフ大統領弾劾手続き開始を許可した。その結果、国会上院に5月、弾劾法廷が設定され、8月31日、大統領は弾劾罷免された。

 クーニャ追放は、賛成450、反対10、棄権9で決まった。下院議員の190人および上院議員49人が収賄事件関連で捜査対象になっているが、国会議員腐敗の象徴がクーニャだった。クーニャは既に、収賄、資金洗浄、不正資金国外隠匿で起訴されている。

 クーニャの盟友で、ヂウマ罷免によって大統領になったミシェル・テメルも収賄事件に関与。クーニャ失脚が「臭いものに蓋」で終わらず、クーニャが再び逆恨み戦略に出れば、テメルを含む腐敗政治家らに火の粉が及ぶ可能性がある。 

2016年9月11日日曜日

ウルグアイで10月から大麻を条件付きで合法販売へ

 ウルグアイ国家麻薬評議会(JND)は9月9日、2013年12月成立の麻薬関係法に基づき、10月から大麻を合法販売する、と明らかにした。大麻栽培希望者、購入希望者、販売希望薬局は9月中に各地の郵便局で登録する。

 消費量は一人週10g、月40gまで。価格は1g=1・2米ドルになるもよう。全国50登録薬局で販売される見通し。栽培者にも栽培量などの条件が課されている。

★ハイチ短信  アイチでは10月9日、やり直し大統領選挙が実施される。1カ月と迫った9月9日、24人の候補者が出そろった。ミシェル・マルテリ前大統領の与党だった「テトゥカレ・アイチ党」(PHTK)のジョヴネル・モイスが昨年10月25日の大統領選挙第1回投票で得票率32・81%で、決選に1位で進出することになったが、大がかりな投開票時の不正が明らかになり、決選が実施されないまま無効とされ、再選挙となった。

、モイスの他、ルネ・プレーヴァル元大統領の政党「アイチ進歩・解放のための代替連盟」(LAPEH)のジュディ・セレスタン(昨年得票率25・27%で2位)、ジャン=ベルトゥラン・アリスティド元大統領の政党「ラバラス家族党」のマリース・ナルシスらが、前回同様、名を連ねている。有権者は600万人。

 決選がなく次期大統領が決まらないまま今年2月、ミシェル・マルテリー大統領が任期切れで退任。ジョスレム・プリヴェール暫定大統領が政権を運営してきた。

 選挙は毎回、暴動や殺傷事件を伴いがちのため、国連アイチ安定化派遣団、アイチ国家警察が厳戒態勢を敷き、米州諸国機構(OEA)監視団120人が展開する。

▼ベネスエラ短信  ベネスエラのマルガリータ島で17~18日、非同盟諸国運動(MNOAL)首脳会議が開かれる。ニコラース・マドゥーロ大統領が任期3年の議長に就任することになっている。

 政府は、実務者会合、外相会合などが始まる13日以降、18日まで同島に厳戒態勢を敷く。

▼チレ短信  チレ軍事クーデターでアジェンデ社会主義政権が倒れてから9月11日で43周年。この日、故サルバドール・アジェンデ大統領の娘イサベル・アジェンデ上院議員は、2017年の次期大統領選挙にバチェレー現政権の政権党連合「新多数派」から出馬する意向を確認した。

 「新多数派」陣営からは、JMインスルサ元外相(前OEA事務総長)、リカルド・ラゴス元大統領らも出馬意志を表明している。

  

エクアドル、コロンビア、コスタ・リカが経済水域境界線を画定

 ラ米太平洋岸のエクアドール(赤道国)、コロンビア、コスタ・リカ(CR)3国は9月9日、エクアドール領ガラーパゴス諸島サンタクルース島プエルト・アヨーラで首脳会合を開き、3国経済水域境界を最終的に画定する文書を交換した。

 特に赤道国ガラーパゴス諸島とCRのココ諸島の周辺の経済水域の画定が懸案だった。31年越しの交渉がようやく実った。

 会合にはラファエル・コレア赤大統領、コロンビアのJMサントス大統領、CRのLGソリース大統領が出席した。

★クーバ短信  ブルーノ・ロドリゲス玖外相は9月9日ハバナで記者会見し、1962年に当時のケネディ米政権が発動した対玖経済封鎖による玖側の累積損害は7536億8800万ドルに達する、と発表した。2015年4月~16年3月の1年間では、46億8000万ドル。

 外相は、バラク・オバーマ米大統領は、14年12月の対玖国交正常化合意発表時に、経済封鎖を効果のない過去の遺物と指摘しながら、21か月経った今も解除されていない、と指摘した。

 国連総会で恒例となっている経済封鎖撤廃決議案採決は今年は10月26日実施される。クーバ政府は毎年この時期になると、経済封鎖問題を外交の中心に置いて活動を活発化させる。

 
 

2016年9月10日土曜日

産油国アルジェリアがキューバに原油供給か

 産油国アルジェリアのブーテフリカ政権筋は9月7日、クーバに10~12月、毎月51万5000バレルずつ原油を供給すると明らかにした。クーバは1999年のチャベス・ベネスエラ政権発足後、同国から原油の供給を受けてきたが、マドゥーロ政権の現在、政経両面の危機にあり、原油供給量が今年前半40%減った。

 これによりエネルギー危機に直面したクーバのラウール・カストロ議長は7月、プーチン露政権に優遇価格による原油供給の可能性を打診した。だがロシア政府は、クーバの代金支払い能力を疑問視している。そんな時にアルジェリアがクーバに助け船を出した。

 クーバは1959年の革命後、対仏独立戦争中のアルジェリアを軍事支援した。クーバが医療チームを派遣した最初の国もアルジェリアだった。

 両国の絆は長く続いており、ラウール議長は2009年2回、15年5月と、計3回、アルジェリアを訪問している。クーバは年間2~3億ドルの石油派生製品を同国から輸入してきた。アルジェリア国営石油ソナトゥラチが対玖原油供給に当たるもよう。

★ブラジル短信  ブラジルの全国工業連盟(CNI)とアルヘンティーナの亜国工業連合(CNA)は9月9日ブエノスアイレスで会合し、貿易、投資、技術協力強化のため、「伯亜企業理事会」(CEMBRAL=センブラル)結成で合意した。

 両国の右翼政権はパラグアイと共に、南部共同市場(メルコスール)からベネスエラを排除する形で同市場を麻痺させており、これに代わる経済市場を強化するためCENMBRAL結成に動いた、と分析されている。

 一方、ブラジルでは、正統性に欠けるテメル新政権に即時退陣を求める抗議行動が9月4日から全国的に続いている。「土地無き者の運動」(MST)、労働者唯一中央同盟(CUT)など4団体が中心に動いており、「大統領選挙即時実施」を要求している。

 ヂウマ・ルセフ合憲大統領を8月31日、国会弾劾裁判で強引に罷免して成立したテメル政権は、テメル自身が300万ドル収賄の嫌疑がかけられている腐敗政治家だ。選挙民から「弾劾は事実上のクーデターだった」と糾弾されてきた。
 

2016年9月8日木曜日

エル・サルバドールのMフネス前大統領がニカラグアに亡命

 エル・サルバドール(ES)のマウリシオ・フネス前大統領(56)は妻、および息子3人と共にニカラグアに政治亡命した。ニカラグア政府が9月6日発表した。フネスはESで、大統領期(2009~14)の不正蓄財、影響力不当行使などで追及されている。

 ES最高裁は今年2月、フネスを取調べる許可を検察庁に与え、当局は8月フネスの邸宅などを家宅捜索した。フネスは大統領選挙出馬時、選挙運動を任せたミゲル・メネンデスの企業に大統領就任後、政府事業を優先的に発注。見返りに利益を得ていた疑い指摘されている。不正蓄財は少なくとも30万ドルとされる。

 フネスは身の危険を感じたとして6月からマナグアに滞在していたが、ES検察庁が起訴に向けて本格的な捜査を開始した8月末、亡命を決意。9月1日ニカラグア外務省に申請、2日許可された。

 ダニエル・オルテガ大統領が書記長を務める政権党FSLNと、ES政権党FMLNは友党。サルバドール・サンチェス=セレーンES現大統領は、前任者フネスを支持している。

 フネスは検察庁の捜査を「政治的迫害」と反駁している。FMLNのメダルド・ゴンサレス書記長は6日、フネスは大統領在任中、フネスの前の政権まで政権党だった極右野党ARENA(国民共和同盟)所属の元大統領フランシスコ・フローレス(故人)の公金横領罪による捜査を後押ししたとみなされ、ARENA幹部らから逆恨みされて「腐敗捜査」対象にされていると指摘。亡命を進めたのは自分だと明かした。

 ES当局の捜査対象には、フネス現夫人および、母親の異なる長男(34)、さらに別の母親の次男(25)も含まれている。現夫人との間の3男は2歳。

 政治評論家には、ブラジル保守・右翼勢力がルーラ元大統領を不動産不正入手などで起訴し、ルーラの政治生命を奪おうとしているのと、フネス迫害は状況が似ていると指摘している。人気のあるフネスには、将来的に政権復帰の可能性があると見られている。

2016年9月7日水曜日

カントリー音楽の王ハンク・ウィリアムズの短い全盛期描いた映画「アイ・ソー・ザ・ライト」を観る

 私の小学校時代は、ハンク・ウィリアムズ(1923~53)の全盛期にして晩年だった。日本を占領していた米軍の極東放送(FEN)から連日、「ジャンバラヤ」が流れていたのを記憶している。教室では、誰がハンクのような裏声を出せるか、競争したものだ。

 ハンク・トンプソン、ハンク・スノーを加えた「3人のハンク」がカントリー界にいるのを知識として仕入れ、自慢する同級生さえいた。私は、ハンクの歌の中では「マンション・オン・ザ・ヒル」(丘上の大邸宅)が好きだった。
     
 この米国映画の試写会の案内状を手にした時、これは絶対に観落とすまいと決意した。だが9月6日、試写会の最終日に辛くも観ることができた。酷暑の下、目黒駅近くの会場まで足を運んだのだ。だが、その意味はあった。

 全編123分終始流れるハンクのヒット曲を楽しんだ。特訓で自ら歌った英国人主演俳優トム・ヒドルストンの歌なのだが、決して悪くはなかった。この役者は2014年の撮影時43歳だったが、20歳も若い23歳のハンクを演じたのだ。

 題名の「アイ・ソー・ザ・ライト」(私は光を見た)は、「神との魂の出合い」を歌ったもので、「アメイジング・グレース」と歌詞が似ている。この歌は、ハンクの長男ランドール(ハンク・ウィリアムズ2世)が生まれた時と、ハンクが死んだ時の2つの場面で効果的に使われている。ハンク2世はカントリー歌手として活躍してきた。

 私はカントリー好きが昂じて駆け出し記者のころ、休暇をとってテネシー州ナッシュヴィルに行き、カントリーの聖地グランド・オール・オプリ(「大きく古いオペラ劇場」を意味)を見学、カントリー街を歩き回って歌を聞きまくった。当時の一番人気は「シティー・オブ・ニューオーリンズ」だった。私はバンドにチップを払って、テネシー州歌「テネシーワルツ」を演奏してもらった。

 この映画は、カントリー好き、ポピュラー音楽好きには欠かせない傑作だ。監督はマーク・エイブラハム。★10月1日(土)に新宿ピカデリーで封切られる。

★ニカラグア短信  ニカラグアの誇る世界的詩人ルベーン・ダリーオ(1867~1916)の作品60点を紹介する『ルベーン・ダリーオ詩選』が9月初め、マナグアで発売された。ニカラグア中央銀行、国家大学理事会(CNU)、文化庁が共同で刊行した。

▼メヒコ短信  9月6日のエル・フィナンシエロ紙によると、2018年7月実施の次期大統領選挙予想候補の支持率は、アンデレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(国家改新運動=MORENA)24%、マルガリータ・サバーラ(国民行動党=PAN)23%、ミゲル=アンヘル・オソリオ=チョン(現内相、制度的革命党=PRI)22%が上位を占めている。

 政党別支持率はPRI30%、PAN26%、MORENA16%。これら3党が、同3党以外の友党と連合した場合、PRI35%、PAN32%、MORENA24%となる。メヒコには決選投票制度はなく、第1回投票での得票1位の候補が当選する。

★ドミニカ共和国(RD)短信  レオネル・フェルナンデスRD前大統領は9月6日、同国のリスティン・ディアリオ紙のコラムで、ヂウマ・ルセフ大統領を8月31日に弾劾罷免したブラジル政変について糾弾した。

 フェルナンデスは、「これは、ならず者集団の仕業だ。これをクーデターでないという者がいるが、一理ある。クーデターより一層邪悪なものだからだ。あれは裁判ではなく、腐敗した国会議員たちの存在に触れずに権力闘争した演劇、田舎芝居、悲喜劇だった」と指摘した。



2016年9月6日火曜日

キューバがロシアに原油供給を要請

 ロシア政府筋情報として9月5日報じられたところでは、クーバのラウール・カストロ国家評議会議長は、ロシアのウラディーミル・プーチン大統領に親書を通じ、クーバに石油を供給する可能性を検討するよう要請した。

 クーバはベネスエラから原油の供給を受けてきたが、同国経済が原油価格低迷や政情不安から危機に陥り、クーバへの原油供給量が最盛期の日量10万バレルから大幅に減った。

 これによりクーバは深刻なエネルギー不足を来たし、厳しい節電政策をとらざるを得なくなっている。ラウール議長は7月、電力事情が厳しいことを公表したが、このころ露大統領に書簡を渡したと見られている。議長は書簡で価格と支払条件を問い合わせているが、希望する供給量には触れていない。クーバは原油派生産品の供給も求めている。

 この件に関連してロシア経済相は、「クーバの支払い能力は重大なリスクだ」と指摘。露国営石油ロスネフト社のようにクーバに投資する露石油会社がクーバに原油を供給するのがいいのではないかと、述べた。ロシアは今年上半期、クーバには原油1400万トン(25万ドル)しか輸出していない。

 イランのムハマド・ザリフ外相は8月訪玖した際、ラウールと会談しており、議長がイランにも原油供給を求めた可能性がある。

 一方、クーバ政府は4日、死去したウズウベキスタンのイスラム・カリモフ大統領のために5日、国喪に服すと発表した。

★ブラジル短信  ミシェル・テメル伯大統領は9月4~5日、中国・杭州でのG20首脳会議に出席、外交デビューした。全体会議のほか、BRICS首脳会議に出席、日伊西3国首相と個別に会談した。

 テメルは大統領代行だった8月下旬、リオ五輪閉会式に出席した安倍首相との会談を望んだが、首相側の都合で実現しなかった。今回は「正式大統領」として会談した。

 だがヂウマ・ルセフ前大統領を強引に弾劾罷免したのを「国会クーデター」と捉える内外世論は根強い。テメル政権の正統性に疑問を持つ首脳も少なくなく、杭州でのテメルの影は薄かった。

 ブラジル労働者中央同盟(CTB)は、クーバ労働者中央同盟(CTC)に対し、ルセフ大統領罷免を「クーデター」として糾弾したクーバ政府とCTCに対し謝意を表明した。クーバ共産党機関紙グランマが5日、それを報じた。 

2016年9月5日月曜日

南米「南銀行」の左翼3国が当初出資を開始

 南米7カ国が合意した「南銀行」(バンコ・デル・スール)への当初出資額を決める第3回財務相会議が9月初めキトの南米諸国連合(ウナスール)本部で開かれ、ベネスエラ、エクアドール(赤道国)、ボリビア3国の当初出資の段取りが決まった。

 ベネスエラが向こう10年間に払い込む出資額は20億ドルだが、そのうちの400万ドルを当初供出資金とし、その5%、20万ドルを30日以内に自国中央銀行内の南銀行口座に入金する。

 赤道国は当初資金40万ドルの5%、2万ドルを自国中銀内の南銀行口座に入れる。ボリビアは同じく10万ドルのうちの5000ドルを入れる。

 南銀行構想は、IMFや世銀に頼らない地域金融機関を設けたいというベネスエラ大統領ウーゴ・チャベス(故人)の発案で生まれ、2007年2月9日、設立議定書が調印された。上記3国のほかブラジル、亜国、ウルグアイ、パラグアイの計7カ国が署名。12年に発効した。

 出資額は、伯亜両国はベネスエラと同じ20億ドル、赤道国とウルグアイは各4億ドル、ボリビアとパラグアイは1億ドルずつ。合計70億ドルとなる。

 今回決まった3国の払い込む当初出資金は、南銀行の営業開始前の人件費や諸雑費の支払いに使われる。

 南銀行側は、未加盟のコロンビア、ペルー、チレ、ガイアナ、スルナムの5カ国に加盟を働き掛けている。

 南銀行構想は、強力なチャベス大統領の主唱で、南米諸国の大勢が左翼・進歩主義政権だった時期に形をとった。今回、入金を開始する3国は、いずれも左翼の「米州ボリバリアーナ同盟」(ALBA)加盟国。

 亜国がマクリ右翼政権、ブラジルがテメル右翼政権になり、両国ともに親米路線と新自由主義を掲げている今、南銀行が構想通り設立されるかどうかはわからない。

★コロンビア短信  JMサントス大統領は9月2日、FARCとの最終和平合意は26日カルタヘーナで調印する、と発表した。

▼ボリビア短信  エボ・モラレス大統領は9月2日、2019年の大統領選挙には出馬せず、現任期の終わる20年1月政権を離れる、と述べた。大統領は今年2月21日、19年出馬を可能にする改憲国民投票に僅差で敗れた。

 だがモラレスの支持母体であるコカ葉生産者労連が8月22日、モラレス擁立を宣言。政権党・社会主義運動(MAS)は、国民投票をやり直すための署名運動を展開してきた。

 このため、野党指導者らは、モラレスの言葉を信用していない。モラレスは「我々には2025年計画がある」とも述べ、1期休んで24年の大統領選挙に出馬する可能性を示唆した。

★クーバ短信  米政府は8月30日、「クーバ調整法」を維持すると言明した。その見直しを求めるラ米9カ国外相による連名の要請書を29日受けたことを確認したが、同法は維持すると述べた。

 このところ、NYTや、移民が数多くメヒコから流入するテキサス州の新聞が、同法見直しを呼び掛ける記事を掲載。クーバ政府も最近、同法がクーバ人の不法出国を促していると、米政府に抗議している。
  

2016年9月2日金曜日

エル・サルバドールが内戦被害者に賠償金支払い開始へ

 エル・サルバドール(ES)のサルバドール・サンチェス=セレーン大統領は8月31日、内戦中(1980~92)に起きた政府軍などによる重大人道犯罪事件の被害者への賠償金を支払うための「内戦時重大人権蹂躙被害者への賠償金支払い計画」を発表した。

 全国262市のうち134市にまたがる6235人が対象。「地方開発社会投資基金」(FISDL)から、一人毎月15~50ドルを支払うことになるもよう。

 同国最高裁は7月、内戦中の人道犯罪加害者ら責任者を免罪する恩赦法を違憲として無効にした。恩赦法は1993年、クリスティアニ極右政権が制定した。

 同法廃止により、内戦時の軍人・警官、極右勢力など加害者が逮捕、裁判の対象になる。最高裁は、内戦時加害者を自国で裁けるようになったため、外国への身柄引渡を禁止した。

 1989年11月首都サンサルバドール市内にある中米大学(UCA)キャンパスのイエズス会礼拝所でスペイン人会士らを虐殺し逮捕されている退役軍人らの身柄引渡も不可能になった。スペイン政府は長年、引渡を求めていた。

 サンチェス大統領は賠償金計画を発表する際、国家元首として内戦中の政府軍などによる人道犯罪を謝罪した。フネス前大統領も謝罪している。

★ベネスエラ短信  野党連合MUDが率いるベネスエラ反政府勢力は9月1日カラカスで「カラカス攻略」と銘打って、一大動員による抗議行進を決行した。主催者側は、少なくとも45万人が参加したと主張している。

 これに対し、ニコラース・マドゥーロ大統領を支持する政権党連合は「対抗行進」を実施、目抜きのボリーバル大通りなど中心街を支持者で埋め尽くした。政府、反政府双方合わせて100万人近い党員や市民が動員されたとする見方もある。

 反政府派は、マドゥーロ大統領罷免の是非を問う国民投票の年内実施要求を掲げて行進した。ブラジルのヂウマ・ルセフ大統領が弾劾罷免された翌日に合わせ、大規模動員を実現した。

 だが、これをクーデター誘発の陰謀と見なす政権側は対抗動員を仕掛け、野党側の意図をくじいた。MUDは7日に再度、大規模行進を計画している。

 大統領は「勝利演説」で、ミラフローレス宮(大統領政庁)から500mしか離れていない場所で、武装一味92人を逮捕したと発表した。2002年4月起きたウーゴ・チャベス大統領打倒のクーデターは、反政府派の抗議行進中、狙撃者たちが無差別発砲した事件が誘因になった。MUDの今回の行進は概ね平和裏に実施されたが、暴力肯定路線の若者らが反発、不法行為を働いた。

 国家選挙理事会(CNE=選管)は、国民投票実施申請に必要な第2次署名(有権者の20%=400万人)の収集活動開始は早くても10月下旬としている。その400万人の署名が正しいか否かの検証には年内いっぱいかかる見通しだ。

 このため国民投票実施は来年1月10日を過ぎてからになる公算が大きい。その日は、マドゥーロ大統領の6年の任期が半分を過ぎる日。その後実施される国民投票でマドゥーロが罷免された場合、2年足らずの残り任期は、アリストーブロ・イズトゥーロス副大統領が担うことになる。

 一方、年内に実施され1月10日までに大統領が罷免されれば、新大統領を選ぶ選挙実施となる。MUDは大統領選挙実施を狙い、年内の国民投票実現を訴えてきた。 

2016年9月1日木曜日

★★★大統領弾劾でブラジル「バナナ共和国」に成り下がる

 ブラジル国会上院の大統領弾劾法廷は8月31日、上院議員81人全員がヂウマ・ルセフ大統領弾劾投票に参加、弾劾賛成61、反対20で弾劾を決定。ルセフ大統領は解任され、政敵のミシェル・テメル大統領代行(ブラジル民主運動党=PMDB)が大統領に昇格就任した。

 テメルは19年元日までのルセフの残り任期を務める。これにより03年元日から13年8カ月続いた労働者党(PT)政権は終わった。テメルはG20首脳会議の開催地中国にいそいそと向かった。ブラジルが加盟するBRICSの他の4カ国は対応に苦慮しており、弾劾について言及を控えている。

 ルセフは、政治的権利を8年間剥奪するか否かを問う投票では、賛成42、反対、36、棄権3で、剥奪を免れた。剥奪には3分の2の54人の賛成が必要だったからだ。弾劾も同様だが、賛成票が54票を7票上回った。

 ルセフ弾劾は、「粉飾決算」による責任を問われたものだが、過去にカルドーソ政権もルーラ政権もやってきたことであり、弾劾条件を満たす重大犯罪ではない。このため、選挙で勝てない保守・右翼勢力が国会と司法を使って決行したクーデター、とも見方が定着。テメル代行体制は非難されてきた。

 直接的な真相は、巨額の収賄で追及されている多くの上下両院議員が追及を阻止するため打った政変劇ということ。弾劾手続きは昨年12月、収賄を追及され始めたエドゥアルド・クーニャ下院議長(当時、PMDB)が、追及を許可したルセフへの報復として開始した。

 また弾劾裁判の判事役となった上院議員81人のうち、議長を含む35人が収賄で追及対象となっている。またテメル自身も追及されているが、副大統領、大統領代行、大統領と要職にあって、捜査など直接的追及を免れてきた。

 財界、米国、ラ米新自由主義保守・右翼陣営は、テメル政権の石油産業をはじめとする民営化を願い、今回の政変を歓迎している。

【参考資料:伊高浩昭「バナナ共和国に成り下がったブラジル 事実上のクーデターでルセフ大統領弾劾へ」(岩波書店「世界」2016年7月号掲載)】

 14年10月の大統領選挙で5450万票を得て再選されたルセフの弾劾に怒ったベネスエラ、エクアドール、ボリビアは、ブラジル駐在大使を召還した。ラファエル・コレア赤大統領は、弾劾理由をでっちあげ民主政治を裏切った、と厳しく非難した。

 ニカラグアのオルテガ政権も弾劾を糾弾、ルセフとルーラ元大統領への連帯を表明した。亜国のクリスティーナ・フェルナンデス前大統領は、「ブラジル初の女性大統領弾劾は(ラ米・南米)地域の民主政治を後退させた」と述べ、オヤンタ・ウマーラ前ペルー大統領もルセフへの連帯を表した。クーバのラウール・カストロ政権も弾劾を「国会・司法クーデター」と見なしている。

★クーバ短信  米ジェットブルー航空の旅客便1番機(エアバスA320)が8月31日、フロリダ州フォート・ローダーデイルを飛び立ち、クーバ中部のサンラクラーラ市に到着した。乗ってきたアンソニー・フォックス米運輸長官はハバナで、ブルーノ・ロドリゲス外相、アデル・イスキエルド運輸相と会談した。

 9月1日米シルヴァー航空機サンタクラーラ便、7日アメリカン航空(AA)オルギン便、シエンフエゴス便、8日AAカマグエイ便、サンタクラーラ便、マタンサス便が、それぞれ就航する。