2018年5月31日木曜日

 キューバ議長が初外遊で同盟国ベネズエラを訪問▼議会演説で「米帝国主義」を糾弾▼マドゥーロ大統領と生産力拡大政策に基づく協力強化を話し合う▼パラグアイ国会は大統領早期辞任を事実上拒否

 キューバのミゲル・ディアスカネル国家評議会議長は5月30日、べネズエラを公式訪問した。4月19日の議長就任後最初の訪問国に、原油を好条件で供給してくれる同盟国ベネズエラを選んだ。

 議長は小型専用機でカラカス空港に到着、タレク・エルアイサミ副大統領、ホルヘ・アレアサ外相らの出迎えを受けた。議長にはリス・クエスタ夫人、ブルーノ・ロドリゲス外相らが同行している。
 一行は国立墓苑内のシモン・ボリーバル廟と、「丘上の砦」にあるウーゴ・チャベス廟に参った。

 議長は、国会議事堂で開かれた制憲議会(ANC)で10分余り演説、「さる20日のベネズエラ大統領選挙におけるニコラース・マドゥーロ大統領の再選を、キューバ人は我が事のように感じていた」と述べ、「この勝利はラ米全体の勝利だ」と讃えた。
 また「米帝国主義の介入」を非難し、「ボリバリアーナ革命は、米国や右翼諸国には不快なのだろうが、ベネズエラ国民は幸せに感じている」と指摘した。

 さらに「ベネズエラのきょうだい国民は、キューバの不変の支持を当てにできる」と強調。故フィデル・カストロ元議長の革命標語だった「祖国か死か、勝利ずるぞ」で演説を締め括った。

 ANCのデルシー・ロドリゲス議長は、「ベネズエラが内外からの脅威に晒されている時に連帯してくれた」と、キューバの姿勢と議長来訪に感謝の意を表した。
 議長は政庁でマドゥーロ大統領と会談した。マドゥーロはディアスカネル議長就任後、直ちにハバナを訪問、最初に会談した外国元首。

    両首脳は「歴史的紐帯強化」で一致。マドゥーロ大統領は「向こう10年間の生産力総合的拡大政策」に基づき、エネルギー・経済・通商・金融協力強化、工業・農業・鉱業・観光の合弁事業新規開始を玖議長と話し合った、と明らかにした。


▼パラグアイ大統領は早期辞任不可

 オラシオ・カルテス大統領は7月1日に上院議員に就任するため、8月15日の任期切れより2か月半早く辞任したいと表明していたが、国会は5月30日、定足数不足で早期辞任の是非を審議できなかった。政権党(コロラード党)議員にも反対者が出た。

 これにより大統領は事実上、辞任を拒否され、任期満了までその地位に留まらねばならなくなった。満了と同時に、大統領経験者として終身上院議員になれるが、議場での発言権はあっても議決(投票)権はない。カルテスは議決権を持つ議員になろうと5月末の大統領辞任を求めたが、国会からはねつけられた形になった。

 現在の上院議長フェルナンド・ルーゴ元大統領は決議権を持つ。「国会クーデター」と呼ばれた弾劾で大統領任期を全うできず下野、その後の選挙で当選したからだ。

2018年5月30日水曜日

 米政府がエル・サルバドール警察特殊部隊に秘密資金提供か▼青少年暴力団員らの法律外処刑容認も▼CNNが報道▼日本ハムがウルグアイ食肉冷凍会社買収か▼ベネズエラがデノミを延期

 米CNNテレビは5月29日、米政府が秘密裏にエル・サルバドール国家警察特殊部隊に資金を与え、犯罪集団要員の法律外処刑を容認していた、と報じた。

 国家警察には今年解体された「特別即応部隊」(FES)があった。米政府ニコラースは2003年から資金を与え始め、16年6790万ドル、17年は7270万ドルだった。

 FESは16年には、マラスと呼ばれる青少年暴力団の中心である「マラ・サルバトゥルーチャ」(MS-13)要員ら591人を殺害。17年前半には43人を殺した。同年5月、警察筋が情報を漏らし、実態が明るみに出始めたという。

 エル・サルバドール政府はFESを解体、新たに「警察ハグアル(ジャガー)部隊」を結成した。同部隊要員はFESと同じように自動小銃などで重武装し、小型トラックで巡視活動をしたり出動したりしている。
 米当局は、重大な事態であり法的解明が必要、との立場を示しているという。

▼日本ハムがウルグアイで冷凍会社買収か

 日本ハムは、ウルグアイの食肉冷凍会社サンハシント(ウルグアイと亜国資本)を買収する交渉を進めている。5月29日の地元紙報道によれば、買収額は6000万ドル程度いう。
 昨年4月には、日本ハムはウルグアイの食肉冷凍会社「ブリーダーズ&パッカーズ・ウルグアイ」(BPU)を1億3500万ドルで買収しており、今回成約すれば2件目となる。

▼べネズエラが通貨デノミネーションを延期

 ニコラース・マドゥーロ大統領は5月19日、通貨ボリーバルのゼロ3つを削除するデノミ実施を60日延期するのを提案する、と明らかにした。当初、6月4日を予定していた。
 一方、ベネズエラ銀行協会(ABV)のアリスティデス・マサ会長は、90日延期が必要との考えを示した。 

2018年5月29日火曜日

 ブラジルで大規模なルーラ支持行動▼パラグアイ大統領がひと月半早めの辞任表明▼ニカラグア対話が再開へ▼メキシコでまた記者殺される

 ブラジルで5月27日、ルイス=イナシオ・ルーラ=ダ・シルヴァ元大統領を支持・連帯し、拘禁からの解放を求める大規模な抗議行進が展開された。
 ルーラが所属する労働者党(PT)が呼び掛けたもので、PT発表では、全国70都市で計3000万人が参加した。

 ルーラは腐敗罪でパラナー州都クリチーバの警察拘置所で拘禁されている。12年余りの禁固刑だが、最終的には確定していない。
 今年10月、大統領選挙が実施されるが、ルーラは拘禁前も拘禁後も支持率最高位を維持してきた。

 この国の富裕層・軍部・保守・右翼・親米派などで構成される反PT勢力は、過去4回の大統領選挙ですべてPTに敗れた。PTの支持層は貧困層、労働者階級、中産下層、若者らで、有権者の中で圧倒的多数派である。だから選挙のたびに勝利する力を得てきた。

 業を煮やした反PT勢力は2016年8月、弾劾条件としては些細な理由でヂウマ・ルセーフ前大統領を弾劾。反PT勢力側のミシェル・テメル現暫定大統領が政権に就いた。

 これで目的を半分達成した反PT派は今年、ルーラを選挙で勝てないようにしようと司法を動員、ルーラの身柄を早々と拘禁させた。
 だがルーラの人気は高く、選挙の投開票が公正であれば、拘置所から出馬して勝利する可能性が十分にあると見られている。

▼パラグアイ大統領が早期辞任表明

 オラシオ・カルテス大統領は5月28日、上院議員に7月1日就任するため30日で辞任したいと表明した。本来の任期は、マリオ・アブド=べニーテス次期大統領が就任する8月15日まである。

 国会は30日審議し、辞表受理の是非を決める。受理されれば、アリシア・プチェータ副大統領が暫定大統領となる。

▼ニカラグア国民対話再開へ

 5月16日に始まり23日に暗礁に乗り上げた「国民対話」は28日、近日中に再開されることが決まった。司教会議の仲介の下、オルテガ政権と反政府勢力の合同委員会が話し合い、再開を決めた。

 反政府側は、各地の自動車道を遮断している妨害柵を一部撤去することを受け入れた。だがオルテガ退陣のための「自由な選挙」を要求しており、対話は今後も難航必至だ。

 政権側は治安回復を最大目的としており、そのための「弾圧柔軟化」などには応じる構えを示している。対話中も中断後も治安部隊と反政府派学生らの衝突が続いている。

▼メキシコでまた記者殺害さる

 北東部のタマウリパス州都ビクトリア市の路上で5月29日、エクトル・ゴンサレス=アントニオ記者(44)が撲殺体で発見された。首都メキシコ市で発行されているエクセルシオール紙の通信員だった。
 これで今年メキシコで殺されたジャーナリストは6人、現政権下で44人となった。昨年は17人が殺された。

2018年5月28日月曜日

 コロンビア大統領選挙の第1回投票終了▼ドゥケとペトロの両候補が決選進出★この国で極めて稀な左右対決へ▼ウリーベ前大統領に麻薬マフィア資金使用疑惑▼エル・サルバドール政権党が次期大統領候補選ぶ

 コロンビアで5月27日午前8時から午後4時まで、大統領選挙第1回投票が実施された。登用率は53%。5人が出馬したが、予想通り過半数得票者はなく、上位2人が6月17日の決選に進出することになった。当選者は8月7日就任する。任期は4年。

 開票率99%段階で、得票率はイバーン・ドゥケ39%、グスタボ・ペトロ25%。この2人が決選に進出する。現代コロンビアでは内戦が事実上なくなった状況での初の大統領選挙であり、右翼ドゥケと左翼ペトロの左右対決が決選で実現する。

 争点は、和平合意見直し、隣国ベネズエラ問題、国内貧富格差是正など。

 第1回投票の候補者:グスタボ・ペトロ(58)、「人間的コロンビア運動」、エコノミスト、左翼。イバーン・ドゥケ(41)、「民主中央」、弁護士、右翼。ウンベルト・デラカージェ、自由党。セルヒオ・ファハルド、「市民公約」。ヘルマン・バルガス=ジェラス、「バルガス・ジェラス より良い運動」。

  ドゥケは、前上院議員で、アルバロ・ウリーベ前大統領の後継候補。2016年11月の政府とゲリラ組織FARC(コロンビア革命軍。現在は政党FARC=人民革命代替勢力)との和平合意の見直しを訴えている。

 4月9日、ハバナでの和平交渉にも参加したFARC幹部ヘスース・サントゥリチ(本名セウシス・エルナンデス)がメキシコのシナロア麻薬マフィアと組んでコカインなどを米国に密輸する計画を進めていたとして逮捕された。
 米政府は6月7日までに、サントゥリチの身柄引渡をコロンビア政府に要請する方針。米国は、サントゥリチとシナロアマフィアとの策謀は16年12月で、和平合意のすんだ後のことであり、合意にあるFARC幹部らへの免罪・恩赦の規定は当てはまらない、との立場だ。

 この逮捕事件後、FARC和平交渉首席代表だった最高幹部の一人イバーン・マルケスは、和平合意が突然破られて逮捕される危険があるとの理由で、武装解除された元FARC要員が固まっている南部の密林地帯に避難した。
 和平合意により、政党FARCは7月の新国会開会時に、上下両院に5つずつ計10議席を与えられることになっている。サントゥリチもマルケスも、その10人に含まれている。 
 因みに、FARC最高指導者ロドリーゴ・ロンドーニョ(通称ティモェンコ)は病気などを理由に大統領選挙出馬を取り止めた。

 サントゥリチは、コロンビア産の麻薬を太平洋岸からメキシコ方面に船で運び出す計画で、この船舶輸送には和平に反対したFARC分派も関与していたとされる。
 同分派は3月、エクアドールのエル・コメルシオ紙取材班3人をコロンビア国境地帯で殺害した集団。事態は極めて複雑だ。政党FARCは、ドゥケが8月政権に就いたら、FARC弾圧が始まると予測、警戒を強めている。

 一方、ペトロは元ゲリラ「4月19日運動」(M19)要員で、元首都ボゴタ市長。公約に、石油・石炭など外貨収入源の輸出を抑え、農業拡大で代替する案や、大胆な農地改革、税制改革などを挙げている。いずれも富裕層には呑めない公約ばかりだ。
 ドゥケが代表する富裕層・保守・右翼勢力は、「ペトロはコロンビアをマドゥーロ政権のベネズエラのようにしようとしている」と虚偽宣伝に躍起だ。

 第1回投票で落選した3位以下は、ファハルド(得票率23・7%、元アンティオキア州知事、元メデジン市長)、バルガス=ジェラス(7%、サントス現大統領の後継候補)、デラカージェ(2%、元対FARC和平交渉政府首席代表)の順。

▼NYTがウリーベ前大統領と麻薬組織の関係報じる

 NYT紙は5月26日、解禁された米国務省外交文書を基に、1990年代前半、アルバロ・ウリーベ(後の大統領)はメデジン麻薬マフィアから選挙資金をもらっていたもよう、と報じた。

 当時のコロンビア自由党のルイス・ペレス上院議員が米外交官との会合で語ったとされる情報によれば、お尋ね者だったメデジン麻薬マフィアの頭目パブロ・エスコバル(故人)は当時のガビリア大統領との接触を図るため、選挙資金提供と引き換えに、同マフィア幹部のオチョア一家経由で大統領と連絡が取れるようにしてほしいと持ち掛けた。
 またウリーベは、エスコバルの母親と直接連絡を取った、という。ウリーベは、NYTの報道内容を否定している。

▼エル・サルバドール政権党が大統領候補選出

 ファラブンド・マルティ民族解放戦線(FMLN)は5月27日予備選挙を実施、2019年2月3日の大統領選挙に出馬する候補として、ウーゴ・マルティネス外相を選んだ。
 対立候補はジェラルド・マルティネス前公共事業相。外相は得票率70%強だった。

2018年5月27日日曜日

 サントス・コロンビア大統領が「来週NATO協賛国になる」と発表▼OECD加盟が成った日に表明▼トラテロルコ条約抵触、ラ米・カリブ平和地域決議違反などの非難高まる▼ベネズエラが米国人釈放

 コロンビアのJMサントス大統領は5月25日、同国は来週、NATO(西語でOTAN=北大西洋条約機構)の域外協賛国になると発表した。31日にブリュッセルのNATO本部で手続し、最終決定するという。

 サントス政権は、ゲリラFARCとの和平最終合意が成った翌月の2016年12月、NATOに申請、このほど最終手続き段階に達したという。
 大統領は、豪州、乳国(NJ)、日本、韓国、モンゴル、パキスタン、イラク、アフガニスタンが既に同じ資格の協賛国になっていると付言した。

 コロンビアは25日、OECD(経済協力開発機構)への加盟が認められたばかり。サントスは、その日にNATO協賛国入りを明らかにした。

 この決定に対しラ米では、NATOに米英仏の核保有3国が入っているため、「ラ米核兵器禁止条約」(トラテロルコ条約)に抵触する、という反対意見が浮上している。
 LAC(ラ米・カリブ)を平和地域にすると宣言したCELAC(ラ米・カリブ諸国機構部)の決定に反する、という指摘もある。反対意見がラ米に渦巻くのは必至だ。

 また、FARCとの和平達成で16年にノーベル平和賞を受賞したサントスの言動は受賞者にふさわしくない、との厳しい批判も出ている。サントスは今回の協賛国加盟を「ラ米最初の特権」と自賛している。

[ベネズエラ外務省は26日、コロンビアがNATO協賛国になることに関し声明を発表、「ラ米・カリブ地域の平和にとって脅威になる」と非難した。] 

▼ベネズエラが米国人釈放

 政府は5月26日、米国人ジョシュア・ホルト(24)と、その妻タマーラ・カレーニョ(赤道国系VEN人)を釈放。2人は同日、米国に飛び去った。

 政府発表によると、2人はモルモン教徒。2016年6月、スパイ容疑でVEN諜報機関SEBINに逮捕された。ミランダ州内の自宅からAK47突撃銃、M4複製銃、弾薬多数が押収された。カラカスの戦略拠点を示した地図も持っていた。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は25日カラカスで、ボブ・コーカー米上院外交委員長と外交関係をめぐって会談。コーカー上院議員はホルト夫婦釈放を求めていた。
 VEN人反政府活動家20人も26日釈放された。

2018年5月26日土曜日

 メキシコ次期大統領最有力候補アムロが学生43人失踪事件解明を公約▼ベネズエラ大統領が米上院外交委員長と会談▼バルバドスで初の女性首相誕生へ▼BLPのミア・モトゥリー党首

 メキシコ大統領選挙(7月1日投票)の最有力候補アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ)は5月25日、遊説中にゲレロ州イグアラ市で、強制失踪させられた学生43人の家族代表と会い、政権に就いたら事件解決に尽くすと公約した。

 43人はゲレロ州都チルパンシンゴ近郊にあるアヨツィナパ農村教員養成学校生。3年8カ月前の2014年9月26~27日、イグアラ市で事件に遭った。事件には地元警察と麻薬組織が関与。さらに大統領管轄下にある陸軍と連邦警察の関与も明るみに出ているが、大統領責任追及を恐れる政府が動かないため半ば迷宮入りしている。

 AMLOは、大統領になったら、事件の「真実究明委員会」を設置すると約束。同委の中心は、米州諸国機構(OEA)の米州人権委員会(CIDH)と国連人権高等弁務官事務所が占めることになるという。

 アムロはまた、ペニャ=ニエト現政権とカルデロン前政権は、治安戦略を誤り、軍隊を治安出動させたと指摘した。軍隊投入で「麻薬戦争」は悪化、23万人が殺された。

 AMLO「次期政権」の公安相候補と目されるアルフォンソ・ドゥラソは既に、「真実委員会」設置の準備を進めているという。

▼ベネズエラ大統領が米上院外交委員長と会談

 ニコラース・マドゥーロ大統領は5月25日、来訪した米上院外交委員長ボブ・コーカー議員を政庁に迎え、外交関係修復をめぐって会談した。両国はこのほど、臨時代理大使ら外交官各2人を相互に国外退去処分にしている。

 大統領は同日、ラ米開発銀行(CAF)のルイス・カランサ総裁と会談した。CAFは1970年、ベネズエラ政権の主導で設立され、LAC(ラ米・カリブ)19カ国と西葡両国および域内市銀13行が参加。本店はカラカスにある。

 ベネズエラは1970年、同国原油生産の最高記録、日量378万バレルを記録していた。2003年は320万b、現在は150万bに落ちている。

▼バルバドスで初の女性首相誕生へ

 カリブ英連邦のバルバドスで5月24日総選挙が実施され、野党バルバドス労働党(BLP)が下院30議席を独占、完勝した。その結果、BLPのミア・モトゥリー党首(52)が首相に就任することになった。任期は4年。

 英国から1966年に独立して以来8人目の首相だが、初の女性首相となる。民主労働党(DLP)政権のF・スチュアート首相は完敗を認めた。

 モトゥリーは弁護士。91年上院議員となって政界入り。BLP政権で94年教育・青年・文化相、2001年内相兼検事総長、03年第2副首相を歴任。DLP政権になった08年から2年間、BLP党首。13年に党首復帰。

 これまでDLP政権は下院で16議席を握り過半数ぎりぎりだった。新政権は下院で野党を持たないことになり、どのような施政になるか関心を集めている。

 カリブ英連邦諸国は12カ国。その中のベリーズ(旧英領ホンジュラス)は中米にある。またバハマはキューバ北東の大西洋にあり、南米北部のガイアナ(旧英領ギアナ)は大西洋に面している。

 12カ国は南米北部のスリナム(旧蘭領ギアナ)、キューバ、ハイチ、ラ・ドミニカ―ナ(ドミニカ共和国)とともに「カリブ圏」を構成する。

2018年5月25日金曜日

 マドゥーロ・ベネズエラ大統領が次期任期に向け宣誓▼政策修正と指導部変革を公約▼政治暴力服役囚の一部釈放を示唆▼「国軍分裂画策とクーデター策謀で逮捕」と明かす▼グアテマラ元軍人に重刑判決▼メキシコでまたジャーナリスト殺し▼ウルグアイ労連が大会★「週刊金曜日」がキューバ新政権関連記事掲載

 ベネズエラ大統領に5月20日再選されたニコラース・マドゥーロ大統領(55)は24日、国会議事堂内での制憲議会(ANC)本会議で挙行された次期大統領(2019~25年)確定宣誓式に臨み、デルシー・ロドリゲスANC議長の前で宣誓した。

 大統領は宣誓演説で、①対話・平和・和解②企業との生産的経済合意③腐敗一掃④庇護・社会保障制度充実⑤内外の陰謀に対する自衛強化ーを優先政策として列挙した。
 マドゥーロは、「これまで必ずしも良いことばかりしたわけではない」と前置きして、「修正と指導部の変革を図る」と表明した。

   原油を増産し、外部からの「制裁」を打破するとも述べた。その際、マヌエル・ケベード石油相に、OPEC、中露両国、アラブ諸国に協力を依頼するよう命じた。

 また、政治的暴力事件を起こし服役している者たちのうち、殺人など重罪に関与していない者を釈放する方針を示し、ANCの真実委員会に該当する囚人の特定調査を求めた。
 さらに、「ボリーバル主義的社会主義」の5原則・基盤を拡大するとして、①倫理・道徳・精神②政治・イデオロギー・制度③社会④経済⑤地方ーの問題に取り組むことを強調した。

 大統領は宣誓式の後、市内の国防省、国軍司令部、士官学校などのあるティウーナ要塞での国軍忠誠表明式に出席。「コロンビアと米国の資金でクーデターを画策した者を逮捕した」と明らかにした。大統領は逮捕者の人数を示さなかった。
 「20日の選挙前に暴力を煽り、国軍(FANB)分裂を促そうとする策謀があった」とも述べ、国軍高官たちに署名し忠誠を求めた。

 大統領選挙を挟んだ国軍を標的とした陰謀は、このほど暴露された米南方軍司令官作成のマドゥーロ政権打倒計画に酷似している

 政府は22日、カラカス駐在の米臨時代理大使と次席の参事官を国外退去処分としたが、理由は「国軍分裂画策の陰謀」だった。政府は、同次席をCIAのカラカス支局長と見なしていた。
 一方、ワシントン滞在中のホルヘ・ボルヘス元VEN国会議長は24日、ラジオインタビューで、「先週、国軍将校200人が逮捕された」と述べた。

▼グアテマラで退役軍人4人に重刑判決

 内戦中の1981年6月、当時14歳だったマルコ=アントニオ・モリ―ナ=テイセン少年を強制失踪させ、その姉エンマ=グアダルーペを拷問・強姦した、二つの人道犯罪で、法廷は5月23日、ベネディクト・ルカス元陸軍参謀長ら退役軍人4人に実刑判決を下した。

 姉への仕打ちに対し禁錮33年、強制失踪は25年で、ルカスら3人に計58年、1人に33年の判決だった。

▼メキシコでまたジャーナリスト殺害

 北部のモンテレイ市で5月24日、アリシア・ディアス=ゴンサレス記者(52)が自宅で撲殺された。首都メキシコ市のエル・フィナンシエロ紙の通信員だった。

 メキシコでのジャーナリスト殺害は今年5人目。ペニャ=ニエト現政権下で43人目。ジャーナリストへの迫害は2000件に達している。

▼ウルグアイで労連大会開催

 ウルグアイの「労働者単一中央同盟」(PIT-CNT)は5月24日、第13回大会を開催、フェルナンド・ペレイラ議長は、ルーラ元ブラジル大統領への連帯を表明。「ルーラは迫害されと、罪なくして投獄されている」と指摘した。

 大会テーマは「世界労働界の新しい現実と労組の役割」。伯玖墨ニカラグア西葡などの労連代表も参加している。最終日の26日、声明を発表する。

★お知らせ:本日発行の「週刊金曜日」が拙稿「米国の<新冷戦>攻勢に対峙するディアスカネル新政権 <カストロ後>迎えた社会主義キューバ」を掲載しています。ご参考まで。  

 ニカラグア「国民対話」が議題巡り中断▼反政府側は「自由選挙早期実施」を主張▼オルテガ政権は「政権交代意図したクーデター」と指摘、対話は座礁▼アラブ連盟がグアテマラと関係断つ

 ニカラグアの「国民対話」は5月16日始まったが、1週間後の23日、暗礁に乗り上げた。オルテガ政権と反政府勢力との仲介役の司教会議(CEN)は同日、双方3人ずつ、計6人の「合同委員会」を設置、対話再開に向けて協議するよう求めた。

 対話が途切れたのは、議事進行でもめたため。政府首席代表デニス・モンカーダ外相は、全国各地の自動車道に障害物を置いて通行を遮断している違法行為を止めるよう要求。これに対し、反政府側の「正義と民主のための市民同盟」は、優先すべきは民主的改革を話し合うことだと主張した。

 その改革の柱は、欧米を含む国際監視団を受け入れ、自由選挙を早期実施すること。正副大統領、国会議員、市長、市会議員などすべての選挙をやり直すというものだ。それに伴う改憲と選挙法の修正も要求している。狙いはオルテガ体制切り崩しに他ならない。

 政府側のモンカーダ代表は、「政権交代を意図した一種のクーデター方式ではないか」と指摘、断固応じない構えを示した。
 ダニエル・オルテガ大統領は2016年11月の選挙で連続3選を果たし、17年1月から22年1月まで5年間の3期目任期中。3年半も任期が残っており、反政府側の要求を容れて退陣するなど考えられない。

 司教会議仲介の下で合同委員会が事態打開に行き詰まれば、大学生や市民による抗議行動が再燃するのは目に見えている。施政連続12年目にあるオルテガ政権が重大な危機に直面したのは初めてだ。

▼アラブ連盟がグアテマラと関係断つ

 アラブ連盟は5月23日、在イスラエル大使館をテルアビブからエルサレムに移したグアテマラとの協力関係を断ち切ったと発表した。
 同国に続いて大使館をエルサレムに移したパラグアイとの関係については触れていない。
 

2018年5月24日木曜日

 G7が共同声明でベネズエラ大統領選挙認めぬとし、新たな選挙を要求▼米加主導・欧州同調、日本従う構造▼公正と普遍性に欠けるG7▼米国がVEN外交官2人追放▼VEN政府が「政治囚」釈放か

 G7と欧州連合(EU)は議長国カナダの首都オタワで5月23日、ベネズエラ大統領選挙(20日)に関する共同声明を発表、選挙と選挙結果を認めず、「公正で自由な新たな選挙実施」をマドゥーロ政権に要求した。

 一国の選挙に関する異例とも言える声明発表は、米加両国主導、欧州諸国とEUの賛同で路線が敷かれ、日本は乗らないわけにいかなくなった形だ。

 声明は、20日の選挙について、「容認された国際水準を満たさず、公正で民主的な過程の基本的条件を保障せずに実施された」と非難している。
 このG7声明によって、「ベネズエラ問題」は国際化から一挙に「世界化」したと言える。

 過去3日間、ニコラース・マドゥーロ大統領再選を認めたのは、中国、ロシアの両大国と、キューバ、ボリビア、ニカラグア、エル・サルバドールのラ米進歩主義・左翼陣営と、イラン、トルコに限られている。
 マドゥーロ政権はG7声明を突きつけられ、何らかの態度表明を迫られることになった。

 米州諸国機構(OEA)内と、その外枠の「リマグループ」を中心に反マドゥーロ圧力を強めているカナダのトゥルドー首相が今会議の議長であり、マドゥーロ政権打倒をオバマ前政権期から狙ってきた米国と組んで、声明を策定するのは容易だった。
 EUも米加に同調し、航空便打ち切りなどベネズエラへの「制裁」に参加したり、新たな措置を検討してきた。

 日本は先ごろ、ベネズエラ高官らによる「食糧配布資金の横領」事件に関与した人物の国際的特定作業に参加した。この時も米加欧に日本が加わる形になっており、これが今回の声明の下地になったのは確かだろう。

 だが、ラ米には不正選挙で政権に就いた大統領は、過去のメキシコ、現在のホンジュラスなど少なくない。選挙で勝てないため、あるいは反政府陣営の不正や汚職を隠すために、大統領を弾劾した例もパラグアイ、ブラジルと続いている。

 米国は、埋蔵量世界一とされるベネズエラの原油が欲しい。また、米国と復交し牙を抜かれたキューバに代わってラ米左翼の旗頭になった感のあるマドゥーロを潰し、ラ米での覇権を再興、確立したい。
 こうした「米州の力学」に引きずられるのは日本にとっては得策ではあるまい。

 「非民主的選挙」によって政権が運営されている国、選挙のない国、封建的体制などはアジア、アフリカに幾つもあり、ベネズエラを糾弾するG7が公平と普遍的であることを期すならば、何十もの国々について共同声明を出さなくてはならなくなるはずだ。
 さらに、G7首脳陣の中にも「民主性」を問われている者が複数いる事実を忘れてはなるまい。

 一方、米国務省は23日、ワシントン駐在のカルロス・ロン=ラミーレス臨時代理大使および、ヒューストン駐在総領事のベネズエラ外交官2人に対し、48時間以内に国外退去するよう通告した。前日のベネズエラ政府による米外交官2人の追放措置への報復。

▼ベネズエラが「政治囚」釈放か

 今大統領選挙で敗れた野党候補だったハビエル・ベルトゥッチ福音派牧師は5月23日、ニコラース・マドゥーロ大統領と会談。会談後の記者会見で、大統領は24日、「政治囚釈放を発表する」と明らかにした。

 この記者会見には、大統領の側近であるホルヘ・ロドリゲス通信・情報相も立ち会っており、同牧師の発言に信憑性があることを窺わせる。釈放が事実となれば、マドゥーロは国際世論に配慮したことになる。

 悪名高いキューバ系テロリスト、ルイス・ポサーダ=カリーレス(90)が死去▼1976年10月のキューバ航空旅客機空中爆破事件の黒幕▼フィデル・カストロ暗殺には失敗▼元CIA・米陸軍要員★映画「エルネスト」上映会と座談会のお知らせ

   CIAの悪名高いキューバ系テロリスト、ルイス・ポサーダ=カリーレス(90歳、帰化しベネズエラ国籍、以下LPC)が5月23日、米フロリダ州ミラマルの退役軍人官舎で死去した。晩年は米当局に匿われて生きていた。

 LPCは1928年、玖シエンフエゴス市生まれ。ハバナ大学で化学を学んだ。59年元日の革命後、反革命行動に参加。61年、刑務所を逃れメキシコ経由で米国入りした。
 同年、中央情報局(CIA)に入り、破壊活動、対人テロな訓練を受ける。その年4月の、ヒロン浜侵攻作戦の準備に参加。出撃はしなかった。

 67年から亜国、チリ、エル・サルバドール、グアテマラ、ベネズエラが、それぞれ軍政下にあった時期、政府安全保障顧問として活動。
 71年、フィデル・カストロ玖首相が訪智時、カメラマンを装った暗殺犯がフィデル殺害に失敗した。この事件の黒幕がLPCだった。
 76年9月には、ワシントンでアジェンデ政権時代の外相オルランド・ㇾテリエル暗殺の黒幕となった。

 ★同年10月6日、カラカス発ハバナ行きキューバ航空旅客を空中爆破。その主犯としてベネズエラで逮捕さる。73人が死んだこの事件を受けてキュ―バ政府は、LPCの身柄引き渡しを要求し続けることになる。

 81年、レーガン米政権下で「玖系米国人財団」(CANF)がマイアミにできると、その庇護を受けるようになる。
 85年8月、刑務所を脱走、ホンジュラス、グアテマラ、エル・サルバドールに居住。ハバナ市内のホテルで97年、爆弾事件を起こす。イタリア人旅行者1人が死亡した。子の黒幕でもあった。

 2000年パナマ市に国際会議議出席のため滞在するフィデル・カストロ爆殺を工作、未然に終わる。パナマで逮捕されるが釈放され、05年米入国。
 その後、軟禁されたり、有罪判決を受けたりしたが、結局はあいまいなまま釈放された。無処罰のまま死んでいった。2度結婚、2児の父だった。

 フィデルを「正面の敵」と捉えていたが、フィデルが90歳で死んだ2年後、「不世出」のテロリストも同じく90歳で死んでいった。

★映画会と座談会

 6月8日、府中市朝日町の東京外語大学で。映画「エルネスト」上映および座談会(阪本順治監督、伊高浩昭、翻訳家・松枝愛)。
 会場1730、上映1800~2004、座談会2010から小一時間。入場無料、先着500人。

2018年5月23日水曜日

 ニカラグア抗議行動の死者は76人、負傷者868人▼米州人権委員会が確認▼同委はオルテガ政権に15項目を勧告▼ベネズエラが米外交官2人に退去通告▼お知らせ「キューバ・ベネズエラ情勢勉強会」

 ニカラグアで4月18日から5月上旬にかけて続いた反政府抗議行動にさなかに76人が死亡、868人が負傷していた。この事実が確認された。逮捕者は438人だった。

 オルテガ政権と反政府市民勢力との間の「国民対話」に参加している米州諸国機構(OEA)機関「米州人権委員会(CIDH)」が5月21日、調査結果として発表した。
 死傷者の圧倒的多数は、国家警察機動隊と私服の暴動鎮圧部隊による銃、ゴム弾、催涙ガス弾、棍棒などを用いての弾圧で命を落としたという。

 対話に出席しているダニエル・オルテガ大統領は、「治安部隊は弾圧や発砲は命じられておらず、治安維持のため出動した」と釈明したが、納得は得られなかった。
 抗議行動の主役だった大学生の代表は、大統領および、その夫人ロサリオ・ムリージョ副大統領の即時辞任を要求。学生連盟は、国内各地の道路封鎖を解いていない。

 CIDHは政府に対し、15項目の勧告を提示した。「弾圧即時停止」、「死傷者への加害責任者の特定と処罰」など。また「国民対話」の場に15項目実施状況を検証する仕組みをつくることも含まれている。

▼ベネズエラが米外交官に国外退去通告

 ニコラース・マドゥーロVEN大統領は5月22日、米大使館のトッド・ロビンソン臨時代理大使とブライアン・ナランホス参事官に対し、内政干渉を理由に48時間内に出国するよう通告した。

 一方、国家選挙理事会(CNE)はマドゥーロを2019~25年の6年間政権を率いる次期大統領に認定した。

★お知らせ:「キューバ・ベネズエラ情勢勉強会」
 本日5月23日(水)1900から、高田馬場のNGOピースボート本部地下で。会費500円。講師・伊高浩昭。申し込み先は、本ブログ表紙部分にあるピースボート作成の案内状参照。


2018年5月22日火曜日

 ベネズエラ選挙最終結果判明▼マドゥーロ大統領は622万票(67・8%)▼有権者に疲労感、投票率下がる▼6月に通貨デノミ実施へ▼米国やリマグループは新たな対抗措置決定

 ベネズエラ国家選挙理事会(CNE)は5月21日、前日実施の大統領選挙の最終結果を発表した。再選されたニコラース・マドゥーロ大統領(55)は622万票(得票率67・8%)を獲得した。登録有権者913万人が投票、投票率は46%だった。

 だが5年前、13年4月の大統領選挙でマドゥーロは700万票台、17年7月の制憲議会(ANC)議員選挙で政権党連合は800万票台だった。今回600万票台に留まったのは、投票率が50%を下回ったことによる。
 2位の野党候補ヘンリー・ファルコンは197票(21%)だった。

 有権者の過半数は、長引く経済苦、政治抗争、国際社会での孤立感、チャベス派政権19年への飽きと疲れから棄権に回ったのだ。
 マドゥーロは現在の1期目の任期が終わる19年1月に2期目に入り、25年1月まで6年の新たな施政を任された。次回選挙は20年末の国会議員選挙であり、向こう2年半、選挙を気にせずに施政に集中できることになる。

 現在の任期が来年1月に切れるのは、故ウーゴ・チャベス前大統領の最終任期が13年1月に始まったからだ。マドゥーロは闘病中のチャベスに代わり大統領代行、3月5日にチャベスが死去してからは暫定大統領になり、4月の選挙に臨んだ。

 再選を果たしたマドゥ―ロは6月4日、通貨ボリーバルのゼロ3桁を外したデノミネイションを実施する。新紙幣発行で超インフレに対処しようという計らいだ。
 だが頼みの原油生産が過去30年来最低水準という日量150万バレルに低迷。トランプ米政権に起因する新たな「イラン危機」とともに国際原油価格を押し上げる要因となっている。資金欠乏から産油現場でのインフラ老朽化、労働力流出が著しく、増産に対応できないのだ。

 資金不足は、米国主導による金融封鎖が最大の原因。ドナルド・トランプ大統領は21日、ベネズエラ政府が資金調達のため進める国債販売と、国営ベネズエラ石油(PDVSA)による債務売却を規制する政令を出した。

 また米加墨亜伯智6か国は21日ブエノスアイレスで、ベネズエラ大統領選挙の結果を認めないとし、新たな「制裁」を検討するとの声明を出した。同市ではG20外相会合が開かれる。また11月30日から2日間、G20首脳会合が開催される。

 一方、反マドゥーロ連合である「リマグループ」(グリマ)加盟の亜パラグアイ伯智コロンビア秘CR巴ホンジュラス墨グアテマラ加ガイアナ・セントルシーアの14カ国は21日、ベネズエラ大統領選挙結果を認めないと表明。
 さらに「外交レベルを引き下げるため」として、ベネズエラ駐在大使召還、各国駐在のベネズエラ大使への抗議伝達の2点を決めた。また6月ワシントンでの米州諸国機構(OEA)外相会議で、「ベネズエラ問題」を議題にすることも決めた。

 国内では、分裂、弱体化して事実上「有名無実」化した保守・右翼野党連合(MUD)に代わり結成された「自由ベネズエラ拡大戦線」は21日に、活動方針を打ち出す予定。
 政府支持派論調は、「米国、欧州、グリマ、反動マスメディア群などによる策謀は敗北した」というような内容が目立っている。 

2018年5月21日月曜日

★ベネズエラ大統領選挙は現職マドゥーロ再選▼大統領は「国民対話」呼び掛け▼得票率68%弱、 投票率は46%▼「正常に実施」と国際監視団▼国軍は「大成功」と表明▼キューバ首脳が祝電▼ローマ法王からメッセージ▼米政府は選挙結果を認めず▼米国の内政干渉措置、一層厳しくなる見込み▼パラグアイが大使館をエルサレムに移転

ベネズエラで5月20日実施された大統領選挙は午後6時投票が終了。国家選挙理事会(CNE)のティビサイ・ルセーナ理事長は同日夜、ニコラース・マドゥーロ大統領が582万票(得票率68%弱 )を得て再選された、と発表した。
 投票時間は12時間だった。有権者は2052万人。投票率は46%。マドゥーロ陣営は1000万票獲得を目標に掲げていたが、これには遠く及ばなかった。
 勝利宣言したマドゥ―ロ大統領は、国民対話を呼び掛けた。

 野党側候補は3人で、ヘンリー・ファルコン182万票(21%)、ハビエル・ベルトゥッチ92万票、レイナルド・キハーダ3万票だった。

 同盟国キューバのミゲル・ディアスカネル国家評議会議長とラウール・カストロ共産党第1書記は、別々に祝電をマドゥーロ大統領に送った。

   米国や一部ラ米諸国と連携して選挙ボイコット運動を続けてきた保守・右翼野党連合MUDなど反政府勢力は、「棄権率は70~80%に達した」との見方を根拠を示さずに示していた。

 これに対し、マドゥーロ大統領の選挙運動母体「ソモス・べネスエラ(私たちはベネズエラ)」のデルシー・ロドリゲス事務局長(制憲議会議長)は、「選挙は、棄権を呼び掛けていた側の敗北を明確にした」と述べた。
 これは「棄権率」が54%に留まったのを受けての発言と捉えることができる。

 だが国際監視団の一員としてカラカス市内を巡回したラファエル・コレア前エクアドール大統領は、「私はベネズエラの民主の祭典に参加した。投票は正常に実施された」と表明した。
 コレアは、カナダ政府が在加ベネズエラ人のための投票所設置を妨害しようとしたことに関し、同政府を厳しく批判した。

 ホセ=ルイス・ロドリゲス=サパテロ前スペイン首相も、「正常」と述べた。国際監視団は当初2000人とCNEは見ていたが、実際に到着し活動しているのは150人。

 国軍戦略作戦司令部のレミヒオ・セバージョス司令官は、全国1万4600余りの投票所のほか、電力施設などを厳重に警戒していると明らかにした。国軍兵士、警察官ら30万人が動員されている。
 またブラディミロ・パドゥリーノ国防相は、「ベネズエラは独自の運命、歴史、民主をもって選挙をしている」と強調。「きょう新たに祖国をつくる。祖国は参政、憲法順守、主権尊重によってつくられる」と述べた。
 選挙結果判明後には、「大成功の一日だった」と語った。

 一方、制憲議会(ANC)のデルシー・ロドリゲス議長は20日、「フランシスコ法王から、我が国の問題を解決する方法を見出すように、とのメッセージをいただいた。ベネズエラへの良き心の呼びかけと善意に感謝いたしたい」と表明した。
 法王はヴァティカンでの定例ミサで「平和と団結への道を探るべし」と表明した。

 ボリビアのエボ・モラレス大統領からは、「帝国(米国)の内政干渉と、選挙ボイコットの呼び掛けにも拘わらず、ベネズエラ民主の伝統が発揮された」との祝意がマドゥーロ大統領に届いた。

 米国のマイク・ポンぺオ国務長官は「ベネズエラ選挙は何も変革しない」と選挙を否定する見解を表明した。これに対しマドゥーロ大統領は、「クークラックスクラン(白人優越主義の極右団体KKK)の政府からの侵略は軽蔑されている」と反駁した。

 大方の予想どおりマドゥーロ再選なったが、ベネズエラへの内政干渉を厭わない米国と同調する諸国は、さらに厳しい圧力をかけてくる見込み。

 ロシア外務省は21日、米国のベネズエラへの内政干渉を厳しく非難した。

▼パラグアイが大使館を移転

 パラグアイは5月21日、在イスラエル大使館をテルアビブからエルサレムに移した。
式典には、パラグアイのオラシオ・カルテス大統領、Bネタニヤフ・イスラエル首相らが出席した。

2018年5月20日日曜日

 ベネズエラ大統領選挙の投票始まる▼国際監視団が各地に展開▼代表格はサパテロ前スペイン首相▼コレア前エクアドール大統領も到着▼米政府は実力者カベ―ジョ政権党副党首に「制裁」科す

 きょう5月20日午前6時、ベネズエラ大統領選挙の投票が始まった。世界各地から集まった選挙監視団が各地で監視活動をしている。
 国家選挙理事会(CNE)は、投票終了時刻を明確には表明していない。投票所に行列ができるなどして投票が長引くような場合、それを認める構えだ。

 選挙前の支持率調査では、D社がニコラース・マドゥーロ大統領43%、野党候補ヘンリー・ファルコン24%、H社がマドゥ―ロ52%、ファルコン22%。3番手はハビエル・ベルトゥッチでいずれも20%前後。ファルコンは、「ベネズエラ経済の米ドル化」を公約して注目されている。

 米国、欧州一部諸国、ラ米一部諸国は今選挙を認めないと表明している。マドゥーロ大統領は、これについて「欧州も米国も他者と対話し、他者を理解する能力を持っているはずだが」と語っている。

 CNEによれば、国際選挙監視団は2000人に及ぶという。その代表格ホセ=ルイス・ロドリゲス=サパテロ前スペイン首相(社民主義者)は18日カラカスでニコラース・マドゥーロ大統領らと会談。その後、記者会見し、「今選挙も投票の自由と安全が保障されている」と述べた。
 サパテロはまた、再選を狙うマドゥーロに次ぐ有力候補である野党のヘンリー・ファルコン候補とも19日カラカスで会談。内容は公表されていない。

 サパテロはマドゥ―ロ政権と野党など反政府勢力が厳しく対峙し始めた2016年から国際仲介団の中核として、ベネズエラ政治・政界に関与してきた。
 選挙をボイコットしている保守・右翼野党連合MUDの幹部は、サパテロ前首相を「裏切者」呼ばわりしている。これについて前首相は「選挙や対話をしなければ何も始まらない」と反論した。
 サパテロとともに、元フランス上院議長ジャンピエール・ベルや欧州連合(EU)の元高官も監視団に参加している。

 ラファエル・コレア前エクアドール大統領も参加。昨年、大統領任期を終え、夫人の故国ベルギーに住むコレアは、久々にラ米の「熱い現場」に身を置いている。
 アフリカ連合(AU)の駐米大使アリカナ・クアオもワシントンからカラカス入り。露中央選管派遣のワシリー・リハチョフも監視団に参加している。

 一方、米政府は18日、政権党PSUV(ベネズエラ統一社会党)の副党首で、大統領に次ぐ実力者のディオスダード・カベ―ジョ元国会議長に「制裁」を一方的に科した。「麻薬取引関与」などを理由にしているが、選挙直前のマドゥーロ体制への揺さぶり工作であるのは疑いない。

 

2018年5月19日土曜日

 キューバ航空運航の旅客機がハバナ空港離陸直後に墜落▼3人重体、110人死亡▼機体はメキシコ航空会社から貸与▼キューバ観光産業に痛手▼アルゼンチン政権はキューバとの関係立て直しへ

 キューバの首都ハバナ郊外で5月18日、旅客機が墜落した。110人が死亡、生存者は3人。

 国営航空(クバーナ・デ・アビアシオン)運営のボーイング737-200型機(乗客・乗員113人)オルギン市行き国内便はホセ・マルティ国際空港を離陸して間もない12時08分、サンティアゴデラスベガス手前の農地に墜落、炎上した。

 ハバナ空港では、ヤシの木などが茂る彼方の森の方面で黒煙が舞い上がる光景が撮影されている。離陸を見送ったばかりの整備員らが頭を抱える様子も映っている。
 玖運輸省発表によれば、生存者は女性3人で、病院に搬送されたが、いすれも重体。死亡した110人のうちキューバ人は99人。乗客5人が外国人で、亜国2、サハラウイ2、メヒコ1。乗員6人はメキシコ人。

 機はメキシコのダモー(DAMOJH)航空から貸与されていた。メキシコ民間航空局の安全管理下にあった。
 目的地は、ハバナ東南東670kmのオルギン州都オルギン市だった。同市一帯は観光地として人気が上昇中。市郊外には、カストロ一族の生家跡がある。

 ミゲル・ディアスカネル国家評議会議長は現場に急行、死者への哀悼の意を表明。事故原因を徹底調査すると述べた。観光は、キューバにとって外貨を稼ぐ重要産業。旅客機の墜落事故は痛手だ。

▼マクリ亜国政権がキューバとの関係強化へ

 マクリ政権は5月18日、マルコス・ペニャ首席閣僚とフルビオ・ポンぺオ政府戦略問題担当官を24日ハバナに派遣し、ミゲル・ディアスカネル玖政権と話し合うと発表した。

 亜玖関係は、クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル前大統領の8年間と、その前の故ネストル・キルチネル大統領(クリスティーナの夫)の4年間には緊密だった。

 2015年末に発足した財界右翼主体のマクリ政権は親米路線に舵を切ったが、経済が悪化。ペソが暴落し、国際通貨基金(IMF)IMFに支援を求めている。
 政権発足後最大の危機に直面したマウリシオ・マクリ大統領は、来年の大統領選挙を念頭に国内世論も意識。トランプ米政権から「新冷戦」攻勢をかけられているキューバへの「接近姿勢」を示そうとしているわけだ。

 ブエノスアイレスでは20~21日、G20外相会合が開かれる。

 チリのカトリック司教全員がフランシスコ法王に辞表提出▼元神父による性的虐待と、その隠蔽工作への連帯責任認めて▼法王と3日間話し合い決定▼チリ教会は「深い改革」過程にあると表明

 チリ司教会議所属の司教34人(うち3人は名誉司教)は5月18日、ヴァティカン(ローマ法王庁)で、34人全員がフランシスコ法王に辞表を提出、進退を法王の判断に委ねた、と発表した。

 500年の布教史を持つラ米の伝統的カトリック国の司教全員が一度に辞表を提出するのは極めて稀で、重大事。まさにチリの元神父フェルナンド・カラディマが2011年までに神学生3人らを性的虐待していた事実が明るみに出て、チリ教会はこの7年間、大揺れに揺れてきた。

 フランシスコ法王は今年1月訪智し、性的虐待問題に触れた。4月には犠牲者だった神学生3人をローマに招き、事実関係を正した。そのうえでチリ司教会議を法王庁に招集した。
 司教たちは15~17日、法王と4回話し合った。カラディマ元神父は既に永久追放処分となっているが、元神父が犯した罪の隠蔽工作をしたオソルノ司教区のフアン・バリオス司教が今回の話し合いの中心にあった。法王は隠蔽工作に怒りを露わにしたと伝えられる。

 司教会議は18日記者会見し「連帯責任」を認めたうえで、「虐待犠牲者、法王、チリ信者に深く詫びる」と謝罪。「チリ教会は既に深い変革の過程にある」と表明した。
 バリオス司教は過去2回辞意を表明したが法王は受け入れず、調査を進めるよう指示していた。法王は今回は、同司教および、元神父と親しかった数人の辞表を受理すると見られている。

 ラ米を含め世界各地でカトリック司祭による性的虐待事件が起き、カトリック教会の権威が揺らいできた。これが、米国生まれの福音派進出の原因の一つともなっている。
 それだけに、チリだけでなく各国司教会議の危機感は深刻だ。

2018年5月18日金曜日

 1982年のマルビーナス(フォークランド)戦争中の人道犯罪を新たに追及▼アルゼンチン軍新兵を拷問した元上官らに逮捕命令▼厳寒の前線でいじめの悪行▼ウルグアイでは「政治囚記念碑」が完成▼ベネズエラの選挙戦終わる。来賓マラドーナが踊る

 亜国検察は5月16日、1982年の亜英マルビーナス(フォークランド)戦争中に徴兵された新兵たちに拷問的仕打ちをした当時の国軍士官・下士官系26人を人道犯罪容疑で逮捕すると明らかにした。検察は、人道犯罪ゆえに時効はないと説明している

 開戦当初、亜国軍は英植民地マルビーナス諸島を占領、訓練の不十分な新兵多数を諸島に送り込んだ。季節は4~6月で、亜国東方400kmの南大西洋にある同諸島の気候はは晩秋から初冬の寒さ。

 新兵たちは食糧と防寒服の支給不足に不満で抗議、栄養失調になり、現物を盗む者もいた。すると上官らは特に窃盗者に対し、夜間薄着のまま屋外の杭に縛り付けたり、冷水につからせたりし、最もひどい場合は、首から上だけ地上に出す「埋め込み」をした。みぞれの中、日夜「埋め込み」に遭い、衰弱し野戦病院に運ばれる者もいたという。

 検察に被害22件について告発した被害者らは、陸軍第3歩兵師団第5歩兵連隊所属の部隊に配属され、諸島の最前線に送り込まれた元新兵70人の一部。英軍の襲来で脱出したが、平均15~20kg体重が減っていたという。

 1976年3月クーデターで政権を握った亜国軍部は、3代目のレオポルド・ガルティエリ将軍大統領が対英開戦に踏み切り敗北、翌83年、4代目が民政移管に追い込まれた。7年余り続いた軍政下で市民3万2000人が殺害された。その中には、遺体が見つからず「行方不明者」扱いされている者も少なくない。

 極悪非道の軍政は市民の自由と命を奪ったほか、経済を破綻させ、権勢は地に落ちていた。起死回生の大博打として打ったのが勝算のない無謀な対英戦争で、見事に敗北した。
 最前線に巷の青少年と変わらないような新兵部隊を派遣し、人道犯罪行為をするなど、軍政は上から下まで倫理が腐り切っていた。

 既にほとんどが退役している元士官・下士官らが逮捕、起訴され法廷に立てば、マルビーナス戦争の暗部があらためて明るみに出るはずだ。
 当時、この戦争を亜国側から取材した筆者は、この司法案件の行方に関心を抱いている。

▼ウルグアイに政治囚記念碑

 ウルグアイ・サンホセ県にある旧リベルタ―刑務所には、1960年代末から80年前半にかけてのゲリラ戦および軍政期に多数の政治囚が収容された。拷問され、30人が殺された。

 5月15日、刑務所近くに完成した「リベルター刑務所記念空間」の除幕式が挙行された。この記念碑は高さ15mで、壁面には元政治囚2872人の氏名が刻まれている。制作者は2人の建築家で、いずれの親も元政治囚。
 「リベルタ―」は自由を意味する。なんと皮肉で冷笑的な刑務所名だったことか。

▼ベネズエラ選挙戦終了

 5月20日の大統領選挙の選挙戦は17日終了した。再選を目指すニコラース・マドゥーロ大統領の政権党連合は、カラカス目抜きのボリーバル大通り中心部を埋め尽くして最後の集票運動を展開。
 大統領は壇上で歌い、夫人と踊った。駆け付けた元亜国サッカー界の英雄ディエゴ・マラドーナは壇上で「私はマドゥーロの戦士」と叫び、VEN民俗歌謡に合わせて踊りながらVEN国旗を振った。

2018年5月17日木曜日

 グアテマラが在イスラエル大使館をエルサレムに移転▼PLOは「対抗措置」呼び掛け▼週内にパラグアイも移転を予定▼ホンジュラスも近く移転の見込み▼脛に傷持つ大統領たち▼ラ米左翼・中道諸国はイスラエルの過剰攻撃を非難▼カトリック教会は福音派攻勢に危機感募らせる

 グアテマラの在イスラエル大使館が5月16日、従来のテルアビブからエルサレムに移転した。新大使館の開館式典にはジミー・モラレスG国大統領とベンヤミン・ネタニヤフ首相らが出席した。
 グアテマラは1948年のイスラエル建国に際し、米国に次ぎ2番手でイスラエルを承認した。今回も前々日14日の米大使館移転に続く2番手の移転となった。

 エルサレムには1956年から80年まで大使館を置いていたが、国連決議などを受けてテルアビブに移転していた。今回の移転で元に戻ったことになる。
 Jモラレス大統領は福音派信徒。G国内には、「大統領の職責と信仰を混同させた」との批判が出ている。ネタ二ヤフ首相は年内にグアテマラを訪問すると明らかにした「」。

    パレスティナ解放機構(PLO)は直ちに、グアテマラに「対抗措置」をとるよう、アラブ諸国に呼び掛けた。

 16日の式典には両当事国のほか、以下の31カ国の出席が確認されている。
 アルバニア、オーストリア、チェコ、ジョージア、ハンガリー、マケドニア、ルーマニア、セルビア、ウクライナの欧州9カ国。
 アンゴラ、カメルーン、コンゴ、コンゴ民主共和国、コートジボアール、エチオピア、ケニア、ナイジェリア、ルアンダ、南スーダン、タンザニア、ザンビアのアフリカ12カ国。
 フィリピン、ミャンマー、タイ、ヴェトナムのアジア4カ国。
 ドミニカ共和国、エル・サルバドール、ホンジュラス、パナマ、ペルー、パラグアイのラ米6カ国。

 パラグアイも今週中に大使館をエルサレムに移転させる。任期切れ間もないオラシオ・カルテス大統領が決めたものだが、マリオ・アブド=べニーテス次期大統領は「相談を受けていない」を不満を漏らしている。

 ホンジュラスは国会が4月12日、移転を59対33で可決、政府に決定を任せている。同国でも勢力を張る福音派は「移転すれば経済援助が来て豊かになる」と盛んに誘い水をかけている。
 4月末にはカリブ海に近いグアテマラ国境沿いの巨大なマヤ遺跡のあるコパーンに、イスラエルと米国が総額1億5000万ドルの資金と技術を援助した地熱発電所が完成。フアン=オルランド・エルナンデス大統領が開場式に出席した。
 移転決定は時間の問題と見られている。

 これらラ米3国に共通するのは、大統領の脛に傷があること。G国のモラレスは大統領選挙時の選挙資金に麻薬マフィアから献金を受けたとして米司法当局から告発されている。
 エルナンデスは昨年末の大統領選挙で不正によって再選を果たした。これは誰もが知る事実。米政府はいち早く再選を支持、そんのカードを今生かそうとしている。
 パラグアイのカルテスは大統領になる前、麻薬取引に関与。米国は証拠を握っている。そのカードが今切られた。この国でも福音派の活動が目立っている。

 一方、米大使館の移転に際しパレスティナのガザ地区で発生した、イスラエル軍の過剰攻撃で60以上が殺された重大事件に関し、ラ米ではベネズエラ、ボリビア、ウルグアイ、エクアドール、チリ、コスタ・リカが非難。他の諸国も移転する意思は示していない。

 イスラエルと国交がなく、トランプ米政権の「北風政策」に遭っているキューバは当初
沈黙していたが16日、外務省が声明でイスラエルを厳しく非難した。またハバナに本部を置く国際第3世界連帯機関「アジア・アフリカ・ラ米3大陸人民連帯機構」(OSPAAAL=オスパアル)もイスラエルの行為を糾弾した。
 ラ米諸国のカトリック教会は、福音派の進出に危機感を募らせる一方だ。
  

  

2018年5月16日水曜日

 ニカラグア政府と反政府勢力が16日に「国民対話」開始▼カトリック司教会議の仲介が奏功▼オルテガ大統領退陣の要求が強く薄氷を踏む状態▼日本政府も「懸念と注視」を表明

 ニカラグア司教会議(CEN)を率いるレオポルドオ・ブレネス枢機卿は5月14日、政府と反政府勢力が対話を16日開始する、と発表した。枢機卿は、対話(ニカラグア国民対話)の目的を「民主化過程を促進するため」と説明した。

 ダニエル・オルテガ大統領が、CENが提示していた対話仲介4条件を呑んだため対話開始が決まったが、4条件のうち際立つのは、米州諸国機構(OEA)の機関である「米州人権委員会」(CIDH)の調査団受け入れ。
 この調査団は、4月以来の一連の反政府抗議行動とそれに対する規制・弾圧で死者53人以上、行方不明者60人、負傷者400人強、および不当逮捕者多数が出、店舗などの略奪・放火が続いた事実を調査・検証し、加害者を特定するため近く派遣される。死者の半数は、首都マナグアで出ている。

 全国の自動車道の13か所で14日も道路遮断が続いた。ニカラグア横断運河建設に反対する組織が中心となって、対政府抗議行動の一環として遮断作戦をとっている。

 オルテガ大統領は4条件を受け入れた週末、「同胞の死と破壊に終止符を打つため呼びかけと約束をした。これ以上、流血がないことを」と述べている。
 大統領は常日頃、演説で「愛、平和、慈悲」を必ず口にするが、小一カ月続く反政府行動への激しい弾圧を目の当たりにした人々は、大統領の言葉を「偽善」と捉えている。

 メキシコ人女優ルセロ・ミジャンは14日、メキシコ市からマナグアの報道機関にメッセージを送り、「死の脅迫を受けたためニカラグアを離れた」と明らかにした。
 ミジャンは、オルテガらのサンディニスタ革命が成功した1979年、ニカラグアに移住。劇団を結成し、演劇活動を30年近く続けていた。だが、「劇場を放火破壊する」との脅迫も受けていたという。
 今回の反政府抗議行動が全国化した後、芸術家や知識人の協会は政府支持の署名運動を展開した。ミジャンはこれに参加していなかった。

 ニカラグアで活動するさまざまなNGOは14日、オルテガ大統領退陣を要求した。だが、こうしたNGOには米国際開発局(USAID)から活動資金をもらっているものが少なくない。USAIDは2016年に3100万ドルをNGOを中心とする「市民社会」に提供している。

 一方、日本外務省は14日、ニカラグアの状況を懸念し注視しているとする声明を発表した。声明は、ニカラグアの政府、民間、大学生、「市民社会」に事態打開のため努力するよう強く要請する、とも表明している。

 今回のように反政府行動が燃え上がることを誰も予測していなかった。連続3期、11年余り続くオルテガ政権への不満がマグマのように鬱積していたのだ。「オルテガはゲリラの英雄から、腐敗した皇帝に成り下がった」とする厳しい指摘もある。

 ペルーのアルベルト・フジモリ元大統領も1990年から2期10年の任期を務めた段階で退陣すればよかったものを強引に3期目に入り、多くの不正事実が暴露され、日本に亡命し辞表を送ったが拒否され、国会に解任された。

 ベネズエラのマドゥーロ政権が存続の危機に陥っているのも、1999年2月の故ウーゴ・チャベス大統領就任から数えて19年もチャベス派が続いていることへの飽き要求がや不満が根底にある。

2018年5月15日火曜日

 米州諸国機構(OEA)の反マドゥーロ陣営「リマグループ」がベネズエラに20日の大統領選挙中止を「最後通牒」として要求▼背後に「軍事的選択肢」含むトランプ米政権の影▼ALBAが米政権による不安定化工作を糾弾▼ベネズエラでは選挙態勢整う 

 ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領の再選を阻止し、マドゥーロ政権打倒を目指す米州諸国で構成する「リマグループ」(グルーポ・デ・リマ=グリマ)は5月14日、ベネズエラ政府に対し、20日実施の大統領選挙を「合法性に欠ける」として中止を要求した。

 グリマはメキシコ市での外相・蔵相会合でベネズエラ問題を話し合い、「これが最後の申し入れだ」として選挙中止を要求した。
 米国が強大な影響力を持つ米州諸国機構(OEA、34カ国加盟)の保守・右翼陣営は、重要決定が全会一致制のため、VEN締め付け決議にことごとく失敗。そこで反マドゥーロ有志連合としてグリマを結成した。リマ市で結成されたため、グリマと呼ばれる。

 米政府は、反マドゥーロ有志連合の決議を受けてベネズエラに軍事侵攻する選択肢を重視している。マイアミに司令部を置く米南方軍の侵攻作戦計画が暴露されたばかりだ。

 加墨グアテマラ・ホンジュラスCR巴コロンビア秘智パラグアイ亜伯ガイアナ・セントルシーアの14カ国が加盟。米国は意識的に黒子として根回し役に回っている。
 セントルシーアは、ベネズエラが盟主の「我らのアメリカ・ボリバリアーナ同盟ー人民通商条約」(ALBA-TCP、通称ALBA=米州ボリバリアーナ同盟)にも加盟しており、ベネズエラ政府にとり「情報源」になりうる立場にある。
 域外からは、マリアーノ・ラホーイ右翼政権のスペインがオブザーバー的立場でグリマ会合に参加することがある。14日には参加した。

 キューバ以外の34カ国が加盟するOEAでグリマに加盟していないのは、「形式的不参加」の米国と、エル・サルバドール、ニカラグア、ハイチ、ドミニカ共和国(RD)、ベネズエラ、エクアドール、ボリビア、ウルグアイ、スリナム、およびジャマイカ、TTなどカリブ英連邦10カ国。

 構図化すれば、マドゥーロ政権をめぐる米州地図は、反対派がグリマ14カ国+米国、非反対派が19カ国+キューバということになる。グリマのセントルシーアは「鵺的存在」だ。

 一方、ALBAのダビー・チョケウアンカ事務局長(前ボリビア外相)は14日ハバナで、「LAC(ラ米カリブ)のベネズエラ、ボリビア、ニカラグア、キューバなど進歩主義政権に対する米政府の内政干渉は受け入れられない」と、米政府を糾弾した。
 「進歩主義諸政権の社会政策を不安定化させようとしているトランプ米政権の国際十字軍は到底受け入れられない」とも述べ、グリマを暗に非難した。

 ニカラグア国家選挙理事会(CNE)のティビサイ・ルセーナ理事長は14日カラカスで記者会見し、「選挙態勢は整った」とし、全国1万4638投票所(3万4143投票箱)の用意が完了したことを明らかにした。
 理事長はまた、保守・右翼野党連合(旧MUD)などが棄権を呼び掛けているのに触れ、「違法行為であり、逮捕を含め取り締まる」と警告した。

2018年5月14日月曜日

 トランプ米政権がラ米諸国を巻き込んでベネズエラに軍事介入を準備か▼アルゼンチン人ジャーナリストが米南方軍の侵攻計画を基に暴露▼筋書きは「20日のVEN大統領選挙前に攪乱工作、選挙後に周辺諸国から軍事介入」▼ニカラグア各地で略奪続く

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は5月13日、トランプ米政権と米州諸国機構(OEA)の(米国寄り)加盟諸国は、20日のべネズエラ大統領選挙前にマスメディアの宣伝作戦と並行してベネズエラで暴力活動を起こす不安定化計画を実施しようとしている、と非難。コロンビアのトゥマコに米軍部隊が集結していると、懸念を表明した。

 米国および同調諸国は選挙でニコラース・マドゥーロ現大統領が再選された場合、ベネズエラに軍事介入する計画だ、ともモラレス大統領は指摘した。

 ボリビア大統領の発言は、亜国人女性ジャーナリスト、ステラ・カロ―ニが13日、亜国紙ディアリオ・コンテキスト、ベネズエラのウルティマス・ノティシアス紙などに掲載された署名記事で暴露した「対VEN侵攻計画」を踏まえている。

 カロ―ニは、米南方軍司令官カート・ティッド海軍大将がまとめた機密文書を引用し、米軍が軍事介入する場合、パナマ、コロンビア、ブラジル、ガイアナのVEN周辺諸国が拠点となり、亜国など反マドゥーロ政権諸国が介入を支援する、と指摘した。

 また同文書には、「トランプ政権にとり、民主と安全保障に関する姿勢を示す最初の機会となろう」と記されているという。カロ―二は、「米国はチャベス主義を決定的に叩き潰そうと狙っている」と警告している。

 この「ティッド計画」は、マイク・ペンス米副大統領の「失敗国家(VEN)に国境はない」「vENのOEA加盟資格を停止させよう」、JMサントス・コロンビア大統領の「近くVENで政権が交代する」などの不穏な発言の基にもなっている。

 OEAから追放したうえでOEA諸国と「有志連合」を組んで軍事侵攻するのが、米国の常套手段。1962年、米国はキューバに対し、これをやろうとしてソ連に察知され、結果として核ミサイル危機に陥った。65年のドミニカ共和国内紛にも同じ方式で軍事侵攻した。

 一方、ホルヘ・アレアサVEN外相は13日、VEN選挙を認めないと表明している欧州や米州の国々に対し、「VENに敬意を表してほしい」と訴えた。
 VEN政権党PSUVのディオスダード・カべージョ副党首は同日、「MUD(野党連合)が棄権を訴えているのは選挙で勝てないからだ」と指摘。「国会は有名無実化しており、選挙後、国会議員資格を無効にする」と述べた。

 ヘスース・トレアルバ元MUD代表は13日、「MUDは分裂したのではなく消滅した」と明言。選挙後の再結集の備えるべく相互非難などを控えようと、旧MUD加盟会派に呼び掛けた。
 トレアルバはまた、同陣営が棄権でなく結集して投票すれば、ヘンリー・ファルコン野党候補がマドゥーロに勝つ、とも断言した。

 マドリードでは13日、マリアーノ・ラホーイ西首相とサントス・コロンビア大統領が会談、「VENの重大事態は民主的に解決すべきだ」という立場で一致した。これは米軍介入の可能性をカモフラージュする意図的発言、とも受け取られている。
 VEN周辺情勢の混乱は、2016年度ノーベル平和賞受賞者であるサントスが、米国などともにマドゥーロ政権打倒工作に走ったことにも起因する。

 ベネズエラ原油は11日、1b=66・57米ドル。

▼ニカラグア各地で略奪頻発

 反政府活動が激化しているニカラグアの首都マナグア、チナンデ―ガ、ボアコ、グラナーダ、レオン、マサヤの6都市で5月13日、スーパーマーケットなど商店が略奪された。

 被害の出ていない店の店主側は略奪に備え、棍棒、山刀(マチェテ)などで自衛している。警察は、暴徒が政権党支持派である場合、略奪を黙認しがちだという。
 

2018年5月12日土曜日

 ニカラグアでオルテガ政権と反政府勢力が対話開始で合意▼政権がカトリック教会の仲介条件を呑む▼こじれれば反政府行動再燃か▼メキシコで候補19人殺害さる▼ベネズエラ大統領選挙は野党2候補の一本化が鍵

 ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領と、その夫人ロサリオ・ムリージョ副大統領は5月11日、同国カトリック司教会議(CEN)が前日提示していた「対話開始のための4条件」を受諾した、と発表した。

 先月から首都マナグアをはじめ全国各地で、大学生、市民団体などによる反政府行動が続いており、非公式集計で11日までに「49人以上63人以下」が死亡している。経団連(COSEP)は、連続3期の長期支配を続けるオルテガ政権に対する反対行動を支持している。

 レオポルド・ブレネス枢機卿が率いるCENは10日、①米州諸国機構(OEA)の米州人権委員会(CIDH)による4月以来の一連の事件における死傷者・弾圧状況・直接加害者特定などの調査実施②政府系準軍部隊の解体③弾圧の即時停止④政府による人権尊重に基づく対話意志表明ーの4条件を提示。14日までに回答するよう求めていた。
 政府の条件受諾を受けて、「4月19日学生運動」(M19A)、COSEP、市民団体などは11日、対話参加を表明した。

   陸軍も11日「市民弾圧には関与しない」と、「中立的立場」を表明。「対話でしか問題は解決しない」として、政府と反政府勢力の対話を支持した。

 だが同日、マサヤ県ラ・コンセプシオン市の市庁舎が放火・破壊され、政権党FSLNの会合所も略奪された。国立自治大学(UNAN)、ニカラグア工科大学(UPOLI)の学生ら計2人も銃撃されるなどして死亡し、不穏な空気が依然支配している。
 オルテガ政権筋は、今回の反政府騒乱状況が昨年4~6月ベネズエラで続いた反政府街頭暴力運動に酷似しているとし、米国など外部勢力の関与の可能性を指摘している。

 だが同政権が重大局面に直面しているのは事実。14日以降に始まる対話がこじれれば、騒乱状況が再燃するのは疑いない。内外の反政府勢力は現状を、オルテガ政権打倒の一大好機と捉えているからだ。

▼メキシコで候補者19人殺される

 7月1日の大統領選挙、下院議員・市長選挙などを前に選挙戦が展開されているメキシコ・グアナフアト州アパセオエルアルト市で5月11日、野党「国家刷新運動」(ARENA)の市長候補ホセ・アギーレが遊説中、銃弾6発を撃ち込まれて即死した。

 これで前哨戦が始まった昨年9月以来、出馬予定者および候補が計19人殺害されたことになる。内訳は政権党PRIと野党PRD各5人、MORENAと前政権党PAN各3人、緑の党など3会派各1人。
 うちアギーレ候補を含む4人は、今月4日以降、メヒコ、チウアウア、ゲレロ、グアナフアトの各州で殺害された。

 MORENAはPRDから分派した中道左翼および左翼勢力の政党で、大統領選挙の最有力候補AMLO(アムロ)が党首を務めている。

▼ベネズエラ大統領選挙は野党候補統一が鍵

 5月20日実施の大統領選挙の最新の支持率調査では、政権党PSUVなどの「祖国拡大戦線」(FAP)候補ニコラース・マドゥーロ現大統領が48・4%で最有力。
 2番手は33・3%の「進歩主義前哨」(AP)など野党3党候補ヘンリー・ファルコン前ララ州知事。

 3位は、「変化への希望」候補のハビエル・ベルトゥッチ福音派牧師で11・7%。2、3位の両候補の支持率を合わせれば48%で、マドゥーロと拮抗する。このためファルコンは野党候補統一を呼び掛けているが、ベルトゥッチは11日現在拒否している。

 別の調査では、マドゥーロ51%、ファルコン28%、ベルトゥッチ16%。これも野党両候補を一本化すれば51%対44%で、接戦になりうる。
 親米派で保守性の強いベルトゥッチがファルコンを嫌うのは、同候補がかつてチャベス派で、マドゥーロ体制に対し是々非々主義を貫いていたことなどによる。 

 ハバナでのCEPAL(国連ラ米・カリブ経済委員会)総会が閉会▼「2030アジェンダ」、「SDGs」などを討議▼キューバ議長が「不平等文化」撲滅を呼び掛け▼ALBA外相会議がベネズエラとニカラグアへの支持・連帯を表明▼コロンビア大統領はベネズエラを酷評

 国連ラ米カリブ経済委員会(CEPAL)は5月8~11日、ハバナで第37回総会を開催、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」、同開発目標(SDGs)や、LAC(ラ米・カリブ)域内の不平等是正などを討議し、閉会した。

 キューバは向こう2年間、CEPAL議長国を務める。CEPAL下部機関である「南南協力委員会」と「LAC諸国持続的開発フォーラム」の議長も務める。
 会議には各国・地域の経済関係閣僚のほか、ラ米から玖、ベネズエラ、ボリビア、エクアドールなどの外相も出席。ボリビアのフェルナンド・ウアナクニ外相は、「市場全球化や多国籍企業の関与拡大が進む今、国家の立場強化が不可欠だ」と強調した。

 8日の開会式にアントニオ・グテレス国連事務総長らと共に出席したミゲル・ディアスカネル玖国家評議会議長は開会演説で、「域内の不平等文化を変えるのが重要だ」と指摘した。
 同議長は、「不平等は植民地時代に根差し、特に先住民族、アフリカ系、子供、女性に影響を及ぼした」とし、「帝国主義、新自由主義、および多国籍企業に有利なマクロ経済政策に起因する」と分析。「多国籍企業は、人種、国別、都会と農村などの差別を深刻化した」とも述べた。

 また、「我らのアメリカ(LAC)は統合に向けてCELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)を結成した。その2014年のハバナ首脳会議はLAC平和地域化宣言を採択した。平和なしに発展はなく、発展なくして平和はない」と明言した。

 さらに議長は、「メディア独占が進行、それを通じて(特定諸国・勢力が)消費主義、我々の実情とかけ離れた意思や価値観を押し付けている状況を考察すべきだ」と語った。
 議長は「少数者の富裕より多数者の福利を」とのホセ・マルティの言葉を引用しつつ、LAC統合、連帯、経済開発に取り組んでいきたいと述べ、演説を締めくくった。

 会議最終日の11日、米州ボリバリアーナ同盟(ALBA)加盟9カ国の外相らは会合。「ラ米進歩主義政権に対する内政干渉の攻勢が強まっている」との共通認識を踏まえ、べネズエラとニカラグアへの連帯を表明。米政府がモンロー教義を「再活性化」させているのを糾弾した。

 一方、ハンガリー訪問中のJMサントス・コロンビア大統領は11日ブダペストで、「我々(反マドゥーロVEN政権諸国)は、20日のVEN大統領選挙もその結果も認めない。早期政権交代のため圧力をかけている」と述べた。

 サントスはまた、「VENでは政権交代があるだろう。それが早くきて、VEN経済が良い政権の下で早急に回復するのを期待する」と語り、「世界最大の原油埋蔵量をもちながら国民が飢え、難民がコロンビアに66万人も来ている。原因はVEN政権の腐敗と悪政だ」と非難した。

 サントスの「選挙を認めない」と「政権交代」に触れた発言は、選挙でニコラース・マドゥーロ大統領が再選された場合、トランプ米政権が一方的軍事介入に踏み切る可能性を示唆したとも受け取られ、ベネズエラやALBAに懸念が広がっている。 
  

2018年5月11日金曜日

 ガイゼル旧ブラジル軍政が「危険分子」の法律外処刑を密かに決定▼当時のコルビーCIA長官からキッシンジャー国務長官に宛てた文書で確認さる▼伯軍政暗部への米政府の関与がまたも明るみに

 旧ブラジル軍政が「反体制危険分子」の非合法処刑を公認していたことがこのほど米政府文書によって確認され、ブラジル社会で非難を巻き起こしている。

 ジェトゥリオ・ヴァルガス財団(FGV)のマティアス・スペクトル教授(国際関係)は5月10日、米国務省が2015年に公開していた機密文書を分析していたところ、1974~79年のエルネスト・ガイゼル軍政期に「危険分子の法律外処刑」が継続決定され実施されていたことが判明した、と明らかにした。

 それによると、CIA長官ウィリアム・コルビー(当時)はヘンリー・キッシンジャー国務長官(同)への74年4月11付覚書で、次の事実を報告している。

 ガイゼル軍政大統領は就任直後の74年3月30日、国家情報局(SNI)長官ジョアン・フィゲイレド(次の軍政大統領)、陸軍諜報局(CIE)のミルトン・デ・ソウザ前長官および、コンフィシオ・アヴェリーノ新長官と会談した。
 メディシ前軍政下でCIE長官だったソウザは、「危険分子」104人を法律外処刑した、と語り、ガイゼル軍政も同様にすべきだと進言した。ガイゼルは「明るみに出れば重大な問題になるため考える時間が欲しい」とその場を引き取った。

 だがガイゼルは2日後の4月1日、フィゲイレドSNI長官と会談、法律外処刑を継続することを決定した。フィゲイレドは決定を受けて、「危険分子」処刑を(CIEに)命じた。米政府は、決定と命令を黙認していたことになる。

 ガイゼルは74年9月ブラジリアで、田中角栄首相と会談、関係強化で合意している。後継のフィゲイレドは1979~85年、軍政最後の大統領を務めた。
 ルセーフ前政権期の「真実委員会」は2012年、軍政期に434人が法律外処刑されるか「行方不明処理」されたと報告している。

 1985年の民政移管から33年、軍政期(1964~85)の「将軍たちの人道犯罪」の多くをCIAがいち早く把握していた事実が次々に明るみに出つつある。
 キッシンジャーこそ、南米極右軍政諸国を左翼相互抹殺協力作戦(コンドル作戦)に導いた黒幕だった。ラ米では、ノーベル平和賞さえもらったキッシンジャーへの評価は決して高くない。
 日米関係にしか目がない日本人の米国研究者の多くはキッシンジャーを極めて高く評価しているが、そんな「異常な見方」をラ米知識人は冷ややかに見ている。

2018年5月10日木曜日

 コロンビア政府とゲリラELNとの和平交渉はハバナできょう再開▼サントス大統領は8月の任期切れまでには最終合意は困難との見方示す▼新たな停戦合意が鍵▼今月27日にはコロンビア大統領選挙

 コロンビア政府とゲリラ組織「民族解放軍」(ELN、兵力1500~2000人)の和平交渉第5段階は5月10日、ハバナで再開した。
 交渉仲介国キューバのイバン・モラ代表は、2014年1月ハバナで開かれた第2回CELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)首脳会議で、LAC(ラ米・カリブ)を平和地域にするという決議が採択されたことに触れ、和平合意達成に期待を表した。

 JMサントス大統領は滞在中のベルリンで、次期政権が発足する8月7日までに和平最終合意に達するのは困難との見通しを明らかにしながらも、「次期政権に良い道筋を残してあげたい」と、ハバナ交渉の進展に期待を表した。

 ELN首席代表のパブロ・ベルトゥラーンは、今年1月に終わった第1回停戦に次ぐ第2の、だが「堅固な停戦に漕ぎ着けたい」と表明。だが同代表は、2016年11月にFARCと和平合意した政府がその後、「合意事項を誠実に遂行していないことにELNは懸念を抱いている」とも口にした。

 コロンビアでは今月27日、大統領選挙が、6月17日に決選投票がそれそれ実施される。世論調査では、極右アルバロ・ウリーベ前大統領の子飼いイバン・ドゥケ候補が決選で勝つ公算が大きいと見られている。
 ベルトゥラーン代表は9日ハバナで、「選挙結果が気になる」と述べたが、「しかし和平交渉は選挙の争点ではない」と指摘した。

 コロンビア政府のグスタボ・ベル首席代表も、新たな停戦を実施し、サントス政権末期までに最終合意に到達したい意志を表明した。コロンビアでは緑の党、民主軸、進歩主義党、自由党など中道・中道左翼陣営が和平交渉支持を打ち出している。

 この和平交渉は17年2月に赤道国首都キトで始まったが、同年5月就任したレニーン・モレーノ赤大統領は先月、和平仲介国(交渉場所提供国)であることを止めた。
 その結果、新たな貸座敷はFARC和平で実績のあるキューバと決まった。ELNはかつて、チェ・ゲバラの革命思想に共鳴するゲバリスト路線をとっていた。

2018年5月9日水曜日

 トランプ米政権がマドゥーロ・ベネズエラ政権打倒圧力を倍加▼米州諸国機構にVEN加盟資格停止を働きかけ▼コスタ・リカのアルバラード新大統領が就任▼アルゼンチンがIMFに融資要請

 トランプ米政権のベネズエラ政権打倒圧力が倍加している。ニキ・ヘイリー米国連大使は5月8日、米州諸国の外交官、企業家を前に、「ニコラース・マドゥーロ(VEN大統領)が辞めるまで圧力をかけ続けよう。ラ米全諸国民の安全のためにマドゥーロは去るべきだ」と訴えた。
 同大使は、「具体策はないが、圧力をかけるのを止めてはならない。米州地域(の広範な協力)に懸かっている。説得や対話を呼び掛けるべき時は既にすぎている」とも述べた。

 この会合は、米州諸国の財界を中心に1965年デイヴィド・ロックフェラーによって結成された「米州理事会」の主催により米国務省内で開かれた第48回米州会議。ヘイリーはまた、「内破」(内側から崩壊すること)はVENだけでなくニカラグアでも始まっている、と指摘した。

 一方、マイク・ペンス米副大統領は8日、米州諸国機構(OEA)ワシントン本部でのOEA大使会議で演説、「米国は手をこまねいてはいない。ベネズエラは自由になる。失敗国家に国境はない」と強調。当事国VENと米国および非加盟のキューバを除く加盟32カ国に、「ベネズエラのOEA加盟資格停止」に踏み切るよう促した。

 これに対し、VEN外務省は8日カラカスで声明を発表、「覇権主義者の冷笑・傲慢」と米政府を糾弾した。
 特にペンスが「国境はない」と乱暴な言葉を吐いたのは、VENに軍事侵攻したいがラ米側から反対され欲求不満気味の米政府の苛立ちを象徴している。今月20日にマドゥーロ再選が有力視されているVEN大統領選挙が迫っているため、米国は内政干渉を激化させている。

 トランプ政権はVEN、キューバ、ニカラグアの3国をひとまとめにして敵視している。同3国は、特にイランを敵視する米政権がイラン核合意から8日離脱したこともあり、警戒心を強めている。

▼コスタ・リカ新大統領が就任

 4月1日の大統領選挙決選で勝ったカルロス・アルバラード(38)が5月8日就任した。任期は4年。ルイス・ソリース前大統領に続く市民行動党(PAC)の政権。
 新大統領は首都サンホセの「民主・国軍廃止広場」での就任演説で、教育、国庫、治安を優先政策として掲げた。特に歳出削減の可能性を示唆した。

 今年は1948年4月、故ホセ・フィゲレス(元大統領)率いる反乱軍が内乱を起こし政府軍を打倒、執政評議会を設立した70周年。同年12月初め評議会議長のフィゲレスは国軍廃止を柱とする新憲法を発布した。就任式のあった広場の名前は、この史実に由来する。

 就任式にはエクアドール、ボリビア、エル・サルバドール、グアテマラ、パナマ、ドミニカ共和国の各大統領、キューバ副議長(イネース・チャプマン)、コロンビア副大統領、ベネズエラ外相、蘭領アルバ首相らが出席した。

 5月1日に就任した新下院議長カロリーナ・イダルゴも35歳で、若い女性。政権党PACは下院定数57のうち10議席しか保有しておらず、国会での野党の協力が欠かせない。

▼亜国がIMFに融資要請

 アルゼンチン政府は5月8日、通貨ペソが米ドルに対し安値に陥っているため、国際通貨基金(IMF)に融資要請、近くワシントンで交渉が始まる。

 亜国としては、IMF や米政府の介入を拒否したキルチネル夫妻3期12年を入れ15年ぶりのIMFへの接近。施政3年目にあるマクリ新自由主義・右翼政権は来年末に大統領選挙を控え、経済回復に躍起だ。

2018年5月7日月曜日

 メキシコの保守派ジャーナリストが大統領最有力候補AMLO(アムロ)の「暗殺教唆」▼「殺し屋ジャーナリズム」糾弾の嵐巻き起こる▼1994年に実例

 メキシコの著名なジャーナリスト、リカルド・アレマン(63)は5月5日、次期大統領最有力候補アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ)の暗殺を教唆するとも受け取れるメッセージをSNSで発信、6日にかけて厳しく糾弾されている。

 アレマンは、「ジョン・レノンはファンから殺された」など数人の著名人が崇拝者に殺害された例を並べた後、「AMLOはいつになるのだ」と書いた。

 これに対しAMLO選対幹部タティアン・クロウティエルは直ちに、「彼がペリオディスタ(ジャーナリスト)を名乗るのは許しがたい。彼は自ら働くメディアをも傷つけた」と反撃した。
 著名な保守派論客エンリケ・クラウセは、「危険、無責任、容認し難い、非難すべき、拒絶すべき」と、アレマンへの厳しい言葉を並べた。

 多くのジャーナリストは6日、「#殺し屋ジャーナリズム(ペリオディズモ・シカリオ)糾弾」運動を開始した。アレマンが出演する主要メディアである最大手TVテレビサと11チャネルは、アレマンとの契約を解除、出演番組を打ち切った。

 アレマンは「誤解を与えてしまった。脅迫でなく警鐘を鳴らしたのだ」と言い訳したが、後の祭り。「#」運動派は、殺人教唆罪で検察庁に告発する構えだ。

 大統領選挙は7月1日実施されるが、昨年、選挙戦が実質的に始まっていたころからアレマンはAMLOを敵視する醜聞めいた虚偽すれすれの情報を盛んに流し、顰蹙を買い、「腐敗政権から金をもらって動いている」と非難されていた。

 メキシコのジャーナリズムは長らく、「(体制に)売られた新聞」、「(体制から)
買われた新聞」と揶揄されていた。だが90年代から今世紀にかけての混乱期に報道の自由が増し、体制批判や社会状況批判が急速に増えた。
 このため多くのジャーナリストが、政治家、当局、麻薬マフィアなどの放った殺し屋によって殺害されてきた。警察が殺し屋である例は珍しくない。

 メキシコでは最有力大統領候補だったコロシオが1994年3月、ティフアーナ市郊外で遊説中に暗殺された例が記憶に新しい。この事件の黒幕は、麻薬資金と絡む大物が黒幕だった。
 コロンビアでは1948年、最有力大統領候補JEガイタンが暗殺され、一大暴動事件が起き、これが、その後のゲリラ諸勢力と政府軍との長期内戦に発展した。

 守旧派や右翼の懸念を代弁するアレマンのような暴言がはびこる裏には、プリパニスタ(PRI・PAN両党支配)体制の危機がある。AMLOは同体制の外にいる大物政治家で、大統領の椅子に3度目の挑戦をしている。
 最初の06年選挙で実質的に勝ちながら投開票の不正で勝利を奪われるという苦い経験を持つ。12年の前回は現政権の金権攻勢に敗れた。

 今回は、メキシコに厳しい要求を突きつけるドナルド・トランプ米大統領に屈辱を味わわされてきたPRI現政権の無能、腐敗、不人気からAMLOに勝機が訪れている。AMLOも意識的に「左翼から中道・進歩主義へ」と印象を和らげる言動をとっている。

2018年5月6日日曜日

 コロンビア政府とゲリラELNの和平交渉はハバナに場所を移して続開へ▼エクアドール大統領の貸座敷打ち切りを受けて▼パナマ大統領が制憲議会開設方針を発表▼パナマ駐在の米大使がトランプ政権嫌って辞任

 コロンビア政府とゲリラ組織「民族解放軍」(ELN)は5月5日、和平交渉を7日以降ハバナで実施する、と発表した。キューバ政府も5日、双方からの要請を受けて和平交渉の貸座敷となることを決めた、と発表した。
 ハバナでは2012~16年、コロンビア政府とゲリラ組織「コロンビア革命軍」(FRAC)の和平交渉が続けられ、16年11月、和平は実現した。

 COL政府とELNは2017年2月、赤道国首都キト郊外で和平交渉を開始、10月から今年1月にかけての停戦に漕ぎ着けた。交渉は第5段階に達していたが、4月18日、レニーン・モレーノ赤大統領が交渉貸座敷提供打ち切りを表明、当事者双方は新たな交渉場所を探していた。

 キト交渉はラファエル・コレア前赤大統領が受け入れたが、後継者だが保守的なモレーノ大統領は貸座敷であることに必ずしも乗り気でなかった。
 3月から4月にかけて赤主要紙エル・コメルシオの取材班3人がコロンビア国境地帯で、武闘を継続するFARC分派に殺害されたのを受けて打ち切りに踏み切った。
 その理由として「ELNがテロリズムを止めていないこと」を挙げたが、不可解な説明であり、貸座敷であるのを止めたい意思表示と受け止められていた。

 ELNは1964年に武闘を開始した大学生やスペイン人カトリック神父が主体の組織。富裕層出身の神父だったカミ―ロ・トーレスも政府軍との戦闘で死んでいる。
 ELNは故エルネスト・チェ・ゲバラの思想(ゲバリズモ)を信条とし、コロンビア主義の強かった農民と共産党主体のFARCとは一線を画していた。

 ハバナでの新たな和平交渉は、19日に発足したミゲル・ディアスカネル玖国家評議会議長にとり、最初の重要な多国間外交事業となる。ベネズエラ、ブラジル、チリ、ノルウェーも保証国として和平交渉に関与している。

▼パナマが制憲議会設置方針を発表

 フアン=カルロス・バレーラ巴大統領は5月5日、新憲法ないし改憲の草案を起草する制憲議会の議員60人を選ぶ選挙を、2019年5月5日の総選挙と同時に実施すると発表した。7日から国内各界に諮問するという。

 制憲議会開設は同大統領の選挙公約だった。だが任期が残り一年余りとなった今、具体策に踏み切ったことに異論が巻き起こっている。「バレーラ派の長期支配が狙いではないか」という非難が野党からは出ている。
 総選挙では正副大統領、中米議会議員、市長、市会議員、集落役員を選出する。これに制憲議会議員が加わることになる。

 一方、米国のジョン・フィーリー駐巴大使は5日、トランプ政権下ではやっていけないとして辞任した、と公表した。米国務省は、同大使が3月9日付で辞表を提出していたことを明らかにした。

 

2018年5月5日土曜日

 マルクス生誕200周年にキューバで記念行事、ホセ・マルティと対比▼ペルーではマリアテギと比べる▼べネズエラ大統領は人民民主主義を唱える★「週刊金曜日」5月11日号に映画「マルクス・エンゲルス」評掲載

 カール・マルクス(1818~83)の生誕200周年(5月5日)に際し、社会主義体制のキューバでは幾つかの記念行事が催された。
 玖労働者中央同盟(CTC)の機関紙トラバハドーレス(4日付)は、マルクスの熟年・晩年期に青年期にあったキューバ最大の知識人ホセ・マルティ(1853~95)が、「弱者の側に立つことは名誉に値する」と述べていたことを伝えた。

 さらにマルクスについて、「世界を新しい基盤に置くため闘った」と評価していたことにも触れた。だが同紙は、マルティがマルクスの唱えた階級闘争に否定的見方を打ち出していたことには触れなかった。
 
 ハバナにあるラウール・ロア=ガルシア国際関係高等研究所では4日、「マルティ、マルクス、玖社会主義」と題したシンポジウムが開かれた。
 「マルティとマルクスに、社会正義と公共の善のために活動する道を我々は見出した」、「マルクス主義は過去の遺物では決してなく、生きている科学として、時代に反逆する思想を持つことが急務である現代の状況を批判的に分析する方法を与えてくれる」などの意見が出された。

 この会合は、ホセ・マルティ文化協会(SCJM)とマルティ研究所(CEM)が主催。マルティ青年運動(MJM)、「フラグア・マルティ博物館」(MFM)なども参加した。

 玖作家・芸術家連盟(UNEAC)UNEACも5日、記念会合を開いた。

 ペルーのリマで開かれたフォーラムでは、同国共産党創設者で思想家のホセ=カルロス・マリアテギ(1894~1930)とマルクスを対比させる形で議論が展開された。

 また、英知識人らの意見もラ米各紙で紹介された。「共産主義はマルクスとエンゲルスが想定したようにはならなず、ソ連圏がなくなり、世界は資本制に凌駕された」という意見や、「極少数者への富の集中と絶望的貧富格差、市場全球化、労働を伴わない取引による利潤獲得など、現代資本制の歪みをマルクスは19世紀に予測していた」との評価も伝えられた。
 「そんな現代だからこそ、マルクスの価値が再評価されるべきだ」という意見が少なくない。

  一方、「ボリーバル主義(ボリバリアーナ)革命」と「21世紀型社会主義」を標榜するベネズエラのニコラース・マドゥ―ロ大統領は4日、マルクスには触れずに、「世界のほとんどの民主主義は選良による選良のためのものだが、我々のは最大多数者のための人民民主主義だ」と述べた。

★「週刊金曜日」誌5月11日号映画欄(56P)に、仏独ベルギー合作「マルクス・エンゲルス」(岩波ホール上映中)の評「時に無頼な<革命的生き様>描く」を書きました。ご参考まで。

2018年5月4日金曜日

 「世界報道の自由の日」にアルゼンチンで「責任編集と職業ジャーナリズム重視」、「虚偽ニュース拒否」を訴え▼記者殺害頻発するラ米で進歩主義退潮、大企業のメディア独占で「富裕支配層の報道の自由に傾斜」との指摘▼日本では注目度低い「報道の自由日」▼5月3日は朝日新聞阪神支局襲撃事件発生日でもある

 ユネスコ「世界報道の自由の日」の5月3日、亜国ジャーナリズム企業協会(ADEPA)加盟の約200のメディアは電子版で、「このニュースは責任ある編集に基づく」という点を明確に表明し、「社会メディアの虚偽ニュースを拒否しよう」と呼び掛けるた。
 また、「#職業ジャーナズムはシ(良し)」、「#虚偽ニュースはノ(駄目)」と発信することを決め、一斉に発信した。
 クラリン、ラ・ナシオン、インフォバーエ、ぺルフィール、ラ・ガセータ、ラ・ボス・デ・インテリオール、TNなど、アルゼンチンの主要メディアが参加している。

 この「報道の自由の日」は1993年5月3日、ナミビア首都ウィントフクで開かれたユネスコ主催「アフリカ独立メディア促進セミナー」での決定を受け、翌94年に施行。今年は第25回となる。

 「国境のない記者団」の判断による「2018年報道の自由度順位」(世界約190カ国対象)によれば、LAC(ラ米・カリブ地域)では、ジャマイカが上位6位、コスタ・リカが10位に入った。下位10位では、社会主義キューバが最下位から9番目につけた。

 そのキューバでは玖ジャーナリスト協会(UPEC)が会合を開き、ラ米では2017年にジャーナリスト37人が殺害されたと報告した。
 キューバで最後にジャーナリストが殺されたのは、革命戦争中の1958年5月13日、反乱軍が立て籠もるマエストラ山脈でフィデル・カストロ最高司令らを取材し、ハバナから空路出国しようとしていたエクアドール(赤道国)人カルロス・バスティーダスがバティスタ政権の秘密警察に逮捕され、拷問されてから射殺された事件、と指摘された。

 ラ米ジャーナリスト連盟(FLAP)はハバナで、「進歩主義政権退潮、ジャーナリスト殺害頻発、富の分配の不公平拡大が<報道の不正義>を生み、そのような状況が<報道の自由>を富裕支配層と帝国主義に都合の良いものと解釈されている」と批判した。
 さらに、「多国籍大企業によるメディア独占」状況を非難。社会メディアが「政治運動」を展開し、「イデオロギー的攻勢をかけている」と指摘した。
 米国に関しては、「キューバは長年、米国による反革命宣伝ラ・テ放送に晒されてきた」との言及があった。

 記者殺しが最悪状態にあるメキシコでは、ジャーナリスト団体などがこの日、国会で成立済みの「社会伝達法」を施行しないよう、エンリケ・ペニャ=ニエト大統領に訴えた。
 メキシコでは2017年にジャーナリスト12人が殺された。今年はすでに3人が犠牲になっており、最近では3月ベラクルース州内でレオバルド・バスケス記者が自宅玄関で射殺された。

 エクアドールのレニーン・モレーノ大統領は「報道の自由を守る」と述べ、先ごろコロンビアゲリラ残党に殺害された同国エル・コメルシオ紙取材班3人を悼んだ。

 米国ではマイク・ポンぺオ国務長官が「自由なジャーナリズムを促進し守る」と述べた。だが、トランプ現政権下で虚偽ニュースなどが跋扈、充満し、言論の自由が脅かされている、との指摘が数多くある。

 LACの「自由度順位」はCR、ウルグアイ、スリナム、チリ、亜国、ガイアナ、ドミ二カ共和国、ハイチ、エル・サルバドール、ペルー、ニカラグア、パナマ、赤道国、ブラジル、パラグアイ、ボリビア、グアテマラ、コロンビア、ベネズエラ、メキシコ、キューバ、の順。

 日本では「報道の自由の日」は「憲法記念日」と重なり、注目度が低い。政府・官界と国会政権党議員らの虚偽言動が充満 、司法の意志薄弱が目立つ日本の「報道の自由度」は、先進工業国では極めて低い。そんな権力の状況が虚偽情報を日本社会に蔓延させ、言論封じの悪しき傾向が顕著になっている。
 日本のジャーナリストやメディアが「報道の自由の日」をもっと重視することを期待したい。

    5月3日は、朝日新聞阪神支局襲撃事件(1987年)発生の日である。小尻知博記者が29歳の若い人生を銃弾に奪われ、犬飼兵衛記者(今年1月死去)が重傷を負った凶悪な言論封殺事件だった。事件はいまだに未解明だ。
 この日本のジャーナリズムとしては、この事件と「報道自由の日」を結び付けて考えるべきだろう。

    因みに、スペイン語でジャーナリズムは「ペリオディズモ」、ジャーナリストは「ペリオディスタ」という。

2018年5月3日木曜日

 スペイン地下結社「バスク国と自由」(ETA)が書簡で解散を宣言、犠牲者に謝罪▼結成60周年、「自分たちの時代は終わった」と結論▼ベネズエラ大統領が「武闘決起も辞さぬ」と野党候補を牽制

 スペイン・バスコ(バスク)州の独立派武闘地下結社「エウスカディ・タ・アスカタスナ」(バスコ国と自由)は5月2日、新聞や政治家らに送付した書簡で、組織解体を宣言した。書簡は今年4月16日付。

 1958年にバスコ民族主義者党(PNV)の青年組織として発足してから60年。書簡は「ETAの歴史的時代は終わった」と述べている。
 ETAは60年代以降、計853人を殺害したとされる。ETA要員も多数殺害されたり、投獄されてきた。

 書簡には「西仏両政府の理解は依然、得られていないが」と記されている。ETAは書簡で、殺害した犠牲者、遺族に謝罪している。これに対し両国政府は、謝罪は遅すぎたと表明した。ETAはピレネー山脈両側の西仏バスコ地域に拠点を設けていた。

 ETAは、政党化して政治に参加する意図はない、としている。ETAはフランコ独裁時代は、内外の民主派から広範な支持を得ていたが、フランコが1975年11月に死去、やがて民主化過程が軌道に乗ると、「破壊活動組織」などと非難されるようになった。
 スペインの政治評論家は、「コロンビアのFARCと違い、ETAには社会復帰し政治参加する立場にない」と指摘する。

【筆者はフランコ時代末期に仏国側バスコ地域でETA幹部にインタビューした。拙著『イベリアの道』(1995年、マルジュ社)、同『ボスニアからスペインへ 戦の傷跡をたどる』(2004年、論創社)を参照されたい。】

▼ベネズエラ大統領が「武装蜂起も辞さない」と牽制

 5月20日の大統領選挙での再選を目指すニコラース・マドゥーロ大統領は2日、バルガス州カリブ海浜での演説で、「選挙の結果、国富を米国に渡す政府が現れたら、私はライフル銃を手に人民と共に戦いを挑む」と述べた。
 これは、べネズエラ通貨をボリーバルに替えて米ドルにすると公約するヘンリー・ファルコン候補への牽制発言。ファルコンはチャベス派と袂を分かった政治家で、マドゥーロに次ぐ有力候補。

 ファルコンは2日、過去19年間(故ウーゴ・チャベス前大統領14年、マドゥーロ5年)で今はチャベス派に勝つ最大の好機だ、と指摘した。

 一方、米州諸国機構(OEA)は2日、ワシントン本部での大使会議で、「ベネズエラ問題」を6月4~5両日同地で開催される第70回総会(外相会議)の議題とする提案を賛成19、反対6、棄権5、不参加4で可決した。
 「反マドゥーロ派」の米加墨グアテマラCRコロンビア秘智パラグアイ亜伯セントルシーアの12カ国が共同提案していた。同12カ国は、「20日の大統領選挙で生まれるベネズエラ政権を非合法と見なす」という決議案をも提案する準備を進めている。

 これに対しVENのサムエル・モンカーダOEA大使は、OEA憲章にある「内政不干渉原則」を盾に、12カ国の画策を糾弾した。

 この日、米国のOEA大使に就任したカルロス・トゥルヒージョ(反革命キューバ系3世)は、「ベネズエラはOEAを去るべきだ。ただし自発的にではなく」と述べ、VEN追放が望ましいとの考えを示した。
 その就任式でマイク・ペンス米副大統領は、「かつてVENは南米一豊かな国だったが、今や地域で最も貧しい国の一つに成り下がった」と口にした。

2018年5月2日水曜日

 ドミニカ共和国が中国と国交樹立、台湾と外交維持するのは19カ国に▼うち10カ国はラ米・カリブ地域に▼動向気になるニカラグア 

 ドミニカ共和国(RD、ラ・ドミニカ―ナ)のミゲル・バルガス外相と中国の王毅外相は5月1日、北京で国交樹立合意書に調印した。RDは同時に台湾との外交関係を断ち切った。
 建国間もない1950年代、国交を持つ国が23カ国しかなかった中国は今日、RDを含め176カ国と国交を持つ。一方、台湾は19カ国に減った。

 その19カ国のうち、実に10カ国はLAC(ラ米カリブ地域)にある。ラ米はグアテマラ、エル・サルバドール、ホンジュラス、ニカラグア、ハイチ、パラグアイ。カリブはベリーズ、セントクリストファー&ネヴィス、セントヴィセント&グラナディーン、セントルシーア。
 セントルシーアは、台湾と断交し中国と国交を樹立したが、対中断交して台湾と復交した珍しい経緯がある。

 台湾の蔡英文総統は、以上のLAV諸国で大統領や首相が就任する際、就任式に可能な限り出席し、援助を約束してきた。

 ニカラグアのオルテガ・サンディニスタ左翼政権は、プーチン露政権と同盟関係にあり、一方で中国系資本を入れてニカラグア横断運河の建設作業に着手している。しかし建設工事は滞っている。
 オルテガ政権が本気で運河を完成させようと決意するならば、中国資本に前面に出てもらうしかないだろう。その場合、台湾と断交せざるを得なくなる。

 台湾は、外交関係を断たれた後も、亜伯智秘コロンビア赤墨のラ米7カ国には通商代表部を置いている。

2018年5月1日火曜日

 米州諸国機構(OEA)発足70周年▼記念の大使会議でベネズエラ「人道問題」を討議▼20日のVEN大統領選挙を前に揺さぶり掛ける米戦略▼「不安定化の陰謀」とVEN副外相が非難▼キューバで大規模なメイデー行進 

 米州諸国機構(OEA・OAS)は1948年4月、騒乱状態にあったコロンビアの首都ボゴタで発足、それから70年が過ぎた。これに因むと同時に「ベネズエラ人道問題」を討議するOEA特別大使会議が4月30日、ワシントンの本部で開かれた。

 米加墨グアテマラCR・HON巴秘智亜パラグアイ伯の「反ベネズエラ陣営」12カ国が開催を提案(コロンビアは議長国のため提案国にはならなかった)。VENとボリビアは開催に反対した。VENの同盟国キューバはOEAに加盟していない。
 当事国ベネズエラの賛意なしに開かれ、3時間続いた。ニカラグアとエクアドールは特にベネズエラ支援をすることなく黙していた。

 米大統領政庁(ホワイトハウス)のラ米局長フアン・クルーズはベネズエラ国民に向けて「憲法に忠実であれ、マドゥーロ体制に服従するな」と呼び掛けた。特にVEN軍部には、暗に決起を促すとも受け取れる表現で呼び掛けた。

 米国務省ラ米担当次官補代理のマイケル・フィッツパトリックは30日、記者らを前に、OEAは昨年4月に墨カンクンで開かれた外相会議でVEN問題で合意できずに終わったが、その結果として「リマグル―プ」(グリマ)が結成された、と述べた。
 同グループは加墨グアテマラHON・CR巴コロンビア秘智亜パラグアイ伯ガイアナ・セントルシーアで構成。突出を避けるため参加していない米国と連携している。

 「人道危機」という言葉を使ってVENに揺さぶりをかける米国の戦略は、5月20日実施のVEN大統領選挙を控えたVEN有権者に、再選を狙うニコラース・マドゥーロ大統領への投票を止めるよう働き掛ける狙いを持つ。
 VENのサムエル・モンカーダOEA大使(北米担当副外相)は、「OEAはVENに暴力を喚起し、大統領選挙直前のVEN社会を不安定化させようと謀っている」と非難。「人道危機」という言葉を彼らが使っているのは、VENへの介入に備えてだと糾弾した。

 そのうえで、「経済状態が悪いことは否定しないが、5月20日の選挙を経て発足する政権が新しい経済を築く」と述べた。マドゥーロ大統領はカラカスで30日、VENの原油生産日量(180万バレル)を100万バレル増やしたいと、方針を明らかにしている。

 OEAは昨年末のHON大統領選挙の不正について大々的に取り上げることなく、結果的に「不問」に済ませた。16年8月の異常なブラジル大統領弾劾は、労働者党政権を倒し、大掛かりな汚職事件を覆い隠しための保守・右翼陣営の陰謀だったが、これについてもOEAは、弾劾の結果登場したテメル伯現政権追及に執着しなかった。

 トランプ米政権は最近、新たにCIA前長官を国務長官、極右の元国連大使を大統領安保担当補佐官に迎え、右傾化が著しくなった。これはラ米の左翼・進歩主義陣営にさらに厳しい季節が到来したことを意味する。

 フィッツパトリック次官補代理は、5月7日のOEA大使会議と6月ワシントンでのOEA外相会議でマイク・ペンス米副大統領がVEN政策などで演説すると明らかにしている。

▼キューバで大規模なメイデー行進

 ハバナの革命広場では「国際労働者の日」の5月1日、労働者、市民ら数十万人が行進した。観閲台の中央には、ラウール・カストロ共産党第1書記、その左側にミゲル・ディアスカネル国家評議会議長、右側に玖労働者中央同盟(CTC)のウリーセス・ギラルテ書記長が並び立ち、その周囲を党・軍・政府の高官らが固めた。

 今年のメイデーの標語は「団結・公約・勝利」。ディアスカネル議長の下での最初のメイデーだ。全国で「数百万人が行進」と玖メディアは伝えている。
 33カ国からの1300人も参加。彼らは、2日にハバナで開かれる「国際対玖連帯会合」に出席する。