2017年5月30日火曜日

 名画「ローマ法王になる日まで」が6月3日東京で公開。3万2000人が殺されたアルゼンチン軍政期の凄惨な人道犯罪と、ホルヘ・ベルゴリオ司教(後の法王フランシスコ)の人間的素晴らしさが描かれている。ラ米学徒には見逃せない作品

 イタリア映画「ローマ法王になる日まで」(2015年ダニエーレ・ルケッティ監督作品、ロドリーゴ・デラセルナ主演、113分)を観た。6月3日から、ヒューマントラストシネマ有楽町と新宿シネマカリテで公開される。

 現代アルゼンチン(亜国、アルヘンティーナ)最悪の時代だった軍政期(1976~1983)の人道犯罪の実態を、この映画で垣間見、想像することができる。また、現在の法王フランシスコがなぜ法王にふさわしい人物だったかが、この映画で明確に示される。

 亜国、南米、ラ米、米州、カトリック教会、ヴァティカンに関心を持つ人にとり、また映画を愛する人々にとって必見の名画だ。壮年期のホルヘ・ベルゴリオ(後の法王)役のロドリーゴ・デラセルナは、革命家エルネスト・チェ・ゲバラが学生時代に第1回南米旅行に出た折、行動を共にした6歳年上の親友アルベルト・グラナードを演じている。この点からも興味深い。

 この映画は、書籍『教皇フランシスコ キリストとともに燃えて』(オースティン・アイヴァリー著、宮崎修二訳、2016年、明石書店)の内容に沿っているように見受けられる。この本を読んでおけば、理解ははるかに深くなるだろう。

 1492年10月12日、クリストーバル・コロン(コロンブス)は西大西洋中央部のバハマ諸島サンサルバドール島に漂着した。これがスペインによる新世界到達なのだが、その日はローマカトリックが新世界(ラス・アメリカス)に強引に植え付けられた最初の日でもある。先住民族は改宗を拒否すれば、その場で殺されかねなかった。
 
 以来5世紀余り、法王庁(教皇庁=ヴァティカン)の2013年の統計では、全世界のカトリック教徒は12億5400万人(世界人口の17・7%)。その49%は、米州(南北両米大陸およびカリブ海)が占める。そして米州ではラ米(ラテンアメリカ)が圧倒的に多い。

 欧州は米州に次ぐ22・9%だが、ごくわずかな例外を除き、欧州人の法王が十数世紀も君臨していた。だが法王を選び、かつ法王に選ばれる資格を持つ枢機卿たちの中には、米州、特にラ米から法王を選ぶのが民主的と考える者がいて、その声は年々高まっていた。

 司祭による未成年者への性的虐待事件が世界各地で続発、カトリック教会全体が猛省を促されて久しいが、そうした信仰の危機や、米国生まれの新教系宗派の台頭・浸透で、カトリック教会は危機感を抱いてきた。

 そのような状況の下、<救世主>として2013年3月抜擢された亜国人イエズス会士J・ベルゴリオ枢機卿が法王フランシスコである。現在80歳だ。もちろんアメリカ人=米州人として初の法王である。

 アイヴァリーの本を読めば、あるいは、この映画を観れば、なぜベルゴリオがカトリック世界の最高指導者に選ばれたかが理解できる。言わば<最後の切り札>だったのだ。だがベルゴリオは、カトリック教会の頂点に立つまでに、さまざまな試練を乗り越えなければならなかった。その最大の難関は、1976年3月に始まり、血塗られた軍政期だった。

 ベルゴリオは司祭の立場を生かし、放置すれば殺されかねない人々を匿い、国外に逃がした。悲観も楽観もせず、前方にひたすら向かうベルゴリオは、「神の深遠な理想」を抱きながら、極めて現実的、実践的に自身の人生を操っていた。

 軍政最高幹部に通じる人脈を持つかと思えば、文豪ホルヘ=ルイス・ボルヘス(1899~1986)とも知己だった。法王になるや、ギリシャ正教、ロシア正教、英国教会、イスラム教、ユダヤ教など異なる宗派・宗教の最高指導者に歩み寄り、相互理解と友好の橋を架けた。偏見を持たずに相手を理解しようと努める法王の真摯な姿勢が、相手の心を開くのだ。

 地中海で難渋する難民の救済活動にも見られるように、法王は生の国際情勢にも積極的に関与している。資本主義の総本山・米国と、社会主義クーバとの間で半世紀余り展開されていた米州の頑迷な冷戦に終止符を打つべく関係正常化のための秘密交渉を側面援助した。その甲斐あって、米玖両国は2014年12月17日、国交正常化合意に至り、15年7月国交は再開した。

 また、南米に残る最後の冷戦構造であるコロンビア内戦を終わらせるため、同国政府とゲリラ組織FARC(コロンビア革命軍)がハバナで続けていた和平交渉を支援した。双方は16年11月和平過程に入り、17年5月現在、FARCゲリラは武装解除に応じている。7月末には全員の武装解除が終わる見通しだ。

 世界最大のカトリック教国ブラジルでは16年8月末、労働者党の合憲政権が腐敗した保守・右翼勢力によって、正当な理由なく国会で弾劾された。まさに「国会クーデター」だった。弾劾賛成派の議員たちは「神のために」と叫んで投票、「神」を大安売りした。この政変に心を痛めた法王は、ブラジルに向けて「祈りと対話をもって和合と平和の道を進んでほしい」と呼び掛けた。

 今ラ米を揺さぶっているのは、大産油国ベネスエラの左翼革新政権を倒そうとする国内保守・右翼層と、これを支援する米政府が、政変誘発を狙って激しい破壊活動を仕掛けていることだ。法王はベネスエラ政府と反政府勢力の双方に向けて対話を訴えたが、政府打倒を目指す反政府側は聴く耳を持たない。自身の影響力の限界を知る法王は謙虚である。

 国際社会の最重要当事者の一人であり、世界平和構築に意識的に取り組んでいる法王フランシスコの思想と人間性を、この映画によって知ることになれば、国際情勢を読み解く上で欠かせない新しい視座が開けるだろう。

 多くの人々に観てほしい名画である。 

2017年5月29日月曜日

 31日の米州諸国機構(OEA)外相会議を前に反ベネズエラの世論形成キャンペーンが米州で展開されている。保守派知識人らも加担。▼メキシコ学生強制失踪事件から28ヶ月経過

 米政府の影響下にある米州諸国機構(OEA、英語でOAS、本部ワシントン、34カ国加盟、うちベネスエラは離脱通告済み)が5月31日、特別外相会議を開いてベネスエラ情勢を話し合うのを前に、米州で激しい外交戦が展開されている。

 米政府の意向に忠実なルイス・アルマグロOEA事務総長は、24カ国の賛成を得て「米州民主憲章」をベネスエラに適用し、同国を孤立させたうえで、米国や反ベネスエラ路線のラ米諸国によるベネスエラ介入に持ち込む戦術を練っている。

 これに対しベネスエラを支持するニカラグア、ボリビアなど左翼・進歩主義陣営とベネスエラは、保守・右翼系や米国に脅されているカリブ諸国などが計24カ国に至らないよう動いている。11カ国が賛成しなければ、賛成は多くても23カ国止まりになる。

 米国に従うオンドゥーラス(ホンジュラス)のフアン・エルナンデス大統領は5月25日、同国の在ベリーズ大使館を通じ、「ベネスエラ危機解決には、もっと多くの血が流れることが決定的に重要だ。(これを受けて)同国人民を人道支援し、同国に民主を回復させる」と読みとれる文書をベリーズ外交界に配布した。外国の介入の可能性を示唆する文書だ。

 デルシー・ロドリゲスVEN外相は27日、同文書を暴いて糾弾、オンドゥーラス政府に強く抗議。併せて、アルマグロ(OEA総長)が促進するベネスエラ反政府勢力の暴力計画を非難した。

 ペルー人作家マリオ・バルガス=ジョサ、メヒコ人歴史家エンリケ・クラウセ、コスタ・リカ元大統領オスカル・アリアスらラ米の保守・右翼系知識人・政治家らは27日、連名でマドゥーロ政権を批判した。これも米政府のゴルペ(クーデター)教本に「反ベネスエラ世論作り」として盛り込まれている。

 エルネスト・ビジェーガス情報相は、反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUDを、「外国勢力の介入を誘導する筋書きを実行している」と指摘。「虚偽報道で、暴力死の責任を政府側になすりつけている」と、MUDを厳しく批判した。

 米国務省のアンデス諸国担当次官補代理マイケル・フィッツパトゥリックは27日、エクアドールのアンデス通信に、「政権議会(ANC)開設はベネスエラ危機解決に役立たず、むしろ悪化させる」と述べるなど、反ベネスエラ運動を展開した。

 ANC開担当のエリーアス・ハウア教育相は、「チャベス派政権は、歴史的に疎外されていた多数派人民大衆の社会・政治・文化の権利を拡大した。それを可能にした我々の権力を防衛しよう」と呼び掛けた。ANC議員選挙のうち職能別選挙区に出馬する候補を決める会合で27日語った。

 ララ州都バルキシメトでは27日、国家警備隊(GNB)のダニー・スベロ中尉(34)が反政府勢力による私刑で撲殺された。中尉のオートバイは燃やされ、路上に放置された。

▼ラ米短信    ◎学生43人事件発生から2年8カ月過ぎる

 メヒコ・ゲレロ州イグアラ市一帯で州内のアヨツィナパ農村教員養成学校生43人が強制失踪させられた事件から5月26日で32カ月が経過した。真相はほとんど解明されていない。

 学生の家族や支援者はこの日、メヒコ市のレフォルマ大通りを抗議行進、検察庁前で集会を開き、真相解明を訴えた。事件の鍵を握る麻薬組織「ゲレロ・ウニード」の元首領が、連絡を取り合っていた市警・州警・国警の警察官氏名・電話を記した(元首領の)手帳の存在を隠していた検察庁職員の捜査を実施するよう、家族らは要求した。

 支援団体は、事件発生3周年となる9月15~26日、大規模な事件究明行事を実施する計画だ。
 
 

2017年5月27日土曜日

 米上院議員らがキューバへの輸出と米国人の渡航の自由化求める法案を議会に提出。トランプ政権の対玖政策試す狙いも▼ベネズエラ・タチラ州は、首都攻略への拠点づくり目指す反政府勢力の騒擾活動を制圧と発表

 米両党上院議員55人の賛同により5月26日、対玖輸出自由化や米国人の渡玖自由化を求める「2017年対玖輸出自由化法」案が上院に提出された。パトリック・リーヒー民主、マイク・エンジ共和の両上議らを中心に法案はまとめられた。

 賛同した議員らは、「トランプ政権がオバーマ前政権が始めた対玖歩み寄り政策を維持継続するか否かの試金石になる法案」と指摘する。「過去の玖孤立化政策が成功しなかったため」、この法案提出のような手段が必要と表明している。

 ハバナではラウール・カストロ国家評議会議長が26日、西サハラ独立を目指すサハラウイ・アラブ民主共和国(RASD)のブラヒム・ガリ大統領と会談した。クーバは一貫して、サハラウイの独立運動を支援してきた。ガリは24日のエクアドール大統領就任式に出席した。

 ラパスでは26日、エボ・モラレス大統領がミゲル・ディアスカネル玖第1副議長と会談、ラ米での右翼勢力台頭を前に連帯強化で一致した。両首脳は伯亜赤VENなどで右翼の攻撃が激化している事態に触れ、特にベネスエラについて「その将来はベネスエラ人民が決めることであり、諸外国は内政に干渉してはならない」と警告した。この2人も赤道国大統領就任式に出席した。

 クーバのサンクティ・エスピリトゥ市で25~28日「日玖文化週間」が開かれており、両国関係者が行事に参加している。

◎ベネスエラ情勢

 コロンビア国境タチラ州のホセ・ビエルマ知事は5月26日、「反政府右翼勢力は州を統治不能に陥れようと20日から4日間、準軍部隊と連携し、常軌を逸したテロ、放火、破壊活動を繰り広げたが、州民がそれを許さず彼らを制圧、MUD(保守・右翼野党連合)に教訓を与えた」と表明した。

 知事はまた、「彼らはタチラ州を首都カラカス攻撃戦略の尖端にしようと謀ったが失敗した。コロンビア準軍部隊とMUDが連携するタチラ州だけに、防衛上、(国軍の治安出動を認める)サモーラ計画が重要だ」と指摘した。

 制憲議会(ANC)開設過程担当のエリーアス・ハウア教育相は26日、「ある政府機関は無責任にも推測に基づいて国家警備隊(GNB)を攻撃している」と、暗に検察庁を批判。「検察庁に遵法させ、異常事態を前にして動かない検察庁のような事態を避けるためにもANC過程は必要だ」と強調した。

 ハウアはまた、MUDの国会議員は「不逮捕特権をいいことにテロリズムを組織しているが、そんな国会を(ANCで)正さねばならない」と警告した。

 一方パナマ政府は26日、ベネスエラ、コロンビア、ニカラグア3国人の観光査証によるパナマ滞在を従来の180日間から90日間に変更する、と発表した。同3国人の査証取得希望者の来訪目的や前科の有無などを今後は調べるという。

 米側発表によると、今年第1四半期のVEN米貿易は往復47億ドルで、前年比45%増し。ベネスエラ側の輸出は36億ドルで、その95%は日量71万バレルの原油だった。ベネスエラ原油は26日現在1バレル=44・82ドル。

2017年5月26日金曜日

  イシカワ駐日ベネズエラ大使が日本記者クラブで、同国情勢に関する国際的な虚偽報道を厳しく批判。ニカラグア、キューバ、ボリビアの3大使もベネスエラとラ米の立場を説く▼制憲議会(ANC)選挙出馬は月末登録へ。トランプ米政権はベネズエラとキューバへの18年度援助をゼロに

 セイコー・イシカワ(石川成幸、日系3世)駐日ベネスエラ大使は5月25日午後、日比谷公園に面した東京・内幸町の日本記者クラブで記者会見し、ベネスエラ情勢に関する虚偽ニュースや意図的誤報が横行、極度に誤った反ベネスエラ世論が国際社会で形成されていると、実例を幾つも挙げて批判した。

 米政治週刊誌ニューズウィーク日本語版は、最新号で「ベネズエラほぼ内戦状態、政府保管庫には大量の武器」という見出しで、翻訳記事を掲げた。イシカワ大使は、英語版の見出しにも本文にもないことを日本語版は見出しにしたと指摘した。

 時事通信はカラカス発AFPの翻訳記事に「ベネズエラ、第2のシリアになる恐れ  米国大使が警鐘」という見出しを付けた。大使は、ベネスエラの状況はシリアと全く異なると述べ、米大使の意図を批判した。因みにVEN・米双方は2010年から相互に大使を置いておらず、この記事の大使は「臨時代理大使」と思われる。

 イシカワ大使はまた、典型的な虚偽ニュースとして、保守・右翼野党連合MUD幹部が発信した「治安部隊に包囲され窮地に陥っている若い女性」という印象を与えた写真は、実は治安部隊の前で笑ってポーズをとっていた同じ女性の「演出場面」を撮影した虚偽写真だと、証拠を示して暴露した。

 さらに、コロンビア国境「タチラ州での人間の鎖」と題した写真がスペイン・カタルーニャ州での「人間の鎖」の写真を偽って流したものだと指摘。ウクライナの写真をベネスエラと偽って流した例、チレとエジプトの警察による弾圧写真をベネスエラでの弾圧として流した例、貧者が治安部隊と対峙しているブラジルの写真をベネスエラと偽って流した例など典型的な虚偽発信を次々に紹介。虚偽記事・写真がいかに誤った判断と世論に人々を導くか、ということを指摘した。

 大使はその上で、世界最大の原油埋蔵量を持つベネスエラが石油の富を貧困解決など社会政策に回し国を変革したことに反感を抱く勢力が虚偽情報配信の背後に居る、と示唆した。

 米国は国際金融界に圧力をかけベネスエラへの融資を禁止、ベネスエラの食糧や薬品の輸入が困難になった。ベネスエラの財界も米国に呼応して減産、在庫隠しをしてきた。この種の「経済戦争」でベネスエラ社会は揺さぶられてきた。

 大使は、そんなからくりを説明。その打開策の一例として、6人家族が半月暮らせる食糧品37種をダンボール箱やビニール袋に詰め、平均賃金の10%程度の価格で配給する「クラップ」政策を紹介した。

 さらに、ベネスエラの人間開発指数0・767がLAC(ラ米・カリブ)平均0・751を上回っていることや、貧富格差を示すジニ係数が2015年には0・38だったと強調。ベネスエラは、「資本主義の独裁」に対する「人間的な代替経済モデル」を遂行し成果を挙げてきたが、それゆえに敵視されている、と指摘した。大使は、日本の最重要同盟国である米国への批判を極力避けるべく配慮していた。

 マドゥーロ・ベネスエラ政権は今、制憲議会(ANC)の7月下旬実施に向けて動いているが、イシカワ大使は5月の世論調査で回答者の54%がANC開設に賛成していることが明らかになったと指摘。またMUD指揮の反政府行動が否定的結果を招くと批判する者が81%に上ったことを強調した。

 会見の場の最前列には、クーバのカルロス・ペレイラ大使、ニカラグアのサウール・アラナ大使、ボリビアのアンヘラ・アイリョーン臨時代理大使が並んで着席していた。アラナ大使は、「世界で最も平和な地域は重大な紛争がないLACだ」と指摘。そこに紛争を持ち込む米国を暗に批判した。

 ペレイラ大使は、「日本の一部メディアも虚偽報道に陥ってはいまいか」と指摘。「米政府は左翼政権、進歩主義政権に反対し攻撃を仕掛ける」とし、「政権打倒の戦略は不変だが戦術を替えた」と分析した。アイリョーン代理大使も民族自決を譲らないエボ・モラレス政権の立場を説いた。

 期せずして記者会見の場は「大なる祖国」の熱気に満たされた。

◎ベネスエラ情勢

 ベネスエラ国家選挙理事会(CNE)のティビサイ・ルセーナ議長は5月25日、7月下旬実施のANC議員選挙に出馬する者は31日~6月1日にCNEに登録すべきことを発表。出馬には選挙民の3%の署名が必要とした。

 議員数は545人で、うち364人は全国の市を基盤にした「地域選挙区」から選出。残る181人は「職能別選挙区」から選ばれる。それは労働者79人、年金生活者28人、学生24人、コムーナ(コミューン)24人、先住民8人、農民・漁民8人、身体障害者5人、財界5人。ANC開設に向け提示される改憲草案を審議する「職能別委員会」が一部地域で25日発足した。

 ニコラース・マドゥーロ大統領はMUD指導部に、暴力打ち切り、ANC選挙参加、安寧・生活・民主のための対話をあらためて呼び掛けた。大統領はまた、「商店1000軒以上が略奪、破壊されたが、正常な状態に戻した」とも述べた。

 ブラディミール・パドゥリーノ国防相とネストル・レベロール内相は25日、反政府勢力の暴動のさなかに死んだ大学生(20歳)の死因について政府と異なる見解を示すなど政府中枢と対立しているルイサ・オルテガ検事総長を厳しく批判した。

 デルシー・ロドリゲス外相は、米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長とOEA加盟諸国がベネスエラ政府を激しく非難しながら、ブラジル政府による人民弾圧に沈黙しているのを「背徳的」と糾弾した。ブラジルのミシェル・テメル大統領は贈収賄関与が決定的な形で暴露され、辞任を求める大規模な抗議行動に遭っている。24日には首都ブラジリアに軍隊を治安出動させた。

 ベネスエラ外務省は国連児童基金(ユニセフ)に、「反政府勢力は少年少女・未青年に火炎瓶を作らせ投げさせている」と、証拠の写真、映像、証言を添えて告発した。

 一方、トランプ米政権は24日、2018年度予算案でLAC援助を大幅に削減。16年度に650万ドルあったベネスエラ向けはゼロとなった。同じくクーバ向けも2000万ドルからゼロにされた。一方で米議会は、ベネスエラ反政府勢力支援資金として新たに2000万ドルを支出する法案を審議している。
 

2017年5月25日木曜日

  エクアドルのレニーン・モレーノ大統領が就任。社会政策重視継続を約束。就任式出席のマクリ亜国大統領は高山病で、南米諸国連合会合を開けずに帰国▼ベネズエラ最高裁が首長8人に反政府街頭行動の許可禁止を命令

 エクドール(赤道国)で5月24日、レニーン・モレーノ大統領(64)が就任した。4月2日の大統領選挙決選で51・16%を得票、保守・右翼陣営で新自由主義者の銀行家ギジェルモ・ラッソ(61)を破った。任期は4年。

 国会での就任式で、車椅子のモレーノは、前任者ラファエル・コレア(54)から大統領の襷をかけてもらった。就任演説で、「未来は我々を待ってくれない。未来は現在だ」で切り出し、「4年後には、よりよい赤道国を人民に渡す」と宣言した。自身も副大統領として関与した「市民革命」という改革政策を推進したコレア前政権10年の実績を讃えつつ、新しい時代を切り開くと強調した。

 モレーノは、「人民の生活を守る責任ある国・政府になる」と述べ、具体的政策として、住宅32万5000戸を建設、うち19万1000戸を極貧過程に無料で与え、残りは低所得層に渡すと約束した。雇用13万6000人分創出、貧困対策の一環としての「人間開発給付金」を月150ドルに引き上げること、65歳上の病弱な高齢者への無料医療提供なども掲げた。

 アマソニアの環境保護、隣国コロンビア政府とゲリラELN(民族解放軍)の和平交渉貸座敷として引き続き支援することなども打ち出した。

 就任式には、ボリビア、コロンビア、ペルー、チレ、パラグアイ、アルヘンティーナ、アイチ、コスタ・リカ、オンドゥーラス、グアテマラのラ米10カ国大統領、クーバ第1副議長、米国務省米州担当次官補、南米諸国連合(ウナスール)前事務局長エルネスト・サンペールらが出席。ベネスエラからはカルメン・メレンデス大統領府相が出席、遠方からはサハラウイ・アラブ民主共和国(SADR)のブラヒム・ガリ大統領が出席した。

 亜国のマウリシオ・マクリ大統領は、モレーノ大統領就任後、キトの亜国大使館でウナスールの非公式首脳会合を開き、事務局長選出問題、ベネスエラ、ブラジル両国の情勢について話し合う計画だった。4月21日にベネスエラからウナスール議長国を引き継いでいたからだ。だが標高2800mのキト到着後間もなく高山病にかかり、就任式後、予定を取りやめ帰国の途に就いた。

◎ベネスエラ情勢

 ベネスエラ最高裁は5月24日、カラカス首都圏区長、ミランダ、メリダ両州内の市長ら計8人の首長に、反政府勢力への街頭行動許可を禁止する命令を発した。「平和デモ」を装い暴動を起こすのが常態となったため。8人は保守・右翼野党連合MUD所属。

 ネストル・レベロール内相は同日、首都圏、ミランダ、スリア両州で破壊活動を組織し資金を暴力集団に与えていたとして、MUD内の極右3政党党員計7人を逮捕した、と発表した。

 元検事イサイーアス・ロドリゲスは、「検察内が割れている」として、政府政策にしばしば異論を唱えてきたルイサ・オルテガ検事総長に「反政府勢力の網に絡らめ捕られるのではないか」と警告。「行政府内の一致」を求めた。

 一方、デルシー・ロドリゲス外相は、MUD指揮下の反政府勢力が2014年に決行した街頭暴動事件(グアリンバ)を調査するため政府が設置した「真実・正義委員会」の任務延長が決まった、と明らかにした。マドゥーロ大統領から指示があった。

▼クーバ・ベネスエラ情勢講演会:5月24日1900~2030、東京・高田馬場のNGOピースボート本部で開かれ、約50人が参加した。講師の伊高浩昭は玖国情勢を語り、コロンビア記者らが昨年制作したグアンタナモ米軍基地をめぐるビデオ映像(35分)を放映した。次いで、険悪度が日々に増しているベネスエラ情勢について話した後、質疑応答に移った。2040ごろ閉会した。

2017年5月24日水曜日

★★★ベネズエラ制憲議会(ANC)選挙は7月下旬、州知事・州会議員選挙は12月10日実施へ。マドゥーロ大統領が政令に署名。一部で手続きへの異論出る。バリーナス州は軍に治安出動を要請▼今日24日夜、ピースボートで関連講演会

 ベネスエラ国家選挙理事会(CNE)のティビサイ・ルセーナ議長は5月23日、制憲議会(ANC)議員選挙を7月下旬に、州知事・州会議員選挙を12月10日に、それぞれ実施すると発表した。24日にCNEは会合、両選挙の具体的日程を決める。州選挙は昨年末までに実施されるはずだったが、政治的混乱で延期されてきた。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は23日、ANC開設担当官エリーアス・ハウア教育相から報告書を受け取り、カラカス市内を行進した支持派大群衆と記者団を前に、ANC議員選挙実施に関する政令に署名した。

 大統領は、「我々は参加型政権であって、代表制ではない」と強調。「経団連とMUD(保守・右翼野党連合)はANC開設対話を拒否した。MUDの回答は暴力だった。彼らは国中の街を燃やし、不寛容精神を焚きつけ、武装決起を呼びかけ、外国の介入を招こうとしてきた」と非難、「我々は平和、対話、和解、敬意を重んじる」と述べた。

 ハウア報告によれば、ANC議員は540人。うち「地域選挙区」は、全国364市・特別区から選出、先住民には8人が割り当てられる。「職能別選挙区」は有権者8万3000人ごとに1区で、労働者、農民、漁民、身体障害者、年金生活者、学生、企業経営者、コムーナ(コミューン)およびコムーナ理事会がそれぞれ比例代表名簿をCNEに提出、得票により議席が割り当てられる。

 地域選挙区出馬者は、選挙民の3%の推薦を必要とする。18歳以上のベネスエラ人が立候補できる。選挙結果判明後72時間で、ANCが開設される。

 ところがCNE監査官ルイス・ロンドンは23日、改憲要求には国民投票が必要であり、それがなく、政令内容も事前に有権者に諮られなかったとして、反対を表明。また最高裁民事法廷のマリセーラ・ゴドイ判事も、国民投票の必要性を指摘、ANC開設選挙手続きに異議を唱えた。

 一方、MUDが指揮する暴動は各地で続いている。22日に騒乱状態となったバリーナス州では、スレ市の警察署が暴徒に放火され破壊された。若者1人が死亡した。22日の州都バリーナス市の暴動で略奪された店舗は170軒と判明した。

 同州のセナイダ・ガジャルド知事は23日記者会見し、ゴルペ(クーデター)防止作戦「サモーラ計画」の第2段階を発動した。治安部隊とともに、陸軍特殊部隊など軍の治安出動が許される。州知事は、MUD派のバリーナス市長が暴動を放置したと糾弾した。

 内務省は、暴動を鎮圧しないMUD派知事のいるララ州に23日介入、陸軍少将を州警察長官代行に任命した。石油の街マラカイボ市にある私立大学URBEは23日、暴徒に放火され、一部が破壊された。

★きょう24日(水)「クーバ・ベネスエラ情勢講演会」講師・伊高浩昭。1900~2030、東京・高田馬場、NGOピースボート本部地下で、参加費500円。申し込みは電話(03)3363-7561、3362-6307.

 
 

 ベネズエラ反政府勢力は「無政府状態」醸成狙い暴力攻勢。治安部隊施設、選管、政権党支部も襲撃さる。故チャベス大統領縁の家も放火・炎上、略奪。4月初めからの死者は60人に近づく

 ゴルペ(クーデター)教本には、「軍事介入を正当化するための騒擾(無政府)状態を醸成する」という恐るべき段階が盛り込まれている。ニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派変革政権の打倒を目指すべネスエラの反政府勢力は今、形振り構わず、騒擾状態=無政府状態をつくろうと、全国各地で殺傷、破壊、当局襲撃、放火、略奪などを激発させている。

 暴徒は5月22日、西南部ジャーノ(大平原)地方にあるバリーナス州都バリーナス市にある故ウーゴ・チャベス前大統領の「聖地」に放火、略奪した。少年ウーゴが兄アダン(現・教育相)とともに州内農村部の貧しい実家を離れて住んだ祖母の家だ。チャベス派にとっては史跡であり聖地である。そこがついに狙われ破壊された。

 反政府勢力を操っている保守・右翼野党連合MUDは、焦っている。MUDを戦略・資金両面で支援している米国の、頼みのD・トランプ大統領が弾劾される可能性のある不安定な状態に陥ったのと、国際社会でMUDの暴力肯定路線に批判の声が徐々に上がってきているからだ。極右暴力路線では、政権の受け皿には到底成りえない。

 チャベスが育った祖母の家の放火・略奪を、反政府派暴徒の仕業だとメディアに証言したのは、バリーナス市が選挙区のMUD派国会議員ペドロ・カスティージョだった。

 タレク・エルアイサミ執権副大統領は22日カラカスで記者会見し、MUDは同日、全国的な「武装ストライキ」を実行しようと計画していたと暴露した。また4月初めから続いている一連の反政府行動の中のテロリズム、破壊活動の責任はMUD指導部にあると指摘した。

 副大統領は、ボリーバル州営バス53台が放火され炎上、破壊された事件を挙げて、「これが平和な抗議デモと言えるか?」と問いかけ、実行犯2人を逮捕したと明らかにし、その本名を公表した。

 またMUD所属の極右政党VP幹部ホルヘ・マチャードを、破壊活動組織と暴徒への資金供与で逮捕、併せて現金の札束を2万束押収したと発表した。

 エルアイサミは、バリーナス市では(チャベスの祖母の家の他)、ボリバリアーナ国家警備隊(GNB)の地区司令部に暴徒が侵入、略奪し破壊、警察署3カ所と政権党PSUV支部も放火された、と明らかにした。

 さらに同市では複数の商店が略奪され、政府大衆医療政策の薬品・医療機材保管庫が破壊、略奪され、病院が襲撃された。政府の大衆向け住宅政策と同教育政策の支部事務所も攻撃された。バリーナス市では一連の暴動で5人が死亡した。

 ララ州都バルキシメトでは主要道路がバリケードで封鎖され、商店主たちは閉店を強制された。MUD系の地元警察は見て見ぬふりをしていた、という。

 国家選挙理事会(CNE=中央選管)は別途、バリーナス州でCNE支部が22日破壊され略奪された、と発表した。またタチラ州の数市の役所が襲われ、選挙人登録名簿が奪われ、破壊された。

 エルネスト・ビジェーガス情報相は、22日には全国で26人が逮捕されたと明らかにした。情報相によると、MUDは4月初めから各地で計1600回の街頭行動を展開、うち600回は暴力を伴っていた。死者は60人に達しつつある。

 MUDの破壊活動を指揮しているのは、ミランダ州知事エンリケ・カプリーレスらと目されている。カプリーレスは2002年4月のチャベス打倒の軍事ゴルペ未遂事件時、カラカスのクーバ大使館に侵入、逮捕されたが、数か月後に免罪された。2013年4月の大統領選挙では僅差でマドゥーロ現大統領に敗れたが、敗北を認めず街頭暴動事件を起こした。

 このような人物を02年に釈放したチャベスを、「温情主義の失敗」と批判する知識人もいる。14年2月の街頭暴動事件時、暴動教唆罪で逮捕され服役中のMUD極右VP党首レオポルド・ロペスも02年事件でつかまっていたが、釈放されていた。

 23日も政府支持派と反政府側はそれぞれ街頭行動を予定している。政府側は制憲議会(ANC)開設準備を急いでおり、大動員をかけてANC開設世論を盛り上げたいところ。反政府側は、ゴルペ誘発を狙い、さらなる非合法活動で「失敗国家」を印象付ける戦略を続けようとしている。