2017年8月21日月曜日

 ベネズエラが「対話」のため国際会議を呼びかけ▼「リマグループ」は制憲議会(ANC)による国会権限奪取を糾弾▼オルテガ前検事総長はコロンビアに亡命か

 ベネスエラのホルヘ・アレアサ外相は8月19日、マドゥーロ政権と反政府勢力との対話を実現するため国際会議を開くべく、関係諸国に呼びかけた。


 ベネスエラの制憲議会(ANC)は18日、反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUDが支配する国会の立法機能を剥奪、ANCに移した。


 これに対し、米州の親米・反ベネスエラ12カ国(亜伯パラグアイ智秘コロンビア巴CRホンジュラス・グアテマラ墨加)は19日、ANCの国会権限奪取を厳しく糾弾した。


 同12カ国は、自分たちを「リマグループ」(グルーポ・デ・リマ)と呼んでいる。先にリマ市で外相会議を開き、ANC開設を認めず糾弾したのに因む。今回、再度リマで外相会義を開いた。


 米国はベネスエラと敵対している関係で、「リマグループ」には参加していない。同グループの「中立性」を装うためだ。米国と同グループは、米州諸国機構(OEA)の「米州民主憲章」をベネスエラに適用し、それを根拠として同国に介入する戦略を維持している。


 一方、ANCに検事総長を解任されたルイサ・オルテガは18日未明、パラグアナ半島から快速艇で脱出し、カリブ海沖の蘭領アルバに到着。そこから空路、コロンビアの首都ボゴタに着いた。政治亡命と受け止められている。


 マドゥーロ政権は3月末、国会機能を最高裁憲法法廷に移したが、これに真っ先に異論を唱えたのが、当時のオルテガ検事総長だった。大統領は身内から厳しく批判され、決定を取り下げざるを得なくなった。


 MUDは、この大統領の朝令暮改の大失態を受けて反政府行動を一挙に激化させた。それに起因する街頭暴力事件および、その関連で125人が死亡、1500~2000人が負傷した。


 政権は、窮地を打開するため8月4日、「万能のANC」を開設した。そのためのANC議員選挙を7月末実施したが、MUDは「違憲」として認めていない。


 カラカス中心街の国会議事堂内にMUDの国会と政権のANCが共存する異常事態となったが、ANCは計画通り国会機能を奪取した。

2017年8月13日日曜日

 ベネズエラANCのデルシー議長がトランプ発言を糾弾▼ペンス米副大統領が13日からラ米4カ国歴訪へ▼ANCは中央選管指導部を信任▼フレイ元チリ大統領毒殺犯6人を断罪へ

 ベネスエラ制憲議会(ANC)のデルシー・ロドリゲス議長は8月11日、ドナルド・トランプ米大統領による対VEN軍事攻撃の脅迫発言を受けて、ANCが対処について審議したことを明らかにした。デルシー議長は、「米大統領による卑劣、傲慢、破廉恥な脅迫を糾弾する」と表明した。

 議長はまた、「国家最高機関である大統領ニコラース・マドゥーロへの攻撃は、反帝国主義のVEN人民によって一蹴されよう」とも述べた。

 米大統領はHマクマスター安保担当補佐官らと協議した後、「軍事的選択」を口にしたが、マクマスターは先週、「マドゥーロに責任を米国に転嫁する口実を与えないのが肝要」と語っていた。トランプ発言は「好戦的米帝国主義」という攻撃理由をマドゥーロ政権に既に与えてしまったことになり、同補佐官と大統領の間に政策の食い違いがある、との指摘がなされている。

 弾劾に繋がる対露癒着疑惑の捜査で窮地に陥りかねないトランプが、ベネスエラを軍事攻撃してマドゥーロ体制を破壊し、人気を勝ち取り劣勢を挽回する誘惑に駆られているのではないか、とする見方が成り立つ。その体制破壊作戦を、「核威嚇」を続ける北朝鮮への「見せしめ」にする、という計算もありうるだろう。

 だがら、チレ外相は逸早く危険を察知し、軍事攻撃への断固反対を打ち出した。マイク・ペンス米副大統領は13~18日、コロンビア、亜国、チレ、パナマを歴訪、4カ国首脳と「ベネスエラ対策」を含め話し合う。トランプ発言は、この歴訪に「軍事的選択」という枠をはめてしまった。

 一方、ANCは11日、ティビサイ・ルセーナ理事長以下4人の国家選挙理事会(CNE=中央選管)執行部を信任した。これにより、年内に実施される予定の州知事選挙を含め、今後の選挙や国民投票は現行CNEが推進することになった。

▼ラ米短信    ◎フレイ元チレ大統領暗殺で断罪へ

 チレ検察は8月11日、エドゥアルド・フレイ元大統領を1982年1月22日、首都サンティアゴ市内のサンタマリーア診療所で毒殺した犯人集団6人に求刑することを決めた。フレイは、当時のピノチェー軍政に反対していた。被告6人は、元秘密警察要員2人、フレイの元自動車運転手1人、医師3人。近く判決となる運びだ。

 フレイの娘カルメン・フレイ元上院議員は、「これで気持ちが晴れた」と語り、ピノチェー軍政による暗殺実行という重罪をあらためて指摘した。ンーベル文学賞詩人パブロ・ネルーダもピノチェークーデター直後の1973年9月、同じサンタマリーア診療所で謎の死を遂げており、軍政に毒殺された可能性が濃厚となっている。10月には、その最終的判断が公表される見込み。 

2017年8月12日土曜日

★トランプ米大統領がベネズエラへの軍事攻撃も選択肢と表明▼ピノチェー軍政の苦い経験持つチリはトランプ発言を糾弾▼制憲議会(ANC)は州選挙の10月実施を審議▼新検事総長は検察庁の腐敗を摘発

 ドナルド・トランプ米大統領は8月11日、休暇先のニュージャージー州で記者団からの質問を受けて、「ベネスエラに対し必要ならば軍事的選択をすることももありうる」と述べ、軍事攻撃する可能性が残されていることを示唆した。

 トランプは、レックス・ティラーソン国務長官、Hマクマスター安保担当補佐官、ニッキ・ヘイリー国連大使との会談後、記者団と会った。米国防省は同日、現時点でベネスエラへの出撃命令は受けていない、と述べた。

 大統領の軍事的脅迫発言は、ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派政権および支持派人民を「抗米」で団結させる一方、保守・右翼野党連合MUD内の極右勢力にテロリズムや破壊活動を焚きつける効果を持つ。

 米国は、ブッシュ政権が2002年4月にチャベス前VEN政権打倒の軍事クーデターを仕掛けて失敗。オバマ前政権は15年、ベネスエラを、あろうことか「米国の安全保障にとって重大な脅威」と位置付け、マイアミに司令部を置く米南方軍を中心にクーデター計画を練ってきた。

 当時の南方軍司令官だったジョン・ケリーが今やトランプの首席補佐官に収まり、軍事攻撃の可能性が増している。また共和党極右クーバ系2世の上院議員マルコ・ルビオが強硬策をトランプに入れ知恵してきた。

 ベネスエラのエルネスト・ビジェガス情報相は11日、「シモン・ボリーバルの祖国に対する、かつてなかったほど傲慢で重大な脅迫だ」と指摘した。またブラディーミル・パドゥリーノ国防相は、「極端極まりない、常軌を逸した言動だ」と糾弾した。

 チレのエラルド・ムニョス外相は首都サンティアゴで、軍事侵攻の脅迫を糾弾した。1973年に米国に支援された流血の軍事クーデターでアジェンデ社会主義政権を倒されたチレだが、同政権の流れを汲むバチェレー現政権は、軍事侵攻絶対反対の立場をとっている。

 ヂウマ・ルセーフ前伯大統領は、米国がベネスエラ攻撃の材料にしてきた内外報道について、「右翼が起こした暴力事件であるのに、メディアは無責任で馬鹿げた報道をしてきた」と厳しく批判した。

 これに対しトランプ政権べったりのPPクチンスキ秘大統領は11日、ベネスエラのディエゴ・モレーロ駐秘大使に国外退去を命じた。マドゥーロ大統領は、報復としてペルー臨時代理大使に退去を命じた。秘大使は既に本国に召還されている。マドゥーロは、「PPクチンスキはベネスエラの敵であり、ラ米統合の破壊者だ」と非難した。

 一方、ベネスエラ制憲議会(ANC)は11日、12月10日実施予定の州知事・州会議員選挙を10月繰り上げ実施するための審議を開始した。

 パドゥリーノ国防相は11日、バレンシア市の陸軍基地を6日攻撃した武装集団の首謀者フアン・カグアリパーノ国警隊退役大尉と、現役中尉ジェファーソン・ガルシアをカラカス市内で逮捕した、と発表。「極右テロ集団に打撃を与えた」と述べた。

 タレク・サアブ検事総長は、「官僚主義と腐敗だらけの検察庁を掃除している。幹部職250人を調査のうえ更迭しており、全国24支部検事長も交代させつつある」と明らかにした。賄賂の有無で起訴するか否かを決めることもあったという。

 ビジェガス情報相は10日、カラカス市内に創設された「ラ米伝達大学」(ULAC)の開学式で、「学生は、国際メディアの虚偽報道に対抗するジャーナリズムを学ぶ」と強調した。

 ANC議員ディオスダード・カベージョ(政権党副党首)は9日、カラカスの米大使館に勤務するVEN人退役大佐1人を8日逮捕した、と明らかにした。この男は、カベージョの所在を調べ回っていたという。

2017年8月11日金曜日

 キューバのラウール・カストロ議長が「激しい闘いの日々が来る」と、マドゥーロ・ベネズエラ大統領への書簡で表明▼制憲議会(ANC)は州選挙に参加する極右に「善良宣誓」を要求▼「軍人の極右地下武闘結社」が意思表明

 ベネスエラ大統領政庁(ミラフローレス宮殿)は8月9日、ラウール・カストロ玖国家評議会議長からニコラース・マドゥーロ大統領へ宛てた親書の内容を公表した。ラウール議長は、VEN制憲議会(ANC)発足に「革命的大歓喜」を表明している。

 書簡は8日、カラカスで開かれたALBA(米州ボリバリアーナ同盟)外相会議に出席したブルーノ・ロドリゲス玖外相からマドゥーロに渡された。ラウールは、「国際的圧迫によって激しい闘いの日々が来るだろうが、それはVEN人民にとって創造と労働の日々になるだろう」と、懸念と激励を表した。

 さらに、「VENは独りではない。クーバは大義に忠実であり、同志的連帯の最前線にいる」と、同盟関係を強調した。エネルギー源の約半分をベネスエラに依存しているクーバにとって、VEN情勢は極めてゆゆしいことだ。

 米政府は9日、故ウーゴ・チャベス前大統領の実兄アダン・チャベスANC議員ら高官8人の「在米資産凍結」、「査証発給制限」などの「制裁」を科した。理由は、8人が議員になるなど「何らかの形でANCに関与したため」とされている。

 これに対し、ホルヘ・アレアサVEN外相は同日、ラ米諸国大使との会合で、「シモン・ボリーバルの国の人民を<制裁>する道徳的権利はいかなる国にもない」と反駁、米政府を糾弾した。

 ANC議員で政権党PSUV副党首の実力者ディオスダード・カベージョ(元国会議長)は9日、年末の州知事・州会議員選挙に立候補する者は「2度とベネスエラを炎上させるようなことはしない」と宣誓し、ANCから「善良証明書」をもらわねばならない、と述べた。

 これは4月から一連の街頭暴力事件を起こしてきた保守・右翼野党連合MUDの、極右含む諸政党が12月10日の州選挙参加を決めているのを受けて、出馬に条件をつけたもの。

 最高裁は、カラカス首都圏エル・アティージョ区のダビー・スモアンスキ区長を9日、禁錮15か月の実刑に処した。区内での反政府暴力を許したため。同様に首都圏チャカオ区長、バルキシメト市長、メリダ市長も禁錮刑を適用されている。

 ANC発足を機に、マドゥーロ政権は暴力行使の責任者への対応が甘かったのを反省、「無処罰」路線を止めた。

 一方、反政府勢力の機関紙役を務めてきた右翼紙エル・ナシオナルは9日、武闘地下結社「レシステンシア」(抵抗)のビデオメッセージを掲載した。結社は、「現役および退役軍人集団」を名乗り、「対話と選挙の時は終わった。マドゥーロ政権打倒のための<ダビー作戦>を開始する」と主張している。

 結社はバレンシア市で6日、陸軍基地を襲撃して逮捕されたフアン・カグアリパーノ(元国警隊大尉)の集団と一体化する、とも述べている。ベネスエラ政府当局は、MUD極右やCIAが結社に関与していると見ている。
  

2017年8月10日木曜日

 国連「国際先住民族の日」に記念行事▼ボリビア大統領は「先住民族運動は反帝国主義」と指摘▼メンチューは「人種主義者は教義の犠牲者」と見なす▼メキシコでは先住民族の政治運動が進展▼米国がキューバ外交官2人退去させる

 国連「国際先住民族の日」の8月9日、LAC(ラ米・カリブ)各地で記念行事が催された。ボリビアのエボ・モラレス大統領(アイマラ人)はサンタクルース市での記念式典で演説、「500年の偉大な闘争を経た先住民族の運動は自動的に反帝国主義になった。なぜなら反植民地闘争であるからだ」と指摘した。

 1992年のコロンブス米州到着500周年にノーベル平和賞を受賞したグアテマラ・マヤ民族のリゴベルタ・メンチューは、授賞25周年を兼ねた式典で、「人種差別主義者は加害者というよりも、自らの教義の犠牲者だ」と強調した。

 LAC地域の先住民族は522民族。ブラジルは241民族だが、その合計人口は73万人と少ない。コロンビアは83民族で、人口は139万人。メヒコは67民族、950万人と人口は最も多い。ペルーは43民族、392万人。LAC先住民族の87%はメヒコ、ボリビア、ペルー、グアテマラ、コロンビアに住む。エル・サルバドールは3民族で、1万3000人と少ない。

 サパティスタ民族解放軍(EZLN)が1994年元日に蜂起したメヒコのチアパス州は、州人口1570万人の14・2%が先住民族。チャムーラ、ララーインサルなど41市にツェルタル、ツォツィル、チョル、ソケ、トホラバルなど12民族が住む。

 州都トゥーストラグティエレスでは7日、全国先住民族会議(CNI、1996年発足)とEZLNの会合が開かれ、「先住人民開花の時が来た」という名称の市民協会が設立された。

 CNIは今年5月、先住民族女性マリーアデヘスース(愛称マリチュイ)・パトゥリシオ=マルティネス(57)を、2018年7月のメヒコ大統領選挙に出馬する初の先住民族統一候補に選んだ。「2度と先住民族抜きのメヒコ政府をつくらないように」との願いからだ。

 今会議では、各州政府、組織犯罪集団、鉱山・石油・電力・森林業者らによる暴力、土地奪取、水源破壊などが日常的に起きていることがあらためて指摘された。

 パラグアイでも6日、「パラグアイ多民族先住民政治運動」が結成されている。

▼ラ米短信    ◎米国がクーバ外交官2人退去させる

 米国務省は8月9日、在米クーバ大使館の外交官2人を5月23日、国外退去させたと発表した。昨年秋、ハバナの米大使館外交官数人が、外交官宿舎で原因不明の聴覚障害に見舞われたのに対する報復的措置だった。クーバ政府は関与を否定している。

2017年8月9日水曜日

 ペルーのリマで米州諸国が外相会議開催▼採択の「リマ宣言」はベネズエラ制憲議会(ANC)を認めず▼カラカスではALBA外相会議がANC開設を祝福▼VENと中国が2030年までの投資計画を協議

 ペルー政府は8月8日リマで、親米・反べネスエラ諸国を集めて米州有志国外相会議を開いた。トランプ米政権と、その代弁者であるルイス・アルマグロOEA(米州諸国機構)事務総長の意向を受けて開くに至ったが、米国寄りの印象を和らげるため事前に調整し、米国務長官は招かれなかった。

 外相会議は7時間近く話し合った末、「リマ宣言」を採択した。①ベネスエラで4日開設された制憲議会(ANC)を認めない②OEAによる「米州民主憲章」のベネスエラへの適用努力を継続③ベネスエラへの武器禁輸を国際社会に呼び掛ける、など16項目が盛り込まれている。

 リカルド・ルナ秘外相は当初、亜パラグアイ伯智秘コロンビア巴CRホンジュラス墨グアテマラ加の12カ国が宣言に署名、と発表した。だが、その後、ウルグアイおよび、カリブ英連邦諸国のジャマイカ、ガイアナ、セントルシ-ア、グレナダの5カ国が加わり、計17カ国に達したと明らかにした。OEA加盟国は、キューバを除く34カ国であり、半数がリマ宣言に署名したことになる。

 署名した国々は、今秋の国連総会の折にニューヨークで第2回会合を開くことを決めた。

 これに対し、ベネスエラは8日カラカスでALBA(米州ボリバリアーナ同盟)外相会議を開いら。その共同声明は、①ANC開設を祝福②VENへの経済制裁・内政干渉を糾弾③反政府勢力による暴力への国際的糾弾を要求、などを表明した。

 べネスエラ、クーバ、ボリビア、エクアドール、ニカラグア、SV&G、A&B、SC&N、セントルシーア、グレナダの外相や代理が出席した。だがセントルシーアとグレナダは、「リマ宣言」に署名したとされており、情報が錯綜している。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は会議後、「我々を非難する諸国(リマ宣言署名諸国)と話し合う用意がある」と述べた。さらに、CELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)の輪番制議長国エル・サルバドールで、LAC(ラ米・カリブ)の分裂回避と統合のための首脳会議を開いてはどうか、と提案した。

 亜国の元サッカー選手ディエゴ・マラドーナ8日、「マドゥーロ大統領から命じられればベネスエラ軍の制服をまとって、自由ベネスエラのために米帝国と戦う。私は死ぬまでチャビスタ(チャベス派)だ」と表明した。これに対し、元亜国サッカー選手で保守派のマリオ・ケンペスが異議を唱えた。

 カラかスでは8日、ベネスエラ政府と中国企業代表団が、2030年までの中国による投資計画について話し合った。
  

★写真展「写真家チェ・ゲバラが見た世界」始まる▼長男カミーロ・ゲバラが開場式で挨拶▼「自撮り」含む興味深い240点▼8月27日まで恵比寿ガーデンプレイスで

 「写真家チェ・ゲバラが見た世界」写真展の開場式が8月8日夕刻、東京・恵比寿のガーデンプレイス・ガーデンルームで催された。7月下旬から来日中のカミーロ・ゲバラ=マルチ(55)が挨拶、「チェ・ゲバラが関わった歴史的事実と、写真家として撮影した被写体の両方を観てください」と述べた。

 カミーロは、革命家エルネスト・チェ・ゲバラ(1928~67)の長男で、目鼻立ちが父親にそっくり。まさに忘れ形見だ。母アレイダ・マルチ(81)が所長を務めるチェ・ゲバラ研究所でコーディーネイターとして働く。自身も亡き父親に似て写真が趣味で、いつもキャノンを携行している。この日も会場で撮りまくっていた。

 写真展は、10月6日に東京で封切られる日玖合作映画「エルネスト」(阪本順治監督、オダギリジョー主演)の関連文化行事として開かれ、チェ・ゲバラ研究所が保管する厖大な写真やネガから240点が選ばれ、展示されている。

 チェ・ゲバラが撮影したものばかりで、最期の地ボリビアに乗り込んだ日の、ラパス市内のホテルの自室での、変装した自分の顔写真をはじめとする、セルフタイマーを用いた「自撮り」シリーズや、1959年7月の来日時に訪れた広島で、被爆14年後の原爆ドーム一帯を撮ったワイド写真などが特に興味深い。マヤ文明の遺跡群の写真や、汎米競技会の選手たちの躍動する姿を捉えた作品も見事だ。

 開場式には、カミーロ夫妻のほか、阪本監督、キューバ大使館員、1959年に広島でゲバラを取材した中国新聞の林記者の遺族、崔監督、ジャーナリストらが出席した。私(伊高)は、解説、写真説明で写真展に協力した。

 カミーロは、一般公開初日の9日夕刻、開場を訪れ、同日夜、帰国の途に就く。来日後、東京でメディア取材に応じ、広島、京都を訪問。広島では8月6日の式典に出席、献花した。日本の印象を訊くと、「日本の皆さんの対応に心を打たれた」と答えた。

 写真展は8月26日まで、1100~2000。最終日27日は1100~1500。入場料1000円、大学生800円、高校生以下は無料。