2015年6月30日火曜日

ペトロカリーベが創設10周年迎え、閣僚会議開催

 ベネスエラが原油を好条件で加盟国に供給するペトロカリーベ(カリブ石油連帯機構)は6月29日、創設10周年を迎えた。この日カラカスの国営ベネスエラ石油会社(PDVSA=ペデベサ)本社で、第15回関係閣僚会議が開かれた。

 会議は、ペトロカリーベ加盟18カ国で一つの「経済地域」を結成するのを目指すことを謳った議定書に調印した。また9月、ジャマイカの首都キングストンで特別首脳会議を開くことを決めた。

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は、故ウーゴ・チャベス前大統領が「大きな祖国ラ米」というシモン・ボリーバルの思想に基づく共存共栄精神から機構を創設したことを想起し、機構を「カリブ地域の安定と平和を保障する連帯と団結の機構」と位置付けた。

 加盟国はベネスエラ、アンティグア・バーブーダ、バハマ、ベリーズ、クーバ、ドミニカ、グレナダ、グアテマラ、ガイアナ、アイチ、オンドゥーラス、ジャマイカ、ニカラグア、ドミニカ共和国、セントクリストファー・ネヴェス、セントルシーア、セントヴィンセント・グラナディーン、スリナムの18カ国。 

ワシントンで米伯両大統領が関係強化で会談

 ヂウマ・ルセフ伯大統領は6月29日、ワシントンでバラク・オバーマ大統領と会談した。故マーティン・ルーサー・キング師の記念施設をそろって訪れ、「平等、公正のため、および、人種主義と不寛容に反対するため」努力することで一致した。同夜、晩餐会が催された。

 ルセフ大統領はワシントン入りに先立ちニューヨークで米財界人との会合に出席、経済関係を一層強化させたいと表明した。現在、米企業3000社がブラジルに進出しており、ブラジルも主要25社をはじめとする企業群が米国に進出している。

 この大統領の訪米は2013年に予定されていたが、米政府によるルセフを含む伯政府高官らへのパソコン侵入、盗聴などが組織的に行われていたことが発覚し、延期されていた。

 今回の訪米で「過去のわだかまり」は清算された、と受け止められている。2期目にあるルセフは、伯経済後退、国営石油会社ペトロブラスを巻き込んだ政治資金(裏金)捻出事件などで支持率が低迷している。

 それだけに、今回の訪米による経済関係の合意などで支持率を上げたいところだ。

セラヤ・ホンジュラス大統領追い落としから6年経過

 オンドゥーラスのマヌエル・セラヤ大統領が、オバーマ米政府の了解の下、右翼・保守勢力と軍部がつるんだクーデターで追放された2009年6月28日の政変から丸6年が経った。

 この日、首都テグシガルパでは、セラヤ派市民数万人が反政府抗議行動を展開した。

 セラヤは08年、当時のベネスエラ大統領ウーゴ・チャベスが率いていた米州ボリバリアーナ同盟(ALBA)に加盟した。これを機に右翼・保守が米国と連携しセラヤ追い落とし工作を開始、それがクーデターとなった。

 一昨年の大統領選挙では、セラヤ夫人シオマラ・カストロの勝利があいまいな形で葬られた。オンドゥーラスは中米で最も保守的な封建国家に留まっている。

2015年6月29日月曜日

国際アジア共同体学会でCELACを語る

 「国際アジア共同体学会」(進藤栄一会長)が6月28日、東京・神田の専修大学7号館で開かれた。第1部「ASEAN経済共同体(AEC)から日中韓FTAへ」、第2部「アジアインフラ投資銀行(AIIB)と中国外交」、第3部「変動する世界と地域統合」と三部に分かれ、順次報告と討論、質疑応答がなされた。

 私は会員でもなく、この学会分野の専門研究者でもないが、第3部の中の「CELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)の現在とダイナミズム」の報告者になった。該当する研究者がいないということで、依頼されたためだ。

 進藤教授(筑波大)と共通の友人がいることと、何十年も前にメヒコ市で同教授と私が会っていることがわかった。

ペルー次期大統領選挙最有力候補はケイコ・フジモリ

 ペルーのエル・コメルシオ紙は6月28日、来年4月の大統領選挙に出馬する候補予定者の支持率調査結果を報じた。アルベルト・フジモリ元大統領の長女で元国会議員のケイコ・フジモリ(「人民勢力」党首)が33%で依然首位にある。

 ケイコの支持率を国内地域別に見ると、東部(アマソニア)で42%、北部(エクアドール国境までの海岸およびアンデス山岳地帯)で39%と高い。首都リマと中部は、それぞれ34%。だがチレ国境までの南部では18%と低い。

 2位は、元経済相のペドロ=パブロ・クチンスキ(PPK)で15%。リマ22%、中部および南部各15%、東部9%、北部8%だった。

 3位以下は前大統領アラン・ガルシア7%、元大統領アレハンドロ・トレード5%など。現時点での浮動票である未定は22%。

 決選投票にKEIKOとPPKが進出し、多数派工作に成功した方が勝つという、従来の形が繰り返されそうな気配が濃厚だ。

2015年6月28日日曜日

チェ・ゲバラの甥マルティン・ゲバラが立教大講座で語る

 革命家チェ・ゲバラの甥マルティン・ゲバラ(52)が6月27日、立教大学ラ米研の西語上級講座で質疑応答し、キューバでの生活体験や現代キューバ情勢について語った。玖米関係正常化合意を是認し評価した。

 マルティンは今年1月末から2月初めにかけての初来日に次ぎ2度目の来日。今回はパトゥリシア夫人と息子マルティン(12)を同伴、既に京都、奈良、広島などを訪れている。鎌倉などを観てから7月1日離日する。

 マルティンは昨年、少年時代と青年時代併せて14年過ごしたキューバでの生活体験を基に革命体制に批判的な著書『ある神話の陰で』を刊行。在米キューバ系社会、欧米、ラ米などで関心を集めた。

 現在は、チェ・ゲバラの生き方を基にした創作の執筆構想を練っている。 
 

2015年6月27日土曜日

ベネズエラとイランが協力取り決めを更新

 ベネスエラとイランは6月26日カラカスで、過去10年続いてきた両国間の協力取り決めを更新、先端科学、外科手術器具、薬品、融資などで新たに協定を結んだ。

 融資は、イランが5億ドルをベネスエラに供与するもの。ベネスエラは財政赤字、外貨不足、物資流通停滞、インフレに苛まれている。

 この日、ベネスエラ原油の国際価格は、1バレル=56・73米ドルだった。過去の最高値の半分にすぎない。40ドル台の低価格からは持ち直しているが、60ドル台になかなか到達しない。

メキシコ学生43人強制失踪事件から9カ月、抗議続く

 メヒコ・ゲレロ州アヨツィナパの教員養成学校の学生43人が同州イグアラ市で強制失踪させられた事件発生から丸9カ月経った6月26日、同州、首都メヒコ市をはじめ全国各地で、事件解明を政府に要求する抗議行動が展開された。

 メヒコ市では被害者家族会、教員、学生、労働者、一般市民ら多数が独立記念碑前で集会を開いた後、アラメダ中央公園、国立劇場前まで行進した。首都警察は厳戒態勢を敷いた。

 家族会代表のフェリーペ・デラクルースは、「政府は我々が諦めると思っているが大間違いだ。43人は我々の希望であり命だ」と語り、事件解明を求め続けていくと強調した。

 ゲレロ州都チルパンシンゴでも抗議行進があった。臨時州知事は、「事件の傷口は開かれ血にまみれている」として、司法による決着が必要だと述べた。抗議行動は、米国とカナダのメヒコ人社会でも行われた、と伝えられる。

 一方、メヒコ国立自治大学(UNAM)で24日開かれた「人類義務憲章創設のための思索家会合」に参加したスペイン人法律家(元判事)バルタサル・ガルソンは、学生43人失踪事件について、「人類の恥だ」と指摘した。 
 

2015年6月26日金曜日

ベネズエラの街頭暴力事件は人道犯罪、とオンブズマンが批判

 ベネスエラのオンブズマン、タレク・サアブ氏は6月25日、反政府勢力が昨年2~5月決行した一連の街頭暴動事件(グアリンバ)は人権を蹂躙し、人権犯罪に該当する、と見解を明らかにした。

 事件では、市民、治安部隊要員ら計43人が命を落とした。負傷者は800人にのぼる。

 同オンブズマンは、一連の事件は政治的、武闘的な行動だったと指摘。外国政治家らの介入を求めるなどした反政府キャンペーン報道を打ったメディアについても、暴力を決行した側に味方していたとし、暴力事件の犠牲者にはほとんど関心を払わなかった、と批判した。

中国がキューバの開発計画を支援

 中国のワン・セン副首相は6月25日ハバナで、ラウール・カストロ国家評議会議長、リカルド・カブリーサス副首相らと会談した。

 会談後、両国は、中国がクーバの2016~20年開発5カ年計画を支援する協定に調印した。

 ワン副首相は26日、ブラジリア入りする。

パナマのマヌエル・ノリエガ受刑囚が獄中から謝罪

 パナマ元軍政首班マヌエル・ノリエガ退役将軍(81)は6月24日、刑務所内でテレメトロTV取材に応じ、軍政期の行状を国内関係者に謝罪するメンサヘ(メッセージ)を読み上げた。

 ノリエガは1983年軍政首班となったが、85年9月、部下を使って政敵ウーゴ・スパダフォラを暗殺するなど、暴虐に関与した。メンサヘは、「私、上司、部下にる行状の犠牲者の関係者全員に詫びる」という趣旨。

 ノリエガの最大の上司だったオマール・トリホス将軍は81年に、ヘリコプター事故を装った爆殺で暗殺されたが、政敵は、ノリエガを「(CIAの)共犯者」と指摘していた。

 米政府のパナマ政策、CIAの策謀、ブッシュ父親、その息子(後の大統領)のパナマにおける行状などを「知りすぎていた」とされるノリエガは、89年12月、ブッシュ父親大統領が命じた大規模な米軍侵略によって打倒され、90年1月初めマイアミに連行された。

 この米軍侵攻で、貧困層を中心にパナマ人3000~8000人が殺されたと推定されるが、調査が実施されていないため、正確な死者数、負傷者数は不明のままだ。現在は、調査を求める声が被害者遺族らから高まっている。

 ノリエガは米国で「麻薬取引」罪により禁錮20年の刑に服役した後、フランスの刑務所に送られ短期間服役してから、2011年12月パナマに送還された。

 パナマでは、スパダフォラ暗殺などの事件で60年の禁錮刑に服している。終身刑を上回る重刑だ。

 今回の謝罪は、高齢なうえ糖尿病などを患っているため、恩赦で釈放され静かに余生を送りたい意思の表れ、と解釈されている。

 ノリエガと関係の深かった実業家リカルド・マルティネリ前大統領は25日、ノリエガの謝罪は誠実なものだとし、恩赦を与えるのが妥当と受け取れる見解を示した。

2015年6月25日木曜日

ベネズエラ外相が被爆者7人と会合

 ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は6月23日、広島・長崎の被爆者7人を外務省に迎え話し合った。7人は、NGOピースボートの世界周航船オーシャンドゥリーム号でカラカスを訪れた。

 ロドリゲス外相は、戦争と核兵器を無くすための活動は人類全体のための活動であるとして、被爆者とピースボートの国際的な平和構築活動を讃えた。
  

キューバ経済は上半期4%成長か

 クーバのマリーノ・ムリージョ経済企画相は6月19日の閣僚評議会で、ことし上半期の経済成長が4%になる見込みだと報告した。22日報道された。砂糖、加工業、建設、通商などが好調だった。

 同相はまた、ことしの財政赤字が、当初予測の6・2%を下回る4・2%になるもようと報告した。

 去年のクーバの経済成長は1・3%だった。ことし上半期の好調は、時期が米国との経済関係活発化と一致している。

アルゼンチンタンゴ大歌手カルロス・ガルデル死歿80周年

 タンゴ・アルヘンティーノ(亜国タンゴ)史上最高・最大の歌手と位置付けられているカルロス・ガルデルの歿後80周年の6月24日、亜国各地をはじめ、コロンビア、ウルグアイ、フランス、日本など世界各地で追悼行事が催された。

 ブエノスアイレスのチャカリータ墓地にあるガルデルの墓前では多くのタンゴ愛好者が集まり、ガルデルの数々の名曲を奏で歌い  踊った。

 墓前に参った94歳のフアン・ディローサは、14歳の少年だった80年前、市内のルナパークで挙行されたガルデルの通夜に参列した経験の持ち主。「ガルデリアーノ(ガルデルファン)」として来ないわけにはいかない、と語っている。
 
 行事の多くはガルデル研究所(CFG)が主催、国立タンゴアカデミア、文化省、市営ガルデル博物館などが共催した。

 ガルデルは1890年12月11日、南仏トゥールーズで生まれ、3歳の時、亜国に移住した。美声、美貌、個性、魅力的な笑顔でタンゴの超大スターとなり一世を風靡した。

 「思いの届く日」、「我が愛しのブエノスイアレス」、「ボルベール」などヒット曲は数知れない。数多くの映画で主演し、タンゴの作曲もした。

 1935年6月24日、コロンビア巡業中、メデジン市での公演を終えカリ市に向かうためメデジン市内空港を飛び立った直後、その飛行機が着陸しようとしていた別の飛行機と空中で衝突、墜落した。ガルデルは44歳の生涯を終えた。

 

2015年6月24日水曜日

人道犯罪関与疑惑のアルゼンチン陸軍司令官が辞任

 アルヘンティーナのクリスティーナ・フェルナンデス大統領は6月23日、セサル・ミラーニ陸軍司令官(大将級)の辞任を受け入れ、後任にリカルド・クンドム中将を任命した。

 ミラーニは、若手将校だった1970年代半ば北部の駐屯地に勤務していたころ新兵失踪事件に関与した疑いがもたれており、捜査が続いている。

 2013年の司令官就任時から事件関与の疑いが明るみに出されてきたが、大統領はミラーニをかばってきた。

 だが10月に次期大統領や国会議員を選ぶ選挙があるため、ミラーニは自ら退役を申し出た。これによりミラーニが起訴される可能性が出てきた。

キューバ国鉄の新ハバナターミナルが営業開始

 ハバナ港に近い国鉄新ターミナル駅ラ・クーブルが6月23日営業を開始、東部のグアンタナモ市行きの長距離列車が出発した。

 この駅名は、1960年にハバナ港で爆発したフランス貨物船の名前に因んでいる。同船はベルギー製銃器類などを積んで入港、陸揚げ中に2度爆発し、死傷者多数が出た。CIAの陰謀と推定されている。

 国鉄の従来のハバナターミナル駅は改造工事中。

ベネズエラとキューバが軍事協力強化で合意

 カラカスで6月23日、ベネスエラ・クーバ国防相会談が行われ、軍事協力関係強化で合意した。

 ベネスエラのブラディミロ・パドゥリーノ国防相、クーバのレオポルド・シントゥラ革命軍相をはじめ、両国軍最高幹部たちが出席した。

 一方、ベネスエラ海軍練習艦(帆船)シモン・ボリーバル号は24日、ハバナ港に入港。ベネスエラが中心となって組織したカリブ石油連帯機構(ペトロカリーベ)設立10周年を機に訪問した。

ペルー、ボリビア両国首脳がティティカカ湖浄化で合意

 ティティカカ湖畔のペルーの都市プーノで6月23日、第1回ペルー・ボリビア合同閣僚会議が開催された。これに因んでオヤンタ・ウマーラ秘大統領と、エボ・モラレス大統領が会談した。

 両首脳は、両国が共有するティティカカ湖の水質汚染対策(浄化)、国境地帯での麻薬犯罪取締り、経済開発協力で合意した。

 また、ブラジル、ボリビア、ペルーを繋ぐ大西・太平両洋間自動車道の建設構想の調査実施で一致した。この構想では、中国が大型援助による建設を申し出ている。

2015年6月23日火曜日

LATINA7月号乱反射は「革命キューバの功罪」

 ◎伊高浩昭執筆の最近の記事

★月刊誌LATINA7月号(6月20日発売)

▽「ラ米乱反射」連載第111回  「検証すべき革命キューバ半世紀余の功罪  対米復交により<円環>閉じても消えない過去」

▽書評 ジェイムス・ダグラス著、寺地吾一・正子共訳 『ジョン・F・ケネディはなぜ死んだのか』(同時代社、3700円)

★週刊金曜日6月19日号
 
▽書評 『ジョン・F・ケネディはなぜ死んだのか』(同上)

【1963年11月22日のケネディ暗殺は、対ソ平和共存によって地歩を失いかねないと危機感に囚われた米国の軍産複合体の意向を酌んだCIA、FBI、シークレットサービスなどが、イタリア系とキューバ系の在米マフィアを使って決行した。日本で軍産複合体が完成しつつある今、この本は警世の書としても読まれるべきだ】

ブラジル大統領が新たな農地改革計画策定へ

 ブラジルのヂウマ・ルセフ大統領は6月22日、パチフス・アナーニア農業開発相に、新たな農地改革計画を30日以内に策定するよう命じた。

 これを受けてアナーニアは、州・市および関係団体との協働で策定する、と述べた。土地を持たず野営している農民らが主要な受益者になるという。

 ルセフ第1期政権下で農地改革の恩恵に浴したのは3万2000家族。2期8年間のルーラ前政権下での23万家族と比べると少ない。

ベネズエラ国会議員選挙は12月6日実施へ

 ベネスエラ国家選挙理事会(CNE)は6月22日、国会議員選挙を12月6日実施すると発表した。一院制で、議席定数は167。公示期間は8月3~7日、公定選挙戦は11月13~12月3日。

 CNEは、「同伴機構」と位置付けた南米諸国連合(ウナスール)に、選挙監視団派遣を要請した。ウナスールは、ベネスエラ人民は民主的手段で立場の違いを解決することができる、と表明した。これは暴力集団に訴えてきた極右・保守勢力を批判したもの。

 一方、ベネスエラ政府との関係が必ずしも良くない米州諸国機構(OEA)は、CNEに対し、監視団派遣の用意があると伝えた。

 ベネスエラ野党勢力は、各種の国政および地方選挙で勝てないため、街頭暴力、軍事クーデター誘発(未遂)、内外メディアによる政府攻撃、米政府との連携などで、ニコラース・マドゥーロ政権に揺さぶりをかけてきた。

 2013年3月5日のウーゴ・チャベス前大統領の死後、続いてきた内政面の動揺は、年末の選挙で一応の決着を見ることになる。

2015年6月21日日曜日

ベネズエラ国会議長がハバナでキューバ議長と会談

 ベネスエラのディオスダード・カベージョ国会議長は6月20日ハバナで、ラウール・カストロ玖国家評議会議長と会談した。カベージョは、ベネスエラ統一社会党(PSUV=ペスーブ)第一副総裁を兼ねている。

 会談には、ブルーノ・ロドリゲス玖外相(共産党政治局員)も同席した。

 カベージョはこのほどハイチで米国務省のトーマス・シャノン顧問と、VEN・米関係正常化問題で会談している。

 大使級の玖米国交再開が7月にも予想されることから、カベージョは、VEN・米関係改善に関し、クーバの支援を求めた可能性がある。

エクアドール大統領が外国人煽動者潜入を告発

 エクアドールのラファエル・コレア大統領は6月20日、ベネスエラ人反動活動家が潜入し、反政府行動を煽っている可能性があり、当局が捜査中、と明らかにした。

 エクアドールでは過去半月、コレア大統領の退陣を求める抗議行動が各地で続いている。最近、国内を走るバスの車中で、ベネスエラ人を名乗る男2人が、「街頭行動をしないと、エクアドールはベネスエラのようになってしまう」と、乗客たちに反政府行動に参加するよう促す出来事があり、大統領は証拠のビデオを示して非難した。

 当局は、2人がエクアドールの反政府勢力によってマイアミから送り込まれた可能性がある、と見ている。

 マイアミには、ラ米諸国の左翼ないし改革主義の合憲政府を街頭行動やメディアによる意図的誤報によって打倒しようと狙う専門的組織がある。エクアドール政府は、問題の2人のほかにもベネスエラ人ら外国人が煽動のため送り込まれていると見ている。

ウルグアイ上院がキューバへの債権放棄法案を可決

 ウルグアイ国会上院は6月18日、クーバへの債権3150万ドルを帳消しにする法案を可決した。両国は1986年、ラ米統合機構(ALADI)の中央銀行間融資の取り決めに沿って融資契約を結んだが、クーバ側の債務が膨らんでいた。

 上院審議では、クーバが2007~11年、ウルグアイで白内障などを治療する「奇蹟作戦」を展開、延べ13万人を診察し、5万人の視力を回復させた業績への配慮と評価が目立った。

 同「作戦」はベネスエラが資金、クーバが眼科医をそれぞれ提供するもので、診断や手術は無料で実施された。

コロンビアが「作戦地域」設定でベネズエラに抗議

 コロンビア外務省は6月19日、ベネスエラ政府に対し、両国間で領海線画定が長年宙吊り状態にあるベネスエラ湾(コキバコア湾)でのベネスエラによる軍事作戦地域設定に抗議した。

 ベネスエラ政府は5月26日、沿岸地域に「海洋・島嶼統合防衛作戦地域」(ZODIMAIN)を設定した。この「地域」が領海線問題が未解決の同湾にもかぶさるため。

 ベネスエラ政府も、同湾で領海線画定がなされていないことを認識している。だがコロンビア政府は、先年、国際司法裁判所の裁定により、カリブ海の領海と経済水域の多くの海域をニカラグアに奪われたことから、領海問題では極めて神経質になっている。

ブラジル大統領がベネズエラへの内政干渉を批判

 ベネスエラ国会のタニア・ディアス第2副議長は6月19日、同国とブラジルの友好関係は、ベネスエラ極右勢力の運動に加担する一部ブラジル議員たちによって傷つけられてはならない、と述べた。

 これは、ブラジル野党・民社党(PSDB)のアエシオ・ネヴェス上院議員(元大統領候補)を団長とするブラジル国会議員団が18日、カラカス国際空港からカラカス市に向かう自動車道で、ベネスエラ政府支持派の群衆によって進路を阻まれ、空港に引き返し帰国した出来事を踏まえている。
 
 ベネスエラでは早ければ9月27日、遅ければ12月末までに実施される国会議員選挙を控え政治の季節にあり、ニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス主義政権に敵対する野党勢力は、国外の保守・右翼勢力と連携して、同政権に不利な状況を醸し出そうとしている。

 議員団は、43人の死者を出した昨年のグアリンバ(街頭暴力)や、ことしの軍事クーデター誘発未遂事件への関与容疑で逮捕され起訴されているベネスエラの極右政治家らに面会しようと目論んでいた。

 ディアス副議長は、我々はブラジル議員の立場を尊重するが、我が国の司法も尊重してほしい、と語った。また、右翼と連動する伯議員団の行動を、南米統合の動きを妨げ、ベネスエラを孤立させようと狙うもの、と指摘した。

 一方、ブラジル政府は19日、18日の出来事についてベネスエラ政府に説明を求めた。だがカラカスを本拠とするテレスール放送がブラジル国内の報道を基に19日伝えたところでは、ヂウマ・ルセフ伯大統領は、ネヴェス議員らの行動について、ベネスエラの主権に挑む行為、と批判した。

 同放送によると、ルセフ大統領はまた、ネヴェス一行はブラジル政府に恥をかかせる罠を仕掛けたのではないか、と非難した。

 因みにルセフは30日、ワシントンでバラク・オバーマ大統領との首脳会談に臨む。ブラジル政府に対する米政府による電子スパイ活動が暴露されたため、伯米首脳会談は長らく延期されていた。

2015年6月20日土曜日

キューバ国内35カ所でワイファイサービス開始へ

 クーバ共産党青年部機関紙フベントゥー・レベルデ(反逆青年)は6月18日、国営電気通信会社は数週間内に全国35カ所にワイファイ技術を備えたインターネットサービス所を開設する、と報じた。

 使用料金は従来の1時間4・5ドルから2ドルに下げられる。ハバナには5カ所設置される。

 現在、インターネットに接続されている家庭は、わずか3・4%にすぎない。「革命思想堅固な」超選良層だけだ。

 一方、サンタクラーラ市にある、チェ・ゲバラ像、博物館、霊廟などを備えた「チェ・ゲバラ複合造形施設」は18日、開場以来、計400万人が訪れたと発表した。

 1988年12月に建造されてからクーバ人160万人、外国人240万人が見学した。クーバ人の数が少ないのは、長距離交通機関が不便なためと見られる。

 18日、米上院は、クーバ東部で米国が占領しているグアンタナモ米海軍基地の囚人収容所閉鎖を阻止する条項を含む国防省予算案を可決した。同案は、囚人の米本土移送を禁じている。
 

ジュリアン・アサンジ氏の大使館内亡命3年が経過

 米外交機密情報を大量に暴露した「ウィキリークス」の創設者ジュリアン・アサンジ氏(43、豪州人)は6月19日、ロンドンのエクアドール大使館に亡命滞在してから丸3年が経過した。

 アサンジは2010年暴露を開始。すると同年末、スウェーデン当局は同氏が同年8月スウェーデン人女性2人に対し性的事件を起こしたとして捜査を開始、起訴した。これを受けて英最高裁は12年5月30日、身柄引き渡し要求を認めた。このためアサンジはエクアドール大使館に駆け込んだ。

 アサンジは、性的事件をでっち上げとして一蹴、身柄がスウェーデンに引渡されれば、最終目的地米国に引渡されてしまうと主張し、大使館に留まり続けてきた。

 アサンジは7月3日に44歳になる。エクアドール政府は、運動不足や精神的圧迫にさいなまれているアサンジの館内滞在をこれ以上長引かせてはならないとして、エクアドール本国への身柄安全移送を認めるよう訴えている。

2015年6月18日木曜日

キューバと米国の国交正常化合意から半年

 クーバと米国の最高首脳が昨年12月17日、国交正常化合意を発表してから半年経った。大使級国交は依然復活していない。問題は、大使館の役割および外交官の立ち振る舞い方をめぐり、双方の考え方が異なること。

 米国はハバナに開く大使館を、クーバ社会主義体制を平和裡に資本主義化するのを長期的目標とし、大使館に反体制派を迎え入れ、米外交官がクーバ全土を訪れて反体制派を組織するのを意図している。大使館員を100人は駐在させたい考えだ。

 これに対しクーバは、国際法遵守や内政不干渉を絶対的条件とし、米大使館と米大使館員が反体制派支援の役割を演じるのに激しく反対している。

 ワシントン駐在の玖外交官には、ハワイとアラスカを含む広大な米国全土をくまなく見回る必要はなく、財力もない。ワシントン駐在の外交官数も20人~30人を想定している。

 双方は1月以来4回、ハバナとワシントンで交渉を続けてきたが決着せず、その後は表立った第5回交渉はせずに話し合ってきた。ワシントン筋は、6月末までに対立点を片付け、7月初めには大使館開設に漕ぎ着ける、との見方を明らかにしている。

 米政界では、来年の次期大統領選挙への出馬を目指す民主、共和両党の候補者候補が大方出そろい、両党間および党内での激しいせめぎ合いが始まりつつある。

 クーバとの国交正常化に反対する保守・右翼勢力は米有権者の最大4割方。米玖両首脳ともに正常化が争点としてもみくちゃにされるのを避けたい考えだ。このため大使館を開き、その後、懸案を解決していくとの早道をとりたいところ。

 ハバナでは17日、玖・ラオス外相会談が開かれた。これがトップ級ニュースで、「対米合意半年」に関する動きは特になかった。

 ラウール・カストロ議長の妻、故ビルマ・エスピン玖女性連盟(FMC)議長についての本『自由の火』が16日、出版紹介された。  

2015年6月17日水曜日

キューバと欧州連合との次回交渉は9月に

 クーバ外務省は6月16日、ブリュッセルで15、16両日行なわれた欧州連合との第4回関係正常化交渉について、有意義だったと評価した。

 また、第5回交渉は9月クーバで実施する、と明らかにした。

キューバが今年もプエルト・リコ独立要求決議案提出へ

 クーバ外務省多国間関係・国際法局は6月16日、同国は国連非植民地化特別委員会に22日、米植民地プエルト・リコの民族自決と独立を認めるよう米政府に求める決議案を提出する、と発表した。

 クーバは過去15年間に、国連でプエルト・リコ関係の決議案33件を採択に導いた。

 今決議案には、34年間も獄中にいるプエルト・リコ人オスカル・ロペス(71)の解放要求も盛り込まれる。

16世紀に書かれた『バスク初文集』を読む

 バスコ人ベルナト・エチェパレが1545年、南仏ボルドーで出版した『バスク初文集』(萩尾生・吉田浩美共訳、2014年白水社)という詩集を読んだ。エチェパレはコロンブスが新世界と出遭った(1492年)ころ生きていたカトリック司祭だった。

 司祭らしく「神」を主題にした詩が多い。その中に「この世の暮らしは短く、あの世の暮らしは永遠なのです」という一行がある。

 「神は世界中の何にも増して女を愛しています 女に愛をささやくために天から降りてこられたのでしょう その女のお陰で私たちは神と兄弟になれるのです 神の愛のためにすべての女が賞賛されるべきなのです」という一節もある。

 圧巻は、「バスク語よ、世界に出よ、世界を闊歩せよ、踊りに出でよ」と、バスク語を高らかに謳う「コントラパス」だ。この『初文集』は、バスク語で書かれ印刷された最初の本なのだ。

 「サウトゥレラ」も、「バスク人たる者は皆、頭を上げよ、自分たちの言語が花と咲く日が来たのだから」と、出版を詠い上げる。

 この本の三分の一は解説に費やされている。バスク国、バスク語の歴史は複雑だ。バスク語文法や発音の説明もあるが難しい。

 バスク語は、独裁者フランコの死後、現代のルネサンス期にある。現代文学も書かれている。若いころ、ピレネー山脈の両側のバスク地域を何度か取材した。そのころを思い出しながら、この詩集を味わった。
 

2015年6月16日火曜日

エクアドール大統領が相続税改正法案取り下げ

 エクアドールのラファエル・コレア大統領は6月15日、連日反対運動が起きている相続税改正法案を一定期間取り下げる、と発表した。

 大統領は、改正法が中産層と貧困層に打撃となる可能性が明らかになれば法案を廃止する、とも述べた。

 反対運動は反コレア運動でもあり、コレア辞任を求める声がデモ隊の合言葉のようになっている。これと関連し大統領は反対勢力に対し、暴力的な街頭行動を止め対話に応じよと呼び掛けるとともに、反対派は署名を集め、憲法規定にある大統領罷免の是非を問う国民投票実施にこぎつければいい、と強調した。

 コレアは、国民投票になれば「1000回もやっつけてやる」と付け加えた。

キューバと欧州連合の第4回正常化交渉始まる

 クーバと欧州連合(EU)は6月15日ブリュッセルで、16日まで2日間に亘る第4回関係正常化交渉を開始した。主要議題は、1996年12月、当時のスペイン右翼政権が提唱して決めた、EUとしての対玖「共同姿勢」をEUが破棄するかどうか、および、クーバの反体制派の扱い。

 クーバに対し厳しい姿勢をとる「共同姿勢」があるにも拘わらず、通商や欧州諸国要人の訪玖は近年、活発化している。

 一方、モスクワで15日、ニコライ・レオノフ著『ラウール・カストロ伝』が出版披露された。

 レオノフは、ラウールがクーバの人民社会党(PSP、旧共産党)青年部員だったころからラウールに接近した、ラウールの親友。

米州諸国機構が影響力復活目指し構造改革へ

 米州諸国機構(OEA・OAS)は6月15日、ワシントンの本部で年次外相会議を開いた。ルイス・アルマグロ事務総長は、OEAの構造的改革を提案、会議は7月31日までに総長が改革案を提示することを決めた。

 総長は「OEAが米州に数ある機関の前衛として米州を代表する機構となるよう」改革したいと説明した。OEAには米州35カ国のうちクーバを除く34カ国が加盟するが、その34カ国のうち北米の米加を除く32カ国とクーバは、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)を構成、2011年12月のCELAC発足後、OEAの存在感は大きく陰っていた。

 他にも、左翼諸国の米州ボリバリアーナ同盟(ALBA)、南米12カ国の南米諸国連合(ウナスール)などがある。総長は、これらの機構の前衛となりたいと言ったが、OEAが米加両国に近いためラ米・カリブ側の理解を得るのは容易ではない。

 外相会議はまた、腐敗疑惑に包まれたオットー・ペレス=モリーナ大統領への辞任圧力が高まっているグアテマラに関し、「憲政擁護」を掲げて辞任要求を牽制し、9月6日予定の同国次期大統領選挙実施を支持することを決めた。 

2015年6月15日月曜日

「コーヒールンバ」作曲者ウーゴ・ブランコが死去

 ベネスエラ民俗音楽の名曲「モリエンド・カフェ(コーヒー豆をひきながら)」の作曲者ウーゴ・ブランコ(74)が6月14日死去した。20歳で作ったこの曲は、国外では「コーヒールンバ」として知られている。

 ブランコは1940年9月25日生まれ。楽器クアトロ、次いでアルパ(ハープ)の奏者になった。「ミ・ブリート・サバネロ(私の草原の驢馬)」も有名曲。
               ☆                         ☆                          ☆
   
 一方、ベネスエラ女性・男女平等相グラディス・レケーナは14日、結成中の「全国女性連合」(ウナムヘル)に148万人が既に参加登録している、と明らかにした。

 ウナムヘルは、政権党ベネスエラ統一社会党(PSUV=ペスーブ)の女性部門で、クーバ共産党傘下の女性連盟に倣っている。近く綱領を策定、正式に発足する。

 年末に予想される国会議員選挙を前に、女性票掘り起こしのための実働組織となる。

メキシコ前大統領の妻が次期大統領選出馬を希望

 メヒコのフェリーペ・カルデロン前大統領の妻で弁護士のマルガリータ・サバーラ(47)は6月14日、2018年実施の次期大統領選挙に出馬したい、と表明した。

 夫所属のカトリック・財界系保守・右翼政党、国民行動党(PAN)の指名獲得か、他会派の支持か、無所属か、で出馬したいと述べた。2014年の選挙法改正で無所属出馬が可能になっている。

 サバ―らは2003~06年、PAN所属の下院議員を務めた。今年の下院議員選挙への出馬を希望していたが、PANの公認を得られなかった。

 カルデロンは06年の大統領選挙で実際は負けていながら、開票時の操作で勝ったことになった、という見方が定説になっている。その<逆境>を跳ね返すかのように、就任後ただちに「麻薬戦争」に突入したが失敗、全土に麻薬絡みの凶悪犯罪を拡げるのに貢献した。

2015年6月14日日曜日

ベネズエラ国会議長がハイチで米国務省顧問と会談

 ベネスエラのディオスダード・カベージョ国会議長は6月13日、アイチの首都ポルトープランスで米国務省のトーマス・シャノン顧問と、両国関係正常化をめぐり90分間会談した。

 カベージョは、ニコラース・マドウーロ大統領の特使として、アイチでのALBA事業の落成式に出席した。アイチのミシェル・マルテリ大統領の仲立ちで、シャノンと会談した。

 会談には、ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相、アイチ駐在のパメーラ・ホワイト米大使も同席した。

 カベージョ議長は12日には、ブラジリアでヂウマ・ルセフ伯大統領と会談した。これも大統領特使としての訪問で、ベネスエラに欠乏している薬品の買い付けが主な目的。関係閣僚が同行した。

 カベージョはベネスエラで大統領に次ぐ実力者。米当局は、カベージョと麻薬取引との関係を指摘しているが、マドゥーロ大統領はカベージョを盛り立てる意味も込めて特使の任務を与えている。

グアテマラ内戦中の人道犯罪扱った『無分別』を読む

 遅ればせながら、中米人作家オラシオ・カステジャーノス=モヤ(1957~)の『無分別』(2004年、白水社2012年細野豊訳)を読んだ。本の瓦礫の山に埋もれていたものだ。

 グアテマラ内戦中の夥しい数の人道犯罪の実態の報告書「グアテマラ、二度と再び」の編集に主人公が携わるという設定だ。身の危険を感じた主人公はドイツに逃れるが、その地で、報告書を公表したヘラルディ司教の暗殺のニュースに接するという結末。

 人道犯罪の最大の責任者である将軍エフライン・リオス=モントは齢90歳にならんとして、裁判から逃げ回っている。将軍の部下で、将校時代人道犯罪に関与したと指摘されている人物が、現大統領オットー・ペレス=モリーナである。彼は今、大規模な腐敗事件への関与で辞任か、逮捕起訴かの瀬戸際に立たされている。

 史実を踏まえており、現代グアテマラ情勢を理解するためにも読むにふさわしく、面白い。瓦礫の中から、もっと早く見つけ出すべきだった。

キューバ自営業者は50万人、人気は食品販売

 クーバ共産党青年部機関紙フベントゥー・レベルデ(反逆青年)は6月13日、2010年10月から今年5月までの間に営業を認可された自営業者は50万5000人と報じた。

 多い業種は、食品販売、貨客輸送、住宅・部屋・事務所賃貸、電気通信技術、契約労働など。若者、女性はそれぞれ15万5000人。8万人余は公務員兼業。6万人余は退職者。

 11日、米国のシリウスXMラジオがクーバから米国向けに放送した。米ラジオによる50数年ぶりの直接放送。同ラジオ取材班は1週間クーバで取材していた。

 中国航空は13日、北京・ハバナ直行便運航を9月を目処に開始すると発表した。欧州かカナダ経由となる。

 12日訪玖した米共和党上院議員団3人は、13日ブルーノ・ロドリゲス外相と会談、次いでミゲル・ディアスカネル第1副議長と会談した。3人は経済封鎖解除推進派。

 サンタクラーラ市のチェ・ゲバラ広場で14日、エルネスト・ゲバラ生誕87周年行事が催される。  

メキシコが中部アメリカで食糧増産協力へ

 メヒコのエンリケ・ペニャ=ニエト大統領は6月12日、ローマでの国連食糧農業機関(FAO)首脳会議で演説し、「飢餓のないメソアメリカ(中部アメリカ)」という政策を打ち出した。

 メヒコが当初、資金300万ドルを提供、グアテマラ、エル・サルバドール、オンドゥーラス、ニカラグア、パナマの中米5カ国を対象に、食糧増産計画などを支援する。

 これを第1期とする。今年後半からの第2期では、ベリーズ、コスタ・リカ、ドミニカ共和国、コロンビアを対象とする。

 詳細は不明。

2015年6月13日土曜日

米国とキューバは7月初めにも国交再開か

 クーバと米国は7月初め、大使級外交関係再開に踏み切る見通しだ。ロイター通信がワシントン筋の情報として6月12日報じた。

 米玖双方は、相互に現在の利益代表部を大使館に格上げするための残された問題点を6月30日までに決着させることになっている。

 ジョン・ケリー米国務長官は、ハバナでの米大使館開設直後にクーバを訪問する予定。長官は右足の負傷が完治していないが、訪玖を予定しているということは、月内にも完治する見込みであるのを示している。

 バラク・オバーマ米大統領は、対玖国交再開の15日前までに米議会」に通告する必要があるという。 

米国とキューバの大使館開設が足踏み

 クーバと米国が相互に大使館を開設する作業が足踏みしている。ワシントンのクーバ利益代表部は大使館への格上げに備えて6月10日、国旗掲揚柱を設置していた。

 だが、野党共和党が多数を占める米議会・下院の歳出割当を決める委員会は翌11日、ハバナの米利益代表部を米大使館に格上げする費用の支出を禁止する法案を可決した。反カストロ派クーバ系の極右議員らによる妨害工作だ。

 共和党には、米玖国交正常化を来年の米大統領選挙の争点にしようとする動きがあり、クーバ系議員と利害が一致している。

 一方、米上院では11日、米民間部門に対玖輸出、融資を認める法案が提出された。

 両国関係が曲折を経ながらも、正常化に向かって進んでいることには変わりない。 
 

2015年6月12日金曜日

エクアドールで反政府行動続く

 エクアドールでラファエル・コレア大統領の4選阻止を目指す保守・右翼勢力の街頭政治運動が激化している。10日にはキトの商店街で反政府派が政府支持派を攻撃し、元文化相フランシスコ・ベラスコ、警官数人らが負傷した。

 反政府派は、コレア大統領が掲げる「富再分配計画」の柱である相続税改正法案と物価騰貴税法案への反対を契機に立ちあがった。狙いは、コレアが出馬を予定している2017年の次期大統領選挙だ。

 この国には1927年から相続税法がある。現在は6万8800ドル(エクアドール通過も米ドル)以上の相続が対象だが、大統領は3万5400ドル以上を対象にしようとしている。もう一つの法案は、物価上昇で膨らんだ利益に課税するもの。

 エクアドールの企業の80%は同族経営とされ、両方の課税の対象者には、その同族および関係者が多い。かつては、そのような有産層から大統領が出ることが多かった。

 しかし、コレアの政権党パイース同盟(AP)は有権者の55%以上を握る多数派。だからコレアは連続当選を続けてきた。

 ラ米では合法政権を、反政府行動を通じて倒す陰謀が盛んで、拠点はマイアミなどにある。今世紀になってからオンドゥーラス、パラグアイの合法政権が倒され、ボリビア、ベネスエラ、ブラジルなどで政権打倒運動が起きてきた。

 メヒコなど幾つかの国では、勝った候補を負けたことにして負けた勢力が政権を奪う荒業も用いられている。

CELAC・EU人民サミットも閉会

 CELAC・EU首脳会議と並行してブリュッセルで開かれていた「人民サミット」は6月11日、最終宣言を採択して閉会した。両地域61カ国のうち43カ国から341団体の代表1500人が参加した。

 宣言は、差別、抑圧、搾取、人種主義、社会的不公正、疎外、新自由主義、帝国主義の仕掛ける戦争に反対し、平等、参加型民主主義、社会正義のために闘うと謳っている。

 米州ボリバリアーナ同盟(ALBA)、南米諸国連合(ウナスール)、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)など、自決と主権を強固にする地域統合機構への支持を打ち出している。

 CELACを平和地域、植民地主義から自由な地域と規定した昨年1月の第2回CELAC首脳会議ハバナ宣言を支持している。CELACの進歩主義政権への米国による内政干渉を糾弾している。

 ベネスエラのボリバリアーナ革命とニコラース・マドゥーロ大統領の政権を支持し、同政権のベネスエラを「米国の安全保障にとり脅威」としたオバーマ米政権による宣言を拒絶する、と表明している。

 クーバ革命・人民を支持し、対玖経済封鎖の即時解除を米政府に要求している。

 人民サミット閉会式に出席したエクアドールのラファエル・コレア大統領(CELAC輪番制議長)は、「大なる祖国(ラ米・カリブ統合)を強固にすべき今、失うべき時間はない」と述べ、統合に向けて邁進するよう呼び掛けた。

 クーバのミゲル・ディアスカネル第一副議長は、「クーバは社会主義をよりよいものにし、革命の成果を維持するため、経済・社会モデルを実施している」と語った。

 同副議長はまた、「ラ米解放者たちの理想と、左翼勢力の大望の実現に道を開いた若きCELACの強化に努めたい」と強調した。  

第2回CELAC・EU首脳会議が終了

 ブリュッセルで開かれていたCELAC33カ国とEU28カ国の第2回首脳会議は6月11日、2日間の日程を終え、最終宣言を採択して閉会した。宣言には、両機構・地域間の協力強化、議題ごとのまとめ、個別情勢への対応などが盛り込まれている。

 注目されたベネスエラ問題では、「国際法に反して第三国にまで影響を及ぼす強制措置をとることを糾弾する」という文言で、暗に米政府によるベネスエラへの締め付け措置を批判。併せて、CELACが米政府によるベネスエラへの「制裁」措置を糾弾した事実に「留意する」と明記した。

 EUには右翼政権のスペインをはじめベネスエラ反政府勢力を支持する国々があり、刑事事件で逮捕・起訴されている右翼政治家を免罪・釈放しないベネスエラ政府を非難する意見が出たが、CELACによる反対で宣言には盛り込まれなかった。

 CELACは、民主的に選ばれたニコラース・マドゥーロ大統領の現政権を支持している。

 今首脳会議のロビーでは、南部共同市場(メルコスール)とEUが経済連携協定(EPA)を結ぶための本交渉開始に先立つ折衝をすることで合意した。 

 

2015年6月11日木曜日

大使館開設に備え在米キューバ公館が国旗掲揚柱設置

 ワシントンのコロンビアハイツにあるクーバ利益代表部の正面に国旗掲揚柱が6月10日設置された。玄関の標識を「利益代表部」から「クーバ共和国大使館」に取り換える用意も整っている。現在、建物の一部を改造中。

 利益代表部は、米大統領政庁(ホワイトハウス)から3kmの距離にある。

 国旗掲揚柱設置は、大使級外交関係再開が間近なことを示している。

ブリュッセルで第2回CELAC・EU首脳会議開会

 ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC、33カ国)と欧州連合(EU、28カ国)の第2回首脳会議が6月10日ブリュッセルで開会した。

 CELACの輪番制議長国エクアドールのラファエル・コレア大統領は会議冒頭で、オバーマ米政権のベネスエラに対する締め付け政策を糾弾、取り下げるよう求め、EU側に賛同するよう訴えた。会議は11日閉会する。

 コレアはまた、今会議の主要議題として、極貧・不平等対策、教育・科学・技術促進、環境・気候変動対策、開発融資、CELAC・EUブロック強化を挙げた。

 同大統領はベネスエラ問題のほか、クーバ情勢、コロンビア和平、亜国対外債務返済問題などに触れた。

 クーバのミゲル・ディアスカネル第一副議長は、対米国交正常化合意が成った後も厳しい経済封鎖が続いているとして、EU諸国に封鎖解除を米国に働きかけるよう要請した。

 クーバのパリクラブへの債務は150億ドルにのぼるが、玖・EU関係正常化交渉は進展しつつあり、同クラブの欧州メンバー、非欧州メンバーとの関係も改善されつつある。
  

腐敗嫌疑のグアテマラ大統領への辞任圧力強まる

 グアテマラ最高裁は6月10日、国会に対し、オットー・ペレス=モリーナ大統領の不逮捕特権を剥奪するか否かを審議するよう要請した。同大統領は、4月暴露された大規模な税関と税務署での脱税行為への関与が疑われており、予審開始要求が出ていた。

 この汚職事件で、既に副大統領だったロサーナ・バルデッティが辞職し逮捕され、さらに中央銀行総裁、社会保険庁長官、大統領側近の軍人らも逮捕されている。

 4月以降、全国規模の大統領辞任要求行動が続いており、大統領は最高裁の審議要求によって、逃げ場がなくなってきた。グアテマラでは9月6日に次期大統領選挙が予定されているが、大統領が来年1月までの任期にしがみつこうとすれば、混迷の度がますます高まると懸念されている。

 識者の間では、大統領に残された唯一の名誉ある道は辞任だけだ、との声が出ている。

 予審開始を要求したのは、ノーベル平和賞受賞者リゴベルタ・メンチューらの政党ウィナク。

2015年6月10日水曜日

アルゼンチンで全国ストライキ実施

 アルヘンティーナで6月9日、政府の税制や賃金制d策に反対する諸労連による全国24時間ストライキが実施された。鉄道、地下鉄、長距離バス、乗合バスなど主要交通機関が賛同したため、人々の移動、通勤、通学はほぼ全面的に麻痺している。

 ストを組織した中心団体、労働総同盟(CGT)反政府派のウーゴ・モジャーノ書記長は、欧州滞在中のクリスティーナ・フェルナンデス大統領が8日ローマのFAO(国連食糧農業機関)で亜国の貧困率は5%と言ったのを受けて、「実際は27%を超える」と指摘した。

 ストに賛同した諸労連は、所得税の源泉徴収制度の廃止か「適切化」を求めている。また労使交渉の賃上げ上限設定に関し、インフレには上限はないとして、設定に反対している。

 大規模ストは、フェルナンデス第2期政権下で5度目。だが今回は、10月5日の次期大統領選挙を控え、政治的要素が強い。

2015年6月9日火曜日

ラ米・カリブと欧州連合の最大相違点はベネズエラ問題

 ローマで開催中の国連食糧農業機関(FAO)首脳会議で6月8日、極貧率が2004年の12・2%から5・4%に減ったベネスエラが表彰された。ホルヘ・アレアサ副大統領が表彰状を受けた。

 ベネスエラの栄養失調も、チェベス政権登場前年1998年の21%から2010年の3・83%に減っている。

 一方ブルッセルでは10~11両日、第2回CELAC・EU首脳会議が開かれる。これを前に8日、現地入りした玖副外相アベラルド・モレーノは、CELACとEUの見解の最大の相違はベネスエラ情勢の受け止め方にある、と指摘した。

 玖副外相は、われわれCELACは一致して米国のベネスエラ干渉政策をはねつけたが、この点でEUの立場とは位置していない、と述べた。

 モレーノはまた、気候変動、核軍縮でも相違点があるとし、EUは第2回CELAC首脳会議(14年1月ハバナ開催)が宣言した「ラ米・カリブ平和地域」を認めるべきだ、と訴えた。

 さらに、「両地域は文化が異なり、政治問題で常に一致するわけではない」とも語った。

 その典型が、7日カラカス入りしたフェリーペ・ゴンサレス元スペイン首相のベネスエラ野党支持の言動だ。元首相は7日、軍事クーデター誘導未遂事件関与で自宅軟禁されているアントニオ・レデスマ(カラカス首都圏市長停職中)に面会後、記者団に、問題解決には対話が必要だと強調するととも、「政治囚」解放に努力する立場を明確にした。

 これに対し、犯罪者免罪を認めない政府支持派は、「政治囚でなく、囚われた政治家だ」と反駁。野党連合など反政府勢力およびゴンサレスら外国の元首脳らによる政治家免罪・解放要求を突っぱねている。

 ベネスエラでは財界による物流規制などにより物資不足が悪化している。当局は連日のように、各種生活必需品の隠匿現場を摘発している。

 政府は、これを「経済戦争」と呼んでいる。反政府勢力にとっては政権揺さぶり工作であり、年末の国会議員選挙で保守・右翼候補を勝たせるための戦術でもある。

 国際航空運輸協会(IATA)は8日、ベネスエラ政府は外国航空会社に総額37億ドルの債務がある、と明らかにした。ベネスエラでは航空切符は通貨ボリーバルで売られ、後に政府が米ドルと交換する制度となっているが、交換が滞り、この額に達した。

メキシコ下院選挙は政権党連合が勝利

 メヒコで6月7日、国会下院議員500人、9州知事、871市長、16首都区長、600市会議員を選ぶ選挙が実施された。有権者は8350万人、投票率は47%程度だった。

 保守・右翼のPRI(制度的革命党)が率いる政権党連合(緑の党および新同盟党)は8日現在、下院選挙では、246~263議席を確保する見通しで、第1勢力を維持するもよう。かつての独裁党PRは今や、一党だけでは過半数に達しない時代となっている。

 キリスト教保守・右翼のPAN(国民行動党)は105~116議席の間になるもよう。

 保守化が著しい中道PRD(民主革命党)は、99議席から60議席に激減する可能性がある。この惨敗の原因は、PRDから分派した中道左翼のMORENA(国民改進運動)が34~40議席を獲得するため。

 MORENAは、過去2度の大統領選挙にPRDから出馬したアンデレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ)が率いている。

 知事選ではPRIがソノーラ、コリーマ、カンペチェ、サンルイスポトシー、ゲレロ5州で勝った。PANは南下加州、PRDはミチョアカンで、それぞれ勝った。ヌエボレオンでは、財界系無所属のハイメ・ロドリゲスが当確とされている。1州は未定。

 昨年9月、教員養成学校生43人が強制失踪に遭ったまま事件が未解決のゲレロ州では、投票反対運動が起き、オアハカ州では元市長が殺害されている。
 
 

2015年6月7日日曜日

ベネズエラ大統領が法王謁見を断念、延期へ

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は6月6日、ウィルス性の風邪をひき耳炎がひどくなったため、休養せよとの医師の勧告を受け入れて外遊を中止すると述べた。

 大統領はローマでの国連農業食糧機関(FAO)会議に出席し、7日にはローマ法王に謁見する予定だった。

 法王謁見はあらためて新しい日程を探り、FAO会議にはホルヘ・アレアサ副大統領(チャベスの女婿)が代理出席する。

 ベネスエラでは、昨年、極右野党勢力が仕掛けた一連の街頭暴力事件(グアリンバ)や、今年起きた軍事クーデター誘発未遂事件の教唆犯などとして逮捕されたり起訴されたりしている反政府政治家ら77人の免罪・釈放を求める右翼・保守派の運動が続いている。

 この運動は内外メディア、元外国政府首班らと連携し、力を増している。彼らは法王に、マドゥーロと会ったら77人釈放を働き掛けてほしいと訴えてきた。

 大統領が「風邪で耳が痛い」のは、反政府勢力の攻勢によるのではないか、との見方もある。

米政府はキューバ航空機爆破事件の主犯名を知っていた

 1976年10月6日バルバドス空港を飛び立ったカラカス発ハバナ行きのクーバ航空旅客機が空中で爆破され、機内の73人全員が死亡した事件の主犯格が、ルイス・ポサーダ=カリーレスであることを、米政府は知っていた。

 6月4日解禁された米国務省文書に、CIAが当時のヘンリー・キッシンジャー国務長官に宛てた同事件に関するメモが含まれており、そこにポサーダらの名前が記されていた。

 ポサーダはクーバ系ベネスエラ人で、米当局の庇護の下でマイアミで暮らしている。ベネスエラとクーバから身柄引き渡しの要求がある。

 反カストロ主義の米共和党下院議員マリオ・ディアスバラルト提出の歳出関連法案が下院で3、4両日相次いで可決された。3日には、玖軍部、諜報機関などへの輸出を禁止する法案で、賛成242、反対183で採択された。

 4日には、オバーマ政権が決めた、米国人の対玖渡航緩和および米民間航空機の玖乗り入れ許可を無効とする法案で、賛成247、反対176。民主党の一部も賛成に回った。

 一方、スペイン前首相ホセ=ルイス・ロドリゲス=サパテーロは5日ラジオ番組を通じて、クーバが歴史的変化を遂げつつあるこの時期にスペインは存在感を示すべきだとして、マリアーノ・ラホーイ首相に訪玖を促した。右翼のラホーイは革命クーバと反(そり)が合わない。

 クーバと欧州連合(EU)は15~16日、ブリュッセルで関係正常化交渉を続開する。

2015年6月6日土曜日

ガルシア=マルケスの『誘拐の知らせ』を再読する

 頭の疲れをとるには、酒か読書にかぎる。その後に、よく眠れるからだ。酒があまり飲めなくなった老人には、読書の方がはるかにいい。

 そんなわけで、疲れた頭を休ませるため、続けて2冊読んだ。一つは、1962年生まれの亜国人作家ギジェルモ・マルティネスの『オックスフォード殺人事件』(2003年原題「見えない犯罪」、和泉圭亮訳、2006年扶桑社)。

 数学者である作家が、数学的犯罪を、数学者を主人公の一人として絡ませ、謎を解く。「推理小説を読みつくした読者への挑戦本」という趣旨の巻末解説がある。推理小説としては面白いとはいえない。かえって頭が疲れてしまった。

 だが、いろいろな試みが合っていい。淘汰されて短命に終わり消えていくか、風雪に耐えて生き残り古典になるか、のどちらしかないからだ。

 もう一つは、ガブリエル・ガルシア=マルケス著『誘拐の知らせ』(1996年、旦敬介訳、2010年筑摩書房)。GGMのジャーナリストの筆致が遺憾なく発揮されている面白い本だ。だが、ほんの少しの遅れ(時間差)を「何万光年も遅れた」と書くなど、魔術的表現が時折出てくる。やはりガボは、得意技を100%抑えるのに我慢できないのだ。

 読んでいるうちに、待てよ、読んだような気がする、と気づいた。読み終えてから巻末を見ると、1997年に角川春樹事務所から『誘拐』として出ていたのがわかり、それを読んでいたのを思い出した。

 この本には、私が記者時代にコロンビアでインタビューした公安庁長官ら何人かの人物も出てくる。それもあって面白いと思ったのではないか、と自問した。いや、それがなくとも面白い。再読だったが、よく眠れた。

2015年6月5日金曜日

コロンビア政府とゲリラFARCが真実委員会設置で合意

 ハバナで和平交渉中のコロンビア政府とコロンビア革命軍(FARC)は6月4日、内戦の実態を解明するための「真実・共生・繰り返し不可委員会」設置で合意した。

 この委員会で明らかにされる犯罪事実は、コロンビア司法による捜査・懲罰の対象にならない。

 委員会は、和平協定調印の日から3年間か活動する。委員は11人。

 1960年代初めに本格化し半世紀を超える内戦は、死者22万人、避難民600万人を出してきた。双方は2012年11月、和平交渉をハバナで開始、今回は第37ルエダ(ラウンド=会合)。コロンビアのマリーア・オルギン外相が初めて参加した。

2015年6月4日木曜日

コロンビア国会が大統領再選を禁止

 コロンビア国会下院は6月3日、大統領再選禁止法案を可決、上院通過済みのため成立した。JMサントス大統領の署名をもって発効する。

 正式大統領だけでなく暫定大統領、臨時大統領の経験者も大統領選挙に出馬できなくなる。併せて、会計検査院長の再選も禁止された。

 大統領再選は2004年、アルバロ・ウリーベ前大統領の極右政権が改憲によって可能にし、ウリーベは06年の大統領選挙で再選された。さらに10年選挙での3選を目指したが、オバーマ米政権が反対の圧力をかけ、コロンビアの憲法裁判所も不可と判断、ウリーベの野心は実らなかった。

 10年選挙ではサントス現大統領が当選、14年の選挙では再選禁止を公約していた。同選挙でウリーベは子飼いを候補に立て、子飼いは第1回投票では得票1位になったが、決選でサントスに逆転された。

 子飼いが勝っていれば、子飼い政権の下で新たに改憲し、ウリーベ3選に道を開く可能性もあった。今回の下院採決では、ウリーベの率いる民主中心党(CD)だけが反対票を投じた。

ベネズエラが近く国会議員選挙の日程発表か

 南米諸国連合(ウナスール)のエルネスト・サンペール事務局長は6月2日、ベネスエラでは今年後半に国会議員選挙が実施されるが、現在、選挙日程の調整中で、近く投票日が発表される見通しだ、と述べた。

 コロンビアのカルタヘーナでは2~4日、国際麻薬取締会議が開かれているが、米南方軍のジョン・ケリー司令官は3日、ベネスエラ政府が取締りに非協力的なため、コロンビアから米国に入るコカインの多くはベネスエラ経由となっている、と語った。

 ケリー将軍はまた、私は麻薬問題が第一義的に消費社会の問題であるのを認めるのにやぶさかではないと前置きし、最大消費国は米国、次いでブラジルであり、欧州、アジアが続くと指摘した。

 一方、メヒコ国営石油PEMEXは2日、今年第1・三半期のメヒコの対米原油輸出はベネスエラに抜かれて4位になった、と発表した。

 同期の原油対米輸出はカナダ9720万バレル、サウディアラビア4070万b、ベネスエラ2880万b、メヒコ2110万bの順だった。

2015年6月3日水曜日

米・キューバ大使館相互開館は来週中か

 米国務省は6月1日、米州担当国務次官補ロベルタ・ジェイコブソンを次期メヒコ駐在大使に任命した、と発表した。ジェイコブソンは、対クーバ国交正常化交渉の米側首席代表を務めてきた。

 玖米両国の大使館相互再開は来週、それも9~12日の間になるとの観測が強まっている。ジェイコブソンは米議会の承認を待ちつつ、大使館開館にこぎつけてからメヒコに赴任する模様だ。

 メヒコ政府は、ジェイコブソンが過去に国務省でメヒコ担当、北米自由貿易協定(TLCAN/NAFTA)担当でもあったことから、既に歓迎の意を表明している。だがクーバ政府には意外感が漂っている、と伝えられる。

 米政府は1日、共和党玖系下院議員マリオ・ディアスバラルトが提出した、都市運輸法案が成立した場合、拒否権を行使すると言明した。

 この法案には、民間航空機の対玖乗り入れを規制するなどの条項を含んでいる。対玖自由渡航解禁を含む経済封鎖緩和と将来的な撤廃を目指すオバーマ政権としては認められないわけだ。

 一方、ハバナで2日、米プロサッカーチームNYコスモスとクーバ代表チームが親善試合をし、4対1でコスモスが圧勝した。  

歌手エンリケ・イグレシアスがドローンで右手を負傷

 スペイン人歌手エンリケ・イグレシアス(40)は5月30日、メヒコ北西端のティフアーナ市で公演中、ドローンで右手を負傷し、6月1日、ロサンジェルスの病院で手術を受けた。エンリケは、歌手フリオ・イグレシアスの息子。

 エンリケは舞台効果を出すため、飛行できる状態にあったドローンを左手で掲げながら演技し、右手をドローンに添えたところ、プロペラで右手の指に負傷した。中指と薬指と見られる。

 応急手当を受けたエンリケは舞台に戻り、右手にまかれ血がにじんだ包帯を見せながら公演を最後まで務め、終了後、ティフアーナ空港からロサンジェルスに飛んだ。傷は思いのほか深く、切れかかった指を接合する手術などを受けたとも伝えられる。

 エンリケは「性と愛」という演目でツワー中。7月3日にはメヒコ市で予定通り公演するという。
 

ベネズエラ国会議員の殺害犯はコロンビア人

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は6月2日、昨年10月1日カラカスで起きた国会議員ロバーロ・セラおよび同棲女性の暗殺事件の黒幕が判明した、と明らかにした。

 コロンビア北東部、ベネスエラとの国境地帯にあるククタ市の元市会議員フリオ・ペレスが黒幕。極右のコロンビア前大統領アルバロ・ウリーベの側近という。

 また暗殺実行犯の一人でコロンビア人のレイベル・パディージャの身柄は5月30日、ベネスエラ当局に引き渡された。一味は、25万ドルの報酬と引き換えに二人の自宅に押し入り、惨殺した。

 大統領は4日には、セラ暗殺事件には、野党連合MUDの極右国会議員一人も関与している、と明らかにした。

2015年6月2日火曜日

エル・サルバドールのサンチェス大統領が施政1周年

 エル・サルバドールのサルバドール・サンチェス=セレーン大統領は6月1日、施政1周年に際し国会で施政報告演説をし、暴力問題が引き続き重要問題であり、この問題の解決は容易でない、と述べた。

 政府は昨年、「市民安全・共生理事会」(CSCC)を設立した。政府機関、市役所、市民社会組織、財界で構成され、国連、米州諸国機構(OEA)、欧州連合(EU)が支援してきた。

 サンチェスは、左翼政党ファラブンド・マルティ民族解放戦線(FMLN)の本格政権。だが国会対策や対米関係上、穏健な社民主義政策をとっている。大統領は、野党との対話を通じて合意を形成する作風を維持していくと強調した。

 大統領は経済分野では、昨年2%成長したが、今年は2・5%になる見通しと明らかにした。インフレを減らしたことや、電力料金を32%引き下げたことも指摘した。

 貧困率は、FMLNが参加したフネス前政権発足時の09年に24・9%だったのが14年に20%に下がり、極貧率は10・5%から6・2%に落ちた、と明らかにした。

 貧困対策としては、国立開発銀行が貧困家庭に計4億5200万ドルを融資、女性起業家向けの「女性銀行融資計画」(バンカ・ムヘル)で1234人が融資を受けた、とも明らかにした。また中小・零細企業に政府が1億1500万ドルを融資したとも述べた。

 観光産業については、今年外国から200万人の来訪と13億ドルの収入が見込まれる、と語った。

 小学校教育では、児童8万4000人に計6500台の電脳で、電脳教育を施したと述べた。

ペルー大統領がベネズエラ企業からの資金受け取り認める

 ペルーのオヤンタ・ウマーラ大統領は6月1日、2006年の大統領選挙出馬の前年05年にベネスエラ企業から選挙資金を受けたことを認めた。

 エル・コメルシオ紙は5月31日、ウマーラ夫人ナディーン・エレディアの母と親友の銀行口座に、ベネスエラのカイサマク社から計8700万ドルが振り込まれた、と報道していた。

 これを受けて大統領は、当時、自分の政党だった民族主義者党(PN)が政党として公認されておらず、このため個人口座に入金されたが、合法だったと主張。妻は迫害されている、と反駁した。

 ウマーラは06年の大統領選挙で決選に進出したが、相手のアラン・ガルシア候補に「チャベスとの関係」を攻撃され敗れた。11年選挙に再出馬、チャベスとの距離をとり、決選でケイコ・フジモリを破って当選した。

 銀行監査当局は09年、ナディーン夫人に関する「資金洗浄疑惑」調査を打ち切ったが、最近、再調査を始めつつあった。

 夫人は一時、「最も有力な次期大統領候補」と目されていた。 

2015年6月1日月曜日

ラテンアメリカ諸国大統領のローマ法王との謁見盛ん

 ラ米諸国大統領のローマ法王詣でが盛んだ。エクアドールのラファエル・コレア大統領が4月、クーバのラウール・カストロ国家評議会議長が5月、それぞれ謁見した。

 6月にはミチェル・バチェレー智大統領が5日、ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領が6日午前、亜国のクリスティーナ・フェルナンデス大統領が6日午後、謁見する。

 これら3国大統領は6月6~13日ローマで開かれる国連農業食糧機関(FAO)会議の一部に出席し、10~11日にはブリュッセルでの第2回CELAC・EU首脳会議に出席する。

 コロンビアのJMサントス大統領は7月15日謁見を予定している。

 一方法王は、7月5~13日、ボリビア、エクアドール、パラグアイを歴訪し、9月にはクーバと米国を訪れる。

 フランシスコ法王が亜国出身で、ラ米情勢に精通し、スペイン語で自由に話せるため、ラ米元首のヴァティカン詣でが活発化している。