2018年7月5日木曜日

 トランプ米大統領が昨年8月、ベネズエラへの軍事攻撃を提案▼ペンス副大統領が侵攻支持取付けのためラ米歴訪▼当時のティラーソン国務長官らは反対▼ラ米側は難色示す▼関与したVEN野党幹部らを反逆罪で捜査▼中国がVENに50億ドル融資へ▼コレア前赤道国大統領を国際手配▼メキシコ次期政権が大麻合法化を検討か

 ドナルド・トランプ米大統領は昨年8月、マドゥーロ・ベネズエラ政権打倒のため軍事侵攻を提案した。AP、CNNなど米メディアが、米高官からの情報として、7月4日報じた。
 トランプはホワイトハウスで主要閣僚や補佐官らと同政権への制裁政策を検討中、「なぜ米国は南米のその国(VEN)に侵攻できないのか」と切り出した。

 その場にいたレックス・ティラーソン国務長官(当時)やHRマクマスター安保担当補佐官(同)は唖然としたが、軍事攻撃を掛けた場合、ラ米諸国から米国が得てきた支持が損なわれるなど否定的影響が出ることを説明、思いとどまらせようと努めた。

 するとトランプは、「域内にはグレナダ侵攻(1983)、パナマ侵攻(1989)など成功例がいろいろある」と返したという。

 トランプは同じ8月の17日、「米国には軍事攻撃を含む様々な選択肢がある」と口にした。その直後、マイク・ペンス副大統領はコロンビア、アルゼンチン、チリ、パナマを歴訪、軍事侵攻への支持を打診した。

 この報道を受けたニコラース・マドゥーロ大統領は4日、国軍将官昇進式の場で垂れた訓示で国軍にあらためて忠誠を誓うよう求めた。そして「VENの資源を狙う帝国主義の(侵攻)意欲を削ぐため、我々は強力な軍部を必要としている」と強調した。

 さらに、「去年、ある元米高官は、VEN野党勢力幹部らが訪米した折、同幹部らに、VENへの軍事侵攻を米政府に要請するよう求めた、と明らかにした」と述べた。

 制憲議会のディオスダード・カベ―ジョ議長は4日、「米政府に祖国侵攻を要請した野党幹部らを反逆罪容疑で捜査し始めた」と発表した。

 一方、ボリビアのエボ・モラレス大統領は4日ラパスで記者会見し、「昨年秋、国連総会に集まったラ米首脳たちに米政府はVEN侵攻への支持を求めたが、ラ米側は一致して拒否した。その場にいたある首脳から聴いた」と暴露した。

 エボはまた、ペンス(米副大統領)は軍事侵攻支持を勝ち得るためラ米諸国を歴訪した
と指摘した。ペンスは昨年8月17日のトランプ発言を受けてコロンビア、アルゼンチン、チリ、パナマを歴訪。最近はブラジル、エクアドール、グアテマラを訪問した。

 ブラジル、チリ、エクアドールの首脳や外相は、「VEN問題での平和裏の解決」を主張し、暗に米国の軍事侵攻計画への反対を示している。

 老舗政党・民主行動党(AD、キリスト教民主主義)は4日、保守・右翼野党連合MUDを離脱した、と表明した。理由を「MUDは些細なことで内部対立し、昨年来、事務局長を選出できないままだ。国内向け政策も策定せずに、マドゥーロ政権を国際社会の協力という奇跡頼みで倒そうとしてきた」と説明した。

 ADは5月の大統領選挙に出馬、健闘して敗れたヘンリー・ファルコン候補を支持した。MUD極右は、選挙をボイコットした。

 別件だが、シモーン・セルパVEN経済相は3日、オリノコ油田での原油生産拡大のため中国が50億ドル融資してくれることになった、と発表した。原油生産拡大には200億ドルの投資が必要で、あと150億ドル足りない。

▼コレア前赤道国大統領を国際手配

 エクアドール政府は7月3日、ベルギー在住のラファエル・コレア前大統領を「拉致事件関与容疑」で国際手配し、ベルギー政府に手配への協力を求めた。

 拉致されたのは、ボゴタに逃亡していたフェルナンド・バルダ元国会議員。スパイ用電子機器不法取引などで追及されていた。

 VENボリビア両国大統領はコレアへの連帯を相次いで表明し、「コレア氏に対する迫害」と糾弾。これを受けて赤道国政府は声明で、両大統領の発言は赤民主制度の名誉を傷つけるものと非難した。

▼メキシコ次期政権が大麻合法化検討か

 アムロ次期大統領の下で内相就任が内定しているオルガ・サンチェス元最高裁判事は7月4日、麻薬取締政策の一環として、大麻消費を罰しないようにすることをアムロ氏に提案する、と明らかにした。

 また芥子を製薬会社や薬局に売るのを合法化することも提案すると述べた。芥子からできるモルヒネは医療用に使われる。だがモルヒネからは麻薬ヘロインが作られる。

2018年7月4日水曜日

 ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ)次期メキシコ大統領がペニャ(EPN)大統領と会談▼政権移行作業に入る▼トランプ米大統領とポンぺオ国務長官が近く来訪へ▼アムロは今月、太平洋同盟(AP)首脳会合に出席し外交デビュー▼アルゼンチン大統領がアムロを訪亜招待

 AMLO(アムロ)次期メキシコ大統領は7月3日、メキシコ市中心街の大統領政庁(国家宮殿)で、エンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)大統領と会談、政権移行について話し合った。大統領は移行に協力すると約束。移行作業はこの日始まった。

 会談後アムロは、ドナルド・トランプ米大統領とマイク・ポンぺオ国務長官が近い将来、来訪すると明らかにした。
 北米自由貿易協定(TLCAN/NAFTA)の見直し、国境問題などでアムロは、12月1日の就任まで約5カ月の間、EPN大統領の対米交渉に協力する。

 またアムロは今月24日、太平洋岸の保養地プエルト・バジャルタで開かれる太平洋同盟(AP=アリアンサ・デル・パシフィコ)首脳会議にEPNとともに出席することになった。
 APには、メキシコ、コロンビア、ペルー、チリが加盟。ラ米とAPECの「繋ぎ目」を自負している。

 チリとアンデス山脈で国境を接するアルゼンチンのマウリシオ・マクリ大統領はアムロを逸早く訪亜招待している。マクリは南米右翼の旗頭だが、8月就任するコロンビア次期大統領イバン・ドゥケの極右姿勢を警戒しており、アムロとの接近で一種の「均衡」を図ろうと望んでいるかに見える。

 ブラジル、ウルグアイ、パラグアイとともに関税同盟「南部共同市場」(メルコスール)を組む亜国は、APとの連携を推進している。

 アムロ任期はすさまじく、この日も政庁前の憲法広場(ソカロ)には支持派群衆がアムロを観に待機していて、気勢を上げた。

2018年7月1日日曜日

★★★アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ)元メキシコ市長当確▼メキシコ大統領選挙▼他候補者がアムロ勝利認める▼トランプ米大統領も祝福▼封じられたか、大掛かりな不正工作▼4候補が出馬▼苦戦強いられた保守・右翼の政権党と前政権党

 7月1日、メキシコ大統領選挙が実施された。決選制度はない。選管中間発表でアムロ候補が得票率53%で当選を確実にした。公式最終結果は4日発表されるGoa

 ★7月4日(水)1900から高田馬場NGOピースボート本部地下サロンで「歴史的転機迎えたメキシコ」と題し、アムロ当選の意義をめぐる講演会を催します。問い合わせは、電話3363-7561.参加費500円。

  各種出口調査では、アムロ43~49%、アナヤ23~27%、メアデ22~26%、ロドリゲス3~5%だった。
 アナヤはアムロに電話し、勝利を祝福した。メアデもアムロ優勢を認めた。ドナルド・トランプ米大統領はSNSでアムロを「次期大統領」として祝福、「米墨両国のために協働すべきことはたくさんある」と指摘した。 

 これで、1930年代のラサロ・カルデナス大統領以来の、中道左翼~左翼~政権が12月1日生まれることになる。任期は6年。

 過去繰り返された実例から、政権・選管による大掛かりな投開票の不正が懸念されていた。出口調査には、不正に対抗する狙いがあった。出口調査結果は、数多い世論調査の結果と一致する。

 アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ)元メキシコ市長(64)は、保守・右翼勢力が候補者を一本化できず苦戦したのに反比例して、勝利に向かって上昇していた。

 出馬したのは4人。保守・右翼の政権党PRI(制度的革命党)のホセ=アントニオ・メアデ元外相(49)は、PVEM(メヒコ環境緑の党)、PNA(新同盟党)と「皆がメヒコのために」を組んで選挙戦を戦ってきたが、現政権の威信は地に落ちている。
 世論調査では支持率は3位に低迷している。

 同じく保守・右翼の前政権党PAN(国民行動党)のリカルド・アナヤ弁護士(39)は、中道ないし保守化したPRD(民主革命党)および社民主義のMC(市民運動)と保守・右翼・中道左翼連合「メヒコのために先頭に立つ」を組む。支持率は2位。
 カルデロン前政権(PAN)の「麻薬戦争」の後遺症で治安が極度に悪化していることなどが響いている。

 PRDから独立した中道左翼 MORENA(国家刷新運動)のアムロは、左翼のPT(労働党)および、保守・右翼の福音派PES(社会出会い党)と左右連合「ともに歴史を創ろう」を組む。支持率は40~50%台で、2、3位両候補の合計支持率を上回る勢い。

 第4の候補は、無所属のハイメ・ロドリゲス前ヌエボレオン州知事(60)。支持率は5%以下だった。

 有権者は18歳以上の8939万人。併せて下院議員500人、上院議員128人、首都市長、8州知事、地方市長・市議会議員の選挙も実施される。

 ニカラグアが米露キューバ・ベネズエラ軍などを招いて軍事演習実施へ▼国会が決議▼反政府勢力への懐柔策か▼メキシコ・中米諸国も参加▼中米首脳会議終わる

 ニカラグア国会は6月29日、今年下半期に軍事演習のため玖VEN墨ES/GUA/HON/RD/米露の計9カ国および台湾の軍隊がニカラグアに入国することを認めた。
 政権党FSLNが圧倒的多数派であるため、賛成73、反対16で可決された。

 また同時期、ニカラグアの陸海空3軍部隊が墨巴露3国で演習することも認めた。演習には、経験交換、人道支援も含まれている。

 ニカ国会は半年ごとに外国軍の入国に関し決議しており、4月18日から続く反政府勢力のオルテガ政権打倒行動とは無関係という。

 しかし、同盟国の玖VEN露3国、外交関係を持つが遠方の台湾、さらにはオルテガ政権に厳しく、反政府勢力の背後にいるとも指摘されている米国の軍隊が参加する「大掛かり」な演習計画が降って湧いたように出現し、内外世論は戸惑っている。

 最大の危機に直面しているダニエル・オルテガ大統領は今回、国会に対し、緊急本会議を開催し決議するよう要請していたとされる。
 反政府勢力の敵対的闘争意欲をそぎ、世論の目を外に向ける一種の目くらまし戦術と捉えることも可能だろう。

 ニカラグアの東南隣のコスタ・リカは国家警備隊は持つが軍隊を持たないことや、関係がよくないことから、今回の演習には招かれていない。

▼中米統合機構(SICA)首脳会合終わる

 RD首都サントドミンゴで6月29日開かれ、ニカラグア政府と反政府勢力の抗争の平和解決、対米移民問題、石油価格高騰などを話し合い閉会した。RDの他、グアテマラ、エル・サルバドール、ホンジュラス、コスタ・リカ、パナマの大統領が出席した。

 ニカラグアからはカリブ担当相が出席した。SICAの輪番制議長国はRDからベリーズに移った。コスタ・リカは、2021年の中米独立200周年を合同で祝おうと提案した。