2013年6月30日日曜日

ベネズエラ大統領が「貧困からの解放区」創設を提案


 ペトロカリーベ(カリブ連帯石油機構、加盟18カ国)の第8回首脳会議が6月29日マナグアで開かれ、盟主ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は、LAC(ラ米・カリブ地域)に「貧困からの解放区」を創設する方針を打ち出した。

 ペトロカリーベ、米州ボリバリアーナ同盟(ALBA、加盟8カ国)、メルコス-ル(南部共同市場、5カ国)にまたがる計24カ国で結成を目指す。マドゥーロは、ベネズエラがメルコスール議長国になる7月12日以降、この案を正式に打ち出すと述べた。

 会議はまた、ペトロカリーベ投資基金を将来的に海空運輸、電気通信、生産施設網建設、観光、通商の分野にも回すことを決めた。

 マドゥーロの他、ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領(今会議議長)、ボリビアのエボ・モラレス大統領(招待参加)らが出席した。

安間美香さんが立教ラ米研で゙、カリブ情勢を特別講義


 カリブ海のTTを拠点に英連邦諸国とスリナムの情勢を観測している安間美香さんが6月29日、立教大学ラテンアメリカ研究所の、伊高浩昭担当「現代ラ米情勢」講座で、「カリコム諸国について-東カリブ諸国を中心に」と題して90分間、特別講義をした。

 「日本カリブ交流年」の来年さまざまな記念行事が催されること、独自の認同(イデンティダー)を持つカリブ諸国はラ米といっしょくたにされるのを嫌っていること、中国が猛烈な勢いで進出していること、など興味深い話が続いた。

 この講義内容は、いずれ文章の形で公表される見通し。

エクアドール大統領がスノーデン問題で米副大統領と会談


 エクアドールのラファエル・コレア大統領は6月29日、米政府の要請により28日ジョセフ・バイデン副大統領と、エドゥワード・スノーデン問題で電話会談した、と明らかにした。

 バイデンが、スノーデンの政治亡命を認めないよう要請したのに対し、コレアは、「その判断は主権の問題だ」と応じた。

 大統領は、「本人がエクアドール国内に居ないため、亡命申請受付などの手続きはなされていない」と前置きし、「入国したら手続きが始まるが、その際真っ先に米政府の意見を訊く」と述べた。

2013年6月28日金曜日

ウルグアイがクーデター40周年迎える


 ウルグアイは6月27日、ボルダベリ政権による軍事クーデターの40周年を迎えた。1985年の民政移管まで12年続いた軍政下で、数多くの人道犯罪が起きた。

 この日、国会、人道犯罪犠牲者家族会、街頭などで、さまざまな記念行事が催された。

 このクーデターから2カ月半後の9月11日、チリで軍事クーデターが起き、アジェンデ社会主義政権が崩壊し、サルバドール・アジェンデ大統領は憤死(自殺)した。

ドミニカ共和国が中米統合機構に正式加盟


 コスタ・リーカ首都サンホセで6月27日、中米統合機構(SICA=シカ)首脳会議が開かれ、準加盟国だったラ・ドミニカーナ(RD=ドミニカ共和国)が正式な加盟国として承認された。加盟国は8カ国となった。

 RDは、地元カリブ海に経済同盟関係を組める相手国がないため、中米に接近し、「米国・中米・RD自由貿易協定」(CAFTA-RD)を結んでいる。

 SICAの新しい事務局長には、エル・サルバドール外相ウーゴ・マルティネスが就任した。また半年交代の輪番制議長国は、コスタ・リーカからパナマに移った。 

エクアドールが亡命問題で、米国の特恵待遇を破棄


 エクアドール(赤道国)政府は6月27日、いかなる脅しにも屈しないとして、米国から与えられてきた特恵関税待遇を一方的に破棄した。

 米連邦議会のキューバ系右翼議員が26日、エクアドールがエドゥワード・スノーデン氏に政治亡命を認めたら報復措置として特恵待遇を打ち切ろう、と発言していた。

 米国務省は27日、エクアドールが亡命を認めたら米赤関係に重大な結果を招く、と警告した。これを受けてラファエル・コレア大統領は、「決定は主権の問題だ」とはねつけた。

 一方、マイアミのウニビシオン放送が27日伝えたところでは、エクアドールの英国駐在総領事は22日、スノーデンに赤道国内での安導権を与えた、という。

 赤米貿易は年間100億ドルで、エクアドール貿易全体の35%を占める。また多くのエクアドール人出稼ぎ労働者が米国で働いている。

「週刊朝日」が、ハポン姓市民の暮らす町ルポを掲載


 「週刊朝日」最新号(6月25日発売)に、ルポルタージュ「支倉常長の“伝承者”たち」が掲載されている。

 400年前の1613年、仙台藩主・伊達政宗がローマ法王の元に派遣した支倉常長以下の遣欧使節団は、メキシコ、キューバを経て大西洋を横断し、スペイン・アンダルシーアの中心地セビージャに立ち寄った。

 その近郊にコリア・デル・リオという人口が現在3万人の町がある。そこには、日本を意味する「ハポン」という姓を持つ市民が650人もいる。支倉の部下たちが留まって、つくった家族が先祖だという。

 このハポン一族を取材したルポである。工藤律子が文章を書き、篠田有史が写真を撮った。人々と街は輝いている。

 「日西関係開始400周年」の今年、日本人が大勢やって来るという。7月横浜を出航するNGOピースボート第80回航海船「オーシャン・ドゥリーム」号も、「400周年」をテーマにしている。セビージャやコリア・デル・リオを訪れる選択旅行も組まれている。

3ヶ月後に横浜に帰着する前、宮城県月の浦に寄港する。支倉使節団が400年前に出航した古い港である。

2013年6月27日木曜日

「カルロス、エル・ジャッカル」にまた終身刑


 パリ高裁は6月26日、ベネズエラ人終身受刑囚イリチ・ラミーレス=サンチェス(IRS、63歳)=暗号名カルロス=に、新たに終身刑を言い渡した。1982~83年にフランスで起きた2件の旅客列車爆破事件(計死者11人、負傷者150人)の主犯として。

 IRSは、75年にパリで警官2人ら3人を殺害した罪で、97年末に終身刑を言い渡され、服役してきた。拘置所を含め既に19年獄中にあるが、新たな終身刑で、あと最低18年は刑務所生活を続けねばならない、と見られている。

 「ジャッカル」の渾名を持つIRSは、逃亡先のスーダンで94年に逮捕され、パリ中央刑務所に収監されてきた。  

2013年6月26日水曜日

ウィンパー著『アンデス登攀記』を読む


 英国人登山家エドゥワード・ウィンパー(1840~1911)の『アンデス登攀記』(1891、大貫良夫訳2004~05上下、岩波文庫)を読んだ。

ウィンパーが盟友ジャンアントワーヌ・カレルとともに、チンボラソ(6247m)、コトパクシ(5978m)をはじめエクアドールの8つの高峰に1880年登頂した時の記録である。

 山岳紀行・冒険文学と捉えて読んだが、面白かった。当時のエクアドールの政情、風俗、先住民の生き方・考え方などが、山よりも興味深かった。

 私はずいぶん前に、コトパクシを麓から仰いだことがある。「頂上に立ったら、さぞかし素晴らしい眺望が開けるだろう」と、叶わぬ願望が脳裏を過った。

 下巻の終わりの方に、高山病(ソロチェ)はなぜ起きるのか、という分析がある。高度ではなく気圧が下がること、つまり低圧が原因だ、と強調している。

 外部の気圧が下がると、体内のガスが膨張する。ガスは出口を求めて内圧を高め、血圧上昇を招く。激しい頭痛が起き、全身が不快感に包まれる。だが、外圧と内圧の均衡が回復すると、直ってしまう。

 ウィンパーの繊細な写実画が随所にちりばめられており、これも素晴らしい。マッターホルンの初登頂者であるウィンパーは、1871年に『アルプス登攀記』を出した。これも読まねばならなくなった。

コロンビアがNATOと情報交換協定を結ぶ


 コロンビアのフアン・ピンソン国防相は6月25日、ブリュッセルの北大西洋条約機構(OTAN/NATO)本部で、「テロリズム・麻薬取締情報交換協定」に調印した。

 同国のフアン・サントス大統領は先ごろ、「コロンビアは将来のOTAN加盟を視野に入れつつOTANと協定を結ぶ」と語っていた。この日、国防相は、OTAN加盟はない、と言明した。

 OTANと協定を結んだ国は、ラ米ではコロンビアが初めて。

エクアドールで放送内容を規制する「伝達法」発効


 エクアドールで6月25日、ラテ(ラジオ・テレビ)の放送内容を規制する伝達法(レイ・デ・コムニカシオン)が官報に記載され、発効した。国会で14日成立し、ラファエル・コレア大統領が21日署名していた。

 電波の割り当てを、共同体34%、公共33%、私営33%と規定している。従来は、私営がラジオ電波の85・5%、TV電波の71%を占有していた。

 番組内容の暴力、性、差別などを、メディア規制委員会(CRM)が規制する。TV放送内容の60%、ラジオ内容の50%は国産とする。

 外国産商業広告の放送は禁止された。視聴者50万人以上のメディアは、広告収入の5%を国産映画振興のため供出する。

 内外電波メディア界から激しい批判、非難が起きている。 

ラジオで、ブラジル「6月革命」を語る


昨夜(6月25日夜)、TBSラジオの「セッション22」という番組に22:45から1時間出演した。ブラジルの抗議行動が主題だった。 http://www.tbsradio.jp/ss954/podcast/
メキシコの若者は1968年に長期間、反政府闘争を闘い、メキシコ五輪開会式10日前の10月2日、トラテロルコ広場で政府軍に虐殺された。私は、その現場で取材した。

イスタンブールの若者は、五輪開催地誘致合戦のさなか、メキシコの若者が五輪開会を<人質>にとったように、同誘致可能性を<人質>として闘ってきた。

ブラジルの若者は、開催中のコンフェデレーション杯ブラジル大会と来年W杯ブラジル大会を<人質>として闘ってきた。

今回の20日間続いてきた抗議行動が実を結べば、後に「ブラジル6月革命」と呼ばれることになるだろう。これが昨夜の、私の結論だった。

2013年6月25日火曜日

ブラジル大統領が国民投票を提案


 ブラジルのジルマ・ルセフ大統領は6月24日、全国向け放送で、制憲議会開設の是非を問う国民投票実施を提案する、と発表した。6日以来20日間続いた政府批判の抗議行動を受けて、抜本的な政治改革をする以外に出口はないと判断した結果だ。

 大統領は政庁で、抗議行動の主要な組織者「自由通行=無賃乗車=運動」(MLP)代表団と会談し、次いで全国27州知事、26首都市長と会合した。その際、「街の声は経済界でなく市民が主要な決定者になるべきだと言っている」と報道陣に語っていた。

 1988年制定の現行憲法は、改憲は上下両院で5分の3の多数決で2度ずつ可決しないと不可、と規定しており、政府は憲法規定と絡む重要な改革を国会でしばしば阻まれてきた。

 大統領は、今回の抗議運動の最大の標的である「政治家らの腐敗」について、腐敗を重罪と捉え厳しく処罰する、と言明した。併せて、富裕層に有利過ぎる税制の改革、および運輸、保健、教育の3大公共サービス改革の4項目を打ち出した。

●●●伊高浩昭は、今25日夜22:30過ぎから、TBSラジオ「セッション22」で、ブラジル情勢について話します。
 

2013年6月24日月曜日

ウルグアイで堕胎法維持派が勝利


 ウルグアイで6月23日、堕胎法存廃を問う国民投票を実施するか否かを決める投票が実施され、同法廃止派が敗れた。

 国民投票実施請求には、有権者262万の25%(66万人弱)の賛成が必要だが、9%にも届かなかった。

 堕胎法実施後、毎月平均400人が中絶手術を受けている。選挙民の9割以上が支持していることが確認され、同法が社会に定着したことを示した。
 

キューバ革命の英雄フアン・アルメイダ司令官の肖像掲げらる


 キューバ革命の英雄フアン・アルメイダ革命司令官(1927~2009)の鉄製の肖像が6月22日、キューバ東部サンティアゴ市のアントニオ・マセオ革命広場に設置された壁面に掲げられた。ラミーロ・バルデス革命司令官らが立ち会った。

 彫刻家エンリケ・アビラの作で、高さ32m、幅20m、重さ15トン。夜間は照明で浮き彫りになる。アルメイダは、サンティアゴ郊外の「東部第3戦線」の司令官だった。

 笑顔の肖像で、「ここで降伏する者はいない」との言葉も添えられている。これは、グランマ上陸後間もない1956年12月、フィデル・カストロらのゲリラ部隊がアレグリーア・デ・ピーオで政府軍の待ち伏せ攻撃に遭い、壊滅に近い状態に陥った時、アルメイダが口にした言葉だ。

 一方、同市内のモンカーダ兵営跡では、旧政府陸軍の木造兵舎20棟の修復工事が進められている。キューバ革命の原点となった1953年7月26日の同兵営襲撃蜂起の60周年記念行事の準備の一環だ。アルメイダの肖像も60周年を機に掲げられた。

2013年6月23日日曜日

米FBIが、カルロス・フエンテスに査証拒否


 米国の連邦捜査局(FBI)は、メキシコの作家カルロス・フエンテス(1928~2012)を1960~80年代に、「長らく反逆勢力と関係を持つ、著名な共産党員作家」として、密告者を配し監視していた。このほど公開されたFBI文書で明らかになった。

 国務省はフエンテスによる査証請求を2度拒否した。だが、ある場合には、拒否したところ、フエンテスは影響力を行使してメキシコの公用旅券を取得し、メキシコ市の米大使館で外交査証の発給を勝ち取った。

 またある時は、フエンテスが米植民地プエルト・リコに行く際、査証をいったん拒否したが、米政府を批判する新聞報道が増えたため、急遽査証を出した。

2013年6月22日土曜日

ブラジル大統領が公共サービス向上で協約結ぶと発表


 ブラジルのジルマ(ヂウマ)・ルセフ大統領は6月21日、全国向けラジオ・テレビ放送で演説し、公共サービス向上のため「一大協約を結ぶ」と表明、市長、州知事、政府各部門の長に協力を呼び掛けた。このサービスには輸送機関、教育、保健などが含まれる。

 この種の改革はこれまで国会で反対され、実現しなかった。大統領は全土が危機に陥っている逆境を、国会反対派懐柔の好機と捉えた。

 大統領は演説で、平和デモを民主的意思表示の手段として再び讃えたが、暴力行為には断固反対すると強調した。

 20日には全国80都市で合計100万人が動員され、今回の一連の抗議行動で最大規模となった。各地で建造物破戒や略奪が起きた。

同日、大学生一人がデモ隊に突っ込んできた車に轢かれて死亡、街の清掃担当職員一人も催涙ガスの吸い過ぎによる心臓機能停止で死亡した。

動員をかけてきた「自由通行運動」(MPL)は、極右ファシストがデモ隊に紛れ込んで、テロや破壊活動をしている、と非難した。

来月下旬にはリオデジャネイロで開かれる「世界青年週間」にローマ法王も出席する予定。だがリオは今回、サンパウロと並んで抗議行動と破壊行為が最も目立った都市であり、政府は急遽、同週間に備えて、治安対策を練り始めた。  

2013年6月21日金曜日

沖縄の反オスプレイ闘争描く「標的の村」を観る


ドキュメンタリー映画「標的の村」(三上智恵監督、琉球朝日放送制作、91分)を試写会で観た。沖縄島東村高江集落の住民による、集落周辺に米軍のオスプレイ兵員輸送機離発着場(ヘリパッド)を建設しようとしていた防衛施設局員・土建業者職員・警察機動隊に対する5年間の闘争を描いたルポルタージュの力作だ。

政府権力に訴えられた住民たちの、那覇での裁判闘争も含まれる。住民にとっての真の敵は、住民と沖縄を犠牲の生贄にする日本政府だが、その姿は見えない。

生活者は喜怒哀楽の「怒と哀」を、日米安保最前線の軍事基地の入り口で爆発させる。日本政府の賓客である米兵たちは、にやにや笑って傍観する。だが珍しく、米兵が住民を基地内に引っ張りこもうとした場面が撮影され、この映画に含まれている。これは貴重な映像だ。

私は1970年代末に3年間、沖縄で基地問題を取材した。当時の取材相手や友人が何人か年老いて画面に登場する。沖縄への郷愁が一気に膨らみ、現在の現実の住民闘争と結びついた。昔も今も、沖縄人が政府と生活によって分断させられ、同胞同士がいがみ合い対峙し、時として肉弾戦を演じている。

理は住民にある。だから政府は無理を押し通すだけなのだ。 

8月10日(土)から、東京の「ポレポレ東中野」で公開される。 
 

「社会緊迫」のためブラジル大統領が来日を延期


 ブラジルのジルマ・ルセフ大統領は6月20日、社会状況が緊迫状態にあるとして、今月23~30日に予定されていた日本訪問を延期する、と発表した。

 公共輸送料金の値上げをめぐりサンパウロで10日抗議行動が始まったが、全国に波及し、17日にはリオデジャネイロをはじめ18都市で大規模な動員があり、リオ中心部では暴動に発展した。

 大統領は18日、後ろ盾のルーラ前大統領らと対応策を練り、19日サンパウロ州・市およびリオデジャネイロ州・市は料金値上げを撤回した。

 これで勢いを得た抗議デモは20日、80を超える都市に拡がり、緊張状態が増幅した。大統領は1週間の外遊は得策でないと判断し、訪日を延期した。

 抗議する市民は、生活料金を値上げして来年のサッカーW杯ブラジル大会に巨費を投じるとは許し難い、などと訴えている。

 同大会の予行練習を兼ねたサッカーの連盟連合(コンフェデラサウン)大会が15日、ブラジリアでの日本対ブラジル戦で開幕した。大統領は場内の激しい野次で、開会宣言をしばし阻まれた。

 世界中の眼がブラジルに集まっている時に全土に拡大した抗議デモは、ルセフ大統領にとって痛手であり、就任後最大の危機となった。支持率も初めて落ちた。

「新自由主義+社会政策」というルーラ政権から10年続いてきた労働者党政権の経済社会政策は見直しを迫られている。

言わば来年のW杯大会を<人質>にとった抗議運動は、夏季五輪開催地誘致可能性を<人質>にとったイスタンブールの反政府行動と共通するものがある。

2013年6月20日木曜日

国際司法裁がボリビアとチリに文書提出を命ず


 国際司法裁判所は6月19日、内陸国ボリビアが「海への出口」奪回を求めてチリに領海線再画定交渉を求めた件で、ボリビア政府に対し、来年4月17日に主張を文書で提出するよう命じた。

 チリ政府に対しては、反論書を2015年2月18日に提出するよう命じた。

LATINAが「五月広場の祖母たちの会」会長インタビュー掲載


 月刊誌「LATINA」7月号(本日6月20日発売)の伊高浩昭執筆記事は以下の通り。

「ラ米乱反射」連載第89回:◎孫を捜して35年、祖母たち率いるエステラ・デ・カルロット  殺戮者ホルヘ・ビデーラは死して故郷に帰れず

 亜国軍政に生後間もない孫たち500人を奪われた祖母たちが結成した「五月広場の祖母たちの会」の会長へのインタビューと、元軍政首班ビデーラの死を柱にした記事です。

書評:★計良光範著『アイヌ社会と外来宗教 降りてきた神々の様相』寿郎社

☆先ごろ、このブログでも短く紹介しました。仏教とキリスト教のアイヌ社会との関わりと影響を分析した極めて興味深い本です。

★西林万寿夫著『したたかな国キューバ シジョンは揺れても倒れない』アーバン・コネクションズ社 (この本の書評は「週刊金曜日」と「週刊読書人」にも書き分けました。)

2013年6月19日水曜日

「週刊読書人」が『したたかな国キューバ』の書評掲載


 6月14日付「週刊読書人」紙が、西林万寿夫著『したたかな国キューバ』の書評を掲載した。評者は伊高浩昭。

 この本には、「シジョンは揺れても倒れない」という副題が付いている。「シジョン」は揺り椅子のことだ。著者は、キューバ革命体制を揺り椅子に見立て、いろいろな問題があって揺れてはいるが倒れはしない、という結論に達したのだ。

 著者は、昨秋まで3年半ハバナに駐在した日本大使である。面白い本だ。

『ギル・スコット=ヘロン自伝』を読む


 米国のミュージシャン、ギル・スコット=ヘロン(1949~2011)の自伝(浅羽麗訳)を読んだ。

 自伝の書き方ないし語り方が「マルコムX伝」と似ている。二人の生き方は大きく異なるが、読み物としてはマルコムX伝の方がはるかに面白い。

 書評原稿を書いたため、ここでは細かく述べないが、ギルのような人物がいて、独特の生き方をしたという事実は知っておくべきだろう。

 ギルはスティーヴィー・ワンダー(1950年生まれ)の盟友で、本書は二人の関係から生まれたとされる。私には、ギルとボブ・マーリー(1945~81)の出会いが興味深かった。

2013年6月18日火曜日

ベネズエラ大統領が法王と「対話」で一致


 ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は6月17日、ヴァティカンでフランシスコ法王に謁見し、20分間「友好的に」会談した。

 法王庁発表によると、貧困、治安、麻薬、チャベス死後のVEN情勢、コロンビア和平交渉、VENでの教会の役割について話し合われた。

 教会の役割に関して双方は、国と教会の誠実で恒常的な対話が必要、という認識で一致した。

 大統領は会談後、ローマでの社会活動家たちの会合に招かれ、演説した。そのなかで、「ベネズエラ革命は、鋼鉄の司令官ウーゴ・チャベスの真の息子たちと人民が遂行している。全ての真の革命は、反革命に直面する」と述べた。

ジュリアン・アサンジ問題解決に向け作業グループ設置へ


エクアドールのリカルド・パティーニョ外相は6月17日ロンドンで、ウィリアム・ヘイグ英外相と会談し、ジュリアン・アサンジ氏の問題を解決するため、法律家らで構成する作業グループを設置することで合意した。

英外務省は声明で、「いかなる解決法も英法制に則らねばならない」と念を押した。

アサンジは、ロンドンのエクアドール大使館に去年6月19日から亡命している。1年になる機会を捉え、外相会談が開かれた。

国連委員会がプエルト・リコ独立を米国に促す決議採択


国連非植民地化特別委員会は6月17日、カリブ海の米植民地プエルト・リコ(PR)住民の民族自決と独立を希求する権利を確認し、PRをLAC(ラック=ラ米カリブ)の一員と認め、宗主国・米国にPR住民の権利実現を図る過程に入るよう促す決議案を可決した。

これは、米国併合支持票が比較多数だった昨年11月の住民投票結果を認めない、あるいは超越した決議である。

決議はまた、米政府によるPR人独立運動活動家への弾圧を糾弾し、政治囚の早期解放を求めている。

決議案はキューバ、ベネズエラ、ボリビア、エクアドール、ニカラグアが共同提案していた。この5カ国はいずれも、米州ボリバリアーナ同盟(ALBA)に加盟している。 

ブラジルで値上げとW杯巨額出費への抗議行動


 ブラジル各地で6月17日、政府への抗議デモが起き、計20万人が参加した。最近の公共輸送料金の値上げと、来年のサッカーW杯ブラジル大会の「巨額の出費」に抗議するためだった。

リオデジャネイロでは若者10万人が集結し、中心街に向けて行進した。抗議は市議会に向けられたが、一部暴徒が議会建物に侵入を試み、火炎瓶を投げ、付近の商店が略奪された。警察機動隊と衝突したが、警官60人が議会内に避難した。

ブラジリア、サンパウロ、ポルトアレーグレ、ベロオリゾンテでもデモがあった。各地で負傷者や逮捕者が出ている。

15日ブラジリアでサッカー・コンフェデラサウン(地域連合)杯争奪戦が日本・ブラジル戦で始まったが、これに先立つ開会式で、登場したジルマ・ルセフ大統領はしばらく野次られ、話ができなかった。

大統領は17日の抗議行動について、「平和デモは正当であり、民主主義そのものだ」と述べ、事態を冷静に受け止めている。

それにしても、ブラジル人にとって「宗教」とも言えるフッチボル(サッカー)のW杯大会自国開催を批判する言動が現れたのは珍しい。それは、「サッカーよりも生活」と考える市民が少なくないことを示している。

2013年6月16日日曜日

ベネズエラ政府が銃器規制に本腰の構え


 ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は6月15日、「武器解体・武器弾薬規制法」に署名した。

 激発する凶悪犯罪への対応策の一環。

2013年6月14日金曜日

メネム元アルゼンチン大統領に禁錮7年の実刑判決


 亜国高裁は6月13日、カルロス・メネム元大統領(82)に対し、武器弾薬密輸事件の「共犯」として禁錮7年の実刑判決を言い渡した。メネムは上院議員であるため無処罰特権を持つが、法廷は国会に議員資格を剥奪するよう要請した。

 事件は、メネムが政権にあった1990年代に起きた。メネムは、当時の国防相、軍部、軍兵器製造部門幹部らと共謀し、亜国製武器弾薬を91年、および93~95年に貨物船で7回クロアティアに輸送した。表向きは「ベネズエラへの輸出」とし、偽っていた。国連は、ユーゴスラヴィア内戦の当事国クロアティアへの武器禁輸を発動していた。

 また95年には、ペルーとの国境紛争さなかのエクアドールに「パナマへの輸出」偽って、輸送機で3回武器を運んだ。当時、亜国はこの紛争の和平調停国であり、一方の紛争当事国への武器輸出を禁止されていた。事件は、亜国の外交上の立場を深く傷つけた。

 武器密輸に関する裁判は、95年にリカルド・モネル弁護士が告訴して始まった。一審では被告全員が無罪となったが、今年3月、無罪判決が破棄され、裁判が再開された。

 メネムは、高血圧など健康上の理由で、この日の判決公判を欠席した。最高裁への上告は可能。メネムは、絶対的権限を持つ大統領として「主犯」であったにも拘わらず「共犯」となった。この点に疑問の声が出ている。

 また、密輸に直接関与した元陸軍大佐に禁錮8年、元国防相に7年、他の主要な4被告に5年半から5年の禁固刑が言い渡された。

2013年6月13日木曜日

キューバ野球が「カリブシリーズ」に復帰


 野球大国キューバの「カリブシリーズ」復帰が611日決まった。カリブ海沿岸のキューバ、ドミニカ共和国(RD)、ベネズエラ、メキシコおよび米領プエルト・リコが1949年、各国リーグ優勝チームによるカリブ選手権大会として結成したが、キューバは革命後の60年、シリーズに参加したのち脱退した。

 69年に再開されたが、米国と厳しく対峙していたキューバは復帰しなかった。キューバは49~60年に7回優勝しており、その不在はシリーズの意味を半減させていた。

 キューバは来年2月1~7日、ベネズエラのマルガリータ島で開かれるシリーズに54年ぶりに出場する。

 カリブ沿岸ではニカラグア、パナマ、コロンビアでも野球が行われている。次にシリーズに参加する可能性があるのは、パナマと見られている。

ベネズエラ選管が全票数え直し、マドゥーロ当選を確認


 ベネズエラ国家選挙理事会(CNE)のティビサイ・ルセーナ議長は6月11日記者会見し、大統領選挙の開票結果の確認作業は8日ほぼ100%済み、有権者の意思に忠実な結果(現大統領ニコラース・マドゥーロ当選)が出た、と強調した。

 僅差で敗れた前野党候補エンリケ・カプリレス(ミランダ州知事)は、「選挙民を愚弄するもの」と、確認結果を認めず、非難した。

 これに対しルセーナは、カプリレスの申請に基づき、1500万人による電子投票と投票確認用紙を照合する検証作業をしたのに、それを認めないとはどういうことか、と批判した。

 カプリレスは、頼みの米政府が5日、ケリー国務長官とハウアVEN外相の関係改善会談実施を通じてマドゥーロVEN政権を事実上承認したことで、打撃を受けた。

2013年6月12日水曜日

「無」に帰した なだいなだ


 なだいなだ(堀内秀)が6月6日死んだ。私の学生時代、自由な言論を縦横に展開していた「進歩的知識人」のひとりだった。氏の書いた文章をいろいろと読んだ。

 私が関心を持ったのは、この筆名だ。なだいなだ=ナダ・イ・ナダ=nada y nada

 何と、「無、そして無」という意味のスペイン語ではないか。第2外国語で西語を学んでいたため、すぐにわかった。

 このようなニヒリズムの語句を尊ぶ書き手とは、いったいどんな人物なのだろうか。ここから関心が始まった。

 83歳で「無」に帰した なだいなだ は、その文章を通じて懐かしい人だった。あと当時の「進歩的知識人」は、何人残っているのか。青春の炎は細くなっていくばかりだ。  

尖閣「棚上げ」問題に思う


 日中間での尖閣諸島領有権「棚上げ」に関する野中広務発言が波紋を投げかけている。安倍政権は「棚上げ」を否定した。自民党政権にとって都合が悪いからだろう。

 「日中国交正常化」は1972年になされた。その鍵となったのは、田中角栄首相と周恩来首相との北京での会談だった。その会談で「棚上げ」合意があったか否かが問題になっているのだ。

 私は、70年代半ばラ米から日本に戻り、通信社の那覇支局に行った。約3年間、沖縄問題を取材したのだが、中国漁船が魚釣島を執拗に包囲する事件が起きた。私は海上保安庁の巡視船で現地を取材した。[当時の状況は、拙著『沖縄アイデンティティー』(マルジュ社)に詳しい。]

 そのころ私は那覇市で、日本のある省庁の高官にインタビューした。中国漁船の「尖閣出動」の話になったとき、その高官は次のように話した。

 「田中首相は突然、周首相に、尖閣問題を話し合いましょう、と切り出した。すると周は待ってましたとばかり、その問題は後で話し合いましょう、と応じた。結局そうなった」。これが、「棚上げ」の瞬間だった、という。

 同高官は、「日本は尖閣諸島を実効支配しているのだから、領有権問題を絶対に切り出してはならなかった。短気な田中は、ゆったりと構える周の罠にまんまとはまった。田中は売国奴になった」と、苦々しそうに語った。

 この「事実」は、当時の日本の多くの高官が把握していたはずである。日中交渉取材に携わった当時の政治記者や外信記者も知っているだろう。「売国奴」呼ばわりは不要だが、事実の検証は怠ってはならず、通信社や新聞社は当時の取材記録を調べて事実関係を明らかにすべきだろう。

 全体主義国家とは異なる民主制度が曲がりなりにも機能している国の真の強さは、このような検証が可能なところにあるのだから。

 安倍政権は「過去隠し」、「歴史改竄」で、右翼ないし極右と見なされ、日本内外で極めて厳しく批判されてきた。ワシントンポスト紙は社説で、「安倍晋三の歴史評価への無能力」を叩いた(月刊誌「世界」7月号「世界の潮」参照)。国際世論は、日本が全体主義の方向に再び舵を切ろうとしているのではないか、と懸念し警戒しているのだ。

 
 

2013年6月11日火曜日

「世界」誌が、スペイン市民の変革運動ルポを掲載


 月刊誌「世界」7月号(6月8日刊行、岩波書店)に、「スペイン 行動する市民が築く民主主義」という、優れて興味深いルポルタージュが載っている。文・工藤律子、写真・篠田有史のおなじみの二人の最新の仕事だ。

 2011年の5月15日(日本では沖縄施政権返還記念日だが)、マドリーの中心部をはじめ全国各地で、効力をほぼ失った資本主義政治・経済体制を突き上げる若者たちの一大抗議運動が展開された。全国で600~850万人が参加した。これを「15M」(5月15日決起)と呼ぶ。

 工藤は「15Mはスペイン人に新しい政治文化をもたらし、人々の発想を変えた」と指摘する。二人は毎年現地で取材しているが、3回目の今年の「15M」は「怒りから反乱へ」というスローガンを掲げていたという。

 記事は、予算削減で悪化する公共教育に異議を唱える運動「緑の潮流」、質の低下を招く医療機関民営化に反対する運動「白い潮流」、住宅ローン被害者を救う団体「PAH」、貨幣を介在させない相互扶助制度「時の銀行」などの活動を紹介する。

 すべては、金銭的豊かさでなく、真に豊かに生きる「ビビール・ビエン」という考え方に裏打ちされている。記事に登場する人々は、弱肉強食の新自由主義にまで堕落した資本制に代わる、参加型民主主義実現を通じ、市民意思で富を配分する政治・経済形態を志向している。

 すなわち、「よりよいもう一つの世界」の構築を志すアルテルムンディズモである。

 記事は日本人に、有権者意思とかけ離れた政治家との決別を訴えるが、多数派有権者の優先課題を明確にして政治家に突きつけるくらいの行動がとれないものか、ともどかしがる。

 因みに「世界」本号には、3月に死去したベネズエラ大統領ウーゴ・チャベスの半生を綴る、イグナシオ・ラモネの「一人の革命家の道のり」(坪井善明訳)も掲載されている。ラモネはアルテルムンディズモの旗頭の一人である。チャベスも、それを理想としていた。

エクアドール外相がジュリアン・アサンジ氏に面会へ


 エクアドールのリカルド・パティーニョ外相は6月10日、ロンドンで16日ジュリアン・アサンジ氏に、17日ウィリアム・ヘイグ英外相に、それぞれ会うと発表した。

 「ウィキリークス」創始者アサンジは去年6月19日から、逮捕と身柄引渡を避けるため、在英エクアドール大使館に亡命している。

 パティーニョは、館内にこもりっきりのアサンジに「陽光ぐらいとらせてやってほしい」と、英外相に求めるという。

2013年6月10日月曜日

南米諸国が「南部通貨基金」構想で協議へ


 南米12カ国で構成する南米諸国連合(ウナスール)は、「南部通貨基金」(FMS)を創設する構想を持つ。3月死去したウーゴ・チャベスVEN大統領が、「資本制と新自由主義の本山」国際通貨基金(IMF)に対抗する機関として打ち出していた構想である。

 ウナスール本部のあるエクアドールのリカルド・パティーニョ外相は6月9日、カラカスで12日開かれる第1回南部銀行加盟国蔵相会議でFMS構想を話し合う、と明らかにした。

 南部銀行(バンコ・デル・スール)もチャベスが発案した。VEN、亜国、伯国、ウルグアイ、パラグアイ、ボリビア、エクアドールの7カ国が加盟している。いずれも南部共同市場(メルコスール)か、米州ボリバリアーナ同盟(ALBA)の加盟国である。
 
 
 南米の他の5カ国(チリ、ペルー、コロンビア、ガイアナ、スリナム)のFMS構想に関する立場は明らかではない。

2013年6月9日日曜日

ジョージ・オーウェルの『パリ・ロンドン放浪記』を読む


 ジョージ・オーウェルの『パリ・ロンドン放浪記』(1933年、岩波文庫1989年、小野寺健訳)を読んだ。強烈に面白い。80年の時代の隔たりはあるが、実際に今、両都市に行ったとしても、このルポルタージュ物語を読むほどの喜びは得られないだろう。

 趣は異なるが、かすかに、ヘミングウェイの『移動祝祭日』を連想した。

 オーウェルは、本書の出版の3年後に勃発したスペイン内戦に<出兵>した。その体験から生まれた『カタロニア讃歌』は、私にとってバイブルのような一冊となっている。

 部屋が熱帯の温室のようになった日曜日、本書のお蔭で、心頭を滅却すれば火もまた涼しだった。

2013年6月8日土曜日

「アンティグア宣言」採択し、米州諸国機構外相会議終了


 グアテマラのアンティグア市で6月4~6日、米州諸国機構(OEA、OAS)の第43回総会(外相会議)が開かれた。キューバを除く加盟34カ国の26外相、3副外相、5OEA大使が出席した。

 会議は「アンティグア宣言」を6日採択した。麻薬問題を討議する新しい場の設定と麻薬取締強化が柱だ。「麻薬合法化」さえ口にするグアテマラ大統領オットー・ペレス=モリーナの意向がある程度反映された。

 OEAは来年特別総会を開き、2016~20年の麻薬戦略を策定することになった。

 会議は5日、「米州反人種差別・不寛容協定」を採択した。マヤ先住民とマプーチェ先住民をそれぞれ弾圧しているグアテマラとチリが署名を留保した。

 ロビー外交では、エリーアス・ハウアVEN外相とジョン・ケリー米国務長官の会談が脚光を浴びた。双方は、大使級外交関係復活を目指し交渉を開始することを決めた。

 ハウアVEN外相と、マリーア・オルギンCOL外相との会談も注目された。サントスCOL大統領がVEN野党指導者と会談したことや、同大統領がOTAN(NATO)接近策を打ち出したことで緊張していた両国関係は、近い将来、首脳会談を開く方向でひとまず落ち着きを取り戻しつつある。