2013年4月30日火曜日

モラレス・ボリビア大統領の出馬は可能、と裁判所が判断


 ボリビア憲法裁判所は4月29日、エボ・モラレス大統領は来年12月の次期大統領選挙に出馬可能、との判断を示した。政権党「社会主義運動」(MAS=マス)は既にエボ擁立を決めている。

 エボは、初当選後の最初の任期を1年短縮して06~10年務め、その間09年に現行憲法を制定した。新憲法は大統領の連続2選を認めている。裁判所は、現在の任期(10~15年)は新憲法下では1期目であり、新任期(15~20年)の担当は許されると解釈した。

 問題は、エボ自身が08年、憲法制定への支持取り付けのため「新憲法下での2期目は目指さない」と公約していること。エボ再出馬の可能性が出たことで、野党側は反発し、異議を唱えている。

 隣国ペルーのアルベルト・フジモリ元大統領は、同様の解釈で3選を果たしたが、半年も持たずに辞任(公式には解任)に追い込まれた。

 アイマラ人のエボは、人口の圧倒的多数派である先住民の支持を得ており、人気も依然高い。出馬すれば当選すると見られている。

2013年4月29日月曜日

「小さな祖国沖縄、大きな祖国アジア・太平洋」


 安倍首相は、祖父で戦犯だった故・岸信介元首相を敬愛している。日本本土は1952年4月28日、サンフランシスコ講和条約が発効して独立を取り戻したが、沖縄などは米国施政権下に置かれ続けた。岸信介は条約発効で公職追放を解除された。安倍が昨日、「主権回復・国際社会復帰記念式典」を強引に開いた理由の一端が頷けるというものだ。

 講和条約は日米安保条約と表裏一体だった。切り離され切り捨てられた沖縄は、引き続き米軍支配下に置かれ、1972年5月15日の施政権返還(日本復帰)後も安保条約を最前線で支えさせられてきた。「主権回復」式典にしらけ怒るのは当然のことだ。

 「国際社会復帰」の言葉も空々しい。日本軍が侵略戦争をした結果、沖縄を奪われ、広島・長崎に原爆を投下された。このような明白な歴史的事実があるにも拘わらず、安倍は国会で「侵略の定義は定まっていない」と妄言を吐いて憚らない。侵略されたアジア諸国は怒り、日本を降伏させた米国も、あきれ返りつつ困っている。

 南米北部アンデス諸国独立の英雄シモン・ボリーバル(1783~1830、ベネズエラ人)は、「小さな祖国ベネズエラ、大きな祖国ラテンアメリカ」という、ラ米統合主義の思想を打ち出した。3月に死去したウーゴ・チャベス大統領は、このボリーバル思想に立って、ラ米・カリブ33カ国の機構「ラ米・カリブ諸国共同体」(CELAC=セラック)を2011年12月結成した。

 日本がアジアで中朝などとの対立を超克するには、狭量な「靖国主義」や、寄らば大樹の陰主義の「日米安保国体論」などにしがみつくのをやめることだ。「小さな祖国日本、大きな祖国アジア・太平洋」という、ボリーバル思想のような遠大な理想主義を掲げ、その実現に尽力しなければ、袋小路状態の歴史的状況は打開できない。

 日本が「美しい国」などという時代錯誤の国家右翼主義に固執しつつ、沖縄をないがしろにし続ければ、沖縄が日本を置き去りにして「小さな祖国沖縄、大きな祖国アジア・太平洋」という方向に将来進んで行かないともかぎらない。沖縄より小さな独立国は世界にいくらでもある。いまは日本と沖縄にとってまさに、歴史的正念場である。  

2013年4月28日日曜日

ベネズエラ大統領がキューバとの協力関係継続を強調


 ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は就任後の初外遊として4月26日夜、キューバを訪問した。27日、ハバナで前日から開催されていた第13回両国政府間合同委員会の閉会式で演説し、「ベネズエラはウーゴ・チャベス司令官の遺志を継いで、従来通りキューバと協働していく。このことをラ米に告知する」と強調した。

 大統領はラウール・カストロ国家評議会議長と会談したほか、フィデル・カストロ前議長と5時間会談した。フィデルとの長時間の会談は、ベネズエラによる経済支援継続の公式発表に対するキューバ指導部の高い評価の表れと受け止めることができる。

ハイチでのカリブ諸国連合首脳会議が宣言採択し閉会


 ハイチのペチオンヴィル市で4月26日、第5回カリブ諸国連合(AEC/ACS)首脳会議が「AEC構想の再活性化-より強く団結したカリブ地域のために」を標語に開催された。

 ハイチのミシェル・マルテリ大統領(会議議長)は開会演説で、「大カリブ地域が、加盟国とその多くの人民に影響を及ぼす諸問題を一致して考える好機だ」と会議の意義を強調し、国際社会におけるカリブ地域の存在を強化する必要を指摘した。

 会議は同日、40項目の「ペチオンヴィル宣言」を採択して閉会した。宣言は、①3年前に大地震に見舞われたハイチの復興を引き続き支援②天変地異への救援態勢を強化③域内の文化的認同(イデンティダー)を強化④テロや麻薬密輸などに関する(米国による)一方的評価や特定の国の糾弾を拒否⑤米国によるキューバ経済封鎖の解除の必要⑥大カリブを愛した故ウーゴ・チャベスVEN大統領の貢献を讃え哀悼の意を表す-などが盛り込まれている。

 宣言はまた、2月実施のグレナダとバルバドスの総選挙、および4月実施のベネズエラとパラグアイの大統領選挙を祝福した。

 AECは1997年結成され、24ヵ国が加盟、11地域が準加盟している。他にエル・サルバドール、チリなどがオブザーバーになっている。

 今会議にはハイチの他にラ・ドミニカーナ(ドミニカ共和国)、グアテマラ、オンドゥーラス(ホンジュラス)、コロンビア、メキシコ、チリの大統領が出席した。キューバからはミゲル・ディアスカネル第1副議長、ベネズエラからはエリーアス・ハウア外相が出席した。

2013年4月26日金曜日

ボリビアが「海への出口」問題で提訴


ボリビア政府は4月24日、国際司法裁判所に「海への出口」問題で提訴した。「チリ政府は、合意に至るための交渉に応じる義務がある」との判断を仰ぐため。

ボリビアは1879年の「太平洋戦争」でチリに敗れ、広大な海岸領土を失った。現在の両国国境線は1904年の「平和友好条約」で定められた。だがボリビアは異議を唱え、「海への回廊」の領土と、その先の領海の獲得と主権を求め続けてきた。海岸領土回復は、ボリビア人の悲願となっている。

1975年に当時のピノチェー軍政大統領は、ボリビアのバンセル軍政大統領と会談し、チリ北端のアリーカ市の「北側」の回廊を提示した。だがバンセルは、地理的位置を示さなかった。

一方、チリのセバスティアン・ピニェーラ大統領は24日、ボリビアの提訴を受けて、「チリが主権を譲渡すことはない」と語った。 

「米国人工作員を逮捕」と、ベネズエラ内相が発表


 ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は4月25日、社会不安定化工作に関わったビデオ映像証拠のある者たちを即時逮捕するよう内相に命じた、と述べた。

 これを受けてミゲル・ロドリゲス内相は同日、マイケティーア国際空港から24日出国しようとしていたミシガン州生まれの米国人ティモシー・トゥレイシー容疑者(35歳前後)を諜報工作員として逮捕した、と発表した。

同人は、外国のNGOから資金を得てベネズエラ国内で活動していた、という。この逮捕に関し米国務省は25日、さらなる情報を待つ、とだけ言及した。

警察は22日カラカス市内で実施した家宅捜査で、不安定化工作の証拠となるビデオ500本を押収しており、映像を分析しつつ捜査を進めている、という。

今月14日実施の大統領選挙でマドゥーロが辛勝した直後、対立候補エンリケ・カプリレスが敗北を認めず「選挙不正」を叫んだことから、カプリレス派の若者らが全国各地で破壊活動を続け、チャベス派9人が死亡、78人が負傷した。このほか、建物や乗用車などにかなりの被害が出ている。

内相は、ボリバリアーノ諜報局(SEBIN=セビン)は、故ウーゴ・チャベス大統領が4選を果たした昨年10月以降、不安定化工作を監視し捜査していた、と明らかにした。工作員らは、工作活動を「4月コネクシオン」と呼んでいた、という。

2013年4月25日木曜日

アルゼンチンとウルグアイがW杯2030年大会共同開催で立候補へ


 亜国とウルグアイの観光・スポーツ当局者とサッカー協会長は4月24日ブエノスアイレスの亜国観光省で会合し、2030年W杯大会共同開催を目指して、合同招致委員会を設置した。モーリシャスで7月開かれるFIFA総会で正式に立候補する。

 亜国スポーツ当局者は、「1978年の亜国大会は残念ながら、血塗られた軍事政権下で催された。両国とも民主政権下にある今日、共同開催するに値すると思う」と述べた。

 100年前の1930年モンテビデオで第1回W杯大会が開かれ、決勝戦でウルグアイと亜国が戦い、ウルグアイが優勝した。その2年前の28年の五輪アムステルダム大会の決勝戦でも両国が顔を合わせ、やはりウルグアイが優勝している。

 78年大会では、亜国が強力なペルーに実力を発揮しないよう密かに頼んだとされ、結果的に亜国が優勝している。おびただしい数の人道犯罪に手を染めていた当時のビデラ将軍の軍政が、国威発揚のため、米国のキッシンジャーらを仲介者として画策し、勝ち星を譲り受けた、とされている。  

2013年4月24日水曜日

舟越美夏著『人はなぜ人を殺したのか』を読む


 共同通信の舟越美夏は優秀な記者である。「集団の一員として行動してはいけない。集団を信じるな」-戦中派の父の教えは、「集団の狂気」が渦巻いたポル・ポト時代のカンボジアの悲劇への取材の眼を開かせた。

 2001年にプノンペン支局に赴任した著者は、ヌオン・チア、イエン・サリ、キュー・サムファンらポト派幹部たちに次々にインタビューする。それをまとめたのが本書(毎日新聞社刊)だ。

 ペルー共産党分派の農村ゲリラ「センデロ・ルミノソ(輝く道)」の最高指導者アビマエル・グスマンは、毛沢東思想とポル・ポト派の影響を受けていた。この本を読むと、その意味がよく分かる。

 これ以上は書くまい。多くの人に読んでほしい。

2013年4月22日月曜日

パラグアイ大統領選挙でコロラード党の政権復帰決まる


 パラグアイ最高選挙裁判所は4月21日夜、同日実施の大統領選挙で、共和国民協会(ANR=通称コロラード党、右翼)のオラシオ・カルテス候補(57)が得票率4591%で当選した、と発表した。カルテスは815日就任する。任期は5年。

 ANR1947~2008年、連続61年間政権党だった。その間、54~89年は故アルフレド・ストロエスネル将軍の独裁時代だった。89年の軍事クーデターで将軍が追放されると、政治は流動的な時代に入り、20年目の08年、フェルナンド・ルーゴ大統領の中道左翼政権が誕生した。これは、変革を求める有権者の願いの表れだった。

 ANRをはじめとする右翼・保守勢力は財界、大地主、外資などと謀って昨年6月、ルーゴ大統領を国会で弾劾した。「解放の神学」派のカトリック司教だったルーゴは、国会内少数派であることなどから穏健な改革を進めていたが、旧支配勢力や外資は気に入らず、地方で起きた不可解な農民虐殺事件を機に弾劾に踏み切った。

 熟考の上、編み出された「新手のクーデター」だった。背後で、首都アスンシオンの大使館を通じて米政府が関与したとの分析もある。

 カルテスは10代を米国で過ごし、帰国後、両替商で成功し銀行を起こした。その傘下に25の企業をもつ。この国きっての富豪の一人だ。

 だが米国やブラジルの麻薬取締当局の調べで、カルテスが自分の銀行などを通じて麻薬資金を洗浄した疑いが濃厚なことが明らかにされている。カルテスはANR党員歴が4年弱だが、潤沢な資金を使って党人派を押しのけ、大統領候補にのし上がった。

 副大統領でありながらルーゴ弾劾に関わり暫定大統領になったフェデリコ・フランコの与党「真正急進自由党(PLRA)」=保守=は、エフライーン・アレーグレ候補(50)を立てたが、得票率3584%で及ばなかった。

 左翼陣営はメディアから差別されたうえ、都市部の穏健派と、ルーゴの流れを汲む農村部の急進派に分裂し、力を発揮できなかった。

 国会クーデター後、パラグアイは南部共同市場(メルコスール)と南米諸国連合(ウナスール)から加盟資格停止処分を受けてきた。近い将来、両機構に復帰する公算が大きい。 

 ANRの政権復帰は、昨年のメキシコの制度的革命党(PRI)と日本の自民党の復帰と並べられ注目されている。3党は、過去に長期間政権党だったことと、右翼・保守体質の巨大政党という点で共通する。

キューバ映画界を率いたアルフレド・ゲバラ死去


 キューバの映画界を1959年元日の革命後、長期間牽引したアルフレド・ゲバラが4月19日死去した。87歳だった。

 ハバナ大学時代から共産主義者で、学生政治運動を通じてフィデル・カストロと知己になった。革命後、革命教育と新しい文化創設における映画の重要性に着目し、逸早くキューバ映画芸術産業庁(ICAIC=イカイク)を創設、長官を長らく務めた。

 「ラ米の新しい映画」製作運動を推進し、79年に国際ハバナ映画祭を設立した。映画祭は今日まで続けられている。  

2013年4月21日日曜日

ウルグアイ・ルポ-月刊LATINA5月号掲載の伊高浩昭執筆記事

 
 月刊「LATINA」5月号(4月20日発行)掲載の伊高浩昭執筆記事は、次の通りです。

「ラ米乱反射」連載第87回 「人種差別と闘うアフリカ系ウルグアイ人――黒人女性暴行事件で実態が脚光浴びる」(1月末の現地取材に基づくインタビュー構成ルポ)

「海外ニュース」ベネズエラ大統領選挙緊急分析 「辛勝でマドゥーロ政権の行く手に暗雲」

 書評 『共産主義の興亡』アーチー・ブラウン著 下斗米伸夫監訳、中央公論新社、『岩波ホールと<映画の仲間>』高野悦子著 岩波書店。

2013年4月20日土曜日

ベネズエラのニコラース・マドゥーロ新大統領が就任


 ベネズエラのニコラース・マドゥーロ新大統領(50)が4月19日就任した。国会での就任式でマドゥーロは、ディオスダード・カベージョ国会議長に向かって、「神と解放者シモン・ボリーバルの思い出と、ウーゴ・チャベス司令官の永遠の思い出に宣誓する」と、大統領職務を全うすることを誓った。

 大統領肩章は、チャベスの娘マリーア=ガブリエーラとカベージョがマドゥーロの肩にかけた。

 政権側国会議員97人、全閣僚、支持者代表、家族らとともに、外国要人が出席した。ラ米からは、この日未明までリマでの南米諸国連合(ウナスール)首脳会議に出席していた亜国、ブラジル、ウルグアイ、ボリビア、ペルー、コロンビアの大統領のほか、キューバ議長、ニカラグア、ホンジュラス、ハイチ、ラ・ドミニカーナ(ドミニカ共和国)の大統領が出席した。

 イランのマハムード・アハマディネジャド大統領、中国、ロシアの要人らも出席した。

 国会周辺の通りは、赤いシャツを着たチャビスタ数十万人が埋め尽くした。野党議員は68人全員がボイコットし、カプリレス支持派は首都各地でフライパンを叩くなどして気勢を挙げた。

 この日は、1810年に独立戦争開始を告げた「独立宣言の203周年記念日。新大統領は、国軍行進の先頭に立った。チャベス無き後の「チャベス派大統領」の時代が始まった。

2013年4月19日金曜日

南米首脳会議がマドゥーロ当選を祝福


 南米諸国連合(ウナスール)は4月18日夜から19日未明にかけて、リマのペルー大統領政庁で特別首脳会議を開き、ベネズエラ情勢について協議した。

 議長国ペルーのオヤンタ・ウマーラ大統領は、①14日に大統領選挙を実施したベネズエラ人民を称賛②ニコラース・マドゥーロ当選を祝福③ベネズエラ全当事者にCNE発表の選挙結果尊重を呼び掛け④CNEの全票検証決定を支持⑤暴力停止を呼びかけ、ウナスール委員会が選挙後の暴力事件を調査――の5項目の共同声明を発表した。これでウナスールは、正式にマドゥーロ当選を承認したことになる。

 「CNEの全票検証決定」とは、カプリレス陣営の野党連合が17日、CNEに対し検証を申し入れたのを受けて、CNEが18日「暴力事件を鎮めるため」として決定したもの。

 首脳会議にはペルー、亜国、ブラジル、ウルグアイ、チリ、ボリビア、コロンビアの大統領、マドゥーロVEN次期大統領、エクアドール次期副大統領らが出席した。スリナムとガイアナの首脳は欠席した。パラグアイは加盟資格停止処分中で不参加。

 マドゥーロは19日の就任式出席準備のため、直ちに帰国の途に就いた。他の首脳たちは就任式前にカラカス入りする予定。

【ベネズエラの選挙では、電子投票する際、証拠となる紙の票が投票機から出、投票箱に入れられる。選挙法では投票総数の54%の紙票と電子投票の結果を照合すればよいことになっているが、カプリレス派が全票検証を要求したため、CNEは残る46%の検証に18日着手することにした。1日平均400投票箱を検証し、約1カ月かかる見通し。】

2013年4月18日木曜日

映画「そしてAKIKOは...~あるダンサーの肖像~」を観る


 羽田澄子監督(87)の映画「そしてAKIKOは。。。~あるダンサーの肖像~」(2012)を東京・新橋での試写会で観た。モダンダンスの踊り手アキコ・カンダ(神田正子、1935~2011)の舞踊家、芸術家としての半生と、晩年の死闘と死に様を描いた作品だ。同監督作品「AKIKO-あるダンサーの肖像」(1985)の<復刻版的続編>である。

 6月1日から東京・神田神保町の岩波ホールで公開される。120分のドキュメンタリーだ。特に踊りの映像が美しい。多くの人々に観てもらいたい優れた作品だ。

 最後の舞台で、末期がんに唇まで侵され痩せ細った姿で踊る様は鬼気迫る。9月23日という命日は、パブロ・ネルーダと同じだ。

 アキコは20代初め、大学を中退して渡米、ニューヨークのマーサ・グラハムに師事した。早々と頭角を現し5年後に帰国する。活躍しつつも、「マーサと違うもの、自分らしさ、独自性をいかに出すか」で苦闘した。ドキュメンタリーならではの述懐場面も味わい深い。

南米諸国連合がベネズエラ情勢巡り緊急首脳会議開催


 南米諸国連合(ウナスール)は4月18日、リマで特別首脳会議を開き、大統領選挙直後のベネズエラ情勢について協議する。輪番制議長のペルー大統領オヤンタ・ウマーラが緊急招集した。

 ウナスールは12カ国で構成されるが、パラグアイは昨年6月の国会クーデターで合憲大統領を追放したため、資格停止処分中。

 今会議には、ペルーのほかにウルグアイ(メルコスール輪番制議長国)、アルゼンチン、ブラジル、コロンビアなどが既に出席を表明している。

 リマに集結した首脳たちは、19日カラカスでのニコラース・マドゥーロVEN新大統領就任式に結束して臨む方針。

 狙いは、マドゥーロの対立候補だった財界・右翼陣営のエンリケ・カプリレスが敗北を認めないことと、これを受けてカプリレス派が全国で暴動、放火、殺傷事件などを続けているのを憂慮し、新政権を断固支持する南米の立場を強調するため。

 米政府、米州諸国機構(OEA)などはカプリレスが求める「全票数え直し」の要求を支持しているが、これをベネズエラ政府は内政干渉と反駁している。またエクアドール外務省は、「オフサイド」と批判している。

 ベネズエラ当局の集計では、カプリレス派の犯行で、既に死者7人、負傷者五十数人が出ている。最高裁は、75件で容疑者を逮捕しており訴訟手続き中、と発表している。 

立教大学ラテンアメリカ研究所「所報」で映画「キューバの恋人」分析


 立教大学ラテンアメリカ研究所(ラ米研)の2012年度「所報」(第41号)がこのほど刊行された。マヤ暦、ラ米音楽、ベネズエラ音楽、キューバ映画、ユダヤ系メキシコ人女性詩人の詩集、メキシコの民芸品、メキシコのチアパス大地大学がテーマで、8つの文章が掲載されている。

 私は、昨年5~6月に池袋キャンパスで催されたキューバ映画上映会に関与した立場から、「キューバとすれ違った『キューバの恋人』」という評論を書いた。

 この上映会を推進した寺島佐知子さんは、「『アキラの恋人』から見た『キューバの恋人』」という興味深い分析記事を書いている。

 一本の映画をめぐって作風、時代背景、政治的事情などを考える<謎解き>を寺島さんとともに試みたのだが、私にとっては珍しい企画だった。

 私の講座の受講生だった森田沙織さんは、「進化するメキシコ民芸品――新たなものづくりとサービス、そこから見えてくるメキシコ社会」を載せている。

 多くのラ米学徒やラ米好きに本号を読んでほしいものだ。

2013年4月16日火曜日

N・マドゥーロVEN新大統領は19日就任へ


 ベネズエラ国家選挙理事会(CNE)は4月15日、ニコラース・マドゥーロ暫定大統領を次期大統領と認定した。マドゥーロは19日、国会での就任式に臨む。

 前日14日の選挙でのマドゥーロの勝利は得票差2ポイント以下の、薄氷を踏む思いの危ういものだった。原因は、社会・経済生活や政権党PSUV上層部に不満な底辺のチャベス主義有権者60万人もが、対立候補エンリケ・カプリレスになびいたため、と分析できる。

 PSUV上層部の間では、「底辺の離反」をはじめとする苦戦要因の調査開始と政策立て直しを求める声が高まっている。この動きは「マドゥーロ批判」に繋がる可能性もある。

 南米諸国連合(ウナスール)、ラ米諸国、ロシアなどからマドゥーロに祝電が続々届いている。19日の就任式がどのような規模になるかが注目される。

一方、米政府、米国の影響の強い米州諸国機構(OEA、本部ワシントン)、スペイン政府などは、票の数え直しを求めている。カプリレスの主張に沿った要求だが、ベネズエラは内政干渉としてはねつけた。

 カプリレスの勢力基盤ミランダ州のチャカオ市アルタミーラでは、若者たちによる暴動が起き、国家警備隊に鎮圧された。カラカスや、故チャベス大統領の故郷バリーナス州でも幾つかの不穏な動きが見られた。国軍は選挙結果尊重を逸早く表明し、全土で警戒態勢を取り続けている。

2013年4月15日月曜日

ベネズエラ大統領選挙でN・マドゥーロが辛勝

 ベネズエラで4月14日実施された大統領選挙は、故ウーゴ・チャベス大統領の後継候補ニコラース・マドゥーロ暫定大統領(50)が勝利した。

 国家選挙理事会(CNE=中央選管)は同日夜、開票率99・12%段階で、マドゥーロが750万票
(得票率50・66%)で当選した、と発表した。対立候補エンリケ・カプリレス=ミランダ州知事=
(40)は727万票(49・07%)で惜敗した。

 マドゥーロの勝利は予想通りだが、わずか1・59ポイント差の辛勝は予想外だった。マドゥーロ政権の行方には早くも「不安定」という暗雲が立ち込め始めた、と言える。
 

ベネズエラ大統領選挙始まる


チャベス改革路線の継続か、それとも新自由主義回帰か。3月5日のウーゴ・チャベス大統領の死を受けてベネズエラで4月14日、大統領選挙が実施された。

チャベスの後継候補ニコラース・マドゥーロ暫定大統領(50)と、財界系右翼・保守陣営のエンリケ・カプリレス=ミランダ州知事=(40)の事実上の一騎討ち。世論調査では、弔い合戦に臨んだマドゥーロが優勢。

登録有権者は1890万人。午前中の段階で800万人以上が投票した。投票は0600~1800。当確が出るのは2100(日本時間15日1030)以降の見通し。 
 

マシャード=ジ・アシスの分析本『千鳥足の弁証法』を読む


 『千鳥足の弁証法』(武田千香著、2013年・東京外語大学出版会)という、風変わりな題名の本を読んだ。

 ブラジル人作家マシャード=ジ・アシス(1839~1908)の代表作『ブラス・クーバスの死後の回想』(1881年)の作風、筋・内容、作者と主人公の関係、時代背景などを数学的に分析した労作だ。

 迂闊にも、この代表作(武田訳、光文社古典新訳文庫)を読まずに本書を読んだため、要領を得なかった。読書の順番を間違ったのだ。だが逆に先入観なしに読むことができた。

実に面白い。同代表作を読まずにはいられなくなった。それを読んでから、本書を読み直すことにしよう。ブラジル式ポルトガル語の意味の説明や、ブラジル社会・文化の解説も興味深い。

<老爺心>から敢えて指摘する。「クリスチー事件」の項(223ページ)で使われている「マスコミ」という言葉について苦言を呈したい。1861年の出来事を語るのに「マスコミ」はおかしい。幻滅する。著者のうっかりミスだ。当時のメディアは新聞であり、ここは「新聞」と書けばよかった。メディアでも間違いではない。

「マスコミ」は、「マス・コミュニケーション(大衆・大量伝達)」の略称として登場した。テレビが隆盛期に入りつつあった1950年代後半に、評論家大宅壮一が作り出した用語だと記憶する。だが「マスメディア」の意味で使われるようになってしまったため、不正確な略語となった。

ジャーナリズムという言葉さえも「マスコミ」という用語で代用される嘆かわしい時代だ。新聞学徒だった私は、「マスコミ」という略語は認ないし、絶対に使わない。

2013年4月13日土曜日

殺人発生率世界最悪はホンジュラス


 国連統計によると、2012年に世界最悪の殺人発生率を記録したのはオンドゥーラス(HON=ホンジュラス)で、人口10万人当たり85・5人だった。世界平均は8・8人。この国では、警察の能力不足や政治的工作の結果、殺人事件の80%は迷宮入りとなる。

 メキシコ(墨)の団体「治安・正義・平和」の統計では、世界最悪の殺人発生都市は一昨年、昨年ともHONサンペドロスーラだった。去年は10万人当たり169人。2位は墨アカプルコで143人。3位はVEN首都カラカスの119人、4位はHON首都テグシガルパで102人だった。

 5~10位は墨トレオン、伯マセイオ、COLカリ、墨ヌエボレオン、VENバルキシメト、伯ジョアンペッソア。

 11~20位は伯マナウス、グアテマラ市、伯フォルタレーザ、伯サルヴァドール、墨クリアカン、伯ヴィトリア、米ニューオーリンズ、墨クエルナバカ、墨フアレス市、VENグアヤナ市。

 21~30位は米デトロイト、COLククタ、伯サンルイス、COLメデジン、ジャマイカ・キングストン、伯ベレーン、南ア・ケープタウン、伯クイアバー、COLサンタマルタ、伯レシーフェ。

 31~40位はVENバレンシア、墨チウアウア、プエルト・リコ首都サンフアン、伯ゴイアニア、HAIポルトープランス、墨ビクトリア、COLペレイラ、南ア・ネルソンマンデラベイ、VENマラカイボ、米セントルイス。

 41~50位は米ボルティモア、伯クリチーバ、米オークランド、ESサンサルバドール、伯マカパー、南ア・ダーバン、墨モンテレイ、伯ベロオリゾンテ、ブラジリア、COLバランキージャ。
 
 ラ米・カリブ、米国、南アで最悪50位を占めている。 
  

2013年4月12日金曜日

ウルグアイで同性愛者同士の結婚合法化さる


 ウルグアイ国会下院は4月10日、同性愛者同士の結婚を認める法案を可決した。上院は2日に通過しており、法は成立した。ホセ・ムヒーカ大統領は近く署名することにしており、発効は近い。

 同性愛者結婚合法化は、2010年にアルゼンチンで立法化されたのに次いで、ラ米では2国目。キューバなど幾つかの国では議論が続いている。

きょう13日、立教大学ラテンアメリカ研究所が開講式


 立教大学ラテンアメリカ研究所(ラ米研)の2013年度開講式が池袋キャンパス5号館で4月13日行なわれる。私は例年通り、土曜日午後の「ラ米論Ⅱ 現代ラ米情勢」を担当する。

初日13日は、受講生が科目選びの判断をするためのオリエンタシオン講座だ。これには講師と講義内容の品定めに、毎年かなりの受講者が集まる。

 私は5号館の5302教室で講座を開くが、翌14日がベネズエラ、21日がパラグアイと大統領選挙が続くなど、今季も初めから重要ニュースが多く、忙しい。

 ラ米情勢に関心を抱く受講生という人材が、今年度も数多く集まるのを期待したい。 

2013年4月10日水曜日

高野悦子さんへのオメナヘ(オマージュ)


 高野悦子さん(岩波ホール総支配人)が29日大腸癌で死去してから2カ月が過ぎた。日本人女性の平均寿命に少し及ばない83年余りの生涯だった。

 私は20余年、高野さんから岩波ホール上映の映画の試写会や、毎年末の同ホールでの忘年会に招かれていた。何年か前から体調をこわしたと聞いており、心配していた。

 訃報は2月半ば、私がチリの港町バルパライソに居たころ届いた。悲しかった。私の帰国は3月末の予定であり、太平洋の彼方に向けて手を合わせるよりほかに、どうしようもなかった。

 帰国すると、何と、高野さんの遺作となった自伝『岩波ホールと<映画の仲間>』(岩波書店)が届いていた。表紙の帯には「良い作品は、きっと受け入れられる」と書かれている。この言葉には、映画の紹介と上映にかけた高野さんの思いが集約されている。私は飛びつくようにして本を開き、読破した。

 奥付には「227日発行」とある。この日付に胸が痛んだ。死去の18日後である。高野さんは、意識を失う前に、この自伝の見本でも手に取ることができたのだろうか。

 私は急遽、書評をまとめ、月刊LATINAに送り、掲載をお願いした。すぐにできることは、これしかなかった。多くの人々がこの本を読むのを期待したい。

 高野さんは、映画についての造詣が並はずれて深く、たいへんな国際人だった。上品な笑いと愛想のいい話し方が魅力的だった。私には、話している時でさえ距離を感じざるをえない「眩しく崇高なお姉さん」だった。 

メキシコ大統領が国連大学で講演


 来日中のエンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)メキシコ大統領は4月9日夕、東京・青山の国連大学で、「世界の中のメキシコ:全球的責任を伴った当事者」と題して20分間講演した。

 まずEPN政権の5大優先政策として、①メキシコ国内の平和と静寂の回復②貧困をなくし社会参加を促進③教育の質の向上④経済的繁栄の実現⑤外交責任――を挙げた。

 次いで⑤の「外交」について、①国際社会におけるメキシコの存在強化②諸国との協力関係拡大③メキシコの持つ文化・歴史・芸術・光景・経済などの価値を広める④国益を高める――の「4本柱」を並べて説明した。

 地域別には、北米重視、ラ米・カリブ(LAC)との統合過程強化、欧州との協力強化、アジア・太平洋への接近強化、中東との関係強化、国連やG20など多国間機関との関係重視――を打ち出した。メキシコの「全方位外交」の始まりとして注目されるが、アフリカへの言及はなかった。

 対日関係では、05年に経済連携協定(EPA)が発効してから関係が大きく膨らんだと指摘し、日本のTPP参加支持を確認した。非核、国際組織犯罪対策強化などで協力するとし、戦略的互恵関係を堅固にしていくと強調した。

 会場は、メキシコ人随行記者団、駐日外交団、在日メキシコ人らで占められた。

【司会者は、外交団とメキシコ人だけに質問させ、私を含む日本人には質問の機会が与えられなかった。日本での質問機会に日本人に質問させないのは理解しがたいことだ。】