2014年7月31日木曜日

安倍首相がコロンビア訪問、和平交渉支持を表明

 安倍首相は7月29日、ボゴタのナリーニョ殿堂(大統領政庁)でコロンビアのフアン=マヌエル・サントス大統領と会談した。双方は、2012年から交渉してきた経済連携協定(EPA)の早期調印で合意した。

 安倍は、コロンビアと日本は民主と法治という価値観を共有すると述べ、暗に「民主集中体制」の中国を念頭に置いていることを示した。また、コロンビア政府がハバナで続けているコロンビア革命軍(FARC)との和平交渉を支持すると表明した。

 これに対しサントスは、両国106年間の交流で初めて日本の首相が来訪したと、安倍訪問の意義を讃えた。安倍はまた、代替エネルギー源として、コロンビア北部での炭坑開発に意欲を示した。

 安倍は30日午後、チレの首都サンティアゴに到着し、日系社会代表らに会った。

 

米政府がベネズエラ高官たちの入国を禁止

 米政府は7月30日、ベネスエラ政府高官たちの米入国を「人権蹂躙」を理由に許可しないことにした、と発表した。だが対象者の氏名や人数は公表していない。

 今年2月以降、ベネスエラ各地で相次いだ、マドゥーロ政権打倒を狙った反政府街頭暴力事件で、「治安当局が弾圧などにより人権を蹂躙した」というのが理由。

 だが、この一連の街頭暴力事件はベネスエラ内外の極右・保守勢力が米機関、内外マスメディアと連携して起こした「時間をかけて進行させるクーデター」の試みだった。治安部隊の「人権蹂躙」を一方的に主張するのは当たらない。

 暴動事件続発中、ラ米の大勢と、南米全体は、マドゥーロ政権を支持していた。

 今回の米政府決定は、カリブ海のオランダ領アルバが、米政府の要請で逮捕していたベネスエラ軍諜報局(DIM)のカルバハル元長官を27日釈放したのを受けて打ち出された。

 元長官釈放は「米外交の敗北」と受け止められている。その腹いせと、マドゥーロ政権打倒工作の失敗への腹いせから、今回の決定に至ったと勘ぐっても、あながち間違いではないだろう。

ヒラリー・クリントンが対キューバ経済封鎖解除を望む

 米民主党の次期大統領有力候補ヒラリー・クリントン(前国務長官)は7月30日、米西語テレビ放送ウニビシオンによるインタビューで、米政府による対クーバ経済封鎖は失敗したと述べ、封鎖解除を望んでいることを明らかにした。

 ヒラリーは今年刊行した著書『難しい選択』の中でも、同じ意見を打ち出している。ヒラリーは、関係正常化を希望し、「いつかクーバを訪問したい」ともインタビューで語った。


 一方、クーバのサンティゴ市にある「7月26日英雄死没者廟」で29日、1953年のモンカーダ兵営襲撃に参加した女性弁護士メルバ・エルナンデスの遺骨が埋葬された。メルバは3月9日死去した。

 式典では、やはり襲撃に参加した革命司令官ラミーロ・バルデス(副議長)が弔辞を読んだ。アベラルド・コロメー内相、エステバン・ラソ国会議長も参列した。
 

2014年7月30日水曜日

メルコスール首脳会議が広域経済地域結成で合意

 南部共同市場(メルコスール)は7月29日カラカスで第46回首脳会議を開き、メルコスール、米州ボリバリアーナ同盟(ALBA)、カリブ連帯石油機構(ペトロカリ-ベ)、カリブ共同体(カリコム)にまたがる経済地域を結成してゆくことで合意した。

 招かれて参加したカリコム加盟のセントヴィンセント・グラナディーン首相ラルフ・ゴンサルヴェスと、中米統合機構(SICA)加盟のエル・サルバドール大統領サルバドール・サンチェスは、経済地域結成への賛意を表明した。

 首脳会議はまた、「南銀行」開行促進、南米を平和地域として維持するための対話による団結強化、BRICSとの連携強化、パレスティーナに侵攻し虐殺を続けているイスラエル糾弾、を決議した。

 ボリビアは6番目の加盟国としてあらためて認められた。出席したエボ・モラレス大統領は、加盟手続きが最終段階にあることを明らかにした。

 メルコスールの輪番制長国は、ベネスエラから亜国に移った。クリスティーナ・フェルナンデス=デ・キルチネル大統領は、今会議が、一部債権者から返済を迫られ拒否している亜国政府の立場を支持したことに謝意を表した。

 この日、会議に先立ち、加盟5カ国とボリビアの大統領計6人はカラカス中心部のシモン・ボルーバル広場を訪れ、ボリーバル像に献花した。   
 
 

安倍首相歴訪に覆いかぶさる「中国の影」

 ラ米・カリブ諸国歴訪中の安倍首相は7月28日、トゥリニダード・トバゴ(TT)訪問を終え、コロンビアの首都ボゴタに到着した。TTでは首都ポートオブスペインで、TTおよびカリブ共同体(カリコム)首脳らと首脳会議を開き、個別会談した。だが、カリコム首脳14人のうち5人が欠席するなど、盛り上がりはいま一つだった。

 TTのカムラ・パサードビセッサー首相との27日の会談で安倍は、東京にTT大使館を開設するよう要請した。これに対しTT首相は外務省と検討すると応じながら、投資受け入れなどを扱う経済代表部をまず開設する可能性に触れた。それが将来的に大使館に格上げされる場合、TTだけでなくカリコム代表部の機能を備えることになる、説明した。

 安倍は27日、カリコム輪番制議長国アンティグア・バーブーダのガストン・ブラウン首相、およびTTと並ぶカリコム大国ジャマイカのポーシア・シンプソンミラー首相とも会談した。ブラウン首相は、安倍首相とカリコム首脳の会合が開かれた28日には、カラカスでのチャベス生誕60周年記念行事に出席している。

 安倍は28日のカリコムとの首脳会議の後、バルバドス、ドミニカ、グレナダ、セントキッツネーヴィスの首相、ガイアナおよびハイチの大統領とそれぞれ個別会談を行なった。

 ジャマイカ・オブザーバー紙は29日、「TT日本国交樹立50周年とカリコム日本友好年」を記念した首脳会議と、会議の意義を認めながらも、27日には「この首脳会議には中国の巨大な影が差している」と指摘していた。

 安倍首相はカリコムとの首脳会議で、「力や威嚇による一方的な現状変更の試みがある」と暗に中国を批判した。まさに同紙の指摘通りだった。

 会議では、日本による経済援助、防災協力、地球温暖化対策協力などが決まった。

 また「ラテンポースト」は29日、中国の習近平主席が7月半ばのBRICS首脳会議で発表された金融機関に巨額の出資をすることや、ラ米のインフラ整備援助200億ドル供出を約束した事実を挙げて、安倍訪問が中国の外交成果を覆すのは難しい、と論評した。

 カリコム加盟14カ国のうち6カ国は台湾と外交関係を維持しているが、安倍が要請した国連安保理非常任理事国選挙での日本支持について、同6カ国は応じやすい、と見るメディアもある。

 一方、英紙フィナンシャル・タイムズは28日、「地球を駆け巡る安倍晋三は中国に取りつかれた世界に日本を売り込んでいる」と題した香港発の解説記事を掲げた。「就任後18ヶ月間に47カ国を訪問した安倍は、世界のどの首脳と比べても桁外れに外遊が多い」と指摘。「安倍は習主席の後を追いかけている」と、23日に主席のラ米歴訪が終わった直後の25日に安倍が歴訪を開始した事実を皮肉っている。
 

 同紙はまた、2011年の東電福島原発の放射能漏れ重大事故の後ゆえに、「安倍は石油と天然ガスの供給源を探す必要に迫られている」と述べた。
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 安倍首相一行は28日夜、ボゴタの軍事空港に到着し、マリーア・オルギン外相に迎えられた。29日にはフアン・サントス大統領と会談する。

 有力紙エル・ティエンポは、「安倍首相が中韓両国を訪問していないのは、両国との緊張関係を見れば不思議はない」と論評した。また安倍が、「2008年のコロンビア・日本友好100周年」に首相経験者としてコロンビアを訪れた、と紹介している。

2014年7月29日火曜日

ラ米首脳らが出席し、ウーゴ・チャベス生誕60年式典催さる

 カラカスで7月28日、故ウーゴ・チャベス前大統領の生誕60周年記念式典が催された。ニコラース・マドゥーロ現大統領が主催し、ボリビア、ウルグアイ、ニカラグア、エル・サルバドール、ラ・ドミニカーナ(RD)の大統領、クーバ第一副議長、アンティグア・バーブーダ首相、亜国外相ら来賓多数が出席した。

 ミゲル・ディアスカネル玖副議長は演説で、「チャベスは人民団結のために尽力し、ベネスエラと我らのアメリカ(ラ米・カリブ)の歴史を永遠に変えてしまった」と、故人を讃えた。

 各国首脳らは、カラカスで開催中のベネスエラ統一社会党(PSUV)大会に、それぞれの政権党など友党の首席代表として出席する。また一部首脳は29日のメルコスール首脳会議に出席する。

 生誕式典には、オンドゥーラス元大統領マヌエル・セラヤ、RD前大統領レオネル・フェルナンデスも出席した。

29日開催のメルコスール首脳会議がボリビア加盟決定へ

 南部共同市場(メルコスール)加盟5カ国は7月28日カラカスで外相会議を開き、同市で29日予定されている第46回首脳会議の議題を定めた。協賛国で加盟手続きのため国内法整備中のボリビアの正式加盟支持、メルコスールの制度的強化などを議題として決めた。

 議長を務めたベネスエラのエリーアス・ハウーア外相は、メルコスールはラ米で最も堅固な多国間組織だ、と強調した。

 首脳会議には、ブラジル、アルヘンティーナ、ウルグアイ、パラグアイ、ベネスエラの5加盟国とボリビアの大統領が出席する。協賛国チレのミチェル・バチェレー大統領は、教育・保健予算確保のため82億ドル増収を図る税制改革法案をめぐる国会対策を理由に出席を取りやめた。

 
 28日は故ウーゴ・チャベス大統領の生誕60年記念日で、生地のバリーナス州サバネータでは「ウーゴ・チャベス広場」の開場式が催された。ロシアが100万ドルの資金を援助し、建設した。

 式典には、ニコラース・マドゥーロ大統領、チャベスの遺族、ディオスダード・カベージョ国会議長、ロシア大使らが出席した。
 

 この日カラカスには、開催中のベネスエラ統一社会党(PSUV)大会に出席するクーバ共産党代表団が到着した。ミゲル・ディアスカネル第1副議長を団長に、ブルーノ・ロドリゲス外相、ホセラモーン・マチャード思想局長らが加わっている。

 一方、メルコスール首脳や各国革新政党代表らがカラカスに集まりつつある28日、国際航空輸送協会(IATA)はマドゥーロ大統領宛てに、IATA加盟24航空会社への負債総額41億ドルを早急に支払うよう要請した。

 ベネスエラ政府は、外国航空会社に対し航空切符をベネスエラ通貨ボリーバルで支払うよう義務付け、後にドルに換算して各社に支払うことにしている。だが外貨不足により、政府は4億2400万ドルしか支払っていない。このため各社は、カラカス便を減らしたり運航停止にしたりして抗議してきた。 

2014年7月28日月曜日

オランダ領アルバが元ベネズエラ軍諜報機関長官を釈放

 オランダ領アルバ自治政府は7月27日、ベネスエラ軍諜報局(DIM)の長官だったウーゴ・カルバハル退役少将を釈放した。カルバハルは、ベネスエラ副外相ケリスト・オルテガに付き添われて同日カラカスに帰還した。

 アルバは米政府の要請に基づき、カルバハルがアルバ入りした23日、身柄を拘束した。米政府は、カルバハルは2004~11年にDIM長官だった期間にコロンビア麻薬組織、コロンビア革命軍(FARC)と連携し麻薬密輸などに関与したとして、アルバに逮捕と身柄引き渡しを求めていた。

 ベネスエラのエリーアス・ハウーア外相は、カルバハル逮捕直後にオランダ政府に対し、外交官特権を主張、オランダがこれを認めたため、カルバハルは釈放された。オランダはカルバハルを「好ましからざる人物」として国外退去処分にした。

 カルバハルは今年1月、アルバ駐在領事に任命され、アルバ政府からの同意を待っていた。同意のないままアルバに入ったところを逮捕された。

 カルバハルは、故ウーゴ・チャベス大統領が陸軍中佐だった1992年に打ったクーデター事件に参加し、チャベスの信頼が厚かった。カルバハル釈放は、ベネスエラ外交の勝利として受け止められている。

コロンビアゲリラ「民族解放軍」(ELN)が和平交渉を希望

 コロンビア各紙は7月27日、この国第2勢力のゲリラ「民族解放軍」(ELN、クーバ路線)が政府との和平交渉を希望している、と報じた。ELNは7月25日付書簡で、その意志を表明していた。

 ELNは、毛沢東路線のゲリラ「解放人民軍」(EPL)の残党も和平交渉を望んでいるとの見方を示している。EPL主流は1980年代末から90年代初めにかけて和平に応じ、復員している。
 
 サントス政権と最大のゲリラ「コロンビア革命軍」(FARC)は一昨年からハバナで和平交渉を続けている。フアン・サントス大統領が8月2期目に入るため、和平交渉は加速されるもようで、ELNは交渉参加が得策と判断した、と分析できる。

2014年7月27日日曜日

キューバがモンカーダ兵営襲撃記念日に改革推進を強調

 クーバ革命の原点となった1953年7月26日の陸軍モンカーダ兵営襲撃蜂起61周年記念日(民族蜂起の日)が7月26日、ハバナ南西60kmのアルテミーサ市で催された。ラウール・カストロ議長ら政府、共産党、革命軍の高官と市民8000人が出席した。

 襲撃に参加したラミーロ・バルデス革命司令官が記念演説し、「カリブ海の売春窟クーバは革命のお陰で、米国のマフィアと海兵隊が牛耳っていた麻薬天国、ばくち、売春から解放された」と指摘した。

 また、「クーバ人の血は、アンゴラとナミビアの独立を保障し、南アフリカのアパルトヘイト体制の崩壊を保障した」と、70~80年代のアンゴラ派兵を評価した。

 さらに、「ソ連消滅後、耐えて社会主義体制を守った」と、フィデル・カストロ前議長の指導力を讃えるとともに、ラウール議長が進めている経済・社会改革の遂行継続を呼び掛けた。
 

ベネズエラ政権党の第3回大会始まる

 ベネスエラの政権党、ベネスエラ統一社会党(PSUV=ペエセウベ)は7月26日、カラカス市内のテレサ・カレーニョ劇場で第3回党大会を開いた。全国から選ばれた代議員537人と、友党など30カ国代表団など合わせて900人が出席した。
 
 31日まで6日間の日程で党組織、人事、綱領などを討議する。初日にまずニコラース・マドゥーロ大統領が党首に指名された。故ウーゴ・チャベス前大統領は、「創党者にして永遠の指導者」の称号を与えられた。

 外国からは、クーバ、中国、ヴィエトナム、チレの共産党、ニカラグアのFSLN、エル・サルバドールのFMLN、グアテマラのURNG、ウルグアイの拡大戦線など友党の代表や、フォロ・デサンパウロ(サンパウロ・フォーラム)代表らが出席した。

 08年3月14 日結党のPSUVの党員は公称760万人だが、党勢の伸び悩み、動員力衰退が大きな問題になっている。党大会は、今年2月以降の反政府街頭暴動事件、来年の国会議員選挙、再来年の大統領罷免の是非問う国民投票などを見据えながら、新しい活動方針を決める。

日墨首脳がそろってテオティウアカンのピラミッドに上る

 安倍首相は7月26日、エンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)墨大統領とともに、メヒコ市郊外テオティウアカンの太陽のピラミデ(ピラミッド、高さ64m)に上った。この後、首相は日系人の中心組織である日墨協会を訪れ、和食を味った。

 これで首相の訪墨日程は終わった。次の訪問国トゥリニダード・トバゴ(TT)の首都ポートオブスペインには27日午後到着する予定。

 首相と大統領は25日、14件の協力で合意し、うち8項目で調印した。重要なのは、メヒコが望んでいる原発拡大政策に協力するための交渉加速化で合意したこと。

 メヒコ政府は、東電福島原発の放射能漏れ大事故の記憶の新しい日本の首相との合意であるため、世論を気遣って原発協力の印象を薄めるため「再生産可能エネルギー協力」という言葉を用い、新聞もそのように報じている。

 また、メヒコの原油・天然ガス開発協力のため、日本「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」(JOGMEC)とメヒコ石油公社(PEMEX=ペメックス)は14項目の覚書に調印した。

 このほか、農産物貿易拡大のため、05年調印の経済連携協定(EPA)の改定交渉を9月開始することで合意した。一連の合意に満足したEPNは、ピラミデまで首相につきあった。

 フランス通信AFPは、「露中日3国は、首脳の相次ぐラ米訪問により、米国のくびきから自由になりつつある、資源豊かなラ米での地歩拡大競争に入った」と論評した。

 またスイスのメディアは、東アジアで対立関係にある日中は「ラ米で影響力拡大争いをしているが、対ラ米貿易が年間2615億ドルに達する中国が優勢」という趣旨の見方を打ち出した。

2014年7月26日土曜日

米国と中米3カ国の首脳が未成年越境問題を協議

 中米の「北部三角形」と呼ばれるグアテマラ、オンドゥーラス、エル・サルバドール3国の大統領は7月25日、米大統領政庁(ホワイトハウス)で、バラク・オバーマ大統領、ジョー・バイデン副大統領と「未成年不法入国問題」をめぐり会合した。

 オバーマは、政治亡命など人道問題が絡む場合を除いて不法入国者に移住を許可することはない、と伝えた。一方、中米首脳側は、未成年者を米国に向かわせる理由となっている麻薬犯罪、マラスなど犯罪集団の取り締まりへの協力強化を求めた。

 4カ国首脳は会議後、共同声明を発表、「成人同伴者なしの未成年者、および未成年者を連れた成人」の米国への越境問題の解決のため引き続き協力していく、と強調した。

 犯罪集団追及、も表明した。また「中米社会での教育、就業機会の拡充の必要性」も盛り込まれた。さらに、4当事国だけでなく、中米の他の国々、およびメヒコとコロンビアの協力も必要、と謳っている。

ソロモン諸島がラ米で初の大使館をハバナに開く

 クーバのラウール・カストロ国家評議会議長は7月25日ハナバで、南太平洋メラネシアはソロモン諸島のゴードン・リロ首相と「南南協力強化」などについて会談した。首相は23日から27日までの日程で来訪中。

 リロ首相は24日には、同国にとって9館目、ラ米では初めての大使館をハバナに開いた。両国は2002年に国交を樹立した。

 ソロモン諸島は、パプア・ニューギニアとヴァヌアツの間、豪州の北東に位置する英連邦の国。人口は60万人。数百の島々から成り、中心のグアダルカナル島に首都ホニアラがある。 

安倍首相がメキシコ市に到着、ペニャ=ニエト大統領と会談

 安倍首相は7月25日、ラ米・カリブ歴訪の最初の訪問国メキシコの首都メキシコ市に到着し、中心部にある大統領政庁でエンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)大統領による歓迎式典に臨み、会談した。

 エクセルシオール紙は、安倍首相のメッセージとして、日墨および日本・ラ米関係の強化、環太平洋関係重視などを首相が目指していると伝えた。

 同紙はまた、今訪問が支倉常長使節団到着400周年に当たるとともに、首相の祖父・岸信介首相の訪墨55年、父・安倍晋太郎外相訪墨30年、日墨経済連携協定調印10年に当たると書き並べた。

 日本の対墨投資は、自動車産業を中心に2011年以来75億ドルにのぼる。日本の進出企業はメヒコ全土に700社ある。

 首相一行は26日、首都郊外のテオティウアカンにあるピラミデ(ピラミッド)を訪れ、次の訪問国トゥリニダードド・トバゴ(TT)に向かう。

2014年7月25日金曜日

チリ検察が「ピノチェー公金横領事件」で6人を起訴

 チレ検察は7月24日、旧軍政独裁者アウグスト・ピノチェー(故人)の公金横領事件に関与した陸軍退役将軍3人、同大佐3人を公金横領、詐取などの容疑で起訴した。

 事件は2004年7月、米上院が米リッグス銀行にあったピノチェー隠し口座の存在を暴いたことで明るみに出た。このため「リッグス事件」とも呼ばれる。ピノチェーは1994年から隠し口座を使っていた。当初、隠し資金は2700万ドルに及ぶとされたが、今回の起訴では2130万ドルとされている。

 検察はピノチェーを起訴したが、本人は06年12月、91歳で死去した。元独裁者は、死によって公金横領、人道犯罪、旅券偽造の罪を免れた。

 検察は、ピノチェー未亡人と5人の子供を起訴したが、13年8月、それらの起訴を取り下げた。遺族は、ピノチェーが残した豪邸、別荘、アパルタミエントなどを相続しているが、これらの不動産総額もピノチェーの財力をはるかに超えている。

 ピノチェーは公金横領が明るみに出たことで「大統領経験者資格」を剥奪され、一時自宅軟禁状態となり、権威が完全に失墜した。

 6人の元陸軍高官は、「ピノチェーの私設秘書のごとく」立ち振る舞い、公金650万ドルを横領して隠し口座に入れた 容疑などで起訴された。検察は10年間の調査・捜査によって、この日の起訴にこぎつけた。

 だが、遺族が誰も罪を咎められず遺産を享受していることに、世論の反発は強い。  
 

ラウール議長の娘マリエーラ・カストロは墜落機に乗っていなかった

 ラウール・カストロ玖国家評議会議長の娘マリエーラ・カストロが7月24日マリ北部で墜落したアリジェリア航空機に乗っていた、との情報が世界を駆け巡ったが、本人がハバナで否定した。

 ブルキナファソの首都ウアガドゥグ発アリジェ行きの航空機(搭乗者116人)の墜落後、ウアガドゥグ空港は発表した乗客名簿の中にマリエーラがいると明記していた。

 ところがマリエーラは同日ハバナで、テレスール記者に「私は生きている。動いている」と述べ、搭乗説を否定した。

 マリエーラは性科学者で、クーバ性教育セントロ(CENESEX)所長。国会議員でもある。叔父は、フィデル・カストロ前議長。

 なぜマリエーラの氏名が乗客名簿に記載されていたのか、謎が残る。

2014年7月24日木曜日

「中露は新世界指導国に指名された」とフィデル・カストロが強調

 キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長(87)は7月22日、ウラディーミル・プーチン露大統領と習近平中国主席の相次いだ来訪について記事を発表し、「中露両国は、帝国主義が犯罪的・殲滅的な戦争を始める前に人類生存を保障するため、新しい世界を指導すべく指名された」と指摘した。

 フィデルはさらに、「中露の貢献により、ラ米・カリブは科学、技術、経済開発を促進できる。両首脳は今回の歴訪によって、人類史上の偉業を成し遂げた」と、大きく讃えた。

 「クーバ革命の指導者」の称号を持つフィデルは、今回も両首脳と会談した。

「暴動教唆」で、ベネズエラの極右指導者の公判始まる

 ベネスエラの極右政党「人民意志」(ボルンター・ポプラル)党首レオポルド・ロペス被告の第1回公判が7月23日開かれた。ロペスは、2月12日のカラカス市内で起き3人が殺された暴動事件に関し、公然教唆、共犯、資産損傷・放火の容疑で起訴された。

 この事件は、4月以降まで続き、全国で計43人の死者を出した一連の街頭暴力事件の最初の重大事件だった。

 右翼は財界、大学生、米機関、コロンビア極右などと組み、内外メディアの宣伝報道に助けられて、軍事クーデターを招くための暴動状況をつくり出そうと街頭決起した。だが有権者の多数派とラ米・南米世論に支援されたマドゥーロ政権を倒すことはできなかった。

 これまでに空軍の現役将軍3人がクーデターの陰謀加担で逮捕されたほか、国軍士官約60人が拘禁され取り調べを受けた。その半数は依然拘留されているもよう。次回公判は8月6日。

中国主席のラ米歴訪終了、圧倒的存在感示す

 中国の習近平主席は7月23日、クーバ第2の都市サンティアゴを訪れた。ラウール・カストロ国家評議会議長が同行した。両首脳は、ホセ・マルティ廟、7月26日(モンカーダ兵営襲撃)死歿者廟、国際主義者墓地を訪れた。さらに、モンカーダ兵営跡を訪れた。

 これで習主席の訪玖およびラ米訪問日程は終了した。主席はサンティゴ空港から同日帰国の途に就く。

 主席は、ブラジルでのBRICS首脳会議、ブラジル、アルヘンティーナ、ベネスエラ、クーバ4カ国歴訪で、国力を背景に圧倒的な存在感を示した。世界政治・外交における米国および欧州の影響力を弱める外交目的は、今回のラ米歴訪では達せられた。

 中国は国家主導の資本主義をとっており、米欧の民間主導の新自由主義と比べ、はるかに政府意思を経済決定、対外援助などに反映させやすい。この点で米欧も日本もかなわない。

 25日からの安倍首相のラ米・カリブ歴訪がどのような反響を呼ぶか、興味深い。

興味深い「世界」誌でのグアテマラ人作家の発言

 ◎月刊誌「世界」(岩波書店)8月号掲載のラ米関係記事

★インタビュー「人間の真髄を嵌め込むモザイク」エドゥアルド・ハルフォン 聞き手・飯島みどり(立教大学教員)

 アラブ、ユダヤ、欧州、米国、ラ米(とりわけグアテマラ)という重層的認同(イデンティダー)を持つ作家ハルフィンの言葉が興味深い。「作家は<紛うことなき史実>でなく、本物の感情を追求する」というは発言は特に含蓄がある。

 昨今の日本の政治決定はヒステリーの極みに陥っているが、これは日本人とくに「政治家」と呼ばれる人種の発想が単純すぎて、複雑な現代世界に対応できなくなっているからだろう。日本人と他人種の混血がたくさん政府、官僚、財界、ジャーナリズムなどに入らない限り、この国は限界を超えられず、衰退するばかりだろう。ハルフィンの生き方は、そんなことまで考えさせる。

☆座談会「新自由主義は社会に何をもたらすか」

 新自由主義が日本はもちろんのこと現代世界の諸悪の根源であるのは論をまたない。<オールマイティー、全能の悪>だから、なんでも関連付けて考えることができる。 

 このラ米、特にメヒコの麻薬問題を柱とする座談会もそうだ。切り口は悪くないが、もう少し麻薬問題を掘り下げてほしかったように思う。現場取材の経験のある工藤律子の語りをもっと聞きたかった。

2014年7月23日水曜日

ペルー首相がまたも交代

 ペルーのオヤンタ・ウマーラ大統領は7月22日、閣僚会議議長(首相)レネー・コルネホを更迭し、後任にこれまで労相だったアナ・ハラを据えた。

 コルネホは今年2月に就任したばかりだった。ウマーラ政権の首相交代は5回目。

 コルネホは現政権の住宅相だったころ、所有するコンサルタント会社エリオスを公共事業に参入させた。これに異議を唱え、腐敗を追及していた国会議員を、側近を使って誹謗中傷した。これが更迭に繋がった。

中国とキューバが29協力協定に調印

 中国の習近平主席は7月21日夜、カラカスからハバナに到着、22日、ラウール・カストロ議長と会談した。会談後、29種類の協力協定の調印式が催された。

 協力は、サイバー空間構築、原油採掘技術、生物工学、製薬、サンティアゴ港現代化など広範な分野。

 習主席は、「クーバと中国は1960年に国交を樹立したが、これは中国にとって米州最初の国交樹立だった」と、両国関係の歴史的意義を讃えた。主席はフィデル・カストロ前議長とも会談した。

 主席は23日、カルナバル真っ最中のサンティゴを訪問し、そこから帰国の途に就く。

         ☆                  ★                  ☆

 中国はクーバにとってベネスエラに次ぐ援助国。往復貿易は昨年、14億ドルに達した。クーバの対中債務は60億ドルと推測される。中国は債務返済に厳しく、返済問題絡みで、過去に調印された協力事項が実行されない例もある。ラウール政権は、極めて慎重に経済改革を進めているが、これは中国には、歩みが遅すぎ規制が多すぎる、と映っている。

 クーバが改革に慎重なのは、経済が自由度を高めれば高めるほど、米国が政治介入してくる危険性が増すからだ。この点では、ラウールは兄フィデルと同意見だ。ラウールが自分と同世代(革命第一世代)の同志たちを政権中枢に配置したのも、「改革の急進化」を抑制するためだ。

 クーバの改革の歩みは中越と比べ遅いが、国内の経済格差と腐敗件数だけは急激に増えている。政権は、改革を推進しながら欠陥を矯正する、という難しい舵取りを強いられている。

2014年7月22日火曜日

中国とベネズエラが38の協力協定に調印

 中国の習近平主席は7月21日カラカスで、ベネスエラと38種類の協力協定の調印式に立ち合った。油田開発、農化学合弁工場建設、ベネスエラ用宇宙衛星新設、技術投資など。

 ベネスエラの中国への原油輸出は昨年、3054万トン(193億ドル)に達した。その多くは、債務返済に充てられている。

 主席はこの日、ディオスダード・カベージョ国会議長と会談し、両国議会間・政党間の交流活発化を通じ統治経験交換強化を図りたい、と表明した。

 また主席は、ウーゴ・チャベス前大統領が眠る廟を訪れ、故人が果たした両国関係強化の努力を讃えた。

 主席は21日夜、最後の訪問国クーバに向かった。

安倍首相が25日からラ米・カリブ5カ国歴訪へ

 安倍晋三首相が7月25日から8月2日までメヒコ、トゥリニダード・トバゴ(TT)、コロンビア、チレ、ブラジルを歴訪する。ロシアのウラディーミル・プーチン大統領と、中国の習近平主席のラ米歴訪直後の訪問だけに、いつになく関心を集めている。

 TTとコロンビアへの日本の首相の訪問は初めて。特に注目されている訪問先はTTとブラジルだ。 
 
 27~28両日のTT訪問では、首都ポートオブスペインで、カリブ共同体・共同市場(カリコム)14カ国首脳と会合する。

 最終訪問地ブラジルでは、日本のラ米・カリブ政策を打ち出すとともに、ブラジルに対しては海底油田開発用の「スーパーリグ」建設援助を伝える。全長300m、幅100mの超大型リグで、総工費は約5億ドル。日本の原油輸入先多様化戦略の一環でもある。

 メヒコ、コロンビア、チレは、新自由主義経済政策を採る「太平洋同盟」(AP=アペ)加盟国。今回訪問しないペルーとともにAPECとの関係強化を促進している。コロンビアはAPEC未加盟だが、首相が加盟支持を打ち出す可能性がある。

 プーチンはクーバ、ニカラグア、アルヘンティーナ、ブラジルを歴訪し、ブラジルでのBRICS首脳会議に出席した。習近平はBRICS出席とブラジル訪問の後、亜国を訪れ、現在ベネスエラとクーバを訪問しつつある。

 中露首脳の歴訪は、明らかに世界外交における対米牽制の狙いがある。安倍訪問は、「集団的自衛権」という軍事面突出で、弱さがあらためて明るみに出た日本外交が「健在」であることを印象付ける狙いがある。

 同時に、ラ米で疎かになっている米外交を補う目的もある。

2014年7月21日月曜日

習近平中国主席がベネズエラ訪問

 習近平中国主席は伯亜両国訪問を経て7月20日、ベネスエラ入りし、カラカスでニコラース・マドゥーロ大統領と会談した。

 1999年2月のチャベス前政権発足以来15年間に、両国は計480の協力協定を結んできた。21日には新た協定が調印される。

 中国は総額400億ドルを超える借款を与えており、ベネスエラは原油の現物で返済している。現在、日量52万4000バレルの原油が中国に送られている。

キューバ税関が旅行者の物資持ち込み規制を強化

 クーバは旅行者による国外からの物資持ち込みを厳しく制限することにし、新措置が7月11日官報に掲載された。だがクーバ人に間に新措置に対する不満が急速に高まりつつあり、共産党機関紙グランマは18日、それらの不満を記事に取り上げた。

 新措置は9月1日発効する。旅行者1人が一回の入国で持ち込み可能な物資は1000ドル相当まで。超過分は没収対象となる。郵送は一回10kgまでで、超過分は1kg当たり20ドル課税される。規制対象は家電、電脳機器、通信機器、CDなど381品目。

 昨年、旅行者による持ち込みと郵送による物資は、総額35億ドルにのぼった。マイアミからの持ち込みが多い。

 新措置は、持ち込み荷物などを事実上の輸入と捉え、持ち込まれた物資が自営業者によって転売されるため、これを規制するのが狙い。自営業者らは、本質的な問題はクーバに卸売市場が整っていないことだ、と反発している。 

2014年7月20日日曜日

ブラジル旧軍政の拷問実態が米公開文書で確認さる

 ブラジル軍政が1960~70年代に実行した拷問のむごたらしさ、凄まじさがあらためて脚光を浴びている。米政府は6月、国家安全保障関係の機密文書を解禁し、うち43文書を、ジョー・バイデン副大統領がブラジル政府に手渡した。その内容が7月6日、ヂウマ・ルセフ政権の「真実委員会」によって公表された。

 ニクソン政権が、ブラジル軍政に対し寛大だったことを窺わせる。同政権は伯軍政を表だって批判せず、事実上、軍政のやり方を追認していた。

 秘密警察は、ゲリラ活動に参加していなかった左翼学生らを拳銃を突きつけて拉致し、痕跡が残らない方法で拷問し、一定期間後、釈放した。

 ゲリラ容疑者には肉体的拷問を容赦なく加え、死に至らしめたり、法律外処刑を実行した。遺体は、「戦闘死」に見せかけて放置した。

 伯軍政の拷問に関するCIAや米国防省諜報局の機密文書の多くは公開されていない。 

ニカラグアがサンディニスタ革命35周年を祝う

 ニカラグアは7月19日、ソモサ長期独裁を倒したサンディニスタ革命の35周年記念日を祝った。首都マナグアの、マナグア湖畔にある「信仰広場」に全国からやってきた政権党・サンディニスタ民族解放戦線(FSLN)の党員数十万人が結集した。

 革命戦争を戦ったダニエル・オルテガ大統領は、革命を「ニカラグア国家の再生」と位置付けている。広場には赤黒2色のサンディニスタ旗、ニカラグア、クーバ、ベネスエラの国旗がはためいた。「自由な祖国か死か」のスローガンも掲げられた。

 オルテガとともに、来賓のベネスエラ大統領ニコラース・マドゥーロ、エル・サルバドール大統領サルバドール・サンチェス元ゲリラ連合司令、クーバ副議長ラミーロ・バルデス革命司令官、エクアドール国会議長ガブリエーラ・リバデネイラが並んだ。

 グアテマラのビニシオ・セレソ、オンドゥーラスのマヌエル・セラヤ、パナマのマルティン・トリホスの元大統領3人、ノーベル平和賞受賞者でグアテマラマヤ民族のリゴベルタ・メンチューらも列席した。

 オンドゥーラスのフアン・エルナンデス大統領は19日マナグア入りし、サンチェス、オルテガ両大統領と、フォンセカ湾の小島の領有権問題や湾の共同開発について話し合った。

  この日、マナグアでの記念式典に参加して帰る途中の党員らを乗せたバスの車列が、マタガルパ県内2カ所で相次いで銃撃され、計5人が死亡、19人が負傷した。警察は容疑者4人を逮捕したが、1980年代にレーガン米政権が組織した反革命部隊コントラの流れを組む集団に属している、との見方が出ている。  

米大統領が未成年者密入国問題で中米首脳と会談へ

 米政府は7月19日、バラク・オバーマ大統領とジョー・バイデン副大統領が25日、未成年者の米国への不法入国問題の解決策を練るため中米北部3国大統領とワシントンで話し合う、と発表した。

 グアテマラのオットー・ペレス=モリーナ、オンドゥーラスのフアン・エルナンデス、エル・サルバドールのサルバドール・サンチェスの3大統領。3人は6月20日グアテマラ市で、この問題をめぐりバイデンと会談している。

 これら3国から今年米国に密入国した未成年者は5万7000人。年末には10万人に達する見込み。
 

 

2014年7月19日土曜日

中国主席がアルゼンチンを訪問し大型援助協定調印

 中国の習近平主席は7月18日、ブラジル訪問を終えてアルヘンティーナに到着、ブエノスアイレスでクリスティーナ・フェルナンデス=デ・キルチネル(CFK)大統領と会談した。

 会談後、2014~18年の期間対象の20項目の協力協定の調印式が行なわれた。協力総額は数百億ドルにのぼる。両首脳は記者会見で、「総合的な戦略的互恵関係の始まり」を強調した。

 協力内容は、ほとんどが中国による融資。分野は、原発建設、油田開発、水力発電所建設、灌漑施設整備、貨物鉄道現代化、亜国国際収支改善のための融資に及ぶ。通商拡大や文化面の協力も含まれている。

 今回の主席訪問によって、中国は亜国にとっての「最大最強の経済協力国」の地位を固めた。

2014年7月18日金曜日

中国主席とCELAC首脳がブラジリアで会合

 ブラジル訪問中の習近平中国主席は7月17日ブラジリアで、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC=セラック)4幹事国首脳との「中国CELACフォロ(フォーラム)」に出席した。双方は、このフォロの常設化および関係強化で合意した。

 4カ国首脳はラウール・カストロ玖議長、ルイス・ソリースCR大統領、ラファエル・コレア赤道国大統領、ガストン・ブラウンAB(アンティグア・バーブーダ)首相。

 この会合には、伯VEN智URU・COL・スリナム・ガイアナの7カ国大統領も出席した。7カ国大統領とコレア赤大統領は、16日のBRICS・ウナスール首脳会議に出席した。

 メヒコのエンリケ・ペニャ=ニエト大統領もフォロに招かれていたが、17日はメヒコ市で墨秘首脳会談があり、出席しなかった。

 習主席はこの日、ヂウマ・ルセフ伯大統領との中伯首脳会談に臨み、32の協力協定に調印した。

 伯エムブラエル社製航空機60機購入、伯パラー州ベロモンテ水力発電所高圧線建設、伯・太平洋鉄道建設参加、伯中合同でのアフリカ社会基盤整備など。

 中国の対伯投資は計780億ドル。両国貿易は2013年に900億ドル近くに達した。

2014年7月17日木曜日

LATINA「ラ米乱反射」第100回はロマ女性がテーマ

◎月刊誌LATINA8月号(7月20日発売)の伊高浩昭執筆記事:

★連載企画「ラ米乱反射第100回」
 「差別・偏見と闘い多様性求めるスペインのロマ女性(ヒターナ)」、「ヒターナ女権協会の指導者パトリシア・カロ=マヤ」 

 今年4月、アテネからジブラルタルまでピースボート船上講師仲間として同船したパトリシアへのインタビューを柱に、ロマ民族の生き方をまとめた。写真は、梶浦崇志撮影の3枚など5枚掲載。

☆この乱反射シリーズが100回に達した。一抹の感慨を禁じ得ない。

★書評:『コロンブスからカストロまで』全2巻 エリック・ウィリアムズ著 川北稔訳 岩波書店
  
     『死か洗礼か』 フリッツ・ハイマン著 ユーリウス・H・シェプス編 小岸昭・梅津真共訳 行路社

エクアドール政府がアサンジ氏の身柄を守ると表明

 エクアドールのリカルド・パティーニョ外相は7月16日、同国政府は在ロンドン大使館に亡命しているウィキリークス創設者ジュリアン・アサンジ氏(豪州人)の身柄を引き続き守る、と表明した。

 これは同日、スェーデン司法当局が、強姦罪容疑などに基づくアサンジに対する逮捕状を維持することを決めたのを受けた措置。

 アサンジは2012年6月19日、ロンドンのエクアドール大使館に入り、同年8月16日、亡命を認められた。

 エクアドール政府は、アサンジの身柄がスェーデンに引き渡されれば、米国に送還されるのは疑いないと見て、亡命を認めた。

 パティーニョ外相は、スェーデン当局がロンドンの大使館内でアサンジに尋問するか、もしくはビデオ中継を通じて尋問するのなら、実現に協力する、と語っている。

BRICSと南米諸国連合が合同で首脳会議開催

 南米諸国連合(ウナスール、加盟12カ国)のブラジルを除く11カ国大統領は7月16日ブラジリアに集結し、ブラジルを含むBRICS5カ国首脳との合同会議に出席した。南米首脳がこぞって馳せ参じたのは、BRICSが15日、巨額の資金を動かす新開発銀行(NBD)と外貨準備基金の設立を決めたのに魅せられたからに他ならない。

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は会議で、「世界の新しい地政学が見えてきた」とBRICSの決定を絶賛し、ベネスエラが設立を推進してきた「南銀行(バンコ・デル・スール)」とNBDが将来協力し合うことへの希望を表明した。

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は、「新自由主義と新植民地主義の政策に終止符が打たれることになる」と指摘した。

 一方、亜国のクリスティーナ・フェルナンデス=デ・キルチネル大統領は、米民間投資機関から13億3000万ドルの債権の支払いを求められていることに関し、「国債との交換以外の解決策の提案はない」と強調するとともに、「債務不履行には陥らない」と言明した。

 BRICSの中核である中国の習近平国家主席は17日引き続きブラジリアで、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)の幹事4カ国首脳との初会合に臨む。これに出席するクーバのラウール・カストロ国家評議会議長は16日到着した。

2014年7月16日水曜日

開銀・基金設置したBRICSに中国対米戦略が強く反映

 BRICS5カ国首脳は7月15日、ブラジル北東部のフォルタレーザ市で第6回首脳会議を開き、新開発銀行(NBD)と外貨準備基金の設立を決めた。

 NBDは本部を上海に置く。当初資本は500億ドルで、これを将来的に1000億ドルに増やす。発展途上諸国にとっての、世界銀行に替わる開銀の役割を担うのが目的。

 基金は元本1000億ドルで、中国410億ドル、露伯印各180億ドル、南アフリカ50億ドルを、それぞれ負担する。これは国際通貨基金(IMF)の代替役を担う。

 NBDと基金の設置には、米国の世界支配を打ち崩したい中国の戦略が色濃く反映されている。

 BRICS首脳陣は16日ブラジリアで、南米諸国連合(ウナスール)との首脳会議を開く。アルヘンティーナ、ウルグアイ、ボリビア、エクアドールなどの南米首脳が出席する見込み。

 17日には同市で、中国とラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)の首脳会議が開かれる。CELACからは、首脳会議を今年開いたクーバ、次回開催国コスタ・リーカ、次次回開催国エクアドール、カリブ地域代表アンティグア・バブーダの4カ国首脳が出席を予定している。

 習近平主席は離伯後、亜国、ベネスエラ、クーバを歴訪する予定。

10月12日選出のボリビア大統領候補出そろう

 ボリビア選管(TSE)は7月15日、大統領選挙候補を公示した。10月12日実施の選挙に出馬するのは、エボ・モラレス現大統領、実業家サムエル・ドリア=メディーナ、前ラパス市長フアン・デ・グラナード、先住民フェルナンド・バルガス、元暫定大統領ホルヘ・キローガの5人。

 3選を目指すモラレスの支持率は高く、他の4陣営が候補を一本化できなかったことから、モラレス勝利は動かないと見られている。

 上下両院議員と副大統領の選挙も同時に実施される。大統領任期は4年。

2014年7月14日月曜日

プーチンがニカラグアとアルゼンチンを訪問

 ロシアのウラディーミル・プーチン大統領は7月11日、ハバナを発った後、ニカラグアのマナグア空港に立ち寄り、ダニエル・オルテガ大統領と1時間。会談した。プーチンは、ニカラグア大運河建設事業へのロシア企業の参加に興味を示した。

 ニカラグアは一昨年、国際司法裁判所の裁定により、カリブ海のコロンビア経済水域から広大な海域を与えられた。その海域で6月下旬、ロシアと米国の軍要員計300人が麻薬取り締まり訓練をした。これには、失った水域に依然関心を抱いているコロンビアに対しオルテガ大統領が牽制する狙いがあった。

 プーチンは12日ブエノスアイレスに到着し、クリスティーナ・フェルナンデス=デ・キルチネル(CFK)亜大統領と会談した。亜国のアトーチャ第3原発施設建設事業に参加しているロシアのロサトム社が、アトーチャ第4原発施設建設事業に参加することが原則的に合意された。

 また、大統領に同行しているロシア財界人一行は、ネウケン州バカムエルテの油田を視察した。

 CFK主催の晩餐会には、ウルグアイのホセ・ムヒーカ大統領も出席した。同様に招待されていたベネスエラとボリビアの大統領は出席しなかった。

 プーチンが首脳会談をしていたカサ・ロサーダ(大統領政庁)前の五月広場では、性的少数者団体がロシアでの取り締まりに対する抗議デモを展開した。また在亜ウクライナ移民協会も、ロシアのウクライナへの干渉に抗議するデモをした。

 プーチンは13日リオデジャネイロ入りし、アンゲラ・メルケル独首相とウクライナ問題を中心に話し合った。両首脳は次いで、マラカナン競技場でのW杯決勝戦を観戦した。ドイツが1対0でアルヘンティーナを下し、4度目のW杯をものにした。
 

2014年7月12日土曜日

亜国でのプーチン歓迎晩餐会にベネズエラ大統領らも出席へ

 アルへンティーナ外務省は7月11日、ブエノスアイレスで12日夜催されるクリスティーナ・フェルナンデス=デ・キルチネル大統領によるプーチン露大統領歓迎晩餐会に、ベネスエラ、ボリビア、ウルグアイ3国の大統領も出席する、と発表した。

 ロシア製兵器を大量に購入するなどロシアと関係の深いベネスエラは、プーチンの今回のラ米歴訪から「外された」感がある。ニコラース・マドゥーロ大統領は、亜国での晩餐会出席で辛くも面目を保つことができる。

 プーチンは11日夜、ラウール・カストロ議長に見送られてハバナを出発、ブエノスアイレスに向かった。


ロシアとキューバの首脳が宇宙兵器配備に反対

 ウラディーミル・プーチン露大統領は7月11日ハバナ入りし、ラウール・カストロ議長と会談、「両国は関係発展のための新しい条件を生み出しつつある。ロシアは、米国による不法な経済封鎖をクーバが克服すべく支援する」と強調した。

 カストロ議長は、「プーチン大統領が2000年に登場して以来、世界は多極化に向かった」と露大統領を持ち上げ、ロシアによるソ連時代の債務の9割に当たる350億ドルの帳消しと残る35億ドルのクーバ開発投資に感謝した。

 両首脳は、「宇宙空間への兵器配備」、「情報の国際安全保障」などを謳う共同声明を発表した。

 両国外相は、金属・医学・薬品・生物工学、油田開発、発電、照明灯生産、保健、文化、災害救援、マリエル経済特区、国際貨物空港建設などに関する協力協定に調印した。

 プーチンは首脳会談で、衛星通信地上局建設に関心を示した。これは、米国の電波を傍受することと関連する。

 露大統領は首脳会談に先立ち、フィデル・カストロ前議長と1時間に亘って、2国間関係、国際情勢などについて会談した。

 大統領は、この後、アルヘンティーナとブラジルを訪問する。

  

2014年7月11日金曜日

プーチン露大統領が11日からラ米3国歴訪へ

 ロシアのウラディーミル・プーチン大統領は、11~16日の玖亜伯3国歴訪に先立ちモスクワでプレンサ・ラティーナ、イタル・タス両通信社のインタビューに応じた。

 11日のクーバ訪問については、東西冷戦終結後に失われた関係の回復を目指すとし、「政府間2012~20年経済・貿易・科学技術協力計画」に基づき関係強化を図る、と強調した。

 ロシアはこのほど対玖債権350億ドルを帳消しにしたが、残る35億ドルは、クーバの経済改革計画に沿って投資すると明らかにした。当初は、クーバが10年間で返済する、とされていた。

 プーチンはまた、近い将来、メキシコ湾のクーバ経済水域内での海底油田開発に参加すると語った。

 12日に訪問するアルヘンティーナに関しては、09年調印の「戦略的協力関係確立のための行動計画」に沿って関係を深めたいと述べ、原子力エネルギー分野での協力を例に挙げた。

 また、亜国がBRICSに加盟するのを望むとし、BRICSと亜国が戦略的協力関係を結ぶのは確かだ、と予測した。

 最後の訪問国ブラジルについては、特に米州における対伯関係強化は重要で、ブラジルの国連安保理常任理事国入りを支持する、と述べた。またBRICSは多元的世界促進を目指しており、とりわけ米国の影響力に対峙する意味がある、と指摘した。

 大統領は13日、W杯決勝戦を観戦し、15~16日フォルタレーザ市で開かれるBRICS首脳会議に出席する。プーチンは、BRICSが、北京に本部を置く開発基金(銀行)を設立すると明らかにした。

 インタビューの冒頭、大統領は、メヒコ壁画運動、亜国タンゴ、ペルー歌謡「コンドルは飛んでゆく」、パブロ・ネルーダの詩、ガブリエル・ガルシア=マルケスの小説、オスカル・ニーマイヤーの建築を挙げて、ラ米文化の豊かさを讃えた。

 また、シモン・ボリーバル、ホセ・マルティ、エルネスト・チェ・ゲバーラ、サルバドール・アジェンデの名を挙げて、ラ米政治の流れに触れた。

 さらに、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)、南米諸国連合(ウナスール)、南部共同市場(メルコスール)、米州ボリバリアーナ同盟(ALBA)、カリブ共同体・共同市場(カリコム)、中米統合機構(SICA)、太平洋同盟(AP)などのラ米・カリブ地域の広域組織との関係を拡大する用意がある、と述べた。



 

2014年7月10日木曜日

オバーマ米大統領が中米に未成年越境者を出さないよう訴え

 バラク・オバーマ米大統領は7月9日テキサス州を訪れ、中米諸国に向けて児童・未成年を米国に密入国させないよう訴えた。メヒコ経由の道中や越境時の危険性を強く訴え、密入国しても定住できないと警告した。

 現在、5万2000人の未成年の密入国者が国境沿いの米不法入国者収容所にいる。

 またジョー・バイデン副大統領は9日、グアテマラ、エル・サルバドール、オンドゥーラスの中米北部3国大統領とで電話会談し、密入国対策について話し合った。

 オバーマ政権は米議会に、米墨国境密入国対策などのため37億ドルの予算を要請している。 

2014年7月9日水曜日

ブラジル惨敗にリオのキリスト像が頭抱える

 ブラジルは、ベロオリゾンチでのW杯準決勝でドイツに1対7という歴史的大敗を喫し、悲嘆に暮れている。リオデジャネイロのコルコバード丘の巨大な救世主キリスト像が頭を抱える電脳写真がメディアに登場、ブラジル人の落胆の大きさを示した。

 試合後、観衆は「屈辱」を口にした。「ブラジルは惨敗するのにふさわしかった。全くプレーしなかったからだ」という声もあった。

 ヂウマ・ルセフ大統領も「とても悲しい」と言いつつも、「立ち上がり前進しよう」と全国に訴えた。

 ブラジルはリオで1950年に開かれたW杯決勝戦でウルグアイに1対2で敗れ優勝を逃し、マラカナン競技場で暴動が起きた。

 今回の敗北には、ある程度、予測させる要因があった。昨年6~7月、生活苦に抗議する中産下層による一大抗議デモが全国で起き、W杯工事への巨額の予算出費に抗議が集中した。

 かつてサッカーはブラジル人にとって「宗教」だったが、もはやそうではない。祭りも楽しいが、日常生活の方が大切だと、強く意識するようになっている。

 自国チームの惨敗に悲しむのは、当然のこと。優勝できれば、良いに決まっている。ゆっくりと悲しんで、明日立ち上がればいい。


パナマ運河第3水路開通は2016年1月

 パナマ運河庁(ACP)は7月8日、建設中の運河閘門式第3水路は2016年1月開通する、と発表した。

 当初は、現行運河開通100周年の今年開通の予定だったが、工事の遅れで来年開通に延期され、さらに今回、再来年となった。

 閘門式水路は15年12月完成の見通しで、その翌月、通航開始となる。

 ACPは、ニカラグア大運河建設経路が7日発表されたのを受け、その反響に水をかけるかのように翌日、この発表に踏み切った。

ニカラグア運河は総延長278km、20年1月開通へ

 「ニカラグア大運河」の建設を請け負っている香港ニカラグア運河開発投資有限公司(HKND、王靖=ワンジン=社長)は7月7日、マナグアで建設経路や通航開始予定について発表した。

 経路は、当初6つあったうちの東西に走る」「第4ルート」と呼ばれるもの。太平洋岸のブリート川河口のりバスから3段階の閘門式運河を経て、大ニカラグア湖(別名コシボルカ湖、水面面積8624平方km)の南部105kmを横断する。

 トゥーレ川に入り、建設される人造湖アトランタを通り、プンタゴルダ川と、3段階の閘門式運河を経て、同川河口のプンタアギラ港からカリブ海に出る。総延長は、湖水通過部分も含め278km。79kmのパナマ運河の3倍半。

 通航には30時間かかる。10時間程度のパナマ運河の3倍。

 今年末に着工し、2019年12月に完成、20年1月に通航開始となる。総工費は400億ドル。HKNDは4月、世界銀行に融資を要請したが、広く国際社会にも投資を呼び掛けている。

 運河の深さは平均27・6~30m。幅は230~520m。閘門水路の大きさは、現在工事中のパナマ運河第3水路の長さ427m、幅55m、深さ18・3mよりも規模が大きくなる見通し。閘門水路の規模で競争力が違ってくる。

 年間大型船舶5100隻の通航を見込んでいる。40万トン級穀物輸送船、32万トンタンカーなどが通航可能となる。世界海運の5%を担う計画。

 運河に沿って自動車道を建設する。太平洋岸には自由貿易地域、国際空港、観光複合施設を造る。両側江口の港は深港に
改修される。また運河建設に備えて、発電所、鉄鋼工場、セメント工場を建設する。

 運河建設が環境に及ぼす影響についての調査は継続中。近く、結果を報告する。国内には依然、反対世論が根強い。

 運河建設計画は昨年6月に正式に決まった。ダニエル・オルテガ大統領は今年初め、大統領連続再選を無制限とする改憲を達成しており、運河開通時にも政権にあって、歴史に名前を刻み込みたい考えだ。


 

 
 

2014年7月8日火曜日

革命直後のキューバを取材した亀山旭氏の死を悼む

 亀山旭記者が死んだ。84歳だった。5月14日、私が、パナマ運河を通航し太平洋に出て、ペルーのカヤオ港に向かうピースボートに乗っていた時のことだった。横浜に帰着し、つい最近、死の報に触れた。

 私は共同通信時代、外信部デスク、外信部長、ロンドン支局長、編集局長などを歴任した亀さんに世話になった。重役になって退職したが、退職後も含め最後まで記者魂を持った大先輩だった。この通信社で会うことのできた本物のジャーナリストの一人だった。

 亀さんは1959年1月、革命直後のハバナに入り、カストロが打った「真実報道作戦」に参加して、当時の状況をつぶさに観察した。その成果は、著書『キューバ革命 中南米の昨日と今日』(1964年、新潮社)でも読むことができる。

 当時、ラ米に最も理解と知識のある共同記者だった。だから、私のラ米へののめり込みを理解してくれていた。

 その後、『ベトナム戦争-サイゴン・ソウル・東京』(1972年、岩波新書)、『激動のアジア-ポストインドシナと日本』(1975年、ダイヤモンド社、林雄一郎記者との共著)などを著した。

 「思っていることをそっくり記事に書けたら一流なんだよ。それが難しいんだ」-亀さんから受けた訓示だ。ご冥福を祈る。 

ボリビア国会が10歳児童の労働認めるため法改正

 ボリビアでは児童労働が珍しくないが、国会は7月2日、10歳から14歳までの児童労働を例外的に認めるため労働法を改正した。国際労働機関(ILO)は14歳未満の労働を禁止しており、ボリビアもILO条約に加盟しているからだ。

 ボリビアでは18歳未満の未成年85万人が家計を支えるため働いている。街頭や市場での物売り、父母の仕事の手伝い、農作業、鉱山労働などだ。特に父母の手を離れた所での労働は、搾取が著しい。

 10~17歳の児童らは2000年に、「ボリビア児童・未成年労働者組合」(UNATSBO=ウナツボ)を結成、国会議員らと搾取排除、労働条件改善、児童労働公認などについて交渉してきた。

 
 改正法は、エボ・モラレス大統領の署名をもって発効する。\\

2014年7月7日月曜日

チリが不平等是正のため180億ドル投下へ

 チレのミチェル・バチェレー大統領は7月4日、貧富格差など国内の不平等をなくすため、向こう8年間に180億ドルを投下する、と発表した。

 公共事業省管轄の「社会基盤・開発・社会参加」計画に基づくもので、事業には従来からの継続部分も含まれている。

 大統領はまた、2030年を目処にチレ人の一人当たり国民所得を3万ドルに引き上げたい、と語った。現在2万2000ドル台だが、チレは昨年から、ラ米初で唯一の「先進国」に指定されている。

キューバの経済成長目標は1・4%

 クーバのラウール・カストロ国家評議会議長は7月5日、国会7月会期の閉会演説で、外貨不足などにより今年前半の経済成長は0・6%に留まった、と述べた。年末に1・4%の目標を達成すべく努力しようと呼び掛けた。

 外交面では、1月ハバナで開催された第2回ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)首脳会議の成功を謳い、第5回カリコム・クーバ首脳会議を12月にクーバで開くため準備を進めている、と明らかにした。

 ハバナで一昨年から続けられてきたコロンビア政府とゲリラ組織との和平交渉については、これまでに到達した合意は意義深い、と評価した。ベネスエラ情勢に関しては、米国は世界各地で展開している「非通常型戦争」をベネスエラ政権打倒のため仕掛けている、と指摘した。

 また、7月26日のモンカーダ兵営襲撃61周年記念中央行事はアルテミーサで実施すると発表した。ラミーロ・バルデス革命司令官が記念演説する。

 一方、財務・価格省は5日、2013年度予算赤字10億ペソ(約4000万ドル)を解消するため、国債を発行する予定と発表した。期限10年、年利2・5%。

ラ米乱反射第100回は、ロマ女性活動家インタビュー

◎4月以降の伊高浩昭執筆記事および関連記事は次の通り。

★月刊LATINA 5月号 ラ米乱反射 第99回 「元ゲリラ幹部S・サンチェスがエル・サルバドール新大統領に   新自由主義に抗いつつ貧困救済の経済モデル確立目指す」 
☆エスパシオ欄 ベネスエラ情勢「マドゥーロ政権と野党連合が同床異夢の対話開始」
☆書評  『ブラジルの環境都市を創った日本人 中村ひとし物語』服部圭郎著 未来社
       『メキシコ麻薬戦争』ヨアン・グリロ著 山本昭代訳 現代企画室

☆週刊読書人 4月11日号 書評『メキシコ麻薬戦争』

☆LATINA 6月号 ラ米乱反射休載
  書評『太陽の石』オクタビオ・パス著 阿波弓夫・伊藤昌輝・三好勝監訳 文化科学高等研究所出版局
 松枝愛執筆書評 『ウーゴ・チャベス ベネズエラ革命の内幕』ローリー・キャロル著 伊高浩昭訳 岩波書店

☆週刊読書人 7月4日号 寺本衛執筆書評『ウーゴ・チャベス ベネズエラ革命の内幕』

☆LATINA 7月号 ラ米乱反射、書評ともに休載

★LATINA 8月号(7月19日刊行) ラ米乱反射 第100回 「差別・偏見と闘い多様性求めるスペインのロマ女性  ヒターナ女権協会の指導者パトリシア・カロ=マヤ」 (本人とのインタビュー)
☆書評 『死か洗礼か』フリッツ・ハイマン著 ユーリウス・シェブス編 小岸昭・梅津真共訳 行路社
      『コロンブスからカストロまで』全2巻 エリック・ウィリアムス著 川北稔訳 岩波書店

2014年7月6日日曜日

キューバが農業部門管理職を大量廃止へ

 クーバ人民権力全国会議(国会)の新会期は5日ハバナで開会し、経済改革の進捗状況が報告され、審議された。
 
 政府はこの日、新たな公務員削減計画を発表、来年末までに農業部門管理職位6441(41%)を3段階に分けて無くすことを明らかにした。これにより人件費44万ユーロを節約できるという。

 職位廃止の中心は、農産品を独占的に買い占めて消費部門に回す「国営買い占め組合」(UNA)で、組合そのものが廃止される。UNAは、腐敗、不効率を農民から厳しく批判されてきた。

 クーバは年間20億ドルの食糧を輸入しているが、保有外貨が逼迫しているため、国庫に重くのしかかっている。輸入食糧の6割は国産可能とされるが、農業部門に行きたがるクーバ人は多くない。

 政府は国有遊休地を耕作希望者に数年来150万hr貸与してきたが、まだ370万hr余っている。

▼海上自衛隊練習艦隊が訪問

 支倉常長の遣欧使節団がローマに行く途上、スペイン植民地時代のハバナを訪れてから400年経つのを記念して、駆逐艦あさぎり、練習艦せとゆき、かしまの3隻が7月5日、ハバナに入港した。

 入港に際し、あさぎりが21発の礼砲を撃ち、これに対し革命軍砲兵隊がラ・カバーニャ要塞から返砲を撃った。

 自衛官らは革命海軍司令部、人民権力ハバナ州会議(州議会)、海軍士官学校などを訪問する。

 ハバナ港には亜国軍練習艦、帆船リベルターが1日から停泊中。アグスティン・ロッシ亜国防相、亜国軍高官らは3日、ラウール・カストロ議長を表敬した。





2014年7月5日土曜日

ニカラグア運河建設路は月内発表へ

 ニカラグア政府と中国系企業HKNDは7月3日マナグアで、太平洋とカリブ海を結ぶ「ニカラグア大運河」の建設ルートは今月内に発表すると、明らかにした。当初は「今週内」としていた。

 また同社環境問題担当者は、コスタ・リーカ(CR)との国境沿いに流れカリブ海に注ぐサンフアン川に近いルートは全て排除する、と明らかにした。内外の環境保護専門家やCR政府から反対意見が出されていた。

 だが、運河がニカラグア湖を横断する計画は変更されていない。船舶の通航によって湖の水質が悪化し、環境が破壊されるとの懸念は依然根強い。

 政府は、今年末に建設工事を開始する方針を打ち出している。総工費は400億ドルで、国際社会に投資を仰ぐことにしている。
 
 

ロシアが対キューバ債権350億ドルを帳消し

 ロシア政府は7月4日、ソ連時代にクーバに貸与した援助の累積総額の90%に当たる350億ドルを帳消しにする、と発表した。クーバは、残る35億ドルを10年間で返済する。

 同時にロシア政府は、ウラディーミル・プーチン大統領が7月11~16日、玖亜伯3国を歴訪する、と発表した。ハバナには11日到着し、投資などについてラウール・カストロ議長と話し合う。

 プーチンは、クーバへの最大援助国ベネスエラが政経両面で混迷を深めている今、そして玖米関係が改善に向けて静かに動きつつある今、巨額の債権を放棄して「伝統的同盟国」の立場を強化する策に出た。

 亜国では12日、クリスティーナ・フェルナンデス=デ・キルチネル大統領と会談し、13日ブラジル入りする。

 ブラジルでは、BRICS首脳会議に出席するほか、ヂウマ・ルセフ大統領からサッカーW杯開催国を引き継ぐ。 

2014年7月4日金曜日

ベネズエラが経済政策策定に故チェの元補佐官を起用

 経済困難から政情が混迷しているベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は、事態打開を図るため、「革命の中の革命」を遂行すると7月初め表明した。その切り札は何と、半世紀前にチェ・ゲバーラの側近だった経済学者オルランド・ボレーゴ(78)である。

 ボレーゴは、クーバ革命戦争をチェの下で戦った後、革命政権の工業相に就任したチェの補佐官になった。その後、ソ連に留学し、経済博士号を取得した。カストロ政権で、経済畑の要職を歴任した。

 ベネスエラでは、生活必需物資欠乏、インフレ60%、停電、断水などで国民不満が高まっている。マドゥーロの支持率も大幅に下落し、政権党ベネスエラ統一社会党(PSUV)内部や退役軍人から辞任要求が出る始末だ。貧困率も27%=900万人で、増える傾向にある。

 大統領は、クーバのラウール・カストロ議長に経済顧問派遣を要請、ボレーゴが4月からカラカスに滞在している。今月下旬にはPSUVの党大会が開かれるが、そこで大統領が発表する経済報告を、りカルド・メレンデス企画相とともに策定している。

 来年12月には国会議員選挙が実施される。マドゥーロ政権は経済を建て直して持ち堪え、同選挙で勝利したい構えだ。 

2014年7月3日木曜日

退役軍人がベネスエラ大統領に辞任求める

 元ベネスエラ陸軍少佐ジョエル・アコスタら故ウーゴ・チャベス大統領のかつての盟友らが7月2日、ニコラース・マドゥーロ大統領に辞任を要求した。ベネスエラ政府と政権党ベネスエラ統一社会党(PSUV)内の亀裂と混迷は深まる一方だ。

 アコスタは、大統領は指導力を発揮できなくなっており、政府を構成している国軍と<政治マフィア>が衝突する前に大統領は退陣すべきだ、とメディアを通じて訴えた。アコスタは、1992年2月に陸軍中佐だったチャベスが打ち失敗したクーデターに参加した。

 マドゥーロ大統領は、死者43人を出した2月以降の一連の反政府街頭テロ事件を受けて経済再建が不可避と見て、6月17日、チャベス政権初期から長らく経済政策の中枢に居たホルヘ・ジョルダーニ企画相を更迭した。

 ジョルダーニはすぐさま、マドゥーロの無能ぶりを指摘し、腐敗や公金流出と関連付けて非難した。これを契機に政府と政権党の亀裂が表面化した。軍部内にも既に亀裂が生じており、大統領は3月下旬、空軍将軍3人を「陰謀容疑」で逮捕した。

 PSUVは今月26~28日、党大会を開き、政経全般について討議し、新たな政策を策定するが、これを前に一気に不満や対立が噴き出した感がある。

 大統領に次ぐ実力者であるディオスダード・カベージョ国会議長は2日、仲間割れしている時ではないと、団結を訴えた。

2014年7月2日水曜日

ウルグアイがシリア難民120人受け入れへ

 国連高等弁務官事務所は7月1日、ウルグアイがシリア難民120人を受け入れることになった、と発表した。9月末までに40人、来年2月末までに80人が到着する。

 120人のうち約70人は未成年者で、家族ないし、親戚一人を同伴できる。成年は就労年齢でなければならず、到着後、スペイン語学習と職業訓練を施される。

 ウルグアイのホセ・ムヒーカ大統領は4月、シリア難民受け入れ方針を明らかにしていた。

パナマ新大統領フアン=カルロス・バレーラが就任

 パナマで7月1日、フアン=カルロス・バレーラ新大統領(50)が就任した。任期は5年。5月4日の大統領選挙で40%弱の得票率で当選した。保守のパナマ主義者党(PP)所属。実業家。

 バレーラは、リカルド・マルティネリ前大統領の下で副大統領を務めていたが、マルティネリの腐敗を厳しく糾弾するなど、距離を置いていた。就任演説では、「政権を商売の道具にしない」と前大統領を暗に批判し、「腐敗と縁故主義による高官人事を排除する」と強調した。

 前政権下で公共債務は70%増大して、170億ドルに膨らんだ。この債務返済も重要課題だ。また貧困率が26%で、低所得層が食料品価格高騰に悲鳴を挙げているため、バレーラは早速、22品目の価格統制措置を取った。

 パナマの経済成長率は過去10年、平均8・5%でラ米一。だが今年は7%の予測を下回りそうで、第一・四半期は5・8%に留まった。

 パナマ運河の閘門式第3水路は来年後半の完成を目指して建設中だが、新政権は、これが完成すれば経済の再浮上に貢献すると期待している。

 中米では今年、オンドゥーラス、コスタ・リーカ、エル・サルバドールでも大統領が交代しており、パナマは4カ国目。 
 

2014年7月1日火曜日

クーバ・米国関係に雪解けのかすかな兆し

 米国とクーバは革命後、関係が悪化し、1961年1月以来53年余り国交はない。だが今、両国関係にかすかな雪解けの兆しが見え始めている。

 ウルグアイのホセ・ムヒーカ大統領は5月12日ワシントンでバラク・オバーマ大統領と会談したが、その折、オバーマは2点について、ラウール・カストロ玖議長に伝えるよう託した。

 一点は、クーバでスパイ罪により禁錮刑に服している米国人アラン・グロスの釈放。もう一点は、クーバが経済改革に加え政治改革すれば、米国および国際社会から評価されるということ。

 グロスについては、クーバはスパイ罪で米国内で長期刑に服しているクーバ人元諜報員3人の解放と引き換えにすることを提案してきた。だが米国は拒否している。

 ムヒーカはオバーマの言葉を、6月半ばボリビアで開かれた国連77カ国グループ(G77)首脳会議でラウールに伝えた。ムヒーカによると、オバーマは「私には2年しか残されていない」と言い、残りの任期中に米玖関係正常化を促進したい考えを示した。

 ムヒーカは、「オバーマにとって対玖関係改善のため動く機は熟しているようだ」と語っている。

 しかし、マイアミを中心に居住する在米クーバ系人の40%は依然、対玖関係改善に反対ないし消極的とされる。また反カストロ派の玖系極右国会(連邦議会)議員らによる、関係改善阻止のロビー活動も効果が衰えていない。

 大統領選挙と国会議員選挙が2年ごとに交互に来る米国では、選挙民の動向を気にするあまり、政策が細切れになることが少なくない。対玖関係改善はまさに、選挙制度の犠牲になってきた、と言える。