2013 「波路はるかに」第7回 =パペーテ=
【3月8~9日パペーテにて伊高浩昭】2年ぶりにタヒチに来た。「フランス化」されすぎているとして、ポール・ゴーギャンが120年前にがっかりした島である。折から、仏領ポリネシアの、「大統領(プレシドン)」と呼ばれる自治政府首班オスカル・テマルが反核を訴え、仏核実験(1966~96)被害者への賠償を要求する集会を開いていた。紹介され、平山雄貴、前田哲男、高瀬毅の各氏とともに壇上でオスカルに挨拶した。
オスカルは、国連非植民地化委員会へのタヒチの復帰を求めて運動している。タヒチの独立を希求しているからだ。サングラスをかけた仏当局の諜報員が数人、我々を見張っていた。私たちが集会に出席すると知って諜報員らは事前にピースボート船内に入り、私たちのことを細かく調べたという。フランスはタヒチを絶対に手放したくないのだ。
オスカルは、5日に死去したウーゴ・チャベス大統領のために黙祷をささげた。私たちも賛同した。壇上には、チェ・ゲバラの肖像入りの旗がたなびいていた。チャベスの国葬は8日カラカスで挙行され、副大統領ニコラース・マドゥーロが暫定大統領に就任した。4月には次期大統領選挙が実施されることになる。ベネズエラの政治の季節はさらに熱く長く続く。
9日夜半、オーシャン・ドゥリーム号は横浜に向け9000kmの航海を開始した。半月後には着く。