ラベル ブラジル の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル ブラジル の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2018年6月23日土曜日

 ブラジル最高裁がルーラ元大統領の釈放要請を却下▼ホセ・ムヒーカ氏がルーラに面会、釈放を訴える▼インド大統領がキューバ訪問▼米副大統領がコロンビア次期大統領と会談、ベネズエラへの内政干渉政策促進で合意▼米州人権委員会がニカラグア報告提出

 ブラジル最高裁のエジソン・ファシーン判事は6月22日、汚職事件で拘禁中のルイス=イナシオ・ルーラ=ダ・シルヴァ元大統領の釈放要請を却下した。最高裁はルーラの
案件で最終審理し、判決を下す。
 ルーラはパラナ州都クリチーバの警察本部拘置所に拘禁されている。10月の大統領選挙に出馬する方針で、支持率1位を維持している。最高裁判決で有罪が確定すれば、極右の新人候補に当選の可能性が開ける。

 ウルグアイのホセ・ムヒーカ前大統領は21日、ルーラに面会した。その直後の記者会見で、「ルーラはブラジルとラ米の将来をとても憂慮していた。ブラジルが良くなればラ米も良くなり、ブラジルが悪くなればラ米もそうなる」と述べた。
 この発言は、極右候補の躍進をルーラとムヒーカが強く懸念していることを物語る。

 ルーラは、ルーラが所属する労働者党(PT)のグレイジ・ホフマン党首と共にルーラに会った。記者団に、ルーラ釈放を願うと述べた。

▼インド大統領がキューバ訪問

 ラムナス・ゴヴィンド大統領は6月21日、サンティアゴに到着、フィデル・カストロ前議長の墓地に参拝した。22日にはハバナでミゲル・ディアスカネル議長と会談、帰国の途に就いた。

▼米副大統領がコロンビア次期大統領と会談

 マイク・ペンス副大統領は6月22日、ワシントンでイバン・ドゥケ次期大統領と会談、「ベネズエラの民主回復促進」で合意した。米国に伝統的なラ米での内政干渉政策にコロンビアが本格的に関与してゆくことになる。

 一方、米下院議員3人はこのほど、FARCとの和平合意見直しを主張しているドゥケに対し文書で、和平強引順守を求めた。

▼米州人権委員会(CIDH)がニカラグア情勢で報告

 米州諸国機構(OEA)機関であるCIDHは6月22日、ワシントンのOEA本部でのOEA大使会議の場で、4月18日から今月19日までの期間に、一連の反政府行動、および政府側の規制行動の過程で死者212人、負傷者1337人が出ていると報告した。今月6日現在の拘禁者は507人という。
 報告は、政府側による人権侵害の可能性を指摘した。

 これに対し、会議に出席したニカラグアのデニス・モンカーダ外相は、「CIDH調査は本質的部分が欠けており、これを最終調査報告として受け入れることはできない」とはねつけた。同外相はまた、「ニカラグア政府の平和、対話、民主の基本姿勢」を強調した。 

2018年5月29日火曜日

 ブラジルで大規模なルーラ支持行動▼パラグアイ大統領がひと月半早めの辞任表明▼ニカラグア対話が再開へ▼メキシコでまた記者殺される

 ブラジルで5月27日、ルイス=イナシオ・ルーラ=ダ・シルヴァ元大統領を支持・連帯し、拘禁からの解放を求める大規模な抗議行進が展開された。
 ルーラが所属する労働者党(PT)が呼び掛けたもので、PT発表では、全国70都市で計3000万人が参加した。

 ルーラは腐敗罪でパラナー州都クリチーバの警察拘置所で拘禁されている。12年余りの禁固刑だが、最終的には確定していない。
 今年10月、大統領選挙が実施されるが、ルーラは拘禁前も拘禁後も支持率最高位を維持してきた。

 この国の富裕層・軍部・保守・右翼・親米派などで構成される反PT勢力は、過去4回の大統領選挙ですべてPTに敗れた。PTの支持層は貧困層、労働者階級、中産下層、若者らで、有権者の中で圧倒的多数派である。だから選挙のたびに勝利する力を得てきた。

 業を煮やした反PT勢力は2016年8月、弾劾条件としては些細な理由でヂウマ・ルセーフ前大統領を弾劾。反PT勢力側のミシェル・テメル現暫定大統領が政権に就いた。

 これで目的を半分達成した反PT派は今年、ルーラを選挙で勝てないようにしようと司法を動員、ルーラの身柄を早々と拘禁させた。
 だがルーラの人気は高く、選挙の投開票が公正であれば、拘置所から出馬して勝利する可能性が十分にあると見られている。

▼パラグアイ大統領が早期辞任表明

 オラシオ・カルテス大統領は5月28日、上院議員に7月1日就任するため30日で辞任したいと表明した。本来の任期は、マリオ・アブド=べニーテス次期大統領が就任する8月15日まである。

 国会は30日審議し、辞表受理の是非を決める。受理されれば、アリシア・プチェータ副大統領が暫定大統領となる。

▼ニカラグア国民対話再開へ

 5月16日に始まり23日に暗礁に乗り上げた「国民対話」は28日、近日中に再開されることが決まった。司教会議の仲介の下、オルテガ政権と反政府勢力の合同委員会が話し合い、再開を決めた。

 反政府側は、各地の自動車道を遮断している妨害柵を一部撤去することを受け入れた。だがオルテガ退陣のための「自由な選挙」を要求しており、対話は今後も難航必至だ。

 政権側は治安回復を最大目的としており、そのための「弾圧柔軟化」などには応じる構えを示している。対話中も中断後も治安部隊と反政府派学生らの衝突が続いている。

▼メキシコでまた記者殺害さる

 北東部のタマウリパス州都ビクトリア市の路上で5月29日、エクトル・ゴンサレス=アントニオ記者(44)が撲殺体で発見された。首都メキシコ市で発行されているエクセルシオール紙の通信員だった。
 これで今年メキシコで殺されたジャーナリストは6人、現政権下で44人となった。昨年は17人が殺された。

2018年5月11日金曜日

 ガイゼル旧ブラジル軍政が「危険分子」の法律外処刑を密かに決定▼当時のコルビーCIA長官からキッシンジャー国務長官に宛てた文書で確認さる▼伯軍政暗部への米政府の関与がまたも明るみに

 旧ブラジル軍政が「反体制危険分子」の非合法処刑を公認していたことがこのほど米政府文書によって確認され、ブラジル社会で非難を巻き起こしている。

 ジェトゥリオ・ヴァルガス財団(FGV)のマティアス・スペクトル教授(国際関係)は5月10日、米国務省が2015年に公開していた機密文書を分析していたところ、1974~79年のエルネスト・ガイゼル軍政期に「危険分子の法律外処刑」が継続決定され実施されていたことが判明した、と明らかにした。

 それによると、CIA長官ウィリアム・コルビー(当時)はヘンリー・キッシンジャー国務長官(同)への74年4月11付覚書で、次の事実を報告している。

 ガイゼル軍政大統領は就任直後の74年3月30日、国家情報局(SNI)長官ジョアン・フィゲイレド(次の軍政大統領)、陸軍諜報局(CIE)のミルトン・デ・ソウザ前長官および、コンフィシオ・アヴェリーノ新長官と会談した。
 メディシ前軍政下でCIE長官だったソウザは、「危険分子」104人を法律外処刑した、と語り、ガイゼル軍政も同様にすべきだと進言した。ガイゼルは「明るみに出れば重大な問題になるため考える時間が欲しい」とその場を引き取った。

 だがガイゼルは2日後の4月1日、フィゲイレドSNI長官と会談、法律外処刑を継続することを決定した。フィゲイレドは決定を受けて、「危険分子」処刑を(CIEに)命じた。米政府は、決定と命令を黙認していたことになる。

 ガイゼルは74年9月ブラジリアで、田中角栄首相と会談、関係強化で合意している。後継のフィゲイレドは1979~85年、軍政最後の大統領を務めた。
 ルセーフ前政権期の「真実委員会」は2012年、軍政期に434人が法律外処刑されるか「行方不明処理」されたと報告している。

 1985年の民政移管から33年、軍政期(1964~85)の「将軍たちの人道犯罪」の多くをCIAがいち早く把握していた事実が次々に明るみに出つつある。
 キッシンジャーこそ、南米極右軍政諸国を左翼相互抹殺協力作戦(コンドル作戦)に導いた黒幕だった。ラ米では、ノーベル平和賞さえもらったキッシンジャーへの評価は決して高くない。
 日米関係にしか目がない日本人の米国研究者の多くはキッシンジャーを極めて高く評価しているが、そんな「異常な見方」をラ米知識人は冷ややかに見ている。

2018年4月30日月曜日

 汚職を追及されているブラジル大統領がアジア歴訪を中止▼ルーラ投獄と均衡図る狙いも▼元ボリビア軍政独裁者が死去▼進歩主義同盟がチリ前大統領を表彰

 ブラジルのミシェル・テメル大統領は4月29日、アジア歴訪を中止すると発表した。5月7日から1週間の日程でシンガポール、タイ、インドネシア、ヴェトナムを訪問する計画だった。
 政府は外遊中止の理由を「議会審議」などの都合と説明している。だが連邦警察が27日、最高裁に対し、テメル大統領の収賄資金洗浄に関する捜査を60日間延長する許可を申請したことが背景にある。

 テメルには以前から巨額の収賄容疑がかけられているが、今回は、昨年サントス港運営認可期間を複数企業に大幅延長してやった見返りに新たに収賄し、不動産取得に充てるなどして資金を洗浄した容疑。買った不動産の名義は妻や息子にしていた。

 ブラジル当局は、今年10月実施の大統領選挙最有力候補ルーラ元大統領を収賄で有罪とし、身柄を拘禁した。これに対しては世論の反発が大きく、釣り合いをとるためにもテメルを追及する必要があった。

 テメルはヂウマ・ルセーフ前大統領の下で副大統領だったが、2016年8月末の「国会クーデター」(弾劾)でルセーフを解任、暫定的に後釜に就任した。今年末、任期が終わる。「ラ米1不人気の大統領」として知られる。

 一方、ブラジル先住民族の2000人が26日ブラジリアで、テメル政権による先住民領土の「前例のないほどひどい侵害」に抗議するデモ行進と集会を実施した。

▼ボリビア軍政独裁者死去

 ボリビア現代軍政史上最悪の圧政者の一人だったルイス・ガルシア=メサ元将軍大統領(88)が4月29日、ラパスの軍事病院で心臓発作により死去した。

 1980年7月、文民のリディア・ゲイレル暫定大統領(女性)をクーデターで追放し、81年に追放されるまで軍政を率いた。その間、人道犯罪が多発した。逃亡先のブラジルで逮捕され、身柄を送還され、30年の禁固刑に服していた。

 部下で内相だったルイス・アルセ=ゴメス元大佐も、麻薬取引で逮捕されていた米国から送還され、09年より30年の禁固刑に服している。

▼チリ前大統領が表彰さる

 旧社会党など中道左翼政党の組織「進歩主義同盟」は4月29日、サンティアゴでミチェル・バチェレ―前大統領を「自由、正義、連帯」への貢献を理由に表彰した。

 この同盟は、旧社会主義インターナショナルの延長組織。チリ社会党所属のバチェレ―は2006~10年、14~18年の2度、大統領を務めた。

2018年4月6日金曜日

★ルーラ・ブラジル元大統領に逮捕命令。保守・右翼勢力による2年前の「国会クーデター」が完成に向かう

 ブラジル連邦判事は4月5日午後、ルイス=イグナシオ・ルーラ=ダ・シルヴァ元大統領(72)に、6日午後5時までにパラナー州都クリチーバの連邦警察州本部に出頭するよう命じた。
 同国最高裁判所は5日未明、ルーラ元大統領が 最高裁での有罪判決確定まで身柄を拘禁しないよう求めた人身保護請求を却下、逮捕命令は時間の問題と見られていた。

 2審は今年1月、ルーラを収賄・資金洗浄罪で有罪とし、禁錮12年1か月を命じていた。ルーラは上告した。
 ルーラは、逮捕命令をサンパウロ市内のルーラ事務所で伝えられ、急遽、サンパウロ州サンベルナルド・ド・カンポ市にある金属労組本部に行き、弁護団や側近らと対策を協議した。同労組はルーラの出身母体。

 ルーラは今年10月実施の大統領選挙への出馬を決めており、支持率は現在37%で、群を抜く最有力候補。逮捕されても選挙運動は可能だが、厳しい戦いを強いられることになる。
 ルーラが所属する労働者党(PT)は、逮捕命令を激しく糾弾している。ルーラに出頭を拒否するよう求める側近や支持者も少なくない。

 ルーラ断罪と逮捕命令は、ブラジル富裕層、保守右翼勢力、米政府などが連携して打った2016年8月の「国会クーデター」によるヂウマ・ルセーフ(前)大統領弾劾に始まるPT政権潰しの陰謀の完成を物語る。

 貧困状況改善などで実績を上げ、国際的政治家となったルーラが政権に返り咲けば、富裕層などは再び、思い通りに国富を支配できなくなる。これが本質だ。

 ルーラは2期8年の大統領在任中、新自由主義を批判しつつ、それを使って経済運営を図りながら、「より良い世界」を希求するアルテルムンディスタとして国富再分配に努めた。
 子飼いの後継者ルセーフは、この国初の女性大統領となった。だが大統領弾劾条件としては些細な理由で、リオ五輪閉幕直後に追い落とされた。

 ブラジルでは国営石油ペトロブラス、最大手建設会社オデブレシ(オデブレヒト)などが絡んだ大規模・巨額の汚職事件が明るみに出され、その関連でルーラは生贄にされた。
 ルセーフ弾劾の中心人物の一人だったミシェル・テメル現大統領を含む相当数の政治家は、ルーラの「汚職」よりも、はるかに巨額の収賄事件に関与している。

 巨悪はほんの一部しか裁かれず、保守・右翼勢力の最大・正面の敵ルーラの政治生命が断たれようとしているのだ。ルーラにも甘さはあっただろうが、そこを茶番と陰謀に付け込まれた。

 トランプ政権と、亜伯両国などラ米右翼政権は、ルーラを政治的に葬り、ベネズエラのマドゥーロ・チャベス派政権を潰そうと画策中。
 社会主義キューバを弱体化させ、サンディニスタ・ニカラグア政権やエボ・モラレス大統領の改革政権を将来的に潰そうとも謀っている。

 今月13~14日リマでの第8回米州首脳会議は、米州の保守・右翼と、少数派となった進歩主義・左翼の両潮流が相まみえる場となる。ペルー政府は、ニコラース・マドゥーロVEN大統領への招待を撤回している。

 ブラジルは「国会クーデター」によって「政治的バナナ共和国」に成り下がった。さらに今、最重要政治家を潰すことで奈落の底に落ちつつある。

2017年7月13日木曜日

 ブラジル第1審で、ルーラ元大統領に禁錮9年半の判決。2審判決までは収監はない。来年の大統領選挙の最有力候補だが、政治生命危ぶまれる

 ブラジル法廷第1審(セルジオ・モロ裁判長)は7月12日、ルイス=イナシオ・ルーラ=ダ・シルヴァ元大統領に、腐敗罪で禁錮9年半の実刑判決を下した。弁護団は控訴手続きを始めつつあり、第2審での有罪判決が出るまでは身柄拘禁はない。

 だがルーラは2018年10月の大統領選挙に労働者党(PT)から出馬する意向で、選挙前に2審有罪判決が出れば、出馬は不可能になる。21世紀初頭の南米政界を故ウーゴ・チャベス前VEN大統領とともに主導したルーラの政治生命は危機に瀕している。

 今回の判決は、ルーラが、伯最大手建設会社オデブレシ(オデブレヒト)とOAS社の契約成約時に豪華住宅を受け取ったのを収賄と見なし、有罪とした。だが、この住宅はOAS名義になっており、弁護側は収賄事実はないと否定している。

 来年の大統領選挙の立候補届けは7月30日~8月15日の期間になるもよう。ルーラは主要な出馬予定者の中で30%の支持率を維持、トップに立っている。昨年8月末にルーラ後継のヂウマ・ルセーフ大統領を無理やり弾劾した保守・右翼勢力がルーラを再び政権に就かせないため展開している「政治的陰謀」と、PTをはじめ内外の左翼陣営は批判している。

 ルーラが大統領選挙で当選した後に2審で有罪判決が出た場合は、司法審議会が大統領資格を審理する。

 ルーラは他の容疑でも捜査されている。オデブレシ資金1200万ドルでサンパウロ市内に「ルーラ研究所」建設用地を買ったか否か。スウェーデン製グリペン戦闘機購入(50億ドル)に際し、影響力を行使して収賄したか否か。

 また元PT幹部でルーラの側近だった元上院議員は、国営石油ペトロブラス汚職に関与した元同社幹部を買収して沈黙させる計画にルーラも関わった、と証言、これも捜査対象だ。さらにアンゴラでの建設事業参入に際しても影響力を行使し、オデブレシ経営者と組んで違法行為に関与したという容疑もある。

 法廷は、検察庁が機密書類など厖大な証拠物件を提出したことで審理が進んだ、と検察の協力を評価している。ルーラ弁護団は、控訴するとともに、国連人権部門にも訴えると表明している。

2017年4月12日水曜日

  ブラジルのルーラ元大統領が2018年大統領選挙出馬の意思を表明。検察は現職閣僚、上下両院議員ら76人を収賄容疑で捜査へ▼ベネズエラは反チャベス未遂クーデター15周年迎える。マドゥーロ大統領は群衆に卵投げられる

 ブラジルのルーラ元大統領(任期2003年元日~10年大晦日)は4月11日、ラジオインタビューで、「私は労働者党(PT)に求められれば、2018年の大統領選挙に出馬する用意がある」と述べた。出馬意志をこれほど明確にしたのは初めて。

 ルーラは3年前から収賄容疑など5件で起訴され、法廷闘争中。10日には建設最大手オデブレヒト社のマルセロ・オデブレヒト前社長が、「ルーラ大統領に1300万レアル(約415万米ドル)を贈賄した」と証言している。

 これについてルーラは、「虚偽発言がメディアに漏らされるのが問題だ」と前置きし、「当局は私の罪状に関する証拠を提示していない。私は刑務所に入ることなど全く考えたことがない」と反論した。

 さらに、「政敵らは過去3年間、私を叩いてきたが、叩く度に私の支持率が上がるため、神経質になっている。人民大衆は私の
政権期に郷愁を抱いているようだ」と、自信を示した。

 ルーラが裁判で有罪確定となれば、公職から追放されるため、来年の出馬も不可能となる。ルーラは、「彼らは私を挑発してきた。私は挑発される度に一層出馬したくなる」と語った。

 一方、最高裁のエジソン・ファシン判事は5日、検察庁の要請に応じて、収賄事件に絡む現職の閣僚8人、上議24人、下議39人、州知事3人ら計76人の捜査を許可した。

◎ベネスエラがクーデター15周年迎える

 ベネスエラは4月11日、2002年のこの日起きたウーゴ・チャベス大統領(当時)打倒のクーデターの15周年を迎えた。きっかけとなったカラカス中心部ジャグーノ橋一帯には、政府支持派数万人が集まり、政府支持を表明した。

 15年前、この橋の上と橋の下には、反政府勢力と政府支持勢力が対峙していた。反政府派が雇ったエル・サルバドール人の狙撃手らが近くの建物などから銃撃、19人が死亡した。

 クーデターを準備していた経団連と軍部は、この事件の責任をチャベスに被せ、チャベスを拘禁、カリブ海のベネスエラ領の小島に幽閉した。だが軍部内のチャベス支持派が蜂起、チャベスを救い、カラカスの大統領政庁に送り届けた。

 チャベスは、こうして奇蹟的に復権し、クーデター派は一気に潰された。この陰謀の背後にブッシュ米政権がいたことから、チャベスの反米施政が以後、鮮明になる。エンリケ・カプリーレス、レオポルド・ロペスら今日のMUD(保守・右翼野党連合)の中堅政治家は、クーデターに加担し逮捕されたが、チャベスに恩赦された。

 この日、リカルド・モリーナ運輸相は、4月に入ってから10日まで5日に亘って展開されたMUDによる反政府行動で、地下鉄を含む公共施設に総額200万ドルの被害が出た、と明らかにした。MUDによる抗議行進参加者の大勢は平和裡に行動したが、大学生ら若者の別働隊が投石、バリケード設置、最高裁を含む公共施設破壊などで大暴れした。

 国家警察と国家警備隊は放水、催涙ガス弾発射、交通遮断などで取り締まった。一連の事件のさなかに若者2人が死亡した。この街頭暴動事件は、2014年2月に始まり3カ月間続いた「グアリンバ」(街頭暴動事件)に酷似している。逮捕者が数十人出ている。負傷者は200人を超えている。

 一方、ニコラース・マドゥーロ大統領は11日、東南部のボリーバル州グアヤナ市郊外サンフェリックスで、「サンフェリックスの戦い」200周年を記念する軍事式典に出席した。この戦いで独立軍はスペイン植民地軍を破り、その後、勝ち戦を続け、独立に漕ぎつけることになる。

 式典終了後、マドゥーロ大統領は軍用車で大群衆の中を移動していたところ、1~2ダースの鶏卵を投げつけられた。うち1個が大統領の頭部に命中した可能性がある。この事件に関与した青少年5人が逮捕された。

 反政府派は、聖週間さなかの13日も、その後の19日にも抗議行動を予定している。「マドゥーロ打倒」の世論を盛り上げ、軍部に決起させるのがMUDの狙いだ。米政府や保守・右翼の外国メディアはMUDを支援している。
 

2017年4月6日木曜日

 ブラジル選挙最高裁判所がルセーフ前大統領とテメル現大統領の「不正選挙資金」事件の判決公判日程を延期。ルーラ元大統領は大統領選挙の早期実施を訴える▼ベネズエラ大統領が「来年、選挙を実施」と発言

 ブラジル選挙最高裁判所(TSE)は4月4日、ヂウマ・ルセーフ前大統領とミシェル・テメル現大統領が2014年に正副大統領として当選した選挙時、不正資金を用いたとされる容疑の裁判の判決公判日程開始を今月下旬まで延期した。この日開始の予定だったが、ヂウマ被告側弁護団が証人証言日程を延期するよう求め、これを認めたため。

 同選挙で敗れたPSDB(伯社民党)は16年12月、ヂウマ-テメル陣営は、建設会社最大手のオデブレヒト社から3400万ドルをもらい、それを選挙資金に組みん込んだとして、選挙無効を求めて提訴した。

 PSDBが、選挙で勝てない労働者党(PT)を叩き潰す狙いで提訴したのは明らか。ヂウマ(PT所属)と、次期大統領選挙での最有力候補と目されるルーラ元大統領(PT)=不正蓄財などで公判中=を有罪で「参政権8年停止」に追い込めば、選挙で勝つ公算が膨らむからだ。

 ヂウマは、訴訟の基となったオデブレヒト前社長マルセロ・オデブレヒト(服役中)の証言について、「(資金を提供したという)マルセロの証言は偽りだ。おそらく拷問されて言わされたのだろう」と語っている。ルーラは、「一時も早く(国会でなく)直接選挙で大統領を選ぶべきだ」と主張している。

 テメルはPMDB(伯民主運動党)所属で、昨年、PTと袂を分かち、PSDBと結託して強引にヂウマ大統領を国会での弾劾裁判にかけ失職させ、自分が後釜に座った。

 裁判で有罪になれば、ヂウマは8年間公職に就けなくなり、テメルは大統領の座を追われることになる。そうなれば国会が下院議長を暫定大統領として、新大統領を選ぶことになる。その新大統領の任期が半年を上回る場合は、大統領選挙実施に道が開ける。

 かつての正副大統領は今は敵同士で、共に被告になっている。両被告の弁護団は、TSEが却下の判決を下すのを望んでいる。ヂウマは既に弾劾で失職、テメルは支持率が10%しかないが2018年末までの残り任期を全うしたいからだ。

▼ラ米短信   ◎ベネスエラ大統領が「選挙実施」を口にする

 ニコラース・マドゥーロ大統領は4月4日、訪問先のアプレ州で、「来年は大統領選挙であろうと地方選挙であろうと選挙がある。だから闘おう」と述べた。

 大統領選挙は18年10~12月に実施される見通し。州知事・州会議員選挙は16年末までに実施されねばならなかったが延期
されてきており、今年半ば実施という観測も出ていた。

 だが、この日の大統領発言は、大統領選挙と州選挙を来年同時に実施する可能性をも示唆している、と受け止められている。
 


  

 

2017年3月3日金曜日

ブラジル新外相は元ゲリラ、アロイジオ・ヌネス氏

 ブラジルの新外相に3月2日、アロイジオ・ヌネス上院議員(71)が就任した。2月22日に辞任したジョゼ・セラ外相の後任。ヌネスは軍政期の1960年代、都市ゲリラだった。

 ヌネスはサンパウロ大学法学部生だった1963年、政治活動に参加。64年軍事クーデターで軍政が発足すると、非合法だったブラジル共産党(PCB)に入党する。だがやがて、武闘派指導者カルロス・マリゲーラに従って離党、ゲリラ「民族解放行動」(ACN)を結成。最高司令マリゲーラの側近になる。

 ACNは68年8月、列車を襲撃し、給与袋を強奪。資金1億800万新クルゼイロ(当時の通貨単位。約1万1600ドル)を得た。ヌネスは、逃走時に車を運転した。

 同年、指導部の命を受けてフランスに亡命。アルジェリアでのゲリラ訓練実施の交渉などを担う。79年まで巴里に滞在、パリ大学で政治学修士となる。恩赦法が施行された79年に帰国する。

 83年、サンパウロ州会議員となって政界に入り、その後、同州選出連邦下議、同州副知事、連邦政府司法相、連邦上議を歴任。このたび、テメル政権の外相に抜擢された。当初はPMDB(伯民主運動党)党員、後にPSDB(伯社民党)に移り、現在に至る。ヌネスはゲリラ時代を振り返って、「ゲリラ闘争は結果的に失敗したし、民主的ではなかった」と語っている。

 ブラジルのヂウマ・ルセフ前大統領も元ゲリラだった。ウルグアイのホセ・ムヒーカ前大統領も元ゲリラ。ラ米には独特の「ゲリラの政治文化」があり、元ゲリラが要職に就くのは全く珍しいことではない。

 クーバのラウール・カストロ議長は元ゲリラ部隊司令で、1959年のクーバ革命の覇者。ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領も79年のサンディニスタ革命の覇者。エル・サルバドールのサルバドール・サンチェス=セレーン大統領もゲリラ司令だった。

▼ラ米短信   ◎メヒコ・中米外相会議開かる

 中米統合機構(SICA、8カ国)と、SICAオブザーバー国メヒコの外相会議が3月2日、コスタ・リカの首都サンホセ郊外で開かれた。トランプ米政権下で重大問題になっている不法移民問題を中心に協議した。

▼ラ米短信   ◎ベネスエラ政府が米国を糾弾

 ベネスエラ外務省は3月2日、米上院による2月28日の反ベネスエラ決議について、「ベネスエラに対する内政干渉であり、帝国主義の脅し」と指摘、決議を糾弾。「世界の友邦人民はベネスエラの大義を支持している」と述べた。

 ベネスエラ国会の政権党会派も、米上院宛てに抗議し、反ベネスエラ行動を止めるよう要求した。

2016年12月12日月曜日

ブラジル世論調査:63%がテメル大統領辞任を要求

 ブラジルで実施された最新の世論調査の結果が12月11日公表された。それによると、ミシェル・テメル大統領の支持率は10%だった。63%は即時辞任を要求。34%は「まあまあ我慢できる」だった。

 これを受けて、野党PT(労働者党)は同日、国会下院でテメル即時辞任と大統領直接選挙実施を要求した。最大政党PMDB(伯民主運動党)のテメルは、些細な理由でヂウマ・ルセフ前大統領(PT)を8月末、弾劾に持ち込み、政権に就いた。テメルは副大統領として弾劾裁判中、大統領権限を代行していた。

 テメルの不人気は、前大統領弾劾がPT長期政権を潰すためのPMDBなどによる陰謀に基づく事実上のクーデターだったことや、テメルの汚職、経済後退などによる。

 テメルは国営石油会社ペトロブラスから巨額の賄賂を受け取ったとして取り調べ対象者に含まれている。同社汚職事件と絡む建設最大手オデブレヒト社の元幹部は最近、法廷で、2014年にテメルから300万ドルを要求されたと証言した。テメルは否定したが、収賄疑惑は一層強まっている。
 
 世論調査のテメル施政に関する設問には、40%が施政悪化と回答。34%が変わらない、21%が良くなったと答えた。経済状況では65%が悪化、20%が安定、9%が良くなった、だった。

 テメル政権の閣僚は既に6人辞任、うち4人は腐敗が理由だった。11月末にはテメルの側近、ジュエル・リマ大統領府長官が、自身の不動産処理のために職権を濫用した事実が暴露され、辞任に追い込まれた。

 またテメルの盟友、レナーン・カリェイロス上院議長(PMDB)は腐敗により今月5日、最高裁から議長職務停止命令を受けたが、テメルらの支持で居座った。最高裁は腰砕けで7日、命令を覆した。だがカリェイロスは犯罪容疑者であるため大統領地位継承権を剥奪された。

   
 

2016年11月29日火曜日

ブラジル野党がテメル大統領弾劾を国会に要求

 ブラジルの野党「社会主義と自由の党」(PSOL)は11月28日、国会下院のロドリーゴ・マイア議長に、ミシェル・テメル大統領を弾劾裁判にかける手続きを開始するよう正式に要求した。理由は、私的事項に権限を行使したこと。

 大統領の側近で大統領府長官だったジェデル・ヴィエイラ=リマは25日、バイーア州内に持つ不動産に関する私的案件を処理するため、文化省管轄下にある歴史文化財庁(IPHAN)に圧力をかけたことが暴露され、辞任した。マルセロ・カレーロ前文化相が、リマの発言を録音、これを証拠として提示していた。

 カレーロはまた、同じ案件でテメル大統領も圧力をかけたと暴露、大統領発言を録音していたことを明らかにした。PSOLはこれを受けて、弾劾裁判を下院議長に要請した。受理したマイア議長は、「根拠がない」と述べており、弾劾裁判には否定的だ。

 ヂウマ・ルセフ前大統領の政権党だった労働者党(PT)も、テメルに辞任を要求している。テメルは、ルセフを強引に弾劾に持ち込んだ守旧派の筆頭で、テメル政権は正統性に欠けている。

 一方、国営石油会社ペトロブラスの巨額の汚職事件に関与、収賄した下院議員たちは24日、お手盛り恩赦法案を採択しようとしたが、テメルが27日、腐敗事件のお手盛り恩赦は許さないと言明。法が成立しても拒否権を行使すると述べた。だが当のテメルにも、ペトロブラス絡みの巨額収賄嫌疑がかけられている。

 ルセフ前大統領は、過去には弾劾条件にならなかった決算処理を理由に弾劾された。テメルの影響力行使は重大な逸脱だ。テメルは深刻な事態に陥ったが、現状ではマイア議長が弾劾裁判手続き開始に踏み切る可能性は乏しい。

 因みに、クチンスキ・ペルー政権のマリアーノ・ゴンサレス国防相は28日、愛人を月給4600ドルの顧問に採用していたことが醜聞事件となって辞任に追い込まれた。
 
 
 

2016年9月1日木曜日

★★★大統領弾劾でブラジル「バナナ共和国」に成り下がる

 ブラジル国会上院の大統領弾劾法廷は8月31日、上院議員81人全員がヂウマ・ルセフ大統領弾劾投票に参加、弾劾賛成61、反対20で弾劾を決定。ルセフ大統領は解任され、政敵のミシェル・テメル大統領代行(ブラジル民主運動党=PMDB)が大統領に昇格就任した。

 テメルは19年元日までのルセフの残り任期を務める。これにより03年元日から13年8カ月続いた労働者党(PT)政権は終わった。テメルはG20首脳会議の開催地中国にいそいそと向かった。ブラジルが加盟するBRICSの他の4カ国は対応に苦慮しており、弾劾について言及を控えている。

 ルセフは、政治的権利を8年間剥奪するか否かを問う投票では、賛成42、反対、36、棄権3で、剥奪を免れた。剥奪には3分の2の54人の賛成が必要だったからだ。弾劾も同様だが、賛成票が54票を7票上回った。

 ルセフ弾劾は、「粉飾決算」による責任を問われたものだが、過去にカルドーソ政権もルーラ政権もやってきたことであり、弾劾条件を満たす重大犯罪ではない。このため、選挙で勝てない保守・右翼勢力が国会と司法を使って決行したクーデター、とも見方が定着。テメル代行体制は非難されてきた。

 直接的な真相は、巨額の収賄で追及されている多くの上下両院議員が追及を阻止するため打った政変劇ということ。弾劾手続きは昨年12月、収賄を追及され始めたエドゥアルド・クーニャ下院議長(当時、PMDB)が、追及を許可したルセフへの報復として開始した。

 また弾劾裁判の判事役となった上院議員81人のうち、議長を含む35人が収賄で追及対象となっている。またテメル自身も追及されているが、副大統領、大統領代行、大統領と要職にあって、捜査など直接的追及を免れてきた。

 財界、米国、ラ米新自由主義保守・右翼陣営は、テメル政権の石油産業をはじめとする民営化を願い、今回の政変を歓迎している。

【参考資料:伊高浩昭「バナナ共和国に成り下がったブラジル 事実上のクーデターでルセフ大統領弾劾へ」(岩波書店「世界」2016年7月号掲載)】

 14年10月の大統領選挙で5450万票を得て再選されたルセフの弾劾に怒ったベネスエラ、エクアドール、ボリビアは、ブラジル駐在大使を召還した。ラファエル・コレア赤大統領は、弾劾理由をでっちあげ民主政治を裏切った、と厳しく非難した。

 ニカラグアのオルテガ政権も弾劾を糾弾、ルセフとルーラ元大統領への連帯を表明した。亜国のクリスティーナ・フェルナンデス前大統領は、「ブラジル初の女性大統領弾劾は(ラ米・南米)地域の民主政治を後退させた」と述べ、オヤンタ・ウマーラ前ペルー大統領もルセフへの連帯を表した。クーバのラウール・カストロ政権も弾劾を「国会・司法クーデター」と見なしている。

★クーバ短信  米ジェットブルー航空の旅客便1番機(エアバスA320)が8月31日、フロリダ州フォート・ローダーデイルを飛び立ち、クーバ中部のサンラクラーラ市に到着した。乗ってきたアンソニー・フォックス米運輸長官はハバナで、ブルーノ・ロドリゲス外相、アデル・イスキエルド運輸相と会談した。

 9月1日米シルヴァー航空機サンタクラーラ便、7日アメリカン航空(AA)オルギン便、シエンフエゴス便、8日AAカマグエイ便、サンタクラーラ便、マタンサス便が、それぞれ就航する。

2016年8月2日火曜日

ブラジル上院のルセフ大統領弾劾裁判日程固まる

 ブラジル国会上院弾劾特別委員会は8月1日、ヂウマ・ルセフ大統領弾劾審議を2日再開、3日審議し、4日採決する、と発表した。委員会審議は5月12日から中断していた。

 委員会採決結果は5日(リオ五輪開会日)、上院本会議に報告される。本会議は9日、定数81の過半数41で可決できる。可決されれば最高裁が最終弾劾法廷を開廷、29日から5日間の日程で証人喚問などを行なう。

 本会議は9月2日の最終日までに大統領弾劾を決める。弾劾には、定数の3分の2の54議席以上の賛成が必要。

 7月31日にはリオデジャネイロ、サンパウロを始め全国18都市で弾劾反対、賛成両派のデモ行進が実施された。全国で計5万人が参加した。

 有産層主導の弾劾賛成派は、国際メディア五輪取材陣の群がるリオで海岸を行進。これに引きずられて「大統領弾劾賛成派がデモ」と、この日、弾劾反対派も行進していた事実を全く報じない日本メディアもあった。

▼ラ米短信  ベネスエラ国家選挙理事会(CNE=選管)は8月1日、反政府野党連合MUDが提出していた大統領罷免国民投票実施申請に必要な有権者の1%(20万人)の署名の正しさが確認された、と発表した。

 罷免賛成派は次いで、選管が指定する期日内に有権者の20%(400万人万人)の署名を集めて国民投票実施請求をせねばならない。選管は1日段階では、新たな署名収集・提出日を指定しなかった。

 最近の世論調査では、ニコラース・マドゥーロ大統領の不支持率は73%、退陣要求賛成は64%に達している。

▼ラ米短信  ニカラグア国会は7月29日、野党議員16、同補欠12人の計28人の資格を取り消した。同28人は野党連合「民主のための国民連合」(CND)に所属していた。

 CNDは、「独立自由党」(PLI)と、「サンディニスタ改新運動」(MRS)の連合。MRSは、「サンディニスタ民族解放戦線」(FSLM)のダニエル・オルテガ大統領に反対するサンディニスタ分派。資格を奪われた28人中4人はMRS党員だった。

 今年5月、オルテガと通じるペドロ・レジェスという政治経験の乏しい人物がPLI党首の座に着き、エドゥアルド・モンテアレーグレ党首らを追放。レジェスは選管に議員資格剥奪を求めた。

 憲法は、議員議席と所属政党の一体化を謳っており、政党を追いだされた議員らは無所属を宣言した。無所属ならば、議員資格喪失を免れうると考えたからだ。

 ところが選管は、MRS党員を含むCND議員・補欠の資格停止を決め、これを国会に勧告した。国会は28人の追放を決めた。

 背景には、11月6日実施の次期大統領選挙がある。オルテガは連続3選を狙うが、万が一に備えて対立候補を出馬前に潰すため、今回の強引な措置に出た。モンテアレーグレは過去にも出馬したことがあり、知名度は高い。

 大統領出馬登録は8月2日締切りとなる。オルテガは政権党FSLNと16小党派の選挙連合「ニカラグア勝利団結連合」(AUNT)を組み、選挙母体として7月登録した。オルテガは「キリスト教、社会主義、連帯」を政治精神として掲げている。

 28日追放後、内外で「オルテガは事実上の一党支配体制を築き、独裁を恒久化しようとしている」などの非難が出ている。

 ニカラグアの公共対外累積債務は6月末、49億2430万ドル(GDP比37%)に達した。国外からの出稼ぎ者の送金は今年上半期6億ドルで、前年同期比4・7%増し。

 送金額の55%は米国から、21%は隣国コスタ・リカ(CR)から。ニカラグア人口630万人の2割前後は米国、CRなどに住む。2015年の海外からの送金額は12億ドルだった。

 進行中の「ニカラグア大運河」建設事業は、選挙期間中、政府はタブー扱いしている。資金確保の遅れに加え、環境汚染を招いていると反対する世論や、土地収用を拒否する農民ら地主が少なくなく、運河完成に疑問符がついているからだ。
 

2016年7月5日火曜日

停職中のルセフ大統領もリオ五輪開会式に招待さる

 リオデジャネイロ五輪組織委員会は7月4日、停職中のヂウマ・ルセフ大統領を8月5日の開会式に招待することを決めた。主賓席の、ミシェル・テメル大統領代行と離れた席に座ることになる。

 この措置は、テメル代行の正統性に納得しない各国首脳が開会式を欠席するのを防ぐため、と解釈されている。テメルには収賄疑惑が浮上している。

 ルセフ大統領はこの日、ラジオ会見で、副大統領だったテメル代行を「裏切り者で権力奪取者」と糾弾した。また、「そのような人物が幹部であるブラジル民主運動党(PMDB)と連立したのが大きな間違いだった」と述べた。同党は3月連立を離脱、ルセフ弾劾を推進した。

 ルセフは別の会見で、「復権したら政治改革し、選挙で選ばれながら不当に失権した者を救済する」と語った。さらに、「非合法のテメル代行政権が廃棄した社会政策を復活させる」と強調した。

 また仏誌レクスプレスとの会見では、「次期大統領選挙の我々の候補はルーラ(前大統領)だ」と述べ、「今回のクーデターは人気の高いルーラの失権が狙いだった」と指摘した。

 ルセフ弾劾審理中の上院の調査委員会は6月半ば、弾劾理由となっている「粉飾決算」にルセフが関与した証拠はない、との結論に達している。7月4日には、ルセフ弁護団が無罪を主張する弁論を展開した。

 ★上院議長レナーン・カリェイロスは6月末、ルセフ弾劾判決は、8月21日に閉会するリオ五輪後の同月25~27日になると明らかにした。カリェイロスにも収賄の疑いがかけられている。

 テメル政権は6月半ば、ルセフが国内移動に空軍機を使用する権限を、首都ブラジリアと自宅のあるポルトアレーグレ市間に限定した。これに対しルセフ支持者は一日で10万ドルを集め、ルセフの移動費とした。

2016年6月4日土曜日

テメル・ブラジル代行政権、陰謀暴かれ弾劾急ぐ

 ブラジルのテメル代行政権は、停職中のヂウマ・ルセフ大統領の弾劾裁判を7月半ばにも終わらせようと躍起になっている。弾劾に賛成していた元サッカー伯代表のロマリオ(社民党)ら3人の上院議員が6月2日、弾劾の口実の下で蠢く権力奪取の陰謀を嗅ぎ分け、弾劾賛成派から離脱する動きを見せたのに慌てたためだ。

 弾劾には上院議員81人の3分の2(54)の賛成が必要だが、賛成派から脱落が増えれば、54票を割る可能性も出てくるからだ。
 
 国営石油絡みの大規模な贈収賄疑獄「ペトロラン」で容疑や嫌疑をかけられている上下両院議員たちは、捜査を終わらせるために大統領弾劾という荒業を打った。最近、テメル政権の閣僚2人が「捜査打ち切りのため弾劾が必要」という趣旨の発言をしていた事実が、録音暴露によって明るみに出、同閣僚2人は辞任に追い込まれた。ロマリオは、これで嫌気がさしたらしい。

 上院弾劾特別委員会は2日、問題発言を録音したセルジオ・マシャード元トランスペトロ社長の証言および録音証拠を採用しないことを決めている。これまた茶番劇だ。

 同委員会は2日には、弾劾裁判日程を決める予定だったが、弁護側の厳しい抵抗で決めることができなかった。

 テメル政府側は、6月6日に日程を決めることにしている。同6~17日に証言・証拠提示、20日ルセフ大統領尋問、21~25日弾劾告訴文書審理、26~30日弁護側主張審理、7月4~5日委員会弾劾決議審理、6日同決議採択、7日本会議審理、12~13日ごろ本会議採決、という日程を描いている。

 テメル側は、これ以上、内輪からボロが出ないうちに大急ぎで弾劾してしまおうという戦略だ。8月5日開会のリオデジャネイロ五輪前に正式な大統領になっていたいというテメルの野心もあるようだ。

 一方、リオでは2日、「民主のための女性」所属の女性数千人がルセフ大統領支援と、弾劾茶番劇糾弾のためデモ行進した。

▼ラ米短信   ミゲル・ディアスカネル玖第1副議長は6月3日、岸田外相と会談した。外相は、日本の北朝鮮関係に関し、クーバの協力を求めた。副議長は2日には安倍首相、麻生財務相らと会談している。

 副議長は外相との会談後、墨田区にあるスカイツリーを見学。夜は東京ドームで巨人戦を観戦。試合前にクーバ人選手たちと話し合った。副議長一行は公式日程を終了、4日羽田空港から帰国の途に就く。

 因みに三菱商事は1日、ハバナ事務所を再開した。1981年に占めて以来、35年ぶり。丸紅、三井物産なども再開を検討中。

2016年5月25日水曜日

ブラジル大統領弾劾はクーデター:辞任閣僚発言が示す

 ブラジルのテメル代行政権が5月23日、最初の危機に直面した。ヂウマ・ルセフ大統領が弾劾裁判にかけられることになり停職処分となった5月12日、副大統領ミシェル・テメルは大統領代行に就任した。だが23日、重要閣僚の一人である企画相ロメーロ・ジュカーが「重大な失言」を新聞に暴かれて辞任に追い込まれたのだ。

 ジュカーはルセフ政権が存続していた3月13日、国営石油ペトロブラス子会社トランスペトロ社の元社長セルジオ・マシャードとの会話中、「ペトロラン(ペトロブラス絡みの大規模贈収賄事件)捜査を止める唯一の方法は、大統領をルセフからテメルに替えることだ」と語った。この会話が録音されていて、「特ダネ新聞」として名高いフォーリャ・デ・サンパウロ紙が23日暴露した。

 テメルもジュカーもペトロラン関与疑惑がかけられている。さらにテメル政権の閣僚にまだ7人のペトロラン関与者がいる。ジュカーは、最大政党PMDB(伯民運党)党首。

 さらに重大なのは、ジュカーが「国軍高官らもヂウマ打倒を了解している」という趣旨の発言をしていることだ。

 ルセフ大統領陣営は、ジュカー発言は国会の弾劾工作がクーデターだった何よりの証拠だ、といきり立っている。テメル政権は早くも<時限爆弾>を抱えることになり、行方に暗雲が立ち込め始めた。それが爆発すれば、上院での弾劾裁判に影響が及び、弾劾支持派が減る可能性も、無きにしもあらずだ。

 一方、テメル代行は24日、教育など社会支出予算の削減や年金制度見直しを発表した。またジョゼ・セラ外相は23日ブエノスアイレスでの亜伯外相会談で、南部共同市場(メルコスール)の「政策軟化」について話し合った。

 ルセフの政治的貢献人であるルーラ前大統領は汚職罪で起訴されているが、弁護団は23日、最高裁に対し、ルーラがルセフから任命された3月16日からルセフ停職の5月12日まで官房長官だった事実を認めるよう訴えた。

 最高裁判事の一人は、PSDM(伯社民党)など、ルセフ弾劾派の要求をいれて、ルーラの就任を無効と判断した。
   

2016年5月13日金曜日

ブラジル大統領ヂウマ・ルセフが政庁離れる際、陰謀を糾弾

 ブラジル保守・右翼・財界による5月11~12日の国会クーデター(弾劾裁判開始決議)で最長180日間停職処分となった被害者ヂウマ・ルセフ大統領(68)は、大統領政庁プラナルト宮を明け渡す前に支持者と記者団を前に演説した。要旨は次の通り。

「私は有権者5400万人によって大統領に選ばれた。この弾劾裁判には、投票への尊重、人民の至高の意志、憲法が懸かっている。過去13年間の成果も懸かっている。

「これは政治裁判でなく、詐欺であり、本物のゴルペ(クーデター)だ。私が再選された直後、野党から票の数え直しの要求があった。そこには選挙無効化の意図があった。その後、私に対する策謀が公然化した。

「彼らの唯一の狙いは、選挙で得られなかったものを実力行使によって獲得することだ。弾劾には国の未来も懸かっている。

「私は失敗はしたが、犯罪は犯していない。国外に口座も持たない。収賄したこともないし、腐敗に関与したこともない。そんな人間に対して、最大の暴虐がなされた。

「私は、多くの試練に晒される運命にある。だが不可能に思えたことを克服してきた。かつて拷問され、いままた不正義に遭っている。最も痛ましいのは、私が偽りの司法と政治の犠牲者になったことを受け止めねばならないことだ。

「私は人民の能力を信じることを学んだし、多くの敗北や偉大な勝利を経験してきた。だがこの国でゴルペと新たに闘わなければならなくなるとは夢想だにしなかった。

「人民がゴルペを糾弾するのは疑いない。動員し団結し平和裏に行動してほしい。民主闘争に終わりはなく、恒常的に関与することだ。民主のために常に闘うべきだ。決して諦めてはならない。

「みなさん、ありがとう。

[ヂウマは依然、憲政大統領であり、大統領公邸アルヴォラーダ宮に住み、約8000ドルの月給を受け続ける。空軍機使用も認められる。弾劾裁判に対応するため、5~10人の側近らを顧問として持つこともできる。これらの特権は弾劾されるまで続く。弾劾裁判で否決されれば、あるいは180日以内に弾劾されなければ、大統領に復帰できる。だが、その道は狭く細い。政敵ミシェル・テメル副大統領が大統領代行となったが、最高裁は下院にテメル弾劾の手続き開始を命じており、テメルにも弾劾される可能性がある。正副大統領弾劾となれば、出直し選挙となる道が開けてくる。]
 

 

2016年5月10日火曜日

ブラジル国会弾劾茶番劇に笑えぬ[幕間茶番劇]

 ブラジル国会下院のワルヂル・マラニャン暫定議長は5月9日、ヂウマ・ルセフ大統領弾劾を上院に求めた4月17日の下院本会議決議を無効と宣言した。「民主を救うため」と説明した。マラニャンは弾劾反対票を投じていた。ところが弾劾はから強い圧力を受けて同日夜、無効宣言を撤回した。

 汚職まみれの議員たちが大統領弾劾を策謀した一大茶葉劇のクライマックス寸前、大根役者マラニャンが演じた寸劇も茶番劇だった。地に落ちていたブラジル国会の権威は地中に沈み込んだ、と言わねばならない。

 マラニャン議長は、国家弁護総監ジョゼ・カルドーゾ弁護士が下院決議前に大統領側の弁明機会を求めていたが、当時の下院議長エドゥアルド・クーニャはこれを認めず、採決を断行した事実を、無効の理由としていた。クーニャは巨額の収賄で起訴されており、このほど最高裁によって議長職を解かれた。

 マラニャンは、「いかなる裁判にも弁明機会が保障されているが、それがなかった」と語っていた。また、「弾劾賛成派議員の多くは投票前に弾劾賛成の意志表示をし、憲法が保障する弁明権を損害した。議員は各自が信念に基づいて投票すべきところを、党議に拘束されて投票した」と指摘、これらも無効の理由としていた。

 ルセフ大統領はブラジリアの政庁で、押し掛けた支援の大群衆とともに「下院決議無効」を知ったが、「状況が不確実ゆえ、慎重に対処しよう。策謀と反策謀が渦巻いてきたから」と語った。その懸念通りになった。

 マラニャンは、弾劾促進案を下院に差し戻すよう上院に要請していた。審議と採決をやり直すためだった。だが上院のレナン・カリェイロス議長は9日、下院決議無効宣言を受け入れないとして、予定通り、11日の本会議で弾劾推進案を採決すると述べた。この勢いに押され、マラニャンは無効宣言を覆した。

 サンパウロ、リオデジャネイロなど都市部では、弾劾支持派の中産上層部を中心とする右翼・保守勢力と、労働者ら大統領支持派によるデモが起きている。

 ブラジル政局は、混迷の迷路にはまりこんで久しい。焦点は、上院本会議の動きだ。大統領の弁護士カルドーゾは10日、上院の弾劾裁判開始をめぐる審議・採決の中止を求めて最高裁に提訴した。
 

2016年5月7日土曜日

ブラジル上院が大統領弾劾審議の是非を11~12日決定へ

 ブラジル国会上院の大統領弾劾問題特別委員会(21委員)は5月6日、弾劾審議開始を上院に求める同委員会の報告を賛成15、反対5、棄権1で可決した。これにより、上院(定数81人)は本会議を11日開き、弾劾審議開始案を採決する。

 採決は11日夜か12日未明、41票以上の賛成をもって可決される見通し。最高裁は5日、大統領弾劾の推進者でヂウマ・ルセフ大統領の最大の政敵、腐敗まみれのエドゥアルド・クーニャ下院議長の下院議員資格を遅ればせながら停止、これにより下院議長を事実上解任した。
 
 現時点では、最高裁は土壇場で、弾劾推進、クーニャ解任という<喧嘩両成敗>の手を打ったと言える。

 最高裁は先に、ミシェル・テメル副大統領の弾劾審議を下院に要請したが、下院は無視してきた。上院で11~12日に弾劾審議推進が決まれば、ルセフ大統領は最大180日間、停職処分となり、政権を離れるのを余儀なくされる。その場合、テメルが大統領代行となる。テメルは弾劾推進の「共犯者」と見なされており、やはり収賄嫌疑がかけられている。

 クーニャが牛耳っていた下院は論外だが、検察庁や最高裁のテメルに対する甘い手加減は目に余る。もしテメルが失墜させられれば、正副大統領不在となって、10月の統一地方選挙時に繰り上げ大統領選挙実施への道が開けてくる。

 だがブラジルの伝統的支配体制は「テメル代行政権」で政治危機を乗り切り、労働者党(PT)政権の社会政策重視路線から、富裕層・大企業優先の新自由主義経済路線強化に切り換えていく構えだ。米国は暗黙の支持を与えている。

 上院がルセフ停職を決めれば、1964年の軍事ゴルペ以来の重大な政変(国会ゴルペ)が歴史に記録されることになる。

 一方、ルセフ大統領は4日、英BBC放送によるインタビューで、「軍事ゴルペ(クーデター)に代わる国会ゴルペが進行している。私は絶対に辞任せず、最後まで闘う。辞任すればゴルペを成功させることになるからだ」と語った。

 リオデジャネイロ五輪の聖火が到着したことについては、「喜びと悲しみが交錯している。聖火は五輪を開催するブラジルの努力を象徴する。だが私は法的根拠なく弾劾される危機にあり、五輪開会式に出られなくなる可能性がある」と述べた。

 政財界に蔓延する汚職については、「ブラジルは諸外国と変わらないが、汚職取り締まりが弱い。だがルーラ政権以来、取締強化策を講じてきており、2013年からは贈収賄事件に関与した企業側も罰せられることになった」と指摘した。

 大統領は、クーニャらの画策によって友党が次々に政権を離れ、下院で4月17日、弾劾推進決議が採択され上院に送られたことに関し、BBCから政党対策に不備があったのではないかと問われると、「私は13~14政党と連携していた」と答えた。

 ブラジルには現在35政党があり、うち26党は国会議席を持つ。大統領は「イデオロギーを備えた政党は3~4党だけで、残りは利益代表の党で、利害関係で動く」と語った。
 

2016年5月6日金曜日

ブラジル最高裁が大統領弾劾推進の下院議長を解任

 ブラジル最高裁は5月5日、エドゥアルド・クーニャ下院議長の議員資格を停止、事実上議長を解任した。クーニャはヂウマ・ルセフ大統領弾劾の中心的推進者だった。クーニャは異議を申し立てると述べた。

 最高裁の担当判事テオリ・ザヴァスキは、500万ドル収賄など汚職にまみれたクーニャに下院議長を担う資格はなく、ましてや大統領になる資格はない、と糾弾した。下院議長は、副大統領に次ぐ大統領継承位。

 同判事は、「クーニャは下院を商談の場にし、自らの職務を商品に変えた」と扱き下ろした。

 ルセフ大統領は、「遅すぎた決定だが、歓迎する。クーニャは昨年12月初め、汚職捜査が及ぶと、報復として弾劾審議を決めた」と語った。

 一方、上院弾劾問題特別委員会の書記は4日、上院本会議で弾劾審議すべきだと勧告する報告書をまとめた。報告書は5日採決される。可決されれば、11日にも本会議で採決される。最高裁のクーニャ解任決定はあまりにも土壇場の微妙な時期になされた、極めて政治的な判断だった。

 また検察は、ザヴァスキ判事の許可を得たため、ルーラ前大統領とルセフ大統領を、汚職事件捜査妨害の容疑で取り調べることになった。弾劾理由が極めて薄いため、理由を付け足す狙いとも受け取られる。