2017年7月31日月曜日

★ベネズエラ制憲議会(ANC)議員選挙終わる。808万人投票(41%)と選管発表。N・マドゥーロ大統領はANCを国会議事堂に8月2日召集▼親米・反ベネズエラのラ米諸国はリマで8日外相会議開き対応協議へ▼ボリビア、ニカラグア、エル・サルバドールなどは「勝利」を讃える

 ベネスエラで7月30日、制憲議会(ANC)議員選挙が実施され、ニコラース・マドゥーロ大統領と政権にとって大勝利に終わった。国家選挙理事会(CNE)のティビサイ・ルセーナ理事長は、30日深夜、投票率は41・53%、808万9000人が投票した、と発表。「暴力と脅迫に屈せず投票した」と選挙民を讃えた。

 出馬したのは、政権党ベネスエラ統一社会党(PSUV)と、その友党の党員ばかり。選挙をボイコットしたばかりでなく、道路封鎖、破壊活動、対人テロで投票を阻止しようとした保守・右翼約20政党の野党連合MUDは、新しい憲法条項を起草するANCに代表を一人も持たない状況に陥ることになる。

 マドゥーロ大統領は一夜明けた31日、政権党の勝利集会で演説。「チャベス主義政権18年間で最大の勝利だ」と自賛。、ANCを8月2日、国家議事堂に召集する、と発表した。

 国会は昨年初めからMUDが圧倒的多数議席を確保、政権との「ねじれ現象」を最大限に活用し、政策にことごとく異議を唱えてきた。これに対し政府は、国会の立法や決議を最高裁判断で「違憲」とし、政令で施政を続けてきた。

 だが、この手法も限界に達し、大統領は今年3月末、国会機能を最高裁憲法法廷に移そうとして失敗。これが4月初めから今日に至る、MUD指揮下の反政府暴動を招いた。

 マドゥーロ政権を倒してラ米左翼陣営を大きく弱体化させ、財界主導のMUD政権を樹立し、ベネスエラの原油を20世紀末までのように支配したい米政府は,MUDを支持。クーデター、テロりズム、外交、メディア宣伝などの戦略をMUDに授け、巨額の資金援助をしてきた。MUDが「持久戦」を展開してこられたのも、米政府の支援があったからだ。

 「メディアテロリズモ」と呼ばれるほどにひどい「反マドゥーロ報道」は、虚偽情報だらけで、ジャーナリズムは死を宣告されたも同然の状態となってきた。これに影響され抜け出せない日本メディアも目立つ。「選挙を強行」という見出しもあったが、これではANCに反対する米州諸国の内政干渉路線に加担していると解釈されても仕方ないだろう。

 マドゥーロ大統領は31日の演説で、「ANCを開設したらベネスエラに厳しい経済措置を講じる」と脅してきたトランプ米政権について、「カラホ(阿呆か)! トランプが何と言おうが無意味だ。ベネスエラ人民の声が重要なのだ」と強調した。

 また、30日に全国で投票所150カ所が反政府暴徒に襲撃されたと明らかにし、「真実・和平委員会」を直ちに設置すると述べた。反政府暴動の実態を調査・検証し、国会議員らMUD指導部を法的に追及する構えを示したものだ。検察庁は投票日に10人が殺害されたと認めた。4月以来、反政府活動に関連する死者は125人を超えたもよう。

 大統領はさらに、今年12月10日に予定されている州知事・州会議員選挙にMUDが参加できるか否かは、政府との対話次第だと述べ、MUDが暴徒を動員しての破壊活動を今後も続ければ、州選挙に参加出来なくなる可能性を示唆した。

 MUDは30日深夜、「投票率は12・4%にすぎない」と述べた。これは先ごろの反政府系世論調査で「ANC反対が80%台」となったと報じられたのを受け、おおまかな差引をした結果と受け止められており、「12・4%」に根拠はない。MUDは31日正午から街頭で反政府・ANC活動、夕方から反政府行動中に出た死者への追悼をすると明らかにしている。

 投票結果を受けて、米政府の他、亜パラグアイ伯智秘コロンビア巴コスタ・リカ墨加西がANC開設を認めないと表明。トランプ政権と密接に連携しているペルー政府は31日、リマで8月8日有志国外相会議を開くと発表した。亜パラグアイ伯智秘コロンビア巴コスタ・リカ墨グアテマラ加ホンジュラスが出席するもようという。

 一方、ボリビア、ニカラグア、エル・サルバドールの3国大統領はANC選挙成功を祝福。ルーラ元伯大統領、ロドリーゴ・ロンドーニョFARC最高司令らも祝福した。またクーバ共産党(PCC)機関紙グランマは31日、「ベネスエラの模範的勝利」と題した記事を掲げ、ANC選挙終了に安堵する立場を示した。 

2017年7月30日日曜日

 きょう30日、ベネズエラで制憲議会(ANC)議員選挙▼政治情勢の行方決める天王山▼野党連合MUDは投票阻止・監視活動展開へ

 ベネスエラで7月30日(JST同日深夜)、制憲議会(ANC)議員選挙が実施される。結果は早ければ、同日深夜(JST31日昼ごろ)判明する見込み。全国都市選挙区から364人、職能別173人、先住民8人の計545人を選ぶ。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は29日、政権党ベネスエラ統一社会党(PSUV=ペスーブ)大会で演説、「この国を統治するのはコロンビアでも米国でもない。それがベネスエラであることが明日の選挙で明確になる」と強調した。

 有権者は2000万人を超えるが、登録有権者は1940万人程度と見られている。国家選挙理事会(CNE)のティビサイ・ルセーナ理事長は29日、全国の投票所は万全の態勢にある、と述べた。コロンビア国境に近い西部のタチラ、メリダ両州内で4市ずつ計8市で、反政府勢力の暴徒が投票所を襲撃し投票用紙や機器類を破壊するなどしたが、完全に復旧した、としている。

 だが29日、東部のボリーバル市で、ANC議員候補ホセ・ピネーダが反政府派に射殺される事件が発生。これで候補者殺害は2件となった。

 ANC選挙阻止を掲げる保守・右翼野党連合MUDは、全国の投票所近くで30日午前4時から道路封鎖など妨害行動や投票所監視活動開始する予定。また首都カラカスでは午前10時、主要な自動車道の一地点に集結し、反政府行動を開始する。

 軍事法廷は28日、マラカイボ市の市議1人、その仲間10人、および記者2人を、治安部隊に敵対した現行犯で有罪とし、軍事刑務所に送った。

 チレ外務省は声明を発表。カラカスの同国大使館は、ベネスエラ国会が最高裁判事に任命したエレニス・デルバージェ判事が政治的庇護を求めて29日来訪したため、同大使館の庇護下に置いた、と明らかにした。ベネスエラ国会はMUDの支配下にある。政府は、国会によるこの人事を認めていない。

 一方、29日は、1967年7月29日起きたカラカス大震災の50周年。死者236人、負傷者2000人、4億5000万ボリーバルの被害の出た。28日から市内で追悼行事が続いている。

 ベネスエラ原油は28日、1バレル=44・42ドルだった。先週末より94セント上昇した。  

2017年7月29日土曜日

 米政府は制憲議会(ANC)を否定しようと謀っている、とベネスエラ外相が非難▼反政府暴徒がメリダ州内で投票所を破壊▼スペイン元首相は国軍に決起を促す▼ペルー大統領が施政1周年演説

 ベネスエラのサムエル・モンカーダ外相は7月28日カラカスで記者会見し、米政府は国際法に違反して、ベネスエラの制憲議会(ANC)開設の正当性を否定しようとしている、と糾弾した。「この策謀にCIAも加担している」と指摘した。

 米政府と連携している反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUDは、30日に予定されるANC議員選挙を阻止するため全国各地で妨害工作を展開中。西部のメリダ州トバルでは、MUDの別働隊である覆面暴徒約150人が投票所を襲撃、投票用紙、投票箱、機器類などを破壊し、燃やした。

 ニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派政権は8月1日まで街頭行動を禁止しているが、MUDはお構いなし。30日には、全国の主要道路を封鎖する、と28日発表した。検察庁は、4月初めから昨27日までの、反政府勢力の暴動や抗議行動に関連する死者は113人に達した、と発表した。

 ジュネーヴの国連人権高等弁務官事務所は、ANC議員選挙の投票は義務的であってはならない、とベネスエラ政府に注文を付けた。

 スペインのフェリーペ・ゴンサレス元首相は最近、ベネスエラ国軍が政府に不服従の態度をとっても、現在の状況から正当化されると述べた。暗にゴルペ(クーデター) を国軍に呼び掛けた発言として、ゴンサレスは非難されている。1980年代から90年代にかけてスペイン民主化の旗頭だったゴンサレスはすっかり右翼化し、旧日の面影はない。

 ベネスエラ庶民・大衆は、長引く反政府勢力の街頭行動、とりわけ破壊活動に嫌悪感を募らせており、MUDに一時なびいた無党派層も離れつつある。MUDは、これに危機感を募らせているが、対処法がなく、投票日を前に別働隊を使って破壊活動を激化させている。

 この日28日は、故ウーゴ・チャベス前大統領の生誕63周年。チャベス廟のある「丘上の砦」では追悼式典が催された。チャベスの側近だった元陸軍将校ディオスダード・カベージョ政権党副党首は、「チャベスの思想と記憶を若い世代に引き継いでいかせる必要がある」と強調した。

▼ラ米短信   ◎PPKペルー大統領が施政1周年

 ペルーのペドロ=パブロ・クチンスキ大統領は7月28日(独立記念日)、施政1周年を迎え、国会で施政報告演説し、2018年の経済成長目標を4%とし、これによって貧困層が20・7%から15%に減り、極貧層も3・8%から1・5%になろ、と述べた。

 また施政最終年の2021年には、農村部の84%に上水道が行き届く、と公約した。

2017年7月28日金曜日

 ベネズエラ大統領が「反政府勢力の悪意と破壊・暴力能力を過小評価していた」と語る▼米大使館は外交官家族に出国を命令▼野党連合MUDは制憲議会(ANC)開設阻むため全国で対決姿勢▼政府は30日のANC議員選挙実施に向け厳戒態勢▼ニカラグアが米国を糾弾

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は7月27日、首都カラカスでの政府支持者大集会で演説、反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUDに、制憲議会(ANC)開設前に対話しよう、と呼び掛けた。ANC議員選挙は30日に実施される。大統領は、「ベネスエラは30日の選挙実施によって、帝国主義者(米国)と反VEN諸国に教訓を与えることになる」と述べた。

 大統領はこの日、外国メディアによるインタビューで、「私の最大の誤りは、反政府勢力が持つ悪意と破壊・暴力能力を過小評価していたことだ」と述懐した。ドナルド・トランプ米大統領に向けては、「ベネスエラへの侵略とラ米介入を止めなさい。ベネスエラはカリブと南米安定の要なのだから」と諭した。

 先の南部共同市場(メルコスール)首脳会議でベネスエラへの内政介入発言をしたマウリシオ・マクリ亜国大統領を「蛭」と呼び、「世論調査によれば、マクリが実施している野蛮な新自由主義経済政策に亜国民の80%は反対している」と指摘。反ベネスエラの立場をとるブラジルとパラグアイの大統領をも非難した。

 MUDは26、27日「反政府全国ストライキ」を実施、「労働者800万人が参加した」と発表した。だがこの動員人数は検証されていない。MUDはまた、ANC選挙を阻止するため28~30日、全国で「ベネスエラ攻略」作戦を実施すると発表した。

 これに対し、ネストル・レベロール内相は記者会見し、「28日以降、全国で集会や行進を禁止する。ANC投票を妨害した者には禁錮5~10年の実刑が科せられる」と発表した。

  米国務省は27日声明を発表、カラカスの米大使館勤務の外交官の家族に出国命令を出した。政治的緊張、治安悪化、飲料物資・薬品入手困難などを理由にしている。ベネスエラ国内の米機関で働く、外交官特権を持たない米国人職員に対しても自発的出国を促した。米国人ジャーナリストに対しては、取材査証を必ず取得して入国するよう勧告した。一般の米国人には、ベネスエラ訪問を控えるよう求めた。

 声明は、「政府系暴力集団が約70人を殺害した」と指摘する。だが根拠は示されておらず、信憑性は定かでない。4月初めからの反政府暴動に関連する死者は110人を超えているが、政府は、一部の死傷者が治安部隊の過剰防衛によるものと認めながらも、「大多数の死者は反政府勢力の暴力分子の仕業」と主張している。だが反政府右翼メディアは「死者全員が弾圧による」と、虚偽報道を続けている。

 同声明はまた、「スリア、タチラ、アプレ3州のコロンビア国境地帯で、麻薬取引と武器密輸が活発化している」と指摘。さらに、「米国人を含む市民が確乎たる証拠なしに長期間拘禁されることがある」として、言動に注意するよう呼び掛けている。

 MUDの戦略は米国務省、米南方軍、CIA、USAIDなどと連携している。MUDが全国の主要拠点で暴動を起こし、これを反政府系の内外メディアが大々的に報じ、「ベネスエラは統治不能に陥った」との偽りの印象を醸し、MUDが「対抗臨時政権」を樹立、これを米国と親米諸国などが承認。その要請で「人道介入」の名分で、米軍主体の米州諸国機構(OEA)軍がベネズエラに介入し、マドゥーロ政権を倒す。このような筋書きもある。

 米政府は、マドゥーロ政権揺さぶり工作の一環として26日、政府高官13人への「経済制裁措置」を発表した。ANC大統領委員会のエリーアス・ハウア委員長(教育相)、オンブズマンのタレク・サアブ、国家選挙理事会(CNE)のティビサイ・ルセーナ理事長、内相ネストル・リベロール将軍が含まれている。メヒコ政府は27日、この米国の措置に協力する用意があると表明した。

 米政府に「制裁」されるいわれはないというのがベネスエラの立場であり、高官たちは「米国の言いなりにならない我々の勝利であり、むしろ名誉である」と反応している。

 エル・サルバドールの航空会社アビアンカは26日、ボゴタ-カラカス、リマーカラカスの両往復便を8月16日打ち切ると発表した。米デルタ航空も25日、アトランタ-カラカス往復便を9月17日打ち切ると明らかにした。

 べエスエラ政府は26日、中国とベネスエラでの石炭とニッケルを増産する合弁会社を設置することで合意した。

 一方、チレの日刊紙ラ・テルセーラは26日、同紙のカラカス通信員ヒメナ・マリーンが、ベネスエラ政府とMUDの間で対話仲介役を担っているJL・Rサパテロ前西首相にインタビューしたとして書いた署名記事は、西政治週刊誌「カンビオ16」が5月に掲載したサパテロ会見記事の丸写しだった、と発表した。

 同記者は、ベネスエラの敵である極右のコロンビア前大統領アルバロ・ウリーベとの会見記事もラ・テルセーラに載せたが、これもカンビオ16誌が6月掲載した記事の焼き直しと判明した。同紙はマリーンの署名記事をすべてHPから削除。今後、法的措置をとるという。

▼ラ米短信   ◎ニカラグア政府が米介入主義を糾弾

 米下院外交委員会は7月27日、ニカラグアで民主が欠けているとして同国への援助(年間2億5000万~3億ドル)を削減する「ニカ法」案を可決した。これに対し、ロサリオ・ムリージョNICA副大統領は同日、伝統的な米国の内政干渉政策だと糾弾した。ニカラグア国会は28日、対応を審議する。

 ニカラグア政府はまた、同国内戦中に米国が侵した破壊行為への賠償170億ドルを米政府に支払いを命じた国際司法裁判所の1986年の判断を遵守し、賠償金を払うよう米政府に要求した。ただしチャモロ元政権が90年代初め、賠償請求権を取り下げており、ニカラグア政府の立場は厳しい。

 一方、ベネスエラ外務省は声明を発表、ニカラグアへ連帯を表明。米州bリバリアーナ同盟(ALBA)加盟諸国に同調するよう求めた。 

 
 

 




2017年7月26日水曜日

 キューバ革命の原点「モンカーダ兵営襲撃」の64回記念日の中央式典がピナルデルリオ市で開かる▼マチャード第2書記は最大の問題は「経済困難」と指摘▼対米警戒とベネズエラへの連帯を確認▼メキシコ学生43人失踪事件、未解決のまま34ヶ月経過

 社会主義クーバは7月26日、第64回「民族反逆の日」を迎えた。カストロ兄弟らによる1953年7月26日の陸軍モンカーダ兵営襲撃事件を記念する。キューバ革命の原点となった武装決起だった。兵営はサンティゴ市にあり、革命後は学園都市となった。旧兵営の一部は、襲撃事件に関する博物館になっている。

 中央式典は、西部のピナルデルリオ州の同名の州都で午前7時開会。灼熱の太陽を避けるためだ。ラウール・カストロ国家評議会議長(86)以下の幹部をはじめ数千人が出席、ホセ=ラモーン・マチャード共産党第2書記(87)が演説した。

 マチャードは、1959年元日の革命勝利時、クーバ人の平均寿命は53歳だったが、今日は79歳になったと強調。30%だった非識字率は現在、実質的に零%と、革命直後の識字運動と、その後の無料教育制度を讃えた。

 最大の問題は経済困難だと指摘、「経済建設こそが革命の成果を維持することを可能にする」と説いた。また、「対敵姿勢を断固維持する」とし、国交再開から2年経った米国に対する警戒を忘れない厳しい姿勢を示した。経済封鎖全面解除に向けて闘争し続けることも確認した。

 「ボリバリアーナ革命」を遂行するベネスエラとニコラース・マドゥーロ同国大統領への支持と連帯をあらためて表明。「ベネスエラの問題はベネスエラ人民のみが解決できる」とし、諸外国の内政干渉を批判した。

 マチャードは、英紙フィナンシャルタイムズが最近、「クーバがベネスエラ問題の仲介する可能性がある」と報じたのを踏まえて、これを否定。「ベネスエラの主権と自決を絶対的に尊重する」と述べた。

 式典には、モンカディスタ(モンカーダ兵営襲撃参加者)、グランマ号遠征、革命戦争開始前夜時代からの地下活動の、それぞれの生存者も出席。次代を担う若者たちも数多く出席した。式典は午前8時15分に終わった。

 革命の最高指導者フィデル・カストロは昨年11月25日、90歳で死去。フィデルのいない最初の「民族反逆の日」となった。

▼ラ米短信   ◎メヒコ農村教員学校生43人強制失踪事件から34カ月

 メヒコ・ゲレロ州イグアラ市一帯で2014年9月26日起きたアヨツィナパ農村教員養成学校生43人が、陸軍、連邦警察も関与して失踪させらてから7月26日で34カ月。事件jは依然未解決のままだ。遺族や支援団体はこの日、雨の中、首都メkヒコ市のレフォルマ大通りを抗議行進し、政府に事件捜査状況を開示するよう要求した。

 この日、2016年のメヒコでの殺人事件発生件数が2万3953人と発表された。一日平均65人強。
 

2017年7月25日火曜日

 マドゥーロ・ベネスエラ大統領が、CIAはメキシコ、コロンビア両国と組んで同大統領の政権打倒を策謀と糾弾。両国は否定▼ボリビア大統領は過去のクーデター計画への米政府関与を確認▼FARCが9月、コロンビアの政党に移行へ

 7月24日は、解放者シモン・ボリーバル(1783~1830)の234回目の生誕記念日。マラカイボ湖水軍に始まるベネスエラ海軍の創立記念日でもある。ニコラース・マドゥーロ大統領はこの日、ラ・グアイラ軍港にある海軍士官学校で、海軍部隊行進に先立ち演説、30日の制憲議会(ANC)議員選挙を念頭に、「ベネスエラ史上、決定的な週を最高の形で始めることができた」と述べた。

 大統領は、「勇気、勇敢、愛国の一週間にしよう。挑戦に応じ選挙で責任を果たそう」とベネスエラ人民に呼び掛け、「一週間後には、平和、主権、独立、憲政を保障するANCが開設される」と強調した。

 さらに、米政府の諜報・謀略機関である中央情報局(CIA)のマイケル・ポンペオ長官が最近コロンビアとメヒコを訪問し、両国政府と協力してベネスエラ政権を倒そうと話し合った明かした、と糾弾。米コロンビア墨3国政府に同長官発言をめぐる真意を質した。

 またサムエル・モンカーダVEN外相も24日、CIA長官に関しマドゥーロ大統領と同様に発言。さらに、VEN反政府勢力は今週、外部機関と連携して暴力を激化させようと策謀している、と保守・右翼野党連合MUDを非難した。米国べったりのルイス・アルマグロ事務総長が仕切る米州諸国機構(OEA)は、26日ワシントンでベネスエラ情勢をめぐり大使会議を開こうとしているとも指摘した。

 コロンビアとメヒコの外務省は24日、「CIAとの共謀」というベネスエラ政府の非難を、事実でないと否定した。

 米政府やOEA保守・右翼勢力の支援を受けているMUDは、ANC選挙を阻止するため、26、27両日、首都カラカスをはじめ各地で自動車道封鎖など、街頭行動を展開する予定。

 カラカスの米大使館は逸早く23日、ベネスエラ在住の米国人に対し、26~27日の反政府行動に備え、食糧と飲料水を少なくとも3日分確保しておくよう通達した。また、反政府行動に参加しないよう勧告した。

 一方、ベネスエラ政府とMUDの間で対話仲介の労をとっているホセ=ルイス・ロドリゲス=サパテロ前西首相は23日カラカス入りし、24日、自宅軟禁処分されているMUD極右指導者レオポルド・ロペスとロペスの自宅で会談。ロペスは、ANC開設反対を伝えた。

 カラカスは25日、建都450年を迎えた。最初の都市名は「サンティアゴ・デ・レオン・デ・カラカス」だった。

▼ラ米短信    ◎ボリビア大統領が米政府のクーデター計画加担を確認

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は7月24日ラパスで、米政府は2006~09年、同大統領の政権を倒すため、米国際開発局(USIAD)を通じてボリビア反政府勢力に資金400万ドルを渡すなどクーデター計画を支援した、と明らかにした。

 米国の陰謀加担は既に明らかだったが、大統領は、ウィキリークス情報で確認された、と述べた。06~09年はブッシュ息子政権末期からオバマ政権初年度にかけての時期。

 ブッシュ息子政権は02年4月、当時のチャベスVEN政権打倒のクーデターを画策して失敗。オバマ政権はセラヤ・ホンジュラス政権、ルーゴ・パラグアイ政権、ルセーフ伯政権打倒に成功した。

▼ラ米短信    ◎FARCが9月、政党に

 武装解除が済んだ元ゲリラ組織FARC(コロンビア革命軍)のイバン・マルケス司令ら最高幹部は7月24日ボゴタで記者会見し、FARCは9月1日、政党になると発表した。7月23日からボゴタで幹部61人による「国民和解会議」を開催中で、26日に政党綱領を策定する、と明らかにした。

 一方、もう一つのゲリラ組織ELN(民族解放軍)は7月24日、赤道国首都キト郊外で、コロンビア政府との和平交渉の第3期交渉に入った。 
 

2017年7月24日月曜日

 岩波ホールで29日(土)封切り:重厚で美しい映画「静かなる情熱」▼詩人エミリー・ディキンソンの生涯を描く傑作

 米国の著名な女流詩人エミリー・ディキンソン(1830~86)は、この映画の冊子では「エミリ・ディキンスン」とか書かれている。尊重しよう。19世紀中葉の米国には、米国がメヒコ(メキシコ)から国土の北半分を奪った悪名高い「米墨戦争」(1845~48)と、「米国内戦=南北戦争」(1861~65)があった。

 これら二つの戦争の間の1853年、米国のペリー黒船船団が那覇に入港、次いで浦賀で末期の徳川幕府に開港を迫った。米国では、エイブラハム・リンカーン大統領が内戦のさなかの1863年、奴隷解放を宣言した。だが65年に暗殺された。

 エミリーは、そんな時代をマサチューセッツ州の上流階級の娘として生まれ、過ごし、生きた。映画は、エミリーの女学生時代から始まる。修道女や教師が生徒に集団的に押し付け信じさせようとする集団的な神に、エミリーは異論を唱える。この最初の反逆的場面が、彼女の人生が波乱含みであることを予測させる。

 エミリーは極めて保守的だった時代に、言動に制約が課せられる上流家庭で過ごした娘時代から、無神論や不可知論と、「自分の神」との間を行き来していたはずだ。

 異性に対しては、ある種の潔癖主義、引っ込み思案、理想に忠実な空想主義から晩生(おくて)だったようだ。このため「見当違い」の愛を抱いたり、恋を仕掛けたりして失敗する。

 結局、女としては不完全燃焼、満たされない人生を送った。森のような庭園のある大邸宅に死の日まで住み続けた。キリスト教には、修道院の内奥に蟄居して毎瞬、神と向き合う「クラウスラ」(禁域主義)という厳しい修行がある。エミリーは、あたかも禁域主義の修道女のごとく、邸宅内に生き続けた。

 このような生き方から、どんな詩が生まれたのか。それは映画を観る各自が、エミリーの詩編を読めばいい。ここでは触れまい。だが少し触れれば、作品は詩人が生きた時代背景の中心にあった内戦(南北戦争)と奴隷解放の影響を受けている。

 これから確認したいのは、エミリーが米墨戦争に影響を受けたか否かということだ。この不正な戦争を米国人である詩人は、どう捉えていたのだろうか。

 米国は、傲慢な「モンロー教義」を1823年に宣言。メヒコとの戦争時には、「明白なる天命」という傍若無人で独りよがりの覇権主義=帝国主義理論を身につけていた。ヘンリー・ソーローは、「不正な戦争」に反対し、戦費となる税金の支払いを拒否して投獄された。

 と、この映画は、昨今滅多にお目にかかれない、人間の魂を描いた重厚で美しい作品であるがゆえに、いろいろなことを観る者に考えさせずにはおかないのだ。

 2016年の英ベルギー合作。125分だが、時間の長さを感じさせない。友人の中に、この映画を観た人がいるとすれば、それはとても素敵なことだ。

2017年7月23日日曜日

 マドゥーロ・ベネズエラ大統領が「野党は有権者登録するため制憲議会(ANC)議員選挙実施を数週間延期してほしいと言ってきた」と明かす▼内相は野党が対抗権力を作ろうと画策していると警告▼ボリビア大統領がチリ大統領候補を糾弾

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は7月22日、テレビ番組に出演し、「野党勢力は1週間前、国際仲介者を通じて私に、選挙人登録をするため制憲議会(ANC)議員選挙を数週間送らせてほしいと言ってきた」と明らかにした。

 マドゥーロ大統領は、「ANCに本気で参加すると公式に表明するならば、2~4週間ぐらい送らせてもいい、と回答した」と述べた。また、「我々は、このような形で野党勢力との対話を維持している」と付言した。

 対米関係に触れて、「私はドナルド・トランプと良好な関係を持ちたい。手を差し伸べ話し合い、我々が21世紀に居ることを伝えたい」と語った。

 大統領はさらに、「ベネスエラ革命は危機にある」と認めた。ANC候補のデルシー・ロドリゲス前外相は、「ANCによって権力が固まる」と述べ、ANC開設がボリバリアーナ革命体制立て直しの鍵であることを強調した。

 ネストル・レベロール内相は22日、野党勢力が21日、最高裁判事11人と同補欠22人を一方的に任命したことに関し、「野党は対抗権力を作ろうとしており、これは紛れもないゴルペ(クーデター)の画策だ」と指摘し、警告した。

 内相は、反政府活動分子による破壊活動に参加した若者ら456人を20日逮捕したことを明らかにした。4月初めから続く反政府勢力による街頭暴力などによる死者は22日までに100人に達したもよう。

 反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUDは22日、ANC選挙直前の反政府撹乱行動として26~27両日、全国で道路封鎖を決行する、と発表した。30日の投票日に向けて緊張が高まりつつある。

 トランプ米政権は、ANC選挙が実施された場合、ベネスエラに強力な経済措置をとると警告しているが、ベネスエラ国営石油PDVSAへの石油代金の米ドル払いを禁止する措置も含まれる、との情報が流れている。

 一方、ボリビアのエボ・モラレス大統領はラパスで22日、「ピノチェー派寡頭勢力代表のセバスティアン・ピニェーラにベネスエラをうんぬんする道徳的資格はない」と述べ、10月のチレ大統領選挙に保守・右翼陣営から出馬しようとしているピニェーラ前大統領を糾弾した。

 ピニェーラは21日、亜国メンドサ市で開かれた南部共同市場(メルコスール)首脳会議について、「会議はベネスエラの民主を守るため強い態度を示すべきだ」と表明していた。モラレスは、「ベネスエラ人民はゴルペの陰謀を打ち破るだろう」とも述べた。 

2017年7月22日土曜日

 南部共同市場(メルコスール)首脳会議が対ベネズエラ強硬路線を変更▼バスケス・ウルグアイ大統領の根回しが奏功▼ボリビアのエボ・モラレス大統領は「石油資源狙う米国の共犯者になるな」と熱弁振るい警告

 南部共同市場(メルコスール)は7月21日、亜国中西部アンデス山麓のメンドサ市で首脳会議を開き、ベネスエラ問題を中心に討議した。会議には原加盟国の亜ウルグアイ伯パラグアイ、準加盟国ボリビア、協賛国チレの6カ国統領が出席した。資格停止中の加盟国ベネスエラは招かれなかった。

 議長国亜国のマウリシオ・マクリ大統領(右翼)は、同傾向の伯パラグアイ両国と連携し、ベネスエラを事実上の除名に相当する「恒久的資格停止」処分にしようと謀っていた。

 だが、進歩主義(穏健左翼)ウルグアイのタバレー・バスケス大統領が根回しし、「恒久的資格停止」案を葬った。

 また、マナグア、ハバナを歴訪しメンドサ入りしたボリビアのエボ・モラレス大統領は、ベネスエラを憎悪している亜パラグアイ伯3国を念頭に、「メルコスールも、いかなるラ米機関も、ベネスエラに介入する米国の共犯者になってはならない」と熱弁を振るい、親米国派の内政干渉路線を糾弾した。

 モラレスは、「リビアやイラクを見よ。石油資源奪取のためベネスエラ介入を続ける米国に加担してはならない」と激しく詰め寄った。さらに、「メルコスールは(米国がラ米介入のため利用してきた)米州諸国機構(OEA)の苦い歴史を繰り返してはならない」と諌めた。

 結局、首脳会議は、ニコラース・マドゥーロVEN大統領に保守・右翼野党連合MUDとの対話と、制憲議会(ANC)開設中止を求める書簡を送ることになり、ボリビアを除く5カ国がそれに署名した。

 一方、ベネスエラでは21日、国軍(FANB)が全国に要員23万2000人を展開させ治安を維持し、30日のANC議員選挙の投票所1万4515カ所を警備する「2017ANC共和国計画」が始まった。

 MUDはこの日、最高裁判事13人と同補欠20人を一方的に任命した。むろん最高裁は、これを認めない。

 ベネスエラ原油は21日、1バレル=43・48ドルをつけた。 

 
 

2017年7月21日金曜日

 ベネズエラ政府は反政府野党連合を封じ込め、トランプ米政権を牽制しつつ、30日の制憲議会議員選挙に向かう▼アルゼンチン・メンドサ市ではメルコスール首脳会議に対抗する「人民サミット」が開かれ、ベネスエラを支持

 ベネスエラの保守・右翼野党連合MUDは7月20日、全国各地で反政府ストライキを打ったが、多くは当局に封じ込められた。政権党ベネスエラ統一社会党(PSUV、ペスーブ)のディオスダード・カベージョ副党首は同日、「野党のストは失敗した。(制憲議会=ANC=開設に関し)政府が野党と交渉することなどありえない」と述べた。

 副党首はまた、米国のベネスエラへの内政介入を糾弾。「米国は、ベネスエラが小国ながら自由で主権を持つ独立国であることを認識せねばならない」と、トランプ米政権を諌めた。だが、「我々は根っからの反米帝国主義者だ。トランプこそ、MUDの首領だ」と非難した。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は20日、「善く生きる共同体休暇計画」が31日、ANC議員選挙大勝利を祝いつつ始まる、と述べた。30日の選挙の翌日から休暇期間を始め、ANC選挙に反対する反政府勢力を懐柔する戦術だ。

 ベネスエラは20日カラカスで、ベネスエラでのダイアモンド鉱開発協力に関し、アンゴラ国営ダイアモンド会社(ENDIAMA)と基本合意書に署名した。双方は、合弁会社設立などで交渉を開始する。

 基幹産業省は、16年の輸出が5億ドルだったと明らかにし、17年は10億ドルに達する見込みと発表した。同省は、鉄鉱石採掘、製鉄など非石油部門を扱う。

 一方、亜国中西部アンデス山麓のメンドサ市で20日、南部共同市場(メルコスール、MS)外相会議が開かれ、宙づり状態にあるベネスエラの加盟資格問題などについて話し合った。会議後、ホルヘ・ファウリエ亜国外相はメディアに、「ベネスエラに民主はなくなった。ウスアイア議定書を適用し、同国を<無期限資格停止>とする可能性がある。事実上の除名処分だ」と述べた。

 MSは21日、同市で首脳会議を開催、亜ウルグイア伯パラグアイの加盟4カ国、準加盟国ボリビア、協賛国チレの6カ国大統領が出席する。ベネスエラ大統領は招待されていない。

 これに先立ち20日、メンドサ市の国立クヨ大学芸術学部で「人民対抗サミット」が開かれた。左翼・進歩主義団体、労働組合、「五月広場の母たちの会」、知識人らが参加、共同宣言を発表した。

 マドゥーロVEN政権とANC開設支持、VENのMS加盟資格剥奪反対、テメル伯非合法政権糾弾、ボリビア領海回復支持、亜国マルビーナス諸島領有権支持、長期間獄中にいる亜国先住民女性活動家ミラグロ・サラ解放要求などが盛り込まれている。

 ベネスエラのカルロス・マルティネス駐亜大使は参加し、「ラ米が今日直面しているのは新自由主義経済路線復活だけでなく、再植民地化の動きだ」と述べ、マドゥーロ政権支持を要請した。

 ボリビアのエボ・モラレス大統領はニカラグア革命記念日に出席した19日、ハバナを訪問、ミゲル・ディアスカネル第1副議長と会談した。玖共産党機関紙グランマは20日、モラレスが「米国はラ米をシリアやアフガニスタンのようにしたがっている。ベネスエラの原油を狙っている」と語ったと報じた。

 モラレスは20日ハバナを出発、MS首脳会議出席のため、亜国メンドサに向かう。対抗サミット主宰者は21日、モラレスに共同宣言文書を手渡すことにしている。

 

2017年7月20日木曜日

 ニカラグアがサンディニスタ革命38周年祝う▼FSP(サンパウロフォーラム)参加者も式典参加▼東京でも記念行事、ニカラグア大使が講演▼ベネスエラ野党連合が「政権構想」発表

 ニカラグアは7月19日、サンディニスタ革命38周年を迎え、首都マナグアで盛大な式典が催された。政権党「サンディニスタ民族解放戦線」(FSLN)党首を兼ねるダニエル・オルテガ大統領は記念演説で、「人口630万人のうち275万人(43%)が14~39歳の若い層であり、世代交代が進んでいるが、革命の志は引き継がれている」と強調した。

 世界銀行統計では、11年目のオルテガ現政権下で貧困率は42・5%から29・6%に、極貧率は14・6%から8・3%に、それぞれ減った。無料の教育と医療保健が低所得層を特に助けている。

 大統領はまた、「クーバは半世紀もの経済封鎖など米国の圧力を凌ぎ、対話により対米関係を再開させた」と前置きし、「ベネスエラ問題も圧力や脅迫でなく、対話によって解決すべきだ」と述べた。

 来賓のボリビア大統領エボ・モラレスは、「資本主義は、自らの金融危機や社会正義の問題を解決する能力を備えておらず、失敗だ」と指摘。ラ米連帯を訴えた。

 エル・サルバドール(ES)のサルバドール・サンチェス=セレ-ン大統領は、ニカラグアの英雄アウグスト・サンディーノとESの英雄ファラブンド・マルティが米侵略軍相手にニカラグアで共に戦った史実を踏まえて、両国の絆と共通性を説いた。

 クーバの次期国家評議会議長候補ミゲル・ディアスカネル第1副議長は、「フィデルは無条件でニカラグア支持を打ち出した」と、玖革命政権とニカラグア革命政権の強固な関係を讃えた。

 エクアドール(赤道国)からはマリーア・エスピノーサ外相が出席した。また18日までマナグアで開かれていたフォロ・デ・サンパウロ(FSP)の第23回年次会議参加の各国政党代表団も式典に参加した。

 FSPは、マドゥーロ・ベネスエラ政権支持、コロンビア内戦和平過程防衛、迫害されているルーラ元伯大統領支持、米国の対玖経済封鎖撤廃要求、エボ・モラレスの2019年ボリビア大統領選挙出馬支持、亜国のマルビーナス諸島領有権支持などを決議した。

 会議に参加した米州ボリバリアーナ同盟(ALBA)のダビー・チョケウアンカ事務局長(前ボリビア外相)は、「母なる大地と社会正義を重んじる世界共通の開発モデルを構築する必要がある」と訴えた。

 今FSP会議には、ラ米20カ国と、バルバドス、トゥリニダード&トバゴ(TT)のカリブ英連邦系両国および、米領プエルト・リコ、蘭領アルバ、同クラサオ(キュラソー)、仏領マルチニックから政党や政治運動の代表約300人が出席した。

 次回会議は来年、クーバで開かれる。エボ・モラレスは19日マナグアからハバナ入りした。21日には亜国メンドサ市での、南部共同市場(メルコスール)首脳会議に出席する。

▼ラ米短信   ◎東京でもニカラグア革命記念日祝う

 東京・高田馬場のNGOピースボート(PB)本部で7月19日、サンディニスタ・ニカラグア革命38周年記念の祝賀会合が開かれた。サウール・アラナ同国駐日大使が講演、1979年の革命に至るまでの、20世紀初頭からのニカラグア情勢を解説。「今も敵がいる」と指摘し、油断してはならないと警告した。

 この会合にはベネスエラ、エクアドールの両国大使、クーバ、エル・サルバドール、ボリビア、グアテマラなどの外交官も出席した。吉岡達也PB共同代表、PB要員、ジャーナリスト、大学教授、歌手、PB世界周遊船乗船経験者、同乗船予定者ら、百数十人が参加した。

▼ラ米短信   ◎ベネスエラ情勢

 ベネスエラの保守・右翼野党連合MUDは7月19日、「MUD政権構想」を打ち出した。ニコラース・マドゥーロ大統領に退陣を迫り、親米・新自由主義路線を復活させる構想で、従来のMUDの主張と変わらない。

 米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長(前ウルグアイ外相)は19日、米上院ラ米小委員会で証言。マルコ・ルビオ委員長(共和党極右クーバ系議員)の質問に対し、「ベネスエラ民主は崩壊した。VEN政権には麻薬取引が構造的に組み込まれている」と述べた。

 これを受けてルビオは、「ディオスダード・カベージョ(VEN政権党副党首)はベネスエラのパブロ・エスコバル(故人、かつてのコロンビア麻薬王)だ」と糾弾した。

 米政府の言いなりのアルマグロと、ラ米介入主義者ルビオの発言は根拠が乏しく、ポスト真実期の典型的な虚偽情報だ。この種の非論理的発言が一方的に証言され、ラ米への内政介入を当然視する米政府の政策になる傾向がある。

 ボリビアの政治首都ラパスでは19日、アルバロ・ガルシア副大統領が、元暫定大統領ホルヘ・キロガ(キリスト教民党首)を、「軽薄な挑発者で、押し付けがましい」と扱き下ろした。

 キロガがこのほどカラカスに行き、MUDを支持しする内政干渉言動をした。ガルシアはこれを非難した。これに対しキロガは、「押しつけがましいのは汝(なんじ)だろう」と言い返した。

 


 

2017年7月19日水曜日

 マドゥーロ・ベネズエラ大統領が「トランプの脅迫」を一蹴。対米関係見直しへ▼サンパウロ・フォーラムは「ベネズエラ防衛」を宣言

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は7月18日、「米帝国による脅迫に統合的に対処するため」として、国防会議を招集した。ドナルド・トランプ米大統領は17日、「ベネスエラが制憲議会(ANC)開設を止めなければ強力な経済的措置を速やかに発動する」と強圧的な内政干渉政策を打ち出している。

 マドゥーロ大統領は、「ここベネスエラではベネスエラ人民だけが命じることができる」とし、「ANC開設は既に人民に委ねられており、その主権者人民が30日に投票権を行使するだけだ」と、トランプの脅迫を一蹴した。

 VEN外務省は18日声明を発表、マドゥーロ大統領の指示を受けて、対米関係の根本的見直しを図る、と明らかにした。声明はまた、「米大統領声明は前例のないほど低水準で質が悪く、侵略国の意図を知的に解釈するのを妨げている」とホワイトハウスを揶揄した。

 声明はさらに、「米政府は他国を辱めれば従属すると信じてきた」と指摘。「米国は恥知らずにも、ベネスエラの人民・民主政権を倒すためテロリズムを厭わないVEN政界暴力過激派と連携している」と糾弾した。

 英紙フィナンシャルタイムズは18日、コロンビアのJMサントス大統領が17日ハバナでの首脳会談でラウール・カストロ玖議長に、ベネスエラ問題で仲介を要請した、と報じた。同席したコロンビアのマリーア・オルギン外相は、ベネスエラ問題が話し合われたことを認めている。

 サントスは会談後、ANC開設を止めるようマドゥーロ大統領に求めるメンサヘを発進した。これに関しマドゥーロは18日、「コロンビアの寡頭勢力が解放者ボリーバルの祖国を支配することなど決してありえない」と跳ね付けた。

 ANC候補デルシー・ロドリゲス前外相は18日、「VEN人民は30日、完全なVEN独立のため投票する。ANCは、対話を通じての民主、参加、平和的理解のための空間だ」と力説。「私は命を懸けで祖国を防衛する」と述べた。

 ベネスエラ国営石油PDVSAは18日、6月の同国原油生産は日量215万バレルだったと発表した。対米原油輸出は4月に日量85万7000バレルに達したように好調。「トランプの脅し」には、VEN原油輸入打ち切りが含まれている可能性がある。

▼ラ米短信   ◎ラ米左翼・進歩主義陣営が「ベネスエラ防衛」を宣言

 ニカラグアのマナグアで開催中のフォロ・デ・サンパウロ(サンパウロ・フォーラム)は18日、「ボリバリアーナ革命防衛のため非常事態を宣言する」と決議した。同日の会議には、エル・サルバドール(ES)のサルバドール・サンチェス=セレーン大統領も出席した。

 革命家、故エルネスト・チェ・ゲバラの娘アレイダ・ゲバラ=マルチ医師も出席。ゲバラ歿後半世紀を記念する部会で講演した。

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は18日、会議出席のためコチャバンバからマナグアに向かった。サンチェスES大統領とともに19日のサンディニスタ・ニカラグア革命38周年記念日の行事に出席する。  

2017年7月18日火曜日

 マドゥーロ・ベネズエラ政権は30日の制憲議会(ANC)選挙に向け邁進。トランプ米政権はANC選挙実施すれば厳しい経済措置講じると警告▼コロンビア大統領はハバナでキューバ議長とVEN問題含め会談

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は7月17日、制憲議会(ANC)議員選挙(30日)の予行演習として16日実施した模擬投票を「大成功。ANC勝利の前兆だ」と捉え、投票した支持派有権者に謝意を表明。16日にANC反対の非公式「国民投票」を決行した反政府勢力に、対話をあらためて呼び掛けた。政府は投票を「非合法で無効」として無視している。

 政府は支持層を固めるため21~23日、首都カラカス・リベルタドール区中心部のボリーバル広場で、「祖国身分証」の追加発給手続きを再開する。この身分証保持者は、格安食糧品配給制度(CLAP)や公務員就職に際し、有利になる。

 米国、ラ米保守・右翼陣営、米州諸国機構(OEA)の「従米事務総長」ルイス・アルマグロ、欧州連合(EU)、ドイツ、スペインなどが一斉にANC開設反対を表明しているが、マドゥーロ大統領は、意に介さず一蹴した。

 だが米政府は17日、ドナルド・トランプ大統領声明として、30日にANC議員選挙を実施すれば米国は強力な経済措置を速やかに講じると、マドゥーロに警告した。米国務省は、ラ米諸国と国際社会に、ANC選挙中止をベネスエラに呼び掛けるよう要請した。

 サムエル・モンカーダVEN外相は外務省で記者会見し、国際社会はベネスエラの状況やMUD投票に関し真実を重視せず、虚偽情報に基づいて判断していると、批判した。

 反政府勢力の中核で非公式投票を決行した保守・右翼野党連合MUDは17日、今後の行動日程を発表した。投票の最終結果を18日発表、「国民統合政府」構想を19日発表、全国ストライキを20日決行、国会任命の最高裁判事を21日発表、というもの。米国務省と米南方軍の筋書きに沿っている。

 一方、コロンビアのJMサントス大統領は16日ハバナ入りし、17日公式訪問を開始。同日、「ANC構想を廃案にして交渉による解決を図るべきだ」と、マドゥーロに呼び掛けた。同日、ラウール・カストロ玖国家評議会議長と会談する。

 この会談について英紙フィナンシャルタイムズ(FT)は、サントスはラウールにマドゥーロの亡命を受け入れるよう要請する、と報じた。この要請案策定にはメヒコや亜国も加わっているという。

 FTは根拠として、サントスがマドゥーロ、ラウール、トランプを個人的に知る唯一のラ米指導者であることや、クーバがベネスエラの最重要同盟国であることを挙げている。

 だがボゴタのコロンビアメディアは17日、FT報道内容を否定した。サントスは昨年のノーベル平和賞受賞者であり、ラ米域内で何か功績を挙げたがっているのは事実だ。

 問題は、2013年4月に民主選挙で選ばれたマドゥーロ政権に、利害を異にするMUD、米政府、国際社会などが退陣を迫るのは正しい行動ではない、ということだ。「ゆっくりと進行するクーデター」と呼ばれる所以(ゆえん)だ。

 米政府は、MUDを通じての4月以来のベネスエラ国内での暴力キャンペーンと、内外メディアを動員しての虚偽報道の多い反マドゥーロ宣伝を展開、政権を揺さぶりつつ、OEAでベネスエラ糾弾決議を採択し、これを名分にベネスエラに介入する準備を進めてきた。だが、長引く暴力に国民が反発、OEAの企てもことごとく失敗した。このため戦略を切り換え、非公式「国民投票」を打った。

 ベネスエラは30日のANC投票まで2週間を切った。米政府の支援を受けているMUDは反政府行動を激化させようとしており、不安定な社会状況が続いてゆく。 

2017年7月17日月曜日

 ベネズエラ反政府勢力が「国民投票」実施。98%がマドゥーロ政権の制憲議会(ANC)開設に反対。だが投票率は30%台と低迷。政府は同日、ANC議員選挙に備え模擬投票を実施▼世論調査で75%が政府の「社会主義経済モデル」を支持

 ベネスエラの反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUDは7月16日、独自に「国民投票」を実施、有権者の3分の1に当たる718万人が投票した、と発表した。設問は①マドゥーロ政権が推進する制憲議会(ANC)開設に反対②国軍の憲政護持任務③早期大統領選挙実施-の3点で、いずれも98%が賛成したとしている。

 マドゥーロ政権は、国家選挙理事会(CNE)が公認しない投票であり無効として、結果を無視している。政権側はこの日、7月30日実施のANC議員選挙の準備の一環として模擬投票を実施、CNEノティビサイ・ルセーナ理事長は「成功した」と述べた。

 MUDは投票の監視役としてラ米4ヵ国から大統領経験者計5人を招いたが、その一人であるビセンテ・フォックス元墨大統領が「ベネスエラ人の善意を逆手にとって内政干渉した」として、サムエル・モンカーダVEN外相は16日、フォックスに「ペルソナ・ノン・グラタ」(歓迎されざる人物)を宣告した。フォックスは既に出国済み。

 一方、著名なジャーナリスト、ホセ=ビセンテ・ランヘールは16日、民放テレベンの定例番組で、最新の世論調査結果を発表。回答者の75%は、マドゥーロ政権が維持している社会主義経済モデルに賛成し、反対は24%と伝えた。

 政府の経済政策には61%が賛成、31%が反対した。政府による民間部門規制には78%が賛成、20%が反対した。資本主義モデル復活に賛成するのは32%だった。政府の民間投資と外資の導入には86%が賛成している。

 社会福祉など重要部門の民営化には74%が反対。国営通信会社CANTVの民営化には69%が反対。国営石油PDVSAの民営化には74%が反対した。MUDは経済問題を解決できるかとの設問には、63%が不可能とし、34%が可能と答えた。

2017年7月16日日曜日

 ベネズエラ野党連合MUDがきょう16日、マドゥーロ体制否定のため「国民投票」を実施。政権は非合法として投票結果無視へ▼ボリビアのエボ・モラレス大統領がベネズエラ連帯を打ち出す

 ベネスエラの保守・右翼野党連合MUDが指揮する反政府勢力は7月16日、ニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派政権の正統性を否定するため「国民投票」を実施する。

 マドゥーロ政権は、憲法大幅修正・条項追加のため制憲議会(ANC)を設置する政策を進めており、今月30日にANC議員選挙を実施する。MUDは、これに先駆け投票で「ANC開設」を否定、それによってマドゥーロ政権の正統性を否定し、大統領選挙の早期実施を内外世論に働きかける戦略だ。

 政府は、国家選挙理事会(CNE)が公認していないため、MUDの投票は無効とし、投票結果を無視する考えだ。

 MUDと連携する「スペイン・ラスアメリカス民主構想」(IDEA)の大統領経験者5人は15日、MUDの招きで投票監視のためカラカス入りした。IDEAは、保守・右翼系の政府首班経験者のクラブで、米国や欧州連合の保守・右翼陣営と繋がっている。

 来訪したのは、アンデレス・パストラーナ元コロンビア大統領、ビセンテ・フォックス元メヒコ大統領、ホルヘ・キロガ元ボリビア暫定大統領、ラウラ・チンチージャ前コスタ・リカ(CR)大統領、ミゲル=アンヘル・ロドリゲス元CR大統領。5人はすぐにMUD幹部と会合、16日の投票監視の手はずを整えた。

 5人のうち、パストラーナとキロガは今月5日、JMサントス・コロンビア大統領とボリビアのエボ・モラレス大統領に、ベネスエラ問題を話し合う南米諸国連合(ウナスール)の緊急首脳会議を開催するよう要請している。

 そのモラレス・ボリビア大統領は15日、米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長がベネスエラの有権者に16日の投票に参加するよう14日呼び掛け、「ベネスエラが独裁体制に占拠されている」と非難したのに対し、「ベネスエラを軍事占拠したがっているのは米帝国だけであり、アルマグロは帝国の召使いに成り下がっている」と糾弾した。

 ベネスエラのサムエル・モンカーダ外相は15日、モラレスの連帯に謝意を表明した。同外相はまた、英政府がANC開設に異議を唱えたのに対し、これを糾弾した。

 ボリビア政府は10日、モラレス大統領を暗殺する陰謀がある、と警告を発した。同国の右翼野党国会議員ノルマ・ピエーロラは12日、「ボリビア軍部隊300人がベネスエラに展開中」と発言、内外に波紋を呼んでいる。

 これについてボリビア政府は15日、虚偽情報として否定し、10日以内に発言の基となった証拠を提示しなければ法的措置をとる、と同議員に伝えた。ボリビア国防相は、在ベネスエラ大使館に武官4人、同国士官学校などに軍人留学生17人がいるだけだ、と明らかにした。

 一方、マドゥーロ政権と敵対しているルイサ・オルテガ検事総長は14日、「最高裁が他者を嘘発見機にかけないと公約すれば、私は17日、科学捜査警察に出頭し、嘘発見機に敢えて臨む」と述べた。

 オンブズマンのタレク・サアブは、オルテガの一連の反政府言動に関し、嘘発見機にかけるよう最高裁に要請していた。

 カラカスの外港ラ・グアイラには14日、食糧品を詰めたコンテナ500個が到着した。格安食糧配給制度CLAPのための物資で、メヒコ、ニカラグア、パナマなどから輸入されている。マドゥーロ政権は、庶民に食糧を保障し、30日のANC選挙で圧勝したい考えだ。

 同政権は、米政府が物資供給を止めるようメヒコなどに圧力をかけている、と非難してる。

2017年7月15日土曜日

 ペルーのオヤンタ・ウマーラ前大統領夫妻が予防拘禁で収監さる。伯オデブレシ社絡みの汚職疑惑で▼ベネズエラ国営石油が米社と油井掘削契約を結ぶ

 ペルーのオヤンタ・ウマーラ前大統領と、そのナディーン・エレディア夫人は7月13日夜、当局に出頭、18カ月間の予防拘禁に服した。法廷はこの日、夫妻を腐敗容疑で起訴している検察の要請を容れて、国外逃亡の可能性を封じるためとして予防拘禁を命じていた。

 夫妻は、2011年の大統領選挙の選挙戦のさなか、伯建設最大手のオデブレシ(オデブレヒト)から300万ドルを選挙資金として受け取った容疑がかけられている。ウマーラはこの選挙でケイコ・フジモリを決選で破って当選、16年7月末まで5年間政権にあった。ウマーラは「政権を去ってから政治的迫害が続いている」と、暗にPPクチンスキ現政権を批判している。

 ウマーラ陣営は2006年の大統領選挙時には、ベネスエラのウーゴ・チャベス大統領(当時、故人)から選挙資金を受け取った疑いがある。この時の選挙ではウマーラは、アラン・ガルシア(2期目、元大統領)に決選で敗れた。

 そのガルシアもオデブレシから資金をもらった疑いで捜査されている。またアレハンドロ・トレード元大統領は同社からの巨額の収賄で起訴され逃亡、米国に潜伏中。ペルー政府は身柄引き渡しを求めている。

 ブラジルでは12日、ルーラ元大統領がやはり建設大手OAS社からの収賄で9年半の禁錮判決を受けた。ウルグアイのホセ・ムヒーカ前大統領は14日、「法廷や報道が何と言おうと、貧困人民が君にはついている」と、ルーラ擁護を表明した。

▼ラ米短信   ◎ベネスエラ国営石油が米社と契約

 国営PDVSAは7月14日、米ホリゾンタル油井掘削会社から13億ドルの投資を受け入れる契約を結んだ。向こう3年間にベネスエラ国内で油井200箇所を掘り、日量10万5000バレルの原油を増産する計画。現在のVEN原油生産は日量190万バレルと見られてる。これは最盛期より100万バレル少ない。

 ホリゾンタル社は過去の契約に基づき既に、オリノコ油田で開発に参加している。ニコラース・マドゥーロ大統領は、新契約調印式で、外資が必要であり、投資を歓迎する、と述べた。また、ドナルド・トランプ米大統領と対等の立場で会談したい、と表明した。

 一方、アントニオ・グテレス国連事務総長は14日、ベネスエラ政府と反政府勢力が即時融和するのが必要だとし、「言論の自由回復などが求められる」と指摘した。これに対しVEN外交当局は、「言論の自由」論は反政府勢力の主張を丸のみしたものと批判した。言論の自由があるからこそ、反政府メディアは連日、マドゥーロ政権を虚偽報道を含め激しく攻撃している。 


 

2017年7月14日金曜日

 ニカラグアの首都マナグアで16~18日、第23回FSP(サンパウロ・フォーラム)開催。CELAC33カ国から300人出席へ▼19日のサンディニスタ革命38周年記念行事に直結


 ニカラグアの首都マナグアで7月16~18日、第23回フォロ・デ・サンパウロ(FSP、サンパウロフォーラム)会合が開かれる。ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)加盟33カ国から左翼・進歩主義政党・運動・団体の代表約300人が出席する。15日は予備日、19日はサンディニスタ人民革命(RPS)38周年記念日で、その式典にFSP出席者全員が参加する。

 ことし1月マナグアで開かれた予備会合で、「我らのアメリカ合意」が採択された。LAC(ラ米。カリブ)の左翼統合と、LACに再台頭している新自由主義経済路線への反撃のための闘い強化を謳っている。

 今回の会合では①危機にある資本主義に替わる経済モデル構築と、その政治的・社会的影響②LAC統合③反腐敗闘争④国家制度衰退問題⑤跋扈する個人利益追求経済への対策⑥労働者階級の復権⑦ベネスエラ情勢と米州諸国機構(OEA)-などがテーマになる。

 横暴な新自由主義路線の政治経済再台頭は、域内の左翼・進歩主義勢力にとって逆襲すべき好機だが、それは経済的にでなく、、政治的に対処せねばならない。FSPは、そのように捉えている。

 FSP事務局、ニカラグアのオルテガ政権、政権党FSLN(サンディニスタ民族解放戦線)は、ルーラ元ブラジル大統領を断罪した1審判決を糾弾、ルーラへの連帯を表明した。

 FSPがニカラグアで開催されるのは4度目、中米開催は8度目となる。社会主義クーバからは、ホセ=ラモーン・バラゲール共産党国際局長が出席する。

2017年7月13日木曜日

 ブラジル第1審で、ルーラ元大統領に禁錮9年半の判決。2審判決までは収監はない。来年の大統領選挙の最有力候補だが、政治生命危ぶまれる

 ブラジル法廷第1審(セルジオ・モロ裁判長)は7月12日、ルイス=イナシオ・ルーラ=ダ・シルヴァ元大統領に、腐敗罪で禁錮9年半の実刑判決を下した。弁護団は控訴手続きを始めつつあり、第2審での有罪判決が出るまでは身柄拘禁はない。

 だがルーラは2018年10月の大統領選挙に労働者党(PT)から出馬する意向で、選挙前に2審有罪判決が出れば、出馬は不可能になる。21世紀初頭の南米政界を故ウーゴ・チャベス前VEN大統領とともに主導したルーラの政治生命は危機に瀕している。

 今回の判決は、ルーラが、伯最大手建設会社オデブレシ(オデブレヒト)とOAS社の契約成約時に豪華住宅を受け取ったのを収賄と見なし、有罪とした。だが、この住宅はOAS名義になっており、弁護側は収賄事実はないと否定している。

 来年の大統領選挙の立候補届けは7月30日~8月15日の期間になるもよう。ルーラは主要な出馬予定者の中で30%の支持率を維持、トップに立っている。昨年8月末にルーラ後継のヂウマ・ルセーフ大統領を無理やり弾劾した保守・右翼勢力がルーラを再び政権に就かせないため展開している「政治的陰謀」と、PTをはじめ内外の左翼陣営は批判している。

 ルーラが大統領選挙で当選した後に2審で有罪判決が出た場合は、司法審議会が大統領資格を審理する。

 ルーラは他の容疑でも捜査されている。オデブレシ資金1200万ドルでサンパウロ市内に「ルーラ研究所」建設用地を買ったか否か。スウェーデン製グリペン戦闘機購入(50億ドル)に際し、影響力を行使して収賄したか否か。

 また元PT幹部でルーラの側近だった元上院議員は、国営石油ペトロブラス汚職に関与した元同社幹部を買収して沈黙させる計画にルーラも関わった、と証言、これも捜査対象だ。さらにアンゴラでの建設事業参入に際しても影響力を行使し、オデブレシ経営者と組んで違法行為に関与したという容疑もある。

 法廷は、検察庁が機密書類など厖大な証拠物件を提出したことで審理が進んだ、と検察の協力を評価している。ルーラ弁護団は、控訴するとともに、国連人権部門にも訴えると表明している。

2017年7月12日水曜日

 ベネズエラ情勢:マドゥーロ政権は30日の制憲議会(ANC)議員選挙に向け邁進。反政府野党連合MUDは政権を否定する投票実施へ▼コロンビア政府がFARC要員7700人を恩赦

 ベネスエラでは今、マドゥーロ政権が推進する制憲議会(ANC)開設のための議員選挙(7月30日)と、これに反対する保守・右翼野党連合MUDが進める同政権否定の是非を問う「国民投票」(7月16日)に向かって、政府と反政府勢力が激しく闘っている。

 ニコラース・マドゥーロ大統領の政権党PSUV(ペスーブ=ベネスエラ統一社会党)は7月11日、MUDの「国民投票」は国家選挙理事会(CNE)の承認を得ていないため違憲かつ無効と主張、同日にも最高裁選挙法廷に投票差し止めを求め提訴する構えだ。

 これに対しMUDは、後ろ盾の米政府、米州諸国機構(OEA)、内外マスメディアなど外部勢力の支援を基に、ANC開設を阻み、マドゥーロ政権の正統性を否定、大統領選挙実施に持ち込もうと謀っている。

 トランプ米大統領に反ベネスエラ政策を指南している米共和党右翼のマルコ・ルビオ上院議員(反カストロ派クーバ系2世)は11日、マドゥーロ政権に対し「ANC開設を止め、選挙を実施せよ。さもなければ米国は厳しい制裁を科す」と内政干渉した。

 マドゥーロ大統領は直ちに、「ベネスエラは主権国家であり、誰の指図も受けない。ANCを開設し、米帝国主義は吐いた言葉を呑み込まざるをえなくなる」と一蹴した。

 マドゥーロ政権は、埋蔵量世界一のベネスエラ原油と、LAC(ラ米・カリブ)での覇権復活を狙って米国は同政権を倒そうと画策しうている、と見ている。これは内外知識人の味方と一致する。米政府の「民主化」要求は「石油確保の野望隠し」よ見なされている。

 アラグア州マラカイ市で10日、ANC議員候補ホセルイス・リバスが選挙運動中、反政府勢力側の殺し屋と見られる男から射殺された。4月初めの反政府暴動開始から100日を経て、死者は94に達した。

 同日、首都カラカスでは反政府暴徒が自動車道にガソリンを撒いたうえで火炎瓶を投げ、そこに差し掛かった国家警備隊(GNB)のオートバイ部隊の要員7人に火傷を負わせた。報道陣は、この犯行準備を知りながらGNBに通報せず、取材態勢をとっていた。

 政府は8日、MUD極右政党VP(人民意志)党首レオポルド・ロペス受刑囚を健康の理由で刑務所から出し、GPS装置を付けて自宅軟禁処分に切り替えた。ロペス夫人リリアンは9日、この措置に関与したデンルシー・ロドリゲス前外相、その実兄ホルヘ・ロドリゲス首都圏リベルタドール区長に謝意を表明した。

▼ラ米短信   ◎コロンビア政府がFARC要員に恩赦

 コロンビアのJMサントス大統領は7月11日、和平過程にあるゲリラ組織コロンビア革命軍(FARC)の要員7696人を恩赦および赦免で、自由の身にした。この要員は6月末までに武装解除を終え、社会復帰に備えている。FARCは政党になる。

▼ラ米短信   ◎米国の駐玖臨時代理大使が交代

 米臨時代理大使は7月11日、スコット・ハミルトンに交代した。クーバは2015年7月20日の国交再開と同時にワシントン駐在大使を置いているが、米側は依然、大使を任命していない。 
 
 
 

2017年7月11日火曜日

~~ピースボート2017波路遥かに~~④(終)エル・サルバドール

 OD号は、エル・サルバドール(ES)最重要港アカフトゥラに入港した。ここでは「現代史探求」のバスツアーに加わって、首都サンサルバドールで内戦の傷跡を取材した。人権NGOの案内で、広大な公園の一角に建てられた人道犯罪の犠牲者たちの氏名を刻んだ長い石の壁を訪ねた。その前で、連帯集会が開かれた。

 次いで、このNGOの本部で昼食会と、状況説明会が催された。私は、ある人道犯罪被害者の女性にインタビューし、苦悩の声を聴いた。長らく閉ざされていた声と言葉が今は出るようになっている、と彼女は言った。

 同本部の正面には、サルバドール・サンチェス=セレーン大統領の政権党「ファラブンド・マルティ民族解放戦線」(FMLN)の党本部がある。そこも訪れ、取材した。この首都取材は近い将来、長い記事に仕立てる。だから今は細部は語るまい。

 別のバスツアーは1泊2日で、ホンジュラス国境に近い山中のエル・モソテ集落で内戦初期に起きた大虐殺の現場を訪れた。船客の中の被爆者たちは、このツアーに参加した。

 私は1990年代初め、エル・モソテを取材した。当時は、その10年前の虐殺事件発生時とほぼ変わらない情景があった。それが今日では、立派に整えられ、内戦の極悪さを示し、かつ犠牲者を慰霊する聖地となっている。

 私はアカフトゥラ2日目に下船し、海岸線の山道約100kmを車で1時間45分走り、オスカル・ロメーロ大司教国際空港に行った。海岸線は標高600mを超える山地が連なり、急峻な崖が海に落ちている。雨季とあって緑生い茂り、内戦を想起させるものはない。

 アエロメヒコ機は2時間半遅れで出発、夜半、メヒコ市のベニート・フアレス空港に着いた。直ちにアエロメヒコの成田行きに乗り、14時間半の窮屈な空路に身を置いた。隣席は、日本に2週間、ホームステイ旅行するグアナフアト大学予科生10人組の1人で、いろいろと話し合った。

 彼は、機内で配られたメヒコの新聞に全く興味を示さず、ひたすらスマホや座席前の画面に集中していた。この生態は、日本の若者とさして変わらない。

 東京に帰着。辛くも都議会議員選挙に間に合った。都民が自民党と安倍政権に鉄槌を下したのは評価できるが、新しい第2保守党の正体は不明だ。何が出て来るのか、定かでない。かくして、半月の短い船旅は終わった。今回も実り多き旅だった。 
 

2017年7月9日日曜日

~~ピースボート2017波路遥かに~~③パナマからニカラグアへ

 コロン市のサンクリストーバル港で親友ワゴと再会する。近年、彼は活動が多様化して忙しく、PB乗船は弟子たちに任せている。今回はエイラ・エスキベルが乗った。ワゴには、パナマ運河に来る度に会える。また来年会うだろう。

 パナマ市では、ワゴらクナ民族は、運河出入口に架かるラス・アメリカス橋をパナマ市中心街側から西方に渡った地域に集落をつくって居住している。モラは、そこで生産されている。

 カリブ海側の運河出入口は、運河に向かって左側が、昨年6月開通した第3閘門式水路、右側が旧来の第1、第2水路だ。太平洋側出入り口は、両者は離れていて、旧水路から新水路を観ることはできない。

 両洋を結ぶ運河と南北両米大陸を繋ぐラス・アメリカス橋が交差する地点は「世界の十字路」と呼ばれる。運河の中間地点には、日本が贈った独立100周年記念橋がある。現在、カリブ海側出入り口の上に、第3の橋が建設中だ。

 旧運河の通航は、記者時代を含め10回を超える。だから新鮮さがない。新水路は一度は通航してみたいが。通航料は平均、旧水路が1000万円、新水路は3000万円だ。PB船は旧水路で十分。3倍もの通航料を払って新水路をと通ることはない。

 旧水路は、双方向合わせ一日30隻が通航するが、新水路は一日4隻が限度だ。規模が大きいだけに、水の出し入れと閘門開閉に時間がかかるのだ。

 運河を太平洋に抜けてから1日半で、ニカラグアのコリント港に着いた。いつもバスや車で首都マナグアやレオン市に向かうが、今回はコリントの街を散策した。港は、来る度に起重機などが新しくなっている。この国の進歩が、そんなところに窺える。

 本来ならば、「ニカラグア大運河」の建設現場を取材すべきなのだが、今回は時間がなく、叶わない。

 船は夜半、隣国エル・サルバドールのアカフトゥラ港に向かい出航した。我が船室でPBスタッフ3人とビール宴を催す。ハムとチーズとCD音楽で語り合った。

 魅力的なスタッフばかりだが、女性らは自由な世界旅行をそろそろ切り上げて、錨を降ろすべき男性を探そうと決意している。若き友人たちに良縁が生まれるのを、いつも祈っている。

2017年7月8日土曜日

 マリオ・バルガス=ジョサが故ガブリエル・ガルシア=マルケスとの関係を初めて語る。「共作さえ構想した」と明かす。1976年の絶交の理由は語らず

 初めて『百年の孤独』(孤独の百年)を読んだ時、ラ米についに騎士道、現実を踏まえた幻想の語り、記述にうるさい読者を魅了する徳のある大作が現れたと驚き、眼がくらみ、しばらくの間ガブリエル・ガルシア=マルケス(GGM)の幻影に苛まれた。

 ペルー人でスペイン国籍も持つ作家マリオバルガス=ジョサ(MVLL、81歳)は7月5日、スペインのエル・エスコリアルでのコンプルテンセ大学夏期講座で、『百年の孤独』刊行50周年に因み、GGMについて語った。GGMの『族長の秋』については、彼の作品の中で最も軟調であり、漫画的だと思った、と述べた。

 2人とも20世紀後半のラ米大作家時代に属し、ノーベル文学賞作家同士。MVLLはGGMとの共通点について、「共に母方の祖母たちに育てられ、父親と難しい関係にあった」ことを挙げた。さらに、「ウィリアム・フォークナーに傾倒し、欧州に滞在して自分たちがラ米人であるのを悟ったこと」と強調した。

 クーバ革命との関係については、「自分は革命を熱狂的に迎えたが、GGMはさめていた。彼はプレンサ・ラティーナで働いていた当時すでに友人プリニオ・アプレヨとともに玖共産党(PSP)から排除されていた。だが彼はやがてフィデル・カストロと知り合った。実利主義が働いたのか、反玖よりも親玖である方が望ましいと気付いたのだろう」と指摘した。

 「クーバ革命は当初の自由主義、社会主義から共産主義へと傾斜した。我々批判的だった者はクーバから離れていった」と、自らの立場を語った。現代のラ米政治に関しては、「GGMは同意したがらなかったようだが、問題は軍部や社会主義では解決できず、暴力がより少なく貧困を減らすことが可能な民主でやらねばならない。だが腐敗は掃討せねばならない」と述べた。

 GGMとの友情は、「互いに相手の作品を読んで知っていたが、1967年にカラカスの空港で初めて会い、一緒にボゴタに行った。その時はもう親友同士になっていた。書簡をしばしば交わすようになり、アマソニアをめぐって起きたペルー・コロンビア戦争の史実を踏まえた小説を2人で書こうとさえ計画した。この構想は立ち消えになったが」と明らかにした。

 MVLLは1967年、リマでGGMに公開インタビューした。「彼は公衆の面前では引っ込み思案で臆病なところがあった。だが私生活では羽目をはずすほど楽しんでいた」と述べた。「私たちの友情は、ラ米文学が仏英伊などの読者を驚かせていた状況の下で深まっていた」と指摘した。

 GGMは2014年4月死去した。「コルタサルやフエンテスが死んだときと同じように悲しかった。彼らは大作家であり、かつ友人だった。私は、その世代の最後の一人だと思う。今や、彼らのことを語る立場になってしまった」と述懐した。

 MVLLとGGMの友情は1976年に途絶え、以後、2人が会うことはなかった。その年、2人はメヒコ市の劇場で殴り合い、MVLLはGGMを殴り倒した。当時のMVLLのパトリシア夫人にGGMがちょっかいを出したのに怒ったのが原因とされている。この決裂に話が及ぶとMVLLは、「話が危険な領域に及んだ。そろそろ切り上げよう」と当時の逸話に触れず、話を終えた。

 質問役のスペイン人カルロス・カネスは、「カミュがサルトルを、トルストイがドストエフスキーを、フォークナーがヴァージニア・ウルフやジョイスを語るように、ラ米文学の巨人がもう一人の巨人を語った」と称賛した。

【1980年代末に私がリマ市でMVLLにインタビューした際、GGMと絶交した逸話を訊くと、MVLLは「私は彼とインタビューし、彼について評論を書いた。彼とは友好関係にあった」としか答えなかった。】

 
 
 

2017年7月6日木曜日

~~ピースボート2017波路遥かに~~②ベネズエラ

 ちょうど1年ぶりに訪れたカラカスは、反政府勢力の街頭行動がたまたまなかったため、移動が楽だった。街中の壁面には、7月30日実施の制憲議会(ANC)議員選挙に向けた政権党PSUVの大ポスターがペンキで描かれている。すぐに剥がされ破り捨てられる紙のポスターは通用しない。

 都心のボリーバル広場、そこに面した外務省、少し離れた丘陵上のチャベス廟や、あちこちで地元の人々と対話した。船内では来船したラ・グアイラ港地元のバルガス州当局者や外務省当局者と話し合った。巷の庶民は物資不足や治安悪化を託(かこ)つが、政変はないと見る。当局者は落ち着いていた。故ウーゴ・チャベス14年、ニコラース・マドゥーロ4年の計18年、政権を握り固めてきたチャベス派は、国軍と一体化して揺るがない。そんな自信である。

 反政府勢力は、米国務省、米南方軍、CIAの指導を受け、軍資金をもらって合法・非合法の反政府工作を続けきたが、国軍を割ってクーデターを起こす目的を達することができないままだ。米国務省の下部と化した米州諸国機構(OEA)の度重なる反ベネスエラ策謀もことごとく失敗してきた。

 過去200年の間にラ米・カリブの多くの国々は、米帝国主義に侵略された苦い経験を持つ。だから米国を完全には信用しない。かくして米国と、その手先に成り下がったメヒコ、ペルーなどによる多数派工作は毎回失敗してきた。

 マドゥーロ政権は7月30日の投票日に向けて邁進しているが、反政府側はさまざまな妨害工作を激化させるだろう。7月は天王山だ。新自由主義資本に支配されている内外マスメディアの反VENキャンペーンも一層激しくなるはずだ。

 6月23日は「沖縄慰霊の日」。そのため、沖縄・日本関係史、軍事基地を含む今日の問題について特別に語った。船客たちは壁新聞で、大田昌秀元沖縄県知事の死去を知っていた。共謀罪強行採決、森友・加計疑惑事件のことも知っていた。すべてが絡む現代、どの切り口からも、諸問題の生々しい赤い肉が見えてくる。

 毎回気になるのが、若者多数派の政治的、社会的、国際情勢的な深い無関心だ。彼らは自ら気づかずに、やすやすと罠にはまってしまうだろう。歯がゆいが、電脳個人メディアと一体化している彼らに説得は通じない。聞く耳を持たないのだ。彼らがよほど困らない限り、こんな状態が続くだろう。


  

2017年7月5日水曜日

~~ピースボート2017波路遥かに~~① 東京-ハミルトン

 6月後半、NGOピースボート世界周遊船オーシャン・ドゥリーム(OD)号で船上講師を務めた。成田-上海-ニューヨークー英領バーミューダ島都ハミルトンの計2万km弱を40時間かけて飛んだ。NYまでは中国東方航空だった。

 当然のことながら中国語が機内を埋める。そこで中国語の地名を採集した。紐約(NY)、温哥華(バンクーバー)、旧金山(サンフランシスコ)、華盛頓(ワシントン)、芝加哥(シカーゴ)、温尼伯(ウィニペグ)、多倫多(トロント)、魁北克城(ケベック市)、辛辛那堤(シンシナティー)、渥太華(オタワ)、休侘湖(ヒューロン湖)、波土頓(ボストン)。。。漢字の略字が多く、日本語のパソコンでは表せない。kmは「公里」という。米ドルは「美元」だ。

 真夜中にJFK空港に着き、エアートゥレインで空港を一周してからフェデラル・サークル駅で降り、無料電話で予約していたホテルに迎えの車を頼む。やがて送迎バスがやってきたが、ホテルの部屋に辿り着いたのは午前1時半だった。

 眠らずに午前5時、ロビーで集合。パナマのクナ民族のモラ制作者エイラ・エスキベル、日系メヒコ人通訳グティエレス実、女優東ちづる、そのカメラマン、その世話係に私を加えた6人で、AA機に乗り、ハミルトンに渡る。

 島の空港と反対側に位置する港に停泊中のOD号の船室に入ったのは、東京の自宅を出てからちょうど40時間後だった。エイラの師ワゴは私の親友であり、エイラおよび実とハミルトンを散歩した。植民地独特の風情で、通貨は事実上、美元だ。物価高で、「アイルランド風酒場」で飲んだラム酒のマンゴージュース割カクテルは10ドルだった。

 ハミルトンの街は整然としている。灼熱の陽光に対し、白亜の家々がずらりと並ぶ。米英人の別荘地で、自家用ヨットが入江を埋めている。だが灼熱に堪えるものがない。土着の強烈な文化がない。

 この島の南方にある旧英領バハマは独立国だが、米国の植民地的経済状態にあり、首都ナッソーも米ドルに支配されている。ハミルトンとナッソーには、共通する佇まいがある。つまり島の認同(イデンティダー、アイデンティティー)が感じられないのだ。これは悲しく寂しい。

 船はいつしか、ドミニカ共和国と米領プエルト・リコ島の間のラ・モナ水道を抜けて、カリブ海に入った。

 東ちづるは、TV番組で主演する「旅館の若女将」そのままに活発、勝気で、威勢がいい。広島の酒は甘いと言うと、直ちに否定され、呑むべき辛口の銘柄を2つ教えられた。彼女は広島県出身で、酒豪なのだった。

 船内で「ドイツ国際平和村」、「まぜこぜの社会」などたくさんの講演をこなした東ちづるは、主宰する社団法人「Get in touch」の制作で、自らプロデュースした、LGBT問題を取り上げた映画「私はワタシ」を紹介。船内、寄港地での撮影も済ませ、パナマで下船した。エイラもモラについて講演したり、実習会を開いたりして、パナマで降りた。私は港でワゴと再会することにしている。

 私はカラカス訪問に備え、玖米関係、ベネスエラ情勢、故ウーゴ・チャベス大統領について話した。4月に横浜・神戸を出航したOD号船客にとって、3ヶ月半の旅程の最後の3分の1にかかる山場が2日間のカラカス訪問だった。私にとっては、ちょうど1年ぶりのベネスエラである。

 船客には韓国、台湾、シンガポール、マレーシアの人々が計約100人いた。中国語は「中文」と呼ばれ、その通訳が2人乗船していた。もちろん韓国(朝鮮)語通訳もいる。あとは英語と西語の通訳だ。アジアや第2次大戦について話す時、彼ら近隣の人々をも慮って話さねばならない。その緊張感をもって語るのも、かえって楽しい。

2017年7月4日火曜日

 メキシコの画家・彫刻家ホセ=ルイス・クエバス(86)が死去

 メヒコの画家・彫刻家ホセ=ルイス・クエバス(86)が7月3日、メヒコ市内の病院で死去した。オロスコ、リベーラ、シケイロスらの「メヒコ社会派壁画運動」に反旗を翻し、それを自身の認同(イデンティダー、アイデンティティー)としていた。メヒコ芸術庁(INBA)は4日、首都中心街の芸術殿堂で告別式を挙行する。

 私は1971年4月、クエバスの邸宅で2時間インタビューした。画伯が40歳の時だった。「私はメヒコ市の下町の路地に面した製紙工場の中の貧しい部屋で1934年2月のある日生まれた」と言った。3歳若く言っていたのだ。少年時代に売春街の女たちから鍛えられ、貧困ゆえの人間のいびつさ、醜悪さに心を惹かれ、それを題材にした。

 クエバスは、白黒でメヒコを表す線画を評価され、50年代ニューヨークでデニューし、メヒコに凱旋。「サボテン(ノパレス)のカーテンを打ち破れ」と叫び、壁画運動への反対運動を開始した。

 67年には、メヒコ市ソナ・ロサ地区で「はかない壁画」を制作、半永久的に続く壁画作品を揶揄した。当時、存命だった大御所ダビー・アルファロ=シケイロスを「敵」に見立て、自身の存在を強調していた。

 だが1992年、生地に近い首都下町の「歴史地区」に、自分の名前を被せた美術館を開き、94年には、そこに高さ8m、重さ8トンの銅製の巨像「ラ・ヒガンタ」(女巨人)を建てた。

 私は、この巨像を観ながら、壁画運動を蔑視していたクエバスも後世に残る大型の記念碑的作品を結局は作っではないか、と思った。だが再度インタビューする機会はなかった。

 クエバスは1974年シケイロスが死ぬと、芸術殿堂の告別j式に駆け付けた。それから43年後、クエバスが芸術殿堂に横たわることになった。

★拙著『メヒコの芸術家たち』(1997年、現代企画室)参照

2017年7月3日月曜日

 チり大統領選挙(11月)の主要候補が出そろう

 11月19日実施のチレ大統領選挙に出馬する主要候補が7月2日、大方出そろった。この日の党派別予備選挙で、保守・右翼陣営「チレ・バモス(チレよ進もう)」のセバスティアン・ピニェーラ前大統領は58%を得票、マヌエル・オサンドーン上院議員らに圧勝した。

 左翼の「拡大戦線」(FA)は、放送ジャーナリストのベアトゥリス・サンチェスが得票率67%で、社会学者のアルベルト・マジョールを退けた。

 一方、政権党連合「ヌエバ・マジョリア(新多数派)」は4月、統一候補擁立をめぐって亀裂が深まり、中核のキリスト教民主党(DC、中道・保守)は、カロリーナ・ゴイッチ上院議員を擁立。これに対し、もう一つの中核、社会党(PS)など左翼諸党はアレハンドロ・ギジエル上院議員を選んだ。

 政権党連合は1990年3月の民政移管時からDCが2度、PSが3度、大統領を出してきた。現職のミチェル・バチェレー大統領は2期目で、PS党員。DCは今度は我が党からと、逸早くゴイッチを指名した。

 結局、「新多数派」は統一候補を決める予備選を開けなかった。8月19日の出馬締め切りまでに、ゴイッチとギジエルが討論会などを通じて一本化できるかどうかが鍵となる。

 「新多数派」が分裂したしたまま両候補を立てれば、ピニェーラ前大統領の当選が容易になる。現時点ではピニェーラの決選進出は堅いと見られ、対立候補はゴイッチ、ギジエルのいずれかになるもよう。進出が難しい左翼FAは、決選では「新多数派」支持に回る公算が大きい。

 ピノチェー軍政が終わって27年、チレの政情は「軍政後時代」を抜け出し、ピニェーラが代表する新自由主義路線と、「新多数派」の新自由主義+社会政策路線が競い合う型になっている。