AMLO(アムロ)次期メキシコ大統領は7月3日、メキシコ市中心街の大統領政庁(国家宮殿)で、エンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)大統領と会談、政権移行について話し合った。大統領は移行に協力すると約束。移行作業はこの日始まった。
会談後アムロは、ドナルド・トランプ米大統領とマイク・ポンぺオ国務長官が近い将来、来訪すると明らかにした。
北米自由貿易協定(TLCAN/NAFTA)の見直し、国境問題などでアムロは、12月1日の就任まで約5カ月の間、EPN大統領の対米交渉に協力する。
またアムロは今月24日、太平洋岸の保養地プエルト・バジャルタで開かれる太平洋同盟(AP=アリアンサ・デル・パシフィコ)首脳会議にEPNとともに出席することになった。
APには、メキシコ、コロンビア、ペルー、チリが加盟。ラ米とAPECの「繋ぎ目」を自負している。
チリとアンデス山脈で国境を接するアルゼンチンのマウリシオ・マクリ大統領はアムロを逸早く訪亜招待している。マクリは南米右翼の旗頭だが、8月就任するコロンビア次期大統領イバン・ドゥケの極右姿勢を警戒しており、アムロとの接近で一種の「均衡」を図ろうと望んでいるかに見える。
ブラジル、ウルグアイ、パラグアイとともに関税同盟「南部共同市場」(メルコスール)を組む亜国は、APとの連携を推進している。
アムロ任期はすさまじく、この日も政庁前の憲法広場(ソカロ)には支持派群衆がアムロを観に待機していて、気勢を上げた。
2018年7月4日水曜日
2018年7月1日日曜日
★★★アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ)元メキシコ市長当確▼メキシコ大統領選挙▼他候補者がアムロ勝利認める▼トランプ米大統領も祝福▼封じられたか、大掛かりな不正工作▼4候補が出馬▼苦戦強いられた保守・右翼の政権党と前政権党
7月1日、メキシコ大統領選挙が実施された。決選制度はない。選管中間発表でアムロ候補が得票率53%で当選を確実にした。公式最終結果は4日発表されるGoa
★7月4日(水)1900から高田馬場NGOピースボート本部地下サロンで「歴史的転機迎えたメキシコ」と題し、アムロ当選の意義をめぐる講演会を催します。問い合わせは、電話3363-7561.参加費500円。
各種出口調査では、アムロ43~49%、アナヤ23~27%、メアデ22~26%、ロドリゲス3~5%だった。
アナヤはアムロに電話し、勝利を祝福した。メアデもアムロ優勢を認めた。ドナルド・トランプ米大統領はSNSでアムロを「次期大統領」として祝福、「米墨両国のために協働すべきことはたくさんある」と指摘した。
これで、1930年代のラサロ・カルデナス大統領以来の、中道左翼~左翼~政権が12月1日生まれることになる。任期は6年。
過去繰り返された実例から、政権・選管による大掛かりな投開票の不正が懸念されていた。出口調査には、不正に対抗する狙いがあった。出口調査結果は、数多い世論調査の結果と一致する。
アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ)元メキシコ市長(64)は、保守・右翼勢力が候補者を一本化できず苦戦したのに反比例して、勝利に向かって上昇していた。
出馬したのは4人。保守・右翼の政権党PRI(制度的革命党)のホセ=アントニオ・メアデ元外相(49)は、PVEM(メヒコ環境緑の党)、PNA(新同盟党)と「皆がメヒコのために」を組んで選挙戦を戦ってきたが、現政権の威信は地に落ちている。
世論調査では支持率は3位に低迷している。
同じく保守・右翼の前政権党PAN(国民行動党)のリカルド・アナヤ弁護士(39)は、中道ないし保守化したPRD(民主革命党)および社民主義のMC(市民運動)と保守・右翼・中道左翼連合「メヒコのために先頭に立つ」を組む。支持率は2位。
カルデロン前政権(PAN)の「麻薬戦争」の後遺症で治安が極度に悪化していることなどが響いている。
PRDから独立した中道左翼 MORENA(国家刷新運動)のアムロは、左翼のPT(労働党)および、保守・右翼の福音派PES(社会出会い党)と左右連合「ともに歴史を創ろう」を組む。支持率は40~50%台で、2、3位両候補の合計支持率を上回る勢い。
第4の候補は、無所属のハイメ・ロドリゲス前ヌエボレオン州知事(60)。支持率は5%以下だった。
有権者は18歳以上の8939万人。併せて下院議員500人、上院議員128人、首都市長、8州知事、地方市長・市議会議員の選挙も実施される。
★7月4日(水)1900から高田馬場NGOピースボート本部地下サロンで「歴史的転機迎えたメキシコ」と題し、アムロ当選の意義をめぐる講演会を催します。問い合わせは、電話3363-7561.参加費500円。
各種出口調査では、アムロ43~49%、アナヤ23~27%、メアデ22~26%、ロドリゲス3~5%だった。
アナヤはアムロに電話し、勝利を祝福した。メアデもアムロ優勢を認めた。ドナルド・トランプ米大統領はSNSでアムロを「次期大統領」として祝福、「米墨両国のために協働すべきことはたくさんある」と指摘した。
これで、1930年代のラサロ・カルデナス大統領以来の、中道左翼~左翼~政権が12月1日生まれることになる。任期は6年。
過去繰り返された実例から、政権・選管による大掛かりな投開票の不正が懸念されていた。出口調査には、不正に対抗する狙いがあった。出口調査結果は、数多い世論調査の結果と一致する。
アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ)元メキシコ市長(64)は、保守・右翼勢力が候補者を一本化できず苦戦したのに反比例して、勝利に向かって上昇していた。
出馬したのは4人。保守・右翼の政権党PRI(制度的革命党)のホセ=アントニオ・メアデ元外相(49)は、PVEM(メヒコ環境緑の党)、PNA(新同盟党)と「皆がメヒコのために」を組んで選挙戦を戦ってきたが、現政権の威信は地に落ちている。
世論調査では支持率は3位に低迷している。
同じく保守・右翼の前政権党PAN(国民行動党)のリカルド・アナヤ弁護士(39)は、中道ないし保守化したPRD(民主革命党)および社民主義のMC(市民運動)と保守・右翼・中道左翼連合「メヒコのために先頭に立つ」を組む。支持率は2位。
カルデロン前政権(PAN)の「麻薬戦争」の後遺症で治安が極度に悪化していることなどが響いている。
PRDから独立した中道左翼 MORENA(国家刷新運動)のアムロは、左翼のPT(労働党)および、保守・右翼の福音派PES(社会出会い党)と左右連合「ともに歴史を創ろう」を組む。支持率は40~50%台で、2、3位両候補の合計支持率を上回る勢い。
第4の候補は、無所属のハイメ・ロドリゲス前ヌエボレオン州知事(60)。支持率は5%以下だった。
有権者は18歳以上の8939万人。併せて下院議員500人、上院議員128人、首都市長、8州知事、地方市長・市議会議員の選挙も実施される。
2018年6月16日土曜日
日本にメキシコ人2500万人を送り込めば即辞任だろう▼トランプ米大統領がG7会合で安倍首相に言い放つ▼メキシコ各紙が米紙報道基に伝える▼マクロン仏大統領にも言いたい放題▼米墨間で深刻な移民問題が野党大統領候補アムロの人気を押し上げる▼チェ・ゲバラ生誕90周年式典催さる▼ロサリオ市ではホセ・ムヒーカ氏が記念演説
「ドナルド・トランプ米大統領は安倍晋三首相に対し、<君にはこの問題(移民問題)はないが、私はメキシコ人2500万人を日本に送り込むことができ、そうなれば君はすぐに辞めなければならなくなるだろう>と言った」
メキシコのウニベルサル、レフォルマなど各紙電子版や、「シンエンバルゴ」など電子新聞は6月15日、一斉に報じた。同日の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の転電。
WSJは、カナダで8、9両日開かれたG7首脳会議の際の非公式会合でトランプ大統領が例え話として発言したと、「その場にいた欧州連合(EU)高官の話」として伝えた。
転電記事はまた、トランプ大統領がエマニュエル・マクロン仏大統領に対し、「君はこの問題(テロリズム)を認識せねばならない。なぜなら全テロリストがパリにいるからだ、と言った」と報じている。
トランプ政権が昨年1月発足して以来、メキシコにとり在米同胞移民への扱いは深刻な問題となっている。「国境の壁」建設、TLCAN(北米自由貿易条約=協定=NAFTA)見直しを含め、制度的革命党(PRI)の現政権は押しまくられっ放し。
これが、野党の大統領候補AMLO(アムロ=アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール)の人気を押し上げる主要な要因の一つとなっている。7月1日の大統領選挙でのAMLO当選が有力視されている。
▼ゲバラ生誕90年記念式典催さる
玖サンタクラーラ市のラス・ビージャス中央大学講堂で6月14日夜、チェ・ゲバラの側近だったラミーロ・バルデス革命司令官(86、国家評議会副議長)、エステバン・ラソ人民権力全国会議(国会)議長、共産党幹部ら多数が出席し催された。
詩人の故ニコラース・ギジェンの作品「チェ、コマンダンテ」(司令官チェ)の朗読、チェ・ゲバラに関係する音楽、歌、舞踊も披露された。
またゲバラの生地である亜国サンタフェ州ロサリオ市で14日催された記念式典には、ホセ・ムヒーカ前ウルグアイ大統領が来賓として出席し、モニカ・フェイン市長、ミゲル・リフシッツ州知事らを前に演説した。
「エル・チェは思い通りに生き死んでゆこうと企図した。社会的戦士だった。写真に写るだけの夢想家でなく、理想と共に歩む模範的人物だった。その理想を実現しようとした」と述べた。
メキシコのウニベルサル、レフォルマなど各紙電子版や、「シンエンバルゴ」など電子新聞は6月15日、一斉に報じた。同日の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の転電。
WSJは、カナダで8、9両日開かれたG7首脳会議の際の非公式会合でトランプ大統領が例え話として発言したと、「その場にいた欧州連合(EU)高官の話」として伝えた。
転電記事はまた、トランプ大統領がエマニュエル・マクロン仏大統領に対し、「君はこの問題(テロリズム)を認識せねばならない。なぜなら全テロリストがパリにいるからだ、と言った」と報じている。
トランプ政権が昨年1月発足して以来、メキシコにとり在米同胞移民への扱いは深刻な問題となっている。「国境の壁」建設、TLCAN(北米自由貿易条約=協定=NAFTA)見直しを含め、制度的革命党(PRI)の現政権は押しまくられっ放し。
これが、野党の大統領候補AMLO(アムロ=アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール)の人気を押し上げる主要な要因の一つとなっている。7月1日の大統領選挙でのAMLO当選が有力視されている。
▼ゲバラ生誕90年記念式典催さる
玖サンタクラーラ市のラス・ビージャス中央大学講堂で6月14日夜、チェ・ゲバラの側近だったラミーロ・バルデス革命司令官(86、国家評議会副議長)、エステバン・ラソ人民権力全国会議(国会)議長、共産党幹部ら多数が出席し催された。
詩人の故ニコラース・ギジェンの作品「チェ、コマンダンテ」(司令官チェ)の朗読、チェ・ゲバラに関係する音楽、歌、舞踊も披露された。
またゲバラの生地である亜国サンタフェ州ロサリオ市で14日催された記念式典には、ホセ・ムヒーカ前ウルグアイ大統領が来賓として出席し、モニカ・フェイン市長、ミゲル・リフシッツ州知事らを前に演説した。
「エル・チェは思い通りに生き死んでゆこうと企図した。社会的戦士だった。写真に写るだけの夢想家でなく、理想と共に歩む模範的人物だった。その理想を実現しようとした」と述べた。
2018年6月15日金曜日
「次期メキシコ大統領はAMLO(アムロ)」とCITIが当確予測▼マクロ経済重視は変わらず▼国産品輸出優先か▼NAFTA崩壊しても米墨貿易は続く▼中銀の中立性尊重し、通貨切り下げや金利上昇はない
「AMLO(アムロ=アンドレス=マヌエル・ロぺス=オブラドール)の当選は堅い」。米大手銀行CITIのラ米担当首席エコノミスト、エルネスト・ㇾビージャは6月13日、メキシコ大統領選挙(7月1日)の行方を明確に予測した。
ニューヨークの同行本店で、ラ米メディアの通信員らを対象に分析結果を語った。「焦点は今や、AMLOの政党連合が国会で多数派を占めるか否かだ。可能性はある」とも述べた。
大統領選挙連続3度目の出馬の元メキシコ市長AMLOは、民主革命党(PRD)から分派した国家刷新運動(MORENA)に所属し、小党と政党連合「フントス・アレーモス・イストリア」(JHH=共に歴史を創ろう)を組んでいる。
レビージャはまた、「AMLOの経済政策がどのようなもになるかわからないが」と前置きしながらも、「マクロ経済の安定を重視するはずで、そうでなくなる可能性は短期的には見当たらない」と指摘。「市場開放反対を唱えずに国産品輸出を保護するだろう」とも展望した。
外資については、「北米自由貿易協定(NAFTA/TLCAN)の交渉が長引いているため、外資投下は目立たない状態が続くだろうが、メキシコが外資にとって魅力的な国であることは変わらないのではないか。しかし先行きの不確実さもある」と予測した。
また、「仮にドナルド・トランプ米大統領がNAFTA離脱に踏み切ったとしても、米墨関係の濃密さから両国貿易が途切れることはあるまい」と語った。さらに、「中央銀行の中立性を尊重するだろう。ペソ下落や金利上昇はないだろう」とも分析した。
AMLOは2度の敗北体験から、今回は必勝を期して財界や保守派との政策上の妥協も厭わず、選挙戦終盤で支持率が50%を上回る圧倒的強さを維持している。CITIは、「左翼人民主義者(ポプリスタ)」という過去のAMLOの印象でなく、立場や思想の異なる相手とも妥協できる「現実主義者」としてAMLOを見ているようだ。
ニューヨークの同行本店で、ラ米メディアの通信員らを対象に分析結果を語った。「焦点は今や、AMLOの政党連合が国会で多数派を占めるか否かだ。可能性はある」とも述べた。
大統領選挙連続3度目の出馬の元メキシコ市長AMLOは、民主革命党(PRD)から分派した国家刷新運動(MORENA)に所属し、小党と政党連合「フントス・アレーモス・イストリア」(JHH=共に歴史を創ろう)を組んでいる。
レビージャはまた、「AMLOの経済政策がどのようなもになるかわからないが」と前置きしながらも、「マクロ経済の安定を重視するはずで、そうでなくなる可能性は短期的には見当たらない」と指摘。「市場開放反対を唱えずに国産品輸出を保護するだろう」とも展望した。
外資については、「北米自由貿易協定(NAFTA/TLCAN)の交渉が長引いているため、外資投下は目立たない状態が続くだろうが、メキシコが外資にとって魅力的な国であることは変わらないのではないか。しかし先行きの不確実さもある」と予測した。
また、「仮にドナルド・トランプ米大統領がNAFTA離脱に踏み切ったとしても、米墨関係の濃密さから両国貿易が途切れることはあるまい」と語った。さらに、「中央銀行の中立性を尊重するだろう。ペソ下落や金利上昇はないだろう」とも分析した。
AMLOは2度の敗北体験から、今回は必勝を期して財界や保守派との政策上の妥協も厭わず、選挙戦終盤で支持率が50%を上回る圧倒的強さを維持している。CITIは、「左翼人民主義者(ポプリスタ)」という過去のAMLOの印象でなく、立場や思想の異なる相手とも妥協できる「現実主義者」としてAMLOを見ているようだ。
2018年6月11日月曜日
メキシコ次期大統領最有力のアムロ候補が開発・繁栄のための「同盟」計画暖める▼トランプ米大統領に会って提案する方針▼故ケネディ大統領の「進歩のための同盟」の中米地峡版▼移民流入食い止めが計画の主眼
メキシコ大統領選挙(7月1日)の最有力候補AMLO(「アムロ」ことアンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール)元メキシコ市長は6月10日、チアパス州のグアテマラ国境沿いにあるタパチュラ市での遊説中、「当選したら」と前置きし、「相互に敬意を払い合う条件さえあれば、ドナルド・トランプ米大統領と会う」と述べた。
トランプ大統領と会うことになれば、「移民問題などを平和裏に解決するため、米墨加3国と中米7カ国(グアテマラ、ベリーズ、エル・サルバドール、ホンジュラス、ニカラグア、コスタ・リカ、パナマ)で<開発のための同盟>(仮名)を結成すべく提案する」と述べた。
これは、故ジョン・ケネディ米大統領がキューバ革命後の1961年、ラ米とりわけブラジルの「共産化」を防ぐために開始した「進歩のための同盟」(ALPRO)計画に倣った政策。ケネディは同計画のため、米欧日で総額200億ドルの費用を賄う考えだった。だが63年のケネディ暗殺で、この計画は尻つぼみに終わった。
その後、64年のブラジル軍事クーデターが発生。軍事政権が強権と、人道犯罪を厭わない弾圧で、反共政策を遂行する。これを米国が支援した。だが東西冷戦終結から29年経った現在、反共政策は特にない。
北米から中米地峡にかけての地域では長年、中米からメキシコへ、メキシコから米国へと経済難民が流入し、大問題になってきた。この地域には麻薬密輸、武器密輸、組織犯罪、人身取引などもある。根底には社会に渦巻く巨大な貧困問題がある。
AMLO候補の「開発のための同盟」計画には、それなりの意味がある。北米自由貿易地域(加米墨)と米国・中米・RD自由貿易地域の連携による計画になるはずだが、この地域にはすでに幾つかの多国間開発計画があり、それらと重複しかねない難点がある。
また、移民流入に厳しく、メキシコと中米を見下す発言をしてきたトランプ大統領が分担資金を出すかどうかもわからない。
しかし「発想豊か」なのがラ米政治家の特長だ。実現するか否かは別問題なのだ。AMLOは2位候補に支持率で26ポイント差をつけている。自身も9日、故郷のタバスコ州ビヤエルモーサ市で「私の当選が覆ることはない」と言い切った。
さらに、「大統領になったら公邸でなく自宅に住む。家族と私費で食事する。豊かな政府と貧しい国民という構図があってはならないからだ」とも語っている。
トランプ大統領と会うことになれば、「移民問題などを平和裏に解決するため、米墨加3国と中米7カ国(グアテマラ、ベリーズ、エル・サルバドール、ホンジュラス、ニカラグア、コスタ・リカ、パナマ)で<開発のための同盟>(仮名)を結成すべく提案する」と述べた。
これは、故ジョン・ケネディ米大統領がキューバ革命後の1961年、ラ米とりわけブラジルの「共産化」を防ぐために開始した「進歩のための同盟」(ALPRO)計画に倣った政策。ケネディは同計画のため、米欧日で総額200億ドルの費用を賄う考えだった。だが63年のケネディ暗殺で、この計画は尻つぼみに終わった。
その後、64年のブラジル軍事クーデターが発生。軍事政権が強権と、人道犯罪を厭わない弾圧で、反共政策を遂行する。これを米国が支援した。だが東西冷戦終結から29年経った現在、反共政策は特にない。
北米から中米地峡にかけての地域では長年、中米からメキシコへ、メキシコから米国へと経済難民が流入し、大問題になってきた。この地域には麻薬密輸、武器密輸、組織犯罪、人身取引などもある。根底には社会に渦巻く巨大な貧困問題がある。
AMLO候補の「開発のための同盟」計画には、それなりの意味がある。北米自由貿易地域(加米墨)と米国・中米・RD自由貿易地域の連携による計画になるはずだが、この地域にはすでに幾つかの多国間開発計画があり、それらと重複しかねない難点がある。
また、移民流入に厳しく、メキシコと中米を見下す発言をしてきたトランプ大統領が分担資金を出すかどうかもわからない。
しかし「発想豊か」なのがラ米政治家の特長だ。実現するか否かは別問題なのだ。AMLOは2位候補に支持率で26ポイント差をつけている。自身も9日、故郷のタバスコ州ビヤエルモーサ市で「私の当選が覆ることはない」と言い切った。
さらに、「大統領になったら公邸でなく自宅に住む。家族と私費で食事する。豊かな政府と貧しい国民という構図があってはならないからだ」とも語っている。
2018年6月2日土曜日
メキシコ大統領選挙まで1カ月:AMLO(アムロ)候補が突出リード▼ベネズエラ政府が街頭暴力犯らを釈放▼ニカラグア国民対話が無期限中断
7月1日のメキシコ大統領選挙まで1カ月。ㇾフォルマ紙による5月末の世論調査によれば、国家刷新運動(MORENA)候補アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ、元メキシコ市長)が支持率52%で当選する勢い。
次いで国民行動党(PAN=パン)候補で、民主革命党(PRD=ぺエレデ)などの支持を受けているリカルド・アナヤが25%。政権党・制度的革命党(PRI=プリ)候補ホセ・メアデ元外相は19%だった。5月半ばの調査では、それぞれ43%、24%、16%だった。
世紀末から3期12年続いてきた保守右翼勢力・新自由主義利権体質のPRI/PANのプリパニスタ体制下で、麻薬組織と政府治安部隊の戦いを中心とする暴力事件が日常茶飯事化し、選挙民から忌み嫌われてきた。
さらにトランプ米政権に翻弄され手も足も出ないエンリケ・ペニャ=ニエト現大統領と政権党PRIの体たらくと、似たり寄ったりの前政権党PANの支持率は低落した。これに反比例して最有力候補にのし上がったのがAMLOだ。3度目の挑戦で金的を射止める可能性が強まっている。
選挙戦は終盤。AMLOに対する誹謗中傷宣伝が一層激化するもようだ。
▼ベネズエラが街頭暴力犯らを釈放
政府は6月1日、2012~17年に起きた反政府グアリンバ(街頭暴力事件)に関与、破壊活動などに加担した受刑囚およひ拘禁者計39人を釈放した。
コロンビア国境のタチラ州都サンクリスト―バル元市長ダニエル・セバジョスは、
30日ごとに当局に出頭することと出国禁止が釈放条件になっている。
自宅に立て籠もりライフル銃を構えて治安部隊を威嚇したアンヘル・ビバス退役将軍も釈放された。
▼ニカラグア国民対話が無期限中断
デニス・モンカーダ外相は7月1日、反政府勢力が破壊活動を止めないことなどを理由に、政府と反政府勢力の対話を無期限中止すると発表した。
5月16日に始まった対話は23日中断、双方の話し合いで再開が決まったが、各地の街頭での衝突事件が絶えず、死傷者が続出していた。
次いで国民行動党(PAN=パン)候補で、民主革命党(PRD=ぺエレデ)などの支持を受けているリカルド・アナヤが25%。政権党・制度的革命党(PRI=プリ)候補ホセ・メアデ元外相は19%だった。5月半ばの調査では、それぞれ43%、24%、16%だった。
世紀末から3期12年続いてきた保守右翼勢力・新自由主義利権体質のPRI/PANのプリパニスタ体制下で、麻薬組織と政府治安部隊の戦いを中心とする暴力事件が日常茶飯事化し、選挙民から忌み嫌われてきた。
さらにトランプ米政権に翻弄され手も足も出ないエンリケ・ペニャ=ニエト現大統領と政権党PRIの体たらくと、似たり寄ったりの前政権党PANの支持率は低落した。これに反比例して最有力候補にのし上がったのがAMLOだ。3度目の挑戦で金的を射止める可能性が強まっている。
選挙戦は終盤。AMLOに対する誹謗中傷宣伝が一層激化するもようだ。
▼ベネズエラが街頭暴力犯らを釈放
政府は6月1日、2012~17年に起きた反政府グアリンバ(街頭暴力事件)に関与、破壊活動などに加担した受刑囚およひ拘禁者計39人を釈放した。
コロンビア国境のタチラ州都サンクリスト―バル元市長ダニエル・セバジョスは、
30日ごとに当局に出頭することと出国禁止が釈放条件になっている。
自宅に立て籠もりライフル銃を構えて治安部隊を威嚇したアンヘル・ビバス退役将軍も釈放された。
▼ニカラグア国民対話が無期限中断
デニス・モンカーダ外相は7月1日、反政府勢力が破壊活動を止めないことなどを理由に、政府と反政府勢力の対話を無期限中止すると発表した。
5月16日に始まった対話は23日中断、双方の話し合いで再開が決まったが、各地の街頭での衝突事件が絶えず、死傷者が続出していた。
2018年5月26日土曜日
メキシコ次期大統領最有力候補アムロが学生43人失踪事件解明を公約▼ベネズエラ大統領が米上院外交委員長と会談▼バルバドスで初の女性首相誕生へ▼BLPのミア・モトゥリー党首
メキシコ大統領選挙(7月1日投票)の最有力候補アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ)は5月25日、遊説中にゲレロ州イグアラ市で、強制失踪させられた学生43人の家族代表と会い、政権に就いたら事件解決に尽くすと公約した。
43人はゲレロ州都チルパンシンゴ近郊にあるアヨツィナパ農村教員養成学校生。3年8カ月前の2014年9月26~27日、イグアラ市で事件に遭った。事件には地元警察と麻薬組織が関与。さらに大統領管轄下にある陸軍と連邦警察の関与も明るみに出ているが、大統領責任追及を恐れる政府が動かないため半ば迷宮入りしている。
AMLOは、大統領になったら、事件の「真実究明委員会」を設置すると約束。同委の中心は、米州諸国機構(OEA)の米州人権委員会(CIDH)と国連人権高等弁務官事務所が占めることになるという。
アムロはまた、ペニャ=ニエト現政権とカルデロン前政権は、治安戦略を誤り、軍隊を治安出動させたと指摘した。軍隊投入で「麻薬戦争」は悪化、23万人が殺された。
AMLO「次期政権」の公安相候補と目されるアルフォンソ・ドゥラソは既に、「真実委員会」設置の準備を進めているという。
▼ベネズエラ大統領が米上院外交委員長と会談
ニコラース・マドゥーロ大統領は5月25日、来訪した米上院外交委員長ボブ・コーカー議員を政庁に迎え、外交関係修復をめぐって会談した。両国はこのほど、臨時代理大使ら外交官各2人を相互に国外退去処分にしている。
大統領は同日、ラ米開発銀行(CAF)のルイス・カランサ総裁と会談した。CAFは1970年、ベネズエラ政権の主導で設立され、LAC(ラ米・カリブ)19カ国と西葡両国および域内市銀13行が参加。本店はカラカスにある。
ベネズエラは1970年、同国原油生産の最高記録、日量378万バレルを記録していた。2003年は320万b、現在は150万bに落ちている。
▼バルバドスで初の女性首相誕生へ
カリブ英連邦のバルバドスで5月24日総選挙が実施され、野党バルバドス労働党(BLP)が下院30議席を独占、完勝した。その結果、BLPのミア・モトゥリー党首(52)が首相に就任することになった。任期は4年。
英国から1966年に独立して以来8人目の首相だが、初の女性首相となる。民主労働党(DLP)政権のF・スチュアート首相は完敗を認めた。
モトゥリーは弁護士。91年上院議員となって政界入り。BLP政権で94年教育・青年・文化相、2001年内相兼検事総長、03年第2副首相を歴任。DLP政権になった08年から2年間、BLP党首。13年に党首復帰。
これまでDLP政権は下院で16議席を握り過半数ぎりぎりだった。新政権は下院で野党を持たないことになり、どのような施政になるか関心を集めている。
カリブ英連邦諸国は12カ国。その中のベリーズ(旧英領ホンジュラス)は中米にある。またバハマはキューバ北東の大西洋にあり、南米北部のガイアナ(旧英領ギアナ)は大西洋に面している。
12カ国は南米北部のスリナム(旧蘭領ギアナ)、キューバ、ハイチ、ラ・ドミニカ―ナ(ドミニカ共和国)とともに「カリブ圏」を構成する。
43人はゲレロ州都チルパンシンゴ近郊にあるアヨツィナパ農村教員養成学校生。3年8カ月前の2014年9月26~27日、イグアラ市で事件に遭った。事件には地元警察と麻薬組織が関与。さらに大統領管轄下にある陸軍と連邦警察の関与も明るみに出ているが、大統領責任追及を恐れる政府が動かないため半ば迷宮入りしている。
AMLOは、大統領になったら、事件の「真実究明委員会」を設置すると約束。同委の中心は、米州諸国機構(OEA)の米州人権委員会(CIDH)と国連人権高等弁務官事務所が占めることになるという。
アムロはまた、ペニャ=ニエト現政権とカルデロン前政権は、治安戦略を誤り、軍隊を治安出動させたと指摘した。軍隊投入で「麻薬戦争」は悪化、23万人が殺された。
AMLO「次期政権」の公安相候補と目されるアルフォンソ・ドゥラソは既に、「真実委員会」設置の準備を進めているという。
▼ベネズエラ大統領が米上院外交委員長と会談
ニコラース・マドゥーロ大統領は5月25日、来訪した米上院外交委員長ボブ・コーカー議員を政庁に迎え、外交関係修復をめぐって会談した。両国はこのほど、臨時代理大使ら外交官各2人を相互に国外退去処分にしている。
大統領は同日、ラ米開発銀行(CAF)のルイス・カランサ総裁と会談した。CAFは1970年、ベネズエラ政権の主導で設立され、LAC(ラ米・カリブ)19カ国と西葡両国および域内市銀13行が参加。本店はカラカスにある。
ベネズエラは1970年、同国原油生産の最高記録、日量378万バレルを記録していた。2003年は320万b、現在は150万bに落ちている。
▼バルバドスで初の女性首相誕生へ
カリブ英連邦のバルバドスで5月24日総選挙が実施され、野党バルバドス労働党(BLP)が下院30議席を独占、完勝した。その結果、BLPのミア・モトゥリー党首(52)が首相に就任することになった。任期は4年。
英国から1966年に独立して以来8人目の首相だが、初の女性首相となる。民主労働党(DLP)政権のF・スチュアート首相は完敗を認めた。
モトゥリーは弁護士。91年上院議員となって政界入り。BLP政権で94年教育・青年・文化相、2001年内相兼検事総長、03年第2副首相を歴任。DLP政権になった08年から2年間、BLP党首。13年に党首復帰。
これまでDLP政権は下院で16議席を握り過半数ぎりぎりだった。新政権は下院で野党を持たないことになり、どのような施政になるか関心を集めている。
カリブ英連邦諸国は12カ国。その中のベリーズ(旧英領ホンジュラス)は中米にある。またバハマはキューバ北東の大西洋にあり、南米北部のガイアナ(旧英領ギアナ)は大西洋に面している。
12カ国は南米北部のスリナム(旧蘭領ギアナ)、キューバ、ハイチ、ラ・ドミニカ―ナ(ドミニカ共和国)とともに「カリブ圏」を構成する。
2018年5月7日月曜日
メキシコの保守派ジャーナリストが大統領最有力候補AMLO(アムロ)の「暗殺教唆」▼「殺し屋ジャーナリズム」糾弾の嵐巻き起こる▼1994年に実例
メキシコの著名なジャーナリスト、リカルド・アレマン(63)は5月5日、次期大統領最有力候補アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ)の暗殺を教唆するとも受け取れるメッセージをSNSで発信、6日にかけて厳しく糾弾されている。
アレマンは、「ジョン・レノンはファンから殺された」など数人の著名人が崇拝者に殺害された例を並べた後、「AMLOはいつになるのだ」と書いた。
これに対しAMLO選対幹部タティアン・クロウティエルは直ちに、「彼がペリオディスタ(ジャーナリスト)を名乗るのは許しがたい。彼は自ら働くメディアをも傷つけた」と反撃した。
著名な保守派論客エンリケ・クラウセは、「危険、無責任、容認し難い、非難すべき、拒絶すべき」と、アレマンへの厳しい言葉を並べた。
多くのジャーナリストは6日、「#殺し屋ジャーナリズム(ペリオディズモ・シカリオ)糾弾」運動を開始した。アレマンが出演する主要メディアである最大手TVテレビサと11チャネルは、アレマンとの契約を解除、出演番組を打ち切った。
アレマンは「誤解を与えてしまった。脅迫でなく警鐘を鳴らしたのだ」と言い訳したが、後の祭り。「#」運動派は、殺人教唆罪で検察庁に告発する構えだ。
大統領選挙は7月1日実施されるが、昨年、選挙戦が実質的に始まっていたころからアレマンはAMLOを敵視する醜聞めいた虚偽すれすれの情報を盛んに流し、顰蹙を買い、「腐敗政権から金をもらって動いている」と非難されていた。
メキシコのジャーナリズムは長らく、「(体制に)売られた新聞」、「(体制から)
買われた新聞」と揶揄されていた。だが90年代から今世紀にかけての混乱期に報道の自由が増し、体制批判や社会状況批判が急速に増えた。
このため多くのジャーナリストが、政治家、当局、麻薬マフィアなどの放った殺し屋によって殺害されてきた。警察が殺し屋である例は珍しくない。
メキシコでは最有力大統領候補だったコロシオが1994年3月、ティフアーナ市郊外で遊説中に暗殺された例が記憶に新しい。この事件の黒幕は、麻薬資金と絡む大物が黒幕だった。
コロンビアでは1948年、最有力大統領候補JEガイタンが暗殺され、一大暴動事件が起き、これが、その後のゲリラ諸勢力と政府軍との長期内戦に発展した。
守旧派や右翼の懸念を代弁するアレマンのような暴言がはびこる裏には、プリパニスタ(PRI・PAN両党支配)体制の危機がある。AMLOは同体制の外にいる大物政治家で、大統領の椅子に3度目の挑戦をしている。
最初の06年選挙で実質的に勝ちながら投開票の不正で勝利を奪われるという苦い経験を持つ。12年の前回は現政権の金権攻勢に敗れた。
今回は、メキシコに厳しい要求を突きつけるドナルド・トランプ米大統領に屈辱を味わわされてきたPRI現政権の無能、腐敗、不人気からAMLOに勝機が訪れている。AMLOも意識的に「左翼から中道・進歩主義へ」と印象を和らげる言動をとっている。
アレマンは、「ジョン・レノンはファンから殺された」など数人の著名人が崇拝者に殺害された例を並べた後、「AMLOはいつになるのだ」と書いた。
これに対しAMLO選対幹部タティアン・クロウティエルは直ちに、「彼がペリオディスタ(ジャーナリスト)を名乗るのは許しがたい。彼は自ら働くメディアをも傷つけた」と反撃した。
著名な保守派論客エンリケ・クラウセは、「危険、無責任、容認し難い、非難すべき、拒絶すべき」と、アレマンへの厳しい言葉を並べた。
多くのジャーナリストは6日、「#殺し屋ジャーナリズム(ペリオディズモ・シカリオ)糾弾」運動を開始した。アレマンが出演する主要メディアである最大手TVテレビサと11チャネルは、アレマンとの契約を解除、出演番組を打ち切った。
アレマンは「誤解を与えてしまった。脅迫でなく警鐘を鳴らしたのだ」と言い訳したが、後の祭り。「#」運動派は、殺人教唆罪で検察庁に告発する構えだ。
大統領選挙は7月1日実施されるが、昨年、選挙戦が実質的に始まっていたころからアレマンはAMLOを敵視する醜聞めいた虚偽すれすれの情報を盛んに流し、顰蹙を買い、「腐敗政権から金をもらって動いている」と非難されていた。
メキシコのジャーナリズムは長らく、「(体制に)売られた新聞」、「(体制から)
買われた新聞」と揶揄されていた。だが90年代から今世紀にかけての混乱期に報道の自由が増し、体制批判や社会状況批判が急速に増えた。
このため多くのジャーナリストが、政治家、当局、麻薬マフィアなどの放った殺し屋によって殺害されてきた。警察が殺し屋である例は珍しくない。
メキシコでは最有力大統領候補だったコロシオが1994年3月、ティフアーナ市郊外で遊説中に暗殺された例が記憶に新しい。この事件の黒幕は、麻薬資金と絡む大物が黒幕だった。
コロンビアでは1948年、最有力大統領候補JEガイタンが暗殺され、一大暴動事件が起き、これが、その後のゲリラ諸勢力と政府軍との長期内戦に発展した。
守旧派や右翼の懸念を代弁するアレマンのような暴言がはびこる裏には、プリパニスタ(PRI・PAN両党支配)体制の危機がある。AMLOは同体制の外にいる大物政治家で、大統領の椅子に3度目の挑戦をしている。
最初の06年選挙で実質的に勝ちながら投開票の不正で勝利を奪われるという苦い経験を持つ。12年の前回は現政権の金権攻勢に敗れた。
今回は、メキシコに厳しい要求を突きつけるドナルド・トランプ米大統領に屈辱を味わわされてきたPRI現政権の無能、腐敗、不人気からAMLOに勝機が訪れている。AMLOも意識的に「左翼から中道・進歩主義へ」と印象を和らげる言動をとっている。
2018年4月28日土曜日
メキシコのアヨツィナパ教員養成学校生43人強制失踪事件から3年7か月、依然未解決▼グアダラハーラの大学生3人は麻薬マフィアに殺され硫酸で溶かされる▼アルス―・グアテマラ元大統領死去
メキシコ・ゲレロ州イグアラ市一帯で2014年9月26~27日起きた学生43人の強制失踪事件および市民6人殺害事件は、未解決のまま4月26~27日で3年7か月が過ぎた。
43人は、ゲレロ州都チルパンシンゴの郊外にあるアヨツィナパ農村教員養成学校の学生。この両日、首都メキシコ市、イグアラ市、同学校、およびハリスコ州都グアダラハーラを中心に、事件を解決しようとしない政府への抗議デモが展開された。
グアダラハーラ市がなぜ加わったかと言えば、同市にあるグアダラハーラ視聴覚メディア大学(CAAV)の男子学生3人が3月19日、研修取材に出掛けたまま拉致、殺害され、遺体を硫酸で溶かされてしまったことが最近明るみに出たため。3人の遺骨がDNA鑑定にふされ、学生3人のものと判明した。
アヨツィナパ事件とCAAV事件の共通点は、麻薬マフィアが絡んでいること。CAAV学生は、ハリスコ州内で暗躍するマフィア「ハリスコ新世代」の取材に出掛けたまま行方不明になっていた。各地の学生たちは「第2のアヨツィナパ事件」と捉え、連帯している。
農村教員養成学校生らは、乗っていたバスに、ゲレロ州に根を張るマフィアが米国のシカゴに運ぼうとしていたヘロインなどの麻薬が積んであったことから、口封じのためか、拉致され消息が不明。1~2人の遺骨が43人のうちの学生のものとDAN鑑定で判明したとされるが、遺族や世論は「43人全員の生還」を政府に訴え続けてきた。
メキシコでは7月1日、大統領選挙が実施されるが、最有力候補アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ、中道左翼)は、当選したらアヨツィナパ事件解明に尽力すると公約している。
すでにレイムダック化して久しい汚職まみれのエンリケ・ペニャ=ニエト現大統領は同事件を解決できない。なぜならば指揮下にある陸軍、連邦警察が事件に関与、同軍・警察が麻薬マフィアとつるんでいた事実があるからだ。
この事実はすでに独立調査機関によりほぼ解明されているが、政府は認めない。
▼グアテマラ元大統領死去
アルバロ・アルス―元大統領(72)は4月27日、ゴルフ中に心臓発作で死去した。
1996年1月から4年間、大統領を務め、同年12月29日、36年続いた内戦に終止符を打つ和平協定に、左翼ゲリラ統一組織「グアテマラ民族革命連合」(URNG)とともに調印した。
その後、2004年から連続4期、首都グアテマラ市の市長を務めてきた。同名の息子は国会議長。政治的傾向は保守・右翼で、評判の悪いジミー・モレーノ現大統領の同盟者だった。
43人は、ゲレロ州都チルパンシンゴの郊外にあるアヨツィナパ農村教員養成学校の学生。この両日、首都メキシコ市、イグアラ市、同学校、およびハリスコ州都グアダラハーラを中心に、事件を解決しようとしない政府への抗議デモが展開された。
グアダラハーラ市がなぜ加わったかと言えば、同市にあるグアダラハーラ視聴覚メディア大学(CAAV)の男子学生3人が3月19日、研修取材に出掛けたまま拉致、殺害され、遺体を硫酸で溶かされてしまったことが最近明るみに出たため。3人の遺骨がDNA鑑定にふされ、学生3人のものと判明した。
アヨツィナパ事件とCAAV事件の共通点は、麻薬マフィアが絡んでいること。CAAV学生は、ハリスコ州内で暗躍するマフィア「ハリスコ新世代」の取材に出掛けたまま行方不明になっていた。各地の学生たちは「第2のアヨツィナパ事件」と捉え、連帯している。
農村教員養成学校生らは、乗っていたバスに、ゲレロ州に根を張るマフィアが米国のシカゴに運ぼうとしていたヘロインなどの麻薬が積んであったことから、口封じのためか、拉致され消息が不明。1~2人の遺骨が43人のうちの学生のものとDAN鑑定で判明したとされるが、遺族や世論は「43人全員の生還」を政府に訴え続けてきた。
メキシコでは7月1日、大統領選挙が実施されるが、最有力候補アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ、中道左翼)は、当選したらアヨツィナパ事件解明に尽力すると公約している。
すでにレイムダック化して久しい汚職まみれのエンリケ・ペニャ=ニエト現大統領は同事件を解決できない。なぜならば指揮下にある陸軍、連邦警察が事件に関与、同軍・警察が麻薬マフィアとつるんでいた事実があるからだ。
この事実はすでに独立調査機関によりほぼ解明されているが、政府は認めない。
▼グアテマラ元大統領死去
アルバロ・アルス―元大統領(72)は4月27日、ゴルフ中に心臓発作で死去した。
1996年1月から4年間、大統領を務め、同年12月29日、36年続いた内戦に終止符を打つ和平協定に、左翼ゲリラ統一組織「グアテマラ民族革命連合」(URNG)とともに調印した。
その後、2004年から連続4期、首都グアテマラ市の市長を務めてきた。同名の息子は国会議長。政治的傾向は保守・右翼で、評判の悪いジミー・モレーノ現大統領の同盟者だった。
2018年4月13日金曜日
メキシコ麻薬マフィアが学生拉致事件に関与。米国で有力な事実が明るみに出る
2014年9月26~27日メキシコ・ゲレロ州イグアラ市で起きた大量失踪事件に関し、新しい事実係が4月12日明らかになった。というわけだのシカゴでは現在、メキシコの同州を拠点とする麻薬密輸マフィア「ゲレロス・ウニードス」(GU、「団結したゲレロ人」)の幹部8人の麻薬取引罪による裁判が続いているが、その審理過程で、GUがイグアラ事件に関与したことが明白になった。
事件では、ゲレロ州都チルパンシンゴ郊外にあるアヨツィナパ農村教員養成学校生43人が拉致され行方不明になる一方、イグアラ市内で市民6人が殺害された。
学生たちは、首都メキシコ市で予定されていた10月2日の「トラテロルコ虐殺」46周年記念行事に参加するため、乗り合いバス5台をバス会社から乗っ取るようにして「調達」、首都への中継点であるイグアラ市に到着していた。
ところがバスは地元警察から進路を阻まれ、学生らが拉致された。市民6人は警官らに銃撃されたり、拷問されたりして殺された。
特に拉致された学生が乗っていたバスには、GUがシカゴに密輸するコカイン、ヘロインなどの麻薬と不法資金が隠されていたとされる。事件は発生後しばらくしてから、GUが「積み荷」を確保するため、当局と謀って実行したと見られるようになっていた。
大勢の学生たちに見つかってしまったため、抹殺することにしたわけだ。
米司法当局は、シカゴでのGU麻薬密売を摘発するため、2013年末から14年10月まで上記幹部8人の携帯電話などによる通信を傍受した。このうち14年9月24~10月24日には、イグアラ事件に関係する交信が中心を占めた。
シカゴの幹部からイグアラのGU要員へのある通話では、イグアラの警察や当局に支援を求めるよう命じている。
求められた地元警察と「当局」が学生拉致や市民殺害に関与した公算が大きい。「当局」には、連邦警察と国軍、それにゲレロ州警察が含まれている可能性がある。
また、交信には「拉致されたのは60人」という会話もあった。学生43人のうち1~2人は遺骨が確認されていると公表され、全員が殺害された可能性が濃厚だ。「60人」という人数が正しければ、拉致され殺害された可能性のある人数は17人も増えることになる。
エンリ・ぺニャ=ニエト(EPN)大統領のメキシコ政府は事件解明をせず、偽りの犯人をでっちあげたり、意図的な虚偽は発表をしてきた。大統領の命令下にある連邦警察と国軍が関与しているとなれば、大統領責任が問われることになるからだ。
イグアラ警察と「当局」の関与は、GUが麻薬の対米密輸で稼いだ資金をばらまいて警察や「当局」を買収していたことを物語る。
メキシコ大統領選挙は7月1日実施されるが、今回、新事実が明るみに出たことは政権党PRI(制度的革命党)候補への打撃になる。「トランプの米国」がレームダックのEPN大統領をすでに見放していることを窺わせる。
事件では、ゲレロ州都チルパンシンゴ郊外にあるアヨツィナパ農村教員養成学校生43人が拉致され行方不明になる一方、イグアラ市内で市民6人が殺害された。
学生たちは、首都メキシコ市で予定されていた10月2日の「トラテロルコ虐殺」46周年記念行事に参加するため、乗り合いバス5台をバス会社から乗っ取るようにして「調達」、首都への中継点であるイグアラ市に到着していた。
ところがバスは地元警察から進路を阻まれ、学生らが拉致された。市民6人は警官らに銃撃されたり、拷問されたりして殺された。
特に拉致された学生が乗っていたバスには、GUがシカゴに密輸するコカイン、ヘロインなどの麻薬と不法資金が隠されていたとされる。事件は発生後しばらくしてから、GUが「積み荷」を確保するため、当局と謀って実行したと見られるようになっていた。
大勢の学生たちに見つかってしまったため、抹殺することにしたわけだ。
米司法当局は、シカゴでのGU麻薬密売を摘発するため、2013年末から14年10月まで上記幹部8人の携帯電話などによる通信を傍受した。このうち14年9月24~10月24日には、イグアラ事件に関係する交信が中心を占めた。
シカゴの幹部からイグアラのGU要員へのある通話では、イグアラの警察や当局に支援を求めるよう命じている。
求められた地元警察と「当局」が学生拉致や市民殺害に関与した公算が大きい。「当局」には、連邦警察と国軍、それにゲレロ州警察が含まれている可能性がある。
また、交信には「拉致されたのは60人」という会話もあった。学生43人のうち1~2人は遺骨が確認されていると公表され、全員が殺害された可能性が濃厚だ。「60人」という人数が正しければ、拉致され殺害された可能性のある人数は17人も増えることになる。
エンリ・ぺニャ=ニエト(EPN)大統領のメキシコ政府は事件解明をせず、偽りの犯人をでっちあげたり、意図的な虚偽は発表をしてきた。大統領の命令下にある連邦警察と国軍が関与しているとなれば、大統領責任が問われることになるからだ。
イグアラ警察と「当局」の関与は、GUが麻薬の対米密輸で稼いだ資金をばらまいて警察や「当局」を買収していたことを物語る。
メキシコ大統領選挙は7月1日実施されるが、今回、新事実が明るみに出たことは政権党PRI(制度的革命党)候補への打撃になる。「トランプの米国」がレームダックのEPN大統領をすでに見放していることを窺わせる。
2017年7月4日火曜日
メキシコの画家・彫刻家ホセ=ルイス・クエバス(86)が死去
メヒコの画家・彫刻家ホセ=ルイス・クエバス(86)が7月3日、メヒコ市内の病院で死去した。オロスコ、リベーラ、シケイロスらの「メヒコ社会派壁画運動」に反旗を翻し、それを自身の認同(イデンティダー、アイデンティティー)としていた。メヒコ芸術庁(INBA)は4日、首都中心街の芸術殿堂で告別式を挙行する。
私は1971年4月、クエバスの邸宅で2時間インタビューした。画伯が40歳の時だった。「私はメヒコ市の下町の路地に面した製紙工場の中の貧しい部屋で1934年2月のある日生まれた」と言った。3歳若く言っていたのだ。少年時代に売春街の女たちから鍛えられ、貧困ゆえの人間のいびつさ、醜悪さに心を惹かれ、それを題材にした。
クエバスは、白黒でメヒコを表す線画を評価され、50年代ニューヨークでデニューし、メヒコに凱旋。「サボテン(ノパレス)のカーテンを打ち破れ」と叫び、壁画運動への反対運動を開始した。
67年には、メヒコ市ソナ・ロサ地区で「はかない壁画」を制作、半永久的に続く壁画作品を揶揄した。当時、存命だった大御所ダビー・アルファロ=シケイロスを「敵」に見立て、自身の存在を強調していた。
だが1992年、生地に近い首都下町の「歴史地区」に、自分の名前を被せた美術館を開き、94年には、そこに高さ8m、重さ8トンの銅製の巨像「ラ・ヒガンタ」(女巨人)を建てた。
私は、この巨像を観ながら、壁画運動を蔑視していたクエバスも後世に残る大型の記念碑的作品を結局は作っではないか、と思った。だが再度インタビューする機会はなかった。
クエバスは1974年シケイロスが死ぬと、芸術殿堂の告別j式に駆け付けた。それから43年後、クエバスが芸術殿堂に横たわることになった。
★拙著『メヒコの芸術家たち』(1997年、現代企画室)参照
私は1971年4月、クエバスの邸宅で2時間インタビューした。画伯が40歳の時だった。「私はメヒコ市の下町の路地に面した製紙工場の中の貧しい部屋で1934年2月のある日生まれた」と言った。3歳若く言っていたのだ。少年時代に売春街の女たちから鍛えられ、貧困ゆえの人間のいびつさ、醜悪さに心を惹かれ、それを題材にした。
クエバスは、白黒でメヒコを表す線画を評価され、50年代ニューヨークでデニューし、メヒコに凱旋。「サボテン(ノパレス)のカーテンを打ち破れ」と叫び、壁画運動への反対運動を開始した。
67年には、メヒコ市ソナ・ロサ地区で「はかない壁画」を制作、半永久的に続く壁画作品を揶揄した。当時、存命だった大御所ダビー・アルファロ=シケイロスを「敵」に見立て、自身の存在を強調していた。
だが1992年、生地に近い首都下町の「歴史地区」に、自分の名前を被せた美術館を開き、94年には、そこに高さ8m、重さ8トンの銅製の巨像「ラ・ヒガンタ」(女巨人)を建てた。
私は、この巨像を観ながら、壁画運動を蔑視していたクエバスも後世に残る大型の記念碑的作品を結局は作っではないか、と思った。だが再度インタビューする機会はなかった。
クエバスは1974年シケイロスが死ぬと、芸術殿堂の告別j式に駆け付けた。それから43年後、クエバスが芸術殿堂に横たわることになった。
★拙著『メヒコの芸術家たち』(1997年、現代企画室)参照
2017年3月25日土曜日
メキシコでジャーナリスト殺害が相次ぐ
メヒコでジャーナリスト殺害事件が続発している。首都メヒコ市の日刊紙ラ・ホルナーダ(今日の出来事)のチウアウア州都チウアウア市通信員ミロスラバ・ブリーチ=ベルドゥセア記者は3月23日、市内の自宅を出て自家用車に乗ったところを男に9発撃ち込まれて即死した。
彼女はノルテ・デ・シウダー・フアレス(フアレス市北部)紙の記者でもあり、人権蹂躙や麻薬組織の犯罪を暴く調査報道を続けていた。たとえば現中央政権の党PRI、前政権党PANのチウアウア州内市会議員比例代表名簿に麻薬組織の関係者が記載されていた事実をすっぱ抜いた。麻薬輸送路や麻薬原料栽培・生産地の名簿に特に記載が多いという。
ハビエル・コラル州知事は、ブリーチ記者を「勇気ある批判的記者だった」と讃え、3日間の州喪を宣言。州議会も黙祷を捧げた。だが、州当局はブリーチが以前から脅迫されていたにも拘わらず保護せず、かつ過去の犯罪者を無処罰にしてきた、との非難が高まっている。
ラ・ホルナーダ紙はチウアウア州・市政府に対し、事件の速やかな解明と解決を要求した。また、スペインのジャーナリスト協会連合(FAPE、会員2万人)のエルサ・ゴンサレス会長は24日、「同じ言語(スペイン語)で繋がる同業者同士、事件は決して他人事ではない」と強調。「メヒコはジャーナリストの墓場だ。すなわち自由と民主の墓場だ」と指摘した。
今年に入ってからメヒコでは2月20日、コリマ州テコマン市でコリマ放送のカルロス・ガルシア記者が殺された。3月2日、ゲレロ州アルタミラーノ市でラ・ボス・デ・ラ・ティエラ・カリエンテ(熱地地方の声)紙のセシリオ・ピネーダ編集長が殺害された。続いて19日にはベラクルース州ヤンガ市でエル・ソル・デ・コルドバ(コルドバ市の太陽)紙のリカルド・モンルイ記者が射殺された。
1983年以来メヒコで殺されたジャーナリストは約230人に達した。ラ米でも最悪の部類だ。州・市政府・当局が麻薬組織など組織犯罪集団から買収されて捜査を怠り、犯罪者の無処罰が当たり前のようになっている状況下で、「売られる記者」、「買われるジャーナリスト」も少なくない。
買収を跳ね付け、真実を追求する正義派は命懸けで取材し報道することになる。やがて死の脅迫が届き、これを無視して取材を続ければ、無防備のまま、権力や麻薬組織から雇われた殺し屋の標的となる。脅迫され、国外に身を隠したり、亡命したりするジャーナリストも珍しくない。
彼女はノルテ・デ・シウダー・フアレス(フアレス市北部)紙の記者でもあり、人権蹂躙や麻薬組織の犯罪を暴く調査報道を続けていた。たとえば現中央政権の党PRI、前政権党PANのチウアウア州内市会議員比例代表名簿に麻薬組織の関係者が記載されていた事実をすっぱ抜いた。麻薬輸送路や麻薬原料栽培・生産地の名簿に特に記載が多いという。
ハビエル・コラル州知事は、ブリーチ記者を「勇気ある批判的記者だった」と讃え、3日間の州喪を宣言。州議会も黙祷を捧げた。だが、州当局はブリーチが以前から脅迫されていたにも拘わらず保護せず、かつ過去の犯罪者を無処罰にしてきた、との非難が高まっている。
ラ・ホルナーダ紙はチウアウア州・市政府に対し、事件の速やかな解明と解決を要求した。また、スペインのジャーナリスト協会連合(FAPE、会員2万人)のエルサ・ゴンサレス会長は24日、「同じ言語(スペイン語)で繋がる同業者同士、事件は決して他人事ではない」と強調。「メヒコはジャーナリストの墓場だ。すなわち自由と民主の墓場だ」と指摘した。
今年に入ってからメヒコでは2月20日、コリマ州テコマン市でコリマ放送のカルロス・ガルシア記者が殺された。3月2日、ゲレロ州アルタミラーノ市でラ・ボス・デ・ラ・ティエラ・カリエンテ(熱地地方の声)紙のセシリオ・ピネーダ編集長が殺害された。続いて19日にはベラクルース州ヤンガ市でエル・ソル・デ・コルドバ(コルドバ市の太陽)紙のリカルド・モンルイ記者が射殺された。
1983年以来メヒコで殺されたジャーナリストは約230人に達した。ラ米でも最悪の部類だ。州・市政府・当局が麻薬組織など組織犯罪集団から買収されて捜査を怠り、犯罪者の無処罰が当たり前のようになっている状況下で、「売られる記者」、「買われるジャーナリスト」も少なくない。
買収を跳ね付け、真実を追求する正義派は命懸けで取材し報道することになる。やがて死の脅迫が届き、これを無視して取材を続ければ、無防備のまま、権力や麻薬組織から雇われた殺し屋の標的となる。脅迫され、国外に身を隠したり、亡命したりするジャーナリストも珍しくない。
2017年3月18日土曜日
メキシコ人学生43人失踪事件解明を急ぐよう米州人権委員会(CIDH)が墨政府に厳しく要請。ワシントンでの会合で父母側は、政府側の真相隠しを追及
米州諸国機構(OEA)の機関「米州人権委員会」(CIDH=シダーチェ)はワシントンの本部でメキシコ政府代表と、アヨツィナパ農村教員養成学校生強制失踪者43人の父母代表を招き、同失踪事件解明を急ぐべく話し合いの会合を開いた。
CIDHの代表パウロ・ヴァヌチは、「麻薬組織首領ホアキン・チャポ・グスマンを逮捕できた墨政府がなぜ学生43人の殺害犯を逮捕、特定できないのか」と、厳しく政府側を追及した。グスマンは昨年逮捕され、今年1月下旬、身柄を米国に送られた。
墨政府からは、外務、内務両省と検察庁の人権担当次官が出席した。政府側は、既に信憑性が否定されている「事件の公式見解」を繰り返すだけで、積極的発言はなかった。
事件は2014年9月26~27日、墨ゲレロ州イグアラ市一帯で起きた。同市警、同州警、連邦警察、同市駐屯陸軍、麻薬組織などの関与が明らかになっている。だが政府は、連邦警察と陸軍の関与を認めれば、行政府の長である大統領に責任が及ぶため、その面の捜査をせず沈黙を決め込んでいる。
父母代表は、「虚偽と腐敗まみれで、真実を隠している」と政府を糾弾。麻薬組織と国家の不正を捜査するよう要求した。またCIDHに対し、事件をうやむやに終わらせないよう、引き続き捜査に関与するよう求めた。
CIDHは4月20日訪墨し、CIDH派遣の専門家調査団が得ている捜査結果に基づき真相を暴くよう、政府に働きかけることにしている。ヴァヌチ代表は、政府側に「いつまで時間を引き延ばすのか。真相解明のため時間を限るべきではないか」と迫った。
来年7月のメヒコ大統領選挙の野党有力候補AMLO(アムロ=アンドゥレス=マヌエル・ロペス=オブラドール)が訪米中の15日、43人失踪事件への陸軍関与の可能性を示唆したところ、政権党PRIや前政権党PANなどから激しい反発が起きた。
一方、メヒコ政府は14日CIDHに対し、トランプ米政権の不法移民追放政策を問題にするよう告発した。またメヒコ国会上院外交委員会は15日、米墨国境の壁建設工事に参加する両国建設会社には公共事業を発注しない方針を決めた。
墨内務省は16日、米国からの移民大量帰国への準備が整った、と明らかにした。「ソモス・メヒカーノス」(私たちはメキシコ人)という計画で、当面、帰国者5万人に職を与える用意が出来たという。
米国からメヒコへ過去8年間、墨人不法移民250万人が送還された。去年は30万人だったが、うち10万人は自発的帰国だった。
CIDHの代表パウロ・ヴァヌチは、「麻薬組織首領ホアキン・チャポ・グスマンを逮捕できた墨政府がなぜ学生43人の殺害犯を逮捕、特定できないのか」と、厳しく政府側を追及した。グスマンは昨年逮捕され、今年1月下旬、身柄を米国に送られた。
墨政府からは、外務、内務両省と検察庁の人権担当次官が出席した。政府側は、既に信憑性が否定されている「事件の公式見解」を繰り返すだけで、積極的発言はなかった。
事件は2014年9月26~27日、墨ゲレロ州イグアラ市一帯で起きた。同市警、同州警、連邦警察、同市駐屯陸軍、麻薬組織などの関与が明らかになっている。だが政府は、連邦警察と陸軍の関与を認めれば、行政府の長である大統領に責任が及ぶため、その面の捜査をせず沈黙を決め込んでいる。
父母代表は、「虚偽と腐敗まみれで、真実を隠している」と政府を糾弾。麻薬組織と国家の不正を捜査するよう要求した。またCIDHに対し、事件をうやむやに終わらせないよう、引き続き捜査に関与するよう求めた。
CIDHは4月20日訪墨し、CIDH派遣の専門家調査団が得ている捜査結果に基づき真相を暴くよう、政府に働きかけることにしている。ヴァヌチ代表は、政府側に「いつまで時間を引き延ばすのか。真相解明のため時間を限るべきではないか」と迫った。
来年7月のメヒコ大統領選挙の野党有力候補AMLO(アムロ=アンドゥレス=マヌエル・ロペス=オブラドール)が訪米中の15日、43人失踪事件への陸軍関与の可能性を示唆したところ、政権党PRIや前政権党PANなどから激しい反発が起きた。
一方、メヒコ政府は14日CIDHに対し、トランプ米政権の不法移民追放政策を問題にするよう告発した。またメヒコ国会上院外交委員会は15日、米墨国境の壁建設工事に参加する両国建設会社には公共事業を発注しない方針を決めた。
墨内務省は16日、米国からの移民大量帰国への準備が整った、と明らかにした。「ソモス・メヒカーノス」(私たちはメキシコ人)という計画で、当面、帰国者5万人に職を与える用意が出来たという。
米国からメヒコへ過去8年間、墨人不法移民250万人が送還された。去年は30万人だったが、うち10万人は自発的帰国だった。
2017年2月28日火曜日
メキシコ学生43人失踪事件から29カ月、「かくも長き不在」に家族ら苦悩。来年7月の大統領選に人権派が出馬
「かくも長き不在」という題名の洋画が半世紀前にあった。メヒコ・ゲレロ州イグアラ市で2014年9月26日、アヨツィナパ農村教員養成学校生43人が軍隊、警察に強制連行されたまま行方不明になってから2月26日で29カ月経った。学生たちの家族や友人は、愛する若者たちの長い不在に悲しみ苦悩し怒っている。
学生たちの家族や支援団体の数百人は25~26両日、メヒコ市で教員組合、労農組合などと共に第5回全国人民会議(CNP)を開き、メヒコの不公正極まりない政治経済社会状況を根本から変えるための話し合いを繰り広げた。
また両日、目抜きのレフォルマ大通り、フアレス大通りで抗議行進した。検察庁前では抗議集会を催した。政府は捜査継続を約束しているが、本気で捜査する気配は全くない。
米州諸国機構(OEA)の機関である米州人権委員会(CIDH)はワシントンの本部で3月15~22日、第161回定例会議を開くが、その折、アヨツィナパ学生失踪問題も取り上げことにしている。メヒコの団体「人権擁護増進委員会」、「反犯罪連合」などが、メヒコの人権状況を報告し、問題提起する。
一方、CIDH前事務局長エミリオ・アルバレス=イカサ政治学博士(51)は26日、「アオラ(今)」という政治運動を基盤に来年7月の大統領選挙に独立候補として出馬する意志を表明した。人権問題専門家の出馬だけに関心を集めている。
PRI、PAN、PRDなど既存政党に帰属感を持てない無党派層、反政党派層、恒常的棄権主義層などを開発して支持を広げる方針。まずは出馬申請手続きに必要な有権者8万人の署名を集めねばならない。
既存政党からは、同3党とMORENA(国民刷新運動)の計4人の候補が出馬する。メヒコには決選投票制度がないため、泡沫候補でない候補者が多ければ多いほど当選ラインが下がる。このため独立候補でも、知名度が高ければ当選可能性が出てくる。
この日、国営石油PEMEXは、今年の原油生産が日量194万4000バレルになると予測した。昨年は日量200万バレルの大台保っていた。
学生たちの家族や支援団体の数百人は25~26両日、メヒコ市で教員組合、労農組合などと共に第5回全国人民会議(CNP)を開き、メヒコの不公正極まりない政治経済社会状況を根本から変えるための話し合いを繰り広げた。
また両日、目抜きのレフォルマ大通り、フアレス大通りで抗議行進した。検察庁前では抗議集会を催した。政府は捜査継続を約束しているが、本気で捜査する気配は全くない。
米州諸国機構(OEA)の機関である米州人権委員会(CIDH)はワシントンの本部で3月15~22日、第161回定例会議を開くが、その折、アヨツィナパ学生失踪問題も取り上げことにしている。メヒコの団体「人権擁護増進委員会」、「反犯罪連合」などが、メヒコの人権状況を報告し、問題提起する。
一方、CIDH前事務局長エミリオ・アルバレス=イカサ政治学博士(51)は26日、「アオラ(今)」という政治運動を基盤に来年7月の大統領選挙に独立候補として出馬する意志を表明した。人権問題専門家の出馬だけに関心を集めている。
PRI、PAN、PRDなど既存政党に帰属感を持てない無党派層、反政党派層、恒常的棄権主義層などを開発して支持を広げる方針。まずは出馬申請手続きに必要な有権者8万人の署名を集めねばならない。
既存政党からは、同3党とMORENA(国民刷新運動)の計4人の候補が出馬する。メヒコには決選投票制度がないため、泡沫候補でない候補者が多ければ多いほど当選ラインが下がる。このため独立候補でも、知名度が高ければ当選可能性が出てくる。
この日、国営石油PEMEXは、今年の原油生産が日量194万4000バレルになると予測した。昨年は日量200万バレルの大台保っていた。
2017年2月24日金曜日
米メキシコ閣僚会議が中米開発協力で合意
メヒコ外務省で2月23日、墨米閣僚会議が実施され、両国外交は、これまでの「対立」から、ひとまず「対話」に向かうことになった。だがトランプ大統領の出方次第では、関係が再び険悪化する。メヒコ政府は今や、貿易、移民は安全保障問題そのものだと理解している。
メヒコ側はルイス・ビデガライ外相、ミゲル・オソリオ内相、ホセ・メアデ財務相、米側はレックス・ティラーソン国務長官、ジョン・ケリー国土安保長官が出席、会議は2時間に及んだ。
ビデガライ外相は会議で、トランプ政権が「メヒコ経由で不法入国した中米人らもメヒコに送還する」と表明しているのに対し、「メヒコ人以外を受け入れるいわれはない」と否定。会議後の共同記者会見で、「墨米両国間には違いがある。我々はメヒコの利益のために対話を通じて合意を探る」と述べた。
外相はまた、「墨米両国は、中米北部三角形(グアテマラ、エル・サルバドール、オンドゥーラス)、コロンビア、カナダなどを加えた会合で移民問題を考え、(経済難民の)出国因を減らす方策を練る会議開催で合意した。我々は共同責任で中米開発に当たる」と明らかにした。問題の力点がメヒコから中米に移った感がある。
ケリー安保長官は、「不法移民の大量送還はない。人権を重視する。軍の出動はない」と強調した。だがワシントンではトランプ大統領が、「犯罪者追放のための軍事作戦だ」と発言、物議を醸している。
閣僚会議では、北米自由貿易条約(TLCAN=テエレカン、英語でNAFTA=協定)見直しや、国境の壁建設問題の話し合いはなかった、という。
ケリー長官は、米南方軍の前司令官としてラ米情勢を鳥瞰した経験を踏まえ、中米の犯罪状況や墨ゲレロ州のゲリラの存在などに安保上の観点から関心を抱いており、その分野の発言もあったとされる。
両長官は、大統領公邸ロス・ピノスで1時間弱、エンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)大統領を表敬した。大統領は、「常に相互の主権を尊重しつつ、対話で解決を探るべきだ」と述べた。
メヒコの新聞論調には、「両長官の来訪で、トランプ政権の対墨態度は、喧嘩腰から思慮深差に変わったが、EPNの弱腰は不変」という指摘があった。
▼ラ米短信 ◎日本がクーバのインフラ整備に協力
日玖は2月23日ハバナで、建設、輸送、観光面のインフラ整備で協力する議定書に調印した。市内にあるナシオナルホテルでは同日、日本企業30社が参加して「日玖インフラ会議」が開かれた。
メヒコ側はルイス・ビデガライ外相、ミゲル・オソリオ内相、ホセ・メアデ財務相、米側はレックス・ティラーソン国務長官、ジョン・ケリー国土安保長官が出席、会議は2時間に及んだ。
ビデガライ外相は会議で、トランプ政権が「メヒコ経由で不法入国した中米人らもメヒコに送還する」と表明しているのに対し、「メヒコ人以外を受け入れるいわれはない」と否定。会議後の共同記者会見で、「墨米両国間には違いがある。我々はメヒコの利益のために対話を通じて合意を探る」と述べた。
外相はまた、「墨米両国は、中米北部三角形(グアテマラ、エル・サルバドール、オンドゥーラス)、コロンビア、カナダなどを加えた会合で移民問題を考え、(経済難民の)出国因を減らす方策を練る会議開催で合意した。我々は共同責任で中米開発に当たる」と明らかにした。問題の力点がメヒコから中米に移った感がある。
ケリー安保長官は、「不法移民の大量送還はない。人権を重視する。軍の出動はない」と強調した。だがワシントンではトランプ大統領が、「犯罪者追放のための軍事作戦だ」と発言、物議を醸している。
閣僚会議では、北米自由貿易条約(TLCAN=テエレカン、英語でNAFTA=協定)見直しや、国境の壁建設問題の話し合いはなかった、という。
ケリー長官は、米南方軍の前司令官としてラ米情勢を鳥瞰した経験を踏まえ、中米の犯罪状況や墨ゲレロ州のゲリラの存在などに安保上の観点から関心を抱いており、その分野の発言もあったとされる。
両長官は、大統領公邸ロス・ピノスで1時間弱、エンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)大統領を表敬した。大統領は、「常に相互の主権を尊重しつつ、対話で解決を探るべきだ」と述べた。
メヒコの新聞論調には、「両長官の来訪で、トランプ政権の対墨態度は、喧嘩腰から思慮深差に変わったが、EPNの弱腰は不変」という指摘があった。
▼ラ米短信 ◎日本がクーバのインフラ整備に協力
日玖は2月23日ハバナで、建設、輸送、観光面のインフラ整備で協力する議定書に調印した。市内にあるナシオナルホテルでは同日、日本企業30社が参加して「日玖インフラ会議」が開かれた。
2017年2月23日木曜日
メキシコとカナダが米含む「3国間NAFTA見直し交渉」促進で一致。米は壁の優先的建設地を公表
メヒコとカナダは2月21日トロントで経済相・外相会議を開き、北米自由貿易条約(TLCAN、英語では協定=NAFTA)の見直し交渉は加盟3国間でするのが望ましいという点で一致した。
この日、メヒコ国会は次期駐米大使にヘロニモ・グティエレスを決めた。政府は、米側が通商、移民規制、国境壁建設などで押しまくってきた場合、国境地帯を含む両国間の麻薬取引取締り、不法越境者規制などで協力しない方針を選択肢に加えている。
米国土安保省のジョン・ケリー長官は21日、壁建設を米テキサス州エルパソ・墨チウアウア州フアレス市、アリゾナ州トゥーソン・ソノラ州ノガレス、加州エルセントロ・下加州メヒカリの3カ所の間の国境線で優先的に建設する方針を明らかにした。
国境最西端の墨ティフアーナ市では21日、米側から送還されたばかりの30代のメヒコ人男性が橋から飛び降りて自殺した。
一方、シカゴの墨系ベニート・フアレス高校で21日、メヒコの政治家AMLO(アムロ)が講演、「米国第一ではない。墨米間に正義と友情の大地を築くのが先だ」と強調。「トランプがメヒコとメヒコ人に対して発したデマゴギーと新ファシズム的措置は、かつてヒトラーがユダヤ人に対してやったのと似ている」と厳しく批判した。AMLOは次期大統領の有力候補。
▼ラ米短信 ◎クーバ議長が米議員らと会談
ラウール・カストロ玖国家評議会議長は2月21日ハバナで、パトゥリック・リーヒー民主党上院議員を団長とする米議員団6人と会談した。リーヒーはバラク・オバーマ前大統領と組んで米玖国交正常化を推進した人物。「双方の関心事を話し合った」という。
クーバ港湾当局は20日ハバナで、ミシシッピ州の2港と協力議定書に調印した。同様に調印した米国の港は計7港となった。
一方、玖政府は21日、ハバナで22日催される反体制派の故オスワルド・パジャーを記念する賞の贈呈式に出席を予定していたフェリーペ・カルデロン前墨大統領、マリアーナ・エイルウィン元智教育相の入国を認めなかった。マリアーナは故パトゥリシオ・エイルウィン元大統領の娘。
▼ラ米短信 ◎ベネスエラ政府が政権党再編成へ
ニコラース・マドゥーロ大統領は2月20日、この日から4月19日までの2カ月間にベネスエラ統一社会党(PSUV=ペスーブ)を「戦略的、政治的、組織的に再編成する」と発表した。今年半ばには州知事・州会議員選挙があり、これに備えた措置でもある。
大統領は同日、スペインのJL・Rサパテロ前首相と会談した。サパテロは、南米諸国連合(ウナスール)から依頼された特使として、ベネスエラ政府と野党連合MUDの対話を仲介している。マドゥーロは21日には、ローマ法王特使と会談した。
この日、メヒコ国会は次期駐米大使にヘロニモ・グティエレスを決めた。政府は、米側が通商、移民規制、国境壁建設などで押しまくってきた場合、国境地帯を含む両国間の麻薬取引取締り、不法越境者規制などで協力しない方針を選択肢に加えている。
米国土安保省のジョン・ケリー長官は21日、壁建設を米テキサス州エルパソ・墨チウアウア州フアレス市、アリゾナ州トゥーソン・ソノラ州ノガレス、加州エルセントロ・下加州メヒカリの3カ所の間の国境線で優先的に建設する方針を明らかにした。
国境最西端の墨ティフアーナ市では21日、米側から送還されたばかりの30代のメヒコ人男性が橋から飛び降りて自殺した。
一方、シカゴの墨系ベニート・フアレス高校で21日、メヒコの政治家AMLO(アムロ)が講演、「米国第一ではない。墨米間に正義と友情の大地を築くのが先だ」と強調。「トランプがメヒコとメヒコ人に対して発したデマゴギーと新ファシズム的措置は、かつてヒトラーがユダヤ人に対してやったのと似ている」と厳しく批判した。AMLOは次期大統領の有力候補。
▼ラ米短信 ◎クーバ議長が米議員らと会談
ラウール・カストロ玖国家評議会議長は2月21日ハバナで、パトゥリック・リーヒー民主党上院議員を団長とする米議員団6人と会談した。リーヒーはバラク・オバーマ前大統領と組んで米玖国交正常化を推進した人物。「双方の関心事を話し合った」という。
クーバ港湾当局は20日ハバナで、ミシシッピ州の2港と協力議定書に調印した。同様に調印した米国の港は計7港となった。
一方、玖政府は21日、ハバナで22日催される反体制派の故オスワルド・パジャーを記念する賞の贈呈式に出席を予定していたフェリーペ・カルデロン前墨大統領、マリアーナ・エイルウィン元智教育相の入国を認めなかった。マリアーナは故パトゥリシオ・エイルウィン元大統領の娘。
▼ラ米短信 ◎ベネスエラ政府が政権党再編成へ
ニコラース・マドゥーロ大統領は2月20日、この日から4月19日までの2カ月間にベネスエラ統一社会党(PSUV=ペスーブ)を「戦略的、政治的、組織的に再編成する」と発表した。今年半ばには州知事・州会議員選挙があり、これに備えた措置でもある。
大統領は同日、スペインのJL・Rサパテロ前首相と会談した。サパテロは、南米諸国連合(ウナスール)から依頼された特使として、ベネスエラ政府と野党連合MUDの対話を仲介している。マドゥーロは21日には、ローマ法王特使と会談した。
2017年2月19日日曜日
米メキシコ国境で「トランプの壁」に「人間の壁」で対抗
墨米国境3200kmの中間に位置する墨チウアウア州国境のフアレス市と対岸の米テキサス州エルパソ市の間を流れる国境河川ブラボ川の墨側堰堤で2月17日、「人間の壁-両国の懸け橋」と題した平和行事が展開された。
墨全政党が呼び掛けたもので、民主革命党(PRD)元党首クアウテモキウ・カルデナス元メヒコ市長、チウアウア州のハビエル・コラル知事、フアレスのアルマード・カバル市長、エルパソのオスカル・リーサー市長をはじめ2000人が参加した。
国境の壁建設を決めたドナルド・トランプ米大統領への異議を唱える抗議行動で、メヒコ国歌を歌い、対岸の米側に向かって友情と連帯のメンサヘ(メッセージ)を送った。
これに先立ち市内では、「国益防衛フォーラム」が開かれた。カルデナスは「両国の友情はメヒコ人の生活向上につながる。双方は長い歴史を経つつ共存してきた」と述べた。コラル知事は、「異なる声を一つにして友情を訴えよう。異なる手を一つにして、二国社会という在り方を続けたい我々の望みを確認し合おう」と語った。リーサー市長も「両都市は一つの同じ都市だ」と強調した。
メヒコでは来年7月、大統領選挙が実施されるが、PRDから分派したMORENA(国民刷新運動)党首、アンデレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ)が現時点での支持率28%で有力。AMLOは2006年の選挙で事実上勝ちながら、開票操作で勝利を奪われた苦い経験の持ち主。
12年の前回は、金権候補エンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)現大統領に敗れた。AMLOに次ぐのは、EPNの政権党PRI(制度的革命党)のオソリオ内相で17%。3番手は、06年に当選したとされたPAN(国民行動党)のフェリーペ・カルデロン大統領の妻マルガリータ・サバーラで5%。AMLOにとっては、宿敵の妻だ。
AMLOは、穏健左翼で改革派だが、メヒコをいじめているトランプに対抗できる「民族主義的アンチテーゼ」として、人気が急浮上している。これに伴い、AMLOは財界と会合するなど、革新色を薄めようと努めている。
一方、ユカタン州都メリダで18日開かれた第16回墨玖友好国会議員同盟会合は、トランプの排外主義を「メヒコ人の尊厳を侵す」と捉え、移民排除や壁建設政策と併せて糾弾。話し合いによる問題解決を呼び掛けた。
双方はまた、ラ米団結強化でも一致した。
▼ラ米短信 ◎オデブレヒト事件捜査で11カ国が協力
ブラジル最大手の建設会社オデブレヒトの絡む巨額贈収賄事件に関連する11カ国の検察は2月16日、ブラジリアで検事総長級会合を開き、捜査協力協定を結んだ。伯亜智秘コロンビア赤ベネスエラ墨巴RD葡の各国。
墨全政党が呼び掛けたもので、民主革命党(PRD)元党首クアウテモキウ・カルデナス元メヒコ市長、チウアウア州のハビエル・コラル知事、フアレスのアルマード・カバル市長、エルパソのオスカル・リーサー市長をはじめ2000人が参加した。
国境の壁建設を決めたドナルド・トランプ米大統領への異議を唱える抗議行動で、メヒコ国歌を歌い、対岸の米側に向かって友情と連帯のメンサヘ(メッセージ)を送った。
これに先立ち市内では、「国益防衛フォーラム」が開かれた。カルデナスは「両国の友情はメヒコ人の生活向上につながる。双方は長い歴史を経つつ共存してきた」と述べた。コラル知事は、「異なる声を一つにして友情を訴えよう。異なる手を一つにして、二国社会という在り方を続けたい我々の望みを確認し合おう」と語った。リーサー市長も「両都市は一つの同じ都市だ」と強調した。
メヒコでは来年7月、大統領選挙が実施されるが、PRDから分派したMORENA(国民刷新運動)党首、アンデレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ)が現時点での支持率28%で有力。AMLOは2006年の選挙で事実上勝ちながら、開票操作で勝利を奪われた苦い経験の持ち主。
12年の前回は、金権候補エンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)現大統領に敗れた。AMLOに次ぐのは、EPNの政権党PRI(制度的革命党)のオソリオ内相で17%。3番手は、06年に当選したとされたPAN(国民行動党)のフェリーペ・カルデロン大統領の妻マルガリータ・サバーラで5%。AMLOにとっては、宿敵の妻だ。
AMLOは、穏健左翼で改革派だが、メヒコをいじめているトランプに対抗できる「民族主義的アンチテーゼ」として、人気が急浮上している。これに伴い、AMLOは財界と会合するなど、革新色を薄めようと努めている。
一方、ユカタン州都メリダで18日開かれた第16回墨玖友好国会議員同盟会合は、トランプの排外主義を「メヒコ人の尊厳を侵す」と捉え、移民排除や壁建設政策と併せて糾弾。話し合いによる問題解決を呼び掛けた。
双方はまた、ラ米団結強化でも一致した。
▼ラ米短信 ◎オデブレヒト事件捜査で11カ国が協力
ブラジル最大手の建設会社オデブレヒトの絡む巨額贈収賄事件に関連する11カ国の検察は2月16日、ブラジリアで検事総長級会合を開き、捜査協力協定を結んだ。伯亜智秘コロンビア赤ベネスエラ墨巴RD葡の各国。
2017年2月15日水曜日
ラテンアメリカ・カリブ核兵器禁止条約(トラテロルコ条約)調印から半世紀。記念式典でメキシコ大統領はトランプ米政権を厳しく批判、ラ米・カリブ諸国の連帯に感謝する
ラ米核兵器禁止条約(通称トラテロルコ条約)が1967年2月14日、メヒコ外務省(当時の通称トラテロルコ)で調印されてから14日で50周年となった。今はフアレス大通りにある外務省で記念の外相会議が催された。
条約は1962年10月のクーバ核ミサイル危機を教訓として生まれ、69年4月25日発効した。推進者のメヒコ外相アルフォンソ・ガルシア=ロブレスは82年、ノーベル平和賞を受章した。
条約は後に「ラ米・カリブ核兵器禁止条約」と改名された。事務局「LAC(ラ米・カリブ)核兵器禁止機構」(OPANAL=オパナール)はメヒコ市にある。この日、第25回OPANAL総会(外相会議)が開かれた。今日、LAC33カ国全部が加盟、批准している。
総会で演説したエンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)墨大統領は、「世界は依然核兵器の危険に晒されているが、我々はLACを世界平和の約束の地として再確認する」と述べた。
だが演説の力点は、トランプ米政権の対墨政策への批判に置かれた。大統領は、「強国を含むいかなる国も、国際社会の諸原則に反する独自の原則や意思を押し付けてはならない。国際関係は権利、敬意、対話に基づかねばならず、脅迫や実力に依ってはならない」と強調した。
EPNはまた、「今新たに世界は我々LACの団結ぶりを観ている。LACが寄せてくれた連帯に、全メヒコ人民を代表して感謝する。メヒコは将来に亘ってLACの国だと、誇りを持って言う。困難な時の友こそ善き友と言われるが、メヒコは支持を受けて感動した。価値ある大きな支援だった」と語った。
会場からは強い拍手が続いた。トラテロルコ条約は、その後の南太平洋、東南アジア、アフリカ大陸、中央アジア・モンゴルの各地域の核兵器禁止条約締結に繋がった。
メヒコと、中米北部三角形3国(グアテマラ、エル・サルバドール、オンドゥーラス)の外相は今会議に先立つ13日メヒコ市で会合し、同3国からメヒコを経て米国に向かう移民希望者の扱いなどを協議した。
▼ラ米短信 ◎ドミニカ共和国(RD)でジャーナリスト2人殺害さる
RDのサンペドロ・デ・マコリス市のラジオ放送局で2月14日、ルイス・マルティネス局長と、ニュースを読み上げていたルイス・メディーナ記者兼アナウンサーが侵入者に射殺された。女性秘書ダヤナ・ガルシアは重傷を負った。
ドミニカ・ジャーナリスト協会(CDP)と全国報道労働者組合(SNTP)は、メディーナ政権に事件の早期解決を要請した。RDでは一昨年4月にも記者が殺害されている。
▼ラ米短信 ◎大量のベネズエラ紙幣がパラグアイで発見さる
ベネスエラ通貨ボリーバル・フエルテ(bf)の50bf、100bf札を詰めた約500の袋(重さ30トン)が2月13日、ブラジル国境に近い、パラグアイ東部のカニンデジュー県サルト・デル・グアイラ市の武器商人の家で発見され、警察に押収された。
警察は資金洗浄および犯罪関与の疑いで武器商人を逮捕、取り調べ中。紙幣は14日、首都アスンシオンの中央銀行に運ばれ、金額計算などにふされた。
警察は、米国のDEA(麻薬捜査局)とベネスエラ当局と連携、事件解明に努める。ベネスエラ政府は、100bf札を2月20日に使用不可とすることを、本事件発覚前から決めている。
Bf札は、ベネスエラ西部コロンビアの国境地帯、南部ブラジルの国境地帯で出回っている。だがなぜ遠いパラグアイに運ばれたのか、そこに関心が集まっている。
条約は1962年10月のクーバ核ミサイル危機を教訓として生まれ、69年4月25日発効した。推進者のメヒコ外相アルフォンソ・ガルシア=ロブレスは82年、ノーベル平和賞を受章した。
条約は後に「ラ米・カリブ核兵器禁止条約」と改名された。事務局「LAC(ラ米・カリブ)核兵器禁止機構」(OPANAL=オパナール)はメヒコ市にある。この日、第25回OPANAL総会(外相会議)が開かれた。今日、LAC33カ国全部が加盟、批准している。
総会で演説したエンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)墨大統領は、「世界は依然核兵器の危険に晒されているが、我々はLACを世界平和の約束の地として再確認する」と述べた。
だが演説の力点は、トランプ米政権の対墨政策への批判に置かれた。大統領は、「強国を含むいかなる国も、国際社会の諸原則に反する独自の原則や意思を押し付けてはならない。国際関係は権利、敬意、対話に基づかねばならず、脅迫や実力に依ってはならない」と強調した。
EPNはまた、「今新たに世界は我々LACの団結ぶりを観ている。LACが寄せてくれた連帯に、全メヒコ人民を代表して感謝する。メヒコは将来に亘ってLACの国だと、誇りを持って言う。困難な時の友こそ善き友と言われるが、メヒコは支持を受けて感動した。価値ある大きな支援だった」と語った。
会場からは強い拍手が続いた。トラテロルコ条約は、その後の南太平洋、東南アジア、アフリカ大陸、中央アジア・モンゴルの各地域の核兵器禁止条約締結に繋がった。
メヒコと、中米北部三角形3国(グアテマラ、エル・サルバドール、オンドゥーラス)の外相は今会議に先立つ13日メヒコ市で会合し、同3国からメヒコを経て米国に向かう移民希望者の扱いなどを協議した。
▼ラ米短信 ◎ドミニカ共和国(RD)でジャーナリスト2人殺害さる
RDのサンペドロ・デ・マコリス市のラジオ放送局で2月14日、ルイス・マルティネス局長と、ニュースを読み上げていたルイス・メディーナ記者兼アナウンサーが侵入者に射殺された。女性秘書ダヤナ・ガルシアは重傷を負った。
ドミニカ・ジャーナリスト協会(CDP)と全国報道労働者組合(SNTP)は、メディーナ政権に事件の早期解決を要請した。RDでは一昨年4月にも記者が殺害されている。
▼ラ米短信 ◎大量のベネズエラ紙幣がパラグアイで発見さる
ベネスエラ通貨ボリーバル・フエルテ(bf)の50bf、100bf札を詰めた約500の袋(重さ30トン)が2月13日、ブラジル国境に近い、パラグアイ東部のカニンデジュー県サルト・デル・グアイラ市の武器商人の家で発見され、警察に押収された。
警察は資金洗浄および犯罪関与の疑いで武器商人を逮捕、取り調べ中。紙幣は14日、首都アスンシオンの中央銀行に運ばれ、金額計算などにふされた。
警察は、米国のDEA(麻薬捜査局)とベネスエラ当局と連携、事件解明に努める。ベネスエラ政府は、100bf札を2月20日に使用不可とすることを、本事件発覚前から決めている。
Bf札は、ベネスエラ西部コロンビアの国境地帯、南部ブラジルの国境地帯で出回っている。だがなぜ遠いパラグアイに運ばれたのか、そこに関心が集まっている。
2017年2月13日月曜日
メキシコ政府が批判交わす狙いも込め「反トランプ」行動実施
メヒコ各地の主要都市で2月12日、政府が組織した「政府支持、反トランプ米政権」のデモ行進が展開された。約60団体が参加したが、首都メヒコ市では政権党PRI、前政権党PAN、財界、宗教界、政府系労連などが1万8000人を動員。一方で非政府計1500人も別途、行進した。
グアダラハラ、モンテレイ、モレリア、アグアスカリエンテス、ビヤエルモサなど諸都市でもデモ行進が実施された。政府系は、メヒコ人への侮辱、国境の壁、移民排斥、関税障壁などでドナルド・トランプ大統領に抗議した。これに対し非政府系は、トランプ批判と併せて、エンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)墨大統領退陣を要求した。
今回の抗議行動を政府が組織したのには、ガソリン値上げで高まった反政府・反大統領世論や生活苦への抗議の声をかき消し「反米」に転じさせようとの狙いがあった。トランプ登場で「メヒコ民族主義」が久々に高まっているが、それもEPN大統領が極度に不人気とあって、高まりは燃え上がるまでに至らない。
大統領の威信が一層地に落ちたのは、トランプに叩かれっ放しだったことに加え、新事実が暴露されたことによる。トランプが国境の壁建設政策を公式に発表した1月25日、その発表に先立ち、訪米していたルイス・ビデガライ墨外相がホワイトハウスで、トランプの女婿で大統領顧問のジャレット・クシュナーと、壁建設に関するトランプの発表文の内容を調整していたことが明るみに出されたのだ。
暴露報道によると、ビデガライは旧知のクシュナーから発表文草稿を見せられ、米墨関係悪化を和らげるためとして、文言の変更を求め、クシュナーがそれを認めた。2人はそろって大統領執務室に行き、トランプに修正した原稿を見せた。トランプは怒ったが、修正を受け入れ、それを発表したという。
メヒコ紙の論説は、ビデガライを「大馬鹿者」と扱き下ろしている。「被害国」の外相が「加害国」大統領の「加害政令」の内容を和らげるなどということは前代未聞、というわけだ。
レックス・ティラーソン国務長官は2月8日ワシントンでビデガライと会談、両国問題は「壁」から北米自由貿易協定(TLCAN/NAFTA)見直しに移行しつつある感がある。この米墨外相会談の場にもクシュナーが立ち合った。
グアダラハラ、モンテレイ、モレリア、アグアスカリエンテス、ビヤエルモサなど諸都市でもデモ行進が実施された。政府系は、メヒコ人への侮辱、国境の壁、移民排斥、関税障壁などでドナルド・トランプ大統領に抗議した。これに対し非政府系は、トランプ批判と併せて、エンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)墨大統領退陣を要求した。
今回の抗議行動を政府が組織したのには、ガソリン値上げで高まった反政府・反大統領世論や生活苦への抗議の声をかき消し「反米」に転じさせようとの狙いがあった。トランプ登場で「メヒコ民族主義」が久々に高まっているが、それもEPN大統領が極度に不人気とあって、高まりは燃え上がるまでに至らない。
大統領の威信が一層地に落ちたのは、トランプに叩かれっ放しだったことに加え、新事実が暴露されたことによる。トランプが国境の壁建設政策を公式に発表した1月25日、その発表に先立ち、訪米していたルイス・ビデガライ墨外相がホワイトハウスで、トランプの女婿で大統領顧問のジャレット・クシュナーと、壁建設に関するトランプの発表文の内容を調整していたことが明るみに出されたのだ。
暴露報道によると、ビデガライは旧知のクシュナーから発表文草稿を見せられ、米墨関係悪化を和らげるためとして、文言の変更を求め、クシュナーがそれを認めた。2人はそろって大統領執務室に行き、トランプに修正した原稿を見せた。トランプは怒ったが、修正を受け入れ、それを発表したという。
メヒコ紙の論説は、ビデガライを「大馬鹿者」と扱き下ろしている。「被害国」の外相が「加害国」大統領の「加害政令」の内容を和らげるなどということは前代未聞、というわけだ。
レックス・ティラーソン国務長官は2月8日ワシントンでビデガライと会談、両国問題は「壁」から北米自由貿易協定(TLCAN/NAFTA)見直しに移行しつつある感がある。この米墨外相会談の場にもクシュナーが立ち合った。
2017年1月28日土曜日
トランプとメキシコ大統領が電話会談し、対話継続で合意。ペルーとコロンビアの首脳がメキシコ支持を表明、自由貿易促進を呼び掛ける
Dトランプ米大統領の国境の壁建設決定などをめぐり、米墨関係は急速に悪化していたが、同大統領とメヒコのエンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)大統領は1月27日、1時間に亘って電話会談し、話し合いを続けてゆくことで合意した。
トランプはホワイトハウスで来訪中のテレサ・メイ英首相との合同記者会見の場で、「電話会談は友好的だった。私はメヒコに対しきつく当たり過ぎていた。今後は公正かつ新しい関係において活動してゆく」と述べた。
一方、EPNも「建設的だった」と評価。メヒコ政府は別途、「この会談で壁建設に関し今後、公に発言しないことで合意した」と明らかにしている。また米製銃器類の対墨密輸や国境地帯での麻薬取引の取締についても話し合ったと明かした。
トランプは電話会談に先立ち、「メヒコはずいぶん長い間、米国を利用してきた。米側の巨額の貿易赤字と国境警備の弱さは変えねばならない」と微博(twt)発言していた。
電話会談の内容はほとんど明らかにされていないが、当面の焦点は26日にいったん崩れた両首脳の直接会談をいつ実現させるかだ。トランプが壁建設費用をメヒコに負担させようとするかぎり、これを断固拒否するメヒコとの和解はない。来年12月1日までの任期を残すEPNにとり、壁建設費支払いに応じれば、即、政治生命が途絶えるだろう。
かといって、今のトランプに翻意させるという勝算もない。メヒコの対米関係は歴史的な危機に陥っている。
メヒコ人富豪カルロス・スリムは27日、「トランプは死刑執行人でなく取引者だ」と前置きし、EPNに向けて「降伏せず交渉すべきだ」と提言した。スリムは個人的にトランプと交流してきた。
スリムはまた、「最良の壁は機会と雇用を醸成することだ。メヒコは輸出先の多角化が必要だ」とも指摘した。スリムは23日には、
在米同胞のためのスペイン語テレビ放送局を米国内に設ける、と発表している。
一方、PPクチンスキ秘大統領とJMサントス・コロンビア大統領は27日、秘国アレキッパ市で27日会談。「メヒコを支援する。自由貿易推進のため対話と融和の情勢が基本的に重要だ」と強調した。
両大統領はまた、両国および智墨のラ米太平洋岸4カ国で構成する「太平洋同盟」(AP)が墨米問題を話し合うため、発声映像画画面を通じて首脳会議を早急に開くことを智墨両首脳に提案した。
▼ラ米短信 ◎メヒコ人学生43人強制失踪事件発生から28カ月
メヒコ・ゲレロ州内のアヨツィナパ農村教員養成学校生43人が同州イグアラ市で陸軍兵士、警官らによって強制失踪させられてから1月26日で2年4カ月が経過した。EPN政権は、事件を解決しないまま放置している。
遺族、学生、支援団体は26日、首都メヒコ市にある検察庁前で6時間、抗議集会を開いた。その間、遺族代表と弁護士が検察側と交渉、2月9日にラウール・セルバンテス検察庁長官と話し合うことで合意した。遺族側は2月にMAオソリオ=チョン内相との会合も望んでいる。
弁護士ビドゥルフォ・ロサーレスは、「検察は陸軍の関与を長らく伏せていたが、早期に明るみに出していたとすれば、捜査は異なる経過を辿っていたはずだ」と指摘した。一行は、レフォルマ大通りを独立記念碑まで行進した。
EPNの支持率は10%台に落ち込んでいるが、その要因の一つがこのアヨツィナパ事件未解決だ。遺族らは、ニュースが対米関係に集中し、事件報道が少ないことに危機感を抱いている。
トランプはホワイトハウスで来訪中のテレサ・メイ英首相との合同記者会見の場で、「電話会談は友好的だった。私はメヒコに対しきつく当たり過ぎていた。今後は公正かつ新しい関係において活動してゆく」と述べた。
一方、EPNも「建設的だった」と評価。メヒコ政府は別途、「この会談で壁建設に関し今後、公に発言しないことで合意した」と明らかにしている。また米製銃器類の対墨密輸や国境地帯での麻薬取引の取締についても話し合ったと明かした。
トランプは電話会談に先立ち、「メヒコはずいぶん長い間、米国を利用してきた。米側の巨額の貿易赤字と国境警備の弱さは変えねばならない」と微博(twt)発言していた。
電話会談の内容はほとんど明らかにされていないが、当面の焦点は26日にいったん崩れた両首脳の直接会談をいつ実現させるかだ。トランプが壁建設費用をメヒコに負担させようとするかぎり、これを断固拒否するメヒコとの和解はない。来年12月1日までの任期を残すEPNにとり、壁建設費支払いに応じれば、即、政治生命が途絶えるだろう。
かといって、今のトランプに翻意させるという勝算もない。メヒコの対米関係は歴史的な危機に陥っている。
メヒコ人富豪カルロス・スリムは27日、「トランプは死刑執行人でなく取引者だ」と前置きし、EPNに向けて「降伏せず交渉すべきだ」と提言した。スリムは個人的にトランプと交流してきた。
スリムはまた、「最良の壁は機会と雇用を醸成することだ。メヒコは輸出先の多角化が必要だ」とも指摘した。スリムは23日には、
在米同胞のためのスペイン語テレビ放送局を米国内に設ける、と発表している。
一方、PPクチンスキ秘大統領とJMサントス・コロンビア大統領は27日、秘国アレキッパ市で27日会談。「メヒコを支援する。自由貿易推進のため対話と融和の情勢が基本的に重要だ」と強調した。
両大統領はまた、両国および智墨のラ米太平洋岸4カ国で構成する「太平洋同盟」(AP)が墨米問題を話し合うため、発声映像画画面を通じて首脳会議を早急に開くことを智墨両首脳に提案した。
▼ラ米短信 ◎メヒコ人学生43人強制失踪事件発生から28カ月
メヒコ・ゲレロ州内のアヨツィナパ農村教員養成学校生43人が同州イグアラ市で陸軍兵士、警官らによって強制失踪させられてから1月26日で2年4カ月が経過した。EPN政権は、事件を解決しないまま放置している。
遺族、学生、支援団体は26日、首都メヒコ市にある検察庁前で6時間、抗議集会を開いた。その間、遺族代表と弁護士が検察側と交渉、2月9日にラウール・セルバンテス検察庁長官と話し合うことで合意した。遺族側は2月にMAオソリオ=チョン内相との会合も望んでいる。
弁護士ビドゥルフォ・ロサーレスは、「検察は陸軍の関与を長らく伏せていたが、早期に明るみに出していたとすれば、捜査は異なる経過を辿っていたはずだ」と指摘した。一行は、レフォルマ大通りを独立記念碑まで行進した。
EPNの支持率は10%台に落ち込んでいるが、その要因の一つがこのアヨツィナパ事件未解決だ。遺族らは、ニュースが対米関係に集中し、事件報道が少ないことに危機感を抱いている。
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