2015年11月29日日曜日

~~2015波路はるかに 第4回~~

~~2015波路はるかに 第4回~~

 PB船オーシャンドゥリーム号うは11月27日、赤道を越え、再び北半球に戻った。29日未明、船は北東に進路を変更して、マーシャル諸島に接近し、病人一人を下ろした。このような事態は常にある。慣れたもので、整然と事が運ばれる。
 注目の22日実施の亜国大統領選挙決戦は、野党のマウリシオ・マクリが接戦で、政権党のダニエル・シオーリを破った。12月、政権が」交代。ネストル・キルチネル4年、その夫人クリスティーナ・フェルナンデスの8年の、計12年間のペロン派キルチネル路線の中道左翼政権は野に下る。
 この結果は、12月6日実施のベネスエラ国会議員選挙で、野党mudに有利に作用するだろう。ラ米とりわけ南米の左翼、中道左翼路線は厳しい時代を迎えそうだ。米国の思うつぼになる。
 船を降りたら、分析と展望に取り組まねばならない。
 海面は濃紺、深い海だ。驚いたトビウオの群れが飛び交う。
 船内講座の情勢ものは終わり、若者対象のシリーズ討論会を続けている。では次回まで、

2015年11月25日水曜日

~2015波路遥かに~第3回

~2015波路遥かに~第3回

 PBオーシャンドゥリーム号はタヒチのパペーテとボラボラ島に寄港して、11月4日、独立サモアの首都アピアに入港した。初めてのアピアゆえに午前中は歩き、記事執筆に備えて写真を何枚か撮った。午後は、島の反対側の集落で、住民と交流した。石焼料理がうまかった。南洋の島ではココヤシの実と葉は万能だ。これなしに生活が成り立たないと言っても過言ではない。あらためて実感した。
 パペーテでは、タヒチ舞踊の踊り手、歌手、演出家、振付師、小道具製作を一人でこなすココさんの家で、できたてのプアソンクルー、マグロ刺身をご馳走になった。うまかった。今航海最高の食事だった。
 ボラボラでは海につからず、去年見た巨大鰻を見に、街のドブ川に行った。だが鰻はいなかった。
 船上講義は大方終わり、アピア前には、サマセット・、モームが英国の諜報員として滞在したことの話と文学について語った。
 今日からは船内に250人ぐらいいる若者たちのための連続講座を始めた。「少数派の存在を認め多様性豊かな社会に日本を変えていくには」を主題にパネル討議をした。
 船は27日、赤道を越え、北半球に戻る。スコールが続き、気温は心持ち涼しい。船にいると、通信事情などから国際情勢がなかなか分からない。これが痛い。2015・11・26 伊高浩昭

2015年11月17日火曜日

「波路はるかに2015」第2回

~2015波路はるかに~第2回

 PBオーシャンドゥリーム号は明後日、タヒチのパペーテに着く。仏領ポリネシアの首都で、人口は18万人。タヒチ島の面積は東京都の半分弱。熱帯の猛暑が甲板を覆っている。

 船は、南回帰線と赤道の間を走っている。太陽と地球の緯度が重なっているため、太陽は南中しっぱなしで、人の影は足元に小さく丸くあるだけで、日中は影のない情景が醸し出される。因みに、に太陽の緯度は「赤緯」と言うらしい。

 船の侵入に平和を脅かされたトビウオの群れが、飛び逃げる。銀色の木の葉が紺碧の波の上を舞う。時折、海鳥が上空を過ぎる。島が、そう遠くない距離にあるのだろう。

 先日、疲れた黒色の海鳥が一羽、船で翼を休めていた。船は一晩に250kmも走る。運ばれた鳥は、帰るべき島から遠ざかってしまう。哀れ! だが鳥の生死は自然に任せるだけだ。助けてはいけない。野生なのだから。

 カヤオで出てから一連のラ米講座を終え、タヒチ講座に入っている。今日はタヒチとポール・ゴーギャンの関係を話した。明日は、タヒチ舞踊の先生ココさんと対談する。

 ラ米ではハイチ大統領選決戦に進出する2候補が決まった。亜国決戦は22日だ。12月6日にはベネスエラ国会議員選挙がある。風雲急を告げている。201501116 伊高浩昭

2015年11月9日月曜日

「波路はるかに2015」第1回

「波路はるかに2015」 第1回 リマ市およびカヤオ港にて    伊高浩昭

 日本時間(JST)11月4日~ペルー時間4日にかけて丸一日、メヒコ市経由で19500kmを飛んでリマ市のホルヘ・チャベス国際空港に着いた。昔は荒れ地に空港ビルがそびえ立つだけのこじんまりした空港だったが、21世紀に入ってからのペルー経済のいびつな隆盛を反映して、すっかり現代化している。タクシーの客引きが群がる光景は相変わらずだが、車の床に穴の開いたタクシーはもはや見当たらない。5日未明0130ごろ、カヤオ港に停泊中のピースボート「オーシャンドゥリーム」号に入った。これが私の動くホテルである。

  カヤオで下船する、リマ在住の写真家義井豊の送別宴に駆け込み参加し、仮眠をとる。明けた朝、義井豊とリマ中心街のアルマス広場に行き、某有力紙政治部長にインタビューする。来年4月の大統領選挙の展望を訊いた。政治部長は主な候補の品定めをしてくれたが、もちろんオフ・ザ・レコードだった。発言者の特定に繋がるようなことを一切書かずに、発言内容を報じること。これは守らねばならない。

 次いで、治安関係の元高官にインタビューした。過去の対ゲリラ戦、現在の治安状況、大統領選挙展望などを訊いた。来年12月には、リマの日本大使公邸占拠事件発生20周年となる。この事件も振り返り、質疑した。

 晩春のリマは涼しかった。フンボルト寒流の影響が際立っている。油断すれば風邪をひく。PB船は6日夜、カヤオを出港、西方彼方のタヒチに向かう。2週間の航海だ。7日は安息日、8日午前、日本内外のニュースを船客たちに報告した。安倍参戦法、「マイナンバー制度」、TPP大筋合意、辺野古埋め立て予備工事強行に関心が集まった。明日は、クーバとUSAMERICA(ウサメリカ=USA=米国)の国交再開の歴史的経緯について語る。

 船上も涼しいが、数日後には夏らしい暑さが甦る、と船長は予想している。船からのパソコン交信は電波事情次第だ。これが素早く届くのを期待する。

2015年11月4日水曜日

ラ米3国が国連の核兵器廃絶決議採決で棄権

 国連総会は11月2日、日本提案の核兵器廃絶決議を賛成156、反対3(中露朝)、棄権17で採択した。棄権国には、ラ米のクーバ、ボリビア、エクアドールの3国が含まれている。

 クーバは、フィデル・カストロ前国家評議会議長の時代から核兵器廃絶を熱心に訴えてきた。ここで棄権に回ったのは、経済援助を受けてきた中露に慮ったためと容易に想像できる。また北朝鮮とも友好関係を維持している。

 ボリビアは、エボ・モラレス大統領がこのほど、ロシアからの資金・技術援助による原子力研究所建設計画を発表したばかりだ。

 エクアドールは、国際金融界から締め出されており、特に中国に資金援助を仰がねばならない立場にある。

 中露と経済上の関係の深いアルヘンティーナのフェルナンデス政権が棄権しなかったのは、12月で政権交代となるからだ。ベネスエラは故ウーゴ・チャベス前大統領の核兵器廃絶路線を引き継ぎ、「米国と同じ棄権」の立場に身を置きたくなかったからだろう。

2015年11月3日火曜日

エクアドールが米0XY石油に賠償金10億ドル支払いへ

 エクアドール(赤道国)のラファエル・コレア大統領は11月2日、係争相手だった米オクシデンタル石油会社(OXY)に賠償金10億ドル支払うことで同意した、と発表した。

 OXYは、赤東部のアマソニア油田を開発していた2006年、開発権の4割を赤政府に無断でカナダのエンカナ社に売却。当時のアルフレド・パラシオス赤大統領は赤石油法違反として開発権を取り消し、事実上、接収した。

 これに対しOXYは米赤投資条約違反として提訴。世界銀行の下部機関である国際投資関連紛争調停所が介在、同条約違反を認め、17億ドルの支払いを赤政府に命じた。その後の話し合いで、最終的な支払額は10億ドルになった。

 10億ドルは、赤道国の2016年度歳出の3・3%に及ぶ重い負担だ。コレア大統領は、「私が就任する前の新自由主義政権時代に問題は起きた」と指摘した。

ベネズエラが東カリブ諸国専用の貿易会社設立へ

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は11月2日、セントヴィンセント・グラナディーン(STVG)をはじめ東カリブ諸国との貿易専用の「ベネスエラ東部貿易会社」(CCEOV)を設立する、と発表した。

 大統領は1日からSTVG首都キングズタウンに滞在中。同社の中心は、ベネスエラ東部のアンソアテギ州プエルトラクルース港となる。


 

世界で2006~14年にジャーナリスト700人が殺される

 ユネスコは11月2日、2006~14年に世界中で殺害されたジャーナりスト、フォトジャーナリスト(写真・執筆両道家)、フォトグラファー(報道写真家)、カメラマン(TVニュース映像撮影者)、メディア報道部門労働者は計700人を超える、と明らかにした。

 「ジャーナリストに対する犯罪無処罰を終わらせるための国際日」に因み、公表された。

 これらのジャーナリスト殺害事件のうち解決されたのは7%にすぎず、ほとんどは迷宮入りしている。

 2014年には118人が殺された。13~14年の地域別発生件数は、アラブ諸国64、ラ米51、アジア太平洋30、中東欧10など。

 一方、米州人権委員会(CIDH)の統計では、2010年から現在までラ米でジャーナリスト150人が殺された。内訳は、メヒコ55人、オンドゥーラス28人、ブラジル25人、コロンビア11人、グアテマラ9人、ペルー6人、パラグアイ4人など。

コロンビア和平のため「地方ごとの停戦」を提案へ

 内戦が和平の方向に進んでいるコロンビアで、ゲリラ組織コロンビア革命軍(FARC)が7月20日に踏み切った「一方的停戦」を監視・検証してきた「和平のための拡大戦線」(FAPP)は11月2日、近くハバナに行き、FARC、コロンビア政府の双方に新たな和平案を提案する、と明らかにした。

 その和平案は、コロンビアの州(県)ごとに停戦し、それを全土に拡大させ、内戦を終わらせるというもの。政府は、FARCを特定地域に集結させる案を提案していたが、FARCはこれを拒否した。

 FARCは、一方的停戦実施後、政府軍および極右準軍部隊による50件を超える戦闘行為があった、と政府側を非難、このままでは和平過程進展が危ぶまれると警告していた。

 FAPPは、FARCの要請を受けて、和平交渉が行なわれているハバナに赴き、仲裁役の立場から提案することになった。

 

2015年11月2日月曜日

ボリビアがロシアの援助で原子力研究所を建設へ

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は10月28日、同国初の原子力研究所を4年内に建設する、と発表した。政治首都ラパスの郊外に拡がる標高4000mのエルアルト市で、2016年3月20日着工される。

 建設費は3億ドルで、ロシアが融資する。技術もロシアだが、原子力発電の経験国アルヘンティーナも技術支援する。実験用原子炉1基などが設置される。

 モラレスは昨年、この建設計画を打ち出し、国際原子力機関(IAEA)の支援を得てきた。同大統領は以前、イランとの協力を決めていたが、立ち消えになった。施設の正式名称は、「原子力技術研究開発所」。

 当初、住民の反対が強かったが、モラレスは人体、家畜、空気、河川、「母なる大地」にも汚染の心配はない、と説得、同意を得るのに成功した。

11月の伊高浩昭執筆記事予告

◎伊高浩昭の11月執筆記事予告

★月刊誌LATINA12月号(11月20日刊)

「ラ米乱反射」連載第116回 「10月25日実施のハイチ大統領選挙長編解説」

書評:『キャプテン・クックの列聖』(ガナナート・オベーセーカラ著、中村忠男約、みすず書房、6800円)

コロンビア政府軍の軍事作戦が停戦に脅威、とFARC警鐘

 コロンビア革命軍(FARC)は11月1日、同ゲリラ組織が7月20日から維持している「一方的停戦」を監視・検証している「和平のための拡大戦線」(FAPP)に対し、FARCとの緊急会合開催を要請した。

 理由は、このところの政府軍の全国的な軍事化強化によってFARC要員が殺されており、停戦が脅かされている、との判断から。

 FARCは10月31日には、ハバナでの和平交渉を支援しているクーバ、ノルウェー、ベネスエラ、チレ4カ国代表と、交渉に側面参加している米独EU代表に、「軍事化による危険性」について詳しく説明した。

 和平過程を支援しているコロンビア超党派議員団も1日、政府、FARC双方に対し、和平過程を壊さないため言動を慎重にするよう呼び掛けた。

 一方、コロンビア紙はハバナでFARC交渉代表団広報担当のカルロス=アントニオ・ロサーダの発言として、JMサントス大統領は相互停戦の監視・検証を国連安保理に提案すること、および、相互停戦前にFARCは特定地域に終結すべきこと、の2点を条件としてFARCに提示したが、FARCはこれを拒否した、と報じた。

 FARCは、国連の関与は不要であると同時に、9月23日の和平合意に反する、と見ている。また、FARC要員の集結については、「政府に真の政治的意志があれば集結は不要」との立場だ。

ラ米エネルギー機構が英の油田開発を国連決議違反と判断

 ラ米エネルギー機構(OLADE=オラデ)は10月30日、ボリビア南部のタリーハ市で石油相会議を開き、英国によるマルビーナス(フォークランド)諸島近海での油田開発を国連決議違反と認定した。

 国連は、亜国によるM諸島領有権の主張を支持し、英国による一方的な油田開発を、「亜英両国は現状を変更する一方的行動をとってはならない」とする国連決議に反していると判断、亜国が英国に対し法的措置をとるのを是とした。

 亜国は1833年に英国に奪われたM諸島および南大西洋の他の2諸島の奪回のため1982年4月、M諸島に先制攻撃を仕掛け占領した。だが英本国から派遣された海空軍部隊により6月、敗北に追い込まれた。

 その後、国連の仲介で対話による対立解消を求められてきた。だが英国は、領土問題の話し合いには応じず、島民投票で諸島の英国帰属継続を決めるなどし、近年、亜国の反対を無視して海底油田開発に踏み切った。 

2015年11月1日日曜日

コロンビア和平は来年3月23日前にも可能と大統領予測

 コロンビアのJMサントス大統領は10月31日、政府とFARCとの和平交渉が現在の調子で進行すれば、最終和平合意には、期限の来年3月23日より早く到達できそうだ、と述べた。

 双方は目下ハバナで、最終和平前のFARCゲリラ要員の集結および集結地域、停戦監視・検証の方法などについて話し合っている、と明らかにした。

 大統領はまた、和平実現に向けて私の政敵を含む全コロンビア人の支援が必要だ、と強調した。

日本とチリが津波対策で協力強化へ

 太平洋を隔てて向き合うチレと日本が津波対策でセミナリオ(セミナー)を開き、津波対策計画を打ち出した。セミナリオは10月29日、サンティアゴ市で開かれた。

 計画は、「STREPS(持続可能開発向け科学技術協力調査計画)-津波計画」と呼ばれる。早期予報、被害規模推定、非難、海岸地方居住地域での普段の準備などを通じて津波の危険性を最小限にするというもの。

 2010年にチレ南部のコンセプシオン市一帯で起きた地震でも、11年の北日本大震災でも、大きな津波被害が出た。これらの経験を経て、両国の協力関係は強化された。

 セミナリオには、日本から国際協力事業機構(JICA)、地震専門家、日本大使館など、チレからは国家緊急事態事務所(ONEMI)、海軍水路・海洋学研究所(SHOA)、公共事業省港湾事業局、大学の専門家ら、双方合わせて40人が参加した。

 ONEMIのリカルド・トロ所長は、我々は日本の経験に学び従う、と述べた。