2013年7月31日水曜日

国連がチリ政府に先住民弾圧の悪法廃止を呼び掛け


 国連人権・テロリズム問題特別記録官ベン・エマーソンは7月30日サンティアゴ市内の国連ラ米・カリブ経済委員会(CEPAL)本部で記者会見し、チリ政府に対し、「反テロリスト法を廃止するか、適用しないようにすべきだ」と強く呼び掛けた。

 記録官は17日からチリで3権代表、警察、教会、人権団体などから先住民族マプーチェの人権状況や土地奪回運動などについて意見を聴取してきた。

 これを踏まえた報告書を記録官は来年3月、次期政権発足時に発表するが、この日、3点の予備提言をした。①チリはテロリズムの状況にはなく、反テロリスト法は廃止するか、適用しないようにすべきだ②マプーチェ代表を多く含む「国民諮問委員会」を設立し、マプーチェなど先住民族の権利を憲法で認め、土地回復を促進すべきだ③マプーチェ民族の政治・文化・実践を承認するためILO条約適用を含め広汎な代表制政治を始めるための国家戦略を策定すべきだ――。

 反テロリスタ法は、ピノチェー軍事独裁時代の1984年にできた悪法で、1990年代以降、マプーチェの土地奪回運動弾圧のため差別的に応用され、適用されてきた。

 エマーソン発言に対し、人権団体は評価しているが、大地主や、それと繋がる利権階層など右翼・保守陣営は反発している。

 チリは経済開発では「ラ米一」の優等国とされているが、新自由主義の弊害、ピノチェー軍政下の犯罪未解明、マプーチェ迫害があり、新たな一歩を踏み出せないでいる。

2013年7月29日月曜日

法王がラ米司教会議で努力不足を指摘


 ローマ法王フランシスコは7月28日、リオデジャネイロで開かれたラ米司教会議
(CELAM=セラム)で講演し、「私を含めラ米の司教は21世紀の現代より少し遅れている」とし、「王子の心理を持つのではなく、謙虚であれ」と訴えた。

 さらに、「教会の社会教義を指針にせよ」、「教会の内部改革と、現代世界との対話が必要」などと呼び掛けた。

 次いで、「ラ米教会は、信者減少を食い止めることなど明確な目標を持たずに発展しようと考えてきた」と、努力不足を指摘した。

 法王はこの日、22日からのブラジルでの全日程を終え、ローマへの帰途に就いた。

故チャベス大統領生家に「高等研究所」開設へ


 ウーゴ・チャベス大統領(3月死去)の生誕59周年の7月28日、バリーナス州サバネタの生家で記念式典が催され、ニコラース・マドゥーロ大統領、実兄で同州知事のアダン・チャベス教授ら多数が出席した。

 大統領はその場で、生家を史跡に指定し、そこに「ウーゴ・チャベス司令官思想高等研究所」を開設することを定めた政令に署名した。

 初代所長には、チャベスを政治の世界に導いたアダン知事が就任する。「チャベス思想」は、21世紀型社会主義建設を目指す「ボリバリアーナ(ボリーバル主義)革命」の思想が中心となる。

2013年7月27日土曜日

キューバ革命原点「モンカーダ蜂起」60周年式典催さる


 キューバ革命の原点となったモンカーダ兵営襲撃蜂起の60周年記念日の式典が7月26日夜、サンティアゴ市内の「7月26日学園都市」(旧兵営跡)で挙行された。この日は「民族蜂起の日」とされている。

 ラウール・カストロ国家評議会議長、ニコラース・マドゥーロVEN、エボ・モラレスBOL、ダニエル・オルテガNICA、ホセ・ムヒーカURUの4大統領、アンティグア・バーブーダ、セントヴィンセント・グラナディーン、ドミニカ、セントルシアのカリブ海4ヵ国首相、エクアドール外相らが出席した。

8月に87歳になる革命の最高指導者フィデル・カストロ前議長は、ハバナの自宅に留まった。

 ラウールは開会演説で、「歳月は経たが、この革命は今も貧者の貧者による貧者のための社会主義革命だ。かつて我々が若者だったように、今も若者の革命だ」と強調した。

 ムヒーカ「キューバは我々に恥と尊厳を教えてくれた。ラ米人の自覚を与えてくれた」、エボ「キューバ革命はラ米と世界の反帝国主義革命の母だ」、マドゥーロ「あなた方は尊厳をラ米人民にもたらした。ALBACELACを可能にしたのはあなたたちだ」、オルテガ「キューバが世界中にもたらした革命の火は消えることがない」、ローズヴェルト・スケリットDOMINICA首相「LAC(ラ米カリブ)はキューバ人民が勝ちえたものを引き続き守っていこう」、ケニー・アンソニーSAINTLUCIA首相「キューバは恐れずに勇気を示すことを教えてくれた」と、それぞれ指摘した。

 この日、モンカディスタ(モンカーダ襲撃参加者)のうちの15人が襲撃前夜に宿泊したサンティアゴ市内のレックスホテルが新装開業した。 

2013年7月26日金曜日

法王がリオのファヴェーラで訓話


 ブラジル訪問中のローマ法王フランシスコは7月25日、リオデジャネイロのファヴェーラ「マルキーニョス」の中心部ヴァルジーニャで若者ら住民を前に訓話をした。このファヴェーラは、昨年末に平定されるまで麻薬組織に支配されていた。

 法王は、「いかなる平定努力も、自らの一部を無視し疎外し周辺部に放置する社会では長続きしない。社会の偉大な方策とは、支援を最も必要としている人々、貧困以外に持つ物がない者たちにいかに対応するかで決まる」と語りかけた。

 6月に抗議行動を全国で展開した若者を意識して、「あなたたちには不公正に対する特別の感受性がある。だがしばしば、腐敗によって、公益でなく私益に走る者たちによって裏切られたと感じるだろう」と前置きし、「決して落胆してはいけない。信頼を失ってはならない。希望を消してはならない。現実は変わるし、人間が変えることができる」と励ました。

 麻薬については、「悪習にはまってはならない。それを克服しなさい」と説いた。

ジュリアン・アサンジ氏が「ウィキリークス党」から豪州選挙に出馬へ


 ウィキリークス創設者ジュリアン・アサンジ氏は7月25日、豪州で9月14日に予定されている上院議員選挙にメルボルン選挙区から出馬すると発表した。最近結成した「ウィキリークス党」から立候補する。

 アサンジは、亡命しているロンドンのエクアドール大使館からビデオ中継でメルボルンの同志たちに意思を伝えた。他の6人も同党から出馬する。

 アサンジは、「ウィキリークスが暴いてきた不正に関与した諸政府、諸諜報機関を法廷に立たせるのが目的」と語っている。 

2013年7月25日木曜日

カナダ鉱山会社がゲリラに譲歩しコロンビアから撤退


 カナダの鉱山会社ブレイヴァル(本社トロント)は7月24日、コロンビア北部での金鉱開発を取り止めた、と株主に通達した。

 同社幹部ジャーノック・ウォバート技師は1月からゲリラ「民族解放軍」(ELN)の人質になっており、ELNは6月、同社が贈賄で違法に獲得した開発権を放棄しない限り、人質は解放しない、と表明していた。

 このため、同社はELNに譲歩して撤退を決めた、と受け止められている。同社は今後はメキシコとペルーでの金山開発に集中するという。

2013年7月24日水曜日

死因調査中の「パブロ・ネルーダの遺骨」をDNA鑑定へ


 チリのノーベル文学賞詩人パブロ・ネルーダ(1904~73)の死因を調べているマリオ・カローサ判事は7月23日、調査中の遺骨がネルーダ本人のものか否かをDNA鑑定で確認するよう、法務省法医学局に命じた。

 同法医学局は4月、イズラ・ネグラの旧ネルーダ邸庭の墓地から「ネルーダの遺骨」を発掘した。現在、米・北カロライナ大学と、西ムルシア大学で遺骨を分析している。

 ネルーダの死因は死亡当時、「前立腺末期癌」と発表された。だが去年、ネルーダの元運転手が「軍政による独殺」説を打ち出し、それが認められて遺骨発掘調査となった。

 しかし発掘された遺骨がネルーダのものでないとすれば、調査は無意味となる。ネルーダの遺体は、軍政によって数回埋葬場所を変えられたため、遺体すり替えの機会があった。このため、ネルーダが所属していたチリ共産党などが遺体のDNA鑑定を求めていた。

コスタ・リーカが自国領海内で油田開発と、ニカラグアに抗議


 コスタ・リーカ(CR)政府は7月22日、ニカラグアがCR領海内での油田開発を目指し、探査権を外国企業に与えようとしているとして、ニカラグア政府に正式に抗議した。

 ニカラグアは、太平洋岸とカリブ海岸の沖合計4000平方kmの海域で油田開発を目論んでいるが、うち太平洋岸18鉱区、カリブ海岸55鉱区がCR領海を侵犯しているという。

 ニカラグア政府は、海洋主権を行使しているまでだ、との立場を通している。

 一方、ニカラグア軍司令官フリセサル・アビレースは23日、カリブ海の領海7000平方kmをコロンビアから引き渡された昨年11月の国際司法裁判所の裁定は不変だ、と強調した。

コロンビア政府は、英ヴォルテラ・フィエッタパー社を雇って同裁定の代案を策定しようとしている。この代案を国際司法裁に提示する方針。アビレース司令官は、そのようなコロンビア政府の動きを牽制したもの。

2013年7月23日火曜日

ベネズエラとコロンビアが関係を修復


 マドゥーロ・ベネズエラ、サントス・コロンビアの両大統領は7月22日、ベネズエラ・アマソーナス州都プエルト・アヤクーチョの海軍水上歩兵旅団基地で会談し、悪化していた両国関係を修復した。

 サントスは、「故ウーゴ・チャベス大統領は私に、違いを超えて協働しようと言ったが、その通りに協働していく」と述べた。

 マドゥーロは、「疾風が、暑さ、気分の悪さ、両国関係の悪さを吹き払った」と語った。大統領は、エクアドールの大統領と外相が仲介の労をとったことを明らかにした。

 両国関係は、4月のベネズエラ大統領選挙で敗れた野党候補エンリケ・カプリレスをサントスがボゴタの大統領政庁で迎え会談したことから、冷却化していた。

ローマ法王がリオデジャネイロ入り


 ローマ法王フランシスコが7月22日、リオデジャネイロに到着した。3月の就任以来、初の外遊。23~28日リオで催される「世界青年週間」行事への出席が目的。

 法王は、ローマからリオに向かう専用機内で、「世界危機で若者は配慮されなくなっている。我々は、失業した世代を抱える危機に瀕している。人間の尊厳は労働から来る」と述べ、滞在中の演説やミサで若者への連帯を表明することを示唆した。

 リオでの歓迎式典で、ヂウマ・ルセフ大統領は、「貧困と飢餓との闘いに力を結集しましょう」と述べた。法王は「若者は未来と世界をつなぐ窓」と述べ、「私には黄金も銀もない。だがイエス・キリストの名において、友愛を拡げるためにやって来た」と応じた。

 法王は、カトリック教会の性的醜聞、腐敗、古い教義などから信者が減少しつつある状況を深刻に捉えており、ラ米教会の活性化を図ろうとしている。

 そのため、貧困対策など社会正義実現に取り組む「解放の神学」の流れを汲む作風を示している。

 アルゼンチン人の法王は、初の欧州人以外の法王であり、ラ米カトリックの間で熱狂的に歓迎されている。

2013年7月22日月曜日

外国メディアが圧勝後の安倍の動向を論評

 7月21日実施の参議院議員選挙の結果についての一部外国メディアの論評をまとめた。

 スペイン「エル・パイース」紙:安倍が改憲に乗り出すのを警戒する向きがある。そのような動きは、過去の帝国主義日本の記憶に依然苛まれている中韓両国との緊張を増幅させよう。安倍は既に、日本軍慰安婦問題で中韓を苛立たせている。改憲には慎重であるべきだ。

 スペインEFE通信:選挙結果には驚きはない。だが幾つかある驚きの一つは、原発反対を訴えてきた山本太郎の当選だ。

 ドイツDPA通信:安倍を非難する人々は、安倍が国家主義政策を優先させるのを恐れている。安倍は、日本が米国の手を離れて、軍事と外交で自信を持てる強国になるのを望んでいる。

 中国・新華社通信:与党連合は圧勝したが、自民党が完全に自由に改憲できるようになったわけではない。安倍は圧勝で、経済政策重視から、平和憲法改変を通じ自衛隊を国軍にする課題に短期的に移行するのではないか、と指摘する向きがある。評論家も、安倍は軍備増強で強い日本をつくろうとしていると指摘する。そうなれば、中韓関係にさらなる緊張を招くことになる。だが世論調査は、憲法9条改定派が多数でないことを示している。公明党は、改憲問題で決定を左右できる立場にある。

 米NYT紙:戦後の平和体制から移行する可能性が出てきた。安倍は、精彩のない首相たちが続いた後、「改革執行者」として登場した。安倍は、中国に対抗するため、平和憲法書き換えを志している。安倍には実利主義と国家主義があるが、圧勝によって国家主義が明確になるのではないかと、評論家は指摘する。だが、有権者が改憲を望んでいるのかどうか、はっきりしない。対中警戒心が安倍への支持を増やした。だが経済が陰れば、支持は減っていく。安倍は前回の短命政権の経験から、経済を疎かにしたたままでは国家主義政策を推進できないという教訓を得た。

 米AP通信:圧勝は、安倍経済政策と安倍復権を認めた。鷹派安倍に改憲への余裕が出てきた。中韓との緊張は増幅する。有権者は経済第一主義であり、改憲には消極的だ。

 英ロイター通信:小泉が06年退陣して以来の安定政権が実現した。鷹派安倍は経済政策で一層強い主導権を握った。短命政権の失敗の埋め合わせができた。日本人は、圧勝した安倍が経済政策を犠牲にして国家主義優先に邁進するのを懸念している。圧勝したが、自民党内に経済改革深化に反対する勢力がいるのは皮肉だ。安倍には右翼、実利主義、経済改革者の3つの顔があるが、ある評論家は、今後も経済改革中心に進むと見る。圧勝ではあるが、投票律の低さ(52・61%)が勝利を陰らせている。 

仏大統領が領空通過拒否でボリビア大統領に遺憾表明


 ボリビア駐在のフランス大使は7月21日、オランド仏大統領が2日のボリビア大統領機緊急着陸事件で、エボ・モラレス大統領に遺憾の意を表した、と明らかにした。

 ラ・ラソン紙上で述べたもので、モラレスがメルコスール首脳会議出席のためモンテビデオに滞在していた12日、オランドは電話で直接伝えた、という。

 フランスは大統領機の領空通過を拒否し、燃料切れが間近だった機はビエンナ空港に緊急着陸した。フランスは、米政府の外交圧力を受けて通過を拒否したと見られている。 

2013年7月21日日曜日

ベネズエラ大統領が対米対話打ち切りを宣言


 ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は7月20日、国交正常化のための対米対話は終わった、と言明した。

 ベネズエラと米国は、米州諸国機構(OEA)外相会議が開かれたグアテマラ・アンティグア市で6月5日外相会談を開き、大使級外交関係復活のための高位級対話開始で合意し、ワシントンで話し合いに入っていた。

 ところが7月17日、米次期国連大使候補サマンサ・パワーが米上院外交委員会で、「国連で、キューバ、イラン、ロシア、ベネズエラなどの市民社会抑圧と闘う」と意思表示した。これを受けてマドゥーロ大統領は、「いかなるグリンゴ(ヤンキー)の内政干渉も許さない」として、対話打ち切りを宣言した。

2013年7月20日土曜日

LATINA誌が「ブラジル抗議行動」分析記事を掲載


 本日(7月20日)発売の月刊誌LATINA8月号掲載の伊高浩昭執筆記事は以下の通りです。

 「ラ米乱反射」第90回 「変化求める若者の洪水でブラジル全土が氾濫」―行き詰まったPT政権の「改良型新自由主義」――6月の抗議行動の分析です。

 書評:チェルノ・モネネムポ著『カヘルの王』(石上健二訳、現代企画室)

  ギル・スコット=ヘロン著『ギル・スコット=ヘロン自伝』(浅羽麗訳、スペースシャワーネットワーク) 

人権団体がグアテマラ内戦失踪者の調査で国連に要請


 グアテマラ内戦中(1960~96)、意思に反し強制的に失踪状態に陥れられた4万5000人の調査は、内戦終結後17年経ったいまもなされていない。

 その調査開始をグアテマラ政府に働きかけるよう7月19日、人権団体が国連・強制失踪者問題行動グループに要請した。

 要請したのは、正義・国際法センター(CEJIL)、ミルナ・マック財団、米加州大学人権国際法相談所の3団体。

2013年7月19日金曜日

スペイン内戦勃発77周年


 ラ・ゲラ・シビル・エスパニューラ(スペイン内戦)は1936年7月17日から18日にかけて、スペイン領アフリカ駐屯の反乱軍部隊と本土の反乱軍が連動して蜂起したことにより、勃発した。それから77年が過ぎた。

 島流し扱いされていた軍部内反乱志向派指導者フランシスコ・フランコは、アフリカ大陸沖のカナリア諸島の中心地テネリフェから移動して18日、「英雄的在アフリカ部隊に栄光あれ。とりわけスペインに。この歴史的瞬間に汝ら、および本土の同志たちと団結する我々アフリカ部隊の情熱的挨拶を受けてほしい。勝利を盲信せよ。名誉あるスペイン万歳」という声明を発表し、反乱の指揮を執った。

 スペインの活字メディアは、数日前から、「無政府主義者による内戦勃発直前のフランコ将軍暗殺未遂事件」、「フランコ派家庭の娘で現在90代半ばの老女のマラガでの内戦勃発当時の体験談」、「詩人フェデリコ・ガルシア=ロルカ殺害と、今に続く集団墓発掘作業」、「メキシコに亡命した共和派の人々」など、特集記事を掲載している。

 左翼議員たちは今年5月国会に、7月18日を「フランコ主義糾弾の日」に制定する法案を提出したが、フランコ派の流れを汲む政権党PP(国民党)の反対で審議は難航している。

 ところが、そのマリアーノ・ラホーイ首相をはじめ政権は腐敗事件の渦中にあり、重大な危機に直面している。同首相は9月来日が予定されているが、それまでに醜聞事件が収まるかどうかわからない。

パナマ検察が北朝鮮船乗組員の容疑固める


 パナマ検察庁は7月17日、北朝鮮貨物船事件で、船長以下乗組員の「無申告かつ運河通航規則違反となる兵器輸送によりパナマの安全を脅かした」容疑を固めた。

 検察は、「貨物船は、砂糖を積んでいると申告しただけで既に規則違反であり、運河通航を危険に陥れた」と説明している。

2013年7月18日木曜日

岡村淳著『忘れられない日本人移民』を読む


 日本人が書いたラ米への日本人移民の本は数え切れない。とりわけ日本人移民の数が最も多かったブラジルを舞台にした話が多い。私は、それらの本をある程度読んできたが、本書は数少ない、最も印象深い部類に属す。

 対象者を相手に苦闘し、昇華する。また対象を探し闘い、昇華し、束の間の安らぎを得る。そしてまた対象を選び、闘う。著者は、この繰り返しで生きてきた。見上げた映像ジャーナリストである。

 私は半世紀もラ米情勢取材に携わってきた。日本人移住物は書き手が多いこともあって、最初から中心的な取材対象から外していた。ラ米の政治・社会・文化状況に魅せられていて、自分が日本人だからという動機から、日本人物に本格的に取り組もうと思ったことは一度もない。

 この本を読んで、広い意味の同業者として感服した。そして、自分にも、もう少し価値ある日本人移住者を探して書くという選択肢もあったかもしれない、と思った。

 記憶を辿れば、ラ米諸国で、人間性豊かで興味深い生き方をしていた日本人・日系人に少なからず会ってきた。しかし、この本の著者のように、人間同士の付き合いになるまで関係を掘り下げることはなかった。

 この本と過ごした数時間は、とてもいい時間だった。

【副題「ブラジルへ渡った記録映像作家の旅」。有限会社「港の人」刊。1800円】

FIFA会長がW杯ブラジル大会開催に懸念を表明


 FIFAのジョセフ・ブラッター会長は7月17日、来年のW杯ブラジル大会時に、6月のコンフェデレーションズ杯大会時のような大規模な抗議行動が起きれば、開催国選択が適切だったかどうかという疑念が生じてしまう、と述べた。

 会長はまた、2022年のW杯大会はカタールで、気温が摂氏50度にも達する夏でなく冬場に開催されるのが望ましい、と語った。

北朝鮮がパナマに貨物船と乗組員の解放を要求


 北朝鮮外務省は、パナマでの北朝鮮貨物船臨検・抑留事件を受けて7月17日、貨物船と船長以下の乗組員全員を早急に解放するよう要求した。

 外務省声明は、「パナマ当局は麻薬捜査を口実に突然襲い掛かり、船長以下の乗組員を逮捕した。麻薬は結果的に見つからなかった」、「キューバの古い兵器類は、正当な契約に基づき、修理し返還するため積み込まれていた」と述べている。

 一方、パナマのフェルナンド・ヌニェス外相は17日記者会見し、「キューバ政府には、友邦領海で無申告の兵器類を輸送することが危険を冒すことになる、という認識がなかったようだ。巴玖両国間に問題はない。問題は、北朝鮮船を用いたことだ」と指摘した。

 外相はまた、北朝鮮の要請により、在玖大使館を通じて、北朝鮮外交官2人に査証を与えた、と明らかにした。同外交官は、積荷検査に立ち会うとともに、臨検に至った経緯をパナマ側に説明するよう求められている。

 パナマ政府は16日、国連安保理に対し、兵器類を調査する技術委員会をパナマに派遣するよう要請した。委員会には米英の専門家も含まれる見通し。 

2013年7月17日水曜日

映画「楽園からの旅人」を観る


 イタリア映画「楽園からの旅人」(原題「段ボール村」、2011年エルマンノ・オルミ監督作品、87分)を試写会で観た。8月17日から東京・神田神保町の岩波ホールで公開される。

 教会が廃止され廃屋と化し始めたその日、北アフリカから密入国した難民たちが侵入し占拠する。半世紀に亘ってそこに住んできた老司祭は、晩年に到来した劇的な瞬間―難民たちを匿った二泊三日間―に、真のキリスト者に限りなく接近する。

 映画の舞台は徹頭徹尾、この教会の建物の内部だけだ。信者が毎日、<土足で>出入りするキリスト教の教会ならではの舞台設定である。裸足で手足を清めて入るイスラム寺院や、土足で入ることの少ない仏教の寺では、この映画のような人民の空間は生まれにくい。

 まさにキリスト教的、地中海的、イタリア的な映画だ。昨年、岩波ホールで上映された「ジョルダーニ家の人々」も「海と大陸」も、アフリカ難民問題を取り上げていた。今や、現実的、社会的、人間的な作品を生み出そうとすれば、難民問題に触れなければ<>になるとも受け止められそうな、共通の作風である。

 難民たちは教会を離れフランスに向かうが、教会を出てすぐに逮捕されたかもしれない。イタリア当局が、ユダヤ人を狩るゲシュタポのように映る。老司祭には、教会の建物の破壊が待っている。ハピーエンドはない。

 「神とは何か」を、日本人にある程度理解させてくれる映画だ。それにしても、西欧キリスト世界は、2000年も「神とは何か」を考え続けている。日本人の理解が及びにくいのは、この伝統と歴史と文化である。

北朝鮮船はキューバ軍の旧式兵器を修理のため運んでいた


 キューバ外務省は7月16日、パナマで臨検され抑留されている北朝鮮の貨物船に積まれていたミサイルなどはキューバ軍のもので、修理するため北朝鮮に運び、修理されたらキューバに戻されることになっていた、と発表した。

 発表によると、兵器類は240トンで、いずれも半世紀前に旧ソ連で製造された防衛用兵器。地対空ミサイル「ヴォルガ」および「ペチョラ」の発射装置込み2基、ロケット弾9個分の部品類、ミグ21戦闘機2機、同型機用のエンジン15基が積載されている。

 パナマ政府は16日、キューバのロヘリオ・シエラ副外相が13日、北朝鮮船を解放するよう要請してきたが拒否した旨を明らかにした。

 キューバの発表では、積荷の砂糖は1万トンだった。

北朝鮮軍高官が7月1日カストロ議長と会談していた


 パナマで北朝鮮の貨物船が7月12日臨検されミサイルなどが発見だれたが、この船はキューバのハバナ港を出港していた。北朝鮮人民軍参謀長キム・キョクシク大将ら軍事使節団が6月27日キューバを訪問し、同大将は7月1日、ラウール・カストロ国家評議会議長と会談している。使節団は既に帰国している。

 この使節団訪問および会談と貨物船の積荷との関連性は不明だが、使節団が重要な意味を持っていた可能性が膨らんでいる。

 ハバナで積み込まれたと見られるキューバ糖の入った数多くの袋の下から兵器類が見つかったことは、キューバ当局が他の積荷について関知していた可能性をも示唆する。

 もちろん、問題の貨物船がハバナに入港する前に兵器類を積んでいた可能性も否定できない。

 いずれにせよ、キューバは自らの立場を積極的に明らかにしない限り、国際社会から疑惑の目で見られることになる。

パナマで北朝鮮貨物船からミサイルなど兵器見つかる


 パナマのリカルド・マルティネリ大統領は7月15日、パナマ運河カリブ海側のコロン市クリストーバル港の一角にあるマンサニージョ港(旧米海空基地)で、北朝鮮貨物船「チョン・チョン・ガン」からミサイルなどの兵器が見つかった、と発表した。

 この貨物船はキューバのハバナ港を出港し、パナマ運河に入るため12日午後クリストーバル港沖で待機していたところ、パナマ当局の臨検を受けた。パナマ諜報機関はその数日前から、貨物船が麻薬を積んでいるとの情報をつかみ、臨検した。

 ところが、キューバ糖の入った大量の袋の下から、地対空ミサイル、レーダー統御式ミサイル発射装置などの兵器が発見された。同船は、積荷は砂糖と申告していた。目的地は北朝鮮だった。

 船長と34人の乗組員は全員北朝鮮人で、臨検の際、激しく抵抗した。船長は軽い心臓発作に見舞われた後、自殺を図ろうとした、という。

 貨物船と乗組員全員はマンサニージョ港に連行され、取り調べを受けている。貨物船側の弁護士たちが15日現地入りした。米政府は16日、捜査への協力を申し出た。

 この船の前停泊地はハバナ港であり、キューバは極めて複雑な立場に立たされた。ミサイルなどの兵器類の生産国はどこか、および、どの港で積み込まれたか、が焦点だ。

2013年7月16日火曜日

パラグアイ紙記者が意図的誤報拒否し解雇さる


 パラグアイ支配層系の日刊紙ABCコロール紙の記者だったパウロ・ロペスは、意図的誤報命令を拒否したため同紙を解雇された、と7月15日明らかにした。

 キューバのラウール・カストロ国家評議会議長は7日の国会閉会演説で、犯罪が多発していることなど革命体制の問題点を指摘した。キューバ国営通信プレンサ・ラティーナ(PL)によると、カストロ演説を取り上げた同紙は8日付1面で、「カストロは共産主義の欠陥を認めた」の大見出しで、発言内容と異なる記事を掲げた。

 PL通信によると、ロペス記者は、社主兼編集主幹アルド・ズッコリージョからねじ曲げ報道を命じられ、拒否したところ馘首されたという。この種のねじ曲げ報道は右翼思考の主幹がしばしばやってきた、と同記者は語っている。

ボリビア大統領機事件で西仏両国が謝罪


 スペイン政府は7月15日、ボリビア駐在大使を通じて、ボリビア政府に大統領機事件について説明し謝罪した。

 大使は記者団に、「西国は意思に反して(事件に)巻き込まれた」と述べ、第三者の介入があったことを示唆した。その第三者は米国だと受け止められている。

 一方、フランス外務省は同日、ボリビア政府に事件を説明し謝罪した、と発表した。

 ボリビア政府はイタリアとポルトガルに対しても説明と謝罪を要求している。

2013年7月15日月曜日

歴史家らがスペイン内戦関係公文書の開示禁止を批判


 スペインは7月17日、内戦勃発77周年を迎える。スペイン内戦(1936~39)の実態は、いまだに十分には解明されていない。内外の歴史家ら研究者は、スペイン政府に公文書の開陳を強く求めてきた。

 サパテロ前政権(中道左翼)は2010年10月、内戦期以降の公文書を機密度ごとに仕分けした。だが国民党(PP、右翼)のラホーイ現政権のホセマヌエル・ガルシアマルガージョ外相は2012年12月、外務省公文書の閲覧を禁止し、関係予算を他に回してしまった。

 国防相文書は1936~68年の1万点が2011年に開示の準備が整えられていたが、現政権国防相がやはり昨年12月、その公開を禁止した。

 歴史家らは、「スペインの民主主義の質が疑われる」、「政府は何を恐れているのか」と批判している。

 PPは、フランコ派の流れを汲むため、支持者や議員には弾圧者の子孫が多い。この事実も、文書公開禁止と関連があるはずだ。

2013年7月14日日曜日

ジョージ・オーウェル著『ウィガン波止場への道』を読む


 ジョージ・オーウェルは、この『ウィガン波止場への道』が出版された1937年、スペイン内戦の戦場で共和派人民戦線の側で戦っていた。塹壕に居た時、敵がなかなか銃撃してこないため立ち上がったところ、首筋を撃たれ重傷を負い、バルセローナの病院に運ばれた。経緯については、名著『カタロニア讃歌』を参照されたい。

 本書(土屋宏之訳、1984年、ありえす書房)には、炭鉱坑道のルポルタージュが含まれているが、「(狭く天井の低い坑道を通るには)私には長身というハンディキャプがある」と書いている。戦場でも、背が高すぎたため、敵弾が命中したのだ。

 「炭鉱夫は、土地を耕す人間に次いで重要だ。炭鉱夫のランプに照らされた地底の世界は、太陽が輝く地上の世界にとって、ちょうど花にとっての根のように不可欠なものなのだ。知識人ら優越者が優越していられるのは、炭鉱夫が汗水垂らして働いているからにほかならない。だから、ある意味で炭鉱夫を見ることは、知識人にとって屈辱的でさえある」

 オーウェルは、炭鉱夫の重要性をそのように描く。本書の題名だが、なぜこの題名が付けられたのか不可解だ。オーウェルは「私は有名なウィガン波止場を見たいと思っていたが、波止場は既に取り壊され、それがあった場所もはっきりしない」と書いているだけだ。波止場は失われていたが、探しまわる過程でさまざまな現実に遭遇することができた、という意味で、この題名にしたのかもしれない。

 本書の第2部は、社会主義についての思考であり、圧巻だ。オーウェルは自身を「中流階級上層」のなかの「下層」と位置付けている。「社会主義者はファシズムの攻勢の前に退却を強いられている。私がこれを書いている時にも、スペインのファシストはマドリーを爆撃している」と記す。オーウェルは、ファシズムが欧州そして世界を席巻するのを阻止するため、スペインに馳せ参じたのだった。

 「社会主義者はファシズムの攻勢の前で退却を強いられている」という指摘は、日本の現情に当てはめても示唆的だ。日本の極右政権は、人間の自由よりも国家の権限を重んじ、参戦できるようにし、天皇を元首にするため改憲しようとしている。これを阻止する対抗勢力は、日本の状況では社民勢力なのだが、それが幾つかの小政党に成り下がり、極めて心許ない。

 「ファシズムというのは、すべての空想的社会主義者がやることの正反対をやろうという決意なのだ」という指摘は、洞察だ。

 「人民戦線はファシズム阻止のために結成せざるをえまいが、本物の社会主義ではなく、反ファシズムの戦術になるという危険を孕んでいる。そこには社会主義者が最悪の敵とも同盟する可能性がある」と書く。キューバの人民社会党(PSP=共産党)が第2次大戦中、バティスタ政権に参加した史実を思い出す。

 オーウェル自身、バルセローナでの「内戦の中の内戦」と呼ばれた人民戦線内部の戦闘や弾圧の経験者となる。オーウェルには欧州の近未来が、はっきりと見えていたようだ。 

メルコスール首脳会議が米政府の諜報活動を糾弾


 モンテビデオで7月12日開かれたメルコスール首脳会議は、米政府諜報機関によるスパイ活動を糾弾し、その電子通信傍受およびスパイ活動を断固拒否する声明をも採択した。

 同会議に出席したボリビアのエボ・モラレス大統領は13日ラパスで、米政府諜報機関がボリビア最高指導部のパソコン通信を傍受していたことが判明した、と述べた。だが、私自身はパソコン通信をしていない、と付け加えた。

 大統領はまた、米政府の年間諜報活動予算は750億ドルであり、ボリビアの外貨準備高140億ドルと比べれば、いかに巨額かがわかる、と指摘した。

 モラレスはさらに、米政府がスノーデン氏の身柄引渡を要求していることについて、米政府に要求する道徳的資格はない、と非難した。

 理由として、米国がベネズエラ政府の引渡要求を無視してキューバ航空機空中爆破事件の主犯でキューバ系ベネズエラ人であるルイス・ポサーダ=カリレスの身柄を匿っていることや、ボリビアが引渡を求めている元大統領ゴンサロ・サンチェス=デ・ロサーダを匿っていることを挙げた。

2013年7月13日土曜日

メルコスールがボリビア大統領機事件で欧州4カ国駐在大使を召還


 モンテビデオで7月12日開催されたメルコスール(南部共同市場)首脳会議は、ボリビア大統領機事件について協議し、「根拠のない差別的で恣意的な行為にして、国際法の現行侵犯」と事件を糾弾するととともに、領空を封鎖した仏伊葡西の欧州4カ国駐在のメルコスール加盟国大使を事情聴取のため召還することを決めた。

 会議は、昨年6月「国会クーデター」によりフェルナンド・ルーゴ大統領を追放し加盟資格を停止されてきたパラグアイについて、8月15日のカルテス新政権発足と同時に復帰を認めることを決めた。

 ただし首脳たちは、メルコスールの「ウスアイア議定書」第7条(民主条項)をパラグアイが守るべきことを指摘し、釘を刺した。

 会議は、米政府によるラ米諸国スパイ事件についても話し合った。エドゥワード・スノーデン氏は、CIAとNSA(国家安全保障局)が伯COL墨をはじめラ米14カ国の電話、イーメイル、パソコン通話を08年から今年4月まで傍受していた、と暴露している。

 輪番制議長国は、ウルグアイからベネズエラに移った。ニコラース・マドゥーロ大統領は、「チャベスの左手とボリーバルの精神をもって就任する」と宣誓した。

 会議には、加盟申請中のモラレス・ボリビア大統領、来賓のロボ・オンドゥーラス大統領、加盟申請したエクアドール副大統領の他、南米・中米諸国の代表が出席した。

 ガイアナとスリナムは、賛同国として認められた。

2013年7月12日金曜日

メルコスール首脳会議が米政府によるスパイ事件協議へ


メルコスール(南部共同市場)首脳会議が7月12日、モンテビデオで開かれる。ウルグアイ、ブラジル、アルゼンチン、ベネズエラの加盟4カ国大統領、加盟手続き中のボリビアの大統領、および加盟申請をしたエクアドールの副大統領が出席する予定。

議題は、加盟資格停止処分中のパラグアイの復帰問題、域内経済問題のほか、ボリビア大統領機事件、スノーデン亡命問題、米政府によるラ米諸国スパイ事件などを話し合う。

輪番制議長国は、ウルグアイからベネズエラに移る。

2013年7月11日木曜日

詩人パブロ・ネルーダの遺骨をスペインに送付へ


 チリの詩人、故パブロ・ネルーダの甥であるロドルフォ・レジェス弁護士は7月10日、ネルーダが毒殺されたかどうかを調査するため、遺骨の一部をスペインのムルシア大学法医学研究所に送る
ことになった、と公表した。

 死因調査の担当判事マリオ・カローサが6月17日に許可した。遺体発掘に関わった同研究所の専門家が調査することになる。

 ネルーダは軍事クーデターから12日後の1973年9月23日サンティアゴ市内の診療所で死亡した。晩年の運転手兼側近のマヌエル・アラヤは昨年、毒殺説を法廷で証言した。法廷は、その証言に基づいて今年4月、遺体を発掘した。

 遺骨は現在、米・北カロライナ州の研究所で調査されている。

 アラヤは、チリ軍政秘密警察とCIAの要員だった「マイケル・タウンリー」が毒殺に関与したと見ている。 

2013年7月10日水曜日

ボリビア大統領機事件で米州諸国機構が欧州4カ国を糾弾


 社会主義キューバを除く米州34カ国が加盟する米州諸国機構(OEA/OAS)はワシントンの本部で7月9日、大使会議を開き、ボリビア大統領機事件を国際法と国家元首不可侵性の違反として糾弾し、欧州の関係4ヵ国に説明を求める決議を採択した。

 決議案はボリビア、ベネズエラ、ニカラグアが共同提案した。米加両国は、議題そのものに反対し、決議の際は留保した。

 一方、ロシア国会下院外交委員長アレクセイ・プシュコフは9日、スノーデン氏はベネズエラ大統領からの亡命受け入れの申し出を受け取った、と明らかにした。

 だがウィキリークスは同日、スノーデンはベネズエラから正式な亡命受け入れ状は受理していない、と伝えた。

 これについてベネズエラのエリーアス・ハウア外相は同日、本人の身柄がモスクワの空港にあるため具体的手続きの可能性が制限されている、と述べた。

 ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は8日、「スノーデンはいつカラカスに来るのか、ずっとベネズエラに留まりたいのか、明らかにすべきだ」と語っている。

 ブラジルのグロボ紙が8日報じたところでは、米国はラ米ではブラジル、アルゼンチン、エクアドール、コロンビア、ベネズエラ、メキシコをスパイしていた。

2013年7月9日火曜日

米紙がエジプト軍部に「ピノチェー型軍政」を提言


 右翼的論調で知られる米経済紙ウォールストゥリート・ジャーナル(WSJ)は7月5日、「エジプトクーデター後」と題した無署名論説記事で、「エジプト軍部は、混乱の中から登場し、市場経済を敷き、民政移管に道を開いたチリのピノチェー型軍政を踏襲すればいいのではないか」という趣旨の提言をした。

 これに対し、英ガーディアン紙のNY通信員は、「恐怖政治が望ましいと考える誰かがWSJ紙面を借りて意見を表明した」という趣旨の受け止め方をし、WSJを批判した。

 同通信員は、ピノチェー軍政16年半の間に3200人が殺され、3万人が拷問された事実を指摘し、「これがいいと言うのか」という形で反駁した。

 ピノチェーは1990年3月、好んで民政移管に応じたわけではない。90年代半ばまで政権に居座り続けようとしたが、国民投票で阻まれ、やむなく退陣した。だが、その後も陸軍司令官を辞めず、それを辞めた後は上院議員に収まって、人道犯罪追及を阻止する、極右の防波堤になっていた。

「ガルシア=マルケス・ジャーナリズム賞」創設さる


 コロンビアの「イベロアメリカ新ジャーナリズム財団」(FNPI)はメデジン市で7月8日、「ガブリエル・ガルシア=マルケス(GGM)ジャーナリズム賞」を創設した、と発表した。

 ラ米およびイベリア半島のジャーナリストが書く西葡両語のいずれかによる記事が対象。第1回参加希望者は、7月26日~8月26日にFNPIに申請する。

 時評・ルポルタージュ、ニュース報道、写真報道、新企画、優秀記者特別賞の5部門。賞金は各1万5000ドル。各部門最終選考対象者2人に、それぞれ2500ドル。

 賞金は、FNPI、メデジン市文化局、SURAグループ、バンコロンビアが提供する。

 GGMは、作家になる前はコロンビアで新聞記者を務め、キューバ革命直後には、革命政権の通信社プレンサ・ラティーナで活動した。

 メキシコ市に住むが、痴呆症のため数年前から執筆活動はしていない。

2013年7月8日月曜日

キューバ議長が、ベネズエラなどのスノーデン亡命受入決定を支持


 キューバのラウール・カストロ国家評議会議長は7月7日、国会閉会演説で、エドゥワード・スノーデン氏亡命申請とボリビア大統領機事件に触れ、「ベネズエラおよび域内諸国(ボリビア、ニカラグア)による、思想ゆえに迫害されている者への亡命許可決定を支持する」と述べた。

 議長はまた、同盟国を含む諸国の主権と人権を侵している米政府の盗聴が問題なのに、その本質から注意をそらそうとしている、と米国を非難した。

 さらに、「ニコラース・マドゥーロVEN大統領が指摘したように、ルイス・ポサーダ=カリレスのような輩(やから)に亡命を許すことも、その身柄引渡を拒むこともできない」と述べ、米政府を非難した。

 ポサーダ=カリレスは、反カストロ派の極右キューバ系ベネズエラ人。元CIA工作員で、ラ米最悪のテロリストとして名高い。1976年にキューバ航空旅客機をカリブ海上空で爆破した重大事件の主犯。米当局に匿われて、マイアミに住んでいる。ベネズエラ政府は長年、身柄引渡を要求しているが、米政府は沈黙によって拒否してきた。

 ラウール議長は、ボリビア大統領機の領空通過を拒否した欧州4カ国を非難し、「強国が国際法を侵すのが可能だと意識するならば、我々南の国々はすべて危険に陥ってしまう」と指摘した。

 一方ボリビアのダビー・チョケウアンカ外相は7日、大統領機事件で国際法の有効性を見直さねばならなくなった、と述べた。ワシントンで9日、米州諸国機構(OEA)は特別大使会議を開き、大統領機事件への対応を協議する。同外相は、ボリビアは単なる謝罪だけでなく、真の責任者特定と処罰を求める、と強調した。

 米政府による盗聴はブラジルにも波及した。アントニオ・パトゥリオタ外相は7日、米政府に説明を求めたことを明らかにした。

2013年7月6日土曜日

ベネズエラ大統領がスノーデンに人道的亡命認める


 ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は独立記念日の7月5日、エドゥワード・スノーデン氏に人道的亡命を許可する、と発表した。

 大統領は、「独立国であることを感じられるようにならねばならない」と述べ、決定が主権行為であることを強調した。

 大統領はまた、昨4日ボリビアのコチャバンバで開かれた南米有志国首脳会議で、出席した6カ国大統領同士で、スノーデン問題でラ米として何らかの責任を果たすべきだと話し合ったことを明らかにした。

 スノーデンの身柄はモスクワにあるが、ベネズエラに到着すれば、べネズエラと米国の関係が一挙に先鋭化することは避けられない。

 両国は、大使級外交関係復活を目指し、最近対話を開始したばかりだった。