国連人権・テロリズム問題特別記録官ベン・エマーソンは7月30日サンティアゴ市内の国連ラ米・カリブ経済委員会(CEPAL)本部で記者会見し、チリ政府に対し、「反テロリスト法を廃止するか、適用しないようにすべきだ」と強く呼び掛けた。
記録官は17日からチリで3権代表、警察、教会、人権団体などから先住民族マプーチェの人権状況や土地奪回運動などについて意見を聴取してきた。
これを踏まえた報告書を記録官は来年3月、次期政権発足時に発表するが、この日、3点の予備提言をした。①チリはテロリズムの状況にはなく、反テロリスト法は廃止するか、適用しないようにすべきだ②マプーチェ代表を多く含む「国民諮問委員会」を設立し、マプーチェなど先住民族の権利を憲法で認め、土地回復を促進すべきだ③マプーチェ民族の政治・文化・実践を承認するためILO条約適用を含め広汎な代表制政治を始めるための国家戦略を策定すべきだ――。
反テロリスタ法は、ピノチェー軍事独裁時代の1984年にできた悪法で、1990年代以降、マプーチェの土地奪回運動弾圧のため差別的に応用され、適用されてきた。
エマーソン発言に対し、人権団体は評価しているが、大地主や、それと繋がる利権階層など右翼・保守陣営は反発している。
チリは経済開発では「ラ米一」の優等国とされているが、新自由主義の弊害、ピノチェー軍政下の犯罪未解明、マプーチェ迫害があり、新たな一歩を踏み出せないでいる。