2013年10月31日木曜日

もうひとりのケネディ狙撃者は亡命キューバ人ディアス


 来月(11月22日)は、ジョン・ケネディ米大統領暗殺50周年。このほど米人作家アンソニー・サマーズは、米タブロイド紙ナショナルエンクワイアーに、ケネディを狙撃したリー・オズワルドの他のもう一人の人物を、反カストロ派亡命キューバ人エルミニオ・ディアス(1923~66)だと明らかにした。

 ディアスは、キューバ・カリブ海岸ヒロン浜へのCIA上陸作戦(1961年4月)の失敗をケネディの責任と捉え、ケネディを憎んでいた。

 66年に当時のキューバ大統領オスワルド・ドルティコスを暗殺しようとハバナに上陸を謀り、制圧され死亡した。この時フロリダからキューバに渡るヨットの中で、暗殺作戦の指揮者トニー・クエスタに、ケネディ狙撃を打ち明けた。

 その後、クエスタから複雑な経路を辿って、ディアスの告白はサマーズに届く。既に、暗殺一味は、キューバ革命で利権を失った米国とキューバのマフィア関係者だと大方判明している。今回「もう一人の狙撃者」が特定されたことになる。

 キューバ当局は、狙撃者について、オズワルド、ディアスの他に米人3人がいると見ているようだ。
 
 サマーズは98年に『ノット・イン・ユア・ライフタイム』というケネディ暗殺に関する本を出しており、このほど改訂版に「新事実」を盛り込むことになった。 

メルコスールが電子通信安全確保で機関設置へ


 南部共同市場(メルコスール)は10月30日カラカスで外務・財務相会議を開き、米政府による全世界的な電子通信傍受の実態が明かになったのを受けて、電子通信の安全確保のため常設機関を設置することを決めた。

 会議はまた、域内の情報管理強化で合意した。狙いには、情報の無許可使用を取り締まることが含まれている。

 ラ米統合に向けて広域経済圏設立の意思を確認し、ALBA、カリコム、ペトロカリーベと関係強化のための話し合いを開始する。これも決まった。

 EUとの経済連携交渉については、11月15日カラカスで新たに交渉することが決まった。

 ニコラース・マドゥーロVEN大統領は会議に出席し、12月カラカスでメルコスール首脳会議を開催すると発表した。

 メルコスールとの関係を完全には回復させていないパラグアイは欠席した。だが外相がアスンシオンから会議に電話をかけ挨拶し、友好関係が既に確立しているとを印象付けた。

2013年10月30日水曜日

ロシアがエクアドールに借款供与


 エクアドールのラファエル・コレア大統領は10月29日、モスクワでロシアテレビに対し、「わが国には亡命者を守る主権がある。現在ロシアに居るスノーデン氏がエクアドール領内に入れば、亡命を認める」と述べた。

 この日コレアはプーチン大統領との首脳会談に臨み、さまざまな分野で合意が成った。ロシアがエクアドールの火力発電所建設に2億3000万ドルの借款を供与することや、ロシア企業絡みの協力方針が決まった。

 ロシア鉄道会社は、キトと太平洋岸の4港を結ぶ総延長1800kmの電動鉄道建設のための調査を開始することになった。またロシアの石油関連会社は、エクアドール大陸棚の海底炭田開発について交渉に入ることになった。

 ロシアは、エクアドール軍のトラック、ヘルコプターなど装備買付用に2億ドルの借款を供与したいと申し入れた。エクアドールは、これを受けるかどうか検討することになった。コレア訪露は、09年に続き2度目。

国連総会で188国がキューバ封鎖反対決議に賛成


 国連総会は10月29日、米国によるキューバ経済封鎖に反対し解除を要求する決議案を、賛成188、反対2、棄権3で可決した。193カ国が投票に参加した。

 反対は米国とイスラエル。棄権は米国と自由連合を組むミクロネシア、マーシャル諸島、パラオ。反対が米イスラエルだけになったのが今年の特徴だ。

 決議には拘束力はなく、米国は守らない。1992年以来連続22回、封鎖反対決議は勝利してきたが、その間、米政府はむしろ封鎖を強化してきた。

 キューバのブルーノ・ロドリゲス外相は投票に先立ち総会で演説し、封鎖による実害を説明した。09年以降、米国および諸外国の企業計30社が、キューバおよび他の国々と経済関係を持ったために、米国から総額24億4600万ドルの罰金を科せられたと指摘した。

 米政府は経済封鎖を「経済制裁」と呼ぶ。だがキューバは、「制裁されるべきはキューバに対する侵略や指導者暗殺未遂を繰り返してきた米国であり、キューバに制裁されるいわれはない」との立場だ。

 保守派メディアや歴史を知らないジャーナリストらは、米国に同調し「制裁」を用いている。真に「制裁」であるならば、188カ国が破棄を求めるはずはない。188カ国が一致して求めるものをはねつける米国の傲慢さこそ、まさに制裁されるべきだろう。

2013年10月29日火曜日

関西外語大リレー講座で、キューバとベネズエラを語る


 関西外国語大学という創立60年の大学が大阪府枚方市中宮にある。全学1万3000人の学生のうち1万人が学んでいるという中宮キャンパスは、築10年ちょっとの煉瓦色の建物が並び、黴菌の存在も許されないように思えるほど、輝くばかりに美しい。日本人と、世界各地からの留学生がゆったりと時間を過ごしている。恵まれている。

 10月28日、そこを訪ねた。ラ米関係の様々な主題について、いろいろな専門性を持つ人々が交代で話をする「リレー講座」に招かれ、「クーバとベネズエラ」について90分間話すためだった。

 この企画を運営している桜井悌司教授は、1970年代の一時期、メヒコ市で仕事を通じ知り合っていた。実に40年ぶり近い再会だった。

 また沼田晃一教授は、環境共生学博士で、別名「トマト博士」。ペルーでトマトなど食品を研究し博士号を取った独特な学究である。かつて立教大学ラ米研の受講生だったこともあり、やはり懐かしい再会だった。

 私は一時間話し、30分を質疑応答に割いた。現役学生が何人も真面目に質問してくれたのが、嬉しかった。若いラ米学徒が少しずつ着実に育っている。そんな印象を受けた。年配の市民も質問してくれた。

 枚方を「ひらかた」と読むのは、関西では異邦人である私には難しい。枚数を数えるのは紙や葉っぱなど平たいものだから、きっと、由来はそれだろう。京都駅から近鉄で丹波橋駅に行き、乗り換えた京阪電鉄で、あてずっぽうでそんなことを考えていたら、すぐに枚方駅に到着してしまった。

 教授連によると、枚方は広重時代の東海道の宿場町で、東海道が走っている。その洒落た道をしばし歩いて、ワイン酒場で小宴が催された。

 その席で、29日は先斗町だけ行って東京に帰りたいと伝えたら、京都出身の教授らから「辿るべき道」を教えられた。電車を清水五条で降り、清水寺、高台寺、八坂神社と歩いて先斗町に行くべきだと忠言されたのだ。一級ホテル並みの大学来賓宿泊所で眠った。

 清水寺は中学と高校の修学旅行で訪れた。今回は以来、実に五十数年ぶりの訪問だった。あの印象深い「清水の舞台」に半世紀ぶりに身を置いた。幾ばくかの感慨があった。先の豪雨で斜面の何か所かで土砂崩れが起き、青い覆いが痛々しかった。

 修学旅行の児童生徒が圧倒的に多かった。次に目立ったのが欧米人と中国人だった。中国人には、男女とも日本の着物を着て京都を観光するのが人気らしい。そのような姿の彼らがたくさんいた。次に目に着いたのは、韓国人ではなく、ヴィエトゥナム人だった。経済の隆盛を反映するようだ。

 聖徳太子が建立したという八坂の塔を見たあと、たまたま遭遇した「霊山歴史館」を見た。幕末の内戦をテーマにしたムセオだ。大味だった。近くの護国神社には坂本竜馬の墓がある。ここはパスした。

 高台寺を経て知恩院の入り口で戻り、八坂神社を見て、祇園を歩く。祇園とは八坂神社の別名だが、門前町が祇園と呼ばれるようになっている。南座前から鴨川を渡って、右に折れた路地が先斗町だ。

残念だった。五十数年前の面影はなかった。現代化され、瓦の庇が両側から低く突き出す小路ではなくなっていた。あの時は高校生だったから呑めなかった酒を飲もうと、好い店を探したが、気に入る店はなかった。無論、ちょっと見の旅で好い店などは簡単には見つからない。

 鴨川を眺めつつ食べる店は値が張る。「かにかくに祇園恋し??時も、枕の下を水の流るる」。歌人吉井勇だったか、歌がかすかに甦って来た。「??時」は「祈る時」か「思う時」か、あるいは別の言葉だったか、定かでない。ある一軒で食べて、軽く呑んだ。

 既に5時間近くほっつき歩いていた。くたびれて四条通でバスに乗り、京都駅に直行した。数分後に大阪から来た超特急に乗って東京に戻った。「のぞみ」などという電車は、ただ突っ走っているだけだ。時間を高く乗客に売りつけている。あれは旅ではなく、単なる大急ぎの移動にすぎない。飛行機の離陸直前の速度で、地上滑走をしている。早いが、心がくたびれる。

 新鮮だったのは、大阪ではエスカレーターは右の列が乗ったまま動かない人、左側が急ぐ人。関東と逆だ。ところが京都は関東と同じ。大阪人の特質のようなものがあるのだろうか。もう一つ、これは耳に残るのだが、大阪弁と京都弁が関東標準語に押されているような感じを受けたこと。テレビの影響もあるだろう。両地方語の主権は弱まってしまったのか。

2013年10月27日日曜日

キューバ社会主義の定義が必要、と大使が指摘


 台風には心があった。立教大学ラ米研主催の駐日キューバ大使講演会は10月26日午後、予定通り開かれ、3時間余りに亘って熱弁が展開された。大教室が聴衆で埋まった。

 マルコス・ロドリゲス大使は、キューバ史およびの今日の内政と外交について、山中道子さんの通訳を交えて一時間講演し、司会・伊高との質疑応答30分を経て、会場との70分間の質疑応答に臨んだ。

 キューバ今日の最大の問題は経済と指摘し、そのための解決策を講じていることに繰り返し触れた。社会主義を維持することを絶対的な前提としながらも、キューバの歴史、特質、主権、独立に根差す独自の社会主義を達成目標として明確に定義すべきだ、と述べた。

 これは、明確な目標なしに試行錯誤をしている、との現状についての見方を示したと受け取れないこともなく、極めて興味深い。

 会場からは率直な質問が数多くなされた。大使はすべての質問にユーモアをちりばめながら誠実に答えた。

 終わりに、会場にいたキューバ季刊誌テマスのラファエル・エルナンデス編集長が感想を述べ、「大使という立場上ぎりぎりのところまで進んで発言した」と、大使発言を評価した。

ジャマイカでCELACとALBAのエネルギー相会議開催


 ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)の第2回エネルギー担当相会議が10月24~26日、ジャマイカの保養地モンテゴベイで開かれ、域内エネルギー協力強化で合意した。同時に、ALBAエネルギー担当相会議も開かれた。

 記者会見で、ペトロカリーベ(カリブ連帯石油機構)の盟主ベネスエラのラファエル・ラミーレス石油相は、「ベネスエラはペトロカリーベ加盟国に、これまでに総量2億3200万バレルの原油を供給した。これは同加盟諸国の内需の48%に相当する」と述べた。ベネスエラと加盟諸国は計14の合弁石油企業を設立した、とも語った。

 また「米国は日量2000万バレルの原油を消費するが、カリブ諸国の消費は日量計1万バレルに満たない」と指摘した。

 「ALBA、ペトロカリーベ、CELAC、ウナスールは加盟国が平等で、全球化世界にあって我々の利益を守っている」と述べ、特に「ALBAは地域統合の前衛だ」と強調した。

 ALBA会議にはスリナムとセントルシアが招待出席した。またハイチ、イラン、シリアがオブザーバー出席した。

2013年10月25日金曜日

駐日キューバ大使講演会は予定通り実施へ


 本日10月26日午後の駐日キューバ大使講演会は予定通り実施します。主催者の立教大学ラテンアメリカ研究所が25日午後、決めました。先着170人ですから、早めにお出かけください。

 今後も、同研究所HP、ブログ、および当ブログを適宜参照願います。

明日26日はキューバ大使講演会、台風よ驕るなかれ


 明日10月26日(土)は、駐日キューバ大使講演会の日だ。台風襲来で中止にならないことを切に期待する。

 立教大学池袋キャンパス「マキムホール」3階M302教室で1500~1800。

 立教大学ラテンアメリカ研究所主催、講師:マルコス・ロドリゲス大使、演題:現代キューバ情勢、通訳:山中道子、司会:伊高浩昭。質疑応答時間80分。

 先着170人。予約不要、無料。

2013年10月24日木曜日

ベネズエラで故チャベス大統領への「忠誠の日」制定へ


 ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は10月23日、今年3月死去したウーゴ・チャベス大統領への「忠誠の日」を制定すると明らかにした。

 去年12月8日、チャベスは死を覚悟して腰部癌の手術を受けるためハバナに行くことを決断した。この日を「チャベスへの忠誠の日」として近く政令で制定するという。

 今年のこの日は統一市長・市会議員選挙で、与野党間の激戦となることが予想される。4月の大統領選挙で辛くも勝ち就任したマドゥーロにとっては、一種の「信任投票」の意味をもつため、負けられない。

 「忠誠の日」制定には、選挙に向けて旧チャベス支持派を結集させる狙いがあるのは疑いない。   

2013年10月23日水曜日

キューバが通貨一本化行程表実施へ


 キューバ閣僚評議会は、通貨ペソ(CUP)と兌換ペソ(CUC)を一本化(二重通貨制度廃止)するための行程表を実施に移すことで合意した。共産党機関紙グランマが10月22日発表した。

 二重通貨制度は、ソ連消滅後の1993年の外貨自由化に伴い94年正式に導入され、現在1CUC=1米ドル=25CUP。米ドルなど外貨収入のある者には都合がいいが、外貨収入のない貧しい人々には二重通貨制度が生む二重価格制度は厳しい。平均月収が500CUP(20ドル)にすぎないからだ。

 通貨統一は「通貨ペソの貨幣価値を復活させるのが主眼」とされ、まず法的整備、電能機器のデータ整備をする準備期間を置く。次いで法人から先に実施するという。

 二重通貨制度は貧富格差を招き、90年代から問題化してきた。ラウール・カストロ政権は2011年4月の第6回党大会で正式に一本化方針を決めた。ラウール議長は今年7月の国会演説でも一本化の必要性を強調していた。

 一本化には、生産強化による輸出拡大でCUPを強くすることが不可欠だ。政治的なCUC切り下げなどで差を縮めるとすれば、実勢を反映しなくなり、かえって問題が深刻化することになる。

2013年10月22日火曜日

リオ沖のブラジル最大油田の開発に中国2社参加


 リオデジャネイロ沖183kmにある、埋蔵量がブラジル最大の海底油田リブラの開発権を10月21日、国営ペトロブラスを中心とする企業連合が落札した。

 参加したのはペトロブラス(40%出資)、仏トータル(20%)、英蘭シェル(同)、中国CNOOC(10%)・CNPC(同)。西レプソール社連合は敗れた。

 2019年生産開始、最大日量140万バレル。現在の伯日量は210万b。

 リブラ油田から向こう35年間に80~120億bが生産される見込み。リブラ関連の伯国家収入は35年間に総額4545億ドル。生産される原油の41・65%は政府に引渡される。

 市民には「石油資源の国際的民営化だ」との反発があり、この日、抗議行動に出た。入札は厳戒態勢の下で行なわれた。

マリオ・バルガス=ジョサが「電子本は文学を浅薄にする」と書籍防衛を表明


 パナマ市で10月20日、国際スペイン語会議(CILE)の第6回会議が23日までの日程で開かれた。作家、言語学者ら200人が参加している。

 ペルーのノーベル賞作家マリオ・バルガス=ジョサ(MVLL)は21日講演し、「電子画面は理解を標準化し、文学を浅薄なものにする」と指摘し、従来の紙製の書籍が消滅するのを防止するため全力で闘う、と述べた。

 チリのアントニオ・スカールメタ、ニカラグアのセルヒオ・ラミーレスらも参加している。スカールメタは『ネルーダの郵便配達夫』などで知られる。

 今会議はバルボアの「南の海(太平洋)」到達500周年を記念してパナマで開かれた。会議の標語も「本における西語-大西洋から南の海へ」。

 この会議は1997年墨サカテカスで第1回が開かれた。以後2001年西バジャドリー、04年亜ロサリオ、07年COLカルタヘーナ、10年智バルパライソで開かれてきた。

2013年10月21日月曜日

在日ブラジル人若者の生態描くルポを「サイゾー」誌掲載


 「サイゾー」という見慣れない、初めて存在を知った月刊誌らしい雑誌が届いた。中身を調べると、知り合いの書き手、中矢俊一郎がルポルタージュを書いていた。

 「ブラジル人の売人はイラン人からシャブを仕入れる!?」「生活保護、低学歴、薬物汚染。。。。。。」「帰国しなかった在日ブラジル人の闇」という題が付いている。

 「リーマンショックの後、困窮する在日ブラジル人の姿がテレビニュースで伝えられた。在日ブラジル人は20年以上も前から増え、その存在がクロズアップされていた。では今、ブラジル人たちはどんな仕事や生活をしているのか」

 この説明に続いて、愛知県豊田市にある保見団地での取材記が展開される。特にブラジル人の若者の生態が赤裸々に綴られている。好ルポであり、一読をお勧めしたい。

ウルグアイが来年後半、合法大麻販売へ


 ウルグアイ国家麻薬会議(JND)は10月20日、大麻合法化法案が上院を通過すれば、来年後半から大麻を販売することができるようになるとの展望を明らかにした。

 同法案は7月30日、下院本会議を通過している。

 販売方針は策定中だが、大麻1グラム(紙巻き3本分)=1米ドルを想定している。合法化は麻薬密売掃討策の一環であるため、密売価格よりも安く設定される。

 一人ひと月40グラムまで買えることになるもよう。買う者は、氏名を資料情報銀行(データバンク)に登録することが義務付けられる。その名簿は公表されない。

2013年10月20日日曜日

パナマでのイベロアメリカ首脳会議が隔年開催を決める


 第23回イベロアメリカ首脳会議が10月18、19両日パナマ市で開かれた。仏系ハイチを除くラ米19カ国と西葡アンドーラのイベリア半島3国の22カ国で構成する会議だが、半数の11カ国の首脳が欠席し、会議の形骸化と衰退を印象づけた。

 会議はまさに、存亡の危機にどう対応するかが中心議題だった。採択された共同声明「パナマ宣言」に、①来年の第24回会議を墨ベラクルス市で開催②第25回は2年後に開催③その間の年にはラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)・欧州連合(EU)首脳会議をもって代替――が打開策として盛り込まれた。

 CELAC・EU首脳会議がある今、ラ米はEUの窓口としての西葡両国を必要としなくなった。また同両国の経済破綻による影響力の低下もラ米側判断に影響を及ぼしている。会議の盟主スペインは会議事務局経費の6割を負担してきたが、今後は見直される可能性がある。

 会議では、イベロアメリカ首脳会議と、CELAC、ウナスール、ALBA、OEAの米州首脳会議など他に13ある域内首脳会議との統合可能性についても話し合われた。

 会議は宣言の他に行動計画と決議を採択した。決議には、ハバナでのコロンビア和平交渉支持、キューバに対する米経済封鎖の解除要求支持、亜国のマルビーナス諸島領有権の主張支持が含まれている。

 今会議に南米10カ国のうちコロンビアとパラグアイを除く8カ国の大統領が欠席した。中米のニカラグア、グアテマラ両国大統領、キューバ国家評議会議長も欠席した。過去22回のすべてに出席したスペイン国王フアン=カルロスは、腰部の手術後間もないため欠席した。 

2013年10月19日土曜日

LATINA誌がフジモリ政権期の国家犯罪分析ルポを掲載


◎月刊LATINA誌11月号(10月20日発売)の伊高浩昭執筆記事

連載企画「ラ米乱反射」第93回:「リマ旧市街に残る国家テロ惨劇の傷跡-報道と法律で追及し続ける2人の正統的人間」――今年2月の現地取材を基に、フジモリ政権時代の国家犯罪を分析した。最近フジモリ受刑囚が法廷に姿を現して話題になった新聞買収事件「ディアリオス・チチャ」も出てくる。

書評:エドゥウージ・ダンティカ著『地震以前の私たち、地震以後の私たち』(佐川愛子訳、作品社) ダンティカの12の珠玉の文章が載っている。2010年1月12日の大震災以降のハイチの状況をえぐる。

マーク・アダムス著『マチュピチュ探検記』(森夏樹訳、青土社)――インカ滅亡期、ハイラム・ビンガムの到達期、著者によるビンガム追体験記の3重構造。

2013年10月18日金曜日

ボリビアが「国民尊厳の日」を制定


 ボリビアのエボ・モラレス大統領は10月17日、政令を施行し、この日を「国民尊厳の日」に制定した。

 10年前の2003年のこの日、当時のゴンサロ・サンチェス=デ・ロサーダ大統領が反政府行動を弾圧し、60人を超える死者と負傷者約500人が出た。大統領はヘリコプターで国外に脱出し、その後、米国に亡命した。

 サンチェスは、この国の最大の輸出品である天然ガスを、内需より対米輸出を優先させる輸出政策を実施しようとして、激しい反対に遭った。

 モラレスはサンチェスの身柄引き渡しを繰り返し要求してきたが、ブッシュ息子、オバーマ両政権は拒否してきた。

非常任理事国に当選したチリの大統領が安保理改革訴える


 チリは10月17日、国連総会での安保理非常任理事国選挙ラ米枠で当選した。来年元日からグアテマラに代わって2年間務める。賛成186、反対0、棄権5だった。

 セバスティアン・ピニェーラ大統領は同日サンティアゴで演説し、安保理改革の必要性をあらためて訴えた。その骨子は、安保理常任理事国を、日独伯印およびアフリカ代表1カ国を加えて計10カ国とし、現在の常任理事国が持つ拒否権を廃止すること。

 大統領は、改革の理由に触れ、「国際情勢の変化に適合させなければならない」と強調した。

2013年10月17日木曜日

駐日キューバ大使講演会のお知らせ


主催 立教大学ラテンアメリカ研究所

講師 マルコス・ロドリゲス駐日キューバ大使

演題 現代キューバ情勢(仮題)

通訳 山中道子(大使秘書)

司会 伊高浩昭(ジャーナリスト)

日時 10月26日午後3時から6時まで

場所 立教大学池袋キャンパス「マキムホール」M302教室

次第 講演約1時間、大使と伊高の補足的質疑応答、会場との質疑応答約80分

条件 入場無料、予約不要、先着170人

2013年10月16日水曜日

メキシコの貧困率は45・5%、5319万人


 メキシコ統計庁は10月15日、同国の貧困率は2010~12年に46・1%から45・5%に減ったと発表した。困窮率(極貧率)も13%から11・5%に下がった。

 困窮者は南部を中心に10州に74・7%が集中している。最貧州チアパスでは、困窮率が平均を2・6ポイント上回る14・1%。

 社会保障制度加入者は、60・7%から61・2%に増えた。

 メキシコの2012年の人口は1億1690万人。貧困者は5319万人となる。

2013年10月15日火曜日

若者が活躍した大盛況のLATINA「東京タンゴ祭」


 日本人のタンゴ楽団が9組、東京・有楽町の読売ホールに10月14日集い、計34曲を披露した。この「LATINA」社主催の「東京タンゴ祭2013」は、8月に亡くなった藤沢嵐子に捧げられた。

 開演時に、その旨を伝える字幕が流れたが、誰一人拍手しなかった。これは日本人のまずいところだ。誰かが「拍手してください」と言うと、拍手する。主体的に人間性を表現する判断力に欠けるのだ。これは残念だった。

 祭は豪華だった。バイラリネス(踊り手)と歌手を含め総勢60人が出演した。在日亜国人のギタリストが一人混じっていた。仮想のブエノスイアレス(BsAs)を3時間満喫した。

 有楽町の駅を降りると、老人たちが群をなして一方向に歩いていた。これだな、と思いついて行くと、まさしく会場のある建物の入り口に到達できた。「タンゴファン=高齢者」の図式はまずは間違いない。戦後日本のタンゴ隆盛期に青少年だった人々だ。かく言う私も例外ではないのだが、私など若造の方だ。

 1200人入るホールは満員で、老人の塊だった。これから聴くのは鎮魂曲ではない。だがタンゴというジャンルがそっくりレクイエムであってもおかしくないし、いいではないか。

 そんな私の気持は、最初に登場した早稲田オルケスタの学生9人の若さによって吹き飛ばされた。奏者たちがこれほど若ければ、タンゴにも未来があると思ったからだ。他の楽団にも若さがあった。

 もう一つ、演者の4割方は女性だった。これも希望だ。BsAsには女性だけのタンゴオルケスタはあっても、男女混合のオルケスタには滅多に御目にかかれない。ところが出演した9組はすべて混合だった。素晴らしいことだ。

 全体的に、アストル・ピアソーラの影響が見られた、でなく、聴かれた。だから最後に登場した「西塔祐三とオルケスタティピカ・パンパ」が演奏したフアン・ダリエンソ流の伝統タンゴはむしろ「新鮮」だった。

 ペニウルティモ(最後の直前)の京谷弘司のバンドネオンもよかった。「タンゴの4つの心」=ピアノ、ビオリン、ビオロン(コントラバス)、バンドネオン=を代表するクアトロ(4人組)だった。

 藤沢嵐子の全盛期のオルケスタで演奏した経験を持つのは、西塔と京谷ぐらいという。

 私の立教大学ラ米研講座の受講生だった鎌田剛(ビオロン)が率いる「ロス・ポジートス」もよかった。名前を「ポジート(ひよこ)」から「ガージョ(雄鶏)」か「ガジーナ(雌鶏)」に換えてもいい時期ではないか。

 この「祭」は4回目だった。来年の秋、5回目がある。若い人たちが聴衆席にも増えるのを期待する。

 苦言を呈すれば、ほとんどの楽団が演奏開始の掛け声を「ワン、トゥー、スリー、フォー」と英語でやっていたことだ。ジャズではない。興ざめだった。「ウノ、ドス、トゥレス、クアトロ」と西語でやるべきだろう。英語で合図するなら、むしろ「イチ、ニ、サン、シ」とやる方がいい。英語でやっている間は、本物ではない。

2013年10月14日月曜日

アルゼンチン大統領が退院、30日間静養へ


 亜国のクリスティーナ・フェルナンデス=デ・キルチネル大統領(60)は10月13日退院し、郊外のブエノスイアレス州内にあるオリーボス公邸に帰った。

 大統領は8日ブエノスイアレス市内の病院で、脳腫瘍の除去手術を受けた。向こう30日間の静養に入った。

2013年10月13日日曜日

先住民族会議がラ米大陸を「アブヤ・ヤラ」と呼ぶことを決議


 コロンブス米州到着記念日の10月12日、この日を2011年から「非植民地化の日」と呼んでいるボリビアのラパスで3日間の第1回「非植民地化・反差別・反人種差別闘争サミット」が終わり、ラ米大陸をパナマ・コロンビアのクナ民族の言葉「アブヤ・ヤラ」と呼ぶためにこの言葉を復活させることを決議した。

 この日を「ラ米大陸非植民地化の日」と呼ぶこと、そのための運動の本部をボリビアに置くことも決めた。

 会議にはボリビア、エクアドール、ペルー、アルヘンティーナ、チレ、コロンビア、ベネズエラ、グアテマラ、メヒコおよび、コンゴの先住民代表が参加した。

 一方、この日を「先住民族抵抗の日」と呼ぶベネスエラでは、ボリーバル州内でメルコスール加盟国先住民族会議が開かれた。ラ米統合への先住民族の参加、各国先住民族同士の協力強化、新自由主義経済政策糾弾などを決議した。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は、この日を「国家の日」として祝っている西国を、「米州先住民族ら1億人が虐殺された米州ホロコーストの始まった日を祝うとは何事だ」と、怒りを表明した。

 チレでは先住民族マプーチェ700人が、マプーチェ政治囚解放、悪法「反テロリスタ法」廃止を掲げて首都を行進した。

 ブエノスイアレスでは、ボリビアの聖母コパカバーナを讃えるため、在亜ボリビア人らが民俗舞踊を踊りながら行進した。

 クーバでは、民族学、歴史社会文化の研究誌「デル・カリーベ」(カリブ海から)の創刊30周年を記念する行事が催された。

2013年10月12日土曜日

ベネズエラ大統領がパラグアイとの国交正常化を確認

 ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は10月11日、パラグアイとの国交正常化が9日実現したことを祝福し、良好な2国間関係が始まると述べた。

 キューバも11日、パラグアイ駐在の新大使がアスンシオンで、オラシオ・カルテス大統領に信任状を提出した。

2013年10月11日金曜日

黒沼ユリ子演奏会に「津波ヴァイオリン」登場へ


 メキシコ在住半世紀のヴァイオリニスト、黒沼ユリ子が来年1月17日(金)夜、東京都千代田区の紀尾井ホールで演奏会を開く。

 曲目はドヴォルジャーク「ユーモレスク」、ヘンデル「ソナタ第4番」、フランク「ソナタ イ長調」、マルティヌー「セレナーデ第2番」、ポンセ「二重奏ソナタ」、清瀬保二「レント」、スメタナ「故郷より」。

 マルティヌーとポンセの演奏には、東日本大震災時の津波による流木から中澤宗幸が作った「津波ヴァイオリン」と「津波ヴィオラ」が使われる。

 ピアノはメキシコ人ラファエル・ゲラ。ヴィオラの岩本憲子、ヴァイオリンの波多野せい、も出演する。問い合わせは、アーツ・アイランド03-6914-0353。

【私は1967年にメキシコ市を取材拠点とした時からユリ子さんの演奏を聴き、東京に戻ってからも何度か取材してきた。数歳年長のお姉さんだ。ユリ子さんの姉俊子さんにも、東京でのアントニオ・ガデス取材などでお世話になった。】

2013年10月10日木曜日

『マチュピチュ探検記』を読む


 『マチュピチュ探検記』(マーク・アダムス著、森夏樹訳、青土社)を読んだ。下らない比喩が多すぎる軽い文章に辟易とさせられた。だが書評を書くため、読了せねばならなかった。

 内容は、16世紀のインカ滅亡時の経過、20世紀初めのハイラム・ビンガムのマチュピチュ到達に至る探検の様子、100年後の著者によるビンガム探検の追体験、の3者が同時並行的に書かれていて、相互に往還する。この構成は悪くない。

 著者の文章がもう少し真面目だったならば、と言っても仕方ない。駄弁、戯言が多く、ペルー社会の観察が疎かになっている。

パラグアイとベネズエラが関係正常化で前進


 ベネズエラとパラグアイは10月9日アスンシオンで外相同士が会談し、関係正常化に向けて前進した。

 会談後の記者会見で、エラディオ・ロアイサPAR外相は、「ベネズエラ外相の来訪は、関係早期正常化を求める両国意思の表れだ」、「エネルギー、食糧分野での相互補完的通商関係の再開のため、近くPAR財界使節団がベネズエラを訪問する」と述べた。

エリーアス・ハウーアVEN外相は、「直ちに大使を相互に任命すべく提案した」、「両国がメルコスールに加盟している状態が南米にとって望ましい」と語った。

 パラグアイは去年6月「国会クーデター」で当時のフェルナンド・ルーゴ大統領を追放した。これに当時のニコラース・マドゥーロVEN外相(現大統領)がアスンシオンで異議を唱えるなどしたため、パラグアイ暫定政権は内政干渉として、国交凍結に踏み切った。

 メルコスールは、パラグアイを「民主制度が中断した」として加盟資格を停止させ、一方でベネズエラの加盟を認めた。保守・右翼が多数を占めるパラグアイ国会は、当時のチャベスVEN政権を嫌い、VEN加盟を認めるメルコスール条約改正条項の批准をせず、現在も批准していない。

 だがベネズエラは現在、メルコスールの輪番制議長国であり、パラグアイも無視できなくなっている。また、メルコスール復帰が遅れれば、PAR経済への打撃が膨らむ。

 8月15日オラシオ・カルテスPAR大統領が就任し、同月末スリナムでマドゥーロ大統領と会談し、双方は関係正常化で大筋合意した。

 ハウーア外相は9日VENメディアに対し、今外相会談との関連で両大統領が電話会談した、と明かにしている。

2013年10月9日水曜日

ティティカカ湖ボリビア水域で陶器など2000点見つかる


 ティティカカ湖のボリビア水域湖底から、500~1500年前のティウアナコ文明とインカ文明の金銀片、土器など約2000点が見つかった。

 ブリュッセル自由大学調査団が、ボリビア文化省の後援により8月初めから発掘調査を続けてきた。同大学の考古学者クリストフ・ドゥラエルが10月8日ラパスで発掘の成果を発表した。金銀細工、陶器、彫刻入り石片、骨、繊維、錨などが出た。 

 発表の場に出ていたエボ・モラレス大統領は、パブロ・グロー文化相に、欧米に持ち去られた文化財の奪回に着手するよう命じた。

アルゼンチン大統領、脳腫瘍除去手術に成功


 アルゼンチンのクリスティーナ・フェルナンデス=デ・キルチネル大統領(60)は10月8日、ブエノスアイレスの病院で右脳にできた腫瘍の除去手術を受けた。政府は、手術は成功裏に終わった、と発表した。

 大統領は8月半ば頭部の異常を訴え、精密検査を受けていた。政府は5日、1ヶ月間の静養が必要と発表したが、6日、手術を受けることを明らかにしていた。

 亜国では今月27日、国会議員選挙が実施されるが、大統領は応援ができなくなった。勢いが下降しているペロン主義与党、正義党キルチネル派に同情票がある程度集まるとの見方が出ている。

2013年10月8日火曜日

ブラジルがカナダ政府に電子スパイ事件で質す


 ブラジル政府は10月7日、カナダ大使を外務省に呼び、カナダ電子メディア監視局がブラジル鉱山エネルギー省と国営ペトロブラス社を電子スパイしていたとの報道を受けて事実関係を質した。

 ブラジルのグロボテレビは、エドゥワード・スノーデン氏の暴露情報を基に取材し、カナダ当局による電子スパイの事実があったと6日伝えていた。

 ヂウマ・ルセフ大統領は7日、米国とその同盟国に対し、スパイ行為を止めるよう要求した。

2013年10月6日日曜日

マエストロ竹田邦夫メキシコ彫銀展、10月18~20日に中野区で


毎年9~10月、渡り鳥のようにメキシコ市からやって来る彫銀師、竹田邦夫(65)が9月6日、東京・恵比寿の「ギャラリー・まある」での彫銀展を終えた。1年ぶりに再会し、1時間語り合った。彼はテキーラではなく、ブラジル産の砂糖黍製焼酎カシャーサをウーロン茶で割って飲んでいた。
 
 
ことし7月でメキシコ在住40年を記録した竹田は今では、メキシコで押しも押されもしない銀細工のマエストロだ。

彼のメキシコの血と、遠い日本の記憶が刻む小さな銀の造形群は、男女を超えて誰もが衣服に付けたくなる。誰もが首、胸、腕、指に飾りたくなる。

竹田は、これから名古屋市で個展を開く。故郷が瀬戸市だから、地元である。これが終わると再度東京で個展(展示即売会)をする。中野区上高田3-15-2(電話5343-1842)の「土日画廊」で、10月18~20日の3日間だ。

最寄り駅は、西武新宿線の新井薬師前駅である。その後はまた愛知県に戻って長手久で個展を開き、終わればメキシコに帰る。

日本人の延長線上にあってメキシコ人として生きるマエストロ竹田の作品をぜひとも味わってほしい。 

キューバ議長がヴォ・グエン・ジアプ将軍に哀悼の辞


 キューバのラウール・カストロ国家評議会議長は10月5日、ヴィエトゥナムのヴォ・グエン・ジアプ将軍(102)が4日死去したのを受け、「我々の革命軍は、将軍がキューバ軍に対し、評価しきれないほど多大な貢献をしたことを忘れない」という哀悼の言葉を述べた。

 ジアプ将軍の著作集『人民の戦争・人民の軍隊』は、キューバ革命戦争を戦い勝利したフィデル・カストロ前議長、故エルネスト・チェ・ゲバーラらに戦略・戦術両面で影響を与えた。

2013年10月5日土曜日

ハイチ人女流作家エドゥウージ・ダンティカの新訳書を読む


 エドゥウージ・ダンティカの2011年の評論集『地震以前の私たち、地震以後の私たち-それぞれの記憶よ、語れ』(佐川愛子訳、作品社、今年8月刊行)を読んだ。

 2010年1月12日の大震災でハイチは激変した。邦題は、そこに焦点を当てている。だが原題は「危険を冒して創作せよ」である。その意味は、本書を読んで確認してほしい。

 ハイチを離れ米国に移住したダンティカは、故国ハイチを描き続けてきた。この作風は終生変わらないだろう。一度、彼女の文章に触れたら、それから離れるのは難しい。

 ラ米で「レアリズモ・マヒコ」(魔術的リアリズム)が20世紀半ばごろから小説に使われてきた。だがハイチはすべてが魔術的であって、それを気負うことなく書き綴るダンティカの文章はレアリズモ・マヒコを超越した不思議なリアリズムがある。

 書評を書いたため、内容には触れない。強調したいのは、彼女の書く文章が極めて人間的であることだ。だから心にしみる。大事なのは、彼女が「美談」を書かないこと。本書を読むことを万人にお薦めしたい。 

2013年10月4日金曜日

ALBA首脳会議成立せず、ボリビア・エクアドール会談に


 コチャバンバで10月3日、ボリビアのエボ・モラレス、エクアドールのラファエル・コレア両大統領が会談した。当初、米州ボリバリアーナ同盟(ALBA=アルバ、加盟9カ国)の特別首脳会議として設定されたが、両大統領以外に首脳の出席はなく、事実上、両国首脳会談になった。

 ALBAの盟主ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は出席を予定していたが、風邪をひいたためカラカス出発を見合わせた。ラ米で首脳会議が多すぎることや、議題が政治的でありすぎることに加え、今会議が9月末に突然決まったことから、首脳の欠席が多くなった。

 両首脳は会談後の記者会見で、「米国が国連加盟国首脳の米国入国の安全を保障しないのであれば、国連本部を移転させることを考慮すべきだ」、「米州人権裁判所が米国の牛耳る米州諸国機構(OEA)に従属するかぎり、脱退もありうる」と警告した。

 コレアは、「ラ米統合の勢いが衰えている今、保守勢力の反撃がラ米で著しい」、「太平洋同盟(AP、ラ米太平洋沿岸4大国加盟)はラ米市民社会の統合でなく、消費者増大のための巨大市場結成を目指している」と指摘した。

 コレアと、エクアドールのリカルド・パティーニョ外相は、昼食会でエル・チェ(チェ・ゲバーラ)を讃える歌「アスタ・シエンプレ、コマンダンテ」を合唱した。エル・チェの46回目の命日が9日に迫っているのに因んだ。エル・チェが処刑されたラ・イゲーラ村では7~10日、記念行事が催される。

 両大統領は、コチャバンバ郊外に広がるコカ葉栽培地のサッカー場で開かれた人民集会にも参加した。

2013年10月3日木曜日

米州人権委がエル・サルバドールに人道犯罪捜査呼び掛け


 米州人権委員会(CIDH)は10月2日、エル・サルバドール政府に対し、内戦中(1980~92年)の人道犯罪を捜査するよう要請した。

 同国では1993年、和平に際し「和平堅固化のための一般恩赦法」が制定され、これが人道犯罪捜査の障害になってきた。CIDHは、同法は捜査の障害にならないとの認識を持つべきだ、と政府に呼び掛けている。

 国内では9月20日、人権団体などが最高裁に同法を見直すよう告訴している。最高裁は審理を開始するかどうかを検討していた。

 内戦では7万5000人が殺され、7000人が不明(遺体なき殺人)となった。その大多数は、政府軍、警察、極右組織によって殺された。

2013年10月2日水曜日

米政府がベネズエラ臨時代理大使ら3人を追放


 米政府は10月1日、ワシントン駐在のベネズエラ臨時代理大使カリスト・ガルシア氏および大使館員一人と、ヒューストン駐在総領事の計3人に対し、48時間以内に出国するよう通告した。

 これはベネズエラ政府が9月30日に、臨時代理大使ら米大使館員3人を追放したことへの報復措置。