2017年6月1日木曜日

 米州諸国機構(OEA)外相会議は主権尊重派が動き、「ベネズエラ糾弾決議」に失敗。デルシー外相は21日のメキシコでの外相会議出席へ▼ベネズエラが国連・非植民地化委員会委員長国に選出さる▼制憲議会(ANC)議員選挙立候補登録始まる。

 ベネスエラへの介入を容易にする決議採択を目論んでいた米州諸国機構(OEA)の保守・右翼諸国は、5月31日ワシントンでの特別外相会議で、親ベネスエラ諸国の反逆により決議ができず、失敗した。デルシー・ロドリゲスVEN外相はカラカスで、「国際規範に則った倫理的なALBA(米州ボリバリアーナ同盟)とカリコム(カリブ共同体)の声が、ベネスエラ介入を目論む勢力を制した」と、会議結果を評価した。

 OEAには米州35カ国のうち社会主義クーバを除く34カ国が加盟。うちベネスエラは4月末、脱退を表明、今会議に欠席したが、脱退手続きには2年かかり、加盟資格は19年4月ごろまで続く。

 今回出席国が33カ国で、重要決議には3分の2の23カ国の賛成が必要。米加墨のTLCAN(NAFTA)3国、亜伯秘コロンビアなど計14カ国の「G14」(反ベネスエラ14カ国グループ)は、今会議前に23カ国の賛成を固める多数派工作に失敗。その結果、「唯一の合意は<合意がなかったこと>」(デルシー外相)という惨敗に終わった。

 会議を主導したのは、カリコム諸国を代表するバハマのダレン・ヘイフィールド外相だった。「カリコムは、ベネスエラの問題はベネスエラが解決すべきだ、という立場だ。OEAは介入すべきではない」と「G14」との立場の違いを強調。「全加盟国が基本的にベネスエラでの対話と和解を求めているのは確かなので、同国内の緊張緩和を促しつつ合意を形成すればいい」と主張。

 これにG14が賛成。会議は4時間余り討議した後、決議なしの流会となった。OEAは6月19~21日、墨カンクンで第47回外相会議を開くが、その前にOEA大使会議で引き続きベネスエラ問題を話し合うことになった。

 デルシー外相は、「ニコラース・マドゥーロ大統領の指示により、カンクン外相会議にはベネスエラ防衛のため出席する」と明らかにした。カンクン会議の前哨戦は既に始まっている。

 今会議でルイス・ビデガライ墨外相は、マドゥーロ政権が進めている制憲議会(ANC)開設過程に反対し、街頭暴動教唆罪などで服役している刑事犯の政治家を「政治囚」と呼び釈放を求めた。これに対しデルシーは、「ビデガライは、失敗国家メヒコを覇権主義国家(米国)の庇護の下に置くべく発言した。墨政府はラ米人民を攻撃し、自国人民をも蹂躙している」と糾弾。

 さらに、「メヒコは麻薬組織の犯罪、相次ぐジャーナリスト殺害、その他の社会的暴力で、世界一危険な国の一つだ。またラ米域内で不平等が最も激しい国の一つであり、民主が危うくなっている」と指摘した。

 外相会議には外相18人が出席、他は代理だった。米国は国務省の大物でラ米通のトーマス・シャノン政治問題担当次官補が出席。ベネスエラ問題解決のため、OEA加盟諸国などによる「連絡グループ」結成が必要との立場を表明した。

 ドミニカ共和国(RD)は1965年に米海兵隊に侵略され、流血の第三次に陥り、改革政権復活を阻まれた。それだけに米軍介入の口実になりやすいOEA決議には厳しく対応する。今会議でも、「ベネスエラの問題はベネスエラが解決すればよい。他の国々は解決努力に連帯すればいい」と、介入したいG14を突き放した。

 5月24日にモレーノ新政権が発足したエクアドール(赤道国)は、「ベネスエラの反政府勢力が対話を拒否しているのは遺憾だ。南米諸国連合(ウナス-ル)の仲介路線に沿ってベネスエラを支援すべきだ」と強調した。ウナスール本部は、キト郊外にある。

 ベネスエラのALBA同盟国ニカラグアは、「内政不干渉原則に反する今会議開催そのものに反対する」と前置きし、「ベネスエラだけが解決の当事者だ」と、G14に釘を刺した。

 ボリビアは「OEAは、加盟国の主権を弱めたい事務職員(ルイス・アルマグロ事務総長を指す)の個人的・政治的利益から、ベネスエラに暴力を焚きつけてきた」と糾弾。「今会議に反対だ。自由な人民は保護者を必要としない」と続けた。さらに、「アルマグロは政治俳優と化し、ベネスエラ紛争を醸し、加盟国ではなく、覇権主義国(米国)の利益を代弁している」と扱き下ろした。

 アルマグロは外相会議正面の議長関の隣に座していたが、攻撃されて苦々しい顔を見せるだけだった。事務総長は大使会議の決定を受けて、もしくは大使会議から委託されて重要発言をするが、重要問題であるベネスエラ問題に関し勝手に発言し続けてきた。この点にも加盟国の批判が高まっている。

 一方、ベネスエラは31日、国連総会で第1委員会(軍縮)の副委員長と、非植民地化委員会の委員長に選ばれた。マドゥーロ大統領は非同盟諸国運動の議長を務めており、それも評価された。

 ラファエル・ラミーレスVEN国連大使は、「米国の圧力にも拘わらずベネスエラは得票率95・6%で非植民地化委員長に選ばれ、米国に<尊厳>という教訓を与えた。ベネスエラは国際社会で敬意を払われているのだ」と強調。「ラ米も国連も<米国の裏庭>ではないのだ」と指摘した。

 ベネスエラ最高裁・憲法法廷は31日、制憲議会(ANC) 開設の発議は大統領の権限であり、必ずしも国民投票実施を必要としない、との判断を下した。これを受けて同日、ANC議員選挙の立候補届けが始まった。6月1日までの2日間で登録する。

 反政府勢力を率いる保守・右翼野党連合MUDは、ANC議員選挙ボイコットをあらためて表明した。MUD内の極右で、4月以来の暴力を含む街頭抗議行動を指揮しているエンリケ・カプリーレス(ミランダ州知事)は31日、伯紙バロール・ド・ブラジルから、「2012年の大統領選挙の際、オデブレヒト社(伯建設最大手)から選挙資金をもらった」と書かれた。300万ドルをもらったとされる。

 この選挙で故ウーゴ・チャベス前大統領に敗れ、13年4月の大統領選挙ではマドゥーロ現大統領に敗れた。このため「失うものがない」カプリーレスは反政府動員行動の先頭に立っているが、18年末の大統領選挙でのMUD候補としての出馬への道は険しい。
 
 ベネスエラ中央銀行は31日、通貨ボリーバル・フエルテ(bf)を64・13%切り下げ、1米ドル=2010bfとした。闇市場では、1d=6000bfにもなっている。