2012年11月8日木曜日

プエルト・リーコ住民投票で対米併合票が初の過半数


▼▽▼カリブ海の米植民地プルト・リーコ(PR)で11月6日実施された住民投票で、「自由連合州」という現在の自治体制の維持に反対する票が54%で、初めて過半数となった。

▼だが投票率は、50%をわずかに上回った程度だった。

▼現体制に代わる将来の在り方については、対米併合61%、自由連合主権国家33%、完全独立5%で、米国の51番目の州になりたいという意思が打ち出された。この設問への回答の3分の1は白票だった。

▼この投票結果は、ワシントンの国会(連邦議会)で審議され、判断される。

▼同時に実施されたPR州知事選挙では、現状維持派・民主人民党PPDのアレハンドロ・ガルシアが、併合派・新進歩党PNPの現職ルイス・フォルトゥーノを僅差で破った。

▼専門家は、①知事選で現状維持派が勝った②棄権率が50%弱と高かった③第2問での白票が多かった-ことから、島民は実質的には対米併合を積極的に望んでいるのではなく、現状の大幅な改善を求めている、と分析している。

▼しかし、1967年以来4度目の住民投票で初めて現状維持が過半数を割り、対米併合派が多数を占めた結果は、世代交代により、PR人の認同(アイデンティティー)がぐらついていることを示している、と受け止めることも可能だろう。

2012年11月7日水曜日

「世界」誌がベネズエラ大統領選の解説記事掲載


☆★☆月刊誌「世界」12月号(岩波書店、11月8日発売)の「世界の潮」欄に、「チャベス・ベネズエラ大統領4選の意味」という解説記事が載っている。筆者は伊高浩昭。

☆筆者は、10月7日実施のベネズエラ大統領選挙について、週刊2誌、月刊2誌、通信社1社に解説原稿を書いた。この「世界」の記事は最後(したがって最新)のものである。どうぞ御一読を。

☆11月6日の米大統領選挙で、現職のバラク・オバーマが再選された。ラ米諸国はおおむね歓迎している。チャベスも歓迎する立場だ。

☆ゲリラ「コロンビア革命軍」(FARC=ファルク)と和平交渉をしているコロンビア政府も、オバマ続投を良しとしている。オバマは、内戦続行を望む米国、イスラエル、コロンビアなどの軍産複合体と立場を異にする、と理解しているからだ。

ラテンアメリカはオバマ再選を歓迎


★☆★☆★ラ米諸国の多くは、11月6日の米大統領選挙でのバラク・オバマ大統領の再選を歓迎しているようだ。当確時刻が7日未明(深夜)であるため、各国政府の公式見解は出ていない。各国の主要メディアは、特派員電や映像を通じて詳報を伝えている。

★オバマ再選でほっとしているのは、キューバとベネズエラだ。キューバの対米関係は、共和党政権期に悪化し、民主党政権期に改善してきた。オバマは、在米キューバ系市民のキューバ渡航条件を大幅に緩めたが、それによってもたらされる米ドルや物資がキューバの経済と社会を潤してきた。

★共和党政権は、フロリダ州を中心とする在米キューバ人社会の右翼と結びついており、そのロビー活動によって対キューバ政策が影響されてきた。2000年の大統領選挙でブッシュ息子が不正とも言える開票操作で勝ったとされた出来事の裏にも、キューバ系右翼の力が働いていた。

★キューバのラウール・カストロ政権は先月、移民法(出入国管理法)を抜本的に改革し、キューバ人の出入国条件を来年1月から大幅に緩和させる。このキューバとしては思い切った措置は、オバマ再選を願う気持ちの表れでもあった。つまり、マイアミなどのキューバ系有権者にオバマへの投票を促す信号だった。

★ラウールは、社会主義経済建設の行き詰まりを打破するため、市場経済原理を公式に導入し、中越両国の経済改革を参考にしつつ、改革を慎重ながら進めてきた。これをさらに進めていくには、対米関係に波風が立たないことが不可欠だ。

★キューバはまた、3選があり得ないオバマが、キューバへの経済封鎖を解除する方向に踏み切るのを密かに期待している。それには米国会上下両院の民主党優位が必要だが、それ以前の問題として、共和党大統領では封鎖解除の発想さえ出てきそうもないからだ。

★ベネズエラのウーゴ・チャベス大統領は、オバマ支持を口にしていた。チャベスは去年、オバマ再選が危ぶまれる事態を想定し、当初今年12月に予定されていた大統領選挙を10月7日へと2カ月早め、快勝し4選を果たした。この措置は、オバマが負けた場合、その余波がベネズエラまで及んで、新自由主義復活を狙う右翼の対立候補が有利になりかねない、との警戒心からだった。チャベスは、自分もオバマも勝ち、ラ米と米国の関係が必要以上に緊張する事態が避けられる、と安堵しているはずだ。

★メキシコでは12月1日、制度的革命党PRIの保守・右翼政権が発足する。就任するエンリケ・ペニャ=ニエト大統領にとっては、人道問題や腐敗問題で厳しくない共和党政権の方がやりやすかったかもしれない。またグアテマラ、ホンジュラス、パナマなどの保守・右翼政権も、苦手のオバマと付き合いつづけなければならなくなった。

2012年11月5日月曜日

プエルト・リーコで主権の在り方問う住民投票


▼▽▼米大統領選挙の実施される11月6日、カリブ海アンティージャス諸島にある「自由連合州(ELA)」という名の米植民地プエルト・リーコ(PR)で、州知事選と併せて、将来の島の主権の在り方を決める住民投票が行なわれる。

▼島の人口は370万人、有権者は240万人。1998年までの過去3回の住民投票では、いずれもELAとしての現状維持が過半数を占めた。

▼投票は、2つの設問について行なわれる。第1問は、現状維持の賛否を問う。第2問は、現状維持でない場合の主権の在り方として、完全独立、自由連合主権(LAS)国家としての独立、米国併合(PR州化)の3つの選択肢から1つを選ぶ。

▼第1問で現状維持反対が過半数を占めた場合、第2問の回答が生きてくる。

▼現状維持は民主人民党(PPD、最大野党)、完全独立はPR独立党(PIP)、LAS国家は自由連合主権同盟(ALAS)、対米併合は新進歩党(PNP、現政権党)が、それぞれ主張している。

▼最新の世論調査では、現状維持が51%、現状維持否定が39%。否定の場合、対米併合44%、LAS国家42%、完全独立4%。

▼この調査結果は、「米国から離れれば経済が成り立たなくなる。だが島の認同(アイデンティティー)は守りたい」という、従来の多数派の立場が依然変わっていないことを示している。

▼米国は1898年、キューバの対スペイン独立戦争に介入し<米西戦争>化し、勝ってPR、フィリピン諸島などを奪取し、キューバに名目的独立を与えて属領化した。1952年、米国はPRに自治権利を認め、ELAとした。

▼キューバは1959年元日の革命で米国の権益を排除し、実質的独立を果たした。キューバは以後、国連などでPR独立運動を展開してきた。

2012年11月2日金曜日

殺されたキューバ人外交官の遺体が故国に還る


★★★1976年8月9日、ブエノスアイレス駐在のキューバ人外交官2人が大使館を出て間もなく拉致され、秘密の監禁所に連行されて拷問された後、殺害された。犠牲者はクレセンシオ・ガラニェーナとヘスース・セハスだった。

★この事件には、反カストロ派キューバ人でCIA要員のギジェルモ・ノボ、ルイス・ポサーダ、オルランド・ボッシュ、CIA米人要員、チリ秘密警察高官らが関与していた。拉致の指揮を執ったのは、ノボだった。CIAが組織した南米軍事政権諸国の暗殺共同作戦「コンドル作戦」による犠牲者だった。

★同じころ、キューバ大使館付属小学校の教師だったマリーア=ロサ・クレメンティら、大使館に関係していたアルゼンチン人12人も拉致され、殺害された。

★事件は迷宮入りしつつあったが、今年6月ブエノスイアレス近郊で偶然見つかった、ドラム缶から、セメント詰めにされていた遺体が発見された。ガラニェーナとクレメンティの遺体だった。

★亜国側の法的手続きが終わって10月25日、キューバ大使館でガラニェーナの葬儀が挙行され、遺体は事件から36年ぶりに故国キューバに帰った。

★11月1日、遺体は、サンクティ・スピリトゥス州ヤグアハイにある革命防衛殉教者墓地に埋葬された。

★極貧家庭に生まれたクレセンシオは、革命によって教育され、外交官にまでなった。殺害された時、26歳だった。

★同僚セハスの遺体は依然見つかっていない。
 
★秘密監禁所の責任者だった退役将軍エドゥアルド・カバニージャスは去年、終身刑を言い渡され、服役している。ポサーダはマイアミで米当局に守られて余生を送っている。ボッシュは先年、死んだ。ノボはマイアミで新たなテロリズムの機会をうかがっていると伝えられる。 

2012年11月1日木曜日

ハイチが台風被害で30日間の非常事態発動


▼▽▼ハイチは10月25日ハリケーン<サンディー>に見舞われ、甚大な被害が出ている。このためミシェル・マルテリ大統領は31日、全土に30日間の非常事態を発動した。

▼政府集計では、死者54人、行方不明者21人に達した。1万8000人が住居を失った。各地で河川が氾濫して洪水が起き、道路や通信網が寸断されている。

▼この国は2010年1月、大地震に見舞われ23万人弱が死亡した。その後、コレラが蔓延し、7500人が死亡した。震災の復興が滞っているときに今回の台風被害に遭い、最貧国のハイチとしては、国際社会からの救援を待つしかない。

▼洪水などで衛生状態も一層悪化しており、コレラが再び蔓延するのが懸念されている。

▼ベネズエラのチャベス政権は逸早く27日、キューバとハイチに緊急支援物資を輸送する支援作戦を開始した。ウーゴ・チャベス大統領は、「ラ米兄弟国に対する我々の義務だ」と語っている。

▼通常ならばキューバが隣国ハイチを支援するのだが、キューバ東部一帯が今回被災し、キューバとしても動くに動けない状態だ。
 
▼近隣ではジャマイカ、バハマ両国にも被害が出ている。 

仲里効著『悲しき亜言語帯』(未来社)を読む


☆★☆日本語(標準語~共通語)の<言語植民地>にされてきた沖縄(琉球)の、沖縄語~琉球諸語と日本語の間の対峙、葛藤、対決、融合、翻訳、屈従など複雑で多様な関係を解き明かした優れた本である。

☆日本本土(ヤマト)にとって<南の辺境>である沖縄のさらなる<僻地>南大東島に生まれ、東京の大学に学び、那覇市を拠点に文筆活動している著者ならではの複眼的かつ重層的な視座から問題が分析され、書かれている。

☆山之口獏、川満信一、中里友豪、高良勉の詩人4人、目取真俊、東峰夫、崎山多美の小説家3人、劇作家・知念正真、沖縄語研究者・儀間進の9人が分析対象者として登場する。私はこのうちの5人にインタビュー取材したことがあり、9人の書いたものをある程度読んでいた。だから、本書の内容は理解しやすかった。

☆川満信一は「詩と思想」で「<おまえ>に向かって問いかけ」、「内的他者」を発見した。こう著者は記す。この部分を読んで、大城立裕の『カクテル・パーティー』の後段の「お前」で突き進む記述との関連性を考えた。川満の「パナリ」(離れ(島))や、中里の「異化と同化(の相克)」という言葉も、大城作品の題名との共通点があるように思えた。

☆著者は、大城立裕を本書では正面から取り上げていない。「大城らの言語的取り組みは東峰夫に超えられてしまった」という指摘において登場する程度だ。又吉栄喜に至っては全く登場しない。詩人も、船越義彰、星雅彦、伊良波盛男らは登場しない。

☆この著者の文章の特徴は、自らの発想を支える豊かな読書体験から、引用をふんだんに盛り込むことだ。また、日本では外来語として十分には熟していない横文字言葉を盛んに用いることだ。本書でもアポリア、テクネー、エクリチュール、コノテーション、マスキュリニティー、メタモルフォーゼ、インファンティアなど枚挙にいとまがない。

☆読書に基づく引用と横文字の多さは、衒学的な印象を醸す。著者が、それらを完全に消化して自分のものとしたとき、真に読みやすい熟達した文章になるのではないか。