2012年8月31日金曜日

ハメネイ師が非同盟運動の改革を呼び掛け

☆★☆第16回非同盟諸国首脳会議が8月30日、テヘランで始まった。イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は開会演説で、過去に原爆を製造し(日本に対し)使用したことを「許し難い罪悪だ」と糾弾し、イランは核兵器を決して製造しないと述べ、中東を非核地域とするよう呼び掛けた。だが、イランは核エネルギー平和利用の権利は捨てない、と強調した。

☆ハメネイは、イスラエル国家の存在を認めないと、従来の立場を表明したが、パレスティーナ紛争の公正かつ民主的な解決を図るため、イスラム、キリスト、ユダヤ3教徒が参加する住民投票を実施すべきだ、と語った。

☆非同盟運動については、世界は東西冷戦終焉と、その後の一極覇権主義の失敗を受けて新しい国際秩序構築に向かっており、非同盟は新たな役割を担うべく改革すべきだ、と強調した。

☆国連については、拒否権を持つ安保理の5常任理事国のあり方を「非論理的、不公正、反民主」と非難し、「独裁的な一部西側諸国に支配されている」と指摘した。

★バン・キムン国連事務総長はイランに、ウラン濃縮全面停止を義務付けた安保理決議を順守し、国際原子力機関(IAEA)の査察に便宜を図るよう求めた。

★総長はまた、イスラエルと米国を示唆するように「いかなる国連加盟国による(イランへの)軍事攻撃の脅し」はあってはならない、と非難した。同時に、「劇的な史実であるホロコースト」を認めないイランを、「そのような人種差別主義は国連の基本的原則を侵す」と厳しく批判した。

★シリア内戦については、新たに国連特使になったアルジェリア外交官ライダル・ブラヒム氏に協力するよう、中東諸国と非同盟加盟国に呼びかけた。

☆イランのマハムード・アハマディネジャド大統領は、ハメネイ師の発言を継いで、カダフィ・リビア体制の打倒を念頭に置くかのように、「安保理は戦争や暗殺を正当化している」と前置きし、「今日の世界の指導者たちは、昨日の黒人奴隷売買者だった。彼らは戦争を仕掛け、諸国を屈従させ弱体化させている。無垢の市民を殺している。だからこそ新しい秩序と指導性を確立すべきだ」と訴えた。

★非同盟運動の前議長であるエジプトのムハンマド・ムルシ大統領は、「エジプト革命は<アラブの春>の柱だ。チュニジアに始まり、エジプト、リビア、イエーメンへと波及し、いままたシリアの抑圧体制に対する革命のさなかにある」と、大胆な発言をした。

★また、アサド・シリア政権を、暴力行使によって正統性を失ったと決めつけ、「反逆する人民を支持するのは倫理的義務だ」と言いきった。

★だが、内戦拡大は抑えなければならないとして、反政府派にも平和解決の道を探るよう呼び掛けた。ムルシは既に、エジプト、イラン、トルコ、サウジアラビアによる「接触(連絡)グループ」の設立を提案している。

★イランは従来、アサド政権支持の立場を貫いてきたが、ムルシの融和的姿勢は、イランにとっても、シリア関係外交の行き詰まりを打開する<救い>になるもよう。

☆一方、ワリド・ムアレム外相らシリア代表団は、ムルシ演説が始まると退席した。同外相は、シリア通信に対し、「議長だった者の伝統に反する。内政干渉だ」とムルシ発言を非難した。

☆首脳会議は31日に終わる。

☆首脳会議には、元首29人、副元首級9人、首相7人が出席している。他は外相ら閣僚、ないし大使が出席している。代表団の総人員は7000人にのぼる。