2017年3月1日水曜日

トランプ政権の「もう一つの事実」強弁戦術が米上院に伝染

 事実に対し、非事実を「もう一つの事実」として強弁するトランプ米政権の「ポスト真実」期の詭弁戦術が米議会にも伝染したようだ。米上院は2月28日、ニコラース・マドゥーロ大統領のベネスエラ政権に対する内政干渉となる決議案を全会一致で採択した。

 決議は、ベネスエラの「政治、経済、社会、人権状況に深い憂慮」を表明、「政治囚釈放」と「国外からの人道支援物資受け入れ」を求め、併せて、米州諸国機構(OEA)事務総長の対ベネスエラ努力を支持する、などとしている。

 特に問題なの「政治囚」という規定だ。ベネスエラ政府は、2014年2月以降の街頭暴力事件に関与した極右政治家らを刑事犯とし、裁判を経て禁錮刑に処している。米議会は、この点について全く触れず、一方的に「政治囚」と決めつけている。ここに強弁がある。

 この根本的疑問に万人が納得できる理由を示して答えない限り、決議には説得力がなく、「ポスト真実」期の詭弁と受け止められても仕方ないだろう。

 OEA総長ルイス・アルマグロは以前からベネスエラへの「米州民主憲章」適用を主張してきたが、最近また適用のためOEA内で支持集めに動いている。アルマグロは、ベネスエラの保守・右翼野党連合MUDと連携している。

 米共和党クーバ系の反共右翼マルコ・ルビオ上議もMUDの意向を汲んでいる。ルビオは、昨年大統領候補指名を争ったドナルド・トランプ大統領に接近、米国の対ラ米外交で影響力を行使しようと謀ってきた。上院決議もルビオの工作が効いている。

 一方、ベネスエラ国防相ブラディーミル・パドゥリーノ将軍は27日、カラカス大騒乱事件(1989年)の発生28周年記念日に際し、「当時の選良勢力の大統領カルロス=アンデレス・ペレス(故人)は、国家の武装機関を使って人民を過度に弾圧した」と表明。

 さらに、故ウーゴ・チャベス前大統領期以降、「文民と武人の連携が最高の状態にある」と指摘、その維持を確認した。MUD右翼、米政府などはベネスエラ軍をマドゥーロ政権から引き離し、軍事クーデターで政権を倒す戦略を抱いてきた。これに対し国防相は、あたらめて今回、政権擁護と主権防衛を打ち出した。

▼ラ米短信   ◎中国がコロンビア人麻薬犯を処刑

 コロンビア人麻薬犯イスマエル・アルシニエガス(72)死刑囚が2月28日、処刑された。元ジャーナリストの元死刑囚は2010年、5000ドルの謝礼と引き換えにコカイン4kgを中国に持ち込んで逮捕され、死刑判決を受けていた。

▼ラ米短信   ◎クーバ外相がスペイン訪問へ

 スペインのラ米担当外務次官フェルナンド・ガルシアが2月27日ハバナでブルーノ・ロドリゲス玖外相と会談、同外相を4月訪西に招待した。昨年12月ブリュッセルでロドリゲスと、アルフォンソ・ダスティス西外相が会談、ロドリゲス訪西の後に、マリアーノ・ラホーイ西首相が訪玖するという段取りで原則的合意に達していた。

 一方、ラウール・カストロ議長は27日、モロッコ占領下にある西サハラの独立を主張し戦ってきたサハラウイ・アラブ民主共和国(RASD)の国家樹立宣言41周年に際し、ポリサリオ戦線のブラヒム・グハリ書記長に祝電を送った。この日ハバナでは同戦線書記局のハンバ・サラマ常任委員が、クーバ共産党のサルバドール・バレデス=メサ政治局員と会談した。