2017年3月31日金曜日

★★★ベネズエラ最高裁が国会権限を代行。N・マドゥーロ大統領に大権授与。内外で「違憲」、「お手盛りクーデター」の非難高まる。米州諸国機構(OEA)は「加盟資格停止」に動く▼ブラジル前下院議長に収賄などで禁錮刑

 ベネスエラ最高裁は3月29日、国会が行政府に対し妨害行為を繰り返してきたため、国会の権限を最高裁の憲法法廷が代行する、と決定した。国内反政府勢力と米州諸国の間で一斉に「アウトゴルペ」(自作自演のクーデター、お手盛りクーデター)と非難する声が上がっている。

 最高裁は28日には、「反ベネネスエラ」事項を討議する米州諸国機構(OEA)大使会議開催に賛成した国会議員を「反逆罪」の容疑ありとし、その不逮捕特権を剥奪した。同時にニコラース・マドゥーロ大統領に政治、軍事、経済、社会、刑事、民事上の大権を授与した。

 同大統領は、「制度、安寧、国民統合を守り、侵略される脅威や内政干渉を排除するため特権を与えられた」と述べた。

 最高裁は、国会が29日、国営石油会社PDVSAとロシア石油企業との合弁会社設立を否決したのを受けて、憲法法廷の国会機能代行を決めた。

 ペルーのPPクチンスキ大統領は30日、「ベネスエラの状況は受け入れられない」として、ベネスエラ駐在大使を無期限に召還した。1992年4月のアルベルト・フジモリ大統領による国会閉鎖と酷似すると受け止めており、OEA諸国にベネスエラの加盟資格を停止させるための「米州民主憲章」適用について根回しする、と表明した。

 PPK大統領は昨年の大統領選挙決選で、フジモリ元大統領の娘ケイコを超僅差で破り、政権に就いた。国会では圧倒的多数派をケイコ派政党に握られている。大統領には、今回のベネスエラの「国会機能剥奪」事件をフジモリ派牽制に使う戦略が窺える。

 チレのミチェル・バチェレー大統領も30日、事態把握と対応策をねるため、ベネスエラ駐在大使を召還した。

 ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は30日、ペルー大統領の発言を内政干渉として糾弾した。

 OEAのルイス・アルマグロ事務総長は30日、「緊急大使会合を招集し、民主憲章適用について話し合う」と表明した。米国、メヒコ、グアテマラ、コスタ・リカ、パナマ、コロンビア、チレ、アルヘンティーナ、ブラジルの各政府も、ベネスエラ政府を非難する声明や談話を出している。

 故ウーゴ・チャベス大統領が1999年2月政権に就いてから2013年3月死去するまで14年間、後継のマドゥーロ現大統領が4年間の計18年のという長いチャベス派政権下で鬱積した矛盾が爆発、緊張が頂点に達した感がある。

 今後の政治状況は、政権に忠実なベネスエラ軍部が内外世論を受けてどう動くか、に大きく懸かっている。

▼ラべ短信   ◎ブラジル前下院議長に禁錮15年の実刑

 ブラジルの第1審法廷は3月30日、国会下院のエドゥアルド・クーニャ前議長を汚職、資金洗浄、外貨不正持出しの罪で禁錮15年4カ月の実刑判決を言い渡した。クーニャは昨年、議員資格を剥奪され、10月から拘禁されている。

 今回の汚職罪は、アフリカ・ベニンでの油田開発をめぐりブラジル国営石油ペトロブラスから150万ドルを収賄したことによる。だが、このほかにも巨額の収賄資金の存在が明らかにされている。

 クーニャは下院議長だった2014年12月、当時のヂウマ・ルセフ大統領がクーニャの汚職調査を当局に認めたことに逆恨みし、ルセフ大統領の弾劾に道を開いた。ルセフは昨年8月末、理不尽な理由で弾劾された。内外世論は、これを「国会クーデターと受け止めた。