ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は9月15日、コロンビアとの西部国境の閉鎖区間を拡大、同区間にも非常事態を発動、国軍管理下に置いた。8月の国境閉鎖後、ベネスエラ在住コロンビア人約2万人が追放や自発的出国でコロンビアに戻っている。
デルシー・ロドリゲス外相は同日、南米諸国連合(ウナスール)がVEN・COL国境問題を話し合う首脳会議を21日開く、と述べた。だがウナスールは、同機構加盟12カ国の首脳間で合意がないため、開催は決まっていないと否定した。
一方、コロンビアのJM・サントス大統領は14日ボゴタで、マリーア・オルギン外相、エクアドールのリカルド・パティーニョ外相らと国境問題で会談した。15日には、ベネスエラと国境北端のラ・グアヒーラ州パラグアチョーンを視察、「写真撮影のために会うことはない」と語り、ウルグアイで設定されつつあったマドゥーロ大統領との会談に臨みたくない意志を表明した。
サントスは、「会うなら解決策がなければならない」と述べ、暗にマドゥーロに具体案提示を求めた。サントスは国境で、ベネスエラ軍の兵士たちと言葉を交わし、握手した。
ベネスエラは国境地帯で、ベネスエラから石油や生活性物資が大量にコロンビアに密輸されてき、それが経済に打撃となっていると捉え、またコロンビアの武装一味が不法入国して暗躍しているとして8月、一部国境を閉鎖、取締りを強化してきた。
背景には、コロンビアで55年間続く内戦で土地を奪われ避難民となった人々や、貧困対策の遅れで生活苦に苛まれている人々がベネスエラに入り込んで定住してきた事実がある。
一方、ベネスエラが唐突と映る国境閉鎖に踏み切ったのは、ベネスエラ人の目を経済困難などの内憂から外患に向けさせる狙いがある。また軍隊の国境地帯動員には、軍事訓練の意味も含まれている。
サントスは国境視察などでいかにも人道を重視する大統領のように振舞っているが、内戦で貧困農民が土地を奪われ避難民になるのを防がず、また、ウリーベ前極右政権以来、極右準軍部隊(パラミリタレス)がベネスエラ国境地帯でベネスエラからの物資密輸で大儲けするマフィアになったり、ベネスエラの内政不安定化のため越境して暗躍するのを防いでこなかった。