2011年10月26日水曜日

20回連続で経済封鎖撤廃決議

   国連総会は10月25日、米政府によるキューバへの「経済・貿易・金融封鎖」の撤廃決議を、賛成186、反対2(米、イスラエル)、棄権3(ミクロネシア、マーシャル諸島、パラオ)で可決した。1992年以来、連続20回の可決となった。棄権した南太平洋の3国は、いずれも米国に防衛を依存している、米国との「自由連合国」で、米政府の意向に背きにくい。

   この決議には拘束力がない。このため米国が決議に従うことはない。米代表は、「封鎖は米玖間の2国間問題であり、国連総会決議にはなじまない」とうそぶいた。経済封鎖が、日本を含む第3国に深刻な影響を及ぼしており、「2国間問題」という主張は欺瞞そのものだ。

   キューバのブルーノ・ロドリゲス外相は投票に先立ち、ケネディ米政権時代の1962年2月7日以来の経済封鎖による損害は累計総額9750億ドルに及ぶ、と明らかにした。経済封鎖は、キューバ革命のあった1959年からアイゼンハワー米政権によって徐々に発動されていた。このため「損害額」は実際には、もっと多いはずだ。

  駐日キューバ大使ホセ・フェルナンデス=デ・コシーオ氏は10月6日、経済封鎖問題について在京大使館で記者会見した。その折、「封鎖の第3国規制によって日本の主権も侵害されている。たとえば日本企業がステンレススティールを米国に輸出する場合、日本側はキューバ産ニッケルを使用していないことを証明するため、使用したニッケルの原産地証明を提出しなければならない」と指摘した。

  経済封鎖を担当している米財務省はこのところ、日本の銀行に対し、日本企業がキューバに輸入代金を支払う際に発行するLC(信用状)を発行しないよう圧力をかけている。企業はLCを欧州の銀行に送り、ユーロでキューバに代金を支払ってきたが、米財務省は、日本の銀行に対し、LCを発行する場合、そのLCをいったん米国の銀行に渡し、そこから欧州の銀行に回すよう強制しているという。ひどい干渉だ。この圧力は、英蘭独などの銀行にもかけられている。

  ある日本の大手商社がキューバに小型発電機を輸出しようとした際、日本の経産省から横やりが入り、輸出を断念したこともある。米財務省の思惑を経産省が先取りして警告したわけだが、この商談は結局、韓国の現代(ヒョンデ)に持っていかれた。

  日本も国連総会で封鎖解除に賛成してきたが、第3国規制に反逆できないのが実情だ。なお採決にはリビアとスウェーデンが不参加(欠席)、新生・南スーダンは参加した。


(2011年10月26日 伊高浩昭)