2011年11月12日土曜日
学生が政府に勝利
コロンビアのサントス政権は、財政破綻に直面している国公立大学の民営化を促進し、産学協同の一層の強化を促す「上級教育法案」を10月3日国会に提出していた。
だが、大学生を中心とする全国的な抗議行動に遭い、法案を11月11日撤回した。
大学生、その予備軍(中等学校生=高校生)、教職員、父兄、労組は、「知識の商業化」を方向づける法案に反対し、10月から全国で抗議行動を7度展開、うち3回は大規模動員だった。
学生は「全国学生拡大会議(MANE=マネ)」を組織し、10月12日ストライキに突入した。
11月10日には、首都ボゴタの15~20万人をはじめ、全国で200万人の動員に成功した。
これを予知したフアン・サントス大統領は前日の9日、学生側がストを止めれば法案を撤回する、と約束したが、撤回して「誠意」を示した。
MANEは12~13両日、ストを解除するか否かを議論した。その結果、①政府は法案撤回手続きを完遂する②政府は白紙状態に戻って学生と上級教育改革案について話し合う③政府は抗議行動の自由を保障するーの3点をスト解除の条件として政府に提示した。
結局、16日、法案撤回手続きが終了したのを受けて、ストを解除した。
大学授業料は学生負担は増えつづけている。私学の場合、学生の負担は年間1万ドルに及ぶ。教育予算は伸びず、大学の負債は増え続け、学生の苦境は深刻化した。
最低賃金は月額300ドル。親たちの多くは学資を払えない。中等学校生の37%しか大学に進学できず、うち45%しか卒業できない。
学生の多くは、アルバイトをしつつ、「学生融資」を受けざるを得ない。進学者の過半数が、融資の返済で行き詰まり、単位も取得できず、大学を去っていく。
法案は、大学が社会変革の基盤になるのを妨げ、少数富裕層を頂点とする伝統的支配階層の天下を維持するのに都合のいい学生をつくるのを狙いとしている。そう大学人は批判していた。
MANEは、全国での大動員は、富裕層・支配層の意見を伝えるのに忙しいマスメディアが当てにできないためでもあると、はっきり語っている。メディアの社会的責任も問われている。
大統領は法案を撤回した。新自由主義教育の荒廃が拡がるコロンビアで、学生たちは<革命的な>勝利を記録した。
チリの学生も4月から、政府の新自由主義教育政策を変えさせようと闘ってきた。だが、ピノチェー軍政以来、新自由主義が広く深く浸透しているチリである。政府は譲歩しない。スペインの学生も同様の闘いを続けている。
(2011年11月12~17日 伊高浩昭)