ーーーーグアテマラのアルバロ・コロム大統領は11月15日、アルフォンソ・ポルティージョ元大統領(60)の身柄を米司法当局に引き渡すのを許可した。一国の大統領経験者の身柄が他国に引き渡されるのは、極めて稀なことだ。
ポルティージョ(2000~04年政権担当)は、台湾からの援助金250万ドル、グアテマラ国防省資金390万ドルなどを横領し米国の銀行を使って洗浄した容疑で、ニューヨーク検察から身柄引き渡し要求がなされていた。
ポルティージョは大統領任期が終わった04年の2月、逮捕を逃れるためエル・サルバドール経由でメキシコに逃亡した。だが08年逮捕され、グアテマラに送還された。しかし12万5000ドルの保釈金を支払って仮釈放処分となった。
ところが10年初め米当局の要請で逮捕状が出ると、カリブ海岸から海路、隣国ベリーズに逃走を謀った。だが北部海岸で逮捕された。政府も、総額1500万ドルの公金横領罪で訴えていたが、法廷は今年5月26日、ポルティージョの「無罪」の主張を認めて、無罪を言い渡した。
典型的なインプニダー(無処罰)だった。
だが最高裁は3ヶ月後の8月26日、米当局からの身柄引き渡し要求を受け入れ、コロム大統領に最終判断を求めた。コロムは、判断は次期大統領に任せるとして、引渡命令書への署名を避けていた。
11月6日、大統領選挙決選投票で、オットー・ペレス=モリーナが当選した。次期大統領に決まったペレスは、ポルティージョの身柄引き渡しに賛成した。これによりコロムは署名に踏み切った。
引渡決定はある意味で<英断>かもしれないが、もとはと言えば、グアテマラの法治性が体をなしておらず、無処罰がまかり通ってきたためだ。法治能力に欠けるため、国家としての恥を忍んで、厄介者を引き渡さざるを得なくなったわけだ。
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私はポルティージョが大統領として来日した折、あるパーティーで会話した。その後、彼の施政4年間に公金5億ドルが横領された、との数字も出ている。ポルティージョとの束の間の時間も、後味の悪いものになった。
(2011年11月16日 伊高浩昭)