2016年3月14日月曜日

ブラジル各地で大統領退陣を要求するデモ行進実施さる

 ブラジル各地で3月13日、ヂウマ・ルセフ大統領の退陣を要求し、腐敗容疑で起訴されたルーラ前大統領に象徴される大規模な贈収賄・物品授受事件を糾弾する大規模な反政府デモ行進が実施された。ルーラ、ヂウマ2代4期13年余りの労働者党(PT)政権は最大の危機に直面している。

 全国で計100万人が動員されたと見られている。最大動員のあったサンパウロ市では45万人、首都ブラジリアで10万人、リオデジャネイロ市で8万人、ベロオリゾンチ市で3万人など。2014年のサッカーW杯ブラジル大会前の13年6~7月、中産下層市民らが公共交通機関の値上げに反対して全国で抗議デモを展開して以来の動員数だ。

 今回はリオデジャネイロ五輪大会を前にしての、経済よりも政治の変化を求める大規模抗議行動だ。ルセフ大統領はブラジリアで13日、臨時閣議を開き、情勢分析を続けた。

 問題の背景には、過去4回の大統領選挙で負け続け欲求不満に陥っている伯民社党(PSDB)など保守政党の「選挙によらない政権交代」戦略がある。反政府機運を盛り上げて大統領を辞任に追い込むか、もしくは国会で弾劾するという手法だ。

 軍事クーデターを打てなくなった時代の、新らしい政権打倒法だ。

 反政府派を勇気づけたのは、PTと連立してきた最大政党・伯民主運動党(PMDB)が12日、連立の維持か解消かを30日以内に決めると表明したこと。PMDB党首で副大統領のミシェル・テメルはルセフが退けば、暫定大統領になる立場にある。

 一方、ラ米諸国の大統領経験者らは12日、起訴されたルーラ前大統領を支援する立場を表明した。南米からはクリスティーナ・フェルナンデス亜国前大統領、エドゥアルド・ドゥアルデ元亜国暫定大統領、リカルド・ラゴス元チレ大統領、カルロス・メサ元ボリビア暫定大統領、エルネスト・サンペール元コロンビア大統領(現・南米諸国連合事務局長)、ホセ・ムヒーカ前ウルグアイ大統領、フェルナンド・ルーゴ元パラグアイ大統領、ニカノール・ドゥアルデ元パラグアイ大統領が署名している。

 中米からはエル・サルバドールのマウリシオ・フネス前大統領、オンドゥーラスのマヌエル・セラヤ元大統領、マルティン・トリホス元パナマ大統領。カリブからはドミニカ共和国のレオネル・フェルナンデス前大統領。このほか、米州諸国機構(OEA)のホセ=ミゲル・インスルサ前事務総長(元チレ外相)、フェリーペ・ゴンサレス元スペイン首相、マッシモ・ダレマ元伊首相が加わっている。

 ラ米では、亜国右翼政権誕生、ベネスエラ国会での保守・右翼連合の主導権獲得とマドゥーロ大統領退陣要求、ボリビア国民投票でのエボ・モラレス大統領の4選拒否に続く、保守・右翼勢力の逆襲と見る向きが多い。

 そんな時期だけに、バラク・オバーマ米大統領の21~24日の玖亜両国公式訪問が関心を集めている。

★ルーラは14日、2018年の次期大統領選挙に出馬する、と言明した。起訴され政治生命のかかる危機を<正面突破>で乗り切る意志を表明したと受け止められている。
★ルセフ大統領は16日、ルーラを内閣文官長(大統領府長官=首相級)に任命した。ルーラは17日就任したが、法廷はこれを差し止めた。国内では大統領退陣とルーラ断罪を求める野党勢力のデモが活発化している。